(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095517
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】騒音計
(51)【国際特許分類】
G01H 3/00 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
G01H3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211461
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 達也
(72)【発明者】
【氏名】森川 昌登
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB15
2G064BA07
2G064BA08
2G064BA12
2G064CC06
2G064CC29
2G064CC35
2G064CC45
2G064DD08
2G064DD14
2G064DD15
(57)【要約】
【課題】測定における大気圧の影響を低減する技術の提供。
【解決手段】時間Tを周期として信号処理部32が実行する演算処理では、先ず、補正情報記憶部34に予め記憶されたマイクロホン12の機種に固有の気圧特性に応じた補正量に関する情報に基づいて、現在の気圧センサ24の出力値に対応する補正量hを特定する(S110)。次に、時間Tの間にサンプリングされた個々の入力信号に対して周波数重み付け特性A,C,及びZの各フィルタを適用し(S120)、各フィルタの出力に基づいて音圧レベルの評価に必要とされる所定の評価値を算出した上で(S130)、補正量hを用いてdB変換前後の各評価値を補正し(S140)、補正後の各評価値を出力する。このように、騒音計100においては、マイクロホン12の機種に固有の気圧特性を踏まえて補正された評価値が出力されるため、測定における大気圧の影響を低減することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を電気信号に変換するマイクロホンと、
前記電気信号をインピーダンス変換するプリアンプと、
大気圧を検知する気圧センサと、
前記プリアンプの出力信号及び前記気圧センサの出力値に基づいて所定の評価値を算出する信号処理部と
を備えた騒音計。
【請求項2】
請求項1に記載の騒音計において、
前記マイクロホンの大気圧に対する感度レベルの変動量の補正に関する気圧特性情報を予め記憶する補正情報記憶部
をさらに備え、
前記信号処理部は、
前記気圧特性情報を用いて前記気圧センサの出力値に対応する補正量を特定し、前記プリアンプの出力信号及び特定された前記補正量に基づいて前記所定の評価値を算出する
ことを特徴とする騒音計。
【請求項3】
請求項2に記載の騒音計において、
前記補正情報記憶部は、
前記気圧特性情報として、気圧を変数として補正量を求める計算式を予め記憶する
ことを特徴とする騒音計。
【請求項4】
請求項2に記載の騒音計において、
前記補正情報記憶部は、
前記気圧特性情報として、気圧と補正量との対応関係を定義した情報を予め記憶する
ことを特徴とする騒音計。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の騒音計において、
前記補正情報記憶部は、
前記マイクロホンの大気圧に対する感度レベルの周波数による変動量の補正に関する周波数特性情報を予め記憶し、
前記信号処理部は、
前記周波数特性情報を用いて前記気圧センサの出力値に対応する補正情報を特定し、前記プリアンプの出力信号に基づいて前記所定の評価値を算出する過程で前記補正情報を適用することで、前記周波数による変動量を補正する
ことを特徴とする騒音計。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の騒音計において、
前記騒音計の構成部品を収容する筐体をさらに備え、
前記筐体は、
前記マイクロホンを収容する空間とその外部の空間とを連通させる孔を有していることを特徴とする騒音計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内外における音圧レベルの測定に用いられる騒音計に関する。
【背景技術】
【0002】
環境騒音測定や建築物の遮音性能測定等、屋内外における音圧レベルの測定に騒音計(サウンドレベルメータ)が幅広い分野で使用されている。騒音計の規格(JIS C 1509-1、及び、IEC 61672-1。以下、これらを総括して「規格」と称する。)では、性能によってクラス1(class 1)及びクラス2(class 2)の2種類が規定されている。クラス1は、クラス2と比べて測定周波数範囲が広く、環境変動による安定性等が厳しく規定されており、より精密な音響計測を用途としている。また、規格では、大気圧(静圧)が環境変動パラメータの1つとして規定され、静圧変動に対する指示値の安定性が求められており、指示値の偏差の受容限度値が各クラスに対し規定されている。静圧変動に対する指示値の安定性は、騒音計に用いられるマイクロホンの静圧特性に大きく依存する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「IEC 61672-1:2013 Electroacoustics - Sound level meters - Part 1: Specifications」,国際電気標準会議,2013年9月
