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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095461
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】位置決めピン
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/18 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
B23Q3/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211375
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】錦戸 洋航
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016HA01
(57)【要約】
【課題】 パネル部品等のワークに対して位置決めを行う際に、使用されるワークの寸法のばらつきにより生じる位置決めピンへの挿入のし難さを解消できる位置決めピンを提供する。
【解決手段】 ワークの位置決めのための前記ワークに形成された挿入口に挿入される位置決めピンであって、位置決めピンは、前記位置決めピンの挿入方向に対して、垂直方向に移動する可動部と、前記可動部を前記垂直方向に移動自在に固定する固定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの位置決めのための前記ワークに形成された挿入口に挿入される位置決めピンであって、
前記位置決めピンの挿入方向に対して、垂直方向に移動する可動部と、
前記可動部を前記垂直方向に移動自在に固定する固定部と、
を備える
位置決めピン。
【請求項2】
前記可動部は、前記挿入口の開口部分の内部で移動し、前記固定部と前記可動部とが前記挿入口に挿入される
ことを特徴とする請求項1に記載の位置決めピン。
【請求項3】
前記固定部は、少なくとも第1柱状部と、前記第1柱状部に間隔をあけて隣接する第2柱状部とを有し、
前記可動部は、前記第1柱状部と前記第2柱状部の間に設けられ、
前記可動部は、前記第1柱状部と前記第2柱状部を接続するように設けられたピンを介して、前記垂直方向に摺動する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置決めピン。
【請求項4】
前記固定部は、前記挿入口に挿入される側において、前記第1柱状部と前記第2柱状部とを接続するキャップ部を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の位置決めピン。
【請求項5】
前記固定部は、更に、第3柱状部と第4柱状部と、を備え、
前記第3柱状部は、前記第1柱状部と前記第4柱状部に対向するように前記第1柱状部と前記第4柱状部に間隔をあけて隣接し、
前記第4柱状部は、前記第2柱状部と前記第3柱状部に対向するように前記第2柱状部と前記第3柱状部に間隔をあけて隣接し、
前記可動部は、2枚の板状の部材が互いに垂直に組み合わされた平面視十字状の部材であり、
前記可動部は、前記第1柱状部及び前記第3柱状部と、前記第2柱状部及び前記第4柱状部との間を摺動し、
前記可動部は、前記第1柱状部及び前記第3柱状部の間で移動しないように前記第1柱状部及び前記第3柱状部により挟み込まれるとともに、前記第2柱状部及び前記第4柱状部の間で移動しないように前記第2柱状部及び前記第4柱状部により挟み込まれて成る
ことを特徴とする請求項3に記載の位置決めピン。
【請求項6】
前記固定部は、前記挿入口に挿入される側において、前記第1柱状部と前記第2柱状部と前記第3柱状部と前記第4柱状部とを接続するキャップ部を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の位置決めピン。
【請求項7】
前記固定部は、環状の部材であり、
前記可動部は、前記環状の部材の管内で前記垂直方向に移動し、
前記可動部が前記挿入口に挿入される
ことを特徴とする請求項1に記載の位置決めピン。
【請求項8】
前記固定部は、前記環状の壁面を貫通する貫通ピンを備え、
前記可動部は、前記貫通ピンを挿入する貫通孔を備え、
前記可動部は、前記貫通ピンに沿って前記固定部の管内を移動する
