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特開2023-95527触媒組成物、炭化水素部分酸化器及び燃料電池システム
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  • 特開-触媒組成物、炭化水素部分酸化器及び燃料電池システム 図1
  • 特開-触媒組成物、炭化水素部分酸化器及び燃料電池システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095527
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】触媒組成物、炭化水素部分酸化器及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20230629BHJP
   C01B 3/48 20060101ALI20230629BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20230629BHJP
   C01B 3/36 20060101ALI20230629BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230629BHJP
【FI】
B01J23/63 M
C01B3/48
C01B3/40
C01B3/36
H01M8/0612
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211477
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】澤田 淳
(72)【発明者】
【氏名】石井 航
(72)【発明者】
【氏名】倉品 大輔
(72)【発明者】
【氏名】本間 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】木野 貴允
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EA07
4G140EB16
4G140EB32
4G140EB36
4G140EC01
4G140EC03
4G140EC04
4G140EC08
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC69A
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB81
4G169CC17
4G169CC32
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EA03Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169EC06Y
4G169EC07Y
4G169EC21Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169EC27
4G169ED06
4G169FA02
4G169FC08
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB04
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA18
5H127BA19
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB10
5H127BB12
5H127BB37
(57)【要約】
【課題】本発明は、炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための触媒組成物であって、高温に晒されても触媒活性が劣化しにくい触媒組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、α-アルミナを含む担体と、前記担体に担持された担持成分とを含む、炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための触媒組成物であって、前記担持成分が、少なくとも1種の白金族元素と、Ce酸化物と、Zr酸化物とを含む、前記触媒組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-アルミナを含む担体と、前記担体に担持された担持成分とを含む、炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための触媒組成物であって、
前記担持成分が、少なくとも1種の白金族元素と、Ce酸化物と、Zr酸化物とを含む、前記触媒組成物。
【請求項2】
前記α-アルミナの含有量が、前記触媒組成物の質量を基準として、70質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記Ce酸化物のCeO換算の含有量が、前記触媒組成物の質量を基準として、8.5質量%以上13.5質量%以下である、請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記Zr酸化物のZrO換算の含有量が、前記触媒組成物の質量を基準として、0.3質量%以上2.5質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記Ce酸化物と、前記Zr酸化物とが、複合酸化物の形態で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
X線回折パターンにおいて、前記Ce酸化物に由来するピークの少なくとも1つが、2θ=47.61°~49°にピークトップを有する、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の白金族元素がPt及びRhを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための炭化水素部分酸化器であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒組成物を備える炭化水素部分酸化器。
【請求項9】
