(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095576
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル及びバルーンカテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20230629BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61M25/10 530
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211548
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雅臣
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK47
4C160MM38
4C267AA06
4C267BB62
4C267EE05
(57)【要約】
【課題】バルーンの実際の表面温度と温度センサで実測した温度に基づく推定表面温度との間のずれを抑制すること。
【解決手段】バルーンカテーテルは、バルーンと、カテーテルシャフトと、温度センサと、加熱部材と、相対移動制限部材と、を備えている。カテーテルシャフトは、バルーンの近位端に接続した外筒シャフトと、バルーン内に延び出してバルーンの遠位端に接続した内筒シャフトとを有している。内筒シャフトは、外筒シャフト内を通る。内筒シャフトと外筒シャフトとの間隙は、バルーンの内部空間に通じる送液路を成す。温度センサは、外筒シャフトと内筒シャフトとの間に配置されている。加熱部材は、バルーン内において内筒シャフトの外周面上に配置されバルーン内の液体を加熱する。相対移動制限部材は、外筒シャフトの遠位端が加熱部材に接近する方向での外筒シャフトの内筒シャフトに対する相対移動を制限する。
【選択図】
図15A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンと、カテーテルシャフトと、温度センサと、加熱部材と、相対移動制限部材と、を備え、
前記カテーテルシャフトは、前記バルーンの近位端に接続した外筒シャフトと、前記バルーン内に延び出して前記バルーンの遠位端に接続した内筒シャフトとを有し、該内筒シャフトは、前記外筒シャフト内を通り、かつ、前記内筒シャフトと前記外筒シャフトとの間隙は、前記バルーンの内部空間に通じる送液路を成し、
前記温度センサは、前記外筒シャフトと前記内筒シャフトとの間に配置され、
前記加熱部材は、前記バルーン内において前記内筒シャフトの外周面上に配置され前記バルーン内の液体を加熱し、
前記相対移動制限部材は、前記外筒シャフトの遠位端が前記加熱部材に接近する方向での前記外筒シャフトの前記内筒シャフトに対する相対移動を制限する、バルーンカテーテル。
【請求項2】
前記相対移動制限部材は、前記外筒シャフトの遠位端と前記加熱部材の近位端との距離が3mm以上となるように、前記外筒シャフトの前記内筒シャフトに対する相対移動を制限する、請求項1記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記相対移動制限部材は、前記外筒シャフトに固定されて前記バルーン内に延び入り、
前記外筒シャフトの前記内筒シャフトに対する相対移動は、前記相対移動制限部材が前記加熱部材に接触することによって制限される、請求項1又は2記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記相対移動制限部材は、前記送液路と前記バルーンの内部空間との接続部において前記内筒シャフトの外周面及び前記外筒シャフトの内周面が前記外周面及び前記内周面の全周に亘って互いから離間するように前記内筒シャフトの外周面に向けて延びる部分を有する、請求項3記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記相対移動制限部材は、前記バルーンの内部において前記内筒シャフトの外周面に固定されており、
前記外筒シャフトの前記内筒シャフトに対する相対移動は、前記外筒シャフトの遠位端が前記相対移動制限部材に接触することによって制限される、請求項1又は2記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記相対移動制限部材は、前記外筒シャフトの内周面に固定される第1制限部材と、前記内筒シャフトの外周面に固定される第2制限部材とを含み、
前記外筒シャフトの前記内筒シャフトに対する相対移動は、前記第1制限部材が前記第2制限部材に接触することによって制限される、請求項1又は2記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記加熱部材は、前記内筒シャフトの中心軸線方向から前記外筒シャフトの内容積を投影した範囲内に配置されている、請求項1~6のいずれか一項記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記外筒シャフトの遠位端と前記温度センサとの距離は、5~150mmである、請求項1~7のいずれか一項記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載のバルーンカテーテルと、
前記送液路に液体を供給する供給装置と、
前記送液路への液体供給及び前記送液路からの液体排出を繰り返して前記バルーン内の液体を攪拌する攪拌装置と、
前記加熱部材に電気的に接続され、前記加熱部材に電気的エネルギーを付与する制御装置と、
を備えた、バルーンカテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル及びバルーンカテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アブレーション治療は、体内にアブレーションカテーテルを挿入し、体内の標的部位をアブレーションする治療法である。一例として、標的部位をアブレーションにより破壊することで、心房細動による不整脈、子宮内膜症、癌等の疾患の治療が行われている。アブレーション治療に用いられるカテーテルとして、ルーメンを形成するカテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの遠位端に取り付けられ、ルーメンに通じる内部空間を有するバルーンと、バルーン内に設置された高周波通電用電極と、を有するバルーンカテーテルが特許文献1に開示されている。
【0003】
バルーンカテーテルを体内に挿入する際、バルーンは収縮してカテーテルシャフトの長手方向に伸張している。次に、体内に挿入されたカテーテルシャフトのルーメンに液体が供給され、バルーンが膨張する。バルーン内に設置された高周波通電用電極と患者の体外に設置されている高周波通電用外電極(以下、対極板と云う)との間で高周波通電することでバルーン内の液体は温度調節されており、これにより、バルーンの表面温度を制御することができる。所定の表面温度に調節されたバルーンを、周状の標的部位、例えば静脈の心房への接続部位に接触させることで、周状の標的部位を一度にアブレーションすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3611799号公報
【特許文献2】特許第4747141号公報
