IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095434
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】水性表面処理剤および表面処理金属
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20230629BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20230629BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20230629BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C08L101/02
C08K3/01
C23C26/00 A
C23C28/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211316
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】315006377
【氏名又は名称】日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔大
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 朗
(72)【発明者】
【氏名】和田 優子
(72)【発明者】
【氏名】松井 徳純
【テーマコード(参考)】
4J002
4K044
【Fターム(参考)】
4J002AA071
4J002DD036
4J002DF036
4J002DH026
4J002FD206
4J002GH00
4J002GT00
4J002HA04
4K044AA02
4K044AA03
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA15
4K044BA21
4K044BB03
4K044BB04
4K044BC02
4K044CA18
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】金属にラミネート加工する場合に、耐電解液性を向上させることが可能な水性表面処理剤を提供する。
【解決手段】金属の表面処理に用いられる水性表面処理剤であって、三価クロム化合物(A)と、オキサゾリン基含有樹脂(B)と、を含み、オキサゾリン基含有樹脂(B)の固形分質量に対する三価クロム化合物(A)に含まれる三価クロムの質量の比が0.2以上2.8以下であり、水性表面処理剤の有機成分の固形分質量のうち、35%以上がオキサゾリン基含有樹脂(B)である、水性表面処理剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の表面処理に用いられる水性表面処理剤であって、
三価クロム化合物(A)と、オキサゾリン基含有樹脂(B)と、を含み、
前記オキサゾリン基含有樹脂(B)の固形分質量に対する前記三価クロム化合物(A)に含まれる三価クロムの質量の比が0.2以上2.8以下であり、
前記水性表面処理剤の有機成分の固形分質量のうち、35%以上が前記オキサゾリン基含有樹脂(B)である、水性表面処理剤。
【請求項2】
有機キレート剤(C)をさらに含む、請求項1に記載の水性表面処理剤。
【請求項3】
前記有機キレート剤(C)は、水酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有する、請求項2に記載の水性表面処理剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の水性表面処理剤で金属を表面処理することにより形成される皮膜を有する、表面処理金属。
【請求項5】
前記金属は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鉄もしくは鉄合金、または、銅もしくは銅合金である、請求項4に記載の表面処理金属。
【請求項6】
前記金属は、めっき処理されている、請求項4または5に記載の表面処理金属。
【請求項7】
前記皮膜を有する金属がラミネート加工されている、請求項4から6のいずれかに記載の表面処理金属。
【請求項8】
電池用外装材である、請求項7に記載の表面処理金属。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性表面処理剤および表面処理金属に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属を保護し、意匠を施すために、金属にラミネートフィルムを接着させることにより、金属をラミネート加工している。
【0003】
ラミネート加工されている金属の美観や耐食性を維持するためには、ラミネートフィルムの密着性を向上させることが重要であり、例えば、下地処理剤でアルミニウムまたはアルミニウム合金を処理する方法が知られている(特許文献1参照)。ここで、下地処理剤は、水溶性ジルコニウム化合物と、水溶性または水分散性アクリル樹脂と、水溶性または水分散性熱硬化型架橋剤と、を含む。
【0004】
一方、ラミネートフィルムは、加工性、耐食性、バリア性等に優れることに加え、金属にラミネート加工する際に、揮発性有機化合物が発生しにくいため、ラミネート加工されている金属は、例えば、電池用外装材に適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-265821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ラミネート加工されている金属を電池用外装材に適用する場合には、耐電解液性を向上させることが望まれている。
【0007】
