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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095432
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】リッドの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20230629BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B60K37/00 C
B60R13/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211312
(22)【出願日】2021-12-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 淳樹
【テーマコード(参考)】
3D023
3D344
【Fターム(参考)】
3D023BE36
3D344AA12
3D344AB01
3D344AC15
3D344AC30
(57)【要約】
【課題】リッドの裏面側の奥行空間が制限されている場合であっても適用可能で、意図しない脱落を防止し、且つ着脱作業を容易に行うことができるリッドの取付構造の提供。
【解決手段】リッド10は、パネル部材2に取付けられたリッド取付状態において、パネル部材2のパネル開口5を閉止するリッド本体11と、パネル部材2のパネル上係合部に係合するリッド上係止部と、パネル部材2のパネル下係止孔7の周縁部に係止して車室1側へのリッド10の移動を規制するリッド下第1係止片13と、パネル下係止孔7を挿通してパネル部材2側に係止しないリッド下第2係止片14とを備える。リッド取付状態のリッド10が下端側を中心として車室1側へ傾動することにより、リッド上係止部がパネル上係合部から外れて離間した場合に、リッド下第2係止片14がパネル下係止孔7の周縁部に係止してリッド10の車室1側への傾動を規制する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル開口が設けられたパネル部材に車室側から取付けられるリッドの取付構造であって、
前記パネル部材は、パネル上係合部と、前記パネル上係合部よりも下方に配置されるパネル下係止孔と、を備え、
前記リッドは、前記パネル部材に取付けられたリッド取付状態において、前記パネル開口を閉止するリッド本体と、前記パネル上係合部に係合するリッド上係止部と、前記パネル下係止孔の周縁部に係止して前記車室側への前記リッドの移動を規制するリッド下第1係止片と、前記パネル下係止孔を挿通して前記パネル部材側に係止しないリッド下第2係止片と、を備え、
前記リッド取付状態の前記リッドが下端側を中心として前記車室側へ傾動することにより、前記リッド上係止部が前記パネル上係合部から外れて離間した場合に、前記リッド下第2係止片が前記パネル下係止孔の周縁部に係止して前記リッドの前記車室側への傾動を規制する
ことを特徴とするリッドの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のリッドの取付構造であって、
前記リッド下第2係止片は、前記リッドを前記パネル部材に取付ける際に、前記パネル部材側に係合しない
ことを特徴とするリッドの取付構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のリッドの取付構造であって、
前記リッド下第1係止片は、前記リッド本体と一体形成され、
前記リッド下第2係止片は、前記リッド本体と別体に形成されて前記リッド本体に対して取付けられる
ことを特徴とするリッドの取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載のリッドの取付構造であって、
前記リッド下第2係止片は、前記リッド本体に対して上下動可能に取付けられて前記リッド下第1係止片に上方から重なり、
前記リッド下第1係止片と前記リッド下第2係止片との間には、緩衝材が介在する
ことを特徴とするリッドの取付構造。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のリッドの取付構造であって、
前記リッドには、前記リッド本体の裏面から起立して上下方向に延びる第2係止片支持板部と、前記リッド本体と前記第2係止片支持板部との境界領域を補強する補強リブとが、前記リッド本体と一体形成され、