請求項8に記載の炭化水素部分酸化器と、前記炭化水素部分酸化器で生成した水素と酸化剤ガスとの反応により発電する燃料電池とを備える燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための触媒組成物、該触媒組成物を備える炭化水素部分酸化器、並びに、該炭化水素部分酸化器を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への負荷を低減させるために、燃料電池システムの普及が推進されており、家庭用の燃料電池システムも開発されている。
【0003】
燃料電池システムでは、例えば、炭化水素から、部分酸化反応、水蒸気改質反応及び水性ガスシフト反応により水素を生成し、生成した水素を用いて燃料電池により発電が行なわれる。
【0004】
炭化水素がCHである場合を例とすると、部分酸化反応、水蒸気改質反応及び水性ガスシフト反応は、以下の式で表される。
部分酸化反応:CH+1/2O→2H+CO
水蒸気改質反応:CH+HO→3H+CO
水性ガスシフト反応:CO+HO→H+CO
【0005】
水蒸気改質反応用の触媒組成物としては、例えば、アルミナ担体(例えば、α-アルミナ担体)に、白金族元素及びCe酸化物が担持された触媒組成物(特許文献1及び2)、γ-アルミナ担体に、白金族元素、Ce酸化物及びZr酸化物が担持された触媒組成物(特許文献3)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-088066公報
【特許文献2】特開2000-178007公報
【特許文献2】特表2004-507425公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための触媒組成物は、炭化水素の部分酸化反応により、水素及び一酸化炭素を生成させる。この反応は発熱反応であるため、触媒組成物は長期にわたって高温に晒される。したがって、触媒組成物には耐熱性の向上が求められる。しかしながら、従来の触媒組成物が高温に晒されると、触媒活性が劣化しやすい。例えば、特許文献1及び2に記載の触媒組成物が高温に晒されると、Ce酸化物のシンタリング並びにそれに伴う白金族元素のシンタリング及び/又は白金族元素の埋没が生じ、触媒活性が低下するおそれがある。また、特許文献3に記載の触媒組成物において担体に用いられているγ-アルミナは、初期比表面積が大きく担持成分の表面濃化に有利である一方、高温に晒された際の比表面積の変化が大きいという性質を持つ。そのため、特許文献3に記載の触媒組成物が高温に晒されると、γ-アルミナの外表面に担持された白金族元素の埋没が生じるだけでなく、γ-アルミナの細孔の閉塞が生じて反応ガスが担持成分に到達しにくくなり、触媒活性が低下するおそれがある。なお、本明細書を通じて、「高温」とは、200℃以上(特に300℃以上)の温度を意味する。
【0008】
そこで、本発明は、炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための触媒組成物であって、高温に晒されても触媒活性が劣化しにくい触媒組成物、該触媒組成物を備える炭化水素部分酸化器、及び、該炭化水素部分酸化器を備える燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の発明を提供する。
[1]α-アルミナを含む担体と、前記担体に担持された担持成分とを含む、炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための触媒組成物であって、前記担持成分が、少なくとも1種の白金族元素と、Ce酸化物と、Zr酸化物とを含む、前記触媒組成物。
[2]炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための炭化水素部分酸化器であって、[1]に記載の触媒組成物を備える炭化水素部分酸化器。
[3][2]に記載の炭化水素部分酸化器と、前記炭化水素部分酸化器で生成した水素と酸化剤ガスとの反応により発電する燃料電池とを備える燃料電池システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための触媒組成物であって、高温に晒されても触媒活性が劣化しにくい触媒組成物、該触媒組成物を備える炭化水素部分酸化器、及び、該炭化水素部分酸化器を備える燃料電池システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
図2図2は、試験例1で使用した評価装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪触媒組成物≫
以下、本発明の触媒組成物について説明する。
【0013】
本発明の触媒組成物の形態は、例えば、粒子の集合体(粉末状)である。本発明の触媒組成物は、ペレット状、層状等の所望の形態に成形されたものであってもよい。
【0014】
本発明の触媒組成物は、炭化水素を部分酸化して水素及び一酸化炭素を生成させるための触媒組成物である。
【0015】
炭化水素がCである場合を例とすると、部分酸化反応は、以下の式で表される。
部分酸化反応:C+n/2O→m/2H+nCO
【0016】
部分酸化反応の条件は、部分酸化反応が進行し得る限り特に限定されない。温度は、好ましくは100℃以上1000℃以下、より好ましくは200℃以上800℃以下、より一層好ましくは300℃以上700℃以下である。
【0017】
炭化水素の炭素数は特に限定されない。炭化水素の炭素数は、例えば1以上40以下、好ましくは1以上30以下、より好ましくは1以上20以下である。炭化水素としては、例えば、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。飽和脂肪族炭化水素及び不飽和脂肪族炭化水素は、鎖状であってもよいし、環状であってもよい。鎖状は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。芳香族炭化水素は、単環式であってもよいし、多環式であってもよい。
【0018】
炭化水素の具体例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン等の鎖状飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等の不飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。炭化水素は、1又は2以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I等)、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基、アルデヒド基、アシル基等が挙げられる。
