(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095455
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211360
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木邨 真未
(57)【要約】
【課題】マスク着用時の動作に伴う顔のラインの変化に追従し、鼻部等の隙間からの粉塵や花粉等のマスク内への侵入を防ぐマスクの提供。
【解決手段】縦方向及び横方向を有する複数のシート体が重ね合わされた積層体からなるマスク本体部と、このマスク本体部の左右両側に設けられた耳に係止するための耳掛け部と、を備えるマスクであって、
前記積層体における最外層のシート体と最内層のシート体との間の上縁部、下縁部及び左右縁部から選ばれる少なくとも一つの周縁部に沿って、クッション部材を有することを特徴とするマスク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及び横方向を有する複数のシート体が重ね合わされた積層体からなるマスク本体部と、このマスク本体部の左右両側に設けられた耳に係止するための耳掛け部と、を備えるマスクであって、
前記積層体における最外層のシート体と最内層のシート体との間の上縁部、下縁部及び左右縁部から選ばれる少なくとも一つの周縁部に沿って、クッション部材を有することを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記上縁部のクッション部材の面積が、前記マスク本体部の全面積を1とした場合に、0.15~0.45であることを特徴とする、請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記下縁部のクッション部材の面積が、前記マスク本体部の全面積を1とした場合に、0.1~0.4であることを特徴とする、請求項1又は2記載のマスク。
【請求項4】
前記左右縁部のクッション部材の面積が、前記マスク本体部の全面積を1とした場合に、0.2~0.7であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項5】
前記クッション部材の形状が、略長方形であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項6】
前記クッション部材が、不織布であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項7】
前記クッション部材の圧縮回復性が、40%以上75%以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項8】
前記クッション部材の圧縮仕事量が、1.5N・m/m2以上7N・m/m2以下であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項9】
前記マスクが、プリーツ加工型マスクであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスクは、咳やくしゃみの飛沫の飛散を防ぐために使用される、又は、ほこりや花粉、飛沫等の粒子が体内に侵入することを防ぐ衛生用品である。
【0003】
日常生活において使用するマスクは、不織布製マスクが一般的である。不織布は繊維を積層してシート状に広げ、繊維間を熱や化学的な作用によって結合させて布状にしたものである。
近年では、複数のフィルタの層を積層することによってより細かい粒子の捕捉が可能になってきている。しかしながら、着用時に生じるマスクと鼻部等との隙間からの粉塵や花粉等のマスク内への侵入について、対策が十分であるとは言えない。
そこで、このような問題の解決策として、マスク本体部と着用者の鼻部との間にクッション部材を設けたマスクが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1のマスクでは、着用時にずれないようすると共に肌に跡が残らないようにしたノーズクッションを設けたことにより、マスク本体部の上縁部と顔面との間の隙間からの粉塵の侵入を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、クッション部材をマスク本体部の最内層と着用者の肌の間に設けたマスクは、マスク着用時の、顔を左右に向けたり、上下に動かしたり、発声したり等の動作にクッション部材が十分に追従できない、といった問題点があった。