【非特許文献2】「JIS C 1509-1:2017電気音響-サウンドレベルメータ(騒音計)-第1部:仕様」,経済産業省(日本産業標準調査会),2017年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、環境騒音測定は、長期間連続して実施されることが珍しくない。例えば、航空機騒音の測定においては、1日のうちで航空機が飛行する時間での測定、或いは飛行場の近くの場合には飛行場の運用時間帯にわたる測定が、1週間連続して行われ、このような測定が1年あたり最大4回程度実施される場合がある。また、道路交通騒音の測定においては、24時間の測定が1週間連続して行われる場合や、騒音計を常設して常時測定が行われる場合もある。
【0005】
そのような測定期間内には、天候や気候の変化に伴い大気圧が大きく変動しうる。また、測定地点の標高が異なれば、自ずと大気圧が異なる。これに対し、マイクロホンの感度は気圧に依存する。また、感度の気圧に対する依存度は周波数により異なり、特に1kHzを超える高い周波数で顕著にみられる。したがって、こうした測定環境の違いにより、騒音計、つまりはマイクロホンが大気圧の影響を受け、測定した音圧レベルが物理的には同じであっても騒音計の指示値が異なる場合があり、測定の信用性を損なう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、測定における大気圧の影響を低減する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の騒音計を採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
すなわち、本発明の騒音計は、音を電気信号に変換するマイクロホンと、電気信号をインピーダンス変換するプリアンプと、大気圧を検知する気圧センサと、プリアンプの出力信号及び気圧センサの出力値に基づいて所定の評価値を算出する信号処理部とを備えている。
【0009】
マイクロホンの感度は気圧に依存するため、一般的な騒音計を用いて天候や標高等の異なる環境で測定を実施すると、測定した音圧レベルが物理的には同じであっても、異なる評価値を示す場合がある。
【0010】
これに対し、上記の態様の騒音計は、気圧センサを備えており、気圧センサの出力値を踏まえて評価値を算出する。したがって、この態様の騒音計によれば、測定に与える大気圧の影響を低減することができ、高精度で安定した測定を行うことが可能となる。
【0011】
また、上記の態様の騒音計において、マイクロホンの機種に固有の大気圧に対する感度レベルの変動量(以下、「気圧特性」と称する。)の補正に関する気圧特性情報を予め記憶する補正情報記憶部をさらに備え、信号処理部は、気圧特性情報を用いて気圧センサの出力値に対応する補正量を特定し、プリアンプの出力信号及び特定された補正量に基づいて所定の評価値を算出する。
【0012】
この態様の騒音計によれば、騒音計に搭載されたマイクロホンの気圧特性の補正に関する情報を用いて測定時の気圧に応じた補正量を特定し、この補正量を踏まえて評価値を算出することができるため、より正確な評価値を示すことができ、より高精度で安定した測定を行うことが可能となる。
【0013】
より好ましくは、上記の態様の騒音計の補正情報記憶部は、気圧を変数として補正量を求める計算式を予め記憶する。
【0014】
この態様の騒音計によれば、マイクロホンが気圧に対し良好な線形特性を有している場合に、補正量を高い分解能で特定することができ、この補正量を踏まえて評価値を精度よく算出することができる。
【0015】
或いは、上記の態様の騒音計の補正情報記憶部は、気圧と補正量との対応関係を定義した情報を予め記憶する。
【0016】
この態様の騒音計によれば、マイクロホンが気圧に対し線形性を有していない(複雑な気圧特性を有している)場合であっても、この補正量を踏まえて評価値を精度よく算出することができる。
【0017】
また、好ましくは、上記のいずれかの態様の騒音計において、補正情報記憶部は、マイクロホンの大気圧に対する感度レベルの周波数による変動量(周波数特性)の補正に関する周波数特性情報を予め記憶し、信号処理部は、周波数特性情報を用いて気圧センサの出力値に対応する補正情報を特定し、プリアンプの出力信号に基づいて所定の評価値を算出する過程で補正情報を適用することで、周波数による変動量を補正する。
【0018】
マイクロホンの感度の気圧に対する依存度は、周波数によって異なる。この態様の騒音計によれば、評価値を算出する際に、測定時の気圧に応じた周波数特性の補正に関する情報を適用して、周波数特性を補正することができるため、さらに正確な評価値を示すことができ、さらに高精度な測定を行うことが可能となる。
【0019】
さらに好ましくは、上述したいずれかの態様の騒音計において、騒音計の構成部品を収容する筐体をさらに備え、筐体は、マイクロホンを収容する空間とその外部の空間とを連通させる孔を有している。
【0020】
この態様の騒音計によれば、マイクロホンが収容される空間の気圧と外部空間の気圧とが略同等に保たれるため、気圧差が測定に与える影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、測定における大気圧の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態の騒音計100の外観を示す正面図である。
【
