(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095478
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】家畜糞尿処理方法、及び土壌改質組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C05F 11/00 20060101AFI20230629BHJP
C05G 5/00 20200101ALI20230629BHJP
C05F 3/00 20060101ALI20230629BHJP
C09K 17/40 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C05F11/00 ZAB
C05G5/00
C05F3/00
C09K17/40 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211399
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】520068098
【氏名又は名称】株式会社セレア
(71)【出願人】
【識別番号】510152426
【氏名又は名称】前川 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151161
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 彩
(72)【発明者】
【氏名】淡路 靖志
(72)【発明者】
【氏名】前川 義雄
【テーマコード(参考)】
4H026
4H061
【Fターム(参考)】
4H026AA01
4H026AA10
4H026AA16
4H026AB01
4H026AB02
4H061AA10
4H061CC12
4H061CC36
4H061DD14
4H061EE02
4H061EE61
4H061FF08
4H061GG18
4H061GG19
4H061GG20
4H061GG26
4H061GG41
4H061HH11
4H061LL02
4H061LL26
(57)【要約】
【課題】家畜糞尿を効率よく、かつ簡単に処理有機質素材へ変換する家畜糞尿処理方法と、変換した有機質素材を主成分とする植物及び土壌改質組成物の製造方法とを提供する。
【解決手段】処理設備31に備えられる接触処理装置35は、接触処理部37と過熱水蒸気供給部38とを有する。家畜糞尿11は、籾殻及び珪質頁岩19と混合された粒状混合物とされる。接触処理装置35は、粒状混合物を処理対象物として過熱水蒸気を接触させる接触処理を行う。処理対象物は、家畜糞尿11のみでもよいし、家畜糞尿11と籾殻15との混合物でもよい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜糞尿のみを処理対象物として、前記処理対象物に過熱水蒸気を接触させることを特徴とする家畜糞尿処理方法。
【請求項2】
前記処理対象物は未乾燥の家畜糞尿である請求項1に記載の家畜糞尿処理方法。
【請求項3】
前記家畜糞尿は含水率が少なくとも30%である請求項1または2に記載の家畜糞尿処理方法。
【請求項4】
前記家畜糞尿を粒状に形成する造粒工程と、
粒状にされた前記家畜糞尿に前記過熱水蒸気を接触させる接触処理工程と
を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の家畜糞尿処理方法。
【請求項5】
家畜糞尿とケイ酸を含有するケイ酸植物系有機資材との混合物に、過熱水蒸気を接触させることを特徴とする家畜糞尿処理方法。
【請求項6】
前記ケイ酸植物系有機資材は籾殻である請求項5に記載の家畜糞尿処理方法。
【請求項7】
前記ケイ酸植物系有機資材と粒状の珪質頁岩とが混合されている前記家畜糞尿に、前記過熱水蒸気を接触させる請求項5または6に記載の家畜糞尿処理方法。
【請求項8】
前記家畜糞尿と前記ケイ酸植物系有機資材との糞尿混合物と、粒状の珪質頁岩とを混合して珪質頁岩混合物とする珪質頁岩混合工程と、
前記珪質頁岩混合物に液体の水を含ませる含水工程と、
前記水を含んだ状態の前記珪質頁岩混合物に、前記過熱水蒸気を接触させる接触処理工程と
を有する請求項7に記載の家畜糞尿処理方法。
【請求項9】
前記珪質頁岩混合工程は、前記珪質頁岩を未乾燥の前記糞尿混合物に混合する請求項8に記載の家畜糞尿処理方法。
【請求項10】
前記珪質頁岩混合物を粒状に形成する造粒工程をさらに有し、
前記接触処理工程は、粒状に形成され、前記水を含んだ状態の前記珪質頁岩混合物に前記過熱水蒸気を接触させる請求項8または9に記載の家畜糞尿処理方法。
【請求項11】
前記造粒工程は前記含水工程を有する請求項10に記載の家畜糞尿処理方法。
【請求項12】
前記過熱水蒸気を接触させる処理空間の温度が160℃以上400℃以下の範囲内である請求項1ないし11のいずれか1項に記載の家畜糞尿処理方法。
【請求項13】
含水率が少なくとも30%である家畜糞尿に、過熱水蒸気を接触させることにより土壌改質組成物とすることを特徴とする土壌改質組成物の製造方法。
【請求項14】
家畜糞尿とケイ酸を含有するケイ酸植物系有機資材との混合物に、過熱水蒸気を接触させることにより土壌改質組成物とすることを特徴とする土壌改質組成物の製造方法。
【請求項15】
前記ケイ酸植物系有機資材と粒状の珪質頁岩とが混合されている前記家畜糞尿に、前記過熱水蒸気を接触させる請求項14に記載の土壌改質組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜糞尿処理方法、及び土壌改質組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから牛舎での乳房炎対策として有機質資材(オガクズ、モミガラ、イナワラ)を寝床に敷くことが推奨されてきた。しかし、家畜糞尿に混合する有機系敷料は、保水性が高く、難分解性のものが多い。そのため、家畜糞尿を含む未熟成の有機物を水分とともに捕捉するので、堆肥となるまでの発酵期間は臭気源となり、敷料が通常発酵期間では未熟有機物となるため、発酵期間が長くなる要因ともなっている。
【0003】
また、大規模な畜産場では、糞と尿の分離処理が行われているが、頭数が法令規定以下の畜産業においては糞と尿の合併処理のため水分調整が作業上、不可欠となっており、手間がかかる。
【0004】
家畜糞尿を有効利用するために、例えば特許文献1は、家畜糞尿を炭化させる炭化装置を、特許文献2は、バイオマスとしての家畜糞尿に熱風を負圧状態下で吹き付けるバイオマスの半炭化方法を開示している。また、特許文献3は、籾殻または藁を処理容器内に投入し、この処理容器内に水蒸気を注入して内圧および温度を上昇させ、籾殻または藁が燃焼しないで粉末化する水蒸気圧力下に保持して処理するケイ酸含有粉末製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-159778号公報
【特許文献2】特開2019-045078号公報
【特許文献3】特許第3579417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、炭化及び灰化は、炭素率が低下して堆肥としての機能はなくなり無機ミネラル素材となることを抑制するために、すなわち、例えば植物の栄養となる成分が減少しないように、処理温度を低くすると処理時間が長くなる。そのため、多量の家畜糞尿を、効率的に処理する他の手法が望まれる。また、特許文献3の方法によると、処理容器内の内圧を上昇させること及び籾殻または藁を燃焼しないで粉末化させることから、条件の精緻な設定が必要である。
【0007】
そこで、本発明は、家畜糞尿を効率よく、かつ簡単に処理する家畜糞尿処理方法と、土壌改質組成物の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の家畜糞尿処理方法は、家畜糞尿のみを処理対象物として、前記処理対象物に過熱水蒸気を接触させることを特徴とする。
【0009】
処理対象物は未乾燥の家畜糞尿であることが好ましく、家畜糞尿は含水率が少なくとも30%であることが好ましい。家畜糞尿処理方法は、造粒工程と接触処理工程を有することが好ましい、造粒工程は、家畜糞尿を粒状に形成する。接触処理工程は、粒状にされた家畜糞尿に過熱水蒸気を接触させる。
【0010】
本発明の家畜糞尿処理方法は、家畜糞尿とケイ酸を含有するケイ酸植物系有機資材との混合物に、過熱水蒸気を接触させることを特徴とする。
【0011】
ケイ酸植物系有機資材は籾殻であることが好ましい。ケイ酸植物系有機資材と粒状の珪質頁岩とが混合されている家畜糞尿に、過熱水蒸気を接触させることが好ましい。
【0012】
家畜糞尿処理方法は、珪質頁岩混合工程と含水工程と接触処理工程を有してもよい。珪質頁岩混合工程は、家畜糞尿とケイ酸植物系有機資材との糞尿混合物と、粒状の珪質頁岩とを混合して珪質頁岩混合物とする。含水工程は、珪質頁岩混合物に液体の水を含ませる。接触処理工程は、水を含んだ状態の珪質頁岩混合物に、過熱水蒸気を接触させる。
【0013】
珪質頁岩混合工程は、珪質頁岩を未乾燥の糞尿混合物に混合することが好ましい。家畜糞尿処理方法は、珪質頁岩混合物を粒状に形成する造粒工程をさらに有することが好ましく、造粒工程を有する場合の接触処理工程は、粒状に形成され、水を含んだ状態の珪質頁岩混合物に過熱水蒸気を接触させる。造粒工程は上記含水工程を有していてもよい。
【0014】
上記の家畜糞尿処理方法は、過熱水蒸気を接触させる処理空間の温度が160℃以上400℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0015】