前記第2係止片支持板部は、前記リッド下第2係止片を支持する第2係止片支持部を有し、
前記補強リブは、前記第2係止片支持部の上方で前記第2係止片支持板部の側面と前記リッド本体の裏面とを連結する
ことを特徴とするリッドの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のパネル部材に対するリッドの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の内装パネルの開口部を閉鎖するリッドの取り付け構造が記載されている。リッドの裏面には、係止爪を有する複数の支持片が突設され、内装パネルには、係止爪が弾性係合することでリッドの閉鎖状態を保持する複数の係止部が設けられている。複数の支持片中の一本の支持片には、その長さが他の支持片よりも長い延長部が形成され、この延長部には、係止爪の全てが対応する係止部から離脱したとき、対応する係止部に係合してリッドの脱落を阻止する補助爪が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-96295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、リッドの脱落を阻止する補助爪を設けているので、車両の衝突時等に衝撃が加わり、全ての係止爪が対応する係止部から離脱した場合であっても、延長部の補助爪の突起が対応する係止部に引っ掛かるので、内装パネルからのリッドの脱落を防止することができる。
【0005】
しかし、特許文献1のように複数の支持片中の一本の支持片(脱落防止用支持片)に係止爪と補助爪とを設ける構造では、リッドの取付けに際し、補助爪を係止部に係合した後、係止爪をさらに係止部に係合する必要がある。すなわち、脱落防止用支持片と係止部との間で二段階の係合を行なう必要があり、リッドの取付作業が煩雑となる。リッドの取外しに際しても同様に、脱落防止用支持片と係止部との間で二段階の係合解除を行なう必要があり、リッドの取外し作業が煩雑となる。
【0006】
また、脱落防止用支持片の長さを他の支持片よりも長く形成するので、リッドの裏面側への脱落防止用支持片の突出長さが増大し、リッドの裏面側に十分な奥行空間を確保する必要がある。
【0007】
そこで本開示は、リッドの裏面側の奥行空間が制限されている場合であっても適用可能であり、意図しないリッドの脱落を防止することができ、且つリッドの着脱作業を容易に行うことができるリッドの取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本開示の第1の態様は、パネル開口が設けられたパネル部材に車室側から取付けられるリッドの取付構造であって、パネル部材は、パネル上係合部と、パネル上係合部よりも下方に配置されるパネル下係止孔と、を備える。リッドは、パネル部材に取付けられたリッド取付状態において、パネル開口を閉止するリッド本体と、パネル上係合部に係合する複数のリッド上係止部と、パネル下係止孔の周縁部に係止して車室側へのリッドの移動を規制するリッド下第1係止片と、パネル下係止孔を挿通してパネル部材側に係止しないリッド下第2係止片と、を備える。
【0009】
リッド取付状態のリッドが下端側を中心として車室側へ傾動することにより、リッド上係止部がパネル上係合部から外れて離間した場合に、リッド下第2係止片がパネル下係止孔の周縁部に係止してリッドの車室側への傾動を規制する。
【0010】
本開示の第2の態様は、第1の態様のリッドの取付構造であって、リッド下第2係止片は、リッドをパネル部材に取付ける際に、パネル部材側に係合しない。
【0011】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様のリッドの取付構造であって、リッド下第1係止片は、リッド本体と一体形成される。リッド下第2係止片は、リッド本体と別体に形成されてリッド本体に対して取付けられる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第3の態様のリッドの取付構造であって、リッド下第2係止片は、リッド本体に対して上下動可能に取付けられてリッド下第1係止片に上方から重なる。リッド下第1係止片とリッド下第2係止片との間には、緩衝材が介在する。
【0013】