図2】騒音計100の主要な構成を示すブロック図である。
【
図3】演算処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図4】或る機種のマイクロホンの250Hzにおける気圧特性及びその補正後の特性を示す図である。
【
図5】比較例としての騒音計100´の主要な構成を示すブロック図である。
【
図6】比較例における演算処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図7】変形例1における演算処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図8】変形例2における演算処理の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は好ましい例示であり、本発明はこの例示に限定されるものではない。
【0024】
図1は、一実施形態の騒音計100の外観を示す正面図である。
騒音計100は、例えば、マイクロホンが配置されたマイクロホン部10と、プリアンプが配置されたプリアンプ部20と、測定に関わる様々な構成が配置された本体部30からなる。また、本体部30の外側には、測定結果を表示する表示部40や、騒音計100に対する各種の操作ボタンを有する操作部50が配置されている。
【0025】
なお、
図1に示した外観はあくまで一例として挙げたものであり、これに限定されない。また、本実施形態においては、マイクロホンが配置される部位(マイクロホン部10)とプリアンプが配置される部位(プリアンプ部20)とが本体部30とは別に設けられているが、1つの部位にマイクロホン及びプリアンプの両方が配置されてもよいし、或いは、プリアンプが本体部30に配置されてもよい。
【0026】
図2は、騒音計100の主要な構成を示す機能ブロック図である。
図2に示されるように、騒音計100は、例えば、マイクロホン12、プリアンプ22、気圧センサ24、信号処理部32、補正情報記憶部34、表示部40、操作部50等の機能部を有しており、電池又は外部電源で駆動する。
【0027】
マイクロホン12は、音を検出し、電気信号に変換して出力する。プリアンプ22は、マイクロホン12の出力信号をインピーダンス変換して出力する。プリアンプ22の出力信号は、図示されていないA/D変換部によりデジタル信号に変換された上で、信号処理部32に入力する。気圧センサ24は、大気圧を検知し、その大きさに応じた値を出力する。本実施形態においては、半導体技術を用いた小型の気圧センサを採用し、これをプリント基板に実装して、例えばプリアンプ部20の内部に組み込んでいる。
【0028】
補正情報記憶部34は、マイクロホン12の機種に固有の大気圧に対する感度レベルの変動量に応じた補正量や、感度レベルの周波数による変動量(以下、「周波数特性」と称する。)に応じた補正量や補正係数に関する情報が予め記憶されている。信号処理部32は、サンプリングされた入力信号に基づいて所定の評価値を算出し、さらに気圧センサ24の出力値及び補正情報記憶部34に予め記憶された情報に基づき補正量を算出することで、マイクロホン12の気圧特性を補正した評価値を表示部40に出力する。信号処理部32が実行する処理の具体的な内容については、別の図面を参照しながら詳しく後述する。信号処理部32は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)により実装可能である。
【0029】
表示部40は、信号処理部32から出力された評価値をはじめとする、測定に関わる様々な情報を表示する。操作部50は、騒音計100に対する操作を受け付け、図示されていない制御部を介して、受け付けた操作に対応する処理を各機能部に実行させる。また、図示を省略しているが、騒音計100は、内部メモリやSDカード等の記憶媒体、或いはケーブルで接続された別のデバイス等(以下、これらを総括して「データ記憶部」と称する。)に対し、測定結果を連続的に記憶させることが可能である。
【0030】
ところで、図示を省略しているが、マイクロホン部10におけるマイクロホン12の振動膜後部が配置される部位の近傍には、小さな孔(以下、「気圧調整孔」と称する。)が設けられている。気圧調整孔を通じて、マイクロホン部10の内外(マイクロホン12が配置される筐体の内部と外部)との気圧調整を図ることができ、マイクロホン12の良好な周波数特性を得ることが可能となる。マイクロホンを常設型とする場合には、気圧調整孔をマイクロホン部10のプリアンプ部20との接続部位に設けてもよい。これにより、プリアンプ部20を通じてマイクロホン部10の内部と外部との気圧調整を行うことができる。
【0031】
また、騒音計100に防水性を持たせる場合には、例えば、マイクロホン12の振動膜後部とプリアンプ22との間の空間を外部から密閉された構造とする。このような騒音計100において、プリアンプ部20の内部に気圧センサ24を配置する場合には、上述したマイクロホン12の振動膜後部とプリアンプ22との間の密閉構造を保ちつつ、マイクロホン部10、プリアンプ部20、本体部30の各内部空間を連通させる孔(以下、「連通孔」と称する。)を設ける。さらに、本体部30には、空気を通すが水分は通さない素材(例えば、ゴアテックス(登録商標))で塞がれた小さな孔を設ける。このような構造により、本体部30内の気圧と外気圧との調整を図ることができ、また、測定時に本体部30内の温度が上昇した場合でも熱を外部に逃がして内圧の上昇を防止することができる。結果として、マイクロホン10及びプリアンプ部20の各内圧を、上記の連通孔を通じて外気圧と略同等に保つことができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、気圧センサ24をプリアンプ部20に内蔵しているが、内蔵する位置はこれに限定されず、本体部30に内蔵してもよいし、電気的な接続や空間等に関する制約が許せばマイクロホン部10に内蔵してもよい。
