(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095558
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】菊の切り花の初期包装体、菊の切り花の包装体、菊の切り花の包装体の製造方法及び菊の切り花の鮮度確認方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20230629BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B65D85/50 200
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211521
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葉 永安
(72)【発明者】
【氏名】和知 浩子
(72)【発明者】
【氏名】中山 徳夫
【テーマコード(参考)】
3E035
3E086
【Fターム(参考)】
3E035BA01
3E035BA08
3E035BC01
3E035BC02
3E035BD01
3E035CA08
3E086AD01
3E086AD02
3E086BA02
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA19
3E086BB02
3E086BB03
3E086BB05
3E086CA19
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】菊の切り花において、花弁の褐変並びに葉の萎れ及び変色を抑制し、長期間保管することができる菊の切り花の初期包装体を提供する。
【解決手段】パレットと、パレットの上に積載された菊の切り花を含む収納箱と、包装部材と、を含み、包装部材はパレット及び収納箱の全体を包装しており、包装後400時間経過した場合に、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である菊の切り花の初期包装体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットと、前記パレットの上に積載された菊の切り花を含む収納箱と、包装部材と、を含み、
前記包装部材は前記パレット及び前記収納箱の全体を包装しており、
包装後400時間経過した場合に、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である菊の切り花の初期包装体。
【請求項2】
前記包装部材により前記パレット及び前記収納箱の全体を包装して包装後400時間経過した場合に、
包装後50時間経過時点から400時間経過時点までにおいて、前記菊の呼吸商の傾きが、-0.0010~0.0020である請求項1に記載の菊の切り花の初期包装体。
【請求項3】
前記菊の呼吸商が0.5~2.0である請求項1又は請求項2に記載の菊の切り花の初期包装体。
【請求項4】
初期包装体において、単位容積当たりの前記菊の切り花の本数が、0.1本/m3~2.0本/m3である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の菊の切り花の初期包装体。
【請求項5】
前記包装部材は、23℃、0%RHにおける二酸化炭素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~90,000cm3/m2・day・atmであり、23℃、0%RHにおける酸素透過度が2,500cm3/m2・day・atm~30,000cm3/m2・day・atmである請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の菊の切り花の初期包装体。
【請求項6】
前記包装部材は、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が5cm3/m2・day・atm~100cm3/m2・day・atmである請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の菊の切り花の初期包装体。
【請求項7】
前記包装部材が、ポリオレフィン及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む高分子フィルムである請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の菊の切り花の初期包装体。
【請求項8】
前記包装部材が、不織布層とポリオレフィン層とを含む積層フィルムである請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の菊の切り花の初期包装体。
【請求項9】
容積が、0.5m3~10m3である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の菊の切り花の初期包装体。
【請求項10】
パレットと、前記パレットの上に積載された菊の切り花を含む収納箱と、包装部材と、を含み、
前記包装部材は前記パレット及び前記収納箱の全体を包装しており、
内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である菊の切り花の包装体。
【請求項11】
前記菊の呼吸商が0.5~2.0である請求項10に記載の菊の切り花の包装体。
【請求項12】
包装体において、単位容積当たりの前記菊の切り花の本数が、0.1本/m3~2.0本/m3である請求項10又は請求項11に記載の菊の切り花の包装体。
【請求項13】
前記包装部材は、23℃、0%RHにおける二酸化炭素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~90,000cm3/m2・day・atmであり、23℃、0%RHにおける酸素透過度が2,500cm3/m2・day・atm~30,000cm3/m2・day・atmである請求項10~請求項12のいずれか1項に記載の菊の切り花の包装体。
【請求項14】
前記包装部材は、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が5cm3/m2・day・atm~100cm3/m2・day・atmである請求項10~請求項13のいずれか1項に記載の菊の切り花の包装体。
【請求項15】
前記包装部材が、ポリオレフィン及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む高分子フィルムである請求項10~請求項14のいずれか1項に記載の菊の切り花の包装体。
【請求項16】
前記包装部材が、不織布層とポリオレフィン層とを含む積層フィルムである請求項10~請求項15のいずれか1項に記載の菊の切り花の包装体。
【請求項17】
容積が、0.5m3~10m3である請求項10~請求項16のいずれか1項に記載の菊の切り花の包装体。