ことを特徴とする請求項7に記載の位置決めピン。
【請求項9】
前記可動部の長尺寸法は、前記挿入口の開口部の直径よりも短い
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の位置決めピン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを正しい位置で取り付けるための位置決めピンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ライン上でワークを治具等に正しい位置に取り付ける手法の一つとして、治具に取り付けられた複数の位置決めピンを、ワークに設けられた挿入口に挿入することで、位置決めを行う。特許文献1は、可動部材(ワーク)を精度良く基準部材(テーブル)に位置決め固定させることを目的として、ワークの位置決め用穴に位置決めピンを挿入してワークを位置決めするにあたって、ワークに形成された平面位置決め基準穴に対向する平面位置決めピンと、ワークに形成された回転位置決め基準穴に対向する回転位置決めピンとを備える構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-21598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した位置決めピンとして、例えば、ダイヤピン等を用いることができるがワークの寸法や挿入口の位置などはワークの大量生産の過程の中でどうしても寸法の狂いや挿入口の位置ずれなどが発生するという問題がある。このような位置ずれが発生すると、挿入口と位置決めピンとが強く干渉する可能性があり、そのような場合に、ワークの治具への取付に時間がかかったり、ワークを痛める可能性があったりするといった問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、ワークに強干渉することなくワークを取り付けることができる位置決めピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る位置決めピンは、ワークの位置決めのための前記ワークに形成された挿入口に挿入される位置決めピンであって、前記位置決めピンの挿入方向に対して、垂直方向に移動する可動部と、前記可動部を前記垂直方向に移動自在に固定する固定部と、を備える。
【0007】
上記位置決めピンにおいて、前記可動部は、前記挿入口の開口部分の内部で移動し、前記固定部と前記可動部とが前記挿入口に挿入されることとしてもよい。
【0008】
上記位置決めピンにおいて、前記固定部は、少なくとも第1柱状部と、前記第1柱状部に間隔をあけて隣接する第2柱状部とを有し、前記可動部は、前記第1柱状部と前記第2柱状部の間に設けられ、前記可動部は、前記第1柱状部と前記第2柱状部を接続するように設けられたピンを介して、前記垂直方向に摺動することとしてもよい。
【0009】
上記位置決めピンにおいて、前記固定部は、前記挿入口に挿入される側において、前記第1柱状部と前記第2柱状部とを接続するキャップ部を備えることとしてもよい。
【0010】
上記位置決めピンにおいて、前記固定部は、更に、第3柱状部と第4柱状部と、を備え、前記第3柱状部は、前記第1柱状部と前記第4柱状部に対向するように前記第1柱状部と前記第4柱状部に間隔をあけて隣接し、前記第4柱状部は、前記第2柱状部と前記第3柱状部に対向するように前記第2柱状部と前記第3柱状部に間隔をあけて隣接し、前記可動部は、2枚の板状の部材が互いに垂直に組み合わされた平面視十字状の部材であり、前記可動部は、前記第1柱状部及び前記第3柱状部と、前記第2柱状部及び前記第4柱状部との間を摺動し、前記可動部は、前記第1柱状部及び前記第3柱状部の間で移動しないように前記第1柱状部及び前記第3柱状部により挟み込まれるとともに、前記第2柱状部及び前記第4柱状部の間で移動しないように前記第2柱状部及び前記第4柱状部により挟み込まれて成ることとしてもよい。
【0011】
上記位置決めピンにおいて、前記固定部は、前記挿入口に挿入される側において、前記第1柱状部と前記第2柱状部と前記第3柱状部と前記第4柱状部とを接続するキャップ部を備えることとしてもよい。
【0012】
上記位置決めピンにおいて、前記固定部は、環状の部材であり、前記可動部は、前記環状の部材の管内で前記垂直方向に移動し、前記可動部が前記挿入口に挿入されることとしてもよい。
【0013】