【0019】
本発明の触媒組成物により部分酸化される炭化水素は、2種以上の炭化水素の混合物であってもよい。
【0020】
<担体>
本発明の触媒組成物は、担体を含む。
【0021】
担体は、例えば、粒子状である。粒子状には、例えば、球状(例えば、真球状、楕円球状等)、針状、鱗片状(フレーク状)、柱状(例えば、円柱状、角柱状等)等の形状が含まれる。一実施形態において、担体は、球状である。
【0022】
担持成分の担持性を向上させる観点から、担体は、多孔質であることが好ましい。
【0023】
担体はα-アルミナを含む。担体に含まれるα-アルミナは、α-アルミナ相を形成している。α-アルミナは初期比表面積が小さいため、担体の細孔の深部にまで担持成分が担持されやすい。また、α-アルミナは高温に晒された際の比表面積の変化が小さく、担体の細孔の閉塞が生じにくい。したがって、本発明の触媒組成物が高温に晒されても、担体の細孔の深部に担持された担持成分まで反応ガスが到達しやすい状態が保たれ、触媒組成物の触媒活性が劣化しにくい。
【0024】
担体は、α-アルミナ以外の成分を含んでいてもよい。α-アルミナ以外の成分としては、例えば、α-アルミナ以外のアルミナ、シリカ、鉄、ナトリウム等が挙げられる。α-アルミナ以外のアルミナとしては、γ-アルミナ、θ-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ等が挙げられる。
【0025】
本発明の触媒組成物の触媒活性の劣化をより効果的に抑制する観点から、担体におけるα-アルミナの含有量は、担体の質量を基準として、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、より一層好ましくは98質量%以上である。上限値は100質量%である。
【0026】
担体における各元素の含有量は、本発明の触媒組成物から得られた試料をエネルギー分散型X線分光法(EDS)で分析し、得られた元素マッピングと、指定した粒子のEDS元素分析とから測定することができる。具体的には、元素マッピングにより定性的に担体粒子及びその他の粒子を識別(色分け)し、指定した粒子に対して組成分析(元素分析)することにより、指定した粒子における各元素の含有量を測定することができる。担体におけるアルミナの含有量は、担体におけるAlの含有量に基づいて、AlのAl換算量として算出することができる。担体に含まれるアルミナの結晶形態は、X線回折法(XRD)により特定することができる。
【0027】
本発明の触媒組成物における担体の含有量は適宜調整することができる。本発明の触媒組成物の触媒活性の劣化をより効果的に抑制する観点から、本発明の触媒組成物における担体の含有量は、担体由来のα-アルミナの含有量が、本発明の触媒組成物の質量を基準として、好ましくは70質量%以上95質量%以下、より好ましくは75質量%以上95質量%以下、より一層好ましくは80質量%以上95質量%以下となるように調整される。
【0028】
本発明の触媒組成物の製造に用いられる原料の組成が判明している場合、本発明の触媒組成物におけるα-アルミナの含有量は、本発明の触媒組成物の製造に用いられる原料の組成から算出することができる。
【0029】
本発明の触媒組成物の製造に用いられる原料の組成が判明していない場合、本発明の触媒組成物におけるα-アルミナの含有量は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)、蛍光X線分析法(XRF)、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を用いて測定することができる。具体的には、下記の通りである。
【0030】
まず、本発明の触媒組成物から得られた試料をXRF又はICP-AESで分析し、含有量が多い金属元素を、多い方から20種特定する。特定された20種の金属元素には、Alが含まれている。
【0031】
次いで、試料をSEM-EDXで分析する。SEM-EDXでは、上記で特定された20種の金属元素を分析対象とし、SEMの10視野の各々に関して、20種の金属元素の合計モル%=100モル%とし、各金属元素のモル%を分析する。10視野におけるAlのモル%の平均値から、試料におけるAlのAl換算量を算出する。
【0032】
試料に含まれるアルミナの結晶形態は、X線回折法(XRD)により特定することができる。
【0033】
<担持成分>
本発明の触媒組成物は、担体に担持された担持成分を含む。
【0034】
「ある成分が担体に担持されている」とは、担体の外表面又は細孔内表面に、当該成分が、物理的又は化学的に吸着又は保持されている状態を意味する。当該成分が担体に担持されていることは、例えば、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)等を用いて確認することができる。具体的には、SEM-EDX)等を用いて得られた元素マッピングにおいて、当該成分と担体とが同じ領域に存在している場合、当該成分が担体に担持されていると判断することができる。
【0035】
担持成分は、少なくとも1種の白金族元素と、Ce酸化物と、Zr酸化物とを含む。すなわち、本発明の触媒組成物は、担体に担持された少なくとも1種の白金族元素と、担体に担持されたCe酸化物と、担体に担持されたZr酸化物とを含む。白金族元素は、触媒活性成分であり、Ce酸化物及びZr酸化物は助触媒成分である。
【0036】
Ce酸化物とZr酸化物とが共存する場合、Ce酸化物が単独で存在する場合と比較して、Ce酸化物のシンタリング並びにそれに伴う白金族元素のシンタリング及び/又は白金族元素の埋没が生じにくい。したがって、本発明の触媒組成物が高温に晒されても、触媒組成物の触媒活性が劣化しにくい。
【0037】
少なくとも1種の白金族元素は、Pt、Pd、Rh、Ru、Os及びIrからなる白金族元素群から選択することができる。触媒活性をより効果的に発現させる観点から、少なくとも1種の白金族元素は、Pt及びRhを含むことが好ましい。
【0038】