【請求項18】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の菊の切り花の初期包装体を保管することにより、内部において、酸素濃度を0体積%~20体積%とし、二酸化炭素濃度を0体積%~12体積%として、請求項10~請求項17のいずれか1項に記載の菊の切り花の包装体を製造する工程を含む菊の切り花の包装体の製造方法。
【請求項19】
前記初期包装体を保管する際、保管温度が1℃~20℃である請求項18に記載の菊の切り花の包装体の製造方法。
【請求項20】
請求項10~請求項17のいずれか1項に記載の菊の切り花の包装体の内部において、酸素濃度及び二酸化炭素濃度を測定する工程と、
測定された前記酸素濃度及び前記二酸化炭素濃度から菊の切り花の鮮度を確認する工程と、
を含む菊の切り花の鮮度確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、菊の切り花の初期包装体、菊の切り花の包装体、菊の切り花の包装体の製造方法及び菊の切り花の鮮度確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切り花は収穫後ただちに消費されずに流通段階で保管される場合がある。中でも菊は盆、暮、彼岸等の限られた時期に需要が集中する傾向があり、生産量を消費量にあわせて調節するのが困難であるため、保管中の鮮度の低下を抑制する技術の重要性が大きい。
【0003】
例えば、特許文献1には、高分子フィルムからなる菊の切り花の鮮度保持用包装袋であって、鮮度保持用包装袋には微細孔を有し、菊の切り花の平均保存温度T(℃)が0℃以上10℃以下であり、23℃における菊100gあたりの鮮度保持用包装袋の酸素透過量P(cc/100g・day・atm)が50~380cc/100g・day・atmであることを特徴とする菊の切り花の鮮度保持用包装袋が記載されている。
【0004】
特許文献2には、高分子フィルムからなる菊の切り花の鮮度保持用包装袋であって、鮮度保持用包装袋には微細孔を有し、菊の切り花の平均保存温度T(℃)が10℃より高く30℃以下であり、23℃における菊100gあたりの鮮度保持用包装袋の酸素透過量P(cc/100g・day・atm)が200~4500cc/100g・day・atmであることを特徴とする菊の切り花の鮮度保持用包装袋が記載されている。
【0005】
特許文献3には、キクを1Kg当たり酸素、及び二酸化炭素透過量4,000~8,000(cc/袋/24h/atm)の合成樹脂フィルムにより密封包装し、0~5℃の雰囲気中に置くことにより包装体内の酸素濃度を10~19%、二酸化炭素濃度を1~10%にすることを特徴とするキクの貯蔵方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-298431号公報
【特許文献2】特開2010-120683号公報
【特許文献3】特開平9-107879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
菊の切り花は収穫後も呼吸しているため、保管中に包装袋内の酸素及び二酸化炭素のバランスが絶えず変化する。例えば、このバランスを適切に制御することは、保管中の鮮度の維持に有効であると考えられる。
しかし、上記バランスの制御のみによって、菊の鮮度(例えば、花びら及び花芯の鮮度)を維持する手法では、不充分である場合がある。
例えば、近年では、海外で生産された菊を日本国内に輸入するケースが増大しており、長期間の輸送に耐えうる鮮度保持技術が望まれている。このように、長期間にわたって菊の鮮度を維持することが求められる場合、上記バランスの制御のみによる手法では菊の鮮度を維持できない場合がある。
特許文献1~特許文献3は、長期間にわたって菊の鮮度を維持することについて改善の余地がある。
【0008】
本開示の一実施態様が解決しようとする課題は、菊の切り花において、花弁の褐変並びに葉の萎れ及び変色を抑制し、長期間保管することができる菊の切り花の初期包装体、菊の切り花の包装体、菊の切り花の包装体の製造方法及び菊の切り花の鮮度確認方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> パレットと、前記パレットの上に積載された菊の切り花を含む収納箱と、包装部材と、を含み、前記包装部材は前記パレット及び前記収納箱の全体を包装しており、包装後400時間経過した場合に、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である菊の切り花の初期包装体。
<2> 前記包装部材により前記パレット及び前記収納箱の全体を包装して包装後400時間経過した場合に、包装後50時間経過時点から400時間経過時点までにおいて、前記菊の呼吸商の傾きが、-0.0010~0.0020である<1>に記載の菊の切り花の初期包装体。
<3> 前記菊の呼吸商が0.5~2.0である<1>又は<2>に記載の菊の切り花の初期包装体。
<4> 初期包装体において、単位容積当たりの前記菊の切り花の本数が、0.1本/m3~2.0本/m3である<1>~<3>のいずれか1つに記載の菊の切り花の初期包装体。
<5> 前記包装部材は、23℃、0%RHにおける二酸化炭素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~90,000cm3/m2・day・atmであり、23℃、0%RHにおける酸素透過度が2,500cm3/m2・day・atm~30,000cm3/m2・day・atmである<1>~<4>のいずれか1つに記載の菊の切り花の初期包装体。
<6> 前記包装部材は、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が5cm3/m2・day・atm~100cm3/m2・day・atmである<1>~<5>のいずれか1つに記載の菊の切り花の初期包装体。
<7> 前記包装部材が、ポリオレフィン及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む高分子フィルムである<1>~<6>のいずれか1つに記載の菊の切り花の初期包装体。
<8> 前記包装部材が、不織布層とポリオレフィン層とを含む積層フィルムである<1>~<7>のいずれか1つに記載の菊の切り花の初期包装体。
<9> 容積が、0.5m3~10m3である<1>~<8>のいずれか1つに記載の菊の切り花の初期包装体。
<10> パレットと、前記パレットの上に積載された菊の切り花を含む収納箱と、包装部材と、を含み、前記包装部材は前記パレット及び前記収納箱の全体を包装しており、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である菊の切り花の包装体。
<11> 前記菊の呼吸商が0.5~2.0である<10>に記載の菊の切り花の包装体。
<12> 包装体において、単位容積当たりの前記菊の切り花の本数が、0.1本/m3~2.0本/m3である<10>又は<11>に記載の菊の切り花の包装体。
<13> 前記包装部材は、23℃、0%RHにおける二酸化炭素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~90,000cm3/m2・day・atmであり、23℃、0%RHにおける酸素透過度が2,500cm3/m2・day・atm~30,000cm3/m2・day・atmである<10>~<12>のいずれか1つに記載の菊の切り花の包装体。