【0007】
本発明は、斯かる従来の問題に鑑みてなされたもので、マスク着用時の動作に伴う顔のラインの変化に追従し、鼻部等の隙間からの粉塵や花粉等のマスク内への侵入を防ぐマスクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、マスク本体部の積層構造における最外層のシート体と最内層のシート体との間の上縁部、下縁部及び左右縁部から選ばれる少なくとも一つの周縁部に沿って、クッション部材を設ければ、極めて良い結果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]に係るものである。
[1]縦方向及び横方向を有する複数のシート体が重ね合わされた積層体からなるマスク本体部と、このマスク本体部の左右両側に設けられた耳に係止するための耳掛け部と、を備えるマスクであって、
前記積層体における最外層のシート体と最内層のシート体との間の上縁部、下縁部及び左右縁部から選ばれる少なくとも一つの周縁部に沿って、クッション部材を有することを特徴とするマスク。
[2]前記上縁部のクッション部材の面積が、前記マスク本体部の全面積を1とした場合に、0.15~0.45であることを特徴とする、[1]に記載のマスク。
[3]前記下縁部のクッション部材の面積が、前記マスク本体部の全面積を1とした場合に、0.1~0.4であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のマスク。
[4]前記左右縁部のクッション部材の面積が、前記マスク本体部の全面積を1とした場合に、0.2~0.7であることを特徴とする、[1]ないし[3]のいずれか1項に記載のマスク。
[5]前記クッション部材の形状が、略長方形であることを特徴とする、[1]ないし[4]のいずれか1項に記載のマスク。
[6]前記クッション部材が、不織布であることを特徴とする、[1]ないし[5]のいずれか1項に記載のマスク。
[7]前記クッション部材の圧縮回復性が、40%以上75%以下であることを特徴とする、[1]ないし[6]のいずれか1項に記載のマスク。
[8]前記クッション部材の圧縮仕事量が、1.5N・m/m2以上7N・m/m2以下であることを特徴とする、[1]ないし[7]のいずれか1項に記載のマスク。
[9]前記マスクが、プリーツ加工型マスクであることを特徴とする、[1]ないし[8]のいずれか1項に記載のマスク。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマスクは、マスク本体部の積層構造における最外層のシート体と最内層のシート体との間の上縁部、下縁部及び左右縁部から選ばれる少なくとも一つの周縁部にクッション部材を有しているため、当該クッション部材がマスク着用時の動作に伴う顔のラインの変化に追従し、マスクと鼻部等との隙間からの粉塵や花粉等のマスク内への侵入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明第1の実施の形態に係るマスクの内側(顔面に触れる側)の正面説明図である。
【
図2】本発明第1の実施の形態に係るマスク本体部(
図1のA-A線端面)の積層構造を示す模式図(拡大断面図)である。
【
図3】本発明第2の実施の形態に係るマスクの内側(顔面に触れる側)の正面説明図である。
【
図4】本発明第2の実施の形態に係るマスク本体部(
図3のB-B線端面)の積層構造を示す模式図(拡大断面図)である。
【
図5】本発明第3の実施の形態に係るマスク本体部の積層構造を示す模式図(拡大断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を
図1ないし
図5を用いて説明する。
【0013】
マスクには、種々のタイプがある。例えば、横方向の折り目から形成される襞(プリーツ)を複数備える「プリーツ加工型」、又は、プリーツを有さず顔の凹凸に沿った形状の「立体型」等が知られる。
【0014】
本発明マスクの第1の実施の形態を示す
図1において、10はマスクで、着用者の顔面の一部(例えば、口や鼻孔の周辺)を覆うためのマスク本体部11と、当該マスク本体部11の左右両側に取り付けられた、細紐製の耳掛け部12によって構成されている。
