(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095474
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】推算方法、肌状態評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20230629BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
G01N33/50 Q
G01N33/48 M
G01N33/48 P
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211394
(22)【出願日】2021-12-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】390018913
【氏名又は名称】株式会社ホーマーイオン研究所
(71)【出願人】
【識別番号】599125249
【氏名又は名称】学校法人武庫川学院
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】野本 晃司
(72)【発明者】
【氏名】占部 博也
(72)【発明者】
【氏名】市川 秀之
(72)【発明者】
【氏名】秋本 龍二
(72)【発明者】
【氏名】平尾 哲二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 萌生
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA40
2G045BA13
2G045BB24
2G045CB01
2G045CB09
2G045DB22
2G045FA19
2G045JA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、肌に直接接触させる電極を備えた専用測定機器を用いることなく角層水分量または経表皮水分蒸散量(TEWL)の推算を行うことができる推算方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 対象者の角層水分量を推定する推算方法であって、対象者の肌のレプリカから、肌表面の凹凸情報に関するレプリカ由来パラメータを算出するレプリカ由来パラメータ算出工程と、前記対象者の皮膚から採取した角層を染色する染色工程と、前記染色工程によって染色された前記角層の染色画像に基づき、前記角層の剥離状態に関する角層由来パラメータを算出する角層由来パラメータ算出工程と、予め取得された、前記レプリカ由来パラメータ及び前記角層由来パラメータと、角層水分量と、の相関関係を示す予測式を用いて、前記対象者の角層水分量を推算する推算工程と、を備えることを特徴とする推算方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の角層水分量を推算する推算方法であって、
対象者の肌のレプリカから、肌表面の凹凸情報に関するレプリカ由来パラメータを算出するレプリカ由来パラメータ算出工程と、
前記対象者の皮膚から採取した角層を染色する染色工程と、
前記染色工程によって染色された前記角層の染色画像に基づき、前記角層の剥離状態に関する角層由来パラメータを算出する角層由来パラメータ算出工程と、
予め取得された、前記レプリカ由来パラメータ及び前記角層由来パラメータと、角層水分量と、の相関関係を示す予測式を用いて、前記対象者の角層水分量を推算する推算工程と、
を備えることを特徴とする推算方法。
【請求項2】
前記レプリカ由来パラメータ算出工程において、前記レプリカ由来パラメータとして、肌表面の凹凸数を算出し、
前記角層由来パラメータ算出工程において、前記角層由来パラメータとして、角層ダメージ面積及び角層ダメージ率を算出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の推算方法。
【請求項3】
前記予測式は、
標本集団で実測して得られた角層水分量と、
該標本集団の肌のレプリカから算出された前記レプリカ由来パラメータ、及び、該標本集団の皮膚から採取した角層を染色して得られた染色画像に基づいて算出された前記角層由来パラメータと、
を用いた重回帰分析により予め取得された重回帰式であることを特徴とする、請求項1または2に記載の推算方法。
【請求項4】
対象者のTEWLを推算する推算方法であって、
対象者の肌のレプリカから、肌表面の凹凸情報に関するレプリカ由来パラメータを算出するレプリカ由来パラメータ算出工程と、
前記対象者の皮膚から採取した角層を染色する染色工程と、
前記染色工程によって染色された前記角層の染色画像に基づき、前記角層の剥離状態に関する角層由来パラメータを算出する角層由来パラメータ算出工程と、
予め取得された、前記レプリカ由来パラメータ及び前記角層由来パラメータと、TEWLと、の相関関係を示す予測式を用いて、前記対象者のTEWLを推算する推算工程と、