【0033】
〔演算処理〕
図3は、演算処理の手順例を示すフローチャートである。
演算処理とは、信号処理部32が時間T(例えば、10分)を演算周期として、時間Tの経過毎に1回ずつ所定の評価値を算出して出力する処理のことである。時間Tの間には、信号処理部32に入力した信号が一定の周期でサンプリングされており、これらの入力信号が演算処理の対象となる。説明の便宜のため、以下の説明においては、時間Tの間にサンプリングされた個々の入力信号を「x(t)」と表すこととする。以下、手順例に沿って説明する。
【0034】
ステップS110:信号処理部32は、補正量特定処理を実行する。上述したように、補正情報記憶部34には、マイクロホン12の機種に固有の気圧特性に応じた補正量に関する情報が予め記憶されている。補正量に関する情報としては、例えば、気圧をパラメータとする計算式や、気圧に応じた補正量が定義された補正量テーブル等が挙げられる。これらの情報は、所定の周波数(例えば、250Hz)の気圧特性に応じて設定されている。補正量特定処理では、信号処理部32は、現在の気圧センサ24の出力値P(t)を取得し、例えば、補正情報記憶部34に予め記憶された計算式を用いて、値P(t)に対応する補正量hを特定する。
【0035】
ステップS120:信号処理部32は、重み付けフィルタ処理を実行する。この処理では、信号処理部32は、時間Tの間にサンプリングされた個々の入力信号x(t)に対し、規格で定められた周波数重み付け特性A,C,及びZの各フィルタを適用して、周波数の補正を行う。各フィルタの出力を便宜的に「α(t)」と表す。
【0036】
ステップS130:信号処理部32は、評価値算出処理を実行する。この処理では、信号処理部32は、各フィルタの出力α(t)に基づいて、音圧レベルの評価値を、以下の数式で算出する。
【0037】
【0038】
信号処理部32は、数式(1)で各フィルタの出力α(t)の2乗値を算出してβ(t)とした上で、数式(2)~(4)に表される各統計演算を行って、規格や法律で定められた3種類の評価値を算出する。具体的には、数式(2)でβ(t)の最大値の平方根を求め、数式(3)で等価騒音レベル(時間T内の2乗平均値の平方根)を算出し、数式(4)で時間重み付き実効値を算出する。上記の数式において、「a」は時間重み付け特性に応じた時定数を秒単位で表した定数であり、時間重み付け特性Fには0.125(=125ms)、時間重み付け特性Sには1.0(=1000ms)がそれぞれ用いられる。算出した各評価値を便宜的に「V(t)」と表す。
【0039】
信号処理部32はさらに、上記の数式(2)~(4)で算出した各評価値V(t)を、以下の数式でdB単位に変換する。
【0040】
【0041】
上記の数式において、「VdB(t)」は各評価値V(t)をdB単位で表した値であり、「Vr」は0dBの基準音圧、すなわち2×10-5Pa(=20μPa)である。
【0042】
ステップS140:信号処理部32は、気圧特性補正処理を実行する。この処理では、ステップS110で特定した補正量hを用いて、ステップS130で算出したdB変換前後の各評価値を以下の数式で補正する。
【0043】
【0044】
上記の数式において、「OL(t)」はdB変換前のリニア値で表された評価値を補正した値、「OdB(t)」はdB変換後の評価値を補正した値である。
【0045】
以上の手順を終えると、信号処理部32は、補正後の各評価値、すなわちマイクロホン12の機種に固有の気圧特性を踏まえた各評価値を、dB値とリニア値の両形式で出力する。数式(7)により得られた評価値(dB値)は、主として表示部40への測定結果の表示に用いられる。一方、数式(6)により得られた評価値(リニア値)は、上述した不図示のデータ記憶部に記憶され、後段でなされる分析処理等に用いられる。
【0046】
なお、上記の手順例においては、ステップS110にて実行時点での気圧センサ24の出力値P(t)をそのまま用いているが、これに代えて、時間Tの移動平均をP(t)として用いてもよい。この場合には、移動平均を以下の数式で求める。
【0047】
【0048】
上記の数式において、「t」は離散した時刻であり、「p(i)」は各時刻にサンプリングされた気圧センサ24の出力値である。
【0049】
〔マイクロホンの気圧特性〕
図4は、或る機種のマイクロホンの250Hzにおける気圧特性例、及びその補正後の特性例を示す図である。
図4に示されたグラフにおいて、3種類の灰色の破線は、同一機種のマイクロホンの3個体No.1~No.3の気圧特性を示しており、灰色の実線は、これらの気圧特性の平均値を示している。また、3種類の黒色の破線は、この機種の気圧特性を踏まえて3個体の気圧特性を補正した後の特性を示しており、黒色の実線は、補正後の特性の平均値を示している。なお、一点鎖線は、規格でクラス1のサウンドレベルメータに対し規定された指示値の偏差の受容限度値であり、二点鎖線は、クラス2のレベルメータに対し規定された指示値の偏差の受容限度値である。
【0050】