触媒活性と製造コストとをバランスよく両立させる観点から、白金族元素の金属換算の含有量は、本発明の触媒組成物の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上1.5質量%以下、より一層好ましくは0.5質量%以上1.0質量%以下である。「白金族元素の金属換算の含有量」は、本発明の触媒組成物が1種の白金族元素を含む場合には、当該1種の白金族元素の金属換算の含有量を意味し、本発明の触媒組成物が2種以上の白金族元素を含む場合には、当該2種以上の白金族元素の金属換算の合計含有量を意味する。本発明の触媒組成物における白金族元素の含有量は、本発明の触媒組成物におけるα-アルミナの含有量と同様に算出又は測定することができる。
【0039】
白金族元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、白金族元素で構成される金属、白金族元素を含む合金、白金族元素を含む化合物(例えば、白金族元素の酸化物)等の形態で、担体に担持されている。触媒活性成分は、例えば、粒子状である。
【0040】
Ce酸化物は、Ce元素とO元素とから構成される。Ce酸化物の化学量論的組成はCeOで表されるが、Ce酸化物は、化学量論的組成から外れた組成(非化学量論的組成)を有し得る。本発明の触媒組成物に含まれるCe酸化物の組成は、化学量論的組成であってもよいし、非化学量論的組成(例えば、CeO1.8、CeO1.9等)であってもよい。Ce酸化物の組成は、好ましくはCeOx(x=1.50~2.00)、より好ましくはCeOx(x=1.75~2.00)、より一層好ましくはCeOx(x=1.80~2.00)で表される。本発明の触媒組成物に含まれるCe酸化物は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0041】
Zr酸化物は、Zr元素とO元素とから構成される。Zr酸化物の化学量論的組成はZrOで表されるが、Zr酸化物は、化学量論的組成から外れた組成(非化学量論的組成)を有し得る。本発明の触媒組成物に含まれるZr酸化物の組成は、化学量論的組成であってもよいし、非化学量論的組成(例えば、ZrO1.8、ZrO1.9等)であってもよい。Zr酸化物の組成は、好ましくはZrOx(x=1.50~2.00)、より好ましくはZrOx(x=1.75~2.00)、より一層好ましくはZrOx(x=1.80~2.00)で表される。本発明の触媒組成物に含まれるZr酸化物は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0042】
Ce酸化物及びZr酸化物は、例えば、粒子状である。
【0043】
Ce酸化物のシンタリング並びにそれに伴う白金族元素のシンタリング及び/又は白金族元素の埋没をより効果的に抑制し、本発明の触媒組成物の触媒活性の劣化をより効果的に抑制する観点から、本発明の触媒組成物におけるCe酸化物のCeO換算の含有量は、本発明の触媒組成物の質量を基準として、好ましくは8.5質量%以上13.5質量%以下、より好ましくは9.0質量%以上13.0質量%以下、より一層好ましくは9.5質量%以上12.5質量%以下である。「Ce酸化物のCeO換算の含有量」は、本発明の触媒組成物が1種のCe酸化物を含む場合には、当該1種のCe酸化物のCeO換算の含有量を意味し、本発明の触媒組成物が2種以上のCe酸化物を含む場合には、当該2種以上のCe酸化物のCeO換算の合計含有量を意味する。本発明の触媒組成物におけるCe酸化物のCeO換算の含有量は、本発明の触媒組成物におけるα-アルミナの含有量と同様に算出又は測定することができる。
【0044】
Ce酸化物のシンタリング並びにそれに伴う白金族元素のシンタリング及び/又は白金族元素の埋没をより効果的に抑制し、本発明の触媒組成物の触媒活性の劣化をより効果的に抑制する観点から、本発明の触媒組成物におけるZr酸化物のZrO換算の含有量は、本発明の触媒組成物の質量を基準として、好ましくは0.3質量%以上2.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以上2.0質量%以下、より一層好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である。「Zr酸化物のZrO換算の含有量」は、本発明の触媒組成物が1種のZr酸化物を含む場合には、当該1種のZr酸化物のZrO換算の含有量を意味し、本発明の触媒組成物が2種以上のZr酸化物を含む場合には、当該2種以上のZr酸化物のZrO換算の合計含有量を意味する。本発明の触媒組成物におけるZr酸化物のZrO換算の含有量は、本発明の触媒組成物におけるα-アルミナの含有量と同様に算出又は測定することができる。
【0045】
Ce酸化物のシンタリング並びにそれに伴う白金族元素のシンタリング及び/又は白金族元素の埋没をより効果的に抑制し、本発明の触媒組成物の触媒活性の劣化をより効果的に抑制する観点から、Ce酸化物のCeO換算の含有量及びZr酸化物のZrO換算の含有量の合計に対するCe酸化物のCeO換算の含有量の比は、好ましくは0.77以上0.98以下、より好ましくは0.82以上0.97以下、より一層好ましくは0.86以上0.96以下である。
【0046】
Ce酸化物の少なくとも一部とZr酸化物の少なくとも一部とは、複合酸化物(Ce及びZrを含む複合酸化物,以下「Ce-Zr系複合酸化物」という。)の形態で存在することが好ましい。Ce-Zr系複合酸化物は、例えば、粒子状である。Ce酸化物とZr酸化物とがCe-Zr系複合酸化物の形態で存在する場合、Ce酸化物とZr酸化物とが別々に存在する場合と比較して、Ce酸化物のシンタリング並びにそれに伴う白金族元素のシンタリング及び/又は白金族元素の埋没が生じにくい。したがって、Ce酸化物の少なくとも一部とZr酸化物の少なくとも一部とがCe-Zr系複合酸化物の形態で存在する場合、Ce酸化物のシンタリング並びにそれに伴う白金族元素のシンタリング及び/又は白金族元素の埋没がより効果的に抑制され、本発明の触媒組成物の触媒活性の劣化がより効果的に抑制される。
【0047】
Ce酸化物の全部がCe-Zr系複合酸化物の形態で存在してもよいし、Zr酸化物の全部がCe-Zr系複合酸化物の形態で存在してもよい。
【0048】
Ce-Zr系複合酸化物において、Ce、Zr及びOは固溶体相を形成していることが好ましい。Ce、Zr及びOは、固溶体相に加えて、結晶相又は非晶質相である単独相(Ce酸化物相及び/又はZr酸化物相)を形成していてもよい。