本発明の土壌改質組成物の製造方法は、含水率が少なくとも30%である家畜糞尿に、過熱水蒸気を接触させることにより土壌改質組成物とする。
【0016】
家畜糞尿とケイ酸を含有するケイ酸植物系有機資材との混合物に、過熱水蒸気を接触させることにより土壌改質組成物とすることが好ましい。
【0017】
ケイ酸植物系有機資材と粒状の珪質頁岩とが混合されている家畜糞尿に、過熱水蒸気を接触させてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の家畜糞尿処理方法によれば、家畜糞尿が効率よく、かつ簡単に処理され、また、本発明の土壌改質組成物の製造方法によれば、家畜糞尿の効率的かつ簡単な処理により土壌改質組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態である家畜糞尿処理方法のフロー図である。
【
図2】別の実施形態である家畜糞尿処理方法のフロー図である。
【
図3】別の実施形態である家畜糞尿処理方法のフロー図である。
【
図4】原料である珪質頁岩の細孔分布曲線のグラフである。
【
図5】実施形態である家畜糞尿処理設備の説明図である。
【
図11A】糞尿処理物等の光学顕微鏡の画像写真である(観察倍率は10倍)。
【
図11B】糞尿処理物等の光学顕微鏡の画像写真である(観察倍率は10倍)。
【
図11C】糞尿処理物等の光学顕微鏡の画像写真である(観察倍率は10倍)。
【
図11D】糞尿処理物等の光学顕微鏡の画像写真である(観察倍率は10倍)。
【
図11E】糞尿処理物等の光学顕微鏡の画像写真である(観察倍率は10倍)。
【
図11F】糞尿処理物等の光学顕微鏡の画像写真である(観察倍率は40倍)。
【
図11G】糞尿処理物等の光学顕微鏡の画像写真である(観察倍率は40倍)。
【
図11H】糞尿処理物等の光学顕微鏡の画像写真である(観察倍率は40倍)。
【
図11I】糞尿処理物等の光学顕微鏡の画像写真である(観察倍率は40倍)。
【
図11J】糞尿処理物等の光学顕微鏡の画像写真である(観察倍率は40倍)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態である家畜糞尿処理方法は、
図1に示すように、家畜糞尿11を処理して糞尿処理物13Aにする。糞尿処理物13Aは、土壌を改質する土壌改質組成物として用いることができるので、この家畜糞尿処理方法は土壌改質組成物の製造方法でもある。家畜糞尿11は、牛、豚、馬、羊、ヤギ等の家畜の糞尿であってもよいし、鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウ等の家禽の糞尿であってもよく、これらのうちの少なくとも2種の混合物であってもよい。この例において処理対象物は、家畜糞尿11のみとしており、家畜糞尿11以外の物質を家畜糞尿11に対して意図的には添加していない。処理対象物としての家畜糞尿11は、家畜糞尿11以外の物質を意図的に添加していない非添加糞尿であるから、例えば牛舎等の畜舎や養鶏場等の家禽施設などで回収された際の家畜糞尿に有機物を含む土や敷料等がわずかに混入(例えば体積での含有率が多くても1%)していても、この家畜糞尿を処理対象物とすることができる。
【0021】
家畜糞尿11は、未乾燥の家畜糞尿であることが含水率が高いので好ましい。乾燥を経た家畜糞尿と比べて含水率が高いことにより、接触処理工程S2において、メイラード反応が抑制され、糞尿処理物13Aはより小さな粒子として生成し、窒素の含有率がより高い糞尿処理物13Aが得られる。その結果、糞尿処理物13Aは、水に、より溶解(分散を含む)しやすくなる。溶解しやすくなるとは、より短時間で溶解することと、より多くが溶解すること、さらに、沈殿を抑えた状態に分散することを意味する。このように、より小さな粒子として生成するから、糞尿処理物13Aは後述の通り粒状に形成しても、個々の粒は溶解性に優れた極めて小さな粒子で構成され、例えば土壌改質組成物として用いる場合に、より速やかに土壌と混じりあい、また、水に溶解させて液肥としての利用を図ることができる。したがって、植物に対する可給化がより効果的になされることに寄与し、植物の成長促進効果の向上が期待される。また、土壌を介さずに植物に対して直接与える養液、例えば、植物の葉に対する葉面散布液や根に与える養液栽培液としての利用を図ることができる。
【0022】
家畜糞尿11の含水率は、特に限定されないが、少なくとも30%であることが、接触処理工程S2においてメイラード反応がより確実に抑制される観点で好ましい。家畜糞尿11の含水率は、少なくとも35.2%であることがより好ましく、少なくとも40.5%であることがさらに好ましい。
【0023】
家畜糞尿処理方法は、造粒工程S1と、接触処理工程S2と、冷却乾燥工程S3とを有する。造粒工程S1と冷却乾燥工程S3との少なくとも一方はなくてもよいが、本例のようにある方が好ましい。なお、冷却乾燥工程S3は、冷却工程と乾燥工程とに分けていずれか一方を先行する、いずれか一方の工程の中で他方の工程を行うのいずれかに代えてもよい。
【0024】
造粒工程S1は、接触処理工程S2に供する家畜糞尿11を粒状に形成する。これにより、その後の接触処理工程S2~冷却乾燥工程S3等でのハンドリング性(取り扱いやすさ)が向上するとともに、糞尿処理物13Aが粒状に得られ、粒径がより小さな粉末状に比べてハンドリングしやすい。例えば、糞尿処理物13Aは、袋や缶などの容器から取り出しやすく、また、土壌改質組成物として利用する場合には土壌中に混ぜ合わせる際に、粉末よりも空中に舞い上がりにくいので、作業性がよい。造粒工程S1は粒状に形成するものであるので、粒状にするために粉砕の処理を含んでいてもよく、例えば後述の第2実施形態及び第3実施形態においては籾殻や珪質頁岩の粉砕が造粒工程S1においてなされることがある。なお、造粒工程S1を実施しない場合には、糞尿処理物13Aは粉末状に得られる。
【0025】
造粒工程S1は、例えば肥料を粒状(ペレット状、円板状、球状等)に形成する公知の造粒装置を用いて行うことができ、造粒装置は特に限定されない。ただし、家畜糞尿11は水分を含むので、水分を含有する処理対象物を造粒することができる造粒装置とし、例えば押出ペレタイザ、詳細を後述するパン造粒装置などが挙げられる。押出ペレタイザとしては、処理対象物(本例では家畜糞尿11)を混練する混練部から線条に押し出してストランドを形成し、このストランドを切断することにより円柱状のペレットに形成するもの、混練部から出てきた部分をこの出口において次々と切断することにより円柱状あるいは円板状のペレットに形成するもの等があり、いずれでもよい。また、メッシュ状に形成され、概ね水平に配したネット部材と、下面が平坦に形成されている押圧部材とを備える篩装置も造粒装置として用いることもできる。この篩装置は、ネット部材の上に処理対象物を載せた状態で押圧部材により上方から押圧することで、処理対象物がネット部材の開口を通過して粒状に形成されるものである。
【0026】
また、家畜糞尿11は家畜及び家禽の種類によって、含水率が異なるとともに柔らかさが異なるので、含水率及び柔らかさを考慮して、用いる造粒装置を決定することが好ましい。例えば、含水率が30%以上40%未満の家畜糞尿11の場合には篩装置を用い、含水率が40%以上の家畜糞尿11の場合には押出ペレタイザを用いる等である。本例では、含水率が35.2%の鶏糞尿の場合には篩装置を用い、含水率が40.5%の豚糞尿の場合には押出ペレタイザを用いている。
【0027】
造粒工程S1で形成する粒の大きさ及び形状は特に限定されず、大きさは例えば1mm以上の粒径であることが好ましく、この粒径は粒の径のうち最も小さい部分とする。本例では、鶏糞尿は1mm以上4.74mm以下の粒径の粒状に形成しており、豚糞尿は、径6mmで長さ10mmのペレットの粒状に形成している。なお、造粒工程S1は、粒状に形成した後に、篩によって、目的とする大きさよりも小さな粒を除去する除去工程を含んでいてもよい。本例では粒径1mm未満の粉末を除去する除去工程を含んでおり、用いた篩は開口1mmのものである。
【0028】
接触処理工程S2は、家畜糞尿11に過熱水蒸気を接触させる。接触処理工程S2は、バッチ(回分)式の接触処理装置と連続式の接触処理装置と、のいずれを用いて行ってもよい。接触処理工程S2の詳細については、別の図面を用いて後述する。
【0029】
冷却乾燥工程S3は、接触処理工程S2において高温になった処理物を冷却する冷却工程と、接触処理工程S2を経た処理物を乾燥させる乾燥工程とを有する。乾燥により含水率が減少するので、得られる糞尿処理物13が軽量化して運搬等がより容易になってハンドリング性が向上するとともに、保存期間中における劣化が抑制される。処理対象物を加熱下で乾燥させてもよく、例えば本例では100℃に設定した装置で乾燥を行っている。このように、加熱下で乾燥させる場合には、乾燥の後に冷却して例えば室温(概ね25℃)まで降温させることが、処理物の表面における結露を抑制する観点で好ましい。冷却乾燥工程S3の詳細は、別の図面を用いて後述する。なお、冷却乾燥工程S3が無い場合には、接触処理工程S2により生成された処理物を糞尿処理物とし、この糞尿処理物を土壌改質組成物等として用いることができる。後述の第2、第3実施形態においても同様である。
【0030】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態である家畜糞尿処理方法も第1実施形態と同様に、家畜糞尿11を処理して糞尿処理物にする。本例では、