本開示の第5の態様は、第3又は第4の態様のリッドの取付構造であって、リッドには、リッド本体の裏面から起立して上下方向に延びる第2係止片支持板部と、リッド本体と第2係止片支持板部との境界領域を補強する補強リブとが、リッド本体と一体形成される。第2係止片支持板部は、リッド下第2係止片を支持する第2係止片支持部を有する。補強リブは、第2係止片支持部の上方で第2係止片支持板部の側面とリッド本体の裏面とを連結する。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1~第5の何れかの態様のリッドの取付構造であって、リッド取付状態のリッドが下端側を中心として車室側へ傾動することにより、リッド上係止部がパネル上係合部から外れて離間し、リッド下第1係止片がパネル下係止孔から上方に外れて離間し、リッド本体の下端部がパネル開口の下縁部に下方から支持され、且つリッド下第2係止片がパネル下係止孔を挿通するリッド係合解除状態となる。
【0015】
リッド係合解除状態のリッドを、リッド下第2係止片がパネル下係止孔から外れるように上方へ移動させることにより、リッド本体の下端部がパネル開口の下縁部から離間し、且つリッド下第2係止片がパネル下係止孔から上方に離間して、リッドが車室側に取外される。係合解除状態のリッドがパネル開口の下縁部を中心として車室側へさらに傾動すると、リッド下第2係止片がパネル下係止孔の周縁部に係止してリッドの車室側への傾動を規制する。
【発明の効果】
【0016】
本開示のリッドの取付構造によれば、リッドの裏面側の奥行空間が制限されている場合であっても適用可能であり、意図しないリッドの脱落を防止することができ、且つリッドの着脱作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るリッド取付構造を適用したインストルメントパネルの斜視図である。
図2】リッドを裏面側から視た斜視図である。
図3】インストルメントパネルのパネル開口の周縁を車室側から視た正面図である。
図4】パネル上係合部とリッド上係止部との係合状態を示す断面図である。
図5】リッド下第1係止片とリッド下第2係止片とを裏面側上方から視た斜視図である。
図6】リッド下第1係止片とリッド下第2係止片とを裏面側下方から視た斜視図である。
図7】リッド下第2係止片の斜視図である。
図8】リッド下第2係止片を図7の矢印A方向から視た図である。
図9】リッド下第2係止片を図7の矢印B方向から視た図である。
図10】リッド下第1係止片がパネル下係止孔の周縁部に係止した状態を一部断面で示す斜視図である。
図11】リッドを着脱する際のリッド下第2係止片とパネル下係止孔との位置関係を示す断面図である。
図12】リッド下第2係止片がパネル下係止孔の周縁部に係止した状態を示す断面図である。
図13】リッド下第2係止片がパネル下係止孔の周縁部に係止した状態を一部断面で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。また、各部材に関する方向は、車両に組付けられた状態での方向である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る車両の車室1には、インストルメントパネル(パネル部材)2が設けられ、インストルメントパネル(以下、インパネと称する)2には、ヒューズリッド等のリッド10が車室1側から着脱可能に取付けられる。なお、パネル部材は、インパネ2に限定されず、車室1側からリッドが着脱可能に取付けられる板状の部材であればよい。
【0020】
インパネ2は、可撓性を有する樹脂製のパネルであって、車室1の前部に配置されて車幅方向に延び、車体に対して固定される。本実施形態のインパネ2は、基材であるインパネコア3と、インパネコア2の後面(車室1側の表面)に配置される表皮部材4とから構成される(図10参照)。インパネ2の前方の内部には、空調ユニット(図示省略)や電源ユニット(図示省略)等が配置される。
【0021】
図3に示すように、インパネ2(インパネコア3及び表皮部材4)には、電源ユニット等を車室1側から整備又は点検する際に内部を露出させるための矩形状のパネル開口5が形成される。本実施形態のパネル開口5は、インパネ2の左側上部に配置され、インパネ2の左側上部は、前上方へ傾斜する。パネル開口5は、インパネ2に取付けられたリッド10よって閉止される。リッド10がインパネ2に取付けられたリッド取付状態において、リッド10の下縁部は、表皮部材4のパネル開口5の下縁部に上方から対向する。