【0049】
Ce酸化物の少なくとも一部とZr酸化物の少なくとも一部とがCe-Zr系複合酸化物の形態で存在することは、本発明の触媒組成物から得られた試料のX線回折パターンにおいて、Ce酸化物に由来する少なくとも1つのピークが、2θ=47.61°~49°にピークトップを有することに基づいて確認することができる。
【0050】
XRDパターンは、本発明の触媒組成物から得られた試料及び市販のX線回折装置を用いて、CuKα線によるXRDを行うことにより得ることができる。具体的なXRDの条件は、実施例に記載の通りである。
【0051】
本発明の触媒組成物は、担体に担持された1種又は2種以上のその他の担持成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、Ce以外の希土類金属元素(例えば、Nd、La、Y、Pr等)の酸化物、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)の酸化物等が挙げられる。これらの酸化物は、例えば、粒子状である。これらの酸化物の少なくとも一部は、Ce酸化物及び/又はZr酸化物と複合酸化物を形成していてもよい。
【0052】
本発明の触媒組成物の効果をより効果的に発現させる観点から、その他の担持成分の合計含有量は、本発明の触媒組成物の質量を基準として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、より一層好ましくは1質量%以下である。下限値はゼロである。本発明の触媒組成物におけるその他の担持成分の含有量は、本発明の触媒組成物におけるα-アルミナの含有量と同様に算出又は測定することができる。
【0053】
本発明の触媒組成物の触媒活性の劣化をより効果的に抑制する観点から、担体由来のα-アルミナの含有量と、担体に担持されたCe酸化物のCeO換算の含有量と、担体に担持されたZr酸化物のZrO換算の含有量との合計は、本発明の触媒組成物の質量を基準として、好ましくは98.0質量%以上99.9%以下、より好ましくは98.5質量%以上99.7%以下、より一層好ましくは99.0質量%以上99.5%以下である。
【0054】
<触媒組成物の製造方法>
本発明の触媒組成物は、例えば、白金族元素塩含有溶液と、セリウム塩含有溶液と、ジルコニウム塩含有溶液と、α-アルミナを含む担体粒子とを混合した後、乾燥し、焼成することにより製造することができる。焼成物は、必要に応じて粉砕してもよい。白金族元素塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、塩化物等が挙げられる。セリウム塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。ジルコニウム塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。白金族元素塩含有溶液、セリウム塩含有溶液及びジルコニウム塩含有溶液の溶媒は、例えば、水(例えば、イオン交換水等)である。白金族元素塩含有溶液、セリウム塩含有溶液及びジルコニウム塩含有溶液は、アルコール等の有機溶媒を含んでいてもよい。乾燥温度は、例えば70℃以上150℃以下である。焼成温度は、例えば400℃以上700℃以下であり、焼成時間は、例えば1時間以上10時間以下である。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【0055】
本発明の触媒組成物を製造する際に使用されるα-アルミナを含む担体粒子は、以下の物性を有することが好ましい。
【0056】
担体粒子のBET比表面積は、好ましくは1m/g以上20m/g以下、より好ましくは2m/g以上10m/g以下である。
【0057】
BET比表面積は、JIS R1626「ファインセラミック粉体の気体吸着BET法による比表面積測定方法」の「6.2流動法」における「(3.5)一点法」に従って測定される。気体としては、吸着ガスである窒素を30容量%、キャリアガスであるヘリウムを70容量%含有する窒素-ヘリウム混合ガスが使用される。測定装置としては、例えば、マイクロトラック・ベル製BELSORP-MR6が使用される。
【0058】
担体粒子の細孔容積(細孔直径3nm以上500μm以下の範囲における合計細孔容積)は、好ましくは0.3cm/g以上0.6cm/g以下、より好ましくは0.4cm/g以上0.5cm/g以下である。
【0059】
細孔容積の測定は、水銀ポロシメータを使用して水銀圧入法により行われる。水銀圧入法は、JIS R 1655:2003に準じて行われる、測定装置としては、例えば、株式会社島津製作所製オートポアIV9520が使用される。
【0060】
担体粒子の平均粒子径は、好ましくは1.0mm以上5.0mm以下、より好ましくは2.0mm以上4.0mm以下である。
【0061】
担体粒子の平均粒子径の測定方法は、次の通りである。担体粒子を、光学顕微鏡を用いて観察し、視野内から任意に選択された100個の担体粒子の定方向径(フェレ径)を測定し、平均値を担体粒子の平均粒子径とする。
【0062】
担体粒子の充填密度(タップ密度)は、好ましくは0.70g/cm以上1.00g/cm以下、より好ましくは0.80g/cm以上0.90g/cm以下である。
【0063】
担体粒子の充填密度(タップ密度)の測定方法は、次の通りである。担体粒子30gを150mLのガラス製メスシリンダーに入れ、振とう比重測定器((株)蔵持科学器械製作所製 KRS-409)を用いてストローク60mmで350回タップした後、充填密度(タップ密度)を測定する。
【0064】
≪燃料電池システム≫
以下、図1に基づいて、本発明の一実施形態に係る燃料電池システム100について説明する。以下に説明される実施形態のうち、2以上を組み合わせることができ、2以上の実施形態の組み合わせも本発明に包含される。
【0065】
燃料電池システム100は、定置用の他、車載用等の種々の用途に使用することができる。
【0066】
図1に示すように、燃料電池システム100は、処理部110と、処理部110の動作を制御する制御部111とを備える。
【0067】
処理部110が行う各種処理については後述する。
【0068】
