(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095447
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】積層装置および積層方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/36 20060101AFI20230629BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20230629BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C43/18
B29C33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211343
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆幸
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AD05
4F202AD08
4F202AD20
4F202AJ02
4F202AJ05
4F202AR20
4F202CA09
4F202CB01
4F202CK12
4F202CK17
4F202CK90
4F202CN01
4F202CQ01
4F204AC03
4F204AD08
4F204AD19
4F204AG03
4F204AH36
4F204AM28
4F204AR02
4F204AR06
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FB11
4F204FB22
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ01
4F204FQ38
(57)【要約】
【課題】 積層装置にて基材層と樹脂層を含む積層物を加圧した際に、積層物の端部付近の樹脂の積層物側面からの流動を抑制することのできる積層装置および積層方法を提供する。
【解決手段】 対向する盤312,314の間で基材層A1と樹脂層A2を含む積層物A4を所定の温度で加圧する積層装置3においては、少なくとも一方の盤312または314には、加圧面328aを構成する板状部材328と加圧ブロック体323または324との間に緩衝材327が備えられ、前記緩衝材327は周辺部327bの硬度が中央部327aの硬度よりも高くなっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス装置の対向する盤の間で基材層と樹脂層を含む積層物を所定の温度で加圧する積層装置において、
少なくとも一方の盤には、加圧面を構成する板状部材と加圧ブロック体との間に緩衝材が備えられ、前記緩衝材は周辺部の硬度が中央部の硬度よりも高い、積層装置。
【請求項2】
プレス装置の対向する盤の間で基材層と樹脂層を含む積層物を所定の温度で加圧する積層装置において、
少なくとも一方の盤には、加圧面を構成する板状部材と加圧ブロック体との間に緩衝材が備えられ、加圧時に前記緩衝材のうち少なくとも前記積層物の外周端部に対向する部分の前記板状部材の変形を抑制するための物理的性質が前記積層物の中央部に対向する部分の前記板状部材の変形を抑制するための物理的性質よりも大きい、積層装置。
【請求項3】
プレス装置の対向する盤の間で基材層と樹脂層を含む積層物を所定の温度で加圧する積層装置において、
少なくとも一方の盤には、加圧面を構成する板状部材と加圧ブロック体との間に緩衝材が備えられ、前記緩衝材のうち少なくとも前記積層物の外周端部に対向する部分の緩衝作用が前記積層物の中央部に対向する部分の緩衝作用よりも小さい、積層装置。
【請求項4】
プレス装置の対向する盤の間で基材層と樹脂層を含む積層物を所定の温度で加圧する積層装置において、
少なくとも一方の盤には、加圧面を構成する板状部材と加圧ブロック体との間に緩衝材が備えられ、前記緩衝材のうち少なくとも前記積層物の外周端部に対向する部分の熱伝導特性が前記積層物の中央部に対向する部分の熱伝導特性よりも小さい、積層装置。
【請求項5】
プレス装置の対向する盤の間で基材層と樹脂層を含む積層物を所定の温度で加圧する積層方法において、
少なくとも一方の盤には加圧面を構成する板状部材と加圧ブロック体との間に緩衝材が備えられ、
前記緩衝材の緩衝作用の小さい部分で前記板状部材を介して前記積層物の外周端部を含む部分を押圧し、前記緩衝材の緩衝作用の大きい部分で前記板状部材を介して前記積層物の中央部分を押圧する積層方法。
【請求項6】
前記積層物はビルドアップ基板であることを特徴とする請求項5に記載の積層方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置の対向する盤の間で基材層と樹脂層を含む積層物を所定の温度で加圧する積層装置および積層方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対向する盤の間で基材層と樹脂層を含む積層物を所定の温度で加圧する積層成形装置については、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1の積層成形装置は、相対向して近接・遠退可能に設けられた熱盤を備えており、前記熱盤間で被積層材と積層材とを所定の温度で加圧する積層成形装置であって、前記熱盤の対向面に、緩衝材層を介して、被積層材または積層材を加圧する弾性変形可能な鏡面板を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の積層成形装置については、緩衝材層は均一な材質のであり、前記緩衝材を介して鏡面板で被積層材と積層材(双方を合わせて積層物)の加圧を行うと、