図2に示すように、家畜糞尿11に籾殻15が混合された糞尿混合物17を処理して糞尿処理物13Bにする。家畜糞尿11は、畜舎あるいは鶏舎等の家禽舎内において、敷料として使用された有機資材と混合され、本例ではそのように両者が混合した糞尿混合物17を処理する。なお、家畜糞尿11に、例えば処分したい籾殻15がある場合には、その籾殻15を家畜糞尿11に添加して混合することにより、糞尿混合物17を得てもよい。糞尿混合物17における籾殻15の質量M12の割合は特に限定されない。得られる糞尿処理物13Bも糞尿処理物13Aと同様に、土壌を改質する土壌改質組成物として用いることができるので、本例の家畜糞尿処理方法も土壌改質組成物の製造方法でもある。
【0031】
籾殻15は、脱穀で籾(籾米)から脱離された外皮である。籾殻15には、外皮の他に、籾摺りで脱離したものが含まれていてもよい。籾殻15は、ケイ酸Si(OH)4を含有するケイ酸植物系有機資材の一例である。ケイ酸植物としては、例えば、籾米以外のイネ科植物や、一部のシダ植物(例えばヒカゲノカズラ)、一部のトクサ類等があり、これらを例えば乾燥したものもケイ酸植物系有機資材として用いることができる。ただし、籾殻15は、量の確保を含めて入手がしやすいこと、牛舎等の畜舎や養鶏場等の家禽施設において敷料に用いられているなど扱いに慣れている者が多いこと等から、籾殻15が好ましい。また、大量の籾殻15を有効利用する観点からも、籾殻15をケイ酸植物系有機資材として用いることが好ましい。
【0032】
本例の家畜糞尿処理方法は、処理対象物を糞尿混合物17にしている他は、第1実施形態と同様である。すなわち、造粒工程S1と、接触処理工程S2と、冷却乾燥工程S3とを有し、造粒工程S1と冷却乾燥工程S3との少なくとも一方はなくてもよい。また、得られる糞尿処理物13Bは籾殻15が分解した分解物を含んでいる点が、第1実施形態と異なる。
【0033】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態である家畜糞尿処理方法も第1実施形態及び第2実施形態と同様に、家畜糞尿11を処理して糞尿処理物にする。本例では、
図3に示すように、家畜糞尿11に籾殻15と珪質頁岩19が混合された珪質頁岩混合物21を処理して糞尿処理物13Cにする。
【0034】
家畜糞尿処理方法は、造粒工程S1と、接触処理工程S2と、冷却乾燥工程S3とに加えて、粉砕工程S11と、珪質頁岩混合工程S12と、含水工程S13とを有する。なお、造粒工程S1が含水工程S13を含んでもよく、加水しながら造粒を行うことができる。この例において得られる糞尿処理物13Cは、珪質頁岩19が過熱水蒸気との接触処理により還元されたものを含んでいる点が、糞尿処理物13Bと異なる。
【0035】
粉砕工程S11は、例えば塊(ブロック)状や1mm以上の粒径である粒状の珪質頁岩19を粉状に粉砕して粉状珪質頁岩19Aにする。珪質頁岩19と粉状珪質頁岩19Aとは大きさのみが互いに異なり、成分や細孔(空隙)等の構造は互いに同じである。粉状珪質頁岩19Aを入手することができる場合には、粉砕工程S11は不要である。珪質頁岩19及び粉状珪質頁岩19Aの代わりに、珪質頁岩以外の珪藻土を用いてもよい。
【0036】
粉状珪質頁岩19Aの粒径は特に限定されない。本例では粒径が1mmに満たない、すなわち1mm未満の微粒子である粉状珪質頁岩19Aとすることで、例えば後述の珪質頁岩混合工程S12において糞尿混合物17に加えた際に、加えた粉状珪質頁岩19Aの一部が上方にわずかに浮上して舞い、珪質頁岩19及び粉状珪質頁岩19Aがもつ消臭機能により、糞尿混合物17から発せられた臭いが低減される。このように、粉状珪質頁岩19Aは、糞尿混合物17に加えた際に、加えた粉状珪質頁岩19Aの一部が上方に浮上する程度の粒径であることが好ましい。また、珪質頁岩19を粉状の粉状珪質頁岩19Aに粉砕することにより、糞尿混合物17との接触面積がより大きくなるので、糞尿混合物17と混合された場合に糞尿混合物17の臭いがより低減する。以上のように、粉状珪質頁岩19Aは、糞尿混合物17に対する消臭効果が、粉砕する前の珪質頁岩19よりも高いので好ましく、また、珪質頁岩混合工程S12においてより迅速かつより均一に糞尿混合物17と混合する観点でも、珪質頁岩19を粉砕工程S11により粉状に粉砕することが好ましい。なお、粉状珪質頁岩19Aの粒径は不均一、すなわち粒によって異なっていてよい。
【0037】
珪質頁岩混合工程S12は、糞尿混合物17の臭いを低減させるため、及び、糞尿混合物17に含まれている籾殻15を研磨したり粉砕するためのものであり、さらに、粉状珪質頁岩19Aを含んだ珪質頁岩混合物21を得るためのものである。珪質頁岩混合工程S12は、糞尿混合物17と粉状珪質頁岩19Aとを混合して珪質頁岩混合物21とする。混合は、例えば攪拌により全体が均質になるように行い、全体に粉状珪質頁岩19Aが分散している状態にすることが好ましい。
【0038】
珪質頁岩混合工程S12は、糞尿混合物17と粉状珪質頁岩19Aとの一方に他方を加えればよい。本例では糞尿混合物17に粉状珪質頁岩19Aを添加している。糞尿混合物17に粉状珪質頁岩19Aを添加することにより、粉状珪質頁岩19Aに糞尿混合物17を添加する場合に比べて、添加の際に粉状珪質頁岩19Aの一部が前述のようにわずかに浮上して舞い上がるので、糞尿混合物17からの臭気を低減する効果がより高い。糞尿混合物17に対して粉状珪質頁岩19Aを添加する場合には、混合する粉状珪質頁岩19Aの全量を一度に添加して攪拌してもよいし、複数回に分けて添加し、添加する毎に糞尿混合物17と粉状珪質頁岩19Aとを攪拌してもよい。
【0039】
粉状珪質頁岩19Aは、上記のように非常に小さな微粒子であるので糞尿混合物17との接触面積が例えば粉砕前の珪質頁岩19と比べて非常に大きく、かつ、珪質頁岩混合物21の全体に分散した状態になるから、糞尿混合物17の臭いが確実に低減する。糞尿混合物17の籾殻15は、籾殻15よりも硬い粉状珪質頁岩19Aとの混合により、研磨されたり粉砕されるなど、組織間に空隙が形成されたり、一部の組織がはがれるなど、組織等が壊される。これにより、後工程である含水工程S13において、籾殻15が確実かつ迅速に吸水する。
【0040】
糞尿混合物17と混合する粉状珪質頁岩19Aの質量M19は、糞尿混合物17の質量をM17とするときに、0.03×M17以上0.20×M17以下の範囲内であることが好ましい。質量M19が0.03×M17以上である場合には、0.03×M17未満の場合に比べて、糞尿の臭いがより確実に低減し、かつ、籾殻15の組織が壊されて含水工程S13における籾殻15の吸水がより促進する。質量M19は0.20×M17よりも多くてもよいが、0.20×M17を超えても0.20×M17と比べた場合と特に利点はなく、0.20×M17以下とすれば十分に臭いが低減するとともに籾殻15の組織が壊される。質量M19は、0.04×M17以上0.15×M17以下の範囲内であることがより好ましく、0.05×M17以上0.10×M17以下の範囲内であることがより好ましい。
【0041】
含水工程S13は、後に行う接触処理工程S2において、メイラード反応を抑制しつつ、珪質頁岩混合物21に含まれる籾殻15の層構造の破壊や籾殻15の分解を促進させるためのものである。含水工程S13は、珪質頁岩混合物21に液体の水24を含ませる。具体的には、多孔質である粉状珪質頁岩19Aの細孔と、籾殻15とに水24を入り込ませる。粉状珪質頁岩19Aに水24を含ませることにより、メイラード反応が抑制された状態で、接触処理工程S2における籾殻15の層構造の破壊及び分解が促進される。水24は、特に限定されず、糞尿処理物13Bの用途に応じて清浄度を考慮するとよい。本例では糞尿処理物13Bを土壌改質組成物として用いる場合を考慮して、ヒトが飲料として摂取できる程度の清浄度のものを使用しており、例えば水道水や脱イオン水を用いている。水24としてのその他のものとしては、蒸留水、イオン交換水、RO(逆浸透)膜により精製されたRO水等が挙げられる。
【0042】
造粒工程S1は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、接触処理工程S2に供する処理対象物を粒状に形成するためのものであり、当該処理対象物は、水を含んだ状態の珪質頁岩混合物21である。造粒工程S1は、含水工程S13を
図3に示すように造粒工程S1の前に行う場合には、水を含んだ状態の珪質頁岩混合物21を粒状に形成し、前述のように含水工程S13を造粒工程S1内で実施する場合には、珪質頁岩混合物21に加水をしながら粒状にする。なお、含水工程S13で含水率が過度に大きい場合など、粒状に形成しにくい場合には、この造粒工程S1において多少の乾燥を行ってもよい。このようにして、粒状に形成された粒状混合物22とすることにより、後工程における処理の均一性によりハンドリング性(取り扱いやすさ)が向上し、また、得られる糞尿処理物13Cの品質が向上する。
【0043】
接触処理工程S2は、家畜糞尿11を含む粒状混合物22を例えば土壌改質組成物及び有機質素材として用いることができる糞尿処理物13Cにするためのものである。接触処理工程S2は、粒状混合物22に過熱水蒸気23(
図5参照)を接触させ、これにより糞尿処理物13Cが得られる。
【0044】
本例における冷却乾燥工程S3は、接触処理工程S2を経た粒状混合物22を冷却及び乾燥する。
【0045】
原料である珪質頁岩19について説明する。ここで、珪質頁岩19の細孔は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry、国際純正及び応用化学連合)においては、細孔径が2nm以下である細孔をミクロ孔(ミクロポア)、細孔径が2nm以上50nm以下である細孔をメソ孔(メソポア)、細孔径が50nm以上である細孔をマクロ孔(マクロポア)と分類される。この分類に基づいた場合に、珪質頁岩19は、ミクロ孔とメソ孔とマクロ孔とのいずれも有し、これらが共に存在している。マクロ孔を画定する内壁面にはメソ孔が形成され、メソ孔を画定する内壁面にはミクロ孔が形成されていると後述の細孔分布曲線等から考えられる。なお、メソ孔とミクロ孔とのそれぞれは、珪質頁岩19において独立して存在しているものもあり、また、ミクロ孔の中にはマクロ孔の内壁面に形成されているものもある。