本発明は、金属をラミネート加工する場合に、耐電解液性を向上させることが可能な水性表面処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、金属の表面処理に用いられる水性表面処理剤であって、三価クロム化合物(A)と、オキサゾリン基含有樹脂(B)と、を含み、前記オキサゾリン基含有樹脂(B)の固形分質量に対する前記三価クロム化合物(A)に含まれる三価クロムの質量の比が0.2以上2.8以下であり、前記水性表面処理剤の有機成分の固形分質量のうち、35%以上が前記オキサゾリン基含有樹脂(B)である、水性表面処理剤に関する。
【0009】
(2) 有機キレート剤(C)をさらに含む、(1)に記載の水性表面処理剤。
【0010】
(3) 前記有機キレート剤(C)は、水酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有する、(2)に記載の水性表面処理剤。
【0011】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の水性表面処理剤で金属を表面処理することにより形成される皮膜を有する、表面処理金属。
【0012】
(5) 前記金属は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鉄もしくは鉄合金、または、銅もしくは銅合金である、(4)に記載の表面処理金属。
【0013】
(6) 前記金属は、めっき処理されている、(4)または(5)に記載の表面処理金属。
【0014】
(7) 前記皮膜を有する金属がラミネート加工されている、(4)から(6)のいずれかに記載の表面処理金属。
【0015】
(8) 電池用外装材である、(7)に記載の表面処理金属。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属にラミネート加工する場合に、耐電解液性を向上させることが可能な水性表面処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
[水性表面処理剤]
本実施形態の水性表面処理剤は、金属の表面処理に用いられる。
【0019】
金属としては、特に限定されないが、例えば、鉄、亜鉛、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。すなわち、金属は、合金であってもよい。合金成分としては、例えば、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、ケイ素、マンガン、クロム、チタン、モリブデン等を含んでいてもよい。これらの中でも、加工性および密着性の観点から、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鉄もしくは鉄合金、または、銅もしくは銅合金が好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金がさらに好ましい。アルミニウム合金としては、例えば、Al-Cu系合金、Al-Mn系合金、Al-Si系合金、Al-Mg系合金、Al-Mg-Si系合金、Al-Zn-Mg系合金、アルミダイカスト(ADC材)等が挙げられる。後述する本実施形態の表面処理金属を電池用外装材として用いる場合、アルミニウム合金としては、8079材等を用いることが好ましい。他の用途に適用することが可能なアルミニウム合金としては、例えば、飲料・食品缶ボディー用の3004材、3104材、3005材等、飲料・食品缶蓋材用の5052材、5182材等、乾電池容器用の1050材、1100材、1200材等、電極材用の8021材等が挙げられる。鉄合金としては、例えば、SPCC、SPCD、SPCE等の冷間圧延鋼板、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。SUSとしては、例えば、SUS304、SUS301、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、SUS430等のフェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼等が挙げられる。亜鉛合金としては、例えば、Zn-Al系合金等が挙げられる。銅合金としては、例えば、黄銅等が挙げられる。ニッケル合金としては、例えば、Ni-P合金等が挙げられる。
【0020】
(合金を含む)金属は、めっき処理されていてもよい。めっき種としては、例えば、ニッケル、亜鉛、クロム、鉄、スズ、銅、銀、白金、金等の金属が挙げられ、二種以上の金属を併用してもよい。めっき方法としては、例えば、電気めっき、無電解めっき、溶融めっき、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等が挙げられる。めっき処理されている金属としては、例えば、Niめっき鋼材、Niめっき銅材、Znめっき鋼材、Zn-Niめっき鋼材等が挙げられる。めっき処理される金属(母材)としては、例えば、SPCC、SPCD、SPCE等の冷間圧延鋼板、銅板等を用いることができる。
【0021】
本実施形態の水性表面処理剤は、三価クロム化合物(A)と、オキサゾリン基含有樹脂(B)と、を含む。ここで、本実施形態の水性表面処理剤は、六価クロム化合物を含まない六価クロムフリー水性表面処理剤であることが好ましい。
【0022】
(オキサゾリン基含有樹脂(B))
オキサゾリン基含有樹脂(B)は、ラミネートフィルムや接着層に含まれるカルボン酸基、カルボン酸無水物、芳香族チオール基、フェノール基等と反応して結合を形成することで、耐電解液性を向上させることができる。オキサゾリン基含有樹脂(B)としては、オキサゾリン基を有しているものであれば、特に限定されず、オキサゾリン基含有樹脂(B)としては、例えば、主鎖がアクリル骨格のオキサゾリン基含有樹脂、主鎖がスチレン/アクリル骨格のオキサゾリン基含有樹脂、主鎖がスチレン骨格のオキサゾリン基含有樹脂、及び主鎖がアクリロニトリル/スチレン骨格のオキサゾリン基含有樹脂等を用いることができる。水溶媒中での安定性に優れ、塗装後の外観が無色透明である観点から、主鎖がアクリル骨格のオキサゾリン基含有樹脂が好ましく用いられる。例えば、主鎖がアクリル骨格のオキサゾリン基含有樹脂として、「エポクロスWSシリーズ」(商品名、日本触媒製)が挙げられる。オキサゾリン基含有樹脂(B)のオキサゾリン価は120~240g(固形分)/当量が好ましい。オキサゾリン基含有樹脂(B)の数平均分子量は10000~50000が好ましい。数平均分子量は、ポリスチレンを標準とするGPC法により決定される。