本明細書とともに添付した図面の[
図7]のように積層物の端部付近に応力が集中して端部付近の樹脂が外部に向けて流動しやすいという問題があった。
【0005】
そこで本発明では、前記の問題を抑制し、基材層と樹脂層を含む積層物を、加圧面を構成する板状部材と加圧ブロック体との間に緩衝材が備えられる積層装置を用いて加圧した際に、積層物の端部付近の樹脂の積層物側面からの流動を抑制することのできる積層装置および積層方法を提供することを目的とする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の積層装置は、プレス装置の対向する盤の間で基材層と樹脂層を含む積層物を所定の温度で加圧する積層装置において、少なくとも一方の盤には、加圧面を構成する板状部材と加圧ブロック体との間に緩衝材が備えられ、前記緩衝材は周辺部の硬度が中央部の硬度よりも高い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層装置は、プレス装置の対向する盤の間で基材層と樹脂層を含む積層物を所定の温度で加圧する積層装置において、少なくとも一方の盤には、加圧面を構成する板状部材と加圧ブロック体との間に緩衝材が備えられ、前記緩衝材は周辺部の硬度が中央部の硬度よりも高いので、積層成形時に積層物の端部付近の樹脂の積層物側面からの流動を抑制することができる。また本発明の積層方法も同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の積層装置の概略説明図である。
【
図2】第1の実施形態の積層装置の真空積層装置の加圧時の要部の拡大断面図である。
【
図3】第1の実施形態の積層装置のプレス装置の加圧時の要部の拡大断面図である。
【
図4】第1の実施形態の積層装置のプレス装置の緩衝材と積層物の関係を示す説明図である。
【
図5】積層措置に用いられる緩衝材を複数例示した側面図である。
【
図6】積層装置に用いられる緩衝材を複数例示した平面図である。
【
図7】従来技術の積層装置による積層成形の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<積層成形システムと積層装置の構造の説明>
本発明の第1の実施形態の積層成形システム1について、真空積層装置2とプレス装置3を断面表示した
図1を参照して説明する。積層成形システム1は、真空積層装置2の後工程にプレス装置3が配置され、搬送装置によって送られるキャリアフィルムF1,F2により前記真空積層装置2から搬送された凹凸部を備えた基材層である基板A1と樹脂層であるである樹脂フィルムA2が積層された積層物である中間積層物A4が前記プレス装置3により加圧成形されるものである。
【0010】
基材層である基板A1と樹脂装置である樹脂フィルムA2の移送装置とテンション装置を兼ねる搬送装置10のキャリアフィルム巻出装置4は、下側の巻出ロール411および従動ロール412を備えている。前記巻出ロール411から巻き出された下キャリアフィルムF1は従動ロール412の部分で水平状態に向きが変更される。下キャリアフィルムF1が水平状態となった部分に、前工程から重ねられて送られてくる基材層である基板A1と樹脂層である樹脂フィルムA2を載置する載置ステージ部413が設けられている。また搬送装置10を構成するキャリアフィルム巻出装置4は、上側の巻出ロール414および従動ロール415を備えており、前記巻出ロール414から巻き出された上キャリアフィルムF2は従動ロール415の部分で基板A1と樹脂フィルムA2からなる積層物A3の上に重ねられる。これらキャリアフィルムF1,F2に挟まれて基板A1と樹脂フィルムA2が移送され、積層装置である真空積層装置2やプレス装置3においてキャリアフィルムF1,F2を介して積層成形が行われることにより、積層フィルムA2が溶融して装置部分に付着することを防止したり、特にプレス装置3においては中間積層物A4を加圧する際に一定の緩衝作用が付与されるという利点もある。また積層成形品A5の種類によってはプレス装置3から取り出された積層成形品A5の温度が低下した後に、キャリアフィルムF1,F2と積層成形品A5の間を剥離するので良好な状態での剥離または離型を行うことができる。
【0011】
搬送装置10を構成するキャリアフィルム巻出装置4の後工程に配置される真空積層装置2は、真空状態(減圧状態)のチャンバCh内において弾性膜体であるダイアフラム211等の加圧体により基板A1と樹脂フィルムA2からなる積層物A3を加圧し、1次成形品である中間積層物A4を積層成形するものである。真空積層装置2は、固定的に設けられた上盤212に対して下盤213が昇降機構214により昇降可能に設けられ、下盤213が上昇して上盤212と当接した際に内部にチャンバChが形成可能となっている。チャンバChは図示しない真空ポンプに接続され、減圧可能となっている。また上盤212の中央の下面には熱板215が取付けられ、熱板215の表面には図示しない耐熱性のゴム膜等の弾性シート216が金属プレート218に貼着される形で取り付けられているか、または直接取り付けられている。
【0012】