【0046】
糞尿処理物13Cは、珪質頁岩19を粉砕した粉状珪質頁岩19Aを用いて得られており、製造においては粉状珪質頁岩19Aの成分を脱離させるような特段の処理は行っていない。そのため、糞尿処理物13Cに含有される粉状珪質頁岩19Aは、原料である珪質頁岩19と概ね同等の細孔半径及び細孔分布を有する。なお、珪質頁岩には細孔を画定する内壁面に微生物(細菌、菌類、ウイルスなど)などが付着している可能性があり、珪質頁岩の細孔の大きさはこれらの付着物の有無を考慮して測定することはできない。したがって、原料である珪質頁岩19の細孔の大きさの測定結果と、糞尿処理物13Cに含まれる粉状珪質頁岩19A由来の多孔質体成分における細孔の大きさの測定結果とはごくわずかに差がある可能性はある。しかし、後述の過熱水蒸気との接触処理は、微生物等の付着物は脱離しても、珪質頁岩19の成分自体を脱離させるものではないので、多孔質体成分における細孔の大きさは、原料である珪質頁岩19の細孔の大きさと同じものとみなすことができる。
【0047】
原料である珪質頁岩19は、細孔半径が大きくても10μmである。珪質頁岩19は、
図4に示すように、細孔半径と細孔容積との関係を示す細孔分布曲線において、細孔半径が0nmよりも大きく10nm以下の第1範囲に0.02cm
3/gを超える第1ピークと、100nm以上10μm以下の第2範囲に0.02cm
3/gを超える第2ピークとを有する。したがって、糞尿処理物13Cに含有される多孔質体成分である粉状珪質頁岩19Aも同様に、細孔半径が大きくても10μmである。なお、
図4に示す細孔分布曲線は、加圧成型した珪質頁岩19におけるデータであるが、この点、マクロ孔とメソ孔とマイクロ孔とからなる細孔分布には加圧成型は影響を与えないと(公)幌延地圏環境研究所から報告を受けている。
図4の縦軸は細孔容積、横軸は細孔半径であり対数表記としている。
【0048】
珪質頁岩は、地理学的には珪藻土の一種として分類されており、珪藻土も細孔を有することが一般に知られている。稚内層珪質頁岩及び日本国内で産出される主な珪藻土は、表1に示す細孔特性をそれぞれ有する。表1の「珪藻土平均比表面積」は、秋田珪藻土、石川珪藻土、岡山珪藻土、大分珪藻土の4種の珪藻土の各比表面積x1の平均値av1であり、「比表面積の珪藻土平均に対する割合」は、x1/av1の算出式にて求める。表1の「珪藻土平均細孔容積」は、4種の珪藻土の各細孔容積x2の平均値av2であり、「細孔容積の珪藻土平均に対する割合」は、x2/av2の算出式にて求める。表1の「珪藻土平均細孔半径」は、4種の珪藻土の各平均細孔半径x3の平均値av3であり、「平均細孔半径の珪藻土平均に対する割合」は、x3/av3の算出式にて求める。表1は、幌延砂利工業株式会社(現在の株式会社セレア)が公益財団法人北海道科学技術総合振興センター幌延地圏環境研究所に成型珪質頁岩の分析を依頼し、当該研究所から幌延砂利工業株式会社への報告書より抜粋である。また、幌延町字上幌延の稚内層硬質頁岩は表2に示す基本性状を有する。表2の出典は(公)幌延地圏環境研究所からの上記報告書である。表1中の「稚内層珪質頁岩」及び表2中の「上幌延産出硬質頁岩」は上記幌延町字上幌延の稚内層硬質頁岩であり、本例で用いている珪質頁岩19である。ただし、原料として用いる珪質頁岩は、本例の珪質頁岩19に限定されず、例えば上記の第2ピークをもたない珪藻土及び珪質頁岩でもよいし、細孔半径が0nmよりも大きく10nm以下の第1範囲にピークはあるもののそのピークが0.02cm3/gよりも小さい珪藻土及び珪質頁岩でもよい。
【0049】
【0050】
【0051】
珪質頁岩19は特に限定されないが、前述の稚内層珪質頁岩を用いることが上記の細孔をもつことから好ましい。本例で用いている珪質頁岩19の物性を表3に示す。表3に示す物性値は、北海道立工業試験場及び北海道立中央農業試験場(現、地方独立行政法人北海道立総合研究機構内)による分析結果をまとめて一覧にしたものである。
【0052】
表3の「吸水率」は、北海道立工業試験場での分析結果である。分析方法は、試料を乾燥後、24時間吸水させて、表面の水分を除去した後に試料の重量を測定した。その後、150℃に設定した乾燥機により8時間乾燥し、乾燥した試料の重量を測定した。乾燥前の重量と乾燥後の重量とから吸水率を求めた。なお、試料は、粒径1mmの試料と8mmの試料との2種類であり、粒径1mmについては試料2つの吸水率の平均値、粒径8mmについては試料4つの吸水率の平均値である。
【0053】
表3の「吸湿率」は、北海道立工業試験場での分析結果である(工試成績第193123号)。試験方法は、絶乾試料1gを秤量びんに精秤し、温度25℃一定の恒温恒湿槽内で、湿度を24時間毎に90%RH、50%RHと変化させた。それぞれの雰囲気における試料の質量を測定し、以下の算出式で吸湿率を算出した。
吸湿率(%)=100×吸湿量/絶乾質量
【0054】
表3の「塩基交換容量」は、北海道立中央農業試験場での分析結果である(中農環保第1-42号)。分析法は、「土壌および作物栄養の診断基準-分析法(改訂版)-」(北海道農政部、道立中央農試、1992)による。この分析法(土壌分析法)は、酢酸アンモニウム抽出-ショーレンベルガー法-ホルモル滴定法を用いている。
【0055】
表3の「有効水分量」は、北海道立中央農業試験場での分析結果である(中農環保第1-37号)。分析法は、「土壌および作物栄養の診断基準-分析法(改訂版)-」(北海道農政部、道立中央農試、1992)による。この分析法(土壌分析法)では、100ml採土管に試料現物を詰め、飽水後、三相計で気相を測り、以降、遠心法でpF3段階について測定した。最後に105℃で熱乾燥し、含水量を測定した。pF0の含水量は飽水時の含水量と気相割合を加えた値とした。
【0056】
【0057】
糞尿処理物13Cは、例えば
図5に示す家畜糞尿処理設備(以下、単に「処理設備」と称する)31により得ることができる。処理設備31は、家畜糞尿11を処理して糞尿処理物13Cを得るためのものであるとともに、家畜糞尿11から土壌改質組成物を製造する土壌改質組成物製造設備でもある。
【0058】
処理設備31は、粉砕装置33と、混合造粒装置34と、過熱水蒸気接触処理装置(以下、単に「接触処理装置」と称する)35と、冷却乾燥装置36とを備える。粉砕装置33は、粉砕工程S11(
図3参照)のためのものであり、珪質頁岩19を粉砕して粉状珪質頁岩19Aにする。本例における珪質頁岩19は、採掘された状態の不定形の塊状となっており、径が例えば100mmを超えるような大きなサイズである場合がある。粉状珪質頁岩19Aを入手することができる場合には、前述の通り粉砕工程S11は不要であるから粉砕装置33は無くてもよい。粉状珪質頁岩19Aの大きさは、珪質頁岩19の粉砕の程度により調整することができる。また、混合造粒装置34が珪質頁岩19を粉状に粉砕する機能を有している場合には、粉砕装置33を用いなくてもよく、本例でも粉砕装置33を使用せずに混合造粒装置34にて粉砕している。
【0059】
粉砕装置33としては、珪質頁岩19を粉砕できるものであれば特に限定されず、市販の粉砕装置でもよい。珪質頁岩19の処理量(粉砕する量)、粉状珪質頁岩19Aの目的とする粒度等とに応じて、粉砕機(ローラミル、ジェットミル、高速回転粉砕機、容器駆動型ミル等)と破砕機(ジョークラッシャ、バケットクラッシャ、ジイトレトリクラツシャ、コーンクラッシャ、ダブルロールクラッシャ、インパクトクラッシャ等)から選ばれる少なくとも2種を組み合わせて使用してもよい。例えば、(株)ホーライ製のインパクト型と二軸型との破砕機と高速回転粉砕機とを組み合わせ、粒度の調整を兼ねた粉砕を行うことができる。
【0060】
混合造粒装置34は、珪質頁岩混合工程S12、含水工程S13、造粒工程S1のためのものであり、家畜糞尿11と籾殻15と粉状珪質頁岩19Aと水24とから粒状混合物22を得る。なお、本例では、前述の通り、粉砕工程S11もこの混合造粒装置34で行っている。家畜糞尿11の種類に応じて家畜糞尿11が粉砕可能な程度にまで乾燥させて粒状に粉砕してもよい。混合造粒装置34で行う造粒工程S1は、前述のようにペレットあるいは球状等の粒状に成形する。
【0061】
接触処置装置35は、接触処理工程S2のためのものである。接触処理装置としてはバッチ(回分)式のものと連続式のものとがあり、接触処理装置35はバッチ式のものとしている。接触処理装置35は、接触処理部37と過熱水蒸気供給部38等で構成されている。過熱水蒸気供給部38は過熱水蒸気23(
図7参照)を接触処理部37に供給するためのものであり、接触処理部37と接続している。接触処理部37は、過熱水蒸気供給部38によって供給された過熱水蒸気23を、水24を含んだ状態の粒状混合物22に接触させることにより、粒状混合物22を昇温させる。これにより粒状混合物22に含まれている籾殻15及び家畜糞尿11が分解し、糞尿処理物13Cがメイラード反応が抑えられた状態で生成する。
【0062】
過熱水蒸気供給部38は接触処理装置35に備えられているが、過熱水蒸気供給部38は接触処理部37と接続していれば接触処理装置35の外部に設けられた外部装置であってもよい。なお、接触処理装置35の詳細は、別の図面を用いて後述する。
【0063】