マスク10は「プリーツ加工型」で、マスク本体部11は、複数(
図1では4本)の横方向の折り目14から形成されるプリーツ15を有している。当該プリーツ15は、着用時に展開するとマスク10の外側に向かって膨らむ立体形状となるように構成されている。このように、マスク本体部11がプリーツ加工されることで、着用者の口元がマスク本体部11の内側面と物理的に接触することが少なくなるので、着用時の呼吸や会話の妨げになり難くなる。
【0015】
マスク本体部11は、縦方向及び横方向を有する複数のシート体が重ね合わされた多層の積層体からなるが、細菌、ウイルス飛沫、花粉等の異物の除去、プリーツの立体形状の保持及び耐久性の観点から、2~7層の多層構造であることが好ましく、3~6層の多層構造であることがより好ましく、4~5層の多層構造であることがさらに好ましい。
尚、本明細書において、クッション部材はマスク本体部の積層体の層数としてカウントしない。
【0016】
マスク本体部11は、
図2に示すように、マスクの外側(顔面に触れる側とは反対側)から内側(顔面に触れる側)に向かって、最外層のシート体16、第1中間層のシート体17a、第2中間層のシート体17b、クッション部材18、及び最内層のシート体19の順で、シート体が4層積層された構成を有する。
本発明において、最外層のシート体とは、マスク本体部の最外に配置されるシート体をいい、マスク本体部の全部を覆うものであってもよいが、少なくとも一部を覆うものであってもよい。また、最内層のシート体とは、マスク本体部の最内に配置されるシート体をいい、マスク本体部の全部を覆うものであってもよいが、少なくとも一部を覆うものであってもよい。よって、マスク本体部は、部分的に層数が異なる積層構造をとり得る。
【0017】
この実施の形態において、最内層のシート体19は、第1及び第2中間層のシート体17a、17b、及びクッション部材18よりも上下方向に長尺に形成され、最内層のシート体19の上部及び下部が第1中間層のシート体17aの外側面側に折りたたまれて、最外層のシート体16を形成している。
最外層のシート体を、中間層のシート体、及びクッション部材より長尺に形成し、最外層のシート体の上部及び下部を中間層のシート体の内側面側に折りたたみ、最内層のシート体を形成することもできるが、この場合、折りたたんだ最外層のシート体の上下端部がマスク着用時に使用者の肌にあたり、使用感が低下してしまう。そのため、マスク着用時の肌あたりの観点から、最内層のシート体の上部及び下部が外側面側に折りたたまれている方が好ましい。
【0018】
この実施の形態におけるクッション部材18は、最外層のシート体16と最内層のシート体19との間の上縁部と下縁部の2カ所の周縁部に沿って設けられている。このようにクッション部材がマスク着用者の肌に直接触れることが無いように、クッション部材を設けることで、当該クッション部材がマスク着用時の動作に伴う顔のラインの変化に追従するため、マスク着用時にマスク本体部と鼻部、顎部等との隙間からの粉塵や花粉等のマスク内への侵入を防ぐことができる。
【0019】
本発明のマスク10には、目的に応じてノーズフィッター13を設けることができる。ノーズフィッター13は、マスク10を着用者の鼻に密接させるためにマスク本体部11の上辺部分に設けられる。また、マウスバーを設けてもよい。マウスバーは、マスク10の立体形状を維持するためにマスク本体部11の中央部に設けられる。
ノーズフィッターやマウスバーとしては、金属製、ポリエチレン製、又は、ポリプロピレン製等から形成されるテープを使用することができる。
マスク10において、ノーズフィッター13は、最外層のシート体16と第1中間層のシート体17aの間に設けられている。
【0020】
次に、
図3を用いて、本発明マスクの第2の実施の形態について説明する。
図3において、20はマスクで、基本的な構成は
図1に示した第1の実施の形態と同一であるが、この第2の実施の形態においては、マスク本体部21は、
図4に示すように、マスクの外側(顔面に触れる側とは反対側)から内側(顔面に触れる側)に向かって、最外層のシート体16、第1中間層のシート体17a、第2中間層のシート体17b、第3中間層のシート体17c、クッション部材18、及び最内層のシート体19の順で、シート体が5層積層された構成を有する。