<14> 前記包装部材は、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が5cm3/m2・day・atm~100cm3/m2・day・atmである<10>~<13>のいずれか1つに記載の菊の切り花の包装体。
<15> 前記包装部材が、ポリオレフィン及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む高分子フィルムである<10>~<14>のいずれか1つに記載の菊の切り花の包装体。
<16> 前記包装部材が、不織布層とポリオレフィン層とを含む積層フィルムである<10>~<15>のいずれか1つに記載の菊の切り花の包装体。
<17> 容積が、0.5m3~10m3である<10>~<16>のいずれか1つに記載の菊の切り花の包装体。
<18> <1>~<9>のいずれか1つに記載の菊の切り花の初期包装体を保管することにより、内部において、酸素濃度を0体積%~20体積%とし、二酸化炭素濃度を0体積%~12体積%として、<10>~<17>のいずれか1つに記載の菊の切り花の包装体を製造する工程を含む菊の切り花の包装体の製造方法。
<19> 前記初期包装体を保管する際、保管温度が1℃~20℃である<18>に記載の菊の切り花の包装体の製造方法。
<20> <10>~<17>のいずれか1つに記載の菊の切り花の包装体の内部において、酸素濃度及び二酸化炭素濃度を測定する工程と、測定された前記酸素濃度及び前記二酸化炭素濃度から菊の切り花の鮮度を確認する工程と、を含む菊の切り花の鮮度確認方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施態様によれば、菊の切り花において、花弁の褐変並びに葉の萎れ及び変色を抑制し、長期間保管することができる菊の切り花の初期包装体、菊の切り花の包装体、菊の切り花の包装体の製造方法及び菊の切り花の鮮度確認方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】包装部材によりパレット及び収納箱の全体が包装されている状態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、材料中の各成分の量は、材料中の各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、材料中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
≪菊の切り花の初期包装体≫
本開示の菊の切り花の初期包装体(単に、初期包装体ともいう。)は、パレットと、パレットの上に積載された菊の切り花を含む収納箱と、包装部材と、を含み、包装部材はパレット及び収納箱の全体を包装しており、包装後400時間経過した場合に、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である。
【0014】
本開示の菊の切り花の初期包装体は、上記構成を含むことで、菊の切り花において、花弁の褐変並びに葉の萎れ及び変色を抑制し、長期間保管することができる。
従来は、一般的に菊の切り花を輸送するために、数束の菊をまとめて袋に入れ、脱気して梱包していた。この場合、梱包に時間と手間がかかり効率性に劣っていた。
本開示の菊の切り花の初期包装体では、パレットを用意して、パレットの上に菊の切り花が収納された収納箱を複数個積載する。そして、パレットと積載された収納箱の全体を包装部材で包装する(本明細書中、パレット包装ともいう。)。これによって、大量の菊を一度に梱包することができるため、効率的である。
初期包装体は、パレット包装による包装後400時間経過した場合に、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%であることで、菊の切り花において、花弁の褐変並びに葉の萎れ及び変色を抑制し、長期間保管することができる。
【0015】
≪菊の切り花の包装体≫
本開示の菊の切り花の包装体(単に、包装体ともいう。)は、パレットと、パレットの上に積載された菊の切り花を含む収納箱と、包装部材と、を含み、包装部材はパレット及び収納箱の全体を包装しており、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である。
【0016】
本開示の包装体は、上記構成を含むことで、菊の切り花において、花弁の褐変並びに葉の萎れ及び変色を抑制し、長期間保管することができる。
本開示の包装体は、例えば、本開示の初期包装体を一定時間保管することにより、得ることができる。
保管時間としては、200時間~500時間であってもよく、300時間~450時間であってもよく、400時間であってもよい。
本開示において、初期包装体及び包装体を包装体等ともいう。
【0017】
包装体等は、容積に特に制限はない。
例えば、初期包装体及び包装体は、容積が、0.5m3~10m3であることが好ましく、1m3~9m3であることがより好ましく、3m3~8m3であることがさらに好ましい。
【0018】
<菊>
本開示における菊の切り花は、パレットの上に積載された収納箱に含まれる。
本開示において保管の対象となる菊には、「菊」の名称で一般に流通する品種(大菊、中菊、小菊、スプレー菊等)のほか、ヒマワリ、ガーベラ、マーガレット、ダリア等の菊に近い種も含まれる。
本開示の包装部材で包装される菊の切り花は、水揚げ前の状態であり、かつ葉及び花弁が開いていないことが好ましい。
【0019】
一般的に、収穫後の菊の切り花は、時間が経過するにしたがって、青みがかった緑から黄色へと変色する。本開示の方法によれば、長期間の保管を行った後であっても、菊の切り花は青みがかった緑に近い色を示す状態を維持することができる。
【0020】
(呼吸商の傾き)
本開示において、花弁の褐変並びに葉の萎れ及び変色を抑制し、長期間保管する観点から、包装部材によりパレット及び収納箱の全体を包装して包装後400時間経過した場合に、包装後50時間経過時点から400時間経過時点までにおいて、菊の呼吸商の傾きが、-0.0010~0.0020であることが好ましく、-0.0005~0.0010であることがより好ましく、-0.0001~0.0005であることがさらに好ましい。
【0021】
包装後50時間経過時点から400時間経過時点までにおける菊の呼吸商の傾きは、以下の通り算出する。
呼吸商の傾き=(400時間経過時点の呼吸商-50時間経過時点の呼吸商)/(400-50)
【0022】
(呼吸商)
本開示において、花弁の褐変並びに葉の萎れ及び変色を抑制し、長期間保管する観点から、菊の呼吸商は0.5~2.0であることが好ましい。
本開示において、呼吸商とは、ある時間において生体内で栄養素が分解されてエネルギーに変換されるまでの酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の体積比を意味する。
【0023】
菊の呼吸商が0.5以上であることで、菊が酸素を多く消費して、好気呼吸状態を維持することができる。