規格では、160Hz~1250Hzの1つの周波数における、サウンドレベルの指示値の基準静圧(101.325kPa)での指示値に対する偏差の受容限度値について、以下のように規定されている。
「85kPa以上であって、108kPa以下の静圧範囲におけるサウンドレベルの指示値の基準静圧での指示値に対する偏差は、クラス1のサウンドレベルメータでは±0.4dB、クラス2のサウンドレベルメータでは±0.7dBを超えてはならない。」
「65kPa以上であって、85kPa未満の静圧範囲におけるサウンドレベルの指示値の基準静圧での指示値に対する偏差は、クラス1のサウンドレベルメータでは±0.9dB、クラス2のサウンドレベルメータでは±1.6dBを超えてはならない。」
【0051】
このように規格では、65kPa~108kPaという幅広い静圧範囲で、指示値の変動が小さく安定した測定が要求されている。また、指示値の偏差については、クラス1に対してより厳しい受容限度値(許容範囲)が規定されている。そのため、クラス1のサウンドレベルメータには、静圧依存性が小さく且つ精密な、高価なマイクロホンが用いられるのが一般的である。
【0052】
図4に示されるように、基準静圧(101.325kPa)での指示値を基準とした3つのマイクロホンNo.1~No.3の補正前のレスポンスは、規定された静圧範囲(65kPa~108kPa)の全域においてクラス2の許容範囲内に収まっているが、65kPa~約78kPa及び85kPa~約91kPaの範囲においてはクラス1の許容範囲を超えている。このことから、この機種のマイクロホンは、クラス1の規格には適合しないがクラス2の規格には適合する、いわばクラス2相当の気圧特性を有するマイクロホンであることが分かる。このようなマイクロホンは、クラス1のサウンドレベルメータに用いられるようなマイクロホンと比べて安価であることが多い。
【0053】
ところで、上述したように、測定期間内には大気圧が大きく変動しうる。例えば、2020年の気象庁東京観測所での1日を通しての気圧変動量は最大約2.7kPa、年間を通した1日平均の気圧変動量は最大約4kPaである。
図4に示された気圧特性を踏まえると、上記の機種のマイクロホンを搭載した騒音計を用いて1年を通して季節毎に騒音レベルを観測する場合(以下、「測定ケース1」と称する。)には、騒音レベルが物理的には同じであっても、気圧101kPaでの指示値が80dBのときに、これより4kPa低い気圧97kPaでの指示値は80.2dBとなる可能性がある。また、標高が異なる測定地点、例えば標高0m(例えば、101.325kPa)と富士山頂上(例えば、65kPa)とで物理的に同じ騒音レベルの測定を行う場合(以下、「測定ケース2」と称する。)には、標高0mでの指示値が80dBのときに、富士山頂上での指示値が81.4dBとなる可能性がある。
【0054】
ここで、
図4のグラフから、この機種のマイクロホンは気圧に対し良好な線形特性を有している(気圧特性が線形で十分近似できる)ことが分かる。このような場合には、一次式を用いて気圧に応じた補正量hを特定することが可能である。3個体の補正後の特性、すなわち一次式により特定された補正量を補正前のレスポンスから差し引いた値に着目すると、いずれも補正前より傾斜が小さくなっており、規定された静圧範囲の全域において、レスポンスがクラス1の許容範囲内に十分収まっている。したがって、上記の測定ケース1及び測定ケース2において生じうる大気圧の違いによる各指示値の差は、特定された補正量hを用いて補正されれば、非常に小さくなる(殆ど無くなる)。
【0055】
このように、補正後のレスポンスは、クラス2はもちろんのこと、クラス1の許容範囲内にも十分な余裕を持って収まっている。このことから、補正しない状態ではクラス2の規格には適合するがクラス1の規格には適合しないマイクロホンであっても、その気圧特性を踏まえて適切に補正を行うことで、クラス1の規格に適合させることが可能であること、また、物理的に同じ音圧レベルの音の測定における大気圧の違いによる評価値の差を生じ難くする(大きく低減する)ことが可能であることが分かる。
【0056】
騒音計100に搭載されるマイクロホン12が、
図4に示された機種のように気圧に対し良好な線形特性を有している場合には、気圧を変数とする一次式(h=γP(t))を用いて気圧センサ24の出力値P(t)に対する補正量hを特定することができる。これに対し、マイクロホン12が気圧に対し線形性を有しておらず、気圧特性がより複雑な形状となる場合には、気圧と補正量との対応関係を補正量テーブルに予め定義しておくことにより、補正量テーブルから気圧センサ24の出力値P(t)に対する補正量hを特定することができる。
【0057】
本実施形態においては、マイクロホン12の機種に固有の気圧特性に基づいて導き出された上記のような計算式や補正量テーブルが補正情報記憶部34に予め記憶されているため、算出された評価値から測定時の気圧に応じて特定された補正量hを差し引くことで、評価値を精度よく補正することができる。結果として、クラス2に対する指示値の偏差の受容限度値を満たせる程度の性能(クラス2相当の気圧特性)を有する安価なマイクロホンを用いて、クラス1に対する指示値の偏差の受容限度値を満たすことができ、クラス1の規格に適合する騒音計を低コストで製造することが可能となる。
【0058】
〔比較例〕
図5は、比較例として、従来の一般的な騒音計100´の主要な構成を示すブロック図である。比較例の騒音計100´は、気圧センサ及び補正情報記憶部を有していない点において、上述した実施形態の騒音計100と異なっている。