冷却乾燥装置36は、冷却乾燥工程S3のためのものである。過熱水蒸気処理の特徴は、処理対象物(この例では粒状混合物22)の各粒の中心温度が高くなるように昇温させ、処理直後は水蒸気を含有していることである。この状態を利用して、本例の冷却乾燥装置36は、減圧下において、効率的に減圧乾燥による含水率の低下と気化熱の発生による急冷とを行う。これにより、品温低下を抑制しつつ乾燥を行う。接触処理後の結露を防ぐことで殺菌効果を維持する。このように、冷却乾燥装置36は、換言すると、結露防止装置である。なお、第1実施形態及び第2実施形態の冷却乾燥工程S3もこの冷却乾燥装置36により行っている。なお、冷却乾燥装置36の詳細については、別の図面を用いて後述する。
【0064】
前述の混合造粒装置34の一例は、
図6に示すように、糞尿混合物17と粉状珪質頁岩19Aとを供給する供給部40と、糞尿混合物17と粉状珪質頁岩19Aとが収容される容器としてのパン41と、回転機構42と、角度調整機構43と、水供給部44と、回収部45とを備える。パン41は、上部が開口した円形の容器であり、設定された所定の傾きにパン41を支持する支持板41aを有し、周方向において回転自在に支持板41aに設けられている。支持板41aは、パン41を設けている面とは反対側の面が、水平方向に延びた支持棒41bに固定されている。
【0065】
回転機構42は、パン41を回転させるモータ(図示無し)と、モータのオンとオフとを切り替えたり回転速度を調節する回転コントローラ(図示無し)とを有し、モータは、支持板41aのパン41が設けられている反対側の面に設けられている。回転コントローラは、モータのオンとオフとを切り替えることによりパン41の回転及び停止とを制御し、モータの回転速度を調節することによりパン41の回転速度を調節する。
【0066】
角度調節機構43は、支持棒41bの軸心を回転中心にして支持棒41bを周方向に回転させることにより、パン41を所定の傾きに調節する。パン41は、角度調節機構43により所定の角度に傾けられ、傾いた姿勢で、回転機構42により所定の回転速度で回転する。
【0067】
パン41の上方には水24(
図3参照)を出すノズル47が配され、ノズル47は固定部材47aにより支持板41aに固定されている。ノズル47は支持板41aに固定されていることで、支持板41aに設けられているパン41と一体に傾く。固定部材47aは水を案内する通水路(図示無し)が内部に形成されており、水供給部44は固定部材47aを介してノズル47に接続し、水24をノズル47に送る。これにより、傾いた姿勢で回転中のパン41の内部に水24が供給され、含水工程S13を実施することができる。ノズル47は、特に限定されず、水24を液滴状に出す噴霧ノズルでもよいし、流水状に出す流出ノズルでもよい。
【0068】
パン41の内部には、パン41の内壁に付着した糞尿混合物17及び粉状珪質頁岩19Aを掻き取るスクレーパ48が設けられ、スクレーパ48は固定部材48aにより、ノズル47と同様に支持板41aに固定されている。スクレーパ48は支持板41aに固定されていることで、支持板41aに設けられているパン41と一体に傾く。これにより、傾いた姿勢で回転中のパン41の内壁から、付着している糞尿混合物17及び粉状珪質頁岩19Aとが掻き取られ、糞尿混合物17と粉状珪質頁岩19Aとがより迅速に均一な状態に混合されるとともに、水24が全体に均等かつ迅速にいきわたりやすい。スクレーパ48はこのように糞尿混合物17及び粉状珪質頁岩19Aをパン41の内壁から掻き取るためのものであるから、
図6に示すようにパン41の内側の側壁のみならず、内側の底面から掻き取ることができるように設けられてもよい。
【0069】
傾斜した姿勢で回転中のパン41に、糞尿混合物17と粉状珪質頁岩19Aとが例えば連続的に供給部40により供給され、水供給部44により水24を供給することにより、糞尿混合物17と粉状珪質頁岩19Aとは湿潤して転動しながら混合されるとともに所定の粒径に成長する。パン41は回転しているから遠心力により粒の成長に伴いパン41の内部における転動軌道が次第に小さくなり、所定の粒径に達すると、傾斜したパン41の下側の縁部から粒状混合物22として排出される。パン41の回転速度とパン41の傾きとを調整することにより、転動軌道と粒の排出のタイミングとが調整され、目的とする粒径の粒状混合物22が得られる。なお、供給する水24の温度は特に限定されず、本例では室温(概ね25℃)としている。
【0070】
糞尿混合物17に加える粉状珪質頁岩19Aの質量は特に限定されないが、糞尿混合物17の質量をM17とするときに、粒状混合物22の質量が(0.05×M17)%以上(0.10×M17)%以下の範囲内になるようにすることが好ましい。
【0071】
粒状混合物22の含水率は特に限定されないが、20%以上45%以下の範囲内であることが好ましい。含水率が20%以上であることにより、20%よりも低い場合に比べて、接触処理工程S2において、メイラード反応がより確実に抑えられた状態で、籾殻15の層構造の破壊や籾殻15の分解がより確実に促進する。含水率は45%よりも高くても45%の場合と特に差はないため、50%で十分な含水率と言える。含水率は、30%以上45%以下の範囲内であることがより好ましく、35%以上45%以下の範囲内であることがさらに好ましい。なお、上記の含水率(単位は%)は、糞尿混合物17の質量をM17、粉状珪質頁岩19Aの質量をM19A、粒状混合物22の質量をM22とするときに、{M22-(M17+M19A)}/M17で求められる値である。
【0072】
回収部45は、傾斜した姿勢のパン41の下側に配され、形成された粒状混合物22を回収する。回収部45の下方に、例えば容器を配することによりこの容器中へ粒状混合物22は案内される。
【0073】
混合造粒装置34としては、公知のパン造粒装置を用いることができ、市販されているパン造粒装置でもよい。この例では、混合造粒装置34により珪質頁岩混合工程S12と含水工程S13と造粒工程S1とを実施しており、これらの水24の供給の開始タイミングを変えることにより、珪質頁岩混合工程S12と含水工程S13とを同時に行ったり、あるいは珪質頁岩混合工程S12の後に含水工程S13を行ったりしている。また、パン41の姿勢を水24の供給開始のタイミングとパン41を傾けるタイミングとを調整することにより、含水工程S13と造粒工程S1とのタイミングを調整することができる。例えば、傾かない非傾斜姿勢において水24を供給することにより含水工程S13を行い、含水工程S13の途中からパン41を傾斜姿勢として含水工程S13及び造粒工程S1とを並行して行い、あるいは、含水工程S13を終了してからパン41を傾斜姿勢にすることで含水工程S13の後に造粒工程S1を行うことができる。また、家畜糞尿11が、接触処理工程S2においてメイラード反応が抑制される程度の水分を十分に含有している場合には、含水工程S13を行わなくてもよく、その場合には、ノズル47及び水供給部44は省略してよい。さらに、前述のように造粒工程S1において家畜糞尿11を幾分乾燥させる場合には、例えば乾燥したエアを吹き付けるなどして乾燥を促進させて造粒を行ってもよい。
【0074】
造粒の方法としては、湿式造粒方法と乾式造粒方法とがあり、造粒工程S1はいずれの方法で行ってもよく、上記の本例の方法は、湿式造粒方法のパン造粒法である。湿式造粒方法には例えば転動造粒法と押出造粒法とがあり、パン造粒法は転動造粒法のひとつである。転動造粒法は、水などの液体を使用して原料粉末を湿潤させ、粉末同士に液架橋を生成させて付着や結合を経て粒子を形成する。転動造粒法には、パン造粒法の他にドラム造粒法があり、傾斜配置された円筒形のドラムを回転させながら、ドラムの上端から粉末と水などの液体を入れて、転動させて造粒する。押出造粒法は、粉体に造粒促進剤と水などの液体を加えて、混合、混錬してから、スクリュやブランジャ、ローラ等を用いて、多孔板を通して押し出し、切断機で一定の長さに切断することにより円柱状の粒を形成する。
【0075】
造粒工程S1は、ドラム造粒法などの他の転動造粒法と、押出造粒法とを採用して実施することができる。乾式造粒方法は、液体を添加することなく粉末を粒状に形成する方法であり、含水率が高く、粘性も高い家禽糞尿を家畜糞尿11とする場合には、これを30%前後まで乾燥し、ピンミル等の粉砕機を使用して不定形の粒状とする。また、ロールに鋳型であるダイキャビティを形成し、そこに入り込んだ粉体を高圧力で圧縮して固めるブリケット造粒法などがある。高圧成形は、後工程の接触処理での有機物分解が不均一となることがあるので、本例では用いていない。
【0076】
造粒工程S1は、水24を含んだ状態の珪質頁岩混合物21を乾式造粒方法で実施してもよい。ただし、珪質頁岩混合物21の含水率は少なくとも40%とすることが確実な造粒を行うために好ましく、造粒工程S1中において含水率を40%以上に保持することがより好ましい。なお、珪質頁岩混合物21の含水率は、可能な限り高くしてもよい。
【0077】
接触処理装置35について、
図7を参照しながら説明する。過熱水蒸気供給部38は、接触処理工程S2(
図3参照)を実施する装置の一例である。なお、この接触処理装置35は、第1実施形態及び第2実施形態の接触処理工程S2にも用いられる。第1実施形態においてこの接触処理装置35で処理する処理対象物は家畜糞尿11であり、第2実施形態においては糞尿混合物17である。液体の水から過熱水蒸気23を生成する水蒸気生成部51と、バルブ52と、水蒸気生成部51及びバルブ52を統括して制御するコントローラ53とを備える。水蒸気生成部51には液体の水が供給され、コントローラ53の制御のもと、生成する過熱水蒸気23の量、及び過熱水蒸気23の温度が調節される。また、バルブ52は、コントローラ53によって開度(開閉を含む)が制御され、これによって接触処理部37へ供給する過熱水蒸気23の流量(供給流量)が調節される。なお、バルブ52を例えば全開など一定の開度に保持して、水蒸気生成部51での過熱水蒸気23の生成速度を調節することにより、接触処理部37へ供給する過熱水蒸気の流量を調節してもよい。
