(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095452
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20230629BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20230629BHJP
H02K 1/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K5/22
H02K1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211354
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 修平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 眞矢
(72)【発明者】
【氏名】今枝 雅稀
【テーマコード(参考)】
5H601
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GE02
5H601GE11
5H601GE15
5H601HH14
5H601JJ07
5H605AA01
5H605DD13
5H605EC07
5H609PP02
5H609PP09
5H609QQ01
5H609QQ12
5H609QQ13
5H609QQ20
5H609RR36
5H609RR42
5H609RR43
(57)【要約】
【課題】冷却効率が改善された回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機は、ステータと、ステータの内側に配置されているロータと、ロータの回転軸方向においてステータの端部に対向するように配置されているバスバー部を備えている。ステータは、コイル線と、コイル線を巻付ける複数のインシュレータによって形成されている。ロータは、ロータシャフトと、ロータシャフトに固定されているロータコアと、回転軸方向においてロータコアの両端に設けられているエンドプレートを備えている。ロータシャフトは、回転軸方向に伸びる貫通孔と、貫通孔の側壁に設けられている連通孔を備えている。バスバー部が設けられている側のエンドプレートのロータコア側表面に、連通孔に接続されているとともに径方向外側に伸びている流体流路が設けられており、流体流路の径方向外側の端部に、バスバー部に向けて流体を噴出する噴出孔が設けられている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、ステータの内側に配置されているロータと、ロータの回転軸方向においてステータの端部に対向するように配置されているバスバー部と、を備えている回転電機であって、
ステータは、コイル線と、コイル線を巻付ける複数のインシュレータをロータの周方向に並べることによって形成されており、
ロータは、
ロータシャフトと、
ロータシャフトに固定されているロータコアと、
前記回転軸方向においてロータコアの両端に設けられており、ロータコアが前記回転軸方向に移動することを規制するエンドプレートと、を備えており、
ロータシャフトは、
前記回転軸方向に伸びるとともに流体が移動可能な貫通孔と、
前記貫通孔の側壁に設けられているとともに前記貫通孔とロータシャフトの外部とを連通する連通孔と、を備えており、
バスバー部が設けられている側のエンドプレートのロータコア側表面に、前記連通孔に接続されているとともに前記径方向外側に伸びている流体流路が設けられており、
流体流路の前記径方向外側の端部に、バスバー部に向けて流体を噴出する噴出孔が設けられている、回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
バスバー部は、コイル線に接続される金属部と、金属部を収容する樹脂部を備えており、
前記樹脂部のステータ側表面に、前記径方向外側に向かうに従ってステータとの距離が近くなるように形成された傾斜壁が設けられている、回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機であって、
各インシュレータは、コイル線が巻付けられる巻付け部と、巻付け部より前記径方向内側に設けられているとともに前記回転軸方向長さが巻付け部より長い内壁部と、巻付け部より前記径方向外側に設けられているとともに前記回転軸方向長さが内壁部より長い外壁部と、を備えている、回転電機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機であって、