一方下盤213の中央の上面にも熱板217が取付けられている。また下盤213の前記熱板217の周囲の部分には弾性シートであるシリコーンゴムまたはフッ素ゴム等の耐熱性ゴム膜からなるダイアフラム211が熱板217の上面を覆うように取付けられている。そして図示しないコンプレッサにより加圧空気がダイアフラム211の裏面側に送られることによりダイアフラム211はチャンバCh内で膨出して熱板217との間で基板A1と樹脂フィルムA2を加圧する。なお真空積層装置2の弾性シートであるダイアフラム211は上盤に取付けられたものでもよい。
【0013】
本実施形態の真空積層装置2の加圧手段の一部を構成する弾性シートであるダイアフラム211は、
図2に示されるように周辺部211bの硬度が中央部211aの硬度よりも小さくなっている。ここでは
図5の(b)にようにダイアフラム211の全面積に対応するゴム材料Eaの中央部に凹部が設けられ、凹部に硬度の高いゴム材料Ebが貼着されている。これは前記弾性シートであるダイアフラム211のうちのうち少なくとも前記積層物A3の外周部A3bに対向する部分の弾性作用が前記積層物A3の中央部A3aに対向する部分の弾性率よりも小さくする目的のためである。前記を実現するための弾性シートであるダイアフラム211は、ゴム材料Ea,Ebを周辺部211bと中央部211aで変えてもよく、同一の素材であっても配合比率や気泡率を調整して硬度や弾性率のみが異なる種類の弾性体としたものでもよい。
【0014】
また上記した上盤側の弾性シート216についても、弾性シートであるダイアプラム21と同様に、周辺部216bの硬度が中央部216aの硬度よりも小さくなっている。ここでは弾性シート216の周辺部216bには硬度が小さい(弾性率が小さい)ゴム材料Ebが用いられ、中央部216aには硬度が相対的に大きい(弾性率が相対的に小さい)ゴム材料Eaが用いられている。なおダイアフラム211と弾性シート216のいずれか一方は全面同じゴム材料であってもよい。
【0015】
前記真空積層装置2の後工程に直列方向に配設されるプレス装置3は、真空積層装置2で加圧成形され凹凸部を備えた基材層である基板A1と樹脂層である樹脂フィルムA2とからなり樹脂フィルムA2の側に凹凸が残った状態の中間積層物A4を更に加圧してより一層平坦な積層成形品A5に加圧成形するものである。プレス装置3は、下方に設けられた略矩形のベース盤311と、前記ベース盤311の上方に位置する略矩形の固定盤である上盤312の四隅近傍の間にそれぞれ立設されたタイバ313を備えている。そしてプレス装置3は、略矩形の可動盤である下盤314がベース盤311と上盤312との間で昇降移動可能となっている。上盤312と下盤314の間には両方の盤の間の距離を検出するための位置センサ340が取り付けられている。また位置センサ340は、上盤側の加圧部材322と下盤側の加圧部材321の間に取り付けられ、加圧部材321,322の間の距離を検出するものでもよい。なお本発明において位置センサ340は必須のものではない。
【0016】
またベース盤311には加圧手段であって油圧により作動する1基の加圧シリンダ315が設けられ、加圧シリンダ315のラム316が下盤314の背面に固定されている。加圧シリンダは単動のものでも複動のものでもよいが、加圧シリンダ315の図示しない加圧油室には図示しないポンプから作動油を供給する管路が接続され、管路には作動油の油圧を測定するための油圧センサが設けられている。ポンプはこれに限定されるものではないが、サーボモータにより回転数を制御することのできるポンプが用いられている。また前記管路に流量を制御するためのサーボバルブを設けてもよい。加圧手段は2基以上あるものを除外しないが、いずれにしても下盤314を介して加圧面328aの各部分に対して制御的に異なる加圧力を付与するものではない。
【0017】
なお第1の実施形態のプレス装置3の加圧手段は、サーボモータ等の電動モータによりボールねじを回転させて直接下盤等を移動させるものや、サーボモータ等の電動モータによりトグル装置を介して下盤等を移動させるものなど他の方式のものでもよい。更にプレス装置3は、下盤に対して上盤が下降するものなどでもよい。更にまた第1の実施形態のプレス装置3は、真空状態とすることが可能なチャンバを備えていないが、真空状態にすることが可能なチャンバを備え、真空チャンバ内で加圧を行うものでもよい。その場合プレス装置3は、最初に加圧を行うステージ(
図1において真空積層装置2の位置)であってもよく、真空積層装置2の後工程でもよい。
【0018】
上下の加圧部材321,322の構造は略同じなので、下盤314の加圧部材321について
図3を参照して説明する。加圧部材321は、下盤314と加圧ブロック体323の間に断熱材325を備えている。従ってプレス装置3の加圧ブロック体323は、断熱材325を介して下盤314に図示しないボルト等により取り付けられている。加圧ブロック体323は、所定の厚みを備えたブロック体であり、内部に加熱手段であるカートリッジヒータ326が備えられている。なお加圧部材321の加熱手段は、カートリッジヒータ326の他、加圧ブロック体323の表面などにラバーヒータなどを備えたものでもよい。加圧ブロック体323の中間積層物A4側の表面には緩衝材327が備えられ、緩衝材327の中間積層物A4側の表面327cには加圧面328aを構成する板状部材である金属プレート328が配置されている。
【0019】
<プレス装置の緩衝材の説明>