上記の観点から、菊の呼吸商が、0.7以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。
菊の呼吸商が2.0以下であることで、酸素消費量を確保して好気呼吸状態を維持することができる。
上記の観点から、菊の呼吸商が、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。
【0024】
呼吸商は、二酸化炭素の排出量/酸素の消費量で表される。
二酸化炭素排出量及び酸素消費量は、包装体等内の酸素濃度及び二酸化炭素濃度の変化値を実測することができ、例えば日本食品低温保蔵学会誌VOL.22 NO.3 1996や農業食料工学会誌 77(1):19~27,2015に記載の方法から算出することもできる。
呼吸商は、Michaelis Mentenの式を用いた場合、例えば下記のようなステップで算出することが出来る。
具体的には、以下の通りである。
【0025】
菊の呼吸シミュレーションでは呼吸モデルに(1)~(5)のMichaelis Menten理論に基づいたモデル(MMモデルともいう)を使用する。
また,温度の影響による呼吸量の変化は(6)のアレニウス式でモデル化する。このため、菊の単位質量当たりの酸素消費速度及び二酸化炭素生成速度は、包装体等内ガスの酸素濃度、二酸化炭素濃度及び温度によって決定される。
MMモデルの各パラメータ及びアレニウス式の活性化エネルギーは実験結果を基に定める。実験手法は光透過性の袋を用いた手法で測定した酸素濃度、二酸化炭素濃度の時系列変化から呼吸量を算出する。
この計算は、例えばExcelで実施してもよく、測定した酸素濃度値、二酸化炭素濃
度値のガス構成における呼吸速度からMMモデルのパラメータ同定を実施してもよい。
【0026】
シミュレーションでは,呼吸モデルとしてMichaelis-Menten(MM)タイプの式を用いる。(1)~(5)に参照温度での各モデルを示す。なお、呼吸モデル式における添字jは酸素又は二酸化炭素のどちらかである。
以下に、各式を示す。
【0027】
・Michaelis Menten(MM),式1
【0028】
【0029】
rref,j:参照温度での呼吸速度[m3kg-1s-1]
t:時間[s]
αj:最大反応速度[m3kg-1s-1]
yO2:酸素濃度
φj:ミカエリス定数[%]
【0030】
・Michaelis Menten competitive(MMC,競合阻害),式2
【0031】
【0032】
rref,j:参照温度での呼吸速度[m3kg-1s-1]
t:時間[s]
αj:最大反応速度[m3kg-1s-1]
yO2:酸素濃度
φj:ミカエリス定数[%]
yCO2:二酸化炭素濃度
γc,j:阻害定数[%]
【0033】
・Michaelis-Menten uncompetitive(MMU,不競合阻害),式3
【0034】
【0035】
rref,j:参照温度での呼吸速度[m3kg-1s-1]
t:時間[s]
αj:最大反応速度[m3kg-1s-1]
yO2:酸素濃度
φj:ミカエリス定数[%]
yCO2:二酸化炭素濃度
γu,j:不阻害定数[%]
【0036】
・Michaelis Menten non-competitive (MMN、非競合阻害)、式4
【0037】
【0038】
rref,j:参照温度での呼吸速度[m3kg-1s-1]
t:時間[s]
αj:最大反応速度[m3kg-1s-1]
yO2:酸素濃度
φj:ミカエリス定数[%]
yCO2:二酸化炭素濃度
γn,j:非阻害定数[%]
【0039】
・Michaelis-Mentencombination of competitive and uncompetitive(MMUN,非競合阻害)、式5
【0040】
【0041】
rref,j:参照温度での呼吸速度[m3kg-1s-1]
t:時間[s]
αj:最大反応速度[m3kg-1s-1]
yO2:酸素濃度
φj:ミカエリス定数[%]
yCO2:二酸化炭素濃度
γc,j:阻害定数[%]
ti:初期時、添字iはinitial(初期)である。
γn,j:非阻害定数[%]
【0042】
・アレニウス式(温度による呼吸モデルの補正)、式6
【0043】
【0044】
rj:呼吸速度[m3kg-1s-1]、添字jはO2又はCO2のどちらかである。
t:時間[s]
rref,j:参照温度での呼吸速度[m3kg-1s-1]
Er,j:活性化エネルギー(呼吸速度)[Jmol-1]
R:気体定数[JK-1mol-1]
TF:菊の温度[K]
TF,ref:菊の参照温度[K]
【0045】
・(測定ガス濃度からの呼吸速度の算出)、式7
A1,B1,C1,D1をパラメータとして、左辺の濃度を測定濃度にフィッティングする。
【0046】
【0047】
YO2:酸素濃度[%]
t:時間[s]
A1:32.47007
B1:0.963
C1:0.00017
D1:0
【0048】
式8も式7と同様のフィティングを実施し,A1,B1,C1,D1,A2,B2,C2,D2を定める。
【0049】
【0050】
YCO2:二酸化炭素濃度[%]
t:時間[s]
A2:312.67
B2:0.670826
C2:0
D2:7.2315503
【0051】
(式7を時間微分した式)、式9
(式8を時間微分した式)、式10
予め定めたA1,B1,C1,D1,A2,B2,C2,D2を用いて、酸素濃度及び二酸化炭素濃度の変化量を算出する。
【0052】
【0053】
【0054】
(式9及び包装体のガス透過量から呼吸速度を算出する式)、式11
(式10及び包装体のガス透過量から呼吸速度を算出する式)、式12
【0055】
【0056】
rO2:酸素呼吸速度
YO2:酸素濃度[%]
t:時間[s]
VH:包装体内混合気体体積[m3]
WF:菊質量[kg]、添字Fは菊
Ap:包装フィルムの表面積[m2]
QO2:二酸化炭素透過率[m3m-2atm-1d-1]
yO2:酸素濃度
L:包装フィルムの厚み[m]
ρH:包装フィルム内ガス全圧[Pa]、添字Hはヘッドスペース(つまりheadspace)
【0057】
【0058】
rCO2:二酸化炭素呼吸速度
YCO2:二酸化炭素濃度[%]
t:時間[s]
VH:包装体内混合気体体積[m3]
WF:菊質量[kg]、添字Fは菊
Ap:包装フィルムの表面積[m2]
QCO2:二酸化炭素透過率[m3m-2atm-1d-1]
L:包装フィルムの厚み[m]
ρH:包装フィルム内ガス全圧[Pa]、添字Hはヘッドスペース
【0059】
式11及び式12の各測定濃度値における呼吸速度と呼吸モデルの呼吸速度とをフィッティングし,各MMタイプモデルのパラメータを同定する。
呼吸商は、二酸化炭素呼吸速度rCO2を、酸素呼吸速度rO2で割った値と定義する。
【0060】
初期包装体及び包装体において、単位容積当たりの菊の切り花の本数が、0.1本/m3~2.0本/m3であることが好ましく、0.2本/m3~1.5本/m3であることが好ましく、0.4本/m3~1.1本/m3であることが好ましく、
【0061】
<パレット>
本開示の初期包装体は、パレットを含み、パレットの上には菊の切り花を含む収納箱が積載される。
【0062】
本開示におけるパレットとしては、特に制限はない。例えば、木製パレット、合成樹脂製パレット、金属製パレット、紙製パレット等が挙げられる。