バスバー部は、前記噴出孔から供給された流体が前記周方向に移動することを規制する規制壁を有しており、
規制壁は、隣り合うインシュレータの隙間に対向する位置に設けられている、回転電機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の回転電機であって、
各インシュレータの側面に、前記回転軸方向に対して傾斜している傾斜溝が設けられている、回転電機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の回転電機であって、
インシュレータの前記周方向厚みが、前記回転軸方向に沿って一端から他端に向かうに従って変化している、回転電機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の回転電機であって、
バスバー部のステータ側表面は、コイル線と対向する部分において前記金属部が露出している、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、冷却構造を備えた回転電機が開示されている。特許文献1の回転電機は、ステータと、ステータの内側に配置されているロータを備えている。ロータは、側壁に貫通孔が設けられたロータシャフトを備えている。特許文献1では、ロータシャフト内に供給された冷媒が、貫通孔を通じてロータコアとエンドプレートの間の隙間(流路)に供給され、ステータの内周側からステータが設けられている空間に移動する。また、特許文献1は、ステータの外周側からステータが設けられている空間に冷媒を供給する構造も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の回転電機は、ステータの内周側と外周側の双方から冷媒を供給し、ステータ全体(ステータコアの一端側及び他端側)を冷却する構造を採用している。この構造は、ステータ全体を冷却するには有用であるが、必ずしも効率的に回転電機を冷却することはできない。回転電機の分野では、回転電機をより効率に冷却する技術が要求されている。本明細書は、冷却効率が改善された回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、回転電機であって、その回転電機は、ステータと、ステータの内側に配置されているロータと、ロータの回転軸方向においてステータの端部に対向するように配置されているバスバー部を備えていてよい。ステータは、コイル線と、コイル線を巻付ける複数のインシュレータをロータの周方向に並べることによって形成されていてよい。ロータは、ロータシャフトと、ロータシャフトに固定されているロータコアと、回転軸方向においてロータコアの両端に設けられており、ロータコアが回転軸方向に移動することを規制するエンドプレートを備えていてよい。ロータシャフトは、回転軸方向に伸びるとともに流体が移動可能な貫通孔と、貫通孔の側壁に設けられているとともに貫通孔とロータシャフトの外部とを連通する連通孔を備えていてよい。この回転電機では、バスバー部が設けられている側のエンドプレートのロータコア側表面に、連通孔に接続されているとともに径方向外側に伸びている流体流路が設けられており、流体流路の径方向外側の端部に、バスバー部に向けて流体を噴出する噴出孔が設けられていてよい。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、上記第1技術の回転電機であって、バスバー部は、コイル線に接続される金属部と、金属部を収容する樹脂部を備えていてよい。また、樹脂部のステータ側表面に、径方向外側に向かうに従ってステータとの距離が近くなるように形成された傾斜壁が設けられていてよい。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、上記第1又は第2技術の回転電機であって、各インシュレータは、コイル線が巻付けられる巻付け部と、巻付け部より前記径方向内側に設けられているとともに回転軸方向長さが巻付け部より長い内壁部と、巻付け部より径方向外側に設けられているとともに回転軸方向長さが内壁部より長い外壁部を備えていてよい。
【0008】
本明細書で開示する第4技術は、上記第1から第3技術のいずれかの回転電機であって、バスバー部は、噴出孔から供給された流体が周方向に移動することを規制する規制壁を有しており、規制壁は、隣り合うインシュレータの隙間に対向する位置に設けられていてよい。
【0009】
本明細書で開示する第5技術は、上記第1から第4技術のいずれかの回転電機であって、各インシュレータの側面に、回転軸方向に対して傾斜している傾斜溝が設けられていてよい。