次に緩衝材327について説明する。緩衝材327はシート状のものであり、周辺部327bの硬度が中央部327aの硬度よりも高くなっている。これは前記緩衝材327のうち少なくとも前記積層物A4の外周端部A8に対向する部分の緩衝作用が前記積層物A4の中央部A9に対向する部分の緩衝作用よりも小さくする目的のためである。前記を実現するための緩衝材327は、緩衝材327の緩衝材料Ca,Cbを周辺部327bと中央部327aで変えてもよく、同一の素材であっても配合比率や気泡率を調整して硬度のみが異なる種類の緩衝材327としたものでもよい。
【0020】
緩衝材327の素材は、樹脂の他、ゴムを含むエラストマー、繊維、紙、またはそれらの複合体からなるものでもよい。これに限定されるものではないが、一例として中央部327aは、フッ素樹脂((ロックウェルRスケール(ISO 2039-2)20ないし113、周辺部327bは、ポリイミド(ロックウェルRスケールロックウェルRスケール110ないし130としてもよい。または中央部327aは、ゴムを含むエラストマーから構成し、周辺部327bを中央部327aに対して相対的に硬度の高い樹脂から構成してもよい。または同じ素材であっても添加剤や気孔率の差から相対的に硬度が異なるものとしてもよい。
【0021】
本発明において緩衝材327(緩衝材料)に樹脂フィルムを使用する場合は、熱硬化性樹脂フィルムやエンジニアリングプラスチックフィルムまたはであって工業用機能フィルムが好ましい。ふっ素樹脂フィルムについては、テフロン(登録商標)とも呼ばれるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(ロックウェルRスケール(ISO 2039-2)20、荷重たわみ温度(℃(1.81MPa))55℃、最高使用温度260℃)の他、PFA(ロックウェルRスケール50、荷重たわみ温度47℃、最高使用温度260℃)、FEP(ロックウェルRスケール50、荷重たわみ温度50℃、最高使用温度200℃)、PCTFE(ロックウェルRスケール80、荷重たわみ温度90℃、最高使用温度120℃)、ETFE(ロックウェルRスケール50、荷重たわみ温度74℃、最高使用温度150℃)、ECTFE(ロックウェルRスケール50、荷重たわみ温度77℃、最高使用温度150℃)、PVDF(ロックウェルRスケール93ないし116、荷重たわみ温度100℃、最高使用温度156℃)等の種類があり、前記のふっ素樹脂フィルムのいずれでもよい。とりわけPTFEは入手が容易であり、最高使用温度も高いのでよく用いられる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFR)については、ロックウェルRスケールの値の低いものでは18程度のものも存在し、R15程度の硬度の樹脂フィルムであっても同様の積層成形が可能である。前記ふっ素樹脂フィルムに使用されるふっ素樹脂は、ふっ素ゴムのように架橋処理がされていないものであり、ふっ素ゴム等のような伸縮性は備えていない。
【0022】
また本発明で緩衝材327に使用されるふっ素樹脂(FR)フィルム以外の熱硬化性樹脂フィルムの一例としては、これに限定されるものではないが、フェノール樹脂(PF)、尿素樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、アリル樹脂(PDAP)、アルキッド樹脂(ALK)、不飽和ポリエステル(UP)、エポキシ樹脂(EP)、ジリアルフタレート(DAP)、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂(SI)、ポリイミド(PI)などが含まれる。熱硬化性樹脂フィルムは特に耐熱性に優れ、積層成形用のプレス装置3に使用する温度が比較的高温の場合でも劣化しにくい性質であるので好適に選択される。
【0023】
また緩衝材327(緩衝材料)に用いる樹脂フィルムは、エンジニアリングプラスチックでもよい。本発明におけるエンジニアリングプラスチックの定義は、耐熱性が100℃以上、引張強度49MPa以上、曲げ弾性率2.4GPa以上の樹脂を指す。そして本発明のエンジニアリングプラスチックには、汎用エンジニアリングプラスチック(略して汎用エンプラとも呼ばれる)と、スーパーエンジニアリングプラスチック(略して特殊エンプラとも呼ばれる)が含まれるものとする。緩衝材に用いられる汎用エンジニアリングプラスチックの例としては、これに限定されるものではないが、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチテレフタレート(PBT)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)などが含まれる。汎用エンジニアリングプラスチックは積層成形プレス装置が比較的低温で使用される際に使用可能である。
【0024】
またスーパーエンジニアリングプラスチックは、耐熱性150℃以上の樹脂であり、緩衝材に用いられる汎用エンジニアリングプラスチックの例としては、これに限定されるものではないが、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンナフタレート(ポリエーエルニトリル)(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PFI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノブスアレイイミド(PABM)、ポリブシマレイミドリアジン(BT-レジン)、ポリオキシベンゾイル(POB)、アラミド(芳香族骨格のみで構成されるポリアミドでありArと称される場合もある)、熱可塑性ポリイミド(PI)などが含まれる。
【0025】