を備えることを特徴とする推算方法。
【請求項5】
前記レプリカ由来パラメータ算出工程において、前記レプリカ由来パラメータとして、肌表面の凹凸数を算出し、
前記角層由来パラメータ算出工程において、前記角層由来パラメータとして、角層ダメージ面積及び角層ダメージ率を算出する
ことを特徴とする、請求項4に記載の推算方法。
【請求項6】
前記レプリカ由来パラメータ算出工程において、前記レプリカ由来パラメータとして、さらに肌表面の凹凸長さを算出する
ことを特徴とする、請求項5に記載の推算方法。
【請求項7】
前記予測式は、
標本集団で実測して得られたTEWLと、
該標本集団の肌のレプリカから算出された前記レプリカ由来パラメータ、及び、該標本集団の皮膚から採取した角層を染色して得られた染色画像に基づいて算出された前記角層由来パラメータと、
を用いた重回帰分析により予め取得された重回帰式であることを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1つに記載の推算方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちいずれか1つに記載の推算方法による推算結果に基づき、前記対象者の肌の状態を評価する、肌状態評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の角層水分量及び/またはTEWLを推算する推算方法及び該推算方法の結果に基づく肌状態評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肌の健康上、肌の状態に合わせて適切な化粧料を選択することは、非常に重要である。適切な化粧料を選択するうえで、肌の状態を定量的に評価することは、きわめて大切である。
【0003】
肌の状態を定量的に評価するためのパラメータとして、角層水分量や経表皮水分蒸散量(TEWL)が用いられる。角層水分量は、角層中に含まれる水分量を示す値であり、この値が大きいほど角層中の水分量が多く、肌が良好な状態であることを示す。経表皮水分蒸散量(TEWL)は、単位時間・単位面積当たりに体内から表皮を介して失われた水分量を示す値であり、この値が小さいほど、皮膚バリア機能が高く、肌が良好な状態であることを示す。
【0004】
従来、角層水分量や経表皮水分蒸散量(TEWL)を推算する推算方法が種々提案されている。
特許文献1には、被検者の皮膚に電極を接触させて交流信号を肌に透過させ、該肌から検出した信号から角層の皮膚インピーダンス値を算出し、この皮膚インピーダンス値から角層水分量を推算する推算方法が提案されている。
特許文献2には、被検者の皮膚に電極を接触させて複数の交流電圧を印加することで測定されるサセプタンス(B)、アドミタンス(Y)またはコンダクタンス(G)のいずれかに基づいて、皮膚表面の電解質成分による影響度合いとしての特性値(P)を算出し、この特性値(P)から経表皮水分蒸散量(TEWL)を推算する推算方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-047223号公報
【特許文献2】特開2010-172543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された角層水分量の推算方法及び特許文献2に開示された経表皮水分蒸散量(TEWL)の推算方法では、対象者の皮膚に接触させる電極を備えた専用測定機器を用いる必要がある。この専用測定機器は、一般的に非常に高価である。また、この専用測定機器を用いる場合、測定自体に過大な時間を要することがある。
【0007】
上記点に鑑み、本発明は、肌に直接接触させる電極を備えた専用測定機器を用いることなく、角層水分量または経表皮水分蒸散量(TEWL)の推算を行うことができる推算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る推算方法は、(1)対象者の角層水分量を推算する推算方法であって、対象者の肌のレプリカから、肌表面の凹凸情報に関するレプリカ由来パラメータを算出するレプリカ由来パラメータ算出工程と、前記対象者の皮膚から採取した角層を染色する染色工程と、前記染色工程によって染色された前記角層の染色画像に基づき、前記角層の剥離状態に関する角層由来パラメータを算出する角層由来パラメータ算出工程と、予め取得された、前記レプリカ由来パラメータ及び前記角層由来パラメータと、角層水分量と、の相関関係を示す予測式を用いて、前記対象者の角層水分量を推算する推算工程と、を備えることを特徴とする推算方法。
【0009】
(2) 前記レプリカ由来パラメータ算出工程において、前記レプリカ由来パラメータとして、肌表面の凹凸数を算出し、前記角層由来パラメータ算出工程において、前記角層由来パラメータとして、角層ダメージ面積及び角層ダメージ率を算出することを特徴とする、(1)に記載の推算方法。
【0010】
