(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095546
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】タイヤ製造用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20230629BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230629BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230629BHJP
B22F 10/66 20210101ALI20230629BHJP
B22F 5/00 20060101ALI20230629BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20230629BHJP
B22C 9/28 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
B29C33/02
B33Y10/00
B33Y80/00
B22F10/66
B22F5/00 F
B29C33/38
B22C9/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211502
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】小原 将明
【テーマコード(参考)】
4E093
4F202
4K018
【Fターム(参考)】
4E093VA10
4F202AA45
4F202AB03
4F202AG19
4F202AH20
4F202AJ02
4F202AR13
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU01
4F202CU02
4K018AA24
4K018AA33
4K018BA13
4K018BA17
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018FA05
4K018FA06
4K018KA18
(57)【要約】
【課題】ボイド成型材の離型抵抗を低減することができるタイヤ製造用金型を提供する。
【解決手段】タイヤ製造用金型22は、トレッド表面を成型するための金型本体40と、金型本体40とは異なる材料からなりトレッド表面にサイプなどのボイドを成型するためのボイド成型材42と、を備える。ボイド成型材42は、3Dプリンタによる金属造形により作製されたものであり、金属造形により形成された表面46の凹凸のうち突起48の上部が平坦化されて平坦な頂面48Aが形成されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド表面を成型するための金型本体と、前記金型本体とは異なる材料からなり前記トレッド表面にボイドを成型するためのボイド成型材と、を備えるタイヤ製造用金型であって、
前記ボイド成型材が3Dプリンタによる金属造形により作製されたものであり、前記金属造形により形成された表面の凹凸のうち突起の上部が平坦化されて平坦な頂面が形成された、
タイヤ製造用金型。
【請求項2】
前記金属造形により形成された算術平均粗さRaが3.0~7.0μmかつスキューネスがRsk>0である表面が、前記平坦化によりスキューネスがRsk<0とされた、請求項1に記載のタイヤ製造用金型。
【請求項3】
前記金属造形により形成された前記突起の上部を削り取ることで平坦な前記頂面が形成された、請求項1又は2に記載のタイヤ製造用金型。
【請求項4】
前記ボイド成型材は、前記突起の平坦な前記頂面と凹みの底との間に狭窄部を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ製造用金型。
【請求項5】
前記金属造形により形成された前記突起の上部に高さを減ずるように圧力を加えて塑性変形させることで前記狭窄部が形成され、さらに前記狭窄部を残しながら前記突起の上部を削り取ることで平坦な前記頂面が形成された、請求項4に記載のタイヤ製造用金型。
【請求項6】
前記ボイド成型材がステンレス鋼からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ製造用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タイヤ製造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