この実施の形態において、第3中間層のシート体17cは、第1及び第2中間層のシート体17a、17bよりも上下方向に長尺に形成され、第3中間層のシート体17cの上部及び下部が第1中間層のシート体17aの外側面側に折りたたまれて、最外層のシート体16を形成している。
【0021】
この実施の形態におけるクッション部材18は、最外層のシート体16と最内層のシート体19との間の上縁部に沿って1カ所設けられている。このようにクッション部材を設けても、当該クッション部材がマスク着用時の動作に伴う顔のラインの変化に追従するため、マスク着用時にマスク本体部と鼻部等との隙間からの粉塵や花粉等のマスク内への侵入を防ぐことができる。
【0022】
マスク20において、ノーズフィッター13は、最外層のシート体16と第1中間層のシート体17aの間に設けられている。
【0023】
次に、
図5を用いて、本発明マスクの第3の実施の形態について説明する。
図5において、31はマスク30(図示なし)のマスク本体部で、マスク30の基本的な構成は
図1に示した第1の実施の形態と同一であるが、この第3の実施の形態においては、マスク本体部31は、
図5に示すように、マスクの外側(顔面に触れる側とは反対側)から内側(顔面に触れる側)に向かって、最外層のシート体16、クッション部材18、第1中間層のシート体17a、第2中間層のシート体17b及び最内層のシート体19の順で、シート体が4層積層された構成を有する。
この実施の形態において、最内層のシート体19は、第1及び第2中間層のシート体17a、17bよりも上下方向に長尺に形成され、最内層のシート体19の上部がクッション部材18の外側面側に、最内層のシート体19の下部が第1中間層のシート体17aの外側面側に折りたたまれて、それぞれ最外層のシート体16を形成している。
【0024】
この実施の形態におけるクッション部材18は、最外層のシート体16と最内層のシート体19との間の上縁部に沿って1カ所設けられている。このようにクッション部材を設けても、当該クッション部材がマスク着用時の動作に伴う顔のラインの変化に追従するため、マスク着用時にマスク本体部と鼻部等との隙間からの粉塵や花粉等のマスク内への侵入を防ぐことができる。
【0025】
マスク30において、ノーズフィッター13は、最外層のシート体16とクッション部材18の間に設けられている。
【0026】
マスク本体部11、21及び31は、特に限定されず、例えば、縫製、超音波溶着、熱融着等により適宜形成することができる。
【0027】
本発明において、シート体を構成する材料としては、一般にマスクの材料として周知の材料を用いることができる。具体的には、ポリエステル(PET)系繊維、ポリプロピレン(PP)系繊維、ポリエチレン(PE)系繊維、レーヨン系線維、ナイロン系線維、アセテート系線維、羊毛系線維、コットン系線維、ウレタン系線維、アクリル系線維等が挙げられる。加工性及び形状保持性の観点から、特に、PET系繊維やPP系繊維、PE系繊維、コットン繊維等からなる不織布及び布帛を使用することが好ましい。
【0028】
次に、最外層のシート体、中間層のシート体、クッション部材及び最内層のシート体について説明する。
[最外層のシート体]
最外層のシート体は、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布、湿式不織布等の不織布及び布帛を用いることができる。加工性及び形状保持性の観点から、スパンボンド不織布が好ましい。
【0029】
また、好みに応じて最外層のシート体に着色剤や柄模様を付与することができる。特に、着色剤としてはピンク系、オレンジ系、ラベンダー系、イエロー系等の色が、柄模様としてはハート柄、チェック柄、花柄、レース柄等の模様が好ましい。
【0030】
[中間層のシート体]
少なくとも最外層のシート体及び最内層のシート体で挟まれた層を中間層のシート体とする。
中間層のシート体は、最外層のシート体の不織布と同様の不織布を用いることができるが、細菌、ウイルス飛沫、花粉等の捕集性の観点から、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布が好ましい。
【0031】
前記メルトブロー不織布は、細菌、ウイルス飛沫、花粉等を捕集する機能を向上させるために、エレクトレット化処理したものを用いることが好ましい。中間層のシート体にエレクトレット化処理された不織布を用いることにより、微細な花粉や粉塵を効率良く捕集することができる。