【0023】
本明細書におけるオキサゾリン価とは、オキサゾリン基1mol当たりの重合体の固形分重量(Weight per oxazoline equivalent:オキサゾリン基当量)(g(固形分)/当量)のことを表す。すなわち、オキサゾリン価が小さいほど重合体の単位重合体固形分重量当たりのオキサゾリン基の物質量は多く、オキサゾリン価が大きいほど重合体の単位重合体固形分重量当たりのオキサゾリン基の物質量は少ないということを表す。
【0024】
オキサゾリン基含有樹脂(B)としては、オキサゾリン基を有するモノマー由来の構造単位を有する樹脂を使用してもよいし、上記に例示したようなアクリル骨格、スチレン/アクリル骨格、スチレン骨格、アクリロニトリル/スチレン骨格等の主鎖を有する任意の樹脂に対して変性によりオキサゾリン基を導入した樹脂を使用してもよい。
【0025】
水性表面処理剤には、三価クロム化合物(A)の有機成分や有機キレート剤(C)等の、オキサゾリン基含有樹脂(B)以外の有機成分が含まれていてもよい。本実施形態の水性表面処理剤の有機成分の固形分質量のうち、35%以上がオキサゾリン基含有樹脂(B)であり、57%以上がオキサゾリン基含有樹脂(B)であることが好ましい。なお、三価クロム化合物(A)として、後述する酢酸クロム(III)、シュウ酸クロム(III)、ギ酸クロム(III)等の有機イオンを有する化合物を用いる場合、上記有機イオンは、上記オキサゾリン基含有樹脂(B)以外の有機成分とみなして、上記水性表面処理剤の有機成分の固形分質量を算出するものとする。
【0026】
(三価クロム化合物(A))
三価クロム化合物(A)としては、特に限定されないが、例えば、フッ化クロム(III)、硝酸クロム(III)、リン酸クロム(III)、酢酸クロム(III)、塩化クロム(III)、硫酸クロム(III)、シュウ酸クロム(III)、ギ酸クロム(III)、水酸化クロム(III)、酸化クロム(III)、臭化クロム(III)、ヨウ化クロム(III)等が挙げられる。
【0027】
オキサゾリン基含有樹脂(B)の固形分質量に対する三価クロム化合物(A)に含まれる三価クロムの質量の比が0.2以上2.8以下であり、0.38以上2.54以下であることが好ましい。上記質量の比が0.2未満である場合、または2.8を超える場合は、金属にラミネート加工する場合に、耐電解液性が低下する。
【0028】
本実施形態の水性表面処理剤中の三価クロム化合物(A)に含まれる三価クロムの含有量は、特に限定されないが、例えば、500質量ppm以上60000質量ppm以下である。一実施形態では、水性表面処理剤中の三価クロム化合物(A)に含まれる三価クロムの含有量は、1000質量ppm以上、1500質量ppm以上、2000質量ppm以上、2500質量ppm以上、3000質量ppm以上、3500質量ppm以上、4000質量ppm以上、4500質量ppm以上、5000質量ppm以上、5500質量ppm以上、6000質量ppm以上、6500質量ppm以上、7000質量ppm以上、7500質量ppm以上、8000質量ppm以上、8500質量ppm以上、9000質量ppm以上、9500質量ppm以上、10000質量ppm以上、10500質量ppm以上、11000質量ppm以上、11500質量ppm以上、12000質量ppm以上、13000質量ppm以上、14000質量ppm以上、15000質量ppm以上、16000質量ppm以上、17000質量ppm以上、18000質量ppm以上、19000質量ppm以上、20000質量ppm以上、30000質量ppm以上、40000質量ppm以上、50000質量ppm以上、59500質量ppm以上である。別の実施形態では、水性表面処理剤中の三価クロム化合物(A)に含まれる三価クロムの含有量は、59500質量ppm以下、50000質量ppm以下、40000質量ppm以下、30000質量ppm以下、20000質量ppm以下、19000質量ppm以下、18000質量ppm以下、17000質量ppm以下、16000質量ppm以下、15000質量ppm以下、14000質量ppm以下、13000質量ppm以下、12000質量ppm以下、11500質量ppm以下、11000質量ppm以下、10500質量ppm以下、10000質量ppm以下、9500質量ppm以下、9000質量ppm以下、8500質量ppm以下、8000質量ppm以下、7500質量ppm以下、7000質量ppm以下、6500質量ppm以下、6000質量ppm以下、5500質量ppm以下、5000質量ppm以下、4500質量ppm以下、4000質量ppm以下、3500質量ppm以下、3000質量ppm以下、2500質量ppm以下、2000質量ppm以下、1500質量ppm以下、1000質量ppm以下である。
【0029】
(有機キレート剤(C))
本実施形態の水性表面処理剤は、有機キレート剤(C)をさらに含むことが好ましい。これにより、本実施形態の水性表面処理剤の貯蔵安定性が向上する。ここで、有機キレート剤(C)は、1分子中に複数の配位座を有する配位子(多座配位子)であり、1分子中に複数の官能基を有する。
【0030】
有機キレート剤(C)は、水酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有することが好ましい。
【0031】