【0022】
インパネコア3のパネル開口5の周縁部には、複数の矩形孔形状のパネル上係合部6と、複数の矩形孔形状のパネル下係止孔7とが形成される。本実施形態では、パネル開口5の上縁部に5個のパネル上係合部6が車幅方向に離間して並んで形成され、パネル開口5の左右の側縁部にパネル上係合部6がそれぞれ1個ずつ形成され、パネル開口5の下縁部に3個のパネル下係止孔7が車幅方向に離間して並んで形成される。全てのパネル下係止孔7は、何れのパネル上係合部6よりも下方に配置される。パネル下係止孔7は、インパネコア3のうち上斜め前方へ向かって湾曲する領域に形成され、上下方向に貫通して開口する(図11参照)。なお、パネル上係合部6及びパネル下係止孔7の数は、上記に限定されず任意に設定可能である。
【0023】
図2に示すように、リッド10は、リッド本体11と、複数(パネル上係合部6と同数)のリッド上係止部12と、複数(パネル下係止孔7と同数)のリッド下第1係止片13と、1個のリッド下第2係止片14とを備える。
【0024】
リッド本体11は、可撓性を有する樹脂製の矩形状板体であり、リッド取付状態において、インパネ2のパネル開口5の周縁部全域(上縁部、左右の側縁部、下縁部)に車室1側から重なってパネル開口5を塞ぐ。リッド本体11の裏面には、上下方向に延びる複数の縦リブ15と、左右方向に延びる複数の横リブ16とが、リッド本体11と一体形成される。複数の縦リブ15は車幅方向に離間して並び、複数の横リブ16は上下方向に離間して並ぶ。縦リブ15と横リブ16とによってリッド本体11が補強される。
【0025】
リッド上係止部12とリッド下第1係止片13とリッド下第2係止片14とは、何れもリッド本体11の裏面(前面)に設けられる。リッド本体11の上縁部には5個のリッド上係止部12が配置され、リッド本体11の左右の側縁部にはそれぞれ1個のリッド上係止部12が配置され、リッド本体11の下縁部には3個のリッド下第1係止片13と1個のリッド下第2係止片14とが配置される。
【0026】
3個のリッド下第1係止片13は、リッド本体11の下部で上下に並ぶ2個の横リブ16の間で車幅方向に並び、リッド本体11と一体形成される。リッド下第1係止片13の下方の横リブ16は、リッド本体11の下縁部を形成する。リッド下第2係止片14は、リッド本体11と別体に形成され、3個(左右及び中央)のリッド下第1係止片13のうち中央のリッド下第1係止片13に上方から重なるように配置され、リッド本体11に対して取付けられる。なお、中央のリッド下第1係止片13に代えて又は加えて、他のリッド下第1係止片13に対してリッド下第2係止片14を設けてもよい。
【0027】
リッド取付状態において、7箇のリッド上係止部12は、インパネコア3の7箇のパネル上係合部6にそれぞれ係合し、主に車室1側へのリッド10の移動を規制する。3個のリッド下第1係止片13は、インパネコア3の3箇のパネル下係止孔7の周縁部(後縁部)にそれぞれ係止し、車室1側へのリッド10の移動を規制する(図10参照)。リッド下第2係止片14は、インパネコア3の車幅方向中央のパネル下係止孔7を挿通し、インパネ2側に係止せず、リッド10の移動を規制しない(図10参照)。
【0028】
次に、リッド上係止部12とリッド下第1係止片13とリッド下第2係止片14とについて詳しく説明する。
【0029】
図4に示すように、リッド上係止部12は、クリップ取付板17と弾性クリップ18とから構成される。クリップ取付板17は、リッド本体11(図2参照)と一体形成され、リッド本体11の裏面から前方へ延びる。弾性クリップ18は、クリップ取付板17に取付けられて保持される。リッド上係止部12が車室1側からパネル上係合部6へ押し込まれると、弾性クリップ18が弾性変形しパネル上係合部6に挿入されて係合する。係る状態からリッド上係止部12が車室1側へ引張られると、弾性クリップ18が弾性変形してパネル上係合部6から外れる。
【0030】
図2図5図6及び図9に示すように、リッド下第1係止片13は、第1係止片上板部21と第1係止片下板部22とを一体的に有する。第1係止片上板部21は、リッド本体11の裏面から前下方へ延びる平板状であり、リッド本体11と一体形成される。第1係止片下板部22は、第1係止片上板部21の前縁部から後下方へ曲折してリッド本体11と略平行に延びる平板状であり、第1係止片下板部22の下縁部は、リッド本体11から離れる方向へ僅かに傾斜する。