トレッド表面にサイプなどのボイドを有するタイヤがある。そのようなボイドを有するタイヤのトレッド表面を製造するための金型では、ボイドを成型するためのボイド成型材が、金型本体とは異なる材料で作製される。例えば、軽量性のため金型本体をアルミニウムなどの軟質金属で作製する一方、強度等の観点からボイド成型材は鉄系金属で作製される。
【0003】
特許文献1には、サイプが形成されたブロックの剛性向上を図ることを目的として、サイプを成型するブレードの表面に特定の凹凸面を形成すること、及び、該ブレードを積層造形法により製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤ要求性能の高まりにより、タイヤ製造用金型においては、複雑な溝形状を求められる傾向にある。トレッド意匠を構成する要素のうち、特に厚み2mm以下のサイプを成型するためのボイド成型材としては、鉄系金属をプレス成型したもののほか、上記特許文献1に記載のように積層造形法、即ち3Dプリンタを利用したものもある。
【0006】
このようなボイド成型材を用いたタイヤ製造において、ボイド成型材の表面の凹凸は、加硫後におけるタイヤからのボイド成型材の離型抵抗を高めると考えられる。特に複雑な形状を有するサイプを成型するためのボイド成型材においては、離型抵抗の増大によるタイヤの脱型不良など、生産性を損なう要因となる。
【0007】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、ボイド成型材の離型抵抗を低減することができるタイヤ製造用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係るタイヤ製造用金型は、トレッド表面を成型するための金型本体と、前記金型本体とは異なる材料からなり前記トレッド表面にボイドを成型するためのボイド成型材と、を備えるタイヤ製造用金型であって、前記ボイド成型材が3Dプリンタによる金属造形により作製されたものであり、前記金属造形により形成された表面の凹凸のうち突起の上部が平坦化されて平坦な頂面が形成されたものである。
【0009】
一実施形態において、前記金属造形により形成された算術平均粗さRaが3.0~7.0μmかつスキューネスがRsk>0である表面が、前記平坦化によりスキューネスがRsk<0とされてもよい。
【0010】
一実施形態において、前記金属造形により形成された前記突起の上部を削り取ることで平坦な前記頂面が形成されてもよい。
【0011】
一実施形態において、前記ボイド成型材は、前記突起の平坦な前記頂面と凹みの底との間に狭窄部を有してもよい。この場合、前記金属造形により形成された前記突起の上部に高さを減ずるように圧力を加えて塑性変形させることで前記狭窄部が形成され、さらに前記狭窄部を残しながら前記突起の上部を削り取ることで平坦な前記頂面が形成されてもよい。
【0012】
一実施形態において、前記ボイド成型材がステンレス鋼からなるものでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態であると、ボイド成型材の離型抵抗を低減することができ、加硫後におけるタイヤの脱型不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】一実施形態に係るタイヤ製造用金型の断面図(
図3のII-II線に対応する断面図)
【
図3】一実施形態に係るタイヤトレッドの一部平面図
【
図5】第1実施形態に係るボイド成型材の表面の断面形状を示す模式図
【
図6】金属造形により形成される凹凸の断面形状を示す模式図
【
図7】金属造形により作製されたボイド成型材の平坦化前の表面を拡大して示す画像
【
図8】第1実施形態に係るボイド成型材の表面を示す平面図
【
図9】第2実施形態に係るボイド成型材の表面の断面形状を示す模式図
【
図10】第2実施形態において金属造形により作製されたボイド成型材の表面にプレス加工を施した段階での断面形状を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者は、ボイド成型材の離型抵抗を低減するためにボイド成型材の表面性状に着目し、算術平均粗さRaが1.0μmレベルの圧延鋼をプレス成型して得られる滑らかな表面よりも、ディンプル状の適度な凹凸形状を有する表面の方が望ましいことを見出した。
【0016】
詳細には、圧延鋼をプレス成型して得られる滑らかな表面では、その表面の全体で未加硫ゴムが密着した状態に加硫され、加硫ゴムとボイド成型材との接触面積が大きいため、離型抵抗が大きい。従って、離型抵抗を小さくするためには接触面積を小さくすることが望ましく、そのために、ボイド成型材の表面に微小な凹凸を設けることが考えられる。