【特許文献3】国際公開第2021/201078号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バルーンカテーテルによるアブレーション治療では、バルーンの表面温度を正確に把握することが重要である。この点、特許文献1及び特許文献2に開示されたバルーンカテーテルでは、バルーンの表面温度を計測するための温度センサがバルーン表面に設けられている。特許文献1では、バルーンの内表面に取り付けられた温度センサが用いられている。
【0006】
しかしながら、収縮した状態から膨張するバルーンの表面に温度センサを精度よく設置することは容易ではない。この点、特許文献2では、バルーンを二層構造とし、この二層の間に温度センサを配置することを提案している。しかしながら、二層のバルーンの作製、二層のバルーン間への温度センサの感熱部の設置、温度センサのリード線の取り扱い等において実際の製造が困難であり、特許文献2のバルーンカテーテルは普及するに至っていない。すなわち、従来のバルーンカテーテルにおいて、バルーンの表面温度を高精度に特定することは困難であった。
【0007】
特許文献3では、バルーンカテーテルの送液路内に温度センサを配置することで、高精度にバルーンの表面温度を測定するカテーテルが提案されている。しかし、このようなバルーンカテーテルでは、カテーテルを強く押し付けた際にカテーテルシャフトが押し込まれ加熱部材と外筒シャフトが極端に近づくと、シャフト内で測定される温度が実際の表面温度よりも高くなる場合が考えられる。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであって、バルーンの実際の表面温度と温度センサで実測した温度に基づく推定表面温度との間のずれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバルーンカテーテルは、バルーンと、カテーテルシャフトと、温度センサと、加熱部材と、相対移動制限部材と、を備え、上記カテーテルシャフトは、上記バルーンの近位端に接続した外筒シャフトと、上記バルーン内に延び出して上記バルーンの遠位端に接続した内筒シャフトとを有し、該内筒シャフトは、上記外筒シャフト内を通り、かつ、上記内筒シャフトと上記外筒シャフトとの間隙は、上記バルーンの内部空間に通じる送液路を成し、上記温度センサは、上記外筒シャフトと上記内筒シャフトとの間に配置され、上記加熱部材は、上記バルーン内において上記内筒シャフトの外周面上に配置され上記バルーン内の液体を加熱し、上記相対移動制限部材は、上記外筒シャフトの遠位端が上記加熱部材に接近する方向での上記外筒シャフトの上記内筒シャフトに対する相対移動を制限する事を特徴とする。
【0010】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、上記相対移動制限部材は、上記外筒シャフトの遠位端と上記加熱部材の近位端との距離が3mm以上となるように、上記外筒シャフトの上記内筒シャフトに対する相対移動を制限してもよい。
【0011】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、上記相対移動制限部材は、上記外筒シャフトに固定されて上記バルーン内に延び入っていてもよく、上記外筒シャフトの上記内筒シャフトに対する相対移動は、上記相対移動制限部材が上記加熱部材に接触することによって制限されてもよい。
【0012】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、上記相対移動制限部材は、上記送液路と上記バルーンの内部空間との接続部において上記内筒シャフトの外周面及び上記外筒シャフトの内周面が上記外周面及び上記内周面の全周に亘って互いから離間するように、上記内筒シャフトの外周面に向けて延びる部分を有していてもよい。
【0013】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、上記相対移動制限部材は、上記バルーンの内部において上記内筒シャフトの外周面に固定されていてもよく、上記外筒シャフトの上記内筒シャフトに対する相対移動は、上記外筒シャフトの遠位端が上記相対移動制限部材に接触することによって制限されてもよい。
【0014】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、上記相対移動制限部材は、上記外筒シャフトの内周面に固定される第1制限部材と、上記内筒シャフトの外周面に固定される第2制限部材とを含んでもよく、上記外筒シャフトの上記内筒シャフトに対する相対移動は、上記第1制限部材が上記第2制限部材に接触することによって制限されてもよい。
【0015】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、上記加熱部材は、上記内筒シャフトの中心軸線方向から上記外筒シャフトの内容積を投影した範囲内に配置されていてもよい。
【0016】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、上記外筒シャフトの遠位端と上記温度センサとの距離は、5~150mmであってよい。
【0017】
本発明のバルーンカテーテルシステムは、上記バルーンカテーテルと、上記送液路に液体を供給する供給装置と、上記送液路への液体供給及び上記送液路からの液体排出を繰り返して上記バルーン内の液体を攪拌する攪拌装置と、上記加熱部材に電気的に接続され、上記加熱部材に電気的エネルギーを付与する制御装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バルーンの実際の表面温度と温度センサで実測した温度に基づく推定表面温度との間のずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施の形態を説明するための図であって、バルーンカテーテルシステム及びバルーンカテーテルを示す図。
【
図2】
図1のバルーンカテーテルの遠位端部分を、バルーンが膨張した状態にて、示す図。
【
図3】
図1のバルーンカテーテルの遠位端部分を、バルーンが収縮、かつ、伸張した状態にて、示す図。
【
図6】バルーンカテーテルの遠位端部分を示す図であって、送液路からバルーン内に液体を吐出する際の液体の流れを説明するための図。
【
図7】バルーンカテーテルの遠位端部分を示す図であって、バルーン内から送液路に液体を吸引する際の液体の流れを説明するための図。
【
図8】バルーンカテーテルの遠位端部分を示す図であって、カテーテルが治療部位に強く押し付けられた状態でのバルーン内から送液路に液体を吸引する際の液体の流れを説明するための図。
【
図9】加熱部材と外筒シャフトの距離毎のバルーンの推定表面温度と実際の表面温度との温度差を示すグラフ。
【
図10】CAE解析により得られた送液路内の温度センサが検出した液体温度とバルーンの表面温度との関係を示すグラフ(液体量:15ml、加熱部材近位端と外筒シャフト遠位端との距離:13mm)。
【
図11】CAE解析により得られた送液路内の温度センサが検出した液体温度とバルーンの表面温度との関係を示すグラフ(液体量:15ml、加熱部材近位端と外筒シャフト遠位端との距離:7mm)。
【
図12】CAE解析により得られた送液路内の温度センサが検出した液体温度とバルーンの表面温度との関係を示すグラフ(液体量:15ml、加熱部材近位端と外筒シャフト遠位端との距離:1mm)。
【