なお、本開示においてパレットとは、平板形状の部材の平面の少なくとも一部と、他の平板形状の部材の平面の少なくとも一部とが、脚部を介して連結されている部材を意味する。
パレットの上に菊の切り花を含む収納箱を積載することによって、例えば、平板形状の部材の面上に菊の切り花を含む収納箱を載せ、パレットの脚部と脚部との間にフォークリフト、ハンドリフト等の爪を差し込んで持ち上げることができ、運搬の際に利便性が向上する。
【0063】
本開示における収納箱としては特に制限はない。収納箱としては、例えば、段ボール、木箱等であってもよい。
【0064】
<包装部材>
本開示における包装部材は、パレット及び収納箱の全体を包装している。
本開示における包装部材は、パレット及び収納箱の全体を包装して、包装後400時間経過した場合に、内部において、酸素濃度を0体積%~20体積%とし、二酸化炭素濃度を0体積%~12体積%とすることができれば、特に制限はない。
上記の所望のガス濃度を達成する観点から、包装部材は適宜選択することができる。
【0065】
(二酸化炭素透過度)
本開示の包装部材は、23℃、0%RHにおける二酸化炭素透過度が、好ましくは10,000cm3/m2・day・atm~90,000cm3/m2・day・atmであり、より好ましくは20,000cm3/m2・day・atm~80,000cm3/m2・day・atmであり、さらに好ましくは30,000cm3/m2・day・atm~70,000cm3/m2・day・atmである。
二酸化炭素透過度が上記範囲内であると、包装体内部で菊の切り花の呼吸により増加した二酸化炭素が外部に放出されて二酸化炭素濃度が適切に調節され、酸欠による腐敗等が抑制される。
【0066】
上記二酸化炭素透過度は、差圧法ガス透過率測定装置(GTR-30XA、GTRテック(株)を使用して、23℃、0%RHの環境下、試験ガス(CO2)100%、試験面積15.2cm2として測定される値である。
【0067】
(酸素透過度)
本開示の包装部材は、23℃、0%RHにおける酸素透過度が、好ましくは2,500cm3/m2・day・atm~30,000cm3/m2・day・atmであり、より好ましくは5,000cm3/m2・day・atm~25,000cm3/m2・day・atmであり、さらに好ましくは7,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmである。
酸素透過度が上記範囲内であると、包装体内部の酸素濃度を低い状態に維持でき、菊の切り花の呼吸を抑制することができる。また、呼吸により減少した酸素が外部から供給されて最低限必要な酸素濃度が維持される。
【0068】
上記酸素透過度は、差圧法ガス透過率測定装置(GTR-30XA、GTRテック(株)を使用して、23℃、0%RHの環境下、試験ガス(O2)100%、試験面積15.2cm2として測定される値である。
【0069】
本開示における包装部材は、23℃、0%RHにおける二酸化炭素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~90,000cm3/m2・day・atmであり、23℃、0%RHにおける酸素透過度が2,500cm3/m2・day・atm~30,000cm3/m2・day・atmであることが好ましい。
【0070】
(水蒸気透過度)
本開示における包装部材は、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が、好ましくは5cm3/m2・day・atm~100cm3/m2・day・atmであり、より好ましくは10cm3/m2・day・atm~70cm3/m2・day・atmであり、さらに好ましくは20cm3/m2・day・atm~50cm3/m2・day・atmである。
水蒸気透過度が上記範囲内であると、包装体内部の乾燥による菊の切り花のしおれ又は過湿による蒸れが生じにくく、良好な状態が維持される。
【0071】
上記水蒸気透過度は、差圧法ガス透過率測定装置(GTR-30XA、GTRテック(株)を使用して、40℃、90%RHの環境下、試験ガス(O2)100%、試験面積15.2cm2として測定される値である。
【0072】
本開示の包装部材において、外部からの細菌等の侵入の原因となりうる細孔の数は、少ないほど好ましい。具体的には、最大径50μm以上の孔が1m2あたり1個以下であることが好ましい。
【0073】
本開示の包装部材の材料は、特に制限されない。
包装部材の材料としては、例えばポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
【0074】
包装部材は、ポリオレフィン及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む高分子フィルムであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む高分子フィルムであることがより好ましい。
【0075】
包装部材は4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を有する重合体(以下、4-メチル-1-ペンテン系重合体ともいう)を含むことが好ましい。
4-メチル-1-ペンテン系重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の他のポリオレフィンに比べてかさ高い分子構造を有するため密度が低く、高いガス透過性を示す。このため、包装部材の材料として好適に使用できる。
【0076】
4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位のみからなる単独重合体であっても、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位と、4-メチル-1-ペンテン以外の成分に由来する構成単位とを含む共重合体であってもよい。
4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の成分に由来する構成単位との比率を変更することで、包装部材の二酸化炭素透過度及び酸素透過度を所望の範囲に調節することができる。
【0077】
4-メチル-1-ペンテン系重合体が4-メチル-1-ペンテン以外の成分に由来する構成単位を含む共重合体である場合、4-メチル-1-ペンテン以外の成分としては、エチレン又は炭素原子数が3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)が好ましく挙げられる。
【0078】
炭素原子数が3~20のα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
これらの中でも、入手性の観点からはプロピレンが好ましく、包装部材に低温でのヒートシール性を付与する観点からは1-ブテンが好ましい。
【0079】
4-メチル-1-ペンテン系重合体を合成する方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。4-メチル-1-ペンテン系重合体を合成する際に4-メチル-1-ペンテン以外の成分を用いる場合、4-メチル-1-ペンテン以外の成分として1種のみを用いても2種以上を用いてもよい。