【0010】
本明細書で開示する第6技術は、上記第1から第5技術のいずれかの回転電機であって、インシュレータの前記周方向厚みが、回転軸方向に沿って一端から他端に向かうに従って変化してよい。
【0011】
本明細書で開示する第7技術は、上記第1から第6技術のいずれかの回転電機であって、バスバー部のステータ側表面は、コイル線と対向する部分において金属部が露出していてよい。
【発明の効果】
【0012】
第1技術によると、回転電機内の冷媒を、バスバー部に優先的に、確実に供給することができる。典型的に、バスバー部(バスバー部の金属部)は、コイル線の端部に接続される。そのため、回転電機内において、バスバー部は、最も発熱する部品の一つである。そのため、バスバー部に優先的に冷媒を供給することにより、回転電機を効率的に冷却することができる。すなわち、他部品を冷却することに先立って冷媒をバスバー部に供給することによって、比較的低温の(他部品を冷却したことによって温度上昇する前の)冷媒がバスバー部に供給され、バスバー部の冷却効率を向上させることができる。その結果、回転電機の冷却効率が向上し、温度上昇に伴う回転電機の性能低下を抑制することができる。
【0013】
第2技術によると、バスバー部に供給された冷媒を、コイル線に確実に案内することができる。すなわち、流体流路(ロータコアとエンドプレート間に設けられた流路)からバスバー部を通過してコイル線に至る冷媒の流路を確立することができる。これにより、冷媒が効率的にコイル線に供給され、回転電機の冷却効率をより向上させることができる。
【0014】
第3技術によると、インシュレータ(磁性体とコイル線を絶縁する部材)に巻付けられたコイル線がインシュレータから外れることを防止することができるとともに、コイル線に供給された冷媒がインシュレータの外部(インシュレータの径方向外側)に移動することを防止することができる。コイル線に供給される冷媒が減少することが抑制され、コイル線をより確実に冷却することができる。
【0015】
第4技術によると、バスバー部からステータに移動する冷媒を、確実にコイル線に供給することができる。すなわち、バスバー部からステータに移動する冷媒が隣り合うコイル線(隣り合うインシュレータ)の隙間に移動することを防止することができる。冷媒をコイル線に確実に供給することができ、回転電機の冷却効率をさらに向上させることができる。
【0016】
第5技術によると、コイル線を内側(インシュレータとコイル線の間)と外側(コイル線の露出面)から冷却することができる。また、回転電機の配置(ロータの回転軸方向と重力方向の角度)にも依るが、インシュレータの側面に傾斜溝を設けることによって、ステータ(インシュレータ)に供給された冷媒を、回転軸方向の一端から他端に移動させることもできる。
【0017】
第6技術によると、隣り合うコイル線同士の隙間を、ロータの回転軸方向に沿って一端から他端に向かうに従って変化せることができる。その結果、冷媒が、コイル線の外側をスムーズに通過することができる。コイル線全体を冷却することができ、回転電機の冷却効率をさらに向上させることができる。
【0018】
第7技術によると、バスバー部の発熱部分(金属部)に直接冷媒を接触させることができる。その結果、バスバー部を一層確実に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】ロータのエンドプレートの特徴を説明するための図(正面図)を示す。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図を示す。
【
図4】インシュレータの特徴を説明するための図(側面図)を示す。
【
図5】
図4のインシュレータにコイル線を巻付けた状態(側面図)を示す。
【
図8】バスバー部の特徴を説明するための図(正面図)を示す。
【
図9】バスバー部の特徴を説明するための部分拡大図(斜視図)を示す。
【
図10】回転電機について、冷媒の流れを説明するための拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施例)
図1を参照し、回転電機100の概略について説明する。なお、図中のX,Y,Zは座標を示しており、ロータ10の回転軸がZ軸に沿うように回転電機100を示している。回転電機100は、モータ(電動機)又はジェネレータ(発電機)として利用することができる。回転電機100は、ステータ40と、ステータ40の内側に配置されているロータ10と、ステータ40に対向して配置されているバスバー部60を備えている。バスバー部60は、ロータ10の回転軸方向(Z軸方向)において、ステータ40の端部に対向している。ロータ10、ステータ40及びバスバー部60は、ケース2内に収容されており、ケース2内はカバー4によって密封されている。ケース2にはボルト孔(図示省略)を有するフランジ部2aが設けられている。また、カバー4の端部4aにもボルト孔(図示省略)が設けられている。ケース2とカバー4は、ボルト留めされている。