(3) 前記予測式は、標本集団で実測して得られた角層水分量と、該標本集団の肌のレプリカから算出された前記レプリカ由来パラメータ、及び、該標本集団の皮膚から採取した角層を染色して得られた染色画像に基づいて算出された前記角層由来パラメータと、を用いた重回帰分析により予め取得された重回帰式であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の推算方法。
【0011】
(4) 対象者のTEWLを推算する推算方法であって、対象者の肌のレプリカから、肌表面の凹凸情報に関するレプリカ由来パラメータを算出するレプリカ由来パラメータ算出工程と、前記対象者の皮膚から採取した角層を染色する染色工程と、前記染色工程によって染色された前記角層の染色画像に基づき、前記角層の剥離状態に関する角層由来パラメータを算出する角層由来パラメータ算出工程と、予め取得された、前記レプリカ由来パラメータ及び前記角層由来パラメータと、TEWLと、の相関関係を示す予測式を用いて、前記対象者のTEWLを推算する推算工程と、を備えることを特徴とする推算方法。
【0012】
(5) 前記レプリカ由来パラメータ算出工程において、前記レプリカ由来パラメータとして、肌表面の凹凸数を算出し、前記角層由来パラメータ算出工程において、前記角層由来パラメータとして、角層ダメージ面積及び角層ダメージ率を算出することを特徴とする、(4)に記載の推算方法。
【0013】
(6) 前記レプリカ由来パラメータ算出工程において、前記レプリカ由来パラメータとして、さらに肌表面の凹凸長さを算出することを特徴とする、(5)に記載の推算方法。
【0014】
(7) 前記予測式は、標本集団で実測して得られたTEWLと、該標本集団の肌のレプリカから算出された前記レプリカ由来パラメータ、及び、該標本集団の皮膚から採取した角層を染色して得られた染色画像に基づいて算出された前記角層由来パラメータと、を用いた重回帰分析により予め取得された重回帰式であることを特徴とする、(4)ないし(6)のいずれか1つに記載の推算方法。
【0015】
(8) (1)ないし(7)のうちいずれか1つに記載の推算方法による推算結果に基づき、前記対象者の肌の状態を評価する、肌状態評価方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、対象者の肌のレプリカ及び角層から得られたパラメータに基づいて、角層水分量(TEWL)の推算を行うことができるため、専用測定機器を用いることなく、角層水分量(または経表皮水分蒸散量(TEWL))の推算を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る推算方法を示すフローチャートである。
【
図2】第1実施形態に係る工程S1(レプリカ由来パラメータ算出工程)を示すフローチャートである。
【
図3】グレースケールに変換されたレプリカ画像に設定された輝度記録線を示す概略図である。
【
図4】各輝度記録点における輝度反転値の折れ線グラフを示す。
【
図5】第1実施形態に係る工程S2(染色工程)を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態に係る工程S3(角層由来パラメータ算出工程)を示すフローチャートである。
【
図7】
図7(a)は、工程S32で得られた角層画像(すなわち元の角層画像)である。
図7(b)は、
図7(a)のうち、第1輝度閾値以上の輝度を有する部分Uを抽出した角層画像である。
図7(c)は、
図7(a)のうち、第2輝度閾値以上の輝度を有する部分Vを抽出した角層画像である。
【
図8】
図4に示す折れ線グラフのうち、輝度記録点1及び輝度記録点2における折れ線グラフの拡大図である。
【
図9】推算した角層水分量と、実測した角層水分量と、の相関関係を示す。
【
図10】推算したTEWLと、実測したTEWLと、の相関関係を示す。
【
図11】角層ダメージ面積(μm
2)、角層ダメージ率(%)及び肌表面の凹凸数(個)に加えて、肌表面の凹凸長さ(-)をパラメータとして用いた場合における、推算したTEWLと、実測したTEWLと、の相関関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る推算方法について、
図1を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る推算方法を示すフローチャートである。第1実施形態に係る推算方法は、工程S1→S2→S3→S4を経て、対象者の角層水分量及び/または経表皮水分蒸散量(TEWL)を推算する。以下、各工程について、簡単に説明する
【0019】
(工程S1について)
工程S1は、対象者の肌のレプリカから、肌表面の凹凸情報に関するレプリカ由来パラメータを算出する、レプリカ由来パラメータ算出工程である。工程S1(レプリカ由来パラメータ算出工程)では、レプリカ由来パラメータとして、肌表面の凹凸数(個)を算出する。
【0020】
(工程S2について)
工程S2は、対象者の皮膚から採取した角層を染色する染色工程である。
【0021】
(工程S3について)