【0031】
リッド下第1係止片13の車幅方向両側には、左右1対の第1係止板23が設けられている。左右の第1係止板23は、リッド下第1係止片13の上方に配置され、リッド本体11の裏面から起立して上下方向に延び、車幅方向と略直交する。第1係止板23は、平板状であり、リッド本体11及びリッド下第1係止片13と一体形成される。左側の第1係止板23の下縁部は、リッド下第1係止片13の左縁部から曲折し、右側の第1係止板23の下縁部は、リッド下第1係止片13の右縁部から曲折する。第1係止板23は、全て(3個)のリッド下第1係止片13に対してそれぞれ設けられて、リッド下第1係止片13を補強する。
【0032】
第1係止板23の前縁上端部には、切欠き形状の係止凹部24が形成される。係止凹部24は、リッド取付状態において、パネル下係止孔7の前縁上端部に後方及び上方から当接して、前方及び下方へのリッド10の移動を規制する(図11参照)。
【0033】
中央のリッド下第1係止片13に対して設けられた中央の第1係止板23には、リッド下第2係止片14を取付けるためのクリップ挿通孔(第2係止片支持部)25が形成される。すなわち、中央の第1係止板23は、第2係止片支持板部26を構成する。
【0034】
第2係止片支持板部26は、複数のリブ(上リブ27、中リブ28)によって補強され、左右の第2係止片支持板部26の下縁部を連結する第1係止片上板部21は、下リブ29によって補強される。上リブ27及び中リブ28は、リッド本体11及び第2係止片支持板部26と一体形成され、下リブ29は、リッド本体11及び第1係止片上板部21と一体形成される。上リブ27は、左右の第2係止片支持板部26の上端部とリッド下第1係止片13の上方の横リブ16とを連結する。すなわち、上リブ27と横リブ16とは、クリップ挿通孔25の上方で第2係止片支持板部26の側面とリッド本体11の裏面とを連結して、リッド本体11と第2係止片支持板部26との境界領域を補強する補強リブ30を構成する。中リブ28は、第2係止片支持板部26の外側面の中央部とリッド本体11の裏面とを連結して、リッド本体11と第2係止片支持板部26との境界領域を補強する。下リブ29は、第1係止片上板部21とリッド下第1係止片13の下方の横リブ16とリッド本体11とを連結して、リッド本体11と第1係止片上板部21との境界領域を補強する。
【0035】
図2及び図5図9に示すように、リッド下第2係止片14は、第2係止片上板部31と第2係止片下板部32と左右1対の第2係止片側板部33とを有する。第2係止片上板部31と第2係止片下板部32と第2係止片側板部33とは、金属板を曲折することによって一体形成される。第2係止片上板部31は、第1係止片上板部21に上方から重なり、第2係止片下板部32は、第2係止片上板部31の前縁部から後下方へ曲折して延びる。第2係止片下板部32は、第1係止片下板部22から上方へ離間し、第2係止片下板部32の下縁部は上方へ曲折する。左の第2係止片側板部33は、第2係止片上板部31の左縁部から上方へ曲折して延び、左の第2係止片支持板部26に右側から対向する。右の第2係止片側板部33は、第2係止片上板部31の右縁部から上方へ曲折して延び、右の第2係止片支持板部26に左側から対向する。
【0036】
左右の第2係止片側板部33には、左右の第2係止片支持板部26のクリップ挿通孔25と連通するクリップ挿通孔34がそれぞれ形成される。左右の第2係止片側板部33は、クリップ挿通孔25,34を挿通する2ピースクリップ35によって左右の第2係止片支持板部26に連結される。すなわち、リッド下第2係止片14は、左右の第2係止片側板部33のクリップ挿通孔34を挿通する左右の2ピースクリップ35によってリッド本体11に取付けられる。
【0037】
リッド下第2係止片14は、リッド取付状態では機能せず、後述するように、リッド取付状態が意図せずに解除された場合(全てのリッド上係止部12がパネル上係合部6から外れ、リッド下第1係止片13がパネル下係止孔7から外れた場合)に、パネル下係止孔7の周縁部(前縁部)に係止してリッド10の脱落を防止する脱落防止用として機能するように構成される。
【0038】