上記位置決めピンにおいて、前記固定部は、前記環状の壁面を貫通する貫通ピンを備え、前記可動部は、前記貫通ピンを挿入する貫通孔を備え、前記可動部は、前記貫通ピンに沿って前記固定部の管内を移動することとしてもよい。
【0014】
上記位置決めピンにおいて、前記可動部の長尺寸法は、前記挿入口の開口部の直径よりも短いこととしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の位置決めピンによると、位置決めピンの可動部が、挿入口の開口部分の範囲内において、可動することができるので、位置決めピンを挿入口に挿入する際に強干渉することがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)実施形態1に係る位置決めピンの斜視図である。(b)実施形態1に係る位置決めピンの分解斜視図である。
図2】(a)実施形態1に係る位置決めピンの天面図である。(b)実施形態1に係る位置決めピンの正面図である。
図3】(a)図2(b)のB-B線で切断した場合の位置決めピンの断面図である。(b)図2(b)のA-A線で切断した場合の位置決めピンの断面図である。
図4】(a)~(d)はワークの位置決めピンへの取付過程を示す図であり、(e)は、ワークを位置決めピンに取り付けた状態の拡大斜視図である。
図5】(a)実施形態2に係る位置決めピンの斜視図である。(b)実施形態2に係る位置決めピンの分解斜視図である。
図6】(a)実施形態2に係る位置決めピンの天面図である。(b)実施形態2に係る位置決めピンの正面図である。
図7】(a)実施形態2に係る位置決めピンの右側面図である。(b)図7(a)のC-C線で切断した場合の位置決めピンの断面図である。
図8】(a)実施形態3に係る位置決めピンの斜視図である。(b)実施形態3に係る位置決めピンの分解斜視図である。
図9】(a)実施形態3に係る位置決めピンの天面図である。(b)実施形態3に係る位置決めピンの正面図である。(c)図9(b)のD-D線で切断した場合の位置決めピンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る位置決めピンについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<実施形態1>
図1図3を用いて、実施形態1に係る位置決めピン1について説明する。
【0019】
図1(a)は、位置決めピン1の斜視図であり、図1(b)は、位置決めピン1の分解斜視図を示している。また、図2(a)は、位置決めピン1の天面図であり、図2(b)は位置決めピン1の正面図である。また、図3(a)は、位置決めピン1の横断面図であり、図3(b)は、位置決めピン1の縦断面図である。より具体的には、図3(a)は、図2(b)に示す位置決めピン1をB-B線で切断した場合の断面図であり、図3(b)は、図2(b)に示す位置決めピン1をA-A線で切断した場合の断面図である。
【0020】
位置決めピン1は、ワークの位置決めのためのピンであって、ワークに形成される挿入口に挿入されて使用される。位置決めピン1は、図1(a)、(b)に示されるように、台部10上に、可動部11が載置され、台部10と固定部12とで可動部11を挟み込んでなる。
【0021】
固定部12は、4本の柱状部(第1柱状部12a、第2柱状部12b、第3柱状部12c、第4柱状部12d(図1(b)には、第3柱状部12cは図示せず)と、それら柱状部12a~12dを接続するキャップ部12eとから成る。第1柱状部12a、第2柱状部12b、第3柱状部12c、第4柱状部12dと、キャップ部12eとは、図示するように一体成型されて固定部12として構成されてよい。固定部12は、図2(a)等から理解されるように、全体として円柱状に構成された部材であり、その直径は、位置決めピン1が挿入されるワークの挿入口の開口部分の内径よりも短い。
【0022】
可動部11は、図1(b)に示されるように、2枚の板状の部材が互いに直交するように形成された天面視で十字状の部材である。また、可動部11は、その壁面が上部にいくほど細くなる、即ち、正面あるいは側面から見ると、例えば、図3(b)に示されるように、台形状に形成されている。なお、ここでは、可動部11を台形状の板を組み合わせた形状としているが、これは、半円状の板を十字に組み合わせたものであってもよい。可動部11は、天面視において(図3(a)参照)、板状の部材の最も長い部分の長さ(長尺寸法)は、位置決めピン1が挿入されるワークの挿入口の開口部分の内径よりもわずかに短い。