工程S3は、工程S2(染色工程)で得られた染色された角層から、角層由来パラメータを算出する、角層由来パラメータ算出工程である。工程S3(角層由来パラメータ算出工程)では、角層由来パラメータとして、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)を算出する。
【0022】
(工程S4について)
工程S4は、レプリカ由来パラメータ(肌表面の凹凸数(個))及び角層由来パラメータ(角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%))と、角層水分量(またはTEWL)と、の相関関係を示す予測式を予め取得しておき、該予測式に、工程S1で得られたレプリカ由来パラメータの値(肌表面の凹凸数(個))及び工程S3で得られた角層由来パラメータの値(角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%))を代入して、対象者の角層水分量(またはTEWL)を推算する推算工程である。
【0023】
以下、上記各工程S1~S4について、詳細に説明する。
【0024】
(工程S1の詳細)
第1実施形態に係る工程S1(レプリカ由来パラメータ算出工程)では、工程S11~工程S18を経て、レプリカ由来パラメータを算出する。
図2は、第1実施形態に係る工程S1(レプリカ由来パラメータ算出工程)を示すフローチャートである。
【0025】
工程S11では、対象者の肌のレプリカを採取する。対象領域にレプリカ剤を塗布し、硬化した後で肌からはがすことによって、レプリカを得る。レプリカ剤としては、例えば2液性シリコンゴムを用いることができるが、これに限られない。
【0026】
工程S12では、工程S11で採取されたレプリカに光を照射する。光の照射方法としては、落射光や側射光を用いる方法を採用することができるが、これに限られない。
【0027】
工程S13では、工程S12で光を照射されたレプリカの画像をデータ化する。汎用の画像入力ボードに接続されたカメラによって、光を照射されたレプリカを上方から撮像し、撮像されたレプリカ画像を画像入力ボードでデータ化する。
【0028】
工程S14では、工程S13でデータ化されたレプリカ画像をグレースケールに変換する。レプリカ画像をグレースケールに変換する処理は、種々の既知の方法によって実行される。
【0029】
工程S15では、工程S14でグレースケールに変換されたレプリカ画像に設定された輝度記録線に沿って輝度を記録する。
図3は、グレースケールに変換されたレプリカ画像に設定された輝度記録線を示す概略図である。
図3を参照して、グレースケールに変換されたレプリカ画像内に、円状の輝度記録線Gを任意の位置に設定し、この輝度記録線Gに等間隔に512点の輝度記録点を取り、該512点の輝度記録点それぞれの位置における輝度を記録する。なお、輝度は0~255の256段階で記録し、0に近づくほど黒色を示し、255に近づくほど白色を示す。輝度の測定には、例えば汎用の画像入力ボード及びソフトウェアを用いることができる。
【0030】
工程S16では、工程S15で得られた輝度記録点ごとの輝度を反転させた値を算出する。具体的には、工程S15の輝度記録点それぞれについて、「255-輝度」の計算を行うことにより、各輝度記録点における輝度を反転させた値(輝度反転値)を算出する。輝度反転値の算出は、画像入力ボードに組み込まれたプログラムによって実行される。
【0031】
工程S17では、工程16で得られた輝度反転値に基づき、各輝度記録点における輝度反転値を、折れ線グラフの形式で作成する。
図4は、各輝度記録点における輝度反転値の折れ線グラフを示す。
図4において、横軸は各輝度記録点の番号(1~512)を示し、縦軸は輝度反転値を示す。各輝度記録点の番号(1~512)は、512点の輝度記録点のうち、任意の輝度記録点に番号「1」を付与し、そこから輝度記録線G(
図3参照)に沿って順に2~512を付与する。
【0032】
工程S18では、工程S17で得られた折れ線グラフに基づき、レプリカ由来パラメータを算出する。第1実施形態では、レプリカ由来パラメータとして、肌表面の凹凸数(個)を算出する。肌表面の凹凸数の算出方法について、以下に説明する。
【0033】
<肌表面の凹凸数>
まず、輝度反転値に第1閾値A及び第2閾値B(ただしA<B)を設ける(
図4参照)。次に、
図4の折れ線グラフのうち、第2閾値Bで区切られて輝度反転値>Bに位置するグラフ部分のそれぞれにおいて、輝度反転値が最大となる点を、それぞれ上ピーク点Sとする。また、
図4の折れ線グラフのうち、第1閾値Aで区切られて輝度反転値<Aに位置するグラフ部分のそれぞれにおいて、輝度反転値が最小となる点を、それぞれ下ピーク点Tとする。ただし、
図4の左から数えてj番目(j≧1)の下ピーク点Tからj+1番目の下ピーク点Tまでを結ぶ折れ線グラフ部分に、複数の上ピーク点Sが存する場合には、該複数の上ピーク点Sのうち輝度反転値が最大の点のみを、上ピーク点Sとしてカウントする。同様に、