【0032】
中間層のシート体は、一つであってもよいが、必要に応じて、複数設けることができる。例えば、細菌、ウイルス飛沫、花粉等を捕集する機能を向上させるために、第2中間層や第3中間層のシート体として、メルトブロー不織布を追加したり、抗菌剤や香料等、適宜所望の処理を施したスパンボンド不織布等を追加したりすることができる。香料としてはアロマ系等が好ましい。
【0033】
[クッション部材]
クッション部材は、最外層のシート体と同様の不織布の他、ウレタン素材、ポリエチレン系の合成樹脂を発泡させた発泡樹脂材等を用いることができるが、圧縮特性の観点から、不織布及びウレタン素材が好ましく、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布がより好ましい。
不織布をクッション部材として用いる場合、複数枚積層して用いることもできる。
【0034】
クッション部材は、マスク本体部の最外層のシート体と最内層のシート体との間の上縁部、下縁部及び左右縁部から選ばれる少なくとも一つの周縁部に沿って設けられる。クッション部材は略長方形状である。
本発明において、クッション部材は、マスク本体部の積層構造における最外層のシート体と最内層のシート体との間の上縁部、下縁部及び左右縁部から選ばれる少なくとも一つの周縁部に沿って有していればよいが、マスク本体部と着用者の肌との密着性の観点から、上記マスク10のように上縁部及び下縁部に有していることが好ましい。
【0035】
上縁部及び/又は下縁部に設けられたクッション部材の大きさは、それぞれ、縦巾1~3.5cm×横巾12~21cmが好ましく、縦巾1.5~3cm×横13~19cmがより好ましく、縦巾2~2.5cm×横14~17cmがさらに好ましい。縦巾1cm×横巾12cm以上とすることでマスク本体部と着用者の肌との密着性が向上し、細菌、ウイルス飛沫、花粉等の捕集性を高めることができる。一方、縦巾3.5cm×横巾21cm以下とすることでマスク本体部の通気性が向上し、マスク内のムレが生じにくくなる。
左右縁部に設けられたクッション部材の大きさは、それぞれ、縦巾7~10cm×横巾2~5cmが好ましく、縦巾8~9cm×横巾3~4cmがより好ましい。縦巾7cm×横巾2cm以上とすることでマスク本体部と着用者の肌との密着性が向上し、細菌、ウイルス飛沫、花粉等の捕集性を高めることができる。一方、縦巾10cm×横巾5cm以下とすることでマスク本体部の通気性が向上し、マスク内のムレが生じにくくなる。
【0036】
上縁部及び/又は下縁部に設けられたクッション部材の縦方向の巾は、マスク本体部の縦方向の巾を1とした場合、それぞれ、1/9~2/5が好ましく、1/4~1/3がより好ましい。
左右縁部に設けられたクッション部材の横方向の巾は、マスク本体部の横方向の巾を1とした場合、それぞれ、1/10~1/3が好ましく、1/7~1/4がより好ましい。
上縁部及び下縁部の巾を1/9以上、左右縁部の巾を1/10以上とすることで、マスク本体部と着用者の肌との密着性が向上し、細菌、ウイルス飛沫、花粉等の捕集性を高めることができる。上縁部及び下縁部の巾を2/5以下、左右縁部の巾を1/3以下とすることで、マスク本体部の通気性が向上し、マスク内のムレが生じにくくすることができる。
【0037】
上縁部に設けられたクッション部材の面積は、マスク本体部の面積を1とした場合、0.15~0.45であることが望ましく、0.2~0.4であることがより好ましく、0.25~0.35であることがさらに好ましい。
下縁部に設けられたクッション部材の面積は、マスク本体部の面積を1とした場合、0.1~0.4であることが望ましく、0.15~0.35であることがより好ましく、0.2~0.3であることがさらに好ましい。
左右縁部に設けられたクッション部材の面積は、マスク本体部の面積を1とした場合、それぞれ、0.2~0.7であることが望ましく、0.25~0.6であることがより好ましく、0.3~0.5であることがさらに好ましい。
マスク本体部の全面積1に対して、上縁部のクッション部材の面積を0.15以上、下縁部の面積を0.1以上又は左右縁部の面積を0.2以上とすることで、マスク本体部と着用者の肌との密着性が向上し、細菌、ウイルス飛沫、花粉等の捕集性を高めることができる。一方、上縁部の面積を0.45以下、下縁部の面積を0.4以下又は左右縁部の面積を0.7以下とすることで、マスク本体部の通気性が向上し、マスク内のムレが生じにくくすることができる。