制御部111は、例えばコンピュータであり、主制御部と記憶部とを備える。主制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部に記憶されたプログラム、データ等を読み出して実行することにより、処理部110の動作を制御する。記憶部は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等の記憶デバイスで構成されており、処理部110で実行される処理を制御するためのプログラム、データ等を記憶する。
【0069】
図1に示すように、燃料電池システム100の処理部110は、炭化水素部分酸化器12と、燃料電池16と、原料供給部17と、酸化剤ガス供給部19とを備える。
【0070】
図1に示すように、燃料電池システム100の処理部110は、所望により、混合器13と、水蒸気改質器14と、シフト反応器15と、水蒸気供給部18とを備えてもよい。
【0071】
原料供給部17は、炭化水素を含む原料ガスG1を炭化水素部分酸化器12に供給する。原料ガスG1は、例えば、都市ガス、天然ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油等から選択される1種又は2種以上の炭化水素含有材料を含む。原料ガスG1には、水素、水、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、酸素等が含まれていてもよい。一実施形態において、原料ガスG1には、空気が含まれている。空気は、原料供給部17において炭化水素と混合されてもよいし、炭化水素が原料供給部17から炭化水素部分酸化器12に供給される途中で炭化水素と混合されてもよい。
【0072】
一実施形態において、原料供給部17は、原料ガスG1を貯留するタンクと、タンク中の原料ガスG1を炭化水素部分酸化器12に供給する供給管と、供給管に設けられたポンプとを備え、ポンプの吸込力及び吐出力を利用して、タンク中の原料ガスG1を、供給管を通じて、炭化水素部分酸化器12に供給する。
【0073】
原料供給部17は、原料ガスG1を脱硫する脱硫器を備えていてもよい。一実施形態において、脱硫器は、容器と、該容器に収容された脱硫剤とを備える。脱硫剤としては、公知のものを使用することができる。
【0074】
原料ガスG1におけるO/C(酸素分子のモル量の、炭化水素に含まれる炭素原子のモル量に対する比)は、所望する水素の収率、燃料電池システムの特性、反応条件等に応じて適宜設定することができる。
【0075】
炭化水素部分酸化器12は、本発明の触媒組成物を備える。一実施形態において、炭化水素部分酸化器12は、容器と、該容器内に収容された本発明の触媒組成物とを備える。
【0076】
炭化水素部分酸化器12に供給された原料ガスG1は、本発明の触媒組成物と接触し、原料ガスG1中の炭化水素が部分酸化され、水素及び一酸化炭素を含む改質ガスG2が生成する。
【0077】
炭化水素がCである場合を例とすると、部分酸化反応は、以下の式で表される。
部分酸化反応:C+n/2O→m/2H+nCO
【0078】
炭化水素部分酸化器12における部分酸化反応の条件は、部分酸化反応が進行し得る限り特に限定されない。温度は、好ましくは100℃以上1000℃以下、より好ましくは200℃以上800℃以下、より一層好ましくは300℃以上700℃以下である。
【0079】
一実施形態において、炭化水素部分酸化器12で生成した改質ガスG2は、燃料電池16に供給される。改質ガスG2は、燃料電池16のアノード電極161側に供給される。燃料電池16は、改質ガスG2中の水素と、酸化剤ガス供給部19により供給される酸化剤ガスR中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0080】
所望により、混合器13が設けられていてもよい。混合器13が設けられている場合、炭化水素部分酸化器12で生成した改質ガスG2は、混合器13に供給される。
【0081】
所望により、水蒸気供給部18が設けられていてもよい。水蒸気供給部18は、水蒸気Wを混合器13に供給する。水蒸気供給部18は、水から水蒸気Wを発生させる水蒸気発生部を備えていてもよい。一実施形態において、水蒸気供給部18は、水蒸気Wを貯留するタンクと、タンク中の水蒸気を混合器13に供給する供給管と、供給管に設けられたポンプとを備え、ポンプの吸込力及び吐出力を利用して、タンク中の水蒸気Wを、供給管を通じて、混合器13に供給する。
【0082】
混合器13において、改質ガスG2及び水蒸気Wが混合され、改質ガスG2及び水蒸気Wを含む混合ガスG3が生じる。生じた混合ガスG3は、水蒸気改質器14に供給される。
【0083】
所望により、水蒸気改質器14が設けられていてもよい。水蒸気改質器14は、水蒸気改質反応用の触媒組成物を備える。一実施形態において、水蒸気改質器14は、容器と、該容器内に収容された水蒸気改質反応用の触媒組成物とを備える。水蒸気改質反応用の触媒組成物としては、公知のものを使用することができる。
【0084】
水蒸気改質器14に供給された混合ガスG3は、水蒸気改質反応用の触媒組成物と接触し、混合ガスG3中の炭化水素は水蒸気改質され、水素及び一酸化炭素を含む改質ガスG4が生成する。
【0085】
炭化水素がCである場合を例とすると、水蒸気改質反応は、以下の式で表される。
水蒸気改質反応:C+nHO→(m/2+n)H+nCO
【0086】
水蒸気改質器14における水蒸気改質反応の条件として、公知の条件を適用することができる。
【0087】
一実施形態において、水蒸気改質器14で生成した改質ガスG4は、燃料電池16に供給される。改質ガスG4は、燃料電池16のアノード電極161側に供給される。燃料電池16は、改質ガスG4中の水素と、酸化剤ガス供給部19により供給される酸化剤ガスR中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0088】
所望により、シフト反応器15が設けられていてもよい。シフト反応器15が設けられている場合、水蒸気改質器14で生成した改質ガスG4は、シフト反応器15に供給される。シフト反応器15は、水性ガスシフト反応用の触媒組成物を備える。一実施形態において、シフト反応器15は、容器と、該容器内に収容された水性ガスシフト反応用の触媒組成物とを備える。水性ガスシフト反応用の触媒組成物としては、公知のものを使用することができる。
【0089】