【0059】
図6は、比較例としての騒音計100´における演算処理の手順例を示すフローチャートである。
図6においては、
図3に示された実施形態の演算処理と共通する手順に同一の符号を付して表している。比較例の演算処理は、ステップS120,S130で構成されており、補正量特定処理及び気圧特性補正処理(
図3中のステップS110,S140)が実行されない。
【0060】
すなわち、比較例の騒音計100´は、気圧センサ及び補正情報記憶部を備えておらず、信号処理部32´は、騒音計100´に搭載されたマイクロホンの機種に固有の気圧特性を考慮することなく評価値を算出して出力する。したがって、騒音計100´は、測定環境(天候や標高等)の違いにより受ける大気圧の影響に対処することができないため、測定した音圧レベルが物理的には同じであっても、異なる評価値を表示する場合がある。
【0061】
〔本発明の優位性〕
これに対し、上述した実施形態の騒音計100は、気圧センサ24及び補正情報記憶部34を有しており、補正情報記憶部34に予め記憶されたマイクロホン12の機種に固有の気圧特性に関する情報を用いて気圧センサ24の出力値に応じた補正量を特定し、この補正量を踏まえた評価値を算出して出力することができる。
【0062】
したがって、実施形態の騒音計100によれば、音圧レベルの測定においてマイクロホン12が受ける大気圧の影響を低減することができ、高精度で安定した測定を行うことができる。また、実施形態の騒音計100によれば、クラス2相当の気圧特性を有する安価なマイクロホンを用いてクラス1の気圧特性を有する騒音計を実現することができ、クラス1の規格に適合する騒音計の製造コストを抑制することが可能となる。
【0063】
ところで、マイクロホンの感度の気圧依存性は、周波数により異なる。一般的に騒音計に搭載されるマイクロホンは、静圧に関する規格範囲(160Hz~1250Hz)及びそれ以下の周波数では、気圧依存性は周波数によらず概ね一定と見做すことができる。これに対し、規格範囲より高い周波数では、周波数に応じて気圧依存性が異なるため、周波数特性の変動が生じる。特に、音の周波数分析を行う場合には、この点が影響して測定結果の信頼性を損なう虞がある。
【0064】
そのため、上述したマイクロホンの気圧に伴う感度の変動量(気圧特性)に応じた補正に加えて、マイクロホンの気圧に伴う周波数特性の変動量に応じた補正(以下、「周波数補正」と称する場合がある。)を行えば、一段と精度の高い測定を行うことが可能となる。以下、気圧センサ24の出力値に応じて周波数補正を行う変形例を説明する。
【0065】
〔変形例1〕
図7は、変形例1における演算処理の手順例を示すフローチャートである。
図7においては、
図3に示された実施形態の演算処理と同じ手順に同一の符号が付されている。
【0066】
変形例1の演算処理は、気圧センサ24の出力値に応じた周波数補正に関連する手順(後述するステップS112,S114)が追加されている点において、上述した実施形態と異なっている。以下、手順例に沿って説明するが、実施形態と同様の点については説明を適宜省略する。
【0067】
ステップS110:信号処理部32は、補正量特定処理を実行し、例えば、補正情報記憶部34に予め記憶された計算式を用いて、現在の気圧センサ24の出力値P(t)に対応する補正量hを特定する。
【0068】
ステップS112:信号処理部32は、補正係数特定処理を実行する。補正情報記憶部34には、マイクロホン12の機種に固有の周波数特性の補正に関する情報が予め記憶されている。周波数特性の補正に関する情報としては、例えば、オクターブ、1/3オクターブ等のような帯域幅毎の出力値に対する補正量や、フーリエ変換に代表されるスペクトル解析の結果に対するスペクトル毎の補正量が定義された補正量テーブル、気圧に応じた補正係数が定義された周波数特性補正係数テーブル、気圧をパラメータとする補正係数の計算式等が挙げられる。これらの情報は、所定の周波数(例えば、250Hz)を基準とした気圧に伴う周波数特性に応じて設定されている。補正係数特定処理では、信号処理部32は、例えば、周波数特性補正係数テーブルを用いて、値P(t)に対応する補正係数an,bnを特定する。ここで、「n」は、分割される周波数帯域又はスペクトルを示す数値である。
【0069】
ステップS114:信号処理部32は、周波数補正フィルタ処理を実行する。この処理では、信号処理部32は、時間Tの間にサンプリングされた個々の入力信号x(t)に対し、以下の数式を用いて周波数補正フィルタを適用し、周波数の補正を行う。
【0070】
【0071】
ステップS120:信号処理部は、重み付けフィルタ処理を実行し、上記の周波数補正フィルタの出力y(t)に対し、上記の周波数重み付け特性A,C,及びZの各フィルタを適用して、周波数の補正を行う。
【0072】
ステップS130:信号処理部32は、評価値算出処理を実行し、ステップS120で適用した上記の各フィルタの出力α(t)に基づいて所定の評価値を算出する。
【0073】
ステップS140:信号処理部32は、気圧特性補正処理を実行し、ステップS130で算出された評価値をステップS110で特定した補正量hを用いて補正する。
【0074】
このように、変形例1の演算処理においては、入力信号x(t)に対し周波数補正フィルタを適用して周波数特性に関する補正を行い(ステップS112,S114)、重み付けフィルタ処理(ステップS120)及び評価値算出処理(ステップS130)を経て算出された評価値に対し、気圧特性を踏まえた補正を行う(ステップS140)。