【0038】
クッション部材の厚みは0.5~5mm、より好ましくは1.5~4mm、さらに好ましくは2~3.5mmである。0.5mm以上とすることで、十分な強度を得ることができる。一方、5mm以下とすることで、製造時の歩留まりを向上することができる。
【0039】
クッション部材の目付は、形状保持性等の観点から、20~100g/m2、より好ましくは25~80g/m2、さらに好ましくは30~60g/m2である。
【0040】
クッション部材の圧縮回復性は、着用時の顔のラインへの密着性の観点から、40~75%、より好ましくは45~70%、さらに好ましくは50~65%である。圧縮回復性が40%以上とすることで、クッション部を着用時の動作時に顔のラインに追従しやすくすることができる。
【0041】
クッション部材の圧縮仕事量は、着用時の顔のラインへの密着性の観点から、1.5~7N・m/m2、より好ましくは2.1~6N・m/m2、さらに好ましくは3~5N・m/m2である。圧縮回復性が1.5N・m/m2以上とすることで、クッション部を着用時の動作時に顔のラインに追従しやすくすることができる。
【0042】
[最内層のシート体]
最内層のシート体は、最外層のシート体と同様の不織布及び布帛を用いることができる。不織布を用いる場合、加工性及び形状保持性の観点から、スパンボンド不織布、湿式不織布、サーマルボンド不織布が、布帛を用いる場合、コットン系繊維からなる布帛が好ましい。
【0043】
耳掛け部12を構成する材料としては、ウレタン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等からなる織布、不織布、組紐、織紐、又は、編紐が挙げられる。
【0044】
図1及び
図3に示すように、本発明のマスク10、20及び30には、目的に応じてサイドカバーSを設けることができる。サイドカバーは、マスク左右端部の肌あたりを向上させるために設けられる。
【0045】
マスク本体部11、21及び31の寸法は、顔のサイズを考慮して適宜決定すればよい。例えば、縦方向の長さとしては、50~140mmであることが好ましく、60~120mmであることがより好ましく、70~100mmであることがさらに好ましい。
横方向の長さとしては100~210mmであることが好ましく、130~200mmであることがより好ましく、145~180mmであることがさらに好ましい。
プリーツ加工が施されたマスク等の立体型マスクの場合、縦方向の長さとしては、70~200mmであることが好ましく、90~190mmであることがより好ましく、120~180mmであることがさらに好ましい。
【実施例0046】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0047】
本明細書における各測定項目の測定方法は下記のとおりである。
(1)厚み
尾崎製作所製厚み測定器(ダイヤルシックネスゲージ ITG)を用いて測定した。
(2)目付(g/m2)
JIS P 8124(紙及び板紙-坪量の測定方法)に基づいて測定した。
(3)圧縮仕事量(WC)及び(4)圧縮回復性(RC)
カトーテック社製KES-FB3-Aを用いて測定した。まず、クッション部材を1層又は複数層重ねた状態で10cm×10cmの大きさに切り取って試験台に置き、次いで、面積2cm2の円形平面をもつ銅製の加圧子を試料上方から、速度0.02mm/sec、最大圧縮応力50gf/cm2の条件で試料に押し込み圧縮し、データを測定した。得られたデータから、数値処理によりWC及びRCを算出した。WCが大きいほど圧縮されやすく、RCが大きいほど回復性がよいことを示す。
【0048】
(5)マスク着用時の漏れ率試験
マスクに対して、JIS規格(JIS T 8159:2006呼吸用保護具の漏れ率試験方法)に基づいてマスク漏れ率試験を行った。本マスク漏れ率試験は、NaClが充満したチャンバ(試験室)に被験者がマスクをつけて入り、静止したり、顔を左右に向けたり、上下に動かしたり、発声したり等の動作を行い、その度にマスク内のNaClの濃度を測定して、NaClがマスク内部にどの程度吸引されるかを見るものである。マスク内部へのNaClの吸引を完全に遮断していればマスク内のNaCl濃度は0で漏れ率は0%、NaClがマスク内部に完全に吸引されている場合にはマスク内のNaCl濃度はチャンバ内のNaCl濃度と同じとなり漏れ率は100%となる。顔を左右に向けたり、上下に動かしたり、発声したり等の動作実施後の静止状態において、1分ごとに3回NaCl濃度を測定し、それらの平均を取ったものを漏れ率とした。測定条件は、NaCl粒子0.06~0.1μm、平均濃度8±4mg/m3とした。