【0017】
ボイド成型材を3Dプリンタによる金属造形で作製すると、ボイド成型材の表面には当該金属造形による微小な凹凸が形成される。但し、このような凹凸面を持つボイド成型材をそのまま用いて加硫成型すると、未加硫ゴムが凹みに入り込んで固まるため、離型抵抗が大きくなる。
【0018】
そこで、上記表面の凹凸のうち突起の上部を平坦化する方策を採用することにした。これにより、ボイド成型材の表面は、平坦化された突起の頂面と凹みにより形成される。この場合、加硫初期において未加硫ゴムがボイド成型材の表面上を流動する際に、突起の平坦な頂面での受熱により、未加硫ゴムの極表面部の加硫が促進されることにより粘着性が低減され、凹み内に入り込みにくくなる。そのため、凹み領域での密着力が低減し、離型抵抗を低減することができる。
【0019】
以下、一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、空気入りタイヤを加硫成型するためのタイヤ加硫装置10の一例を示す。タイヤ加硫装置10は、加硫金型12と、加硫金型12が取り付けられるコンテナ14と、ブラダー16とを備え、未加硫タイヤを所定形状に成型しつつ加硫する。
【0021】
加硫金型12は、上下一対のサイドプレート18,20と、周方向に分割された複数のセクタ22と、上下一対のビードリング24,26とを備え、タイヤTの外表面を成型する。セクタ22は、タイヤTのトレッド表面T1を成型するための金型であり、タイヤ周方向に複数に分割され、タイヤ半径方向に拡縮変位可能に設けられている。
【0022】
コンテナ14は、セクタ22を保持する複数のセグメント28と、セグメント28をタイヤ半径方向に移動させるジャケットリング30と、上下一対の取付プレート32,34とを備える。ジャケットリング30は、セグメント28に対して相対的に上下動することで、セグメント28をタイヤ半径方向に移動させ、これによりセクタ22がタイヤ半径方向に拡縮変位可能に構成されている。上側の取付プレート32は、不図示の昇降装置により下側の取付プレート34に対して上下動するように構成されている。
【0023】
ブラダー16は、トロイダル状をなす拡縮可能なゴム弾性体からなり、タイヤTの内面側に配置されて加圧気体の供給によって膨らむことによりタイヤTを内側から加圧する。
【0024】
以下、タイヤTのトレッド表面T1(即ち、トレッドの意匠面)を成型するための金型であるセクタ22について説明する。以下の説明においては、セクタ22を「タイヤ製造用金型22」または単に「金型22」という。
【0025】
金型22は、
図2に示すように、トレッド表面T1を成型するための金型本体40と、トレッド表面T1にボイドを成型するためのボイド成型材42とを備える。通常は複数のボイド成型材42が金型本体40に鋳ぐるみされている。鋳ぐるみとは、一般に異種部材のまわりに溶融金属を流し込んで本体と一体化した鋳造品を得ることをいい、ここではボイド成型材42をインサートとして溶融金属を流し込むことにより、金型本体40にボイド成型材42が一体化された金型22を得ることをいう。
【0026】
金型本体40は、アルミニウムやアルミニウム合金などの軟質金属からなる。金型本体40は、トレッド表面T1を成型するためのトレッド成型面40Aを備える。トレッド成型面40Aには、トレッド表面T1に主溝(即ち、周方向溝)を成型するためのリブ44が設けられている。リブ44は、トレッド成型面40Aから突出してタイヤ周方向に延びる凸条であり、金型本体40に一体に形成されている。
【0027】
ボイド成型材42は、金型本体40とは異なる材料からなり、強度等の観点から鉄系金属により形成されることが好ましい。より好ましくは、ボイド成型材42は、ステンレス鋼により形成されることである。ステンレス鋼であれば、鉄製の場合よりも防錆性にすぐれ、また、加硫ゴムとの密着も鉄製に比べて低減することができる。更に好ましくは、ボイド成型材42は、ニッケル(Ni)の含有量が8質量%以下(より好ましくは5質量%以下)のステンレス鋼からなることである。ニッケルの含有量が少ないことにより、加硫ゴムとの密着をより一層低減することができる。
【0028】
ボイド成型材42により成型されるボイドとしては、トレッド表面T1に設けられる様々な凹みが例示されるが、好ましくは溝状の凹み、例えばサイプや細溝が挙げられる。ここで、サイプは、溝幅2mm以下の切れ込みであり、カーフとも称される。細溝は、主溝よりも溝幅の狭い溝であり、例えば溝幅5mm以下の溝をいう。サイプや細溝は、タイヤ周方向に延びるものでもよく、タイヤ幅方向に延びるものでもよい。