【0078】
接触処理部37は、処理部本体56と処理部本体56を支持する支持台57とを備える。処理部本体56は、粒状混合物22が載置される3つの載置具58A~58Cと、載置具58A~58Cを支持する板状の支持部材61と、過熱水蒸気23を載置具58A~58Cに供給する供給管62とを備える。3つの載置具58A~58Cは、鉛直方向すなわち上下方向において間隔を空けて配され、下から順に符号58A,58B,58Cを付す。なお、以降の説明において、載置具58A~58Cを区別しない場合には載置具58と記載する。載置具58を複数配する場合には本例のように上下方向に間隔を空けて設置することが好ましい。載置具58の数は限定されず、接触処理工程S2に供する粒状混合物22の量などに応じて決定すればよい。
【0079】
支持部材61は、載置具58を支持するためのものであり、一対設けている。この例では、供給管62の先端開口である過熱水蒸気23の送出口62оが載置具58Aの下方に位置するように供給管62を配置する目的で、支持部材61を支持台57上に設けている。支持部材61は、起立した姿勢で支持台57に固定され、一対の支持部材61の互いに対面する対面壁には載置具58を支持する突起61aが形成されている。一対の支持部材61は、突起61aの高さが互いに等しくされており、載置具58は姿勢を維持した状態で床面から浮いた状態で支持される。突起61aの形状は特に限定されず、本例では水平方向に延びて形成しており、載置具58がこの突起61aに沿ってスライド移動し、支持部材61に対して着脱自在となっている。なお、一対の支持部材61が対面する方向をX方向とする。
【0080】
載置具58は、上面が開放した箱状に形成されており、メッシュ部材58aと、メッシュ部材58aに張力を付与した状態で支持するフレーム58bとを備える。載置具58は60cm×40cm×高さ8cmの外寸であるが、載置具58の大きさは特に限定されない。フレーム58bは、メッシュ部材58aに対して斜めに起立した姿勢となっており、これにより、上記の突起61aに支持されるとともに、載置された粒状混合物22の載置具58からの落下を抑制している。ただし、粒状混合物22を載置する量が少ない場合などには落下しにくいから、落下の可能性に応じて、フレーム58bの代わりに、メッシュ部材58aと同様に水平方向に平坦なフレームを用いてもよい。
【0081】
メッシュ部材58aは、粒状混合物22を保持するとともに、下方からの過熱水蒸気23を粒状混合物22に案内するためのものである。メッシュ部材58aは、厚み方向に貫通した貫通孔としての網目を複数有し、これらの各網目は、過熱水蒸気23を通過させる。この例では、過熱水蒸気23は後述するように載置具58Aの下面に向かって供給管62の送出口62оから送出され、メッシュ部材58aの網目により載置具58の上面側に案内される。その結果、過熱水蒸気23はメッシュ部材58a上の粒状混合物22に接触する。このように、載置具58は過熱水蒸気23を接触させる間の粒状混合物22を支持する支持部材として機能し、網目が、送出された過熱水蒸気23を粒状混合物22へ案内する案内路として機能する。なお、メッシュ部材58aは矩形であるが、矩形以外の例えば円形であってもよい。
【0082】
メッシュ部材58aは、例えば金属で形成された網であり、フレーム58bも金属で形成されている。金属としては、過熱水蒸気23と接触しても溶解せずに形状を保持できるものであれば特に限定されない。本例のメッシュ部材58a及びフレーム58bの素材はステンレス鋼である。メッシュ部材58aは粒状混合物22を支持する支持部材として機能するために、網目は粒状混合物22が通過しない大きさとする。粒状混合物22が通過してしまう場合には、複数のメッシュ部材58aを、互いの網目がずれた位置となる状態に、厚み方向に重ねて配し、複数のメッシュ部材58aの各網目よりも小さい網目を形成してもよい。なお、メッシュ部材58aは、第1実施形態においては粒状にされた糞尿処理物11、第2実施形態においては粒状にされた糞尿混合物17が通過しない大きさのものとする。
【0083】
メッシュ部材58aは多孔部材の一例であり、多孔部材はメッシュ部材58aに限られない。例えば、金属板に例えばパンチング処理によって孔を複数形成した多孔板でもよい。また、多孔板を厚み方向に複数重ねて用いてもよいし、多孔板とメッシュ部材58aとを厚み方向に重ねて用いてもよい。
【0084】
供給管62は過熱水蒸気供給部38に接続し、送出口62оが載置具58の下面に向くように配されている。載置具58を本例のように複数設けた場合には、供給管62を複数の載置具58の各々の下方に供給管62を設置して各々の下面に送出口62оを向けてもよい。しかし、過熱水蒸気23は送出口62оから送出されると上方へ向かうので、供給管62は、複数の載置具58のうち最も下の載置具38Aにのみ配する態様であっても、過熱水蒸気23はすべての載置具58A~58C上の粒状混合物22に案内されるので十分である。
【0085】
供給管62は、本例では、水平面上で交差する2方向のうちの一方において対面するように2つが一対の支持部材61の個々の下方に設けられており、個々の送出口62оは、X方向において支持部材61よりも内側に位置している(
図8参照)。これにより、送出口62оから出た過熱水蒸気23は、板状の支持部材61により一対の支持部材61の間で上方に向けて案内される。そのため、載置具58A~58Cに載置されている粒状混合物22に案内されて接触するとともに、送出された過熱水蒸気23が粒状混合物22への接触に無駄なく利用される。また、この構成によると、過熱水蒸気が下方から上向きに供給されるので、水を多く含んだ処理対象物であっても、処理空間の温度が均一になりやすく、処理対象物に対してより均等に接触処理が行われる。
【0086】
粒状混合物22に過熱水蒸気23が接触することにより、粒状混合物22は各粒の中央まで加熱されて、粒状混合物22に含まれていた液体の水24(
図5参照)が気体の水、すなわち水蒸気になる。水24を含んでいる粒状混合物22に過熱水蒸気23を接触させることにより、家畜糞尿11に含まれていた有機質は、メイラード反応が抑制されつつ、嫌気性発酵の場合と同程度以上に分解して低分子化する。これにより、数か月の発酵時間をかけて得られる慣行堆肥と同等の可給化成分を有する糞尿処理物13Cとなり、土壌改質組成物として用いることができる。
【0087】
ここで、以下の説明において糞尿処理物13A~13Cを区別しない場合には、糞尿処理物13と記載する。市販されている堆肥が弱塩基性である。これに対して、得られる糞尿処理物13は数μm以下の水溶解(分散)性微粒子が乾物換算で50%以上となり、水に溶解(分散を含む)させたその溶液は弱酸性を示し、作物の吸肥時の阻害要因とはならないので好ましい。また、家畜糞尿11を発酵させた発酵処理物は、弱塩基性を示すため土壌微生物活性の抑制が認められ、作物根も吸肥が阻害されるpH(水素イオン指数)であり、施用量及び時期に注意を要する。これに対し、家畜糞尿11に含まれていた有機質が低分子化した糞尿処理物13は、モデル系において、土壌に加えてから24時間以内に70%以上が可給化し、すなわち水溶性荷電物質になる。糞尿処理物13は土壌浸出液で加水することにより、土壌微生物の呼吸量の増加、及び、酸化還元電位の降下が認められている。
【0088】
処理空間の温度は、160℃以上400℃以下の範囲内であることがより好ましく、170℃以上400℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、180℃以上250℃以下の範囲内であることが特に好ましい。処理空間の温度は、載置台58周辺の温度を検出し、この検出した温度を処理空間の温度とみなしてよい。載置台58周辺の温度は、例えば、支持部材61の載置具58が設置される側の壁面に温度センサ(図示無し)などを設けて検出することができる。
【0089】
水蒸気生成部51で生成される過熱水蒸気23の流量の最大値は、過熱水蒸気23の温度により変化し、またこの変化の程度は用いる水蒸気生成部51によって異なる。例えば、過熱水蒸気23の温度が100℃低下すると1.5倍増加する水蒸気生成部51もある。また、流量調節は再現性に乏しい。そのため、過熱水蒸気23の温度と過熱水蒸気23を生成させるための液体の水量とは一定として行うようにしている。
【0090】
供給される過熱水蒸気23の温度は、水蒸気生成部51において調節した水蒸気の温度に加えて、バルブ52の開度制御による流量の調節にも依存する。そこで、過熱水蒸気23の温度は、バルブ52の開度制御によって、より精緻に制御することが好ましく、本例でもそのようにしている。具体的には、例えば支持部材61に設けた前述の温度センサ(図示無し)の検出結果に基づいて、コントローラ53によりバルブ52の開度を調節するとよい。過熱水蒸気23の温度を高める場合には、バルブ52の開度を小さくする方に調節し、温度を低くする場合には、開度を大きくする方に調節する。過熱水蒸気23は、水蒸気生成部51で生成されてから載置具58に至るまでの間に温度が下降する場合があり、そのような場合には、温度の下降分を考慮して、水蒸気生成部51から送り出す過熱水蒸気の温度を水蒸気生成部51により調節するとよい。
【0091】
過熱水蒸気23との接触による接触処理効率をより向上し、かつ、家畜糞尿11中の有機質と籾殻15の分解をより促進するために、送出口62оと最も下の載置具58Aとの距離はできるだけ小さくする方が好ましい。
【0092】