水酸基を有する有機キレート剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、カテコール、ピロガロール、ヘキサヒドロキシベンゼン、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジニトリロ三酢酸、1,3-ジアミノ-2-プロパノール-N,N,N’,N’-四酢酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、没食子酸、ピロガロール-4-カルボン酸、2-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル安息香酸、グリセロリン酸等が挙げられる。
【0032】
カルボキシル基を有する有機キレート剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、メリト酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、ニトリロ三酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジニトリロ三酢酸、1,3-ジアミノ-2-プロパノール-N,N,N’,N’-四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸、エチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-六酢酸、1,3-プロパンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,5-ヘプタンジカルボン酸、1,2,3-ブタントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサカルボン酸、没食子酸、ピロガロール-4-カルボン酸、2-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル安息香酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、3-ホスホノプロピオン酸、4-ホスホノ酪酸、ホスホセリン等が挙げられる。
【0033】
なお、カルボキシル基を有する有機キレート剤(C)は、カルボキシル基の一部または全部が中和されて、金属塩またはアンモニウム塩となっていてもよい。
【0034】
ホスホン酸基を有する有機キレート剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、メチレンジホスホン酸、1,2-エチレンジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチルホスホン酸)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、3-ホスホノプロピオン酸、4-ホスホノ酪酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸等が挙げられる。
【0035】
なお、ホスホン酸基を有する有機キレート剤(C)は、ホスホン酸基の一部または全部が中和されて、金属塩またはアンモニウム塩となっていてもよい。
【0036】
リン酸基を有する有機キレート剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、フィチン酸、O-ホスホリルエタノールアミン、ホスホセリン、グリセロリン酸等が挙げられる。
【0037】
なお、リン酸基を有する有機キレート剤(C)は、リン酸基の一部または全部が中和されて、金属塩またはアンモニウム塩となっていてもよい。
【0038】
アミノ基を有する有機キレート剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、O-ホスホリルエタノールアミン、ホスホセリン等が挙げられる。
【0039】
なお、アミノ基を有する有機キレート剤(C)は、アミノ基の一部または全部が酸により中和されて、塩となっていてもよい。
【0040】
本実施形態の水性表面処理剤中の有機キレート剤(C)の固形分含有量は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上30質量%以下である。一実施形態では、水性表面処理剤中の有機キレート剤(C)の固形分含有量は、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、28質量%以上である。別の実施形態では、水性表面処理剤中の有機キレート剤(C)の固形分含有量は、28質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下である。
【0041】
本実施形態の水性表面処理剤中の水の含有量は、特に限定されないが、例えば、60質量%以上99.9質量%以下である。
【0042】
本実施形態の水性表面処理剤のpHは、1以上11以下であることが好ましく、2以上9以下であることがさらに好ましい。本実施形態の水性表面処理剤のpHが1以上11以下であると、本実施形態の水性表面処理剤の貯蔵安定性が向上する。
【0043】
本実施形態の水性表面処理剤は、pHを調整するために、必要に応じて、酸または塩基をさらに含んでいてもよい。酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、フッ化水素酸等の無機酸;酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸等が挙げられる。塩基としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基;トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基等が挙げられる。なお、上記有機酸および有機塩基は、上記オキサゾリン基含有樹脂(B)以外の有機成分とみなして、上記水性表面処理剤の有機成分の固形分質量を算出するものとする。
【0044】