上記のスーパーエンジニアリングプラスチックを含むエンジニアリングフィルムのうち、本発明に特に好適に用いられる樹脂としては、ポリイミド(熱可塑性または熱硬化性の双方)(荷重たわみ温度260℃以上、ロックウェルRスケール110ないし130)、ポリエーテルケトン(荷重たわみ温度140℃、ロックウェルRスケール126)、ポリサルホン(荷重たわみ温度、ロックウェルRスケール110ないし120)ポリフェニレンサルファイド(荷重たわみ温度260℃、ロックウェルRスケール100)、ポリエーテルサルホン(荷重たわみ温度203℃、ロックウェルRスケール100)、ポリエチレンナフタレート(ポリエーエルニトリルフィルム)(荷重たわみ温度330℃、ロックウェルRスケール114)、アラミド(荷重たわみ温度200℃ないし230℃)があり、これらは市販品としても比較的入手容易である。またこれら樹脂の少なくとも一つを用いたものでもよい。また上記の中では、ポリイミドフィルムまたはポリイミドを主成分とする樹脂フィルムが好適に用いられる。ポリイミドフィルムは比較的容易に入手でき、耐熱性にも優れている。
【0026】
また緩衝材327(緩衝材料)がゴムを含むエラストマーである場合、耐熱性に優れたシリコーンゴムまたはふっ素ゴム等が選択される。これらゴムが選択される場合、これに限定されるものではないが、ショアA硬度は30度以上のものが好ましい。または緩衝材327がショアA硬度で測定されるものである場合、中央部327aの緩衝材料Caに対して、周辺部327bの緩衝材料CbのショアAの硬度差を5度以上とすることが好ましい。
【0027】
緩衝材327の厚みについては、0.01mmないし2.00mm、更に好ましくは0.02mmないし1.00mmがより好ましい。本実施形態では緩衝材327の中央部327aと周辺部327bは厚みが同じである。しかし厚みが相違するものを除外するものではない。一例としていずれか一方の厚みを1.00mm以下の範囲で相違させるようにしてもよい。例えば中央部327aの硬度よりも中間積層物A4の外周端部A8に対応する部分の硬度が高い場合は、外周端部A8に対応する部分の厚みを薄くしてもよい。また中央部327aの硬度と前記外周端部A8に対応する部分の硬度が同じか、前記外周端部A8に対応する部分の硬度のほうが低い場合、前記外周端部A8の厚みのほうが中央部327aの厚みよりも僅かに厚くしてもよい場合もある。即ち本発明の緩衝材327は、加圧時に緩衝材327のうち少なくとも積層物である中間積層物A4等の外周端部A8に対向する部分の板状部材である金属プレート328の変形を抑制するための物理的性質が、中間積層物A4の中央部A9に対向する部分の前記板状部材である金属プレート328の変形を抑制するための物理的性質よりも大きければよい。即ち加圧時に緩衝材327の周辺部327bに当接する金属プレート328の変形が抑制されるようになっていればよい。
【0028】
また金属プレート328を省略した
図4の説明図に示されるように、緩衝材327の硬度が高い緩衝材料Cbである樹脂材料(またはゴム材料)と硬度の低い緩衝材料Caである樹脂部材(またはゴム材料Ca)の境界Xは、中間積層物A4の成形位置の外周端部A8に対して内側方向Yに30mm、外周端部A8に対して外側方向Zに10mmの間に設けることが望ましい。従って前記境界は中間積層物A4の加圧面328aに形成されてもよく、加圧面328aではない部分に形成されてもよい。前記の境界Xは中間積層物A4を含む積層物の種類や大きさによっても相違する。
【0029】
そして前記緩衝材327の中間積層物A4側の表面327cには加圧面328aを構成する硬質材からなる板状体である金属プレート328が重ねられている。金属プレート328の材質はステンレスが用いられるが、鉄、アルミニウムなどの他の金属やセラミックスでもよい。金属プレート328の平面形状は、加圧ブロック体323の平面形状と略同じである。金属プレート328の厚みは、0.05mmないし5.0mm程度である。金属プレート328の表面は加圧面328aとなっており鏡面加工されている。また金属プレート328の表面の加圧面328aに窒化処理などの表面処理をすることも行われる。加圧ブロック体323、緩衝材327、加圧面328aを構成する金属プレート328等の互い部材の固着や取り付けは、図示しないボルト、クランパ、熱溶着、接着剤など適宜な方法により取り付けられる。なお
図3において加圧部材321を構成する加圧ブロック体323、緩衝材327、加圧面328aを構成する金属プレート328等は、水平方向の長さに対する厚み方向の長さが、実際よりも大きくデフォルメして描画されている。
【0030】
<積層成形システムの構造の説明の続き>
第1の実施形態のプレス装置3においては、上盤312も下盤314と同じ辺の大きさ、同じ面積で同じ構造の加圧部材322を備える。即ち上盤312もまた加圧ブロック体324、緩衝材327、金属プレート328、
図3と同様の構成の緩衝材327等を備えている。
【0031】
ただし本発明では、下盤314と上盤312の少なくとも一方の盤に加圧面328aを構成する板状部材と加圧ブロック体との間に緩衝材327が備えられ、前記緩衝材327は周辺部327bの硬度が中央部327aの硬度よりも高い状態となっていればよい。例えば基板A1の片面にしか樹脂フィルムA2を積層しない場合、樹脂フィルムA2と対向する側の盤のみの緩衝材327を周辺部327bの硬度が中央部327aの硬度よりも高い状態としておけば目的を達成できる場合もあり得る。
【0032】