【0029】
図3は、金型22により成型されるトレッド表面T1の一例を示す平面図である。トレッド表面T1には、複数の主溝T2が設けられるとともに、主溝T2により区画されたタイヤ周方向に延びるリブT3に、タイヤ幅方向に延びる複数のサイプT4が設けられている。一実施形態におけるボイド成型材42は、該サイプT4を成型するためのものである。
図2及び
図3において、符号CLはタイヤ赤道面を示す。
【0030】
なお、ボイド成型材42は、溝状の凹みを成型する場合、板状をなす。
図3に示すサイプT4を成型する場合、ボイド成型材42は長手方向の両端部に湾曲部を持つ平板状をなす。ボイド成型材42の形状は、これに限定されず、例えば、成型する凹みが平面視(開口形状)で直線状である場合、ボイド成型材42は長手方向の全体が平板状でもよい。また、成型する凹みが平面視で湾曲線状である場合、ボイド成型材42は湾曲した板状でもよい。成型する凹みが平面視で屈曲部を持つ線状の場合、ボイド成型材42は屈曲部を持つ板状でもよい。成型する凹みが平面視で波形である場合、ボイド成型材42は波板状でもよい。
【0031】
図4はボイド成型材42の一例を示す図である。ボイド成型材42のうち、金型本体40から突出してボイドを成型する部分を成型部42Aといい、金型本体40に埋め込まれる部分を埋設部42Bという。
図4では、埋設部42Bにハッチングを入れて示している。
【0032】
本実施形態においてボイド成型材42は、3Dプリンタによる金属造形(金属積層造形ともいう。)により作製される。金属造形は、金属粉末を層ごとに融合し積み重ねて立体形状を作製する技術をいう。金属造形としては、例えば、SLS(Selective laser sintering:レーザー焼結法)、SLM(Selectivelaser melting:レーザー溶融法)等が挙げられ、レーザービームの照射により支持板上で金属粉末を選択的に焼結または溶融することによって、成型すべき物体の形状に従い一層ずつ造形していく。
【0033】
このようにして作製されるボイド成型材42の表面46には、金属造形による微小な凹凸が形成される。すなわち、
図6に模式的に示すように、ボイド成型材42の表面46は、複数の突起48と複数の凹み50とを含む凹凸面に形成されている。
図7は、金属造形により形成されたボイド成型材42の表面46を示す画像である。色が白い部分ほど高く、即ち隆起しており、色が濃くなるに従って低く、即ち凹んでいることを示す。
【0034】
本実施形態では、上記金属造形により形成された表面46の凹凸のうち突起48の上部(即ち、頂部)が、
図5に示すように平坦化され、平坦な頂面48Aが形成されている。即ち、突起48の頂面48Aは平坦面(平滑面)に形成されている。
【0035】
第1実施形態では、金属造形による凹凸面に対して、突起48の上部を削り取ることで、当該上部が平坦化されており、平坦な頂面48Aを持つ截頭形状の突起48が形成されている。そのため、ボイド成型材42の表面46は、截頭形状の突起48の頂面48Aと凹み50により形成されている。突起48の上部を削り取る方法としては、突起48の上部を除去して平坦面を形成することができれば、特に限定されず、切削加工でもよく、研削加工でもよい。
図8は、平坦化後の表面46の一例を示す平面図であり、截頭形状の突起48の頂面48Aの間に凹み50が配置されている。
【0036】
これにより、タイヤの加硫初期において、未加硫ゴムがボイド成型材42の表面46上を流動する際に、突起48の平坦な頂面48Aでの受熱により、未加硫ゴムの極表面部の加硫が促進される。そのため、ゴムの粘着性が低減され、凹み50内にゴムが入り込みにくくなるので、加硫ゴムの密着力が低減し、離型抵抗を低減することができる。
【0037】
なお、平坦化する表面46は、成型部42Aにおける表面(即ち、板状のボイド成型材42の場合、成型部42Aの両側面)であればよく、埋設部42Bの表面においては平坦化してもよく、平坦化しなくてもよい。
【0038】
一実施形態において、金属造形による成型後(平坦化前)の表面46は、算術平均粗さRaが3.0~7.0μmであり、かつ、粗さパラメータのスキューネスRskが正(Rsk>0)であることが好ましい。そして、ボイド成型材42としての製品形状において、スキューネスRskが負(Rsk<0)となるように、突起48の上部が平坦化されていることが好ましい。このようなRsk<0の表面46とすることにより、平坦な頂面48Aと凹み50との割合が適値となり、ボイド成型材42の離型抵抗をより効果的に低減することができる。なお、突起48の頂面48Aの算術平均粗さRaは、特に限定されないが、2.0μm以下であることが好ましい。