【0023】
台部10(位置決めピン1)には、挿入口15a、15b、16a、16b等の貫通孔が設けられている。台部10(位置決めピン1)は、挿入口15a、15b、16a、16bを介して、ワークと位置決めされる対象となる物体にネジ等を用いて、固定される。台部10は、図示の通り、中央部が円柱状に盛り上がっており、ネジ穴17が設けられている。各ネジ穴17は、固定部12の各柱状部に設けられるネジ穴(図示せず)と対向する。固定部12は、台部10のネジ穴17を通して、ネジ13により、台部10にねじ止めされる。
【0024】
可動部11の高さと、各柱状部12a~12dの高さは略同等であり、図1(a)、図2(b)に示されるように、各柱状部12a~12dの方が可動部11よりもわずかに高い。可動部11の高さを柱状部12aから12dの高さよりも短くすることで、可動部11をより滑らかに摺動させることができる。
【0025】
前述の通り、図3(a)は、位置決めピン1の横断面図である。図3(a)に示されるように、固定部12を構成する第1柱状部12aと、第2柱状部12bと、第3柱状部12cと、第4柱状部12dと、は互いに距離を置いて立設する。図3(a)の断面図から理解されるように各柱状部12a~12dは、扇状の柱である。図3(a)に示すように、第1柱状部12aは第2柱状部12b及び第3柱状部12cにそれぞれ直角に対向し、第2柱状部12bは、第1柱状部12a及び第4柱状部12dにそれぞれ直角に対向し、第3柱状部12cは第1柱状部12a及び第4柱状部12dにそれぞれ直角に対向し、第4柱状部12dは第2柱状部12b及び第3柱状部12cにそれぞれ直角に対向する。第1柱状部12aと第3柱状部12cとの間、及び、第2柱状部12bと第4柱状部12dとの間は、可動部11の壁面の幅と略同等の幅だけ離れている。これに対し、第1柱状部12及び第3柱状部12cと、第2柱状部12b及び第4柱状部12dと、の間は、可動部11の壁面の幅よりも長い距離離れるように構成されている。したがって、可動部11は、固定部12と台部10によって挟み込まれてはいるものの固定はされていないので、図2(b)及び図3(a)において、紙面左右方向に摺動することができる。よって、可動部11は、位置決めピン1の挿入方向(図1(a)、図2(b)の紙面上下方向)に対して、直交(垂直)方向に移動(摺動)するといえる。
【0026】
即ち、位置決めピン1はワークの挿入口に挿入される際に、その挿入口の内枠に接触した場合に、可動部11がその内枠にそって摺動するので、従来の位置決めピンよりも速やかに、挿入口に挿入することができる。
【0027】
なお、位置決めピン1を構成する各部材は、運用上問題がなければ、任意の素材により構成されてよい。
【0028】
<位置決めピンへのワークの取付例>
図4を用いて、ワークの位置決めピンへの取付の例を示す。図4(a)に示されるように、実施形態1に係る位置決めピン1と、従来の位置決めピン33(図4(a)の例では丸ピンであるが、これはダイヤピンであってもよい)に、ワーク30を取り付けるものとする。図4(a)に示されるように、ワーク30には、挿入口31と挿入口32とが設けられる。これらの挿入口31、32に位置決めピンを挿入することで、ワーク30の位置決めを行うことができる。なお、図4では、図示していないが、位置決めピン1と位置決めピン33は、ワーク30と位置決めされる対象に固定されているものとする。
【0029】
まず、図4(b)に示されるように、位置決めピン1と比して、自由度の低い位置決めピン33を、ワーク30の挿入口31に挿入する。次に、図4(c)に示されるように、位置決めピン1の先端を挿入口32に挿入する。このとき、ワーク30が設計通りに作られていれば特に問題なく、ワーク30を位置決めピン1、33に取り付けることができるが、挿入口31や挿入口32の形成位置にずれが生じていた場合、例えば、挿入口32が本来の位置よりも挿入口31寄りに形成されていると、位置決めピン1に従来の位置決めピン33を用いた場合には、位置決めピン33を挿入口31に挿入するには困難を伴うことになる。しかし、実施形態1に係る位置決めピン1によれば、ワーク30の挿入口32の開口部の内枠に可動部11が接触すると、可動部11が摺動するので、従来に比して、位置決めピン1は、挿入口32の開口部の内枠に引っかからずに、滑らかに挿入口32に挿入される。
【0030】