プレス装置3の後工程には積層成形品A5の移送装置とテンション装置を兼ねた搬送装置10を構成するキャリアフィルム巻取装置5が設けられている。キャリアフィルム巻取装置5は、下側の巻取ロール511および従動ロール512を備えており、前記巻取ロール511により下キャリアフィルムF1が巻き取られる。またキャリアフィルム巻取装置5は、上側の巻取ロール513および従動ロール514を備えており、前記従動ロール514の部分で積層成形品A5から上キャリアフィルムF2が剥離され、上キャリアフィルムF2は前記上側の巻取ロール513に巻取られる。そして下キャリアフィルムF1のみが水平状態で送られる部分に積層成形品A5の取出ステージ515が設けられている。
【0033】
上下キャリアフィルムF1,F2の送り量のコントロールは、巻取ロール511,513の巻き取られたフィルムの直径を測定により検出するとともに、サーボモータにより巻き取りロール511,513の回転数(回転角度)を制御することにより行ってもよい。また従動ロール512にロータリエンコーダ等の回転数検出装置を設けてもよい。更にはキャリアフィルムF1,F2の移送装置としては、キャリアフィルムF1,F2の両側を把持して後工程に向けて引っ張る移載装置を設けてもよい。
【0034】
次に積層成形システム1の制御装置6について説明する。制御装置6は真空積層装置2、プレス装置3、キャリアフィルム巻出装置4、キャリアフィルム巻取装置5と接続されている。とりわけプレス装置3との関連では、制御装置6は、加熱手段の温度制御、加圧力の制御を行う。
【0035】
<積層方法の説明>
次に第1の実施形態の積層成形システム1を用いた、基材層である基板A1と樹脂層である樹脂フィルムA2の積層方法について説明する。連続成形時の積層成形システム1では、積層装置であるダイアフラム式の真空積層装置2と同じく積層装置であるプレス装置3においてシーケンス制御により同時にバッチ処理的に加圧成形が行われる。しかしここでは1成形サイクル分の被積層材である基板A1と樹脂フィルムA2(積層フィルム)の成形順序に沿って説明する。
【0036】
搬送装置10の載置ステージ部413に載置される基板A1は、基板表面に接着された銅箔部分の凸部A1bと銅箔が無い部分の凹部A1cからなる凹凸部A1aを有するビルドアップ用の回路基板である。銅箔の厚み(基板部分に対する高さ)はこれに限定されないが数umから数十um程度であって殆どの場合0.1mm以下である。前記基板A1の上下にそれぞれ樹脂フィルムA2が重ねられてビルドアップ成形用の積層物A3が構成される。なお
図1では積層物A3は1個が記載されているが同時に複数個数の積層物A3を積層成形するものでもよい。
【0037】
第1の実施形態における樹脂フィルムA2は絶縁フィルムであって、元の保存状態から両面に積層されているPETフィルムが剥離されて使用される。樹脂フィルムA2の樹脂材料はエポキシ等の熱硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を主成分とするものである。また前記熱硬化性樹脂以外の材料としては、熱可塑性樹脂や、粗度調整、難燃性付与、低膨張性付与、流動性付与、成膜性付与、低誘電正接化(絶縁性付与)、含水率低下等の目的で各種の材料、添加剤が含有されている。なお積層されるフィルムは、絶縁フィルムの他、感光性フィルムなどでもよい。また積層されるフィルムの成分は、熱可塑性樹脂のみ、熱硬化性樹脂のみでもよく限定されない。
【0038】
そして載置ステージ部413に載置された前記積層物A3は、巻取ロール511,513の回転駆動ともに上下キャリアフィルムF1,F2とともに送られ、開放状態の真空積層装置2のチャンバCh内に送られ位置決めされる。この際に
図3に示されるように真空積層装置2のダイアフラム211の周辺部211bの硬度の低い部分が、キャリアフィルムF,F2に挟まれた基板A1と樹脂フィルムA2からなる積層物A3の外縁に対向するように停止されることが必要である。そのためにサーボモータ等により上下キャリアフィルムF1,F2による中間積層物A4の送り量の制御とプレス装置3のプレス位置への停止制御を正確に行う必要がある。また必要に応じて積層物A3がプレス位置に停止しているかを監視するカメラ等の監視装置を取り付けてもよい。
【0039】
次に真空積層装置2はチャンバChが閉鎖され図示しない真空ポンプによりチャンバCh内が真空状態とされる。そしてチャンバCh内が真空状態となるとダイアフラム211の裏面側に加圧空気を送り込んでダイアフラム211をチャンバCh内に膨出させ、基板A1と樹脂フィルムA2からなる積層物A3を上盤212側の熱板215の弾性シート216との間で加圧する。
【0040】
この際にダイアフラム211は周辺部211bの硬度が低いことから主にその部分が伸びて膨出し、中央部211aが先に基板A1等に当接するものの周辺部211bもさほど遅れることなく当接する。ダイアフラム211による基板A1等に加えられる加圧力(面圧)は一例として0.01MPaないし2.5MPaであり、特に好ましくは03.MPaないし1.0MPaである。そして基板A1の凹部A1cに積層フィルムA2が埋め込まれる形で基板A1と樹脂フィルムA2の接着が行われ、1次成形品である中間積層物A4が積層成形される。
【0041】
また前記したようにダイアフラム211は、
図2に示されるように周辺部211bの硬度が中央部211aの硬度よりも小さくなっている。そのため基板A1と樹脂フィルムA2を加圧して積層する際に中央部211aと比較して、基板A1と樹脂フィルムA2の端部A6と端部近傍への押圧力がやや弱められる。またダイアフラム211の周辺部211bの硬度が低くて追従性がよいことから、基板A1と樹脂フィルムA2の端部A6の側面A7に当接して側面A7から押圧する力が相対的に大きくなる。このため本実施形態の真空積層装置2では、加圧時に樹脂層が側面A7から外部に流動してしまうという問題が抑制できる。