本実施形態では、左右の2ピースクリップ35が同軸に配置され、リッド下第2係止片14は、リッド本体11に対して上下動可能に取付けられてリッド下第1係止片13に上方から重なる。第2係止片下板部32の下面のうちリッド第1係止片13の第1係止片下板部22と重なる領域(第2係止片上板部31側の領域)には、例えば発泡樹脂などの緩衝材20が接着等によって固定される。すなわち、リッド下第1係止片13とリッド下第2係止片14との間には、緩衝材20が介在する。なお、リッド下第2係止片14側に代えて、リッド下第1係止片13側に緩衝材20を固定してもよい。
【0039】
リッド取付状態のリッド10をインパネ2から取外す場合、車室1内の作業者は、リッド10の上端縁に指先を掛けて後方へ引く。リッド10は、下端側(インパネコア3のパネル開口5の後縁部に係止している第1係止片下板部22の下端部)を中心として車室1側へ傾動する。リッド10の傾動により、リッド上係止部12がパネル上係合部6から外れて離間し、リッド下第1係止片13がパネル下係止孔7から上方に外れて離間する。全てのリッド上係止部12がパネル上係合部6から外れ、全てのリッド下第1係止片13がパネル下係止孔7から外れた直後は、リッド本体11の下端部が表皮材4のパネル開口5の下縁部に下方から支持され、且つリッド下第2係止片14がパネル下係止孔7を挿通するリッド係合解除状態となる。
【0040】
次に、作業者は、リッド係合解除状態のリッド10を、リッド下第2係止片14がパネル下係止孔7から外れるように上方へ移動させる。これにより、リッド本体11の下端部が表皮材4のパネル開口5の下縁部から離間し、且つリッド下第2係止片14がパネル下係止孔7から上方に離間して、リッド10が車室側に取外される(図11参照)。なお、リッド10をインパネ2に取付ける場合は、取外しの逆の手順で行なう。
【0041】
全てのリッド上係止部12が意図せずにパネル上係合部6から外れてリッド係合解除状態となり、リッド10が表皮材4のパネル開口5の下縁部を中心として車室側へさらに傾動すると、リッド下第2係止片14がインパネコア3のパネル下係止孔7の周縁部(前縁部)に係止してリッド10の車室1側への傾動を規制する(図12及び図13参照)。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両の衝突時等に衝撃が加わり、全てのリッド上係止部12がパネル上係合部6から外れ、リッド10が下端側を中心として車室1側へ傾動し、全てのリッド下第1係止片13がパネル下係止孔7から上方に外れて離間した場合であっても、リッド下第2係止片14がパネル下係止孔7の周縁部に係止してリッド10の車室1側への傾動を規制するので、リッド10の脱落を防止することができる。
【0043】
リッド10の取付時に、脱落防止用のリッド下第2係止片14をインパネ2側に係合しないので、リッド10の着脱作業を容易に行うことができる。
【0044】
リッド取付状態でリッド下第1係止片13を係止させるために設けるパネル下係止孔7の周縁部に、脱落防止用のリッド下第2係止片14を係止させるので、リッド10の裏面側へのリッド下第2係止片14の突出長さを抑制することができる。このため、リッド10の裏面側の奥行空間が制限されている場合であっても、脱落防止用のリッド下第2係止片14を設けることができる。
【0045】
リッド下第2係止片14をリッド本体11と別体に設けているので、リッド下第2係止片14を備えたリッド10と備えないリッドとを選択的に提供することができる。また、樹脂製のリッド本体11に金属製のリッド下第2係止片14を取付けるので、リッド下第2係止片14の破損や変形を防止することができる。
【0046】
リッド取付状態において、車両の走行時等にリッド下第2係止片14が上下に振動した場合であっても、リッド下第1係止片13とリッド下第2係止片14との当接音の発生を緩衝材20によって抑制することができる。
【0047】
また、車室1側へのリッド10の傾動をリッド下第2係止片14が規制するリッド脱落防止状態において、車室1側へ傾動するリッド10の慣性力は、リッド本体11を第2係止片支持板部26の上端から引き剥がす引張り荷重として作用するが、クリップ挿通孔25の上方の第2係止片支持板部26とリッド本体11との境界領域を補強リブ30によって補強しているので、リッド本体11や第2係止片支持板部26の破損によるリッド10の脱落を防止することができる。
【0048】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、リッド下第1係止片13とリッド本体11とを一体形成し、リッド下第2係止片14をリッド本体11と別体に形成したが、リッド下第1係止片13をリッド本体11と別体に形成してリッド本体11に取付けてもよく、また、リッド下第2係止片14とリッド本体11とを一体形成してもよい。