板状の支持部材61は、載置具58を支持する観点では、例えば起立した姿勢の柱状(棒状)部材でもよい。このような柱状の支持部材の場合や本例の支持部材61を用いた場合には、支持部材と支持部材との間は開放されているので、過熱水蒸気23と粒状混合物22(第1実施形態においては家畜糞尿11、第2実施形態においては糞尿混合物17である)との接触処理がなされる接触処理空間は開放系である。また、接触処理空間は、外部空間と仕切る閉鎖系であってもよい。閉鎖系とする場合には、例えば載置具58を囲むようにして、接触処理空間を外部空間から仕切る箱状の仕切部材を用いるとよい。この仕切部材の下面は、過熱水蒸気23を導入するために開放するとよい。また、この仕切部材の上面は閉じていてもよいが、水24が蒸発した水蒸気の排出を促すために、仕切部材の上面に開口を設け、この開口から水蒸気を自然排出したり、この開口に気体を吸引する吸引機構を設けて水蒸気を吸引してもよい。また、供給管62の位置は、載置具58のうち最も上の載置具58Cよりも上にしてもよい。ただし、粒状混合物22に含まれている水24が蒸発した際により効果的に処理空間外へ排出される観点で、供給管62は載置具58Aの下方に配することが好ましい。
【0093】
過熱水蒸気23の粒状混合物22に対する接触の時間、すなわち接触処理工程S2の時間は特に限定されないが、少なくとも10分であることが好ましい。これにより、家畜糞尿11中の有機質の分解及び籾殻15の分解がより促進される。接触処理工程S2の時間は、少なくとも15分であることがより好ましい。
【0094】
図9において、冷却乾燥装置36は、接触処理工程S2で高温に得られた処理物PMを室温(概ね25℃)に冷却し、乾燥する。冷却乾燥装置36は、接触処理工程S2で得られた処理物PMを収容する容器71と、容器71の内部温度の計測及び温度調節する温度コントローラ72と、容器71の内部を減圧する減圧機構73とを備える。容器71は、処理物PMを収容し、上面が開放した容器本体71aと、蓋71bとを有し、蓋71bには減圧機構73と接続される開口71cが形成されている。減圧機構73は、容器71の内部の空気を吸引する吸引部(図示無し)と、吸引を停止させて容器71内へ気体を流入する流入部(図示無し)とを有する。これにより減圧機構73は、容器71の内部の空気を吸引することにより容器の内部を減圧し、また、容器71の内部の減圧を解除して常圧に回復させる。流入部は、乾燥した空気(以下、乾燥空気と称する)あるいは乾燥した不活性ガス(以下、乾燥不活性ガスと称する)を容器71へ流入させて容器71の内部を常圧に戻す。
【0095】
糞尿処理物13は、容器71に収容されると、温度コントローラ72によって容器71の内部が冷却されることによって、冷却される。冷却工程中は、減圧機構73によって容器71の内部を減圧した状態、より好ましくは真空に近い程度にまで減圧した状態にすることが、結露をより確実に抑制する観点で好ましい。冷却した後、減圧機構73により吸引を停止し、流入部によって乾燥空気あるいは乾燥不活性ガスを流入させて常圧に戻す。以上により、糞尿処理物13は結露をより確実に抑制されつつ室温に降温された乾燥物として得られる。なお、開口71cは、容器本体71aに形成されていてもよい。
【0096】
減圧状態から常圧に戻す際に外部空気を容器71の内部へ流入させた場合には、糞尿処理物13が微生物によって汚染される場合があり得る。しかし、本例では上記のように乾燥空気または乾燥不活性ガスを外部空気の代わりに容器71に流入させるのでそのような微生物汚染が防止される。微生物汚染が問題とならない場合には、処理設備31は冷却乾燥装置36を必ずしも備える必要はなく、自然放冷により糞尿処理物13を室温にしてもよい。
【0097】
処理物PMの各粒の中央の高温蒸気の減圧吸引により、処理物PMは急激に温度が低下し次第に室温に近くなる。その温度挙動は、容器71に配した温度センサ(図示無し)により計測することができる。本例では、このような減圧吸引により水分を気化させ、含水率を20%以下の糞尿処理物13を得ている。
【0098】
処理設備31はバッチ式である上記の接触処理装置35を備えるが、接触処理装置35の代わりに連続式の接触処理装置を備えてもよい。
図10において、連続式の接触処理装置85は、処理対象物である粒状混合物22(第1実施形態では家畜糞尿11、第2実施形態では糞尿混合物17)に過熱水蒸気を接触させることができるものであれば特に限定されない。接触処理装置85は、粒状混合物22を搬送する搬送部86と、搬送中の処理対象物に過熱水蒸気23(
図7参照)を接触させる接触処理部87とを備えるコンベア式接触処理装置である。
【0099】
搬送部86は、粒状混合物22が載置され、長尺かつ環状に形成された帯状の搬送ベルト90と、搬送ベルト90に上方から粒状混合物22を供給するホッパ91と、搬送ベルト90を支持して搬送路を形成する複数のローラ92a~92iとを備え、ローラ92a~92iのうちの少なくともひとつが、モータ93を有する駆動ローラとされている。
図10には、粒状混合物22の搬送方向(以下、単に搬送方向と称する)における最も上流のローラ92aと最も下流のローラ92iとを駆動ローラとして描いている。搬送部86は、モータ93により駆動ローラを周方向に回転させる駆動コントローラ94と、回収容器96等をさらに備える。駆動コントローラ94により駆動ローラを回転させることにより、駆動ローラの周面に接する環状の搬送ベルト90は循環するように走行する。これにより、ホッパ91から搬送ベルト90上に載置された粒状混合物22は搬送され、搬送ベルト90の走行路の一端側の下方に設けられた回収容器96に回収される。
【0100】
搬送ベルト90はメッシュ部材58a(
図7参照)が長尺かつ環状に形成されたものである。接触処理部87は、過熱水蒸気23を粒状混合物22に接触させる処理空間を、搬送ベルト90の上方に形成するように設けられている。この例では、接触処理部37における一対の支持部材61が、上記処理空間を形成するように、搬送ベルト90の幅方向における両端側に起立した姿勢で設けられている。この例の支持部材61は、処理空間を外部空間から区画して形成するためのものである。搬送方向における支持部材61の長さL61は、搬送路の長さ、搬送速度等に応じて適宜設定すればよい。さらに、一対の支持部材61の間の上部に天板を設けて、処理空間をトンネル状に形成してもよい。
【0101】
過熱水蒸気23を処理空間に供給するための供給管62は、搬送ベルト90の下方かつ搬送ベルト90の幅方向における両側に、一対設けられている。接触処理部37における場合と同様に、支持部材61の下方の供給管62は、過熱水蒸気23を送出する送出口62о(
図7参照)が、粒状混合物22が載置される搬送ベルト90の下面に向くように上向き傾斜した姿勢で配されている。これにより、送出口62оから出た過熱水蒸気23が搬送ベルト90の網目を通過して搬送ベルト90上の粒状混合物22に接触する。このようにして処理空間は搬送ベルト上に形成されている。搬送方向における供給管62の数はこの例では1つであるが、2つ以上であってもよい。
【0102】
本例では、過熱水蒸気23の温度、時間当たりの過熱水蒸気23の生成量及び送出口62оにおける温度は固定している。ただし、粒状混合物22の含水率により処理空間の出口(搬送方向における支持部材61の下流端)の温度は変化する。入口温度は、低くても160℃、すなわち160℃以上であることが好ましく、有機質である籾殻15が混入している粒状混合物22の処理効率の観点においては160℃以上400℃以下の範囲内であることがより好ましく、170℃以上400℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、180℃以上250℃以下の範囲内であることが特に好ましい。出口の温度を検出することができない場合には、搬送ベルト90の上部や搬送ベルト90の幅方向における支持部材61の内側面に温度センサ(図示無し)を設けて搬送ベルト90周辺の温度を検出し、この検出した温度を出口の温度とみなしてもよい。送出口62оにおける温度と出口との両方に温度センサを設置することが望ましい。
【0103】
過熱水蒸気23の温度と過熱水蒸気23を生成させるための液体の水の量とは一定としている。この一定条件下において、粒状混合物22の含水率により出口の温度は変化する。出口の温度変化を指標として、処理を開始した後出口の温度は低下し、その後、やがて上昇する。この上昇の開始までは、有機物の分解が主として進む。出口の温度が上昇し始めてから入口の温度程度に達する間は、粒状混合物22は乾燥及び一部が焙焼(成分である珪質頁岩が還元される還元焙焼)される。有機物の分解には、送出口62оの温度、含水率の高い状態での過熱水蒸気23の接触処理、出口の温度変化に応じた取り出し時期を考慮して、搬送ベルト90の搬送速度等を設定することがより好ましい。上記構成によると、処理対象物が、他の物質が非添加である家畜糞尿11、糞尿混合物17、粒状混合物22のいずれの場合でも、家畜糞尿11が効率的かつ簡単に処理され、また得られる糞尿処理物13は土壌改質組成物として有用である。
【実施例0104】
[実施例1-1]~[実施例1-18]
図1に示す家畜糞尿処理方法により、家畜糞尿11の種類、処理条件等が表4に示すように互いに異なる実施例1-1~18を行った。家畜糞尿11は、いずれも、乾物換算で窒素全量が2%以上であり、窒素全量とリン酸全量とカリ全量との合計が5%以上であった。豚糞尿は、広島県内で敷料を使用していない糞と尿との分別処理養豚場で採取されたものである。鶏糞尿は岡山県の養鶏場のゲージ下に敷料のない部分から採取されたものである。
【0105】
接触処理工程S2は、前述の連続式の接触処理装置85を用いて行った。冷却乾燥工程S3における乾燥処理は、100℃に設定した加熱下で、5時間実施した。表4における「事前乾燥の有無」は、処理に供した家畜糞尿11について、事前に乾燥させたか否かを示しており、すなわち、未乾燥である場合は「無」と記載している。含水率(単位は%)は、乾量基準の値である。すなわち、処理に供した家畜糞尿11の質量をMaとし、100℃(変動範囲は±2℃)に設定した恒温乾燥装置により5時間乾燥した後の質量をMbとするときに、{(Ma-Mb)/Mb}×100で求める。