【0039】
ここで、算術平均粗さRa及びスキューネスRskは、2001年版のJIS B0601に準拠して測定される。
【0040】
ボイド成型材42の製品形状において、各凹み50は、その開口面の長寸値50Bが短寸値50Cの2倍~10倍であることが好ましい。このように凹み50の開口形状を細長い形状にすることにより、凹み50へのゴムの侵入をより低減することができる。ここで、凹み50の長寸値50Bとは、
図8に示すように、凹み50の開口面の輪郭を検出し、該輪郭を長方形52に対して内接フィッティングさせたときの当該長方形52の縦寸法をいう。短寸値50Cとは、当該長方形52の横寸法をいう。
【0041】
また、ボイド成型材42の製品形状において、凹み50の間隔Gは、特に限定されず、例えば0.2~1.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.5~1.0mmである。凹み50の間隔Gをこのような範囲に設定することにより、加硫ゴムとの密着力が大きい頂面48A間に、凹み50による低密着領域が適当な間隔で配置されることになり、離型抵抗の更なる低減を図ることができる。ここで、凹み50の間隔Gは、凹み50の配設間隔であり、
図6に示されるように隣接する凹み50,50の中心間距離である。
【0042】
図9は、第2実施形態に係るボイド成型材42Xの表面46の断面形状を示す模式図である。第2実施形態では、突起48の平坦な頂面48Aと凹み50の底50Aとの間に狭窄部54を設けており、この点で第1実施形態とは相違する。
【0043】
狭窄部54とは、凹み50の底50Aから頂面48Aに至るまでに凹み50の外形が一旦広がった後にすぼまって狭まる形状をなしている当該狭まった部分をいう。狭窄部54は、
図9に示すように、凹み50の開口面(即ち、頂面48A)近傍に設けられていることが好ましく、凹み50の深さ方向においてその深さの半分よりも開口面側に設けられていることが好ましい。このようにボイド成型材42Xに狭窄部54を設けたことにより、凹み50内へのゴムの侵入をより効果的に抑制することができる。
【0044】
上記のような狭窄部54を持つボイド成型材42Xは、次のようにして作製することができる。金属造形により形成された突起48の上部にその高さを減ずるように圧力を加えて塑性変形させることで狭窄部54を形成し、さらに狭窄部54を残しながら突起48の上部を削り取ることで平坦な頂面48Aを形成する。ここで、該塑性変形は、金属造形により形成された凹凸を持つ表面46に対して、プレス加工やショットピーニング加工を施すことにより行うことができる。
【0045】
詳細には、
図6に示す金属造形後の凹凸を持つ表面46に対してプレス加工を行うと、突起48の上部にはその高さを減ずるように圧力が加えられ、当該上部が圧縮されて塑性変形することにより庇状に広がり、
図10に示すように突起48の上部に狭窄部54が形成される。ショットピーニング加工についても同様であり、無数の球体を高速で衝突させることにより、突起48の上部にはその高さを減ずるように圧力(無数の球体が衝突することによる瞬間的に押す力)が加えられ、当該上部が塑性変形して庇状に広がり、狭窄部54が形成される。
【0046】
次いで、狭窄部54を残しながら、その上部を切削加工や研削加工等により平坦に削って除去することにより、
図9に示すように平坦な頂面48Aが形成される。このように、プレス加工等により塑性変形させた後、切削加工等で上部を除去することにより、狭窄部54を持つボイド成型材42Xを簡便に得ることができる。
【0047】
第2実施形態について、その他の構成は第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0048】
本実施形態において、ボイド成型材42,42Yを製造する場合、金属造形で全体形状を形成した後、溶体化熱処理を実施し硬度を低下させることが好ましい。これにより、上記のプレス加工やショットピーニング加工、切削加工や研削加工などにおける加工性を向上することができる。これらの加工によりボイド成型材42,42Xの表面46を所望の形状に形成した後、時効硬化熱処理を施すことが好ましく、これにより、表面46の凹凸形状の強度を向上させることができる。
【0049】
以上の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
22…タイヤ製造用金型、40…金型本体、42,42X…ボイド成型材、46…ボイド成型材の表面、48…突起、48A…頂面、50…凹み、54…狭窄部