図13】CAEを用いた熱流体解析によって得られた同軸状態にあるバルーンカテーテルの遠位端部分における液体の温度分布を示す図。
【
図14】CAEを用いた熱流体解析によって得られた非同軸状態にあるバルーンカテーテルの遠位端部分における液体の温度分布を示す図。
【
図16A】
図15Aに対応する図であって、相対移動制限部材の他の変形例を示す図。
【
図16C】
図16Bに対応する図であって、相対移動制限部材のさらに他の変形例を示す図。
【
図17A】
図2に対応する図であって、相対移動制限部材のさらに他の変形例を示す図。
【
図17D】
図17Bに対応する図であって、相対移動制限部材のさらに他の変形例を示す図。
【
図17E】
図17Cに対応する図であって、相対移動制限部材のさらに他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に示された具体例を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0021】
図1に示されたバルーンカテーテルシステム10は、バルーンカテーテル15と、バルーンカテーテル15に接続した制御装置70、供給装置74及び攪拌装置75を有している。また、バルーンカテーテル15は、長手方向LDを有したカテーテル本体20と、カテーテル本体20の近位端に接続したハンドル50と、を有している。
【0022】
図2に示すように、本実施の形態のカテーテル本体20は、バルーン25と、バルーン25が取り付けられたカテーテルシャフト28と、バルーン25内に配置された加熱部材40と、を有している。カテーテルシャフト28は、バルーン25の近位端25bに接続した外筒シャフト30と、バルーン25の遠位端25aに接続した内筒シャフト35と、を有している。内筒シャフト35は、外筒シャフト30内を通過してバルーン25内に延び出している。外筒シャフト30及び内筒シャフト35の間にバルーン25内に通じる送液路LPが形成されている。加熱部材40は、バルーン25内の液体を加熱する。
【0023】
なお、カテーテル本体20の長手方向LDは、外筒シャフト30及び外筒シャフト30から延び出した内筒シャフト35の中心軸線30X,35Xが延びる方向として特定される。また、本明細書において、バルーンカテーテル15及びカテーテル本体20の各構成について用いる「遠位」側とは、カテーテル本体20の長手方向LDに沿ってハンドル50及びバルーンカテーテル15の操作者(術者)から離間する側、更に言い換えると先端側を意味する。また、バルーンカテーテル15及びカテーテル本体20の各構成について用いる「近位」側とは、カテーテル本体20の長手方向LDに沿ってハンドル50及びバルーンカテーテル15の操作者(術者)に近接する側、更に言い換えると基端側を意味する。
【0024】
以下、バルーンカテーテルシステム10及びバルーンカテーテル15について更に詳述する。まず、バルーンカテーテル15のカテーテル本体20について詳述する。上述したように、本実施の形態によるバルーンカテーテル15のカテーテル本体20は、バルーン25、外筒シャフト30、内筒シャフト35、加熱部材40及び温度センサ45を有している。
【0025】
このうち、外筒シャフト30及び内筒シャフト35は、共に筒状、典型的には円筒状に構成されている。したがって、外筒シャフト30及び内筒シャフト35は、それぞれ内部空間としてのルーメンを形成している。内筒シャフト35が形成するルーメン内には、例えば図示しないガイドワイヤが挿通される。内筒シャフト35は、外筒シャフト30が形成するルーメン内に挿通されている。すなわち、外筒シャフト30及び内筒シャフト35は、二重管シャフトの構成を有している。外筒シャフト30の内径は、内筒シャフト35の外径よりも大きい。したがって、外筒シャフト30と内筒シャフト35との間にルーメンが残っている。この外筒シャフト30と内筒シャフト35との間のルーメンが、送液路LPを形成している。
図2に示すように、送液路LPは、バルーン25内に通じている。また、送液路LPはハンドル50内まで延びている。
【0026】
外筒シャフト30及び内筒シャフト35の長さは、それぞれ500mm以上1700mm以下であることが好ましく、600mm以上1200mm以下であることがより好ましい。外筒シャフト30及び内筒シャフト35は、抗血栓性に優れる可撓性材料を用いて作製されていることが好ましい。抗血栓性に優れる可撓性材料として、フッ素ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン系ポリマー又はポリイミド等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、外筒シャフト30は、内筒シャフト35との摺動性と、バルーン25との接着性又は熱溶着性とを両立するため、異なる可撓性材料の層を積層することで作製されることが好ましい。
【0027】
外筒シャフト30の外径は3.0mm以上4.0mm以下が好ましい。外筒シャフト30の内径は2.5mm以上3.5mm以下が好ましい。また、内筒シャフト35の外径は1.4mm以上1.7mm以下が好ましい。内筒シャフト35の内径は1.1mm以上1.3mm以下が好ましい。
【0028】
また、外筒シャフト30及び内筒シャフト35にバルーン25が接続されている。バルーン25は、液体の充填により膨張可能、かつ、液体の排出により収縮可能に形成されている。バルーン25は治療対象となる標的部位(例えば血管)にフィットすることができる形状を有していることが好ましい。一例として、左心房の肺静脈接合部に適合するバルーン25の形状として、直径を15mm以上40mm以下の球状形状を採用することができる。ここで球状形状には、真球状、扁球状及び長球状が含まれ、更に略球状も含まれる。
【0029】
バルーン25の膜厚は10μm以上200μm以下とすることが好ましい。またバルーン25の材料として、抗血栓性に優れた伸縮性のある材料が好ましく、具体的にはポリウレタン系の高分子材料等を用いることが可能である。バルーン25に適用されるポリウレタン系の高分子材料として、例えば、熱可塑性ポリエーテルウレタン、ポリエーテルポリウレタンウレア、フッ素ポリエーテルウレタンウレア、ポリエーテルポリウレタンウレア樹脂又はポリエーテルポリウレタンウレアアミドが例示される。
【0030】
図示されたカテーテル本体20では、
図2及び
図3に示すように、バルーン25の遠位端(先端)25aは、内筒シャフト35の遠位端(先端)35aに固定されている。バルーン25の近位端(基端)25bは、外筒シャフト30の遠位端(先端)30aに固定されている。バルーン25と外筒シャフト30及び内筒シャフト35との接続に、接着又は熱溶着による接合を用いることができる。
【0031】
外筒シャフト30及び内筒シャフト35が長手方向LDに相対移動することで、外筒シャフト30及び内筒シャフト35に接続したバルーン25が変形する。図示された例において、外筒シャフト30及び内筒シャフト35の相対移動により、長手方向LDにおけるバルーン25の寸法を調整することができる。
図3に示すように、内筒シャフト35が外筒シャフト30に対して長手方向LDにおける遠位側に相対移動することで、バルーン25は長手方向LDに伸張し、さらに緊張した状態となる。図示された例では、内筒シャフト35の外筒シャフト30に対する長手方向LDにおける遠位側への移動範囲が、バルーン25によって規制される。内筒シャフト35が