【0080】
包装部材は、4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含むものであってもよい。
包装部材に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とのブレンド比を変更することで、包装部材の二酸化炭素透過度及び酸素透過度を所望の範囲に調節することができる。
【0081】
包装部材が4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含む場合、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体としては、ポリオレフィンが好ましく、エチレン又は炭素原子数が3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)の単独重合体又は共重合体がより好ましい。
【0082】
炭素原子数が3~20のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体として具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
これらの中でも、入手性の観点からはプロピレンの単独重合体又は共重合体(プロピレン系重合体)が好ましく、包装部材に低温でのヒートシール性を付与する観点からは1-ブテンの単独重合体又は共重合体(1-ブテン系重合体)が好ましい。
【0083】
包装部材が4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含む場合、これらの重合体をブレンドする方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。包装部材が4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含む場合、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体として1種のみを用いても2種以上を用いてもよい。
【0084】
包装部材は、単層構造でも、多層構造であってもよい。例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体はガス透過性に優れる一方で融点が高く低温でのヒートシール性が充分でない場合がある。このため、包装部材は、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む層に加え、低温でのヒートシール性に優れる層を備える積層体であってもよい。
【0085】
包装部材の厚みは、特に制限されない。強度及び取り扱い性の観点からは、10μm~100μmの範囲から選択してもよい。
【0086】
本開示における包装部材は、複数の層が積層された積層フィルムであることが好ましく、不織布層とポリオレフィン層とを含む積層フィルムであることがより好ましい。
これによって、積層フィルムのガス透過性を良好に維持しつつ、フィルムの強度を向上させることができる。
【0087】
不織布層は、目付が5g/m2~200g/m2であることが好ましく、10g/m2~100g/m2であることがより好ましく、15g/m2~60g/m2であることがさらに好ましい。
【0088】
ポリオレフィン層の平均厚みは5μm以上30μm未満であることが好ましく、13μm以上26μm以下であることがより好ましい。これにより、例えば包装部材を製袋する際に、ポリオレフィン層(ii)同士をヒートシールする場合に十分な強度が得られる。
【0089】
本開示における積層フィルムは、網目状構造を有する熱可塑性樹脂層(i)とポリオレフィン層(ii)とを含むことがさらに好ましい。
【0090】
なお、ポリオレフィン層(ii)フィルムを製造する際、ポリオレフィン層(ii)フィルムの搬送方向をMD(Machine Direction)方向と称し、フィルム搬送方向と直交する方向をTD(Transverse Direction)方向と称する。
【0091】
積層フィルムのMD方向及びTD方向のうち少なくとも一方向の引張最大荷重は20N/25mm以上350N/25mm以下であることが好ましい。
引張最大荷重が20N/25mm以上であることによって、強度に優れ、包装作業性に優れた積層フィルムを提供することができる。
積層フィルムの強度及び包装作業性の観点から、MD方向及びTD方向の両方にて、引張最大荷重は前述の範囲を満たすことがより好ましい。
【0092】
また、前述の引張最大荷重が350N/25mm以下であることによって、保管後に鮮度保持包装体から内包物を取り出す際に、鮮度保持包材を破き易くなる。
同様の観点で、MD方向及びTD方向のうち少なくとも一方向の引張最大荷重は30N/25mm以上250N/25mm以下であることがより好ましい。
【0093】
網目状構造を有する熱可塑性樹脂層(i)を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン又はポリエチレンテレフタレートが好ましい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン又はα-オレフィン共重合体が好ましく、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン-α-オレフィン共重合体がより好ましく、高密度ポリエチレン又はポリプロピレンがさらに好ましく、高密度ポリエチレンが特に好ましい。
網目状構造を有する熱可塑性樹脂層(i)を構成する熱可塑性樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクテンからなる群より選択される2つ以上のモノマーの共重合体が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクテンからなる群より選択される1つ以上のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0095】
網目状構造を有する熱可塑性樹脂層(i)は、ポリオレフィン層(ii)との接着性を向上させるために、高密度ポリエチレンに低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等を積層して形成されてもよい。
ポリオレフィン層(ii)として水蒸気透過度の高いポリエチレンを用いる場合などにおいて、網目状構造を有する熱可塑性樹脂層(i)とポリオレフィン層(ii)との接着性の観点から、網目状構造を有する熱可塑性樹脂層(i)はポリエチレンであることが好ましい。
網目状構造を有する熱可塑性樹脂層(i)とポリオレフィン層(ii)との接着性を高めるため、網目状構造を有する熱可塑性樹脂層(i)は、芯鞘構造を有する熱可塑性樹脂により形成されることが好ましい。
芯鞘構造としては、例えば、芯部分を高密度ポリエチレンとし、鞘部分である表面を低密度ポリエチレンで覆う態様であってもよい。
【0096】