図4(e)は、位置決めピン1を挿入口32に挿入した状態の一例を示す拡大図であって、図4(d)の位置決めピン1周りを拡大した図である。図4(e)の挿入状態は、挿入口32が本来の設計よりも挿入口31寄りに形成されている場合の例を示している。図4(e)に示されるように、位置決めピン1の可動部11は、挿入口31寄りに摺動し、可動部11のうちの一つの壁面11aは、第1柱状部12aには、接触せず、挿入口31寄りになっていることが理解される。なお、可動部11は、位置決めピン1と位置決めピン33とを結ぶ方向に摺動するように構成することが好ましい。
【0031】
このように、固定部12の直径を、挿入口32の直径よりも短くし、可動部11の長尺方向の長さを挿入口32の直径とほぼ同等にしながらも、可動部11を固定部12に対して移動可能に構成することで、位置決めピン1を挿入口32に無理なく挿入することができる。
【0032】
<実施形態2>
図5図7を参照しながら、実施形態2に係る位置決めピン2について説明する。位置決めピン2は、位置決めピン1と同様にワークの位置決めのために用いられるピンであって、位置決めピン1と異なる可動部の移動のさせ方が可能な位置決めピンである。以下、詳細に説明する。
【0033】
図5(a)は、位置決めピン2の斜視図であり、図5(b)は、位置決めピン2の分解斜視図を示している。また、図6(a)は、位置決めピン2の天面図であり、図6(b)は位置決めピン2の正面図である。また、図7(a)は、位置決めピン2の右側面図であり、図7(b)は、位置決めピン2の縦断面図である。より具体的には、図7(b)は、図7(a)に示す位置決めピン2をC-C線で切断した場合の断面図である。
【0034】
図5(a)、(b)に示されるように、実施形態2に係る位置決めピン2は、台部50上に可動部51が載置され、台部50と固定部52とで可動部51を挟み込んでなる。
【0035】
固定部52は、2本の柱状部(第1柱状部52a、第2柱状部52b)と、それら柱状部52a、52bを接続するキャップ部52eとから成る。第1柱状部52a、第2柱状部52b、キャップ部52eは、図示するように一体成型されて固定部52として構成されてよい。第1柱状部52aには、軸54を通すための軸穴58が設けられる。また、図示していないが、第2柱状部52bにも、軸54を保持するための軸穴が設けられる。
【0036】
可動部51は、図5(b)に示されるように、1枚の台形(半円形であってもよい)の板状の部材である。可動部51には、1以上の貫通孔59が設けられている。
【0037】
そして、軸54は、軸穴58、貫通孔59を通って、第2柱状部52bの軸穴に接続する。即ち、可動部51は、軸54により、第1柱状部52aと第2柱状部52bとの間を摺動可能に保持される。
【0038】
台部50(位置決めピン2)には、挿入口55a、55b、56a、56b等の貫通孔が設けられている。台部50(位置決めピン2)は、挿入口55a、55b、56a、56bを介して、ワークと位置決めされる対象となる物体にネジ等を用いて、固定される。台部50は、図示の通り、中央部が円柱状に盛り上がっており、ネジ穴57が設けられている。各ネジ穴57は、固定部52の第1柱状部52a、52bに設けられるネジ穴(図示せず)と対向する。固定部52は、台部50のネジ穴57を通して、ネジ53により、台部50にねじ止めされる。
【0039】
可動部51の高さと、第1柱状部52a、第2柱状部52bの高さは略同等であり、図5(a)、図6(b)、図7(a)に示されるように、第1柱状部52a、第2柱状部52bの方が可動部11よりもわずかに高い。可動部51の高さを第1柱状部52a第2柱状部52bの高さよりも短くすることで、可動部51をより滑らかに摺動させることができる。
【0040】
図7(a)に示されるように、固定部52を構成する第1柱状部52aと、第2柱状部52bと、は互いに距離を置いて立設する。第1柱状部52a、第2柱状部52bは、半円柱状の柱である。図5(b)、図7(a)に示すように、第1柱状部52aは第2柱状部52bに対向する。そして、図7(a)に示されるように、第1柱状部52aと第2柱状部52bとの間は、可動部51の壁面の幅(厚み)よりも長い距離離れるように構成されている。可動部51は、固定部52と台部50によって挟み込まれてはいるものの固定はされておらず、軸54により支持されるので、図7(a)において、紙面左右方向に摺動することができる。即ち、可動部51は、第1柱状部52aと第2柱状部52bとの間で摺動する。換言すると、可動部51は、位置決めピン2の挿入方向(図5(a)、図7(a)の紙面上下方向)に対して、直交(垂直)方向に移動(摺動)するといえる。