本実施形態の水性表面処理剤は、必要に応じて、架橋剤、表面調整剤、消泡剤、可塑剤、酸化防止剤、抗菌剤、着色剤等の公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。なお、上記添加剤のうち、有機分子、金属錯体または有機金属化合物等のうち金属を除いた部分、およびシリコーン等のうちシロキサン結合(-Si-O-Si-)を除いた部分は、上記オキサゾリン基含有樹脂(B)以外の有機成分とみなして、上記水性表面処理剤の有機成分の固形分質量を算出するものとする。
【0045】
架橋剤としては、三価クロム化合物(A)やオキサゾリン基含有樹脂(B)と結合を形成することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、カルボン酸基含有アクリルエマルション、芳香族チオール化合物、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、有機チタン化合物等が挙げられる。
【0046】
表面調整剤としては、例えば、ノニオン性又はカチオン性の界面活性剤、ポリアセチレングリコールのポリエチレンオキサイド又はポリプロピレンオキサイドの付加物、アセチレングリコール化合物等が挙げられる。
【0047】
消泡剤としては、例えば、鉱油系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、シリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0048】
可塑剤としては、例えば、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。
【0049】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。具体的には、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-s-ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、2,6-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2-t-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、プロピルガレート、オクチルガレート、ラウリルガレート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ビス(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、2,2’-ジメチレンビス(6-α-メチルベンジル-p-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-t-ブチル-4-メチル-6-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタラート、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジおよびトリチオビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ3’,5’-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、カルシウム(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルモノエチルホスフォネート)、アルキル化ビスフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ブチル酸,[3,3-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)酪酸]エチレン、トリフェニルホスファイト、ジフェニルノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノおよびジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルモノトリデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)フルオロホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジトリデシルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリトリデシルホスファイト、ジブチルハイドロゲンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスフォナイト、4,4’-イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12~C15)ホスファイト、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニルホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラフェニルテトラトリデシルペンタエリスリトールテトラホスファイト、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、3,4,5,6-ジベンゾ-1,2-オキサホスファン-2-オキシド、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、水素添加ビスフェノールAホスファイトポリマー、3,3’-チオジプロピオン酸ジラウリル(DLTTDP)、3,3’-チオジプロピオン酸ジトリデシル、3,3’-チオジプロピオン酸ジミリスチル(DMTDP)、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル(DSTDP)、3,3’-チオジプロピオン酸ラウリルステアリル、ペンタエリスリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオネート)、ステアリルチオプロピオンアミド、ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキル(C12~C14)チオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド、ジオクタデシルジスルフィド、2-メルカプトンベンズイミダゾール、2-メルカプト-6-メチルベンズイミダゾール、1,1’-チオビス(2-ナフトール)等が挙げられる。