【0021】
ステータ40は、コイル線44と、コイル線44を巻付けるインシュレータ42を備えている。なお、
図1では、図面の明瞭化のため、コイル線44がインシュレータ42の周りを4周した図を示しているが、実際にはコイル線44はインシュレータ42の周りに多数回巻付けられている。また、図示は省略しているが、ステータ40は、ケース2に固定されている。詳細は後述するが、ステータ40は、コイル線44が巻付けられたインシュレータ42をZ軸周り(ロータ10の周方向)に複数並べることによって形成されている。すなわち、ステータ40はリング状である。
【0022】
(ロータの特徴)
ロータ10は、ロータシャフト12と、ロータシャフト12に固定されているロータコア16と、Z軸方向においてロータコア16の両端に設けられているエンドプレート14,18を備えている。エンドプレート14,18は、ロータシャフト12に固定されており、ロータコア16がZ軸方向に移動することを規制している。エンドプレート18はバスバー部60が配置されている側に設けられており、エンドプレート14はバスバー部60が配置されていない側に設けられている。
【0023】
ロータシャフト12は、円筒状であり、Z軸方向に伸びる貫通孔12aを有している。ロータシャフト12は、ケース2及びカバー4に回転可能に支持されている。ロータシャフト12の両端は、ケース2及びカバー4から突出している。また、貫通孔12aの側壁には、貫通孔12a内とロータシャフト12の径方向外部(回転電機100内)とを連通する連通孔12bが設けられている。貫通孔12a及び連通孔12bを設けることにより、ロータシャフト12内(貫通孔12a内)に冷媒(流体の一例)を供給し、回転電機100内(ケース2内)に冷媒を供給することができる。すなわち、回転電機100に供給された冷媒は、貫通孔12a及び連通孔12bを移動して回転電機100の内部に供給される。連通孔12bは、ロータシャフト12の周方向(Z軸周り)に、等間隔に4個設けられている。
図1では4個の連通孔12bのうちの2個が示されている。連通孔12bは、エンドプレート18に対向する位置に設けられている。
【0024】
ここで、
図2及び
図3を参照し、エンドプレート18について説明する。
図2は、エンドプレート18の表面18s(ロータコア16に対向する側の面)を示している。
図2に示すように、エンドプレート18は、中央に貫通孔18aが設けられた円板状である。貫通孔18aの内壁にロータシャフト12を嵌め込むことにより、エンドプレート18がロータシャフト12に固定されている。また、エンドプレート18の表面18sには、4個の流体流路20が設けられている。流体流路20は、ロータシャフト12の周方向(Z軸周り)に、等間隔に4個設けられている。流体流路20は、貫通孔18aから径方向外側に向けて伸びる溝であり、径方向外側の端部に設けられた噴出孔22に繋がっている。流体流路20は、エンドプレート18をロータコア16に取り付けたときに形成される、エンドプレート18とロータコア16の隙間である。なお、噴出孔22は、バスバー部60に対向する位置に設けられている(
図1も参照)。流体流路20は、ロータシャフト12の連通孔12bに接続されている。流体流路20は、連通孔12bから供給された冷媒を、噴出孔22まで導く案内路と捉えることもできる。
【0025】
図3に示すように、噴出孔22は、外部(バスバー部60側:
図1も参照)に向かうに従って開孔サイズが大きくなっている。具体的には、噴出孔22の側壁(エンドプレート18の径方向外側の側壁)に傾斜面18tが設けられている。これにより、流体流路20を移動して噴出孔22に至った冷媒は、バスバー部60に向けて勢いよく噴出する。
【0026】
図1を参照し、回転電機100の概略について説明を続ける。上述したように、バスバー部60は、ステータ40の端部に対向している。また、バスバー部60は、ロータ10の径方向端部(噴出孔22が設けらえている部分)にも対向している。すなわち、バスバー部60は、ステータ40とロータ10の双方に対向していると捉えることができる。しかしながら、バスバー部60は、ステータ40に固定されており、ロータ10には固定されていない。そのため、ロータ10は、バスバー部60に対して回転可能である。バスバー部60は、コイル線44に接続される金属部64a、64b、64c及び64dと、各金属部64a~64dを絶縁した状態で収容する樹脂部62を備えている。なお、金属部64a~64dのうちの1個がU相のコイル線44に接続され、他の1個がV相のコイル線44に接続され、別の他の1個がW相のコイル線44に接続され、残りの1個がU相、V相、W相のそれぞれに接続される。各金属部64a~64dがバスバーと呼ばれ、樹脂部62がスロットと呼ばれることもある。