【0075】
〔変形例2〕
図8は、変形例2における演算処理の手順例を示すフローチャートである。
【0076】
変形例2の演算処理は、重み付けフィルタ処理の出力を周波数分析する手順(後述するステップS240)が追加されており、周波数分析により分割された対象毎に評価値の算出及び補正を行う点において、上述した実施形態と大きく異なっている。以下、手順例に沿って、実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0077】
ステップS210:信号処理部32は、補正量特定処理を実行し、例えば、補正情報記憶部34に予め記憶された計算式を用いて、現在の気圧センサ24の出力値P(t)に対応する補正量hを特定する。
【0078】
ステップS220:信号処理部32は、補正係数特定処理を実行し、例えば、補正情報記憶部34に予め記憶された気圧をパラメータとする補正係数の計算式を用いて、上記の出力値P(t)に対する周波数特性の補正係数cを特定する。
【0079】
ステップS230:信号処理部32は、重み付けフィルタ処理を実行し、時間Tの間にサンプリングされた個々の入力信号x(t)に対し、上記の周波数重み付け特性A,C,及びZの各フィルタを適用して、周波数の補正を行う。
【0080】
ステップS240:信号処理部32は、周波数分析処理を実行する。この処理では、信号処理部32は、上記の各フィルタの出力α(t)に対して周波数分析を行い、出力を複数に分割する。信号処理部32は、周波数分析として、オクターブ分析や1/3オクターブ分析等を行って複数の周波数帯域に分割して出力してもよいし、フーリエ変換等によりスペクトル分析を行って複数のスペクトルに分割して出力してもよい。周波数分析処理の出力を便宜的に「ξ(s,t)」と表す。ここで「s」は、分割された周波数帯域又はスペクトルを示す数値である。
【0081】
ステップS250:信号処理部32は、評価値算出処理を実行し、周波数分析処理の出力ξ(s,t)に基づいて、所定の評価値V(s,t)を以下の数式で算出する。
【0082】
【0083】
具体的には、信号処理部32は、数式(11)で周波数分析処理の出力ξ(s,t)の2乗値を算出してβ(s,t)とした上で、数式(12)でその最大値の平方根を求め、数式(13)で等価騒音レベル(時間T内の2乗平均値の平方根)を算出し、数式(14)で時間重み付き実効値を算出する。なお、各数式に用いられる定数aは、上述した実施形態と同じである(以下、同様)。
【0084】
信号処理部32はさらに、上記の数式(12)~(14)で算出した各評価値V(s,t)を、以下の数式でdB単位に変換する。
【0085】
【0086】
ステップS260:信号処理部32は、気圧特性及び周波数特性補正処理を実行する。この処理では、信号処理部32は、先ずステップS210で特定した周波数特性の補正係数cを用いて、分割された周波数帯域又はスペクトルに対する周波数特性の補正量kを特定する。その上で、ステップS220で特定した気圧特性の補正量hと、周波数特性の補正量kとを用いて、ステップS250で算出したdB変換前後の各評価値を以下の数式で補正する。
【0087】
【0088】
なお、上記の数式(16),(17)では、気圧特性の補正量hと周波数特性の補正量kの合算値(h+k)を減算することで評価値を補正しているが、評価値から補正量h,kを1つずつ順番に減算してもよい。
【0089】
このように、変形例2の演算処理においては、入力信号x(t)に対し重み付けフィルタ処理を行った上で(ステップS230)、周波数分析を行い(ステップS240)、周波数分析により分割された周波数帯域毎又はスペクトル毎に、評価値を算出し(ステップS240)、算出された評価値に対して、気圧特性及び周波数特性を踏まえた補正を行う(ステップS250)。変形例2は、主に、音の周波数分析を行った結果出力を必要とする場合に用いられる。
【0090】
なお、上記の手順例においては、気圧特性の補正量hと周波数特性の補正量kとを、それぞれ別個に特定し(補正量hの特定に用いる情報と、補正量kの特定に用いる情報が個別に記憶されており)、補正量h,kを用いて評価値を補正しているが、気圧特性及び周波数特性の両方を踏まえた補正量wを特定するための情報(補正量テーブルや計算式)を定義することが可能な場合には、その情報を補正情報記憶部34に予め記憶させておき、その情報を用いて特定した補正量wを評価値の補正に用いてもよい。
【0091】
以上に説明したように、上述した実施形態及びその変形例の騒音計100によれば、以下の効果が得られる。
【0092】
(1)騒音計100によれば、マイクロホン12の機種に固有の気圧特性に関する情報が補正情報記憶部34に予め記憶されており、この情報を用いて測定時の気圧センサ24の出力値に応じた補正量hを特定することができるため、算出された評価値から補正量hを差し引くことで、評価値を精度よく補正することができる。
【0093】
(2)騒音計100によれば、マイクロホン12の機種に固有の気圧に伴う周波数特性に関する情報が補正情報記憶部34に予め記憶されており、この情報を用いて測定時の気圧センサ24の出力値に対応する補正情報を特定することができるため、この補正情報を踏まえて評価値を算出することで、精度の高い評価値を出力することができる。
【0094】
(3)騒音計100によれば、その構造に応じて適切な位置に小さな孔(連通孔)が設けられているため、マイクロホン12が配置される空間と騒音計100の外部との気圧を調整することができ、気圧差が測定に与える影響を低減することができる。