【0050】
抗菌剤としては、例えば、ジンクピリチオン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、1,2-ベンズイソチアゾリン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N-ジメチル-N’-フェニル-N’-(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジサルファイド、N-(トリクロロメチルチオ)-4-シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシイミド、メタホウ酸バリウム、イソチオシアン酸アリル;ポリオキシアルキレントリアルキルアンモニウム、有機シリコーン第4級アンモニウム塩、ヘキサメチレンビググアニド塩酸塩等の第4級アンモニウム塩;トリ-n-ブチルテトラデシルホスホニウムクロリド等の第4級ホスホニウム塩;ポリフェノール系抗菌剤、フェニルアミド系抗菌剤、ビクアニド系抗菌剤等が挙げられる。
【0051】
着色剤としては、例えば、キナクリドン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、不溶性アゾ系、ナフトール系、フラバンスロン系、アンスラピリミジン系、キノフタロン系、ピランスロン系、ピラゾロン系、チオインジゴ系、アンスアンスロン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、インダンスロン系等の有機顔料;ニッケルジオキシンイエロー、銅アゾメチンイエロー等の金属錯体;酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物;硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩;カーボンブラック、アルミニウム、雲母等の無機顔料等の顔料、アゾ系、キノリン系、スチルベン系、チアゾール系、インジゴイド系、アントラキノン系、オキサジン系等の染料等が挙げられる。
【0052】
本実施形態の水性表面処理剤は、三価クロム化合物(A)と、オキサゾリン基含有樹脂(B)と、を所定量含むので、塗装作業性および貯蔵安定性に優れるとともに、後述する本実施形態の表面処理金属は、充分なラミネートフィルムとの密着性を有する。三価クロム化合物と、オキサゾリン基含有樹脂と、を単に含む水性表面処理剤は、表面処理金属の耐食性を向上させることができるが、本実施形態の水性表面処理剤は、後述する本実施形態の表面処理金属のラミネートフィルムとの密着性や耐電解液性を向上させるとともに、耐食性を向上させることができる。従って、本実施形態の水性表面処理剤は、ラミネート加工後のラミネートフィルムとの密着性、耐電解液性および耐食性を求められる表面処理金属の製造に特に好ましく用いられる。
【0053】
[表面処理金属]
本実施形態の表面処理金属は、本実施形態の水性表面処理剤で金属を表面処理することにより形成される皮膜を有する。
【0054】
金属の形状としては、特に限定されないが、例えば、箔状もしくは板状等が挙げられる。箔状もしくは板状の金属を用いる場合は、片面だけを水性表面処理剤で表面処理してもよいし、両面を水性表面処理剤で表面処理してもよい。また、両面を表面処理する場合は、単一の水性表面処理剤で両面を表面処理してもよいし、片面毎に別の組成の水性表面処理剤で表面処理してもよい。
【0055】
本実施形態の表面処理金属は、皮膜を有する金属がラミネート加工されていてもよい。すなわち、皮膜を有する金属にラミネートフィルムが接着していてもよい。皮膜を有する箔状もしくは板状の金属を用いる場合は、片面だけにラミネートフィルムが接着していてもよいし、両面にラミネートフィルムが接着していてもよい。また、両面にラミネートフィルムが接着している場合は、同種のラミネートフィルムが両面に接着していてもよいし、片面毎に別の種類のラミネートフィルムが接着していてもよい。
【0056】
ラミネートフィルムを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンイソフタレート系樹脂、共重合ポリエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ナイロン系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリメタキシリレンアジバミド系樹脂等が挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
なお、ラミネートフィルムは、1軸延伸されていてもよいし、2軸延伸されていてもよい。
【0058】
ラミネートフィルムとしては、単層フィルムを使用してもよいし、複数(種)のフィルムが積層されている多層フィルムを使用してもよい。複数のフィルムを積層する場合、各フィルムを、接着剤を介して積層してもよいし、接着剤を介さずに直接積層してもよい。接着剤は、1液硬化型接着剤であってもよく、2液硬化型接着剤であってもよい。接着剤を構成する樹脂成分としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコーン系樹脂が挙げられる。接着剤を介さずに、複数のフィルムを直接積層する方法としては、例えば、共押出法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。