【0027】
(ステータの特徴)
次に、
図4から
図7を参照し、ステータ40の特徴について詳細に説明する。
図4はコイル線44を巻付ける前のインシュレータ42を示し、
図5はインシュレータ42にコイル線44を巻付けた状態を示している。また、
図7は、カバー4及びバスバー部60を取り外した状態の回転電機100を示している。
図7に示すように、ステータ40は、コイル線44が巻付けられたインシュレータ42を、内壁部46を径方向内側、外壁部50を径方向外側にした状態で、Z軸の周りに複数並べることによって形成される。まず、インシュレータ42の特徴について説明する。
【0028】
図4に示すように、インシュレータ42は、コイル線44が巻付けられる巻付け部48と、巻付け部48の一端に設けられている内壁部46と、巻付け部48の他端に設けられている外壁部50を備えている。上記したように、ステータ40は、内壁部46を径方向内側、外壁部50を径方向外側にした状態で、インシュレータ42をZ軸の周りに並べることによって形成される。そのため、内壁部46は巻付け部48より径方向内側に設けられ、外壁部50は巻付け部48より径方向外側に設けられていると捉えることができる。内壁部46及び外壁部50のZ軸方向の長さは、巻付け部48のZ軸方向の長さより長い。また、外壁部50のZ軸方向の長さは、内壁部46のZ軸方向の長さより長い。より具体的には、外壁部50のZ軸方向の一端(Z+側)と内壁部46のZ軸方向の一端は、巻付け部48に対してZ軸方向に同じ長さだけ突出している。一方、外壁部50のZ軸方向の他端(Z-側)は、内壁部46のZ軸方向の他端よりも巻付け部48に対してZ軸方向に長く突出している。詳細は後述するが、回転電機100では、インシュレータ42のZ軸方向の他端(外壁部50が内壁部46よりも巻付け部48に対して突出している側:Z-側)が、バスバー部60に対向している。
【0029】
巻付け部48の表面(インシュレータ42の側面)には、Z軸方向に沿って伸びる平行溝52と、Z軸方向に対して傾斜して伸びる傾斜溝54が形成されている。傾斜溝54は、Z軸方向の一端(Z+側)に向かうに従って径方向内側から外側(X-方向)に向かう第1傾斜溝54aと、Z軸方向の一端に向かうに従って径方向外側から内側(X+方向)に向かう第2傾斜溝54bを含んでいる。平行溝52、傾斜溝54を設けることにより、インシュレータ42にコイル線44が巻付けられた状態(
図5の状態)であっても、巻付け部48の表面とコイル線44の間に隙間が設けられる。なお、コイル線44の端部44eは、金属部64a~64dのいずれかに接続される(
図1も参照)。
【0030】
図6に示すように、巻付け部48の周方向の長さ(巻付け部48の厚み)は、Z軸に沿って、一端から他端に向かうに従って小さくなっている。具体的には、巻付け部48の厚みは、バスバー部60側に向かうに従って小さくなっている。
図6には、バスバー部60の位置を破線で示している。その結果、回転電機100では、周方向におけるインシュレータ42,42間の隙間が、バスバー部60側に向かうに従って大きくなっている。なお、インシュレータ42の内部には、ステータコア(鉄心)が配置されている。また、
図7に示すように、外壁部50の周方向の長さは、内壁部46の周方向の長さより長い。
【0031】
(バスバー部の特徴)
次に、
図8及び
図9を参照し、バスバー部60の特徴について詳細に説明する。バスバー部60はリング状であり、各金属部64a~64dが、樹脂部62によって絶縁された状態で収容されている。金属部64a~64dうちの1個の金属部64dは、一部がバスバー部60の表面に露出している。金属部64dは、U相、V相及びW相のコイル線44が接続される接続部材(中性バスバーと呼ばれることもある)である。また、各金属部64a~64dは、バスバー部60の径方向外側に向けて、コイル線44の端部が接続される端子部65a~65dを備えている。バスバー部60は、表面(金属部64dが露出している面)がステータ40に対向するように、ステータ40に固定されている(
図1も参照)。
【0032】