図3に示された状態から外筒シャフト30に対して長手方向LDにおける近位側に相対移動することで、バルーン25は弛緩した状態となる。弛緩したバルーン25の内部に液体を導入することで、
図2に示すように、バルーン25を膨張させることができる。すなわち、外筒シャフト30及び内筒シャフト35の相対移動により、長手方向LDにおけるバルーン25の寸法を調整することができる。
【0032】
次に、加熱部材40について説明する。加熱部材40は、バルーン25内に配置されている。加熱部材40は、バルーン25内に充填された液体を加熱するための部材である。加熱部材40として、一例として、電気抵抗発熱するニクロム線を採用することができる。また加熱部材40の他の例として、
図2及び
図3に示すように、コイル電極41を採用することができる。コイル電極41としての加熱部材40に高周波通電を行うことにより、外部に配置された対向電極77(
図1)との間に高周波電流が流れ、コイル電極41と対向電極77との間に位置する液体がジュール発熱する。対向電極77は、例えば、患者の背面に配置される。
【0033】
図2及び
図3に示された例において、コイル電極41は、バルーン25内を延びる内筒シャフト35上に設けられている。コイル電極41は、内筒シャフト35上に巻き付けられた導線によって構成され得る。コイル電極41は、高周波通電のため配線42と電気的に接続されている。配線42は、外筒シャフト30及び内筒シャフト35の間のルーメンとしての送液路LP内をハンドル50まで延びている。加熱部材40をなすコイル電極41の具体例として、配線42に用いられる絶縁被覆付きのリード線の被覆を剥ぎ取って内筒シャフト35上に巻き付けてなるコイル電極を採用することができる。このようなコイル電極41は、配線42と一体的に構成されている点において、断線等の不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0034】
コイル電極41及び配線42の直径は、0.1mm以上1mm以下とすることが好ましく、0.1mm以上0.4mm以下とすることがより好ましい。コイル電極41及び配線42をなす導電性材料として、例えば、銅、銀、金及び白金並びにこれらの合金等を例示することができる。配線42については、短絡を防止するために、例えばフッ素ポリマー等の絶縁性被膜によって導電性線状部を被覆した構成をとることが好ましい(
図4及び
図5参照)。
【0035】
次に、温度センサ45について説明する。温度センサ45は、外筒シャフト30と内筒シャフト35との間を流れる液体の温度に関する情報を取得する。本実施の形態において、温度センサ45は、外筒シャフト30と内筒シャフト35との間に配置された感熱部46を有している。この温度センサ45によれば、送液路LP内の液体温度に関する情報を取得することができる。温度センサ45で取得された情報は、バルーンカテーテルシステム10を用いたアブレーション治療において重要となるバルーン25の表面温度の推定に用いられる。
【0036】
バルーン25の表面温度を高精度に特定する目的において、外筒シャフト30の遠位端30aから温度センサ45の感熱部46までの長手方向LDに沿った好ましい距離DXは、厳密には、後述する攪拌装置75が液体を供給及び排出する量に依存する。ただし、心臓アブレーション治療に通常適用されるバルーンカテーテル15の各寸法や攪拌装置75からの液体の供給排出量を考慮すると、外筒シャフト30の遠位端30aから温度センサ45までの距離DX(
図2参照)を、5mm以上150mm以下とすることが好ましく、10mm以上20mm以下とすることがより好ましい。
【0037】
なお、特に説明が無い場合には、外筒シャフト30の遠位端30aから温度センサ45までの距離DXは、
図2に示されたバルーン25が液体によって膨張した状態で特定される距離である。同様に、特に説明が無い場合には、温度センサ45が送液路LP内に位置する、温度センサ45が外筒シャフト30内に位置する、温度センサ45が外筒シャフト30と内筒シャフト35との間に位置するといった表現は、
図2に示されたバルーン25が液体によって膨張した状態を前提としている。
【0038】
温度センサ45として、熱電対又はサーミスタを用いることができる。また、温度センサ45として、とりわけT型熱電対が好適である。T型熱電対によれば、感熱部46の熱容量を小さくすることができる。また、温度センサ45としてT型熱電対を採用することで、熱起電力が安定する。さらに、T型熱電対によれば、50℃以上80℃以下の温度範囲を高精度に検出することができるので、心臓アブレーション治療にとりわけ好適である。なお、温度センサ45が取得する温度に関する情報は、例えば、熱電対から取得できる電位や、サーミスタから取得できる抵抗値となる。
【0039】
図2及び
図3に示すように、温度センサ45は、典型的には、感熱部46と、感熱部46と電気的に接続したリード線47と、を有している。熱電対としての温度センサ45では、異種金属が接続された部位が感熱部46をなす。サーミスタとしての温度センサ45では、セラミック素子が感熱部46をなす。リード線47は、外筒シャフト30及び内筒シャフト35の間のルーメンとしての送液路LP内をハンドル50まで延びている。
【0040】
リード線47の直径は、0.05mm以上0.5mm以下とすることが好ましく、0.05mm以上0.3mm以下とすることがより好ましい。熱電対としての温度センサ45では、例えば、一方のリード線47に銅を用い、他方のリード線47にはコンスタンタンを用いることができる。この例において、一対のリード線47を接合してなる感熱部46は、T型熱電対として機能し得る。一対のリード線47の短絡を防止するため、
図4及び
図5に示すように、フッ素ポリマーやエナメル等の電気絶縁性の被膜が設けられていることが好ましい。
【0041】
図示された例において、温度センサ45は、内筒シャフト35に取り付けられている。具体的には、
図2~
図4に示すように、温度センサ45のリード線47が固定されることで、温度センサ45が内筒シャフト35に取り付けられている。ただし、感熱部46は、外筒シャフト30及び内筒シャフト35のいずれからも離間している。言い換えると、感熱部46は、外筒シャフト30及び内筒シャフト35に対して非接触である。これにより、感熱部46が熱容量の大きな外筒シャフト30や内筒シャフト35の温度を検知して温度センサ45の応答性が悪化する、という虞を回避することができる。この結果、温度センサ45の送液路LP内の液体温度への応答性を高くすることができる。なお、リード線47を内筒シャフト35に固定するための固定手段48として、特に限定されることなく種々の手段を用いることができる。図示された例では、固定手段48として、加熱することで収縮する熱収縮チューブが用いられている。ただし、この例に限られず、各種収縮チューブや粘着テープ、接着剤等を、固定手段48として用いることができる。
【0042】
一方、図示された例では、配線42は、外筒シャフト30及び内筒シャフト35のいずれにも取り付けられていない。しかしながら、この例に限られず、配線42は、外筒シャフト30及び内筒シャフト35のいずれかに取り付けられてもよい。この場合、配線42及び温度センサ45のリード線47の両方が、外筒シャフト30に取り付けられていることが好ましい。あるいは、配線42及び温度センサ45のリード線47の両方が、内筒シャフト35に取り付けられていることが好ましい。配線42及び温度センサ45が、外筒シャフト30及び内筒シャフト35の一方に共に取り付けられていることにより、外筒シャフト30及び内筒シャフト35が相対移動した際に配線42及びリード線47が送液路LP内で絡むことを、効果的に防止することができる。このことは、温度センサ45を用いて送液路LPを流れる液体の温度情報を安定して取得することに寄与し、ひいては、バルーン25の表面温度の推定を安定的に行うことに寄与する。