ポリオレフィン層(ii)を構成するポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン又はα-オレフィン共重合体が好ましく、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン-α-オレフィン共重合体がより好ましい。
ポリオレフィン層(ii)におけるα-オレフィン共重合体及びエチレン-α-オレフィン共重合体の例としては、前述の網目状構造を有する熱可塑性樹脂層(i)におけるα-オレフィン共重合体及びエチレン-α-オレフィン共重合体の例と同様である。
ポリオレフィン層(ii)を構成するポリオレフィン樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
ポリオレフィン層(ii)の材料としては、低密度ポリエチレン、又は、線状低密度ポリエチレンであることがさらに好ましい。
【0098】
ポリオレフィン層(ii)はスリップ剤を含有することが好ましい。
スリップ剤は、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和もしくは不飽和脂肪酸のアミド、又はこれらの飽和もしくは不飽和脂肪酸のビスアマイドであることが好ましい。これらのうち、エルカ酸アミド及びエチレンビスステアロアマイドがより好ましい。
【0099】
スリップ剤の含有量は、ポリオレフィン層(ii)に含まれるポリオレフィン樹脂100質量部に対し、通常、0.01質量部~5質量部の範囲で配合されることが好ましい。
【0100】
不織布層とポリオレフィン層とを積層する方法としては、例えば、押出機から押し出されたフィルムと、搬送されたフィルムとを貼り合わせる押出ラミネート、熱圧着ローラを用いた熱圧着、2枚のフィルムを接着剤層及び必要に応じてアンカーコート層を用いて貼り合わせる方法などが挙げられる。
【0101】
不織布層とポリオレフィン層とを積層する方法としては、ガス透過性の観点から、接着剤を用いる方法であることが好ましい。接着剤を用いることによりポリオレフィン層と貼り合わせる際に不織布層が高温で潰れることを抑制しガス透過性を高く維持できる。
【0102】
接着剤としては、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等が挙げられる。
ホットメルト接着剤としては、例えば、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系等の樹脂系接着剤、スチレン-ブタジエン系、スチレン-イソプレン系等のゴム系接着剤などが挙げられる。
接着剤は、樹脂系接着剤であることが好ましく、酢酸ビニル系接着剤であることがより好ましい。接着剤の塗布量としては、接着力及びポリオレフィン層のガス透過性の観点から、1g/m2~10g/m2であることが好ましく、1g/m2~5g/m2であることがより好ましい。
【0103】
<酸素濃度、二酸化炭素濃度>
本開示の初期包装体は、包装部材がパレット及び収納箱の全体を包装しており、包装後400時間経過した場合に、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である。
本開示の包装体は、包装部材がパレット及び収納箱の全体を包装しており、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である。
本開示の包装体における酸素濃度及び二酸化炭素濃度は、本開示の初期包装体を一定時間保管することにより、得ることができる。
保管時間としては、200時間~500時間であってもよく、300時間~450時間であってもよく、400時間であってもよい。
【0104】
酸素濃度が0体積%~20体積%であることで、菊の呼吸速度を抑制することができるため、クロロフィルの分解を抑制することができる。その結果、菊の切り花において、花芯の黄化及び褐変を抑制し、長期間保管することができる。
上記同様の観点から、酸素濃度は、1体積%~20体積%であってもよく、2体積%~15体積%であることが好ましく、4体積%~13体積%であることがより好ましく、7体積%~12体積%であることがさらに好ましい。
【0105】
二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%であることで、菊の酸欠による腐敗、カビの発生等を抑制することができる。
上記の観点から、二酸化炭素濃度は、0.5体積%~10体積%であることが好ましく、2体積%~9体積%であることがより好ましく、4体積%~8体積%であることがさらに好ましい。
【0106】
本開示の初期包装体の内部は、包装後200時間~500時間経過まで、酸素又は二酸化炭素の濃度が上記範囲内であることが好ましい。
包装体の作製時に充填するガスの組成は、無調整(大気)であっても、調整されていてもよい。経済性の観点からは、無調整であることが好ましい。
【0107】
≪菊の切り花の包装体の製造方法≫
本開示の菊の切り花の包装体の製造方法(単に、包装体の製造方法ともいう。)は、本開示の初期包装体を保管することにより、内部において、酸素濃度を0体積%~20体積%とし、二酸化炭素濃度を0体積%~12体積%として、本開示の包装体を製造する工程を含む。
【0108】
本開示の包装体における酸素濃度及び二酸化炭素濃度は、本開示の初期包装体を一定時間保管することにより、得ることができる。
保管時間としては、200時間~500時間であってもよく、300時間~450時間であってもよく、400時間であってもよい。
酸素濃度及び二酸化炭素濃度の好ましい範囲は、上述の範囲と同様である。
【0109】
菊の切り花の鮮度を良好に維持する観点から、初期包装体を保管する際、保管温度が1℃~20℃であることが好ましく、1℃~10℃であることがより好ましく、1℃~5℃であることがさらに好ましい。
【0110】
包装体を所定の温度の環境下で保管する方法としては、例えば、庫内温度を所定の温度に設定した保管庫内で包装体を保管する方法が挙げられる。保管は、菊の輸送を伴うものであってもよい。
【0111】
包装体の内部は、相対湿度が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。包装体の内部の相対湿度が50%以上であると菊の切り花が乾燥によりしおれにくい傾向にある。包装体の内部の相対湿度の上限は特に制限されないが、腐敗防止の観点からは内部に過剰な結露が生じない程度であることが好ましい。
【0112】
本開示の初期包装体及び包装体によれば、長期間にわたって菊の切り花を保管することも可能である。
したがって、例えば、海外の産地から日本国内への菊の輸送にも適している。保管の期間は、例えば、5日以上であってもよく、10日以上であってもよく、21日以上であってもよく、28日以上であってもよい。
【0113】
≪菊の切り花の鮮度確認方法≫
本開示の菊の切り花の鮮度確認方法(単に、鮮度確認方法ともいう。)は、本開示の包装体の内部において、酸素濃度及び二酸化炭素濃度を測定する工程(測定工程ともいう。)と、測定された酸素濃度及び二酸化炭素濃度から菊の切り花の鮮度を確認する工程(確認工程ともいう。)と、を含む。
【0114】