バスバー部60(樹脂部62)は、径方向に伸びる複数の規制壁66を備えている。規制壁66は、バスバー部60の周方向に等間隔に設けられている。規制壁66が設けられている部分では、金属部64dが露出していない。換言すると、金属部64dは、規制壁66が設けられていない部分において、バスバー部60の表面に露出している。バスバー部60は、バスバー部60をステータ40に固定したときに規制壁66が隣り合うインシュレータ42,42の隙間に対向するように、ステータ40に固定される。すなわち、ステータ40を構成しているインシュレータ42の数と、バスバー部60に設けられている規制壁66の数は等しい。また、ステータ40におけるインシュレータ42,42間の間隔と、バスバー部60における規制壁66,66の間隔は等しい。なお、バスバー部60のステータ40側表面における金属部64dの露出面は、コイル線44(インシュレータ42)と対向する。また、詳細は後述するが、規制壁66は、バスバー部60に供給された冷媒が周方向に移動することを規制する。
【0033】
金属部64dが露出している部分では、バスバー部60(樹脂部62)のステータ40側表面に、径方向外側に向かうに従ってステータ40との距離が近くなるように形成された傾斜壁68が設けられている。傾斜壁68は、バスバー部60の内周面と外周面の中間部よりも径方向外側に設けられている。そのため、金属部64dは、バスバー部60の径方向において、バスバー部60の幅(バスバー部60の内周面と外周面の長さ)の50%以上露出している。上述したように、規制壁66は、隣り合うインシュレータ42,42の隙間に対向するようにステータ40に固定される。そのため、回転電機100では、コイル線44(インシュレータ42)と対向する金属部64dの露出面が広く確保されている。
【0034】
(回転電機の利点)
図10を参照し、回転電機100の利点について説明する。上述したように、エンドプレート18に設けられている流体流路20は、ロータシャフト12の連通孔12bから供給された冷媒を、噴出孔22まで導く。噴出孔22に供給された冷媒は、バスバー部60の表面に噴出され、さらに、バスバー部60に反射されるようにインシュレータ42(コイル線44)に供給される。インシュレータ42に供給された冷媒は、インシュレータ42、42の隙間等を通過して、バスバー部60が設けられていない側のインシュレータ42端部(Z+側端部)に移動する。これにより、バスバー部60及びコイル線44が冷却される。以下、回転電機100のより詳細な利点を列記する。
【0035】
(1)回転電機100内に供給された冷媒が、バスバー部60、コイル線44の順に移動する。典型的に、バスバー部60(金属部64a~64d)は、回転電機100を構成する部品の内で最も発熱しやすい。回転電機100では、冷媒がバスバー部60に優先的に供給されるので、バスバー部60が優先的に冷却され、高い冷却効率を得ることができる。回転電機100は、高い冷却効率を実現することにより、温度上昇に伴う性能低下を抑制することができる。
(2)噴出孔22を設けることにより、冷媒が、バスバー部60に勢いよく供給(バスバー部60に噴出)される。その結果、単にバスバー部60に冷媒が供給される形態と比較して、バスバー部60の冷却効率を高くすることができる。
(3)金属部64dの一部をバスバー部60の表面に露出させることにより、冷媒を直接金属部64dに供給することができる。
(4)バスバー部60に露出させる金属部64dとしてU相、V相及びW相のコイル線44が接続される接続部材(中性バスバー)が選択されている。全相のコイル線44が接続される金属部64d(最も高温になりやすい金属部)に冷媒が直接供給されるので、冷却効率をさらに高くすることができる。
(5)バスバー部60に規制壁66を設けることにより、噴出孔22から供給された冷媒がバスバー部60周方向に移動することを防止することができる。その結果、バスバー部60に供給された冷媒を、確実にコイル線44に移動させることができる。
(6)バスバー部60に傾斜壁68を設けることにより、バスバー部60に供給された冷媒を、効率的にコイル線44に移動させることができる。
(7)インシュレータ42の内壁部46より外壁部50の長さを長くすることにより、コイル線44に供給された冷媒が径方向外側に移動することが抑制され、冷媒をコイル線44に確実に接触させることができる。これにより、コイル線44の冷却効率を高く維持することができる。
(8)インシュレータ42の表面(巻付け部48)に平行溝52及び傾斜溝54を設けることにより、コイル線44とインシュレータ42の表面の間を冷媒が移動することができる。その結果、コイル線44を内側と外側の両面から冷却することができ、コイル線44の冷却効率を高くすることができる。