【0043】
また、
図3に示すように、バルーン25が伸張するよう内筒シャフト35が外筒シャフト30に対して長手方向LDにおける遠位側に最大限相対移動した状態においても、温度センサ45は外筒シャフト30内に位置している。この具体例によれば、内筒シャフト35の外筒シャフト30に対する相対位置に依存することなく、温度センサ45は外筒シャフト30内に位置することが可能となる。したがって、内筒シャフト35の外筒シャフト30に対する相対位置に依存することなく、外筒シャフト30によって温度センサ45を安定して保護することができる。
【0044】
なお、図示された例とは異なり、温度センサ45は、外筒シャフト30に取り付けられていてもよい。例えば、温度センサ45のリード線47が外筒シャフト30の内面に固定されてもよい。この場合、内筒シャフト35の外筒シャフト30に対する相対位置に依存することなく、温度センサ45は外筒シャフト30内に位置する。したがって、内筒シャフト35の外筒シャフト30に対する相対位置に依存することなく、外筒シャフト30によって温度センサ45を安定して保護することができる。
【0045】
次に、以上に説明したカテーテル本体20に近似側から接続したハンドル50について説明する。ハンドル50は、バルーンカテーテルシステム10の使用中に操作者(術者)が把持する部位である。したがって、ハンドル50は操作者が手で把持、操作しやすいデザインを有していることが好ましい。ハンドル50を構成する材料は、耐薬品性の高い材料が好ましく、例えば、ポリカーボネート又はABS樹脂を用いることができる。
【0046】
図1に示されたハンドル50は、互いにスライド可能な第1ハンドル部51と第2ハンドル部52を有している。第1ハンドル部(前側ハンドル部)51は、カテーテル本体20の外筒シャフト30に接続している。第2ハンドル部(後側ハンドル部)52は、カテーテル本体20の内筒シャフト35に接続している。第2ハンドル部52を第1ハンドル部51に対して相対移動させることで、内筒シャフト35を外筒シャフト30に対して相対移動させることができる。
【0047】
図1に示すように、ハンドル50は、バルーンカテーテルシステム10に含まれる他の装置類とバルーンカテーテル15とを接続する部位としても機能する。
【0048】
まず、コネクタ56が第2ハンドル部52から延び出している。このコネクタ56は、カテーテル本体20の配線42及び温度センサ45のリード線47を、後述する制御装置70と電気的に接続する。
【0049】
また、
図1に示すように、延長チューブ57が第1ハンドル部51から延び出している。この延長チューブ57は、カテーテル本体20の送液路LPを、後述する供給装置74又は攪拌装置75に通じさせる。延長チューブ57は、弁58を介して、供給装置74及び攪拌装置75に接続している。図示された例において、弁58を操作することで、供給装置74又は攪拌装置75のいずれを送液路LPに通じさせるかを選択することができる。弁58として、三方活栓を用いることができる。
【0050】
次に、以上に説明したバルーンカテーテル15とともにバルーンカテーテルシステム10を構成する装置類、具体的には、制御装置70、供給装置74及び攪拌装置75について説明する。
【0051】
図示された制御装置70は、配線42を介してコイル電極41に電気的に接続されている。制御装置70は、コイル電極41への高周波通電(電気的エネルギーの供給)を制御する高周波通電制御部70aを有している。図示された例では、高周波通電制御部70aによってコイル電極41への高周波通電を制御することで、加熱部材40からの出力が調節される。高周波通電制御部70aは、後述する温度演算部70bで推定されたバルーン25の表面温度(以下、「推定表面温度」とも呼ぶ)に基づいて、予め設定された処理に従うか、又は操作者からの入力に従うことで、コイル電極41への高周波通電を制御することができる。
【0052】
また、制御装置70は、温度センサ45のリード線47に電気的に接続されている。制御装置70は、温度センサ45が取得した温度情報に基づいて演算を行う温度演算部70bを有している。温度演算部70bは、温度センサ45が取得した温度情報に基づいて送液路LP内の液体温度を算出し、さらに算出された液体温度に基づいてバルーン25の推定表面温度を推定する。温度演算部70bは、推定されたバルーン25の推定表面温度を表示部71に表示するようにしてもよい。
【0053】
さらに、制御装置70は、攪拌装置75を制御する攪拌装置制御部70cを有している。攪拌装置制御部70cは、攪拌装置75の制御条件を表示部71に表示するようにしてもよい。
【0054】
制御装置70は、例えば、CPU等のハードウェアで構成される。制御装置70に含まれる高周波通電制御部70a、温度演算部70b、攪拌装置制御部70c及び表示部71の一つ以上が、別個のハードウェアとして構成されていてもよいし、一部分を共有するようにしてもよい。制御装置70の少なくとも一部をソフトウェアで構成してもよい。制御装置70の一部分が物理的に離間して配置されていてもよい。また、制御装置70は、その一部の構成部が、他の構成部との間でネットワークを通じた通信によって連携可能であってもよい。また、制御装置70は、その一部の構成部が、他の構成部との間で外部ネットワークを通じて通信可能な装置、例えばクラウド上のサーバやデータベース上にあってもよい。
【0055】
次に、供給装置74について説明する。供給装置74は、送液路LP内に液体を供給する。供給装置74から送液路LPを介してバルーン25に液体を供給することで、
図2に示すようにバルーン25を膨張させることができる。一方、供給装置74から送液路LPを介してバルーン25から液体を排出することで、バルーン25を収縮させることもできる。送液路LP内に供給される液体は、典型的には生理食塩液とすることができる。なお、送液路LP内に供給される液体は、液体で膨張したバルーン25をX線透視画像で確認可能なよう、生理食塩液で希釈した造影剤であってもよい。供給装置74として、図示されているようにシリンジを用いることができる。ただし、供給装置74としてポンプ等を用いることもできる。
【0056】
次に、攪拌装置75について説明する。攪拌装置75は、バルーン25内の液体を攪拌するために設けられている。バルーン25内の液体を攪拌することで、加熱部材40の周囲の加熱された液体を拡散させてバルーン25の表面温度を調節することができる。攪拌装置75は、送液路LPへの液体供給及び送液路LPからの液体排出を繰り返し行う。攪拌装置75から送液路LPへの液体供給が行われると、送液路LPからバルーン25内へ液体が供給される(
図6参照)。また、送液路LPから攪拌装置75への液体排出が行われると、バルーン25内から送液路LPへ液体が排出される(
図7参照)。バルーン25への液体供給及びバルーン25からの液体排出が繰り返し行われることによって、バルーン25内の液体が攪拌される。攪拌装置75として、ローラーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ベローズポンプ、ベーンポンプ、遠心ポンプ及びピストンとシリンダの組み合わせからなるポンプからなる群から選択されるポンプを採用することができる。なお、