【0095】
(4)騒音計100によれば、その構造に応じて適切な位置に連通孔が設けられていることで、気圧センサが配置される空間と騒音計外部との気圧を調整することができ、精度の良い補正を行うことができる。
【0096】
(5)騒音計100によれば、マイクロホン12の機種に固有の気圧特性や、気圧に伴う周波数特性を踏まえて評価値を算出するため、騒音レベルの測定においてマイクロホン12が受ける大気圧の影響を低減することができ、高精度で安定した測定を行うことができる。
【0097】
(6)騒音計100によれば、マイクロホン12の機種に固有の気圧特性や周波数特性の補正により、測定時にマイクロホン12が受ける大気圧の影響を低減することができるため、クラス2相当の気圧特性を有する安価なマイクロホンを用いてクラス1の規格に適合する騒音計を実現することができ、クラス1の規格に適合する騒音計の製造コストを抑制することが可能となる。
【0098】
本発明は、上述した実施形態及びその変形例に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0099】
上述した実施形態の演算処理(
図3)においては、気圧特性を補正しており、上述した変形例(
図7,8)においては、気圧特性及び周波数特性の両方を補正しているが、さらなる変形例として、周波数特性のみを補正する構成としてもよい。
【0100】
上述した実施形態においては、気圧センサ24を内蔵しているが、さらに温度センサを内蔵して、大気圧に加え温度による影響をも踏まえて評価値を算出するよう構成してもよい。
【0101】
上述した実施形態においては、時間Tを演算周期として実行する演算処理の過程で、統計演算により評価値を算出し(
図3中のステップS130)、この評価値に対して気圧特性を踏まえた補正を行っているが(
図3中のステップS140)、これに代えて、入力信号のサンプリング時に補正量特定処理(
図3中のステップS110)及びフィルタ処理(
図3中のステップS120)に相当する処理を行い、その結果からリアルタイムで補正量を差し引き、時間Tの経過後に補正済みのサンプリングデータを対象として統計演算を行い評価値を算出するよう構成してもよい。
【0102】
上述した実施形態においては、プリアンプ22の出力信号がA/D変換された上で信号処理部32に入力しているが、A/D変換することなくアナログ信号のまま後続の処理を施すよう構成してもよい。
【0103】
上述した実施形態においては、マイクロホン部10、プリアンプ部20及び本体部30が連結されて騒音計100が一体的に実装されているが、これに代えて、本体部30に配置された各機能部(信号処理部32、補正情報記憶部34、表示部40及び操作部50)を、CPUやRAM、HDD、モニタ等を備えた一般的なコンピュータ上に実装し、このコンピュータにケーブル等を介してマイクロホン部10及びプリアンプ部20を接続させた態様により騒音計を実装することも可能である。
【0104】
その他、騒音計100に関する説明の過程で挙げた構成や数値等はあくまで例示であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0105】
10 マイクロホン部
12 マイクロホン
20 プリアンプ部
22 プリアンプ
24 気圧センサ
30 本体部
32 信号処理部
34 補正情報記憶部
40 表示部
50 操作部
100 騒音計
【手続補正書】
【提出日】2022-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
信号処理部32は、数式(1)で各フィルタの出力α(t)の2乗値を算出してβ(t)とした上で、数式(2)~(4)に表される各統計演算を行って、規格や法律で定められた3種類の評価値を算出する。具体的には、数式(2)でβ(t)の最大値の平方根を求め、数式(3)で等価騒音レベル(時間T内の2乗平均値の平方根)を算出し、数式(4)で時間重み付き実効値を算出する。上記の数式において、「a」は時間重み付け特性に応じた時定数を秒単位で表した値の逆数であり、時間重み付け特性Fには8(=時定数0.125sの逆数)、時間重み付け特性Sには1(=時定数1.0sの逆数)がそれぞれ用いられる。算出した各評価値を便宜的に「V(t)」と表す。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
ステップS112:信号処理部32は、補正係数特定処理を実行する。補正情報記憶部34には、マイクロホン12の機種に固有の周波数特性の補正に関する情報が予め記憶されている。周波数特性の補正に関する情報としては、例えば、オクターブ、1/3オクターブ等のような帯域幅毎の出力値に対する補正量や、フーリエ変換に代表されるスペクトル解析の結果に対するスペクトル毎の補正量が定義された補正量テーブル、気圧に応じた補正係数が定義された周波数特性補正係数テーブル、気圧をパラメータとする補正係数の計算式等が挙げられる。これらの情報は、所定の周波数(例えば、250Hz)を基準とした気圧に伴う周波数特性に応じて設定されている。補正係数特定処理では、信号処理部32は、例えば、周波数特性補正係数テーブルを用いて、値P(t)に対応する補正係数an,bnを特定する。ここで、「n」は、係数を区別する添え字である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】