(9)インシュレータ42の表面に傾斜溝54を設けることにより、インシュレータ42に供給された冷媒を、Z軸方向におけるバスバー部60が設けられている側とは反対側(Z+側)にスムーズに移動させることができる。また、傾斜溝54を設けることにより、インシュレータ42の表面において冷媒が径方向に移動し、コイル線44全体に冷媒を接触せることができる。なお、傾斜溝54を設ける場合、傾斜溝54の幅は一定でもよく、または、傾斜溝54の幅がバスバー部60から離れるに従って狭くしてもよい。傾斜溝54の幅をバスバー部60から離れるに従って狭くすることにより、冷媒が傾斜溝54を移動する際、バスバー部60から離れるに従って冷媒の流速を速くすることができる。
(10)傾斜方向が異なる第1傾斜溝54aと第2傾斜溝54bを設けることにより、ロータ10の位相角に依らず、冷媒を、バスバー部60が設けられている側とは反対側(Z+側)にスムーズに移動させることができる。
(11)インシュレータ42の巻付け部48の厚みをバスバー部60側に向かうに従って小さくすることにより、バスバー部60からインシュレータ42側に移動した冷媒を、隣り合うインシュレータ42,42間に供給しやすくすることができる。冷媒の流れ(冷媒のバスバー部60からインシュレータ42流れ、Z軸方向におけるインシュレータ42のバスバー部60側からバスバー部60側と反対側への流れ)をスムーズにすることができる。
【0036】
(他の実施形態)
本明細書で開示する回転電機の要旨は、ロータシャフトに貫通孔を設け、ロータシャフトの側壁に貫通孔とロータシャフトの外部を連通する連通孔を設け、ロータコアのエンドプレートの表面に連通孔と接続する流体流路を設け、流体流路をエンドプレートの径方向外側まで伸ばし、流体流路の端部にバスバー部に向けて流体(冷媒)を噴出する噴出孔を設ける、ということである。そのため、例えば、バスバー部の金属部は、バスバー部の表面に露出していなくてもよい。この場合でも、冷媒によってバスバー部を優先的に冷却することができるという利点は得られる。
【0037】
また、必ずしもバスバー部のステータ側表面に傾斜壁を設けなくてもよい。同様に、必ずしもバスバー部のステータ側表面に規制壁を設けなくてもよい。噴出孔から噴出された冷媒がバスバー部で反射するので、コイル線に対して冷媒を供給することができる。
【0038】
インシュレータの外壁部は、必ずしも内壁部より長くなくてよい。すなわち、外壁部の長さと内壁部に長さが等しくてもよいし、外壁部の長さが内壁部の長さより短くてもよい。少なくとも外壁部の長さを巻付け部の長さより長くすることにより、コイル線が設けられていない部分(ステータの径方向外側)に冷媒が移動することを抑制することができる。
【0039】
実施例では回転軸方向の一端から他端に向かうに従って径方向内側から外側に向かう第1傾斜溝と、回転軸方向の他端から一端に向かうに従って径方向内側から外側に向かう第2傾斜溝を有するインシュレータについて例示した。しかしながら、第1傾斜溝、及び/又は、第2傾斜溝は省略することができる。すなわち、インシュレータの側面(巻付け部の表面)に設ける傾斜溝は省略することもできる。この場合でも、回転軸方向一端側(バスバー部が設けられている側)からインシュレータに冷媒が供給され続けることにより、冷媒は、インシュレータの一端側から他端側(バスバー部が設けられている側の反対側)に移動することができる。さらに、インシュレータの側面(巻付け部の表面)に設ける平行溝も省略することができる。コイル線の表面を移動する冷媒量を増加させることができる。
【0040】
インシュレータ(巻付け部)の周方向厚みは、回転軸方向に沿って、バスバー部側に向かうに従って大きくなっていてもよい。あるいは、インシュレータの周方向厚みは、回転軸方向に沿って一定であってもよい。いずれも場合も、隣り合うインシュレータ間(隣り合うコイル巻線間)には隙間が存在するので、ステータに供給された冷媒は、隣り合うインシュレータ間を通過して移動することができる。
【0041】
なお、エンドプレートのロータコア側表面に設ける流体流路の数は4個に限定されない。流体流路は、少なくとも1個以上であればよく、例えば、2個、3個、あるいは、5個以上であってもよい。
【0042】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0043】
40:ステータ
10:ロータ
60:バスバー部
Z:回転軸方向
100:回転電機
44:コイル線
42:インシュレータ
12:ロータシャフト
16:ロータコア
18:エンドプレート
12a:ロータシャフトの貫通孔
12b:ロータシャフトの連通孔
20:流体流路
22:噴出孔