【0042】
しかし真空積層装置2により積層成形された中間積層物A4の樹脂フィルムA2の表面はまだ基板A1の凹凸部A1aの形状に倣って凹凸が残った状態である。またこの際、使用される樹脂フィルムA2が無機材料の含有率が高い場合には溶融または軟化した樹脂の流動性が低いのでより一層凹凸が残りやすい。
【0043】
真空積層装置2において凹凸部A1aを備えた基板A1と樹脂フィルムA2からなり、両者が貼着された中間積層物A4が積層成形されるとチャンバChが開放される。そして搬送装置10であるキャリアフィルム巻出装置4とキャリアフィルム巻取装置5による次のキャリアフィルムF1,F2の送りにより、前記中間積層物A4はプレス装置3の上盤312と下盤314の間に搬送され、所定の加圧位置に停止される。この際も真空積層装置2への積層物A3の搬入時と同じピッチだけサーボモータ等により上下キャリアフィルムF1,F2の正確な送り制御が行われる。また中間積層物A4がプレス位置に停止しているかを監視するカメラ等の監視装置をプレス装置3の側に取り付けてもよい。
【0044】
そして中間積層物A4の更なる平滑化を行うためのプレス装置3の所定の位置に前記中間積層物A4が停止されると次に、プレス装置3の加圧シリンダ315が作動され加圧工程が開始される。加圧工程では、下盤314および加圧部材321の加圧ブロック体323等が上昇されて加圧ブロック体323に緩衝材327を介して取り付けられた金属プレート328が下キャリアフィルムF1を介して中間積層物A4に当接すると更に押し上げ、中間積層物A4の上面が上キャリアフィルムF2を介して上盤側の金属プレート328に当接され、その後に加圧制御が開始される。
【0045】
本実施形態ではプレス装置3の加圧制御は、圧力制御により制御され、中間積層物A4に対して一例として0.01MPaないし2.5MPa、更に好ましくは0.5MPaないし1.5MPaの面圧が加えられる。ただし圧力制御は圧力を途中で変更するものでもよい。またプレス装置3の加圧工程のうち前半は圧力制御を行い、後半は位置制御(または速度制御)を行うものでもよい。更には最初から最後まで位置制御(または速度制御)を行うものを除外するものではない。
【0046】
プレス装置3による加圧工程時、従来の緩衝材327の全面が同じ硬度の場合は、
図7に示されるように、基材層と樹脂層を含む中間積層物A4を加圧した際に中間積層物A4の外周端部A8に応力が集中して端部付近の樹脂が中間積層物A4の側面A10から外部に向けて流動してしまうという問題があった。しかし本発明では、
図3にも示されるように、加圧ブロック体323と金属プレート328の間に緩衝材327が備えられ、緩衝材327は周辺部327bの硬度が中央部327aの硬度よりも高くなっている。(中央部327aの硬度が周辺部327bの硬度よりも小さく)なっている。そのため中間積層物A4を加圧した際に、緩衝材327の緩衝作用の小さい周辺部327bで中間積層物A4の外周端部A8を含む部分が金属プレート328を介して押圧され、緩衝材327の緩衝作用の大きい中央部327aで中間積層物A4の中央部A9が金属プレート328を介して押圧される。
【0047】
その結果、
図7のような金属プレート328の周辺部の撓みが無くなり、緩衝材327と金属プレート328を介して、中間積層物A4の外周端部A8に応力が集中することが無くなる。その結果、金属プレート328は略平坦な状態が保たれるので、中間積層物A4の外周端部A8付近の樹脂が中間積層物A4の側面A10からの流動を抑制することができる。
【0048】
そして所定のプレス工程の時間が終了するとプレス装置3は型開きされ、上キャリアフィルムと下キャリアフィルムの送りにより積層成形品A5が取り出しステージに送られる。
そして取り出しステージにおいて積層成形品A5の取り出しが行われる。
【0049】
<他の実施形態の説明>
次に他の実施形態の積層成形システム1の積層装置について説明する。本発明の積層成形装置は、
図1に示されるダイアフラム211を備えた真空積層装置2が単独で設けられたものでもよい。更には第1の実施形態の積層成形システム1のプレス装置3の後工程に1台ないしは複数台の本発明のプレス装置が配設されたものでもよい。または後工程に設けられるプレス装置は、加圧ブロック体と加圧面である金属板状部材の間に配置される緩衝材は、均一な材料からなるものでもよい。
【0050】
または積層成形システム1は、
図1に示されるダイアフラム211を備えた真空積層装置2が配置されておらず、プレス装置3が最初の第1加圧工程の加圧装置となるものでもよい。その場合、プレス装置3は真空チャンバを備えていて真空積層装置を構成する。そのプレス装置3からなる真空積層装置はそれ単独の積層装置でも積層成形システムのラインを構成する。また積層成形システム1は、本発明のプレス装置3(真空チャンバの有無は問わない)の後工程に、プレス装置3と同じプレス装置や、加圧ブロック体の表面に緩衝材を介して加圧面を構成する金属薄板プレートを備えたプレス装置を1台ないし複数台設けたものでもよい。
【0051】
<弾性シートの組み合わせや形状のバリエーションの説明>
次に
図5により本発明の緩衝材327の周辺部327bと中央部327aの硬度を異ならせるバリエーションについて説明する。