図6及び
図7並びに後で参照する
図8では、図示の明確化のため、後述する相対移動制限部材90の図示を省略している。また、
図6~
図8において、点線で示された矢印は、液体の流れを示している。
【0057】
送液路LPへの液体供給量及び送液路LPからの液体排出量は、一定量(例えば5ml以上30ml以下)とすることができる。また、送液路LPへの液体供給及び送液路LPからの液体排出は、一定の周期(例えば1秒間に1回以上5回以下)にて繰り返し行われるようにしてもよい。上述した攪拌装置制御部70cから制御信号又は操作者からの直接入力により、送液路LPへの液体供給量及び送液路LPからの液体排出量を調節するようにしてもよい。同様に、上述した攪拌装置制御部70cから制御信号又は操作者からの直接入力により、送液路LPへの液体供給及び送液路LPからの液体排出の周期を調節するようにしてもよい。
【0058】
次に、以上のように構成されたバルーンカテーテルシステム10の使用方法の一例について説明する。
【0059】
まず、弁58を操作して、ハンドル50及び延長チューブ57を介して供給装置74をカテーテル本体20の送液路LPに通じさせる。その後、供給装置74を操作して、送液路LPに液体を流し込み、バルーン25内、送液路LP内、延長チューブ57内を液体で満たす。次に、内筒シャフト35を外筒シャフト30に対して長手方向LDにおける遠位側(先端側)に相対移動させ、
図3に示すようにバルーン25を伸張させる。このとき、ハンドル50の第1ハンドル部51及び第2ハンドル部52を操作することで、外筒シャフト30及び内筒シャフト35を相対移動させることができる。そして、バルーン25を伸張させた状態のカテーテル本体20を体内に挿入する。
【0060】
カテーテル本体20の遠位端を標的部位(患部)の近傍に誘導したところで、内筒シャフト35を外筒シャフト30に対して長手方向LDにおける近位側(基端側)に相対移動させ、バルーン25を弛緩させる。次に、弁58を操作して、ハンドル50を介して供給装置74をカテーテル本体20の送液路LPに通じさせる。その後、供給装置74を操作して、送液路LPに液体を流し込み、
図2に示すようにバルーン25を液体で膨張させる。
【0061】
次に、弁58を操作して、供給装置74を送液路LPから遮断し、攪拌装置75を送液路LPに通じさせる。攪拌装置75は、制御装置70の攪拌装置制御部70cからの制御信号によって制御される。攪拌装置75は、一定量の液体の送液路LPへの供給及び一定量の液体の送液路LPからの排出を、一定の周期にて繰り返し実施する。これにより、一定量の液体の送液路LPからバルーン25内への吐出と、一定量の液体のバルーン25内から送液路LPへの吸引が、一定の周期に繰り返し行われる。これにより、バルーン25内の液体が攪拌される。
【0062】
また、制御装置70の高周波通電制御部70aによって加熱部材40を制御し、バルーン25内の液体温度を調節する。具体的には、加熱部材40をなすコイル電極41及び患者に体外に配置された対向電極77との間に、制御装置70から高周波通電を行う。この結果、コイル電極41及び対向電極77の間に高周波電流が発生する。ただし、コイル電極41の大きさを対向電極の大きさよりも大幅に小さくしておくことで、コイル電極41周囲での電流密度が高くなり、コイル電極41の周囲の液体がジュール発熱により加熱される。
【0063】
なお、コイル電極41と対向電極77との間に高周波通電を行う際、温度センサ45がコイル電極41の近傍に配置されていると、温度センサ45と対向電極77との間にも高周波電流が発生して温度センサ45の周囲の液体が局所的に加熱され、この加熱された液体の温度を温度センサ45が測定して、異常値が検出される虞がある。しかしながら、図示された例では、上述したように、バルーン25が膨張した状態において、温度センサ45は外筒シャフト30内に配置されている。外筒シャフト30の厚みは、バルーン25の厚みよりも大幅に厚い。したがって、温度センサ45は、外筒シャフト30によって高周波電流を遮蔽され得る。このため、温度センサ45の周囲の液体が局所的に加熱されてしまうことを、効果的に回避することができる。
【0064】
以上のようにしてバルーン25内の液体を加熱しながら攪拌する。そして、加熱された液体を収容したバルーン25を標的部位に押し付け、標的部位をアブレーションする。アブレーションを行っている間、送液路LP内に配置された温度センサ45が、送液路LP内を流れる液体の温度情報を取得する。取得された温度情報に基づいて、制御装置70の温度演算部70bで演算が行われ、バルーン25の推定表面温度が導き出される。温度演算部70bによって得られたバルーン25の推定表面温度は、例えば、表示部71に表示される。
【0065】
標的部位に対するアブレーションが終了したところで、加熱部材40への電気的エネルギーの供給を停止する。また、弁58を操作して、ハンドル50を介して供給装置74をカテーテル本体20の送液路LPに通じさせ、攪拌装置75を送液路LPから遮断する。そして、供給装置74を用いて送液路LPから液体を排出し、バルーン25を収縮させる。次に、第2ハンドル部52を操作して、
図3に示すように収縮したバルーン25を伸張させる。そして、バルーン25を伸張させた状態のカテーテル本体20を体内から抜き出す。以上により、バルーンカテーテルシステム10を用いた施術が終了する。
【0066】
ところで、バルーン25の表面温度を常時正確に把握することができれば、バルーン25の表面温度を理想的な温度に調節しながら施術を行うことができ、アブレーション治療の効果を飛躍的に向上させることができる。しかしながら、アブレーション中、温度演算部70bで推定されるバルーン25の推定表面温度とバルーン25の実際の表面温度とのずれが大きくなることがある。
【0067】
この点に関し、本件発明者等が鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。すなわち、アブレーション中にバルーン25を標的部位にしっかりと密着させるためにバルーンカテーテル15を標的部位に強く押し付けることがある。そうした場合、バルーン25は非常に柔らかいため、外筒シャフト30が内筒シャフト35に対して長手方向LDの遠位方向に進行する(
図8参照)。このとき、外筒シャフト30の遠位端30aと内筒シャフト35上の加熱部材40とが接近しすぎると、バルーン25の推定表面温度と実際の表面温度との差が大きくなる。これは次のような理由によるものと考えられる。すなわち、外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40の近位端40bとの距離DYが十分に大きい場合、攪拌装置75によってバルーン25内から液体排出が行われる際、
図7に示すように、主としてバルーン25の表面に沿って流れた液体が送液路LPに引き込まれる。したがって、この場合、温度センサ45は、バルーン25の実際の表面温度に近い液体温度を測定することができる。一方、外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40の近位端40bとの距離DYが小さすぎると、
図8に示すように、バルーン25の表面に沿って流れた液体は送液路LPに引き込まれにくくなると同時に、加熱部材40の周囲の加熱された液体が送液路LPに直接引き込まれやすくなる。これにより、