【0059】
本実施形態の表面処理金属は、皮膜およびラミネートフィルム以外の層(他の層)を有していてもよい。他の層は皮膜とラミネートフィルムの間に設置してもよいし、ラミネートフィルムの上に設置してもよい。また、ラミネートフィルムを使用せず、皮膜の上に他の層を設置してもよい。
【0060】
他の層としては、特に限定されないが、例えば、接着層、塗膜、ハードコート層、防汚層、防眩層、意匠層、印刷層、偏光板、着色層、液晶層、導光板、透明導電膜、スペーサー等の公知の層が挙げられる。他の層は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
接着層は、1液系の接着剤により形成されていてもよいし、2液系の接着剤により形成されていてもよい。
【0062】
接着層の形成に使用できる接着剤を構成する樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ系樹脂、クロロプレンゴム系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ化エチレン-プロピレン共重合体系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤の組み合わせとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂と変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂と酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂と金属変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂とポリエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂と酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂と金属変性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0063】
ポリオレフィン系樹脂は、酸変性ポリオレフィン系樹脂および金属変性ポリオレフィン系樹脂を含む。酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸やその無水物で酸変性したポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィンを不飽和カルボン酸やその無水物で酸変性したポリオレフィン系樹脂としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。酸変性ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、三井化学製のアドマー(NB508、NF518、LB548、QB510、QB550、LB458、NF528、LF128、LF308、NF308、NF548、NF558、SF600、SF700、SF731、SF715、SE800、NE060、NE065、NE090、XE070、HE040、QE060、QF500、QF551、QF570、NR106、NS101等)、三井化学製のユニストール(R-200X、R-303XE、E-200EM、A-200PM、A-201PM、H-100、H-200、XP01A、XP01B/11B、XP03F、XP04A等)、三菱化学製のモディック(P502、P512VB、P553A、P674V、P565、P555、P908H511、H503、H514、L502、L504、M142、M512、M522、M545、A543、F502、F573、F534A等)、ユニチカ製のアローベース(SB-1200、SE-1200、SD-1200、DA1010、DC-1010、YA-6010等)等が挙げられる。
【0064】
接着層の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、押出成形法、ディスパージョン法等が挙げられる。
【0065】
本実施形態の表面処理金属は、電池用外装材に適用することができるが、例えば、食品用包装材、食品缶のボディーもしくは蓋材、飲料缶のボディーもしくは蓋材、アルミパウチ等の金属箔を含む軟包装材または表面保護材、電池用セパレーター、タブリード、コンデンサーケース、熱交換器、電子機器筐体、金属製建材、車両のボディー、エンジン部品もしくはシャーシ部品、航空機のボディー、主翼、フレーム、燃料タンク、エンジンタービン、エンジンファンもしくは部品、鉄道車両の車体、台車もしくは部品、船、ロケット部材、自転車部品、自動販売機、エレベーターのかご側板、調速機もしくは巻上機、エスカレーターのステップもしくはインテリアパネル、工作機械、射出成型機、産業用ロボットの構造部材もしくは駆動部材、半導体製造装置、ディスプレイ、潜水艦、信号、自動織機、トンネル掘削機、パイプライン、道路標識、発電機、ごみ焼却炉、排ガス処理装置、モーター、トランス、電子回路、電球、光電子増倍管、ゴルフクラブ、アンテナ、ボルト、ナット、ねじ等に適用してもよい。
【0066】
[表面処理方法]
本実施形態の表面処理方法は、本実施形態の水性表面処理剤で金属を表面処理することにより皮膜を形成する皮膜形成工程を含む。
【0067】
皮膜形成工程は、例えば、本実施形態の水性表面処理剤を金属の表面に塗布した後、乾燥させる。
【0068】