【0049】
[実施例1]
下記の最外層のシート体、中間層のシート体、クッション部材及び最内層のシート体を用いて、プリーツ型のマスク10(プリーツ展開前の大きさは、縦巾90mm×横巾145mm)を作製した。
最外層のシート体は、PP繊維を用い、スパンボンド法にて作製した目付が15g/m2の不織布を用いた。
中間層のシート体は、PP繊維を用い、メルトブロー法にて作製した目付けが20g/m2の不織布を用いた。
クッション部材は、PP及びPE繊維を用い、エアスルー法にて作製した目付が24g/m2、厚みが1.3mm不織布を2枚積層したものを用いた。クッション部材はマスク本体部の上縁部に縦巾25mm×横巾145mm、下縁部に縦巾20mm×横巾145mmの大きさにして設けた。
クッション部材の圧縮回復性は1枚では55.2%、2枚積層した状態では56.2%、圧縮仕事量は1枚では2.0N・m/m2、2枚積層した状態では3.8N・m/m2であった。
最内層のシート体は、PP繊維を用い、サーマルボンド法にて作製した目付が18g/m2の不織布を用いた。
また、マスク本体部の上縁部にはノーズフィッターを、左右端部にはサイドカバーを設けた。
【0050】
[実施例2]
マスク本体部において下縁部にクッション部材を設けなかった以外は実施例1と同様にしてマスクを作製した。上縁部のクッション部材の大きさは、縦巾25mm×横巾145mmとした。
【0051】
[比較例1]
マスク本体部において上縁部及び下縁部のクッション部材を除いた以外は、実施例1と同様にしてマスクを作製した。
【0052】
各試験例のマスクを用いて実施した、漏れ率試験の結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
このように、実施例1及び2の漏れ率は、比較例1の漏れ率に比べて非常に低くなっている。また、上縁部及び下縁部にクッション部材を設けた実施例1は、実施例2に比べて漏れ率がさらに低くなっている。これは、実施例1及び2において、上縁部又は/及び下縁部に、クッション部材を有したことで、着用時の動作時にマスク本体部の上縁部又は/及び下縁部が顔のラインに追従し、鼻部等の隙間からマスク内へのNaClの侵入を効果的に抑制できたためと考えられる。
【0055】
下記の最外層のシート体、中間層のシート体、クッション部材及び最内層のシート体を用いて、プリーツ型のマスク(プリーツ展開前の大きさは、縦巾90mm×横巾145mm)を作製することができる。
最外層のシート体は、PP繊維を用い、スパンボンド法にて作製した目付が15g/m2の不織布を用いる。
第1中間層のシート体は、PP繊維を用い、メルトブロー法にて作製した目付けが20g/m2の不織布を用いる。
第二中間層のシート体は、PP繊維を用い、サーマルボンド法にて作製した目付が18g/m2の不織布を用いる。
クッション部材は、PP及びPE繊維を用い、エアスルー法にて作製した目付が48g/m2、厚みが2.6mm不織布を用いる。クッション部材はマスク本体部の上縁部に、縦巾25mm×横巾145mmの大きさにして設ける。
最内層のシート体は、スパンボンド法にて作製したPP繊維18g/m2及びPEフィルム9g/m2を貼り合わせた不織布を用いる。最内層のシート体はマスク本体部の上縁部に、縦巾25mm×横巾145mmの大きさにして設ける。
【0056】
実施例1及び2のクッション部材を、ニードルパンチ不織布(原料はPET繊維、目付55g/m2、厚み0.5mm、圧縮仕事量0.69N・m/m2、圧縮回復性59.0%)、ニードルパンチ不織布(原料はPP繊維及びアクリル繊維、目付80g/m2、厚み1.4mm、圧縮仕事量0.93N・m/m2、圧縮回復性50.6%)又はエアスルー不織布(原料はPET繊維及びPE繊維、目付48g/m2、厚み2.6mm、圧縮仕事量3.78N・m/m2、圧縮回復性56.3%)とし、マスクを製造することができる。
【0057】
これらの実施例1及び2に用いたクッション部材を、マスクの左右縁部に設けて、製造することができる。