【0106】
家畜糞尿11として鶏糞尿を用いて得られた糞尿処理物13は、いずれの実施例も含水率が10%以上14%以下の範囲内であり、例えば実施例1-5の糞尿処理物13の含水率は12.3%であった。家畜糞尿11として豚糞尿を用いて得られた糞尿処理物13は、いずれの実施例も含水率が13%以上17%以下の範囲内であり、例えば実施例1-15の糞尿処理物13の含水率は15.3%であった。
【0107】
得られた糞尿処理物13に関して、メイラード反応の抑制の程度、溶解性成分の量、窒素の減少率を評価した。結果は表4に示す。
(1)メイラード反応の抑制の程度
加熱によってメイラード反応が進むほど黒褐色に変色するので、糞尿処理物13の色をメイラード反応の抑制の程度として以下の基準で評価した。A~Cは合格、Dは不合格である。
A;家畜糞尿11と同様の色であり、黒褐色化はみられなかった。
B;家畜糞尿11と比べてわずかに褐色化した程度であった。
C;家畜糞尿11よりも褐色化しているが、許容範囲内であった。
D;明らかに黒褐色化していた。
【0108】
(2)溶解性成分の量
糞尿処理物13を、500ml容の容器に30g入れ、脱イオン水を撹拌せずにゆっくりと注ぎ、全量を300mlにした。容器を密栓し、25℃に温度を保持した状態で96時間静置した。静置後の液を、土壌粒子と土壌懸濁液との分離に使用するろ紙(アドバンテック東洋株式会社、ろ紙No.1、6μm以上の粒子を捕捉)を用いて、液分散成分と沈殿成分を分離し、溶解成分と不溶解成分とを分離して、溶解成分の質量を測定した。具体的には、ろ紙を計量した後、静置後の液の上澄液をろ紙上に注ぎ、さらに、容器中の残渣に脱イオン水を加えてろ紙上に注いだ。ろ液を、40~45℃での減圧濃縮した後、この液を計量済の容器に移し、80℃で乾固させた。次に、設定温度100℃(温度変動は±2℃)の乾燥機で5時間乾燥後、容器のまま計量し、容器量を減算して溶解性成分の量を求め、以下の基準で評価した。溶解性成分が多いほど、糞尿処理物13の分解が進み、より小さな粒子で構成されており、例えば液肥などとしての利用が広がる。A~Cは合格、Dは不合格である。また、一部の実施例については、不溶性成分の量を求めており、その結果も表4に示す。不溶性成分の量は、ろ紙上の残渣を、設定温度100℃(温度変動は±2℃)の乾燥機で5時間乾燥した後に、ろ紙のまま質量を測定し、この測定結果から予め計量したろ紙の質量を減算して、不溶性成分の量とした。
A;15g以上30g以下の範囲内であった
B;10g以上15g未満の範囲内であった
C;5g以上10g未満の範囲内であった
D;5g未満であった
【0109】
(3)窒素の減少率
窒素の減少率は、乾物(固形分)の減少率である乾物減少率と相関があることから、乾物減少率を窒素の減少率として求めた。乾物減少率は、処理対象物である家畜糞尿11の乾物量をSm1、得られた糞尿処理物13Aの乾物量をSm2とするときに、{(Sm1-Sm2)/Sm1}×100の算出式により求めた。乾物量S1は家畜糞尿11の質量及び含水率から、乾物量S2は糞尿処理物13Aの質量及び含水率から、それぞれ。表4において、「乾物減少率」欄は以下を示す。なお、堆肥化及び乾燥処理による肥料成分は乾物中の%であり、リン全量及びカリ全量は流亡しないため乾物量の減少により、乾物換算%が生家畜糞より高くなる。
A;5%未満であった
B;5%以上10%未満の範囲内であった
C;10%以上15%未満の範囲内であった
D;15%以上であった
【0110】
【0111】
[比較例1-1]~[比較例1-2]
実施例1-5、1-15の接触処理工程S2を乾熱工程に代えて、家畜糞尿11を処理して糞尿処理物を得、比較例1-1、1-2とした。表4において「接触処理工程」欄の「無」とは、接触処理工程S2の代わりに、乾熱工程を実施したことを意味する。乾熱工程は、過熱水蒸気を接触させることなく、すなわち、過熱水蒸気23を家畜糞尿11に対して供給することなく、家畜糞尿11を加熱する工程であり、比較実験1-1、1-2においては家畜糞尿11を200℃の温度に設定した加熱炉により加熱した。乾熱工程の処理時間は「接触処理工程」の「時間」欄に示す。
【0112】
比較例1-1、1-2で得られた糞尿処理物を実施例1-5、1-15と同様の方法及び基準で評価した。評価結果は表4に示す。
糞尿混合物17を岩手県の養鶏場から入手し、処理装置31により処理して糞尿処理物13Cを得る実験1~4を行った。実験4は、以下のように実施した。珪質頁岩(珪藻土類)19の質量が、粒状混合物22の質量M22の10%、すなわち0.1×M22となるように、珪質頁岩19を糞尿混合物17に添加して混合し、糞尿混合物17中の余剰水分を珪質頁岩19に保水させた。珪質頁岩混合物21は、メスシリンダーに珪質頁岩と2倍量の水を入れ界面が下がらなくなるまでに6時間~10時間を要することから、10時間以上静置した。その後、混合造粒装置34を用いて、含水率が45%である粒状混合物22が得られるように水24を供給して(含水工程S13)を実施し、30mm以上40mm以下の粒径をもつ粒状混合物22が得られるように造粒工程S1を実施した。その後、接触処理装置35を用いて実施した接触処理工程S2においては、供給管62の送出口62оの温度を検出して、この温度を、粒状混合物22に接触する過熱水蒸気23の温度とみなした。この温度と接触処理工程S2の時間とは表5の「実験4」の「熱処理(過熱蒸気処理)」の「温度」欄と「時間」欄とに示す。冷却乾燥工程S3の冷却処理では、冷却乾燥装置36内に入れた状態で自然冷却とし、その後の乾燥処理では、冷却乾燥装置36の中に乾燥剤を収容して密閉することにより実施した。
また、実験1~3は、実験4でつくった珪質頁岩混合物21と同じ珪質頁岩混合物21を用いて、含水工程S13を実施することなく糞尿処理物13Cを得た。すなわち、実験1~3では、珪質頁岩混合物21に水24を供給せず、含水させなかった。接触処理工程S2における過熱水蒸気23の温度を表5に示す温度とした。その他の条件は実験4と同じとした。
乾熱減量から算出した水分(乾燥条件は100℃±2℃、5時間)が実験4において高いという結果は、珪質頁岩19の保水性によるものと推定される。pHは、予備乾燥試料あるいは乾熱減量試料を使用したために乾熱時の酸化によって変化したものと推定される。この結果から、普通肥料の有機質肥料原料とするためには、窒素、リン酸、カリのそれぞれの全量が、処理前(「対照区」に相当する)よりも大きく減量しない処理方法が望まれる。なお、公定規格は乾物換算で窒素全量が2.5%以上、リン酸全量が2.5%以上、カリ全量1.0%以上、含水率20%以下であり、実験4はこの規格を満たしている。珪質頁岩19の添加量10%は、肥料成分値の公定規格に対して、余裕のある数値ではなく珪質頁岩19の添加は必要最小限に抑えることが好ましい。また、籾殻15の添加量も本実施例の量を上限とする方が好ましい。なお、公定規格は、普通肥料「加工家きんふん肥料」の公定規格である。
糞尿処理物13Cは、家畜糞尿11を発酵して得られる堆肥、家畜糞尿11の灰化物、家畜糞尿11の焼成物と異なり、有意な成分損失がないことがわかる。このことを前提に後述の各評価の結果を考察した。
揮発性有機物は低級脂肪酸が主成分と考えられる。これは悪臭の原因物質にも挙げられており、実験2では臭気が低減していることになる。実験4では発酵堆肥に類似した籾殻15を含む有機物の分解が進んでいることがわかる。
対照区及び実験1~4は、いずれも72時間後の到達EC値は14.3~16.3となっており、水溶性肥料塩類濃度と想定されるものと同程度であった。開始後、1時間のEC値は即効性肥料成分で化成肥料が高く、有機質肥料は低くなる数値であった。開始1時間後のEC値は72時間後のEC値に対して、対照区が約36%、比較例と本発明例は60~67%と挙動が異なった。対照区は知見通りであるが、過熱水蒸気処理物の特徴として、可給化された即効性肥料成分を含むことが示唆されている。pHの変化が、対照区と実験1~4とで異なる。対照区は表6の結果と相違ないが、実験1~4では弱酸性を示す。表6において、pHは乾熱乾燥後の試料として測定している。今回は、有姿で使用したことによる相違である。過熱水蒸気の接触処理は還元的熱分解が主体と論じられており、このことを裏付ける間接的な数値の一つがpHと考えられる。弱酸性~中性を示すことが過熱水蒸気の接触処理を経た処理物の特徴である。因みに、植物体は中性~弱酸性では吸肥が促進され、中性~弱塩基性では阻害されることは公知である。
土壌中で生じた還元作用により、土壌間隙水の電位は変化する。本試験では溶液部(本圃では湛水部と想定)の電位が0mV以下となる。土壌中の植物病原微生物の増殖が完全に阻害されると報告されている。また、-100mV~-200mVでは土壌粒子に酸化固定されていた窒素肥料成分だけでなく、リン酸、カルシウム、ケイ酸が可給化(還元可給化)するとされている。表10の結果は、土壌還元作用は同一挙動をとっていると考えられる。従って、植物病原菌に対する作用も肥料成分の還元可給化も同様に生じていることが類推される。表9の1時間後の結果は、還元可給化によるものではなく過熱蒸気処理物の特性と考えられる。
土壌微生物は、化成肥料では窒素成分の無機化に不可欠であり、有機質肥料は土壌微生物の栄養源としての作用も重要とされている。72時間までの経過の結果が示す通り、実験1~4では土壌微生物の呼吸量が二次関数的に増加している。過熱水蒸気の接触処理物は、発酵鶏糞とは異なり、施肥後において土壌微生物の活性を阻害しないことが推定される。