図8に示す場合、温度センサ45は、バルーン25の実際の表面温度よりも顕著に高い液体温度を測定することになる。この結果、バルーン25の推定表面温度が実際の表面温度よりも顕著に高くなる。なお、距離DYは、バルーン25が液体によって膨張した状態(
図2参照)で測定される。
【0068】
このような点を考慮して、本実施形態のバルーンカテーテル15は、アブレーション中、バルーン25の推定表面温度とバルーン25の実際の表面温度との差が大きくなりすぎることを防止するための工夫がなされている。
【0069】
具体的には、本実施の形態のバルーンカテーテル15は、外筒シャフト30が内筒シャフト35に対して相対移動することを制限する相対移動制限部材90を備えている。相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の遠位端30aが加熱部材40に接近する方向での外筒シャフト30の内筒シャフト35に対する相対移動を制限する。このような相対移動制限部材90によって、外筒シャフト30が加熱部材に接近しすぎることが防止される。これにより、攪拌装置75によってバルーン25内から液体排出が行われる際、バルーン25の表面に沿って流れた液体が送液路LPに引き込まれやすくなり、温度センサ45でバルーン25の実際の表面温度に近い液体温度を測定することができる。この結果、バルーン25の表面温度を精度よく推定することができる。
【0070】
図9に、加熱部材40と外筒シャフト30の遠位端との距離DYの変動による、バルーン25の推定表面温度と実際の表面温度との温度差を示す。
図9に示す結果は、CAE(computer-aided engineering)により、バルーン25内及びバルーン25近傍(外筒シャフト30の遠位端30a近傍)の送液路LP内の液体の温度分布をシミュレーションすることにより、得られた。
図9に示す例では、実際の臨床場面に倣い、次のようにシミュレーションを行った。すなわち、バルーンカテーテルシステム10のモデルとして、バルーン25への液体の注入量が約10ml、約15ml、約20mlである3つのモデルを用いた。シミュレーションでは、各モデルにおいて加熱部材40周辺の液体の温度が70℃となるように制御を行い、駆動電力は150Wとして計算を行った。
【0071】
図9において、横軸は加熱部材40の近位端40aと外筒シャフト30の遠位端30aとの距離DYを示し、縦軸はバルーン25の推定表面温度と実際の表面温度との温度差を示している。推定表面温度は、温度センサ45が取得した温度情報に基づいて推定したバルーン25の表面温度である。
図9において、棒グラフA、B、Cは、それぞれ、バルーン25への液体の注入量が約10ml、約15ml、約20mlであるモデルの上記温度差を示している。
図9から理解されるように、いずれのモデルにおいても距離DYが3mm以上の場合、上記温度差は±1.5℃未満であった。とりわけ、距離DYが9mm以上の場合には上記温度差は±1℃未満であり、距離DYが13mm以上の場合には上記温度差は±0.5℃未満であった。一方、距離DYが2mm以下の場合は、距離DYが3mm以上の場合と比較して上記温度差が顕著に大きくなり、上記温度差は約2℃、又はそれ以上となった。このように温度差が顕著に大きくなった理由は、
図8を参照して説明したように、距離DYが2mm以下の場合に、送液路LPには、主として加熱部材40で加熱された流体が直接吸引され、バルーン25の表面近傍を通過した流体の送液路LPへの流入量が少なかったためである、と考えられる。ここで、実際の臨床場面において許容されるバルーン25の推定表面温度と実際の表面温度との温度差は、一般的に±2℃未満である。
【0072】
さらに代表的な例として、
図10~
図12に、バルーン25への液体の注入量が約15mlのモデルにおいて、加熱部材40の近位端40bと外筒シャフト30の遠位端30aとの距離DYが13mm、7mm、1mmの各場合に、温度センサ45が測定した液体の温度を示す。
図10~
図12において、縦軸は温度(℃)であり、横軸は時間(s)である。
図10~
図12には、温度センサ45が10ミリ秒間隔で測定した温度が示されている。また、
図10~
図12には、高周波電力を通電開始してからバルーン25の表面温度が十分に安定する時間が経過した後、具体的には、通電開始後90から150秒までの測定結果が示されている。さらに、
図10~
図12には、温度センサ45が測定した液体の温度と共に、バルーン25の実際の表面温度が示されている。
図10~
図12において、細線で描かれた曲線は温度センサ45による温度測定値を表し、太線で描かれた直線はバルーン25の実際の表面温度を示す。より詳しくは、
図10~
図12において、細線で描かれた曲線は、温度センサ45による実測値を結んでなる温度変動線である。温度変動線の極小値は、攪拌装置75から送液路LPへの液体供給の際に(したがって、送液路LPからバルーン25への液体供給の際に)(
図6参照)、温度センサ45で測定される液体温度である。また、温度変動線の極大値は、送液路LPから攪拌装置75への液体排出の際に(したがってバルーン25から送液路LPへの液体排出の際に)(
図7参照)、温度センサ45で測定される液体温度である。
【0073】
図10~
図12に示された結果において、温度センサ45で測定された送液路LP内の液体温度は、約0.5秒周期で変動している。また、加熱部材40の近位端40bと外筒シャフト30の遠位端30aとの距離DYが3mm以上である
図10及び
図11では、バルーン25の実際の表面温度は、温度センサ45で測定された温度変動線の極大値に概ね一致している。この点から、距離DYが3mm以上である場合は、制御装置70の温度演算部70bにおいて、温度センサ45による実測値を結んでなる温度変動線の極大値(又は極大値を結ぶ包絡線)を、バルーン25の実際の表面温度として特定することができる。或いは、この場合、制御装置70の温度演算部70bにおいて、温度センサ45による実測値から三角波状の近似曲線をまず特定し、次に当該温度変動近似曲線の極大値(又は極大値を結ぶ包絡線)を、バルーン25の実際の表面温度として特定することができる。
【0074】
その一方で、加熱部材40の近位端40bと外筒シャフト30の遠位端30aとの距離DYが1mmと極端に近づいた条件での結果である
図12では、バルーン25の実際の表面温度と温度センサ45で測定された温度変動線の極大値との間に乖離が生じている。すなわち、
図12に示す例では、
図10及び
図11に示す例と比較して、外筒シャフト30内の液体温度から推定されるバルーン25の推定表面温度が、バルーン25の実際の表面温度と比較して顕著に高い。これは、
図8を参照して説明したように、バルーン25の近位端25bが押し込まれ加熱部材40と外筒シャフト30の遠位端30aとの距離DYが極端に短くなった場合、バルーン25の表面に沿って流れた液体が送液路LPに引き込まれにくくなる一方、加熱部材40で加熱された液体が直接送液路LPに引き込まれやすくなるためであると考えられる。
【0075】
なお、バルーン25を標的部位に押し付ける際、標的部位へのバルーン25の押し付け角度によって、バルーン25内での内筒シャフト35の中心軸線35Xに対する、外筒シャフト30の遠位端30aにおける外筒シャフト30の中心軸線30Xの角度が変化する。例えば、