シフト反応器15に供給された改質ガスG4は、水性ガスシフト反応用の触媒組成物と接触し、改質ガスG4中の一酸化炭素及び水蒸気が反応して、水素及び二酸化炭素を含む燃料ガスG5が生成する。
【0090】
水性ガスシフト反応は、以下の式で表される。
水性ガスシフト反応:CO+HO→H+CO
【0091】
シフト反応器15における水性ガスシフト反応の条件として、公知の条件を適用することができる。
【0092】
一実施形態において、シフト反応器15で生成した燃料ガスG5は、燃料電池16に供給される。燃料ガスG5は、燃料電池16のアノード電極161側に供給される。燃料電池16は、燃料ガスG5中の水素と、酸化剤ガス供給部19により供給される酸化剤ガスR中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0093】
酸化剤ガス供給部19は、酸化剤ガスRを燃料電池16に供給する。酸化剤ガスRは、例えば、空気である。酸化剤ガスRは、燃料電池16のカソード電極162側に供給される。一実施形態において、酸化剤ガス供給部19は、酸化剤ガスRを貯留するタンクと、タンク中の酸化剤ガスRを燃料電池16に供給する供給管と、供給管に設けられたポンプとを備え、ポンプの吸込力及び吐出力を利用して、タンク中の酸化剤ガスRを、供給管を通じて、燃料電池16に供給する。
【0094】
燃料電池16としては、公知のものを使用することができる。燃料電池16は、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。複数の燃料電池16が積層され、燃料電池スタックが形成されていてもよい。
【0095】
燃料電池16は、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質163の一方の面及び他方の面にそれぞれアノード電極161及びカソード電極162が設けられた電解質/電極接合体(MEA)である。
【0096】
アノード電極161では、水素が酸化物イオンと反応して水となり、電子を放出する反応が進行し、カソード電極162では、酸素が電子を得て、酸化物イオンとなる反応が進行する。アノード電極161及びカソード電極162には、不図示の電気負荷が電気的に接続されていてもよい。
【実施例0097】
〔実施例1〕
球状のα-アルミナペレット(比表面積:約4m/g,細孔容積:約0.43cm/g,充填密度:約0.86g/cm,平均粒子径:約2.5mm)100gを120℃の環境下で5時間静置して乾燥し、乾燥アルミナペレットを得た。
【0098】
硝酸白金溶液及び硝酸ロジウム溶液を、それぞれ、Ptの金属換算の含有量及びRhの金属換算の含有量の合計が最終産物であるPt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットの質量を基準として0.5質量%以上1.0質量%以下となるように秤量した。硝酸セリウム溶液及び硝酸ジルコニウム溶液を、それぞれ、Ce酸化物のCeO換算の含有量及びZr酸化物のZrO換算の含有量が最終産物であるPt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットの質量を基準として表1に示す含有量となるように秤量した。それらを混合して10分間撹拌し、混合溶液を得た。得られた混合溶液を乾燥アルミナペレットに投入して10分間撹拌し、アルミナペレットに混合溶液を吸液させた。乾燥アルミナペレットの投入量は、混合溶液を吸液したアルミナペレットの固形物量が合計で100gとなるように調整した。混合溶液を吸液したアルミナペレットを120℃の環境下で重量変化が無くなるまで乾燥させ、Pt-Rh-セリウム-ジルコニウム担持乾燥アルミナペレットを得た。
【0099】
得られたPt-Rh-セリウム-ジルコニウム担持乾燥アルミナペレットを、500℃で3時間焼成し、Pt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットを得た。得られたPt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットの組成を表1に示す。なお、表1中、実施例1の「質量%」は、Pt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットの質量を基準とする。
【0100】
X線回折法(XRD)を使用して、Pt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットのXRDパターンを得た。XRDは、X線回折装置を使用して、X線源:CuKα、操作軸:2θ/θ、測定方法:連続、計数単位:cps、開始角度:5°、終了角度:80°、ステップ幅:0.02°、スキャン速度:10.0°/分、電圧:40kV、電流:15mAの条件で行った。
【0101】
得られたX線回折パターンにおいて、2θ=47.61°~49°(具体的には、2θ=47.68°)にピークトップを有するCe酸化物由来ピークが存在していた。
【0102】
〔比較例1〕
硝酸白金溶液及び硝酸ロジウム溶液を、最終産物であるPt-Rh-セリア担持焼成アルミナペレットの質量を基準としたPtの金属換算の含有量(質量%)及びRhの金属換算の含有量(質量%)がそれぞれ実施例1と同じ値となるように秤量した。硝酸セリウム溶液を、Ce酸化物のCeO換算の含有量が最終産物であるPt-Rh-セリア担持焼成アルミナペレットの質量を基準として表1に示す含有量となるように秤量した。それらを混合して10分間撹拌し、混合溶液を得た点(硝酸ジルコニウム溶液を使用しなかった点)を除き、実施例1と同様の操作を行ない、Pt-Rh-セリウム担持乾燥アルミナペレットを得た。得られたPt-Rh-セリウム担持乾燥アルミナペレットを、500℃で3時間焼成し、Pt-Rh-セリア担持焼成アルミナペレットを得た。得られたPt-Rh-セリア担持焼成アルミナペレットの組成を表1に示す。なお、表1中、比較例1の「質量%」は、Pt-Rh-セリア担持焼成アルミナペレットの質量を基準とする。
【0103】
X線回折法(XRD)を使用して、Pt-Rh-セリア担持焼成アルミナペレットのXRDパターンを得た。XRDは、実施例1と同様に行った。得られたX線回折パターンにおいて、2θ=47.60にピークトップを有するCe酸化物由来ピークは存在していたが、2θ=47.61°~49°にピークトップを有するCe酸化物由来ピークは存在しなかった。