図4の左から数えてk番目(k≧1)の上ピーク点Sからk+1番目の上ピーク点Sまでを結ぶ折れ線グラフ部分に、複数の下ピーク点Tが存する場合には、該複数の下ピーク点Tのうち輝度反転値が最小の点のみを、下ピーク点Tとしてカウントする。そして、上ピーク点S及び下ピーク点Tの個数の総和を、肌表面の凹凸数(個)として算出する。なお、輝度記録点512と輝度記録点1とは繋がっているものとみなす。本実施形態(
図4)では、上ピーク点Sが12個、下ピーク点Tが12個存するため、肌表面の凹凸数は「24」と算出される。なお、第1閾値A及び第2閾値Bは、工程S17で得られた折れ線グラフの形状及び各輝度記録点における輝度反転値に基づき、適宜な値に設定することができる。
【0034】
(工程S2の詳細)
第1実施形態に係る工程S2(染色工程)は、工程S21、工程S22を経て、対象者の皮膚から角層を採取して染色する。
図5は、第1実施形態に係る工程S2(染色工程)を示すフローチャートである。
【0035】
工程S21では、対象者の皮膚の角層を採取する。角層採取手段としては、テープストリッピング法(粘着剤を皮膚に貼り付けて剥がすことによって皮膚の角層を採取する方法)など、既知の採取手段が用いられる。粘着剤としては、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、シリコーンゴム、ポリイソプレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等の合成ゴム、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂等が用いられている。テープストリッピング法には、市販の粘着テープを使用しても良い。
【0036】
工程S22では、工程S21で得られた対象者の皮膚の角層を、染色液で染色する。染色液としては、例えば、ゲンチアナバイオレット溶液、ブリリアントグリーン溶液、エオジン染色液や、特開2019-101025号公報に記載された蛍光標識ポリリジン溶液など、既知の染色液を用いることができる。
【0037】
(工程S3の詳細)
第1実施形態に係る工程S3(角層由来パラメータ算出工程)は、工程S31~工程S34を経て、角層由来パラメータを算出する。
図6は、第1実施形態に係る工程S3(角層由来パラメータ算出工程)を示すフローチャートである。
【0038】
工程S31では、工程S2で染色された対象者の角層を洗浄する。工程S22で用いられた染色液のうち、対象者の角層と未反応であった染色液(すなわち、余分な染色液)を洗浄する。染色された角層の洗浄には、例えば、超純水、純水等が用いられる。
【0039】
工程S32では、工程S31で洗浄された対象者の角層を撮像して角層画像を取得する。工程S31の後、水気を取って乾燥させた角層を、蛍光顕微鏡を用いて観察し、無作為に複数個所を撮像することにより、角層画像を複数取得する。蛍光顕微鏡としては、BZ-X810(キーエンス社)を用いることができるが、これに限られない。
【0040】
工程S33では、工程S32で得られた角層画像について、各角層画像に基づき、第1輝度閾値以上の輝度を有する部分を抽出した角層画像と、第2輝度閾値以上の輝度を有する部分を抽出した角層画像と、を作成する(ただし、第1輝度閾値>第2輝度閾値)。
図7(a)は、工程S32で得られた角層画像(すなわち元の角層画像)である。
図7(b)は、
図7(a)のうち、第1輝度閾値以上の輝度を有する部分Uを抽出した角層画像である。
図7(c)は、
図7(a)のうち、第2輝度閾値以上の輝度を有する部分Vを抽出した角層画像である。第1輝度閾値及び第2輝度閾値は、工程S32で得られた角層画像に基づいて適宜設定することができるが、第1実施形態では、第1輝度閾値を90、第2輝度閾値を20に設定した。
【0041】
工程S34では、工程S33で得られた各角層画像に基づき、角層由来パラメータを算出する。角層由来パラメータとして、角層ダメージ面積(μm
2)及び角層ダメージ率(%)を算出する。各角層由来パラメータの算出方法について、
図7を参照して以下に説明する。
【0042】
<角層ダメージ面積>
各角層画像の角層ダメージ面積(μm
2)は、工程S32で得られた各角層画像における、第1輝度閾値以上の輝度を有する部分の面積の和として表される。
図7(b)に示す、90以上の輝度を有する部分Uの面積の和が、
図7(a)に示す角層画像における角層ダメージ面積(μm
2)である。工程S32で得られた各角層画像における角層ダメージ面積(μm
2)を相加平均することにより、角層由来パラメータとしての角層ダメージ面積(μm
2)を算出する。
【0043】
<角層ダメージ率>
各角層画像の角層ダメージ率(%)を算出するために、工程S32で得られた各角層画像において、角層ダメージ面積(μm
2)に加え、総染色面積(μm
2)を算出する。「総染色面積」は、工程S32で得られた各角層画像における、第2輝度閾値以上の輝度を有する部分の面積の和として表される。
図7(c)に示す、20以上の輝度を有する部分Vの面積の和が、