【0041】
実施形態1に係る位置決めピン1と、実施形態2に係る位置決めピン2との相違点は、固定部と可動部との構成にある。具体的には、位置決めピン1の固定部12が4本の柱状部とキャップ部12eから成るのに対して、位置決めピン2の固定部52が2本の柱状部とキャップ部52eから成る。また、可動部11が平面視で十字状の板部材であったのに対し、可動部51は一枚の板部材である。しかし、いずれの位置決めピンも、可動部が固定部の柱状部間を摺動するという構成を有し、この構成により、ワークの挿入口の位置ずれがあったとしても、可動部の摺動により、位置決めピンを滑らかに挿入することができる。
【0042】
なお、位置決めピン2を用いたワークの取付例についての詳細は省略するが、図4に示した位置決めピン1と同様に、位置決めピン2は、可動部51が摺動することによって、ワークの挿入口に挿入されやすくなる。
【0043】
<実施形態3>
図8図9を参照しながら、実施形態3に係る位置決めピン3について説明する。
【0044】
図8(a)は、位置決めピン3の斜視図であり、図8(b)は、位置決めピン3の分解斜視図を示している。また、図9(a)は、位置決めピン3の天面図であり、図9(b)は位置決めピン3の正面図であり、図9(c)は、位置決めピン3の縦断面図である。より具体的には、図9(c)は、図9(b)に示す位置決めピン3をD-D線で切断した場合の断面図である。
【0045】
図8(a)、図8(b)に示されるように、位置決めピン3は、台部80上に設けられた環状の固定部82に、可動部81が挿入され、軸84により摺動可能に構成されたピンである。
【0046】
可動部81は、図8(b)に示されるように、円柱の上に、円錐が設けられた形状の部材であり、円柱部分に、軸84が通過する軸穴89(貫通孔)が設けられている。可動部81の円柱部分の直径は、位置決めピン3が挿入されるワークの挿入口の内径よりもわずかに短い。
【0047】
台部80は、環状の板部材であり、固定部82は台部80の中央において設けられる環状の部材である。台部80と固定部82とは一体成型されてよい。固定部82は、可動部81の直径よりもわずかに大きい幅の楕円状の内環88を有する。固定部82には、軸穴83aと、軸穴83aに対向する軸穴83bが設けられている。軸84は、固定部82の軸穴83a、可動部81の軸穴89、固定部82の軸穴83bを通って、ナット87によりねじ締結される。したがって、可動部81は、内観88内で軸84に沿って摺動する。即ち、図9(a)で言えば、紙面上下方向に摺動する。位置決めピン3は、図8(a)の紙面上方からワークの挿入口に挿入されるので、可動部81は、位置決めピン3がワークに挿入される挿入方向に対して、直交(垂直)方向に摺動するといえる。
【0048】
台部80(位置決めピン3)には、挿入口85a、85b、86a、86b等の貫通孔が設けられている。台部50(位置決めピン2)は、挿入口85a、85b、86a、86bを介して、ワークと位置決めされる対象となる物体にネジ等を用いて、固定される。
【0049】
なお、位置決めピン3を用いたワークの取付例についての詳細は省略するが、図4に示した位置決めピン1と同様に、位置決めピン3は、可動部81が摺動することによって、ワークの挿入口に挿入されやすくなる。
【0050】
なお、上記実施形態1~3においては、位置決めピンが位置決めピンの挿入方向に対して垂直方向に摺動する可動部を備えることで、位置決めピンをワークの挿入口に挿入しやすくすることができる。この時、可動部は、ワークにおける挿入口等の位置ずれやワークの設計ミス等に起因するずれを吸収するために設けられるものではあるが、可動部の可動範囲は、ワークにおける処理を実行するにあたって設計上許容される範囲内におさまるように設定される。
【符号の説明】
【0051】
1、2、3 位置決めピン
10、50、80 台部
11、51、81 可動部
12、52、82 固定部
12a 第1柱状部
12b 第2柱状部
12c 第3柱状部
12d 第4柱状部
13、53 固定ネジ
15a、15b、16a、16b、55a、55b、56a、56b、85a、85b、86a、86b 挿入口
17、57 ネジ穴
30 ワーク
31、32 挿入口
54 摺動軸
58 軸穴
59 貫通孔
83a、83b 軸穴
84 軸
87 ナット
89 軸穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9