【0104】
〔比較例2〕
球状のγ―アルミナペレット(比表面積:約210m/g,細孔容積:約0.43cm/g,充填密度:約0.85g/cm,平均粒子径:2.5mm)100gを120℃の環境下で5時間静置乾燥し、乾燥アルミナペレットを得た点を除き、実施例1と同様の操作を行ない、Pt-Rh-セリウム-ジルコニウム担持乾燥アルミナペレットを得た。なお、最終産物であるPt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットの質量を基準としたPtの金属換算の含有量(質量%)及びRhの金属換算の含有量(質量%)はそれぞれ実施例1の値と同じである。得られたPt-Rh-セリウム-ジルコニウム担持乾燥アルミナペレットを、500℃で3時間焼成し、Pt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットを得た。得られたPt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットの組成を表1に示す。なお、表1中、比較例2の「質量%」は、Pt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットの質量を基準とする。
【0105】
X線回折法(XRD)を使用して、Pt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットのXRDパターンを得た。XRDは、実施例1と同様に行った。得られたX線回折パターンにおいて、2θ=47.54にピークトップを有するCe酸化物由来ピークは存在していたが、2θ=47.61°~49°にピークトップを有するCe酸化物由来ピークは存在しなかった。
【0106】
【表1】
【0107】
〔試験例1〕
(1)加速耐久処理
管状炉内に、実施例1で得られたPt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットを設置し、空気及び炭化水素を含む模擬燃料ガスを流通させた。模擬燃料ガスにおいて、空気由来の酸素分子のモル量の、炭化水素由来の炭素原子のモル量に対する比(O/C比)が0.5となるように調整した。模擬燃料ガスを流通させながら昇温速度5℃/分で管状炉の温度を1000℃まで昇温させ、実施例1で得られたPt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットを1000℃で24時間処理し、耐久処理サンプルを得た。
【0108】
比較例1で得られたPt-Rh-セリア担持焼成アルミナペレット及び比較例2で得られたPt-Rh-セリア-ジルコニア担持焼成アルミナペレットについても上記と同様の加速耐久処理を行い、耐久処理サンプルを得た。
【0109】
(2)着火温度測定
図2に示す評価装置を使用して、耐久処理サンプルの着火温度を測定した。
図2に示す評価装置において、ボンベ1より供給される燃料ガス(都市ガス)の流量及びボンベ3より供給される空気の流量は、それぞれ、気体マスフローコントローラー2及び気体マスフローコントローラー4により調整される。ボンベ1より供給される燃料ガス及びボンベ3より供給される空気は、混合部5にて混合され、電気炉6内のステンレス容器に収容された部分酸化触媒7へ送られ、部分酸化触媒7にて部分酸化されたガスはバブラー8を経て排気される。なお、部分酸化触媒7としては、上記(1)で得られた耐久処理サンプルを使用した。
【0110】
以下の手順により、着火温度及び昇温後温度を測定した。なお、電気炉6内のステンレス容器内の部分酸化触媒7の量は、体積が1.5cmとなる量に調整し、部分酸化触媒7に供給される燃料ガス及び空気の流量は、触媒体積で割った空間速度(SV)が約3万h-1となり、かつ、供給される空気中の酸素分子のモル量の、供給される燃料ガス中の炭素原子のモル量に対する比(O/C比)が0.5となるように調整した。
【0111】
(a)熱電対9により測定される電気炉の温度が200℃となるまで昇温した。
(b)電気炉の設定温度を10℃昇温させ、部分酸化触媒7の温度を熱電対10で測定し、入口側ガスの温度を部分酸化触媒7の手前にある熱電対11で測定した。
(c)昇温停止後の入口側ガスの温度と部分酸化触媒7の温度との差が20℃未満であった場合、その温度範囲で着火が起こらなかったと判定し、再度(b)の手順を行った。ここで、昇温停止とは、部分酸化触媒7の温度変化が1℃/分以下になることである。
(d)昇温停止後の入口側ガスの温度と部分酸化触媒7の温度との差が20℃以上であった場合、着火が起こったと判定し、その昇温開始前の部分酸化触媒7の温度を着火温度とし、昇温停止後の温度を昇温後温度とした。結果を表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
実施例1の耐久処理サンプルにおいては、担体としてα-アルミナを用いていることにより、高温に晒されても担体の細孔の深部に担持された担持成分まで反応ガスが到達しやすい状態が保たれた。さらに、Zr酸化物が含有されていることにより、Ce酸化物のシンタリング並びにそれに伴う白金族元素のシンタリング及び/又は白金族元素の埋没を防止する効果が好ましく発揮された。その結果、触媒の活性が低下せず、部分酸化反応が起こりやすい状態が保たれ、低い着火温度を示した。
【0114】
比較例1の耐久処理サンプルにおいては、Zr酸化物が含有されていないことにより、Ce酸化物のシンタリング並びにそれに伴う白金族元素のシンタリング及び/又は白金族元素の埋没を防止する効果が発揮されなかった。その結果、触媒の活性が低下し、部分酸化反応が起こりにくくなり、実施例1より高い温度まで着火しなかった。
【0115】
比較例2の耐久処理サンプルにおいては、 担体としてγ-アルミナを用いていることにより、外表面に担持された白金族元素の埋没、及び担持成分が担持された細孔の閉塞が生じて反応ガスが担持成分に到達しにくくなった。その結果、触媒の活性が低下し、部分酸化反応が起こりにくくなり、実施例1より高い温度まで着火しなかった。
【符号の説明】
【0116】
100・・・燃料電池システム
110・・・処理部
111・・・制御部
12・・・炭化水素部分酸化器
13・・・混合器
14・・・水蒸気改質器
15・・・シフト反応器
16・・・燃料電池
17・・・原料供給部
18・・・水蒸気供給部
19・・・酸化剤ガス供給部
図1
図2