図7(a)に示す角層画像における総染色面積(μm
2)である。工程S32で得られた各角層画像における総染色面積を相加平均し、この平均値で角層ダメージ面積を除する(すなわち、各角層画像における角層ダメージ面積の相加平均値÷ 各角層画像における総染色面積の相加平均値)ことにより、角層由来パラメータとしての角層ダメージ率(%)を算出する。
【0044】
(工程S4の詳細)
工程S4において、肌表面の凹凸数(個)、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、角層水分量(またはTEWL)と、の相関関係を示す予測式に、工程S18で得られた対象者の肌表面の凹凸数(個)と、工程S34で得られた対象者の角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、を代入して、対象者の角層水分量(またはTEWL)を推算する。
対象者の角層水分量(またはTEWL)の推算に用いられる予測式は、標本集団(複数人のモニターそれぞれにおける肌の同一箇所のサンプルや、1人のモニターにおいて一定の測定期間ごとに測定した肌の同一箇所のサンプル等)において、角層水分量(またはTEWL)を実測するとともに、上述の工程S1~S3を実施し、標本集団で実測して得られた角層水分量(またはTEWL)と、工程S18で得られた該標本集団の肌表面の凹凸数(個)と工程S34で得られた該標本集団の角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、を用いた重回帰分析を行うことによって作成される。
【0045】
このように、工程S1~S4を経ることによって、対象者の肌のレプリカ及び角層から得られたパラメータに基づいて、角層水分量(TEWL)の推算を行うことができる。すなわち、肌に直接接触させる電極を備えた専用測定機器を用いることなく、角層水分量(TEWL)の推算を行うことができる。
【0046】
角層水分量(またはTEWL)の推算結果は、対象者の肌の状態の評価に用いることができる。ここで、従来、角層水分量(またはTEWL)を推算する際には、肌のレプリカに基づくパラメータまたは角層の染色画像に基づくパラメータのいずれか一方のみを用いていた。しかしながら、これらの方法では、対象者の肌状態を正確に捉えることができなかった。
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ね、レプリカ由来パラメータ及び角層由来パラメータの双方を用い、レプリカ由来パラメータ及び角層由来パラメータと、角層水分量(またはTEWL)と、の相関関係を示す予測式に基づいて、角層水分量(またはTEWL)を推算する推算方法に想到した。この方法によれば、肌のレプリカから得られたパラメータと、皮膚の角層から得られたパラメータと、の2つの因子に基づいた推算を行うことができるため、対象者の肌の状態をより正確に評価することができる。
【0047】
本発明者らは、「レプリカ由来パラメータ及び角層由来パラメータと、角層水分量(またはTEWL)と、の相関関係を示す予測式」に基づいて、角層水分量(またはTEWL)をより精確に推定するために、種々様々なレプリカ由来パラメータ及び角層由来パラメータについて鋭意検討を重ねた。しかしながら、角層水分量(またはTEWL)との相関が知られている既知のパラメータを用いるだけでは、推定の精度は上がらなかった。
そこで、本発明者らは、新たに独自のパラメータを作り出すことに想到した。その結果、レプリカ由来パラメータとして肌表面の凹凸数を用い、角層由来パラメータとして角層ダメージ面積及び角層ダメージ率を用いることで、角層水分量(またはTEWL)をより精確に推定できることを見出した。これら独自のパラメータを用いた推算方法による推算精度については、実施例において後述する。
【0048】
なお、工程S4において、(1)肌表面の凹凸数(個)、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、角層水分量と、の相関関係を示す予測式と、(2)肌表面の凹凸数(個)、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、TEWLと、の相関関係を示す予測式と、の2つの予測式を予め求めておき、それぞれの予測式に、対象者の肌表面の凹凸数(個)、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)を代入して、対象者の角層水分量及びTEWLを推算してもよい。対象者の角層水分量及びTEWLの双方を推算することにより、推算結果を用いて対象者の肌状態をより正確に評価することができる。
【0049】
(第2実施形態)