本実施形態の水性表面処理剤を塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、ロールコーター塗装、グラビアコーター塗装、リバースコーター塗装、スロットダイコーター塗装、リップコーター塗装、ナイフコーター塗装、ブレードコーター塗装、チャンバードクターコーター塗装、エアナイフコーター塗装、カーテンコート塗装、スピンコート塗装、刷毛塗り塗装、ローラー塗装、バーコーター塗装、ディップ塗装、アプリケーター塗装、スプレー塗装、流し塗り塗装、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0069】
乾燥方法としては、特に限定されないが、公知の方法を用いることができ、例えば、オーブンを用いて乾燥させる方法、熱空気の強制的循環により乾燥させる方法、IHヒーター等を用いた電磁誘導加熱炉により乾燥させる方法等の加熱乾燥方法が挙げられる。加熱乾燥方法の条件は、例えば、40℃以上230℃以下の温度で2秒以上180秒以下とすることができる。ここで、加熱乾燥時に設定する風量、風速等の条件は、任意に設定できる。
【0070】
皮膜形成工程は、本実施形態の水性表面処理剤を金属の表面に塗布しながら、乾燥させてもよい。例えば、本実施形態の水性表面処理剤を、予熱しておいた金属の表面に塗布し、乾燥させてもよい。
【0071】
皮膜形成工程における乾燥後の皮膜の形成量は、0.1mg/m以上5000mg/m以下であることが好ましく、1mg/m以上500mg/m以下であることがさらに好ましい。
【0072】
本実施形態の表面処理方法は、皮膜を有する金属をラミネート加工するラミネート加工工程をさらに含んでいてもよい。
【0073】
皮膜を有する金属をラミネート加工する方法としては、特に限定されないが、例えば、ドライラミネート法、ヒートラミネート法、押出ラミネート法等の公知の方法を用いることができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で、上記の実施形態を適宜変更してもよい。
【実施例0075】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1~24、比較例1~7]
イオン交換水、三価クロム化合物(A)、オキサゾリン基含有樹脂(B)および有機キレート剤(C)を混合し、水性表面処理剤を得た。なお、比較例6、7においては、水性表面処理剤の構成成分として、表1に示すその他の有機成分を用いた。
【0077】
表1に、三価クロム化合物(A)、オキサゾリン基含有樹脂(B)および有機キレート剤(C)の種類および含有量を示す。実施例23においては、2種類の有機キレート剤(C)を併用した。
【0078】
【表1】
【0079】
ここで、表1における略号の定義を以下に示す。
B1:オキサゾリン基含有樹脂;エポクロスWS300(オキサゾリン価130g(固形分)/当量、数平均分子量40000、日本触媒製)
B2:オキサゾリン基含有樹脂;エポクロスWS500(オキサゾリン価220g(固形分)/当量、数平均分子量20000、日本触媒製)
B3:オキサゾリン基含有樹脂;エポクロスWS700(オキサゾリン価220g(固形分)/当量、数平均分子量20000、日本触媒製)
【0080】
PDTA:1,3-プロパンジアミン四酢酸
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
EDPMT:エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸
PBTC:2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸
IP6:フィチン酸
PAA:ポリアクリル酸;ジュリマーAC-10L(東亜合成製)
【0081】
[一次防錆処理(皮膜の形成)]
水性表面処理剤で、板厚40μmの金属板(表3参照)を表面処理することにより皮膜を形成した。具体的には、サーフクリーナー330(日本ペイント・サーフケミカルズ製)の2質量%希釈液を用いて、65℃で3秒間金属板を脱脂した。次に、バーコーター(#6)を用いて、水性表面処理剤を塗布した後、熱風式オーブンを用いて、素材温度190℃以上で2分間乾燥させた。
【0082】
[ラミネート方法]
皮膜が形成された金属板をラミネート加工した。具体的には、接着剤としての、無水マレイン酸変性ポリプロピレンディスパージョンを、乾燥時の塗布量が3g/mとなるように、金属板の表面に形成された皮膜上に塗布した後、乾燥させ、接着層を形成した。次に、190℃、0.38MPaの条件で、接着層が形成された金属板にポリプロピレンフィルムを加熱圧着させた。
【0083】
[ラミネートフィルムの密着性]
ラミネート加工された金属板を150mm×15mmのサイズに切断し、試験片を得た。次に、卓上形精密万能試験機オートグラフAGS-5KNX(島津製作所製)を用いて、試験片の金属板からポリプロピレンフィルムを剥離速度50mm/分で180度の角度で剥離する際の剥離強度を測定し、ラミネートフィルムの密着性を評価した。
【0084】
[耐電解液性]
1MのLiPFがエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶媒(体積比1/1/1)に溶解している電解液LBG-00015(キシダ化学製)にイオン交換水を1000ppm添加し、試験用電解液を得た。
【0085】
試験片を85℃の試験用電解液中に14日間浸漬した後、上記と同様にして、剥離強度を測定し、耐電解液性を評価した。
【0086】
表2に、ラミネート加工された金属板のラミネートフィルムの密着性および耐電解液性の評価結果を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
ここで、表2における略号の定義を以下に示す。
Al板:アルミニウム合金板(8079材)
SUS板:ステンレス鋼板(SUS304)
Niめっき鋼板:ニッケルめっき鋼板(母材:SPCC)
NiめっきCu板:ニッケルめっき銅板
EG板:電気亜鉛めっき鋼板(母材:SPCC)
【0089】
表2の結果より、各実施例に係る水性表面処理剤は、各比較例に係る水性表面処理剤と比較して、密着性および耐電解液性が高い結果が明らかである。