図5(a)に示されるように緩衝材327(緩衝シート)は、2種類の緩衝材料CaとCbからなり、周辺部327bと中央部327aで重なりなく構成されるものでもよい。また
図5(b)のように緩衝材327は、2種類の緩衝材料CaとCbからなり、全面に設けられた相対的に硬度の高い緩衝材料Cbの中央の凹部Cb1に硬度の低い緩衝材料Caが配置されたものでもよい。または
図5(c)のように、緩衝材327は、2種類の緩衝材料CaとCbからなり、両面側の硬度の高い緩衝材料Cbの間の中央部分に硬度の低い緩衝材料Caが挟まれたものでもよい。その場合両面側の硬度の低い緩衝材料Cbの間の周辺部分には、前記両面側の緩衝材料Cbと同じ種類の硬度の高い緩衝材料Cbが配置される。更には
図5(d)のように片面側の全面をカバーする硬度の相対的に高い緩衝材料Cbに対して、前記緩衝材料Cbよりも硬度が低い緩衝材料Caを中央部327aに配置し、周辺部327bには前記全面をカバーする緩衝材料Cbと同じ緩衝材料Cbを配置してもよい。
【0052】
更に緩衝材327は、3種類以上の緩衝材料からなるものでもよい。一例としては
図5(e)のように両表面側の緩衝材料CbとCcの硬度が異なり、その間に挟まれる緩衝材については、周辺部327bがいずれか一方の表面と同じ緩衝材料CbまたはCcであり、中央部327aは両表面の緩衝材料CbまたはCcとは異なり、周辺部の緩衝材料CbまたはCcよりも相対的に硬度の低いものとしてもよい。また
図5(f)のように両表面側の緩衝材料を同じ緩衝材料Ccとし、その間に挟まれる緩衝材料は周辺部327bの緩衝材料Cbと中央部327aの緩衝材料Caをそれぞれ両表面の緩衝材料Ccとは別にし、周辺部327bの緩衝材料Cbは中央部327aの緩衝材料Caよりも相対的に硬度が高いものとしてもよい
【0053】
これら
図5(a)ないし(f)の緩衝材327は、図において緩衝材327の上側が金属プレート328に当接されるようになっている(図において緩衝材327の下側が加圧ブロック体323に当接される)ものでもよく、図において緩衝材327の上側が加圧ブロック体323に当接される(緩衝材327の下側が金属プレート328に当接される)ものでもよい。金属プレート328に当接する側の緩衝材327の硬度を全面均一にして、加圧ブロック体323に当接するなど反対側の裏面側や中間の緩衝材327の硬度を周辺部327bよりも中央部327aのほうが相対的に硬度を低くすることにより、中間積層物A4等の積層物の表面に明確な硬度差に伴う形状変化が現れなくなる場合もある。また緩衝材327の緩衝材料Ca,Cb,Cc等は、耐熱性の接着剤で接着されることが望ましい。または緩衝材327の緩衝材料Ca,Cb,Cc等は、熱融着やボルトで係合されるものでもよい。
【0054】
また緩衝材327の周辺部327bと中央部327aを平面視した配置関係は、積層物の形状や数に応じて
図6に示されるように変更可能である。即ち緩衝材327のうち硬度の低い中央部327aの形状は、矩形(正方形と長方形を含む)に限定されず、円形、楕円形、菱形、四隅が面取りされた形状などでもよい。また積層物の個数に応じて、緩衝材327の相対的に硬度の低い部分が複数設けられたものでもよい。従って本発明における「緩衝材のうち少なくとも前記積層物の外周部に対向する部分の緩衝作用が前記積層物の中央部に対向する部分の緩衝作用よりも小さい」とは、積層物の数に応じて緩衝材327に、他の部分よりも硬度が低い部分(緩衝作用の大きい部分)が2つ以上備えられているものを含む。なお
図6では、硬度の低い中央部327aはハッチング入りで示し境界Xは実線で記載しているが、表面側(金属プレート側)の全体が1枚の均一な緩衝材327であり、中心側や裏面側の中央部327aの硬度が周辺部327bよりも相対的に低いものも含まれる。
【0055】
上記の緩衝材327の説明は、主に周辺部327bと中央部327aの硬度の差など物理的影響の差を利用して積層物からの樹脂流動を抑制するものである。しかし緩衝材327の熱的影響の差を利用して積層物からの樹脂流動を抑制するものでもよい。具体的には緩衝材327のうち少なくとも中間積層物A4等の積層物の外周端部A8に対向する部分の熱伝導特性の一種である熱伝導率が前記積層物の中央部A9に対向する部分の熱伝導特性の一種である熱伝導率よりも小さくする。そのようにすることにより緩衝材327の表面327c側の金属プレート328は、中央部327aの温度が高い状態となり、周辺部327bは温度の低い状態となる。その結果、周辺部の金属プレート328に当接する中間積層物A4の外周端部A8付近の樹脂流動は抑制される。なお緩衝材327は、周辺部327bと中央部327aで同じ熱伝導率の緩衝材料を使用し、気孔率の差や他に混合される物質の差により熱伝導特性に差が生じるようにしてもよい。
【0056】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した第1の実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや明細書の各記載を掛け合わせたものについても、適用されることは言うまでもないことである。積層成形システム1で積層成形される積層成形品A5は、ビルドアップ基板の他、他の回路基板、半導体ウエハなどでもよく限定されない。また基材層は基板に限定されない。
【符号の説明】
【0057】
1 積層成形システム
2 真空積層装置
3 プレス装置
212,312 上盤
213,314 下盤
321,322 加圧部材
323,324 加圧ブロック体
327 緩衝材
327a 中央部
327b 周辺部
328 金属プレート
Ca,Cb,Cc 緩衝材料