上述の実施形態では、対象者のTEWLを推算する際、工程S1(レプリカ由来パラメータ算出工程)で肌表面の凹凸数(個)のみを算出したが、工程S1で、レプリカ由来パラメータとして、さらに、肌表面の凹凸長さ(-)を算出してもよい。第2実施形態では、肌表面の凹凸長さの算出方法(工程S18)及びレプリカ由来パラメータとして肌表面の凹凸長さを追加した場合における対象者のTEWLの推算方法(工程S4)について説明する。なお、レプリカ由来パラメータとして肌表面の凹凸長さ(-)を追加した場合であっても、S11~S17、S21、S22、S31~S34の各工程には変化がないため、説明を省略する。肌表面の凹凸長さ(-)も、本発明者らが独自に検討を重ねて作り出したパラメータである。
【0050】
<肌表面の凹凸長さ>
図4を参照して、肌表面の凹凸長さ(-)は、隣り合う輝度記録点間の折れ線グラフの長さの総和(すなわち、折れ線グラフ自体の全長)で表される。
図8を参照して、肌表面の凹凸長さの算出方法について、さらに詳細に説明する。
図8は、
図4に示す折れ線グラフのうち、輝度記録点1及び輝度記録点2における折れ線グラフの拡大図である。
図8を参照して、輝度記録点1から輝度記録点2までの折れ線グラフの長さL1(-)は、次の式を用いて表すことができる。ここで、D(mm)は輝度記録線Gに沿った輝度記録点の間隔(mm)を表し、E1は番号1の輝度記録点における輝度反転値(-)を表し、E2は番号2の輝度記録点における輝度反転値(-)を表す。なお、輝度記録点は輝度記録線Gに沿って等間隔に形成されるため、Dは、グラフ自体(
図4)の横幅に関わらず、(輝度記録線Gの全長)÷(輝度記録点の総数(512))で算出する。
【数1】
【0051】
肌表面の凹凸長さをL(-)とすると、L(-)は、輝度記録点xから輝度記録点x+1までの折れ線グラフの長さLx(-)の総和である。すなわち、肌表面の凹凸長さL(-)は、次の式を用いて表すことができる。Exは番号xの輝度記録点における輝度反転値を表す。なお、L
512(x=512のとき)は、輝度記録点1を仮想の輝度記録点513として、輝度記録点512から輝度記録点513までの折れ線グラフの長さを求める。
【数2】
【0052】
(工程S4の詳細)
工程S4において、肌表面の凹凸数(個)、肌表面の凹凸長さ(-)、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、TEWLと、の相関関係を示す予測式に、工程S18で得られた対象者の肌表面の凹凸数(個)及び肌表面の凹凸長さ(-)と、工程S34で得られた対象者の角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、を代入して、対象者のTEWLを推算する。
対象者のTEWLの推算に用いられる予測式は、標本集団(複数人のモニターそれぞれにおける肌の同一箇所のサンプルや、1人のモニターにおいて一定の測定期間ごとに測定した肌の同一箇所のサンプル等)において、TEWLを実測するとともに、上述の工程S1~S3を実施し、標本集団で実測して得られたTEWLと、工程S18で得られた該標本集団の肌表面の凹凸数(個)及び肌表面の凹凸長さ(-)と工程S34で得られた該標本集団の角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、を用いた重回帰分析を行うことによって作成される。
【0053】
肌表面の凹凸数(個)、角層ダメージ面積(μm2)、角層ダメージ率(%)に加え、肌表面の凹凸長さ(-)もパラメータとして用いて対象者のTEWLを推算することにより、対象者のTEWLをより精度よく推算することができる。この点については、後述の実施例2にて示す。
【0054】
以下に、本発明について、実施例を参照して詳細に説明する。
【実施例0055】
30代~60代のモニター13人(うち女性9人)を対象に、1週間ごとに、本発明に係る推算方法によって角層水分量及びTEWLを推算し(n=44)、実測値との相関関係を調べた。実施例1では、レプリカ由来パラメータとして肌表面の凹凸数(個)のみを用い、角層由来パラメータとして角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)を用いた。すなわち、実施例1は、第1実施形態に相当する実施例である。
【0056】
(肌表面の凹凸数の算出)
対象者の左頬部(左頬骨に相当する部分)に、直径2cmの円状の対象領域を設定し、洗顔後安静15分後に、該対象領域に2液性シリコンゴムを塗布し、硬化した後で肌からはがすことによって、レプリカを得た(上述の第1実施形態の工程S11)。得られたレプリカを、肌表面の凹凸が転写された面を上向きにして試料台に乗せ、レプリカの上方より落射光、レプリカの側方より側射光を照射した(上述の第1実施形態の工程S12)。光を照射されたレプリカを、汎用の画像入力ボードに接続されたカメラによって上方から撮像し、撮像されたレプリカ画像を画像入力ボードでデータ化した(上述の第1実施形態の工程S13)。データ化されたレプリカ画像をグレースケールに変換した(上述の第1実施形態の工程S14)。