<測定工程>
測定工程は、本開示の包装体の内部において、酸素濃度及び二酸化炭素濃度を測定する工程である。
酸素濃度及び二酸化炭素濃度は、CheckPoint3(MOCON-DANSENSOR)を用いて測定することができる。
【0115】
<確認工程>
確認工程は、測定された酸素濃度及び二酸化炭素濃度から菊の切り花の鮮度を確認する工程である。
菊の切り花は、測定された酸素濃度及び二酸化炭素濃度が下記の範囲を満たす場合に、優れた鮮度を維持することができる。
・酸素濃度:0体積%~20体積%
・二酸化炭素濃度:0体積%~12体積%
酸素濃度及び二酸化炭素濃度が上記範囲を満たす場合には、菊の呼吸商が0.5~2.0(好ましくは0.8~1.2)の範囲となりやすく、菊の切り花が鮮度を維持することができる。
【実施例0116】
以下、本開示に係る実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお本開示の発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0117】
〔包装部材の準備〕
菊の切り花を保管する包装部材として、下記の包装部材1及び包装部材2を準備した。
包装部材1及び包装部材2の物性を表1に示す。
【0118】
(包装部材1)
ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布(三井化学株式会社製、シンテックスPS-106、目付量:30g/m2、厚み:280μm)と、線状低密度ポリエチレンフィルム(フタムラ化学株式会社製LL-XMTN、厚み:20μm)とを、ホットメルト接着剤(塗布量:4.0g/m2)で貼り合わせて、包装部材を得た。
包装部材1は、不織布層とポリエチレン(PE)層とを含む積層フィルムである。
【0119】
(包装部材2)
三井化学東セロ株式会社製 銘柄スパッシュ(NFHC-SP)、厚み30μm、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)
【0120】
〔測定及び評価〕
(酸素濃度、二酸化炭素濃度)
酸素濃度及び二酸化炭素濃度は、CheckPoint3(MOCON-DANSENSOR)を用いて測定した。
【0121】
(呼吸商)
菊の呼吸商は、上述の方法で測定した。
菊の呼吸商の傾きについても上述の方法で測定した。
【0122】
(実施例1)
〔包装体の作製〕
包装部材1を用いて、長さ1110mm×奥行1110mm×高さ1300mm3の袋を作製した。菊を100本入れた収納箱(段ボール製、長さ810mm×奥行370mm×高さ170mm、容積50949cm3)を表1に記載の個数用意し、長さ1110mm×奥行1110mmの樹脂パレット上に、1段あたり3箱で表1に記載の段数を積載した。
【0123】
包装部材1の袋を用いて、菊を収納した収納箱が積載されたパレットを包装した。
具体的には、菊を収納した収納箱が積載されたパレットに両面テープを付けた後、積載された段ボール箱側(つまり上部側)から、収納箱及びパレットの全体を覆うように包装部材を被せた。両面テープを1辺ずつ剥がし、両面テープを介して包装部材とパレットとを接着させた。両面テープで仮止めした包装部材の上から養生テープでさらに固定し、密閉することで初期包装体を作製した。
図1は、包装部材によりパレット及び収納箱の全体が包装されている状態を表す概略図である。
図1に示す通り、本実施例の包装体等は、包装部材101によりパレット103及び収納箱102の全体が包装されている。
【0124】
〔保管条件〕
得られた初期包装体を2℃に設定した保管庫で400時間保管した。なお、保管後の初期包装体は本開示の包装体に相当し得る。
その後、開封直前の包装体内部における酸素濃度及び二酸化炭素濃度を測定し、菊の呼吸商を算出した。
【0125】
(実施例2~実施例5、比較例1、比較例2)
包装部材の種類を表1に記載の通りに変更し、収納箱の積載段数を表1に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で初期包装体を保管した。
【0126】
保管終了後、開封して菊の状態を目視観察し品質を確認した。
~評価~
〔花芯の変色〕
花芯の変色について、下記の評価基準に従って目視により評価した。結果を表1に示す。なお、花芯の色調について「緑色鮮やか」であることは、保管方法が良好であることを意味する。
-評価基準-
4:花芯が鮮やかな緑色であった。
3:花芯が緑色であるが、やや色あせがあった。
2:花芯の全面積の1/2以上が黄化していた。
1:花芯が褐変していた。
【0127】
〔花弁の褐変〕
花弁の褐変について、下記の評価基準に従って目視により評価した。結果を表1に示す。なお、花弁の色調について「褐変が確認できない」ことは、保管方法が良好であることを意味する。
-評価基準-
4:全花弁において、褐変が確認できなかった。
3:全花弁中、数枚が褐変していた。
2:全花弁中、1/3以上1/2未満の花弁が褐変していた。
1:全花弁中、1/2以上の花弁が褐変していた。
【0128】
〔葉のしおれ〕
葉のしおれについて、下記の評価基準に従って目視により評価した。結果を表1に示す。なお、葉の状態について「張りがある」ことは、保管方法が良好であることを意味する。
-評価基準-
4:葉全体として張りがあった。
3:葉全体として触覚的及び視覚的にやや張りを失っている部分があった。
2:葉全体中、萎れている部分があった。
1:葉全体として萎れており、垂れ下がっていた。
【0129】
〔葉の色〕
葉の色について、下記の評価基準に従って目視により評価した。結果を表1に示す。なお、葉の色調が「黄変・褐変の発生なし」であることは、保管方法が良好であることを意味する。
-評価基準-
4:葉全体として黄変及び褐変が確認できなかった。
3:葉全体中、数枚の葉の輪郭にやや褐変が確認できた。
2:茎葉に黄変及び褐変が確認できた。
1:葉全体として黄変及び褐変が確認でき、下葉が枯れていた。
【0130】
【0131】
表1に示すように、上記実施例に係る包装体は、パレットと、パレットの上に積載された菊の切り花を含む収納箱と、包装部材と、を含み、包装部材はパレット及び収納箱の全体を包装しており、包装後400時間経過した場合に、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である初期包装体であり、かつ、
パレットと、パレットの上に積載された菊の切り花を含む収納箱と、包装部材と、を含み、包装部材はパレット及び収納箱の全体を包装しており、内部において、酸素濃度が0体積%~20体積%であり、二酸化炭素濃度が0体積%~12体積%である包装体でもある。
実施例は、花芯の変色、花弁の褐変、葉のしおれ及び葉の色の評価に優れていた。そのため、実施例は、菊の切り花において、花弁の褐変並びに葉の萎れ及び変色を抑制し、長期間保管することができた。
一方、包装後400時間経過した際に、内部において、二酸化炭素濃度が12体積%超であった比較例1及び比較例2は、花芯の変色、花弁の褐変、葉のしおれ及び葉の色の評価に劣っていた。そのため、実施例は、菊の切り花において、花弁の褐変並びに葉の萎れ及び変色を抑制し、長期間保管することができなかった。