【0050】
上記実施形態では、リッド下第2係止片14を2ピースクリップ35によってリッド本体11側に取付けたが、回転不能に固定する形態を含む他の方法によってリッド下第2係止片14をリッド本体11側に取付けてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、リッド下第1係止片13がパネル下係止孔7の後縁部に係止し、リッド下第2係止片14がパネル下係止孔7の前縁部に係止する形態を例示したが、リッド下第1係止片13及びリッド下第2係止片14がパネル下係止孔7の周縁部の何れの部分に係止するかは上記に限定されず、上記以外の部分に係止するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、パネル開口が設けられたパネル部材に車室側からリッドが取付けられる車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:車室
2:インストルメントパネル(インパネ、パネル部材)
3:インパネコア
4:表皮材
5:パネル開口
6:パネル上係合部
7:パネル下係止孔
10:リッド
11:リッド本体
12:リッド上係止部
13:リッド下第1係止片
14:リッド下第2係止片
15:縦リブ
16:横リブ
17:クリップ取付板
18:弾性クリップ
20:緩衝材
21:第1係止片上板部
22:第1係止片下板部
23:第1係止板
24:係止凹部
25:クリップ挿通孔(第2係止片支持部)
26:第2係止片支持板部
27:上リブ
28:中リブ
29:下リブ
30:補強リブ
31:第2係止片上板部
32:第2係止片下板部
33:第2係止片側板部
34:クリップ挿通孔
35:2ピースクリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-12-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル開口が設けられたパネル部材に車室側から取付けられるリッドの取付構造であって、
前記パネル部材は、パネル上係合部と、前記パネル上係合部よりも下方に配置されるパネル下係止孔と、を備え、
前記リッドは、前記パネル部材に取付けられたリッド取付状態において、前記パネル開口を閉止するリッド本体と、前記パネル上係合部に係合するリッド上係止部と、前記パネル下係止孔の周縁部に係止して前記車室側への前記リッドの移動を規制するリッド下第1係止片と、前記パネル下係止孔を挿通して前記パネル部材側に係止しないリッド下第2係止片と、を備え、
前記リッド下第1係止片は、前記リッド本体と一体形成され、
前記リッド下第2係止片は、前記リッド本体と別体に形成されて前記リッド本体に対して取付けられ、
前記リッド取付状態の前記リッドが下端側を中心として前記車室側へ傾動することにより、前記リッド上係止部が前記パネル上係合部から外れて離間した場合に、前記リッド下第2係止片が前記パネル下係止孔の周縁部に係止して前記リッドの前記車室側への傾動を規制する
ことを特徴とするリッドの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のリッドの取付構造であって、
前記リッド下第2係止片は、前記リッドを前記パネル部材に取付ける際に、前記パネル部材側に係合しない
ことを特徴とするリッドの取付構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のリッドの取付構造であって、
前記リッド下第2係止片は、前記リッド本体に対して上下動可能に取付けられて前記リッド下第1係止片に上方から重なり、
前記リッド下第1係止片と前記リッド下第2係止片との間には、緩衝材が介在する
ことを特徴とするリッドの取付構造。
【請求項4】
請求項1~請求項の何れか1項に記載のリッドの取付構造であって、
前記リッドには、前記リッド本体の裏面から起立して上下方向に延びる第2係止片支持板部と、前記リッド本体と前記第2係止片支持板部との境界領域を補強する補強リブとが、前記リッド本体と一体形成され、
前記第2係止片支持板部は、前記リッド下第2係止片を支持する第2係止片支持部を有し、
前記補強リブは、前記第2係止片支持部の上方で前記第2係止片支持板部の側面と前記リッド本体の裏面とを連結する
ことを特徴とするリッドの取付構造。