グレースケールに変換されたレプリカ画像内に、直径1.4mmの円状の輝度記録線を任意の位置に設定して、この輝度記録線に等間隔に512点の輝度記録点を取り、該512点の輝度記録点それぞれの位置における輝度を記録した(上述の第1実施形態の工程S15)。得られた輝度記録線上の輝度を反転させた値を算出し(上述の第1実施形態の工程S16)、この輝度反転値に基づき、各輝度記録点における輝度反転値を、折れ線グラフの形式で作成した(上述の第1実施形態の工程S17)。得られた折れ線グラフに基づき、肌表面の凹凸数(個)を算出した(上述の第1実施形態の工程S18)。肌表面の凹凸数(個)の算出方法については、上述したため、説明を省略する。
【0057】
(角層の染色)
角質チェッカー(日本アッシュ製)を、モニターの右頬部(右頬骨に相当する部分)に貼り付けて剥がすことによって、モニターの皮膚の角層を採取した(上述の第1実施形態の工程S21)。角層が付着した角質チェッカーを、角層が付着した面を上向きにして、十字状に4等分した。4等分された角質チェッカーのうち、右上の一片を、0.002%蛍光標識ポリリジン溶液に1時間浸漬させて染色した(上述の第1実施形態の工程S22)。
【0058】
(角層ダメージ面積及び角層ダメージ率の算出)
染色された対象者の角層を蒸留水によって洗浄した後(上述の第1実施形態の工程S31)、水気を取って乾燥させた角層を、蛍光顕微鏡を用いて観察し、無作為に4点撮像した(上述の第1実施形態の工程S32)。取得した4枚の角層画像のそれぞれについて、90以上の輝度を有する部分を抽出した角層画像と、20以上の輝度を有する部分を抽出した角層画像と、を作成した(上述の第1実施形態の工程S33)。作成した各角層画像に基づき、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)を算出した(上述の第1実施形態の工程S34)。角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)の算出方法については、上述のため、説明を省略する。
【0059】
(対象者の角層水分量及びTEWLの推算)
肌表面の凹凸数(個)、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、角層水分量と、の相関関係を示す予測式に、上述の工程で得られた対象者の肌表面の凹凸数(個)、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)を代入して、対象者の角層水分量を推算した(上述の第1実施形態の工程S4)。
同様に、肌表面の凹凸数(個)、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、TEWLと、の相関関係を示す予測式に、上述の工程で得られた対象者の肌表面の凹凸数(個)、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)を代入して、対象者のTEWLを推算した(上述の第1実施形態の工程S4)。
【0060】
ここで、角層水分量の推算に用いた予測式は、標本集団(20代~50代のモニター24人(すべて女性))を対象に、1か月ごとに、角層水分量を実測するとともに(n=169)、上述の工程を実施し、標本集団で実測して得られた角層水分量と、該標本集団の肌表面の凹凸数(個)、角層ダメージ面積(μm2)及び角層ダメージ率(%)と、を用いた重回帰分析を行うことによって作成した。TEWLの推算に用いた予測式についても同様である。
角層水分量の推算に用いた予測式は、以下のとおりである。yは角層水分量の推算結果、X1は角層ダメージ面積(μm2)、X2は角層ダメージ率(%)、X3は肌表面の凹凸数(個)を示す。
y=-1.82×10-4X1-0.15X2+0.32X3+48.1
TEWLの推算に用いた予測式は、以下のとおりである。y´はTEWLの推算結果、X1は角層ダメージ面積(μm2)、X2は角層ダメージ率(%)、X3は肌表面の凹凸数(個)を示す。
y´=9.43×10-5X1-5.53×10-2X2-0.18X3+15.1
【0061】
図9は、推算した角層水分量と、実測した角層水分量と、の相関関係を示す。
図10は、推算したTEWLと、実測したTEWLと、の相関関係を示す。
図9を参照して、角層水分量について、推算値と実測値とは有意な相関(p=<0.001)を示し、相関係数は0.7212であった。すなわち、上述の推算方法によれば、角層水分量の推算値は、実測値と十分な相関を有することがわかった。
図10を参照して、TEWLについて、推算値と実測値とは有意な相関(p=<0.001)を示し、相関係数は0.6945であった。すなわち、上述の推算方法によれば、TEWLの推算値は、実測値と十分な相関を有することがわかった。
実施例2では、実施例1のレプリカ由来パラメータに肌表面の凹凸長さ(-)を加え、本発明に係る推算方法によってTEWLを推算した。すなわち、実施例2は、第2実施形態に相当する実施例である。TEWLを推算するまでの工程は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。また、肌表面の凹凸長さ(-)の算出方法は、上述のため、説明を省略する。