図13に示すように、中心軸線35Xと中心軸線30Xとが一致する状態(以下では、この状態を「同軸状態」とも呼ぶ)でバルーン25が標的部位に押し付けられることがある。その一方で、
図14に示すように、中心軸線35Xに対して中心軸線30Xが傾斜した状態(以下では、この状態を「非同軸状態」とも呼ぶ)でバルーン25が標的部位に押し付けられることもある。しかしながら、このように標的部位へのバルーン25の押し付け角度が異なっても、距離DYが十分に大きければ、バルーン25内から送液路LPへの液体排出の際に、バルーン25の表面に沿って流れた液体が送液路LP内に流入しやすくなる。この結果、温度センサ45が取得した液体の温度情報に基づいて、バルーン25の表面温度を高精度に特定することができる。この点について、
図13及び
図14を参照して説明する。
図13及び
図14は、CAEによりバルーン25内及びバルーン25近傍(外筒シャフト30の遠位端30a近傍)の送液路LP内の液体の温度分布をシミュレーションした結果を示している。
図13及び
図14に示すシミュレーションは、距離DYが3mm以上であるバルーンカテーテル15を用いて行われた。
【0076】
図13は、内筒シャフト35と外筒シャフト30とが同軸状態でバルーン25が標的部位に押し付けられた場合の、シミュレーション結果を示している。
図13に示された例では、外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40とが、遠位端30aにおける外筒シャフト30の中心軸線30Xに沿って整列している。この場合、
図13のシミュレーション結果から理解されるように、攪拌装置75を用いてバルーン25内の液体を攪拌しても、加熱部材40の配置に起因した温度勾配がバルーン25内の液体に生じてしまう。加熱部材40としてコイル電極41を用いた場合、この温度勾配は、電流密度の分布と同様の傾向を示すようになる。バルーン25内の温度分勾配は、
図13に示された例では5℃以上生じている。しかしながら、外筒シャフト30の遠位端30a近傍における送液路LP内の液体温度は、加熱部材40周囲の液体温度とは異なるが、バルーン25の表面温度と概ね等しい。したがって、
図13に示す例において、外筒シャフト30の遠位端30a近傍における送液路LP内の液体温度を測定することによって、バルーン25の表面温度を検出し得ることが理解される。
【0077】
図14は、内筒シャフト35と外筒シャフト30とが非同軸状態でバルーン25が標的部位に押し付けられた場合の、シミュレーション結果を示している。
図14に示された例では、バルーン25内の内筒シャフト35及び加熱部材40に対して、外筒シャフト30は大きく傾斜している。この場合、外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40は、遠位端30aにおける外筒シャフト30の中心軸線30Xに沿って整列していない。
図14のシミュレーション結果から理解されるように、この場合も、攪拌装置75を用いてバルーン25内の液体を攪拌したとしても、加熱部材40の配置に起因した温度勾配がバルーン25内の液体に生じてしまう。バルーン25内の温度分勾配は、
図14に示された例においても5℃以上生じている。しかしながら、外筒シャフト30の遠位端30a近傍における送液路LP内の液体温度は、バルーン25の表面温度と概ね等しい。したがって、
図14に示す例においても、外筒シャフト30の遠位端30a近傍における送液路LP内の液体温度を測定することによって、バルーン25の表面温度を検出し得ることが理解される。
【0078】
図13及び
図14のシミュレーション結果から理解されるように、バルーン25の標的部位への押し付け角度が異なると、バルーン25内の液体の温度分布が異なる。しかしながら、いずれの場合も、外筒シャフト30の遠位端30a近傍となる領域の液体の温度とバルーン25の表面温度は、概ね等しい。したがって、バルーン25の標的部位への押し付け角度が異なっていても、外筒シャフト30の遠位端30a近傍における送液路LP内の液体温度を測定することによって、バルーン25の表面温度を検出し得ることが理解される。
【0079】
以上を纏めると、加熱部材40の近位端40bと外筒シャフト30の遠位端30aとの距離DYが十分に大きければ、バルーン25の標的部位への押し付け角度によらず、バルーン25の表面温度を高精度に検出し得る。
【0080】
なお、バルーン25内における加熱部材40を中心とした温度勾配は、ニクロム線による抵抗加熱を期待する加熱部材だけでなく、シミュレーション結果でも実証されているように、高周波通電されるコイル電極41を有した加熱部材40においても同様に生じ得る。コイル電極41及び体外の対向電極77に高周波通電を行った場合、コイル電極41及び対向電極77の間に高周波電流が流れる。高周波電流はコイル電極41近傍の液体の比抵抗が高いため、この領域において
(流れる電流値)
2×(充填液の抵抗値)
で表現されるジュール熱を集中的に発生させる。このジュール熱は、コイル電極41から離れるにつれて急速に減少する。「(流れる電流値)
2×(充填液の抵抗値)」における「(流れる電流値)」の項が距離の二乗で減衰するためである。例えば、
図13のシミュレーション結果における加熱部材40近傍での液体温度が70度の場合、バルーン25の表面温度は65℃以下にまで低下している。
【0081】
なお、上述したように、図示された例では、バルーン25内から送液路LP内に排出された液体の温度に基づいて、バルーン25の表面温度を特定する。このため、温度センサ45の感熱部46は、外筒シャフト30の遠位端30a近傍に位置していることが好ましい。より詳しくは、外筒シャフト30の遠位端30a近傍となる送液路LPのうち、攪拌装置75による液体吸引時にバルーン25内の液体が引き込まれる領域内(バルーン25から排出された液体が到達する領域内)に位置していることが好ましい。これにより、バルーン25から排出された液体の温度を外筒シャフト30内の温度センサ45によって検出することが可能となる。具体的には、外筒シャフト30の遠位端30aから温度センサ45までの距離DX(
図2参照)を、攪拌装置75による送液路LPからの液体排出量〔mm
3〕を送液路LPの断面積〔mm
2〕で除した値以下とすることが好ましい。
【0082】
上述したように、加熱部材40の近位端40bと外筒シャフト30の遠位端30aとの距離DYが十分に大きければ、バルーン25の標的部位への押し付け角度によらず、バルーン25の表面温度を高精度に検出し得る。このような点を考慮して、本実施の形態のバルーンカテーテル15は、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合であっても、加熱部材40と外筒シャフト30の遠位端30aとの距離DYを十分に大きく保つための工夫がなされている。具体的には、バルーンカテーテル15は、内筒シャフト35に対する外筒シャフト30の相対移動を制限する相対移動制限部材90を有している。相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の遠位端30aが加熱部材40に接近する方向での、外筒シャフト30の内筒シャフト35に対する相対移動を制限する。
【0083】
以下、相対移動制限部材90について、
図15A~
図17Eを参照して詳細に説明する。以下に示す例では、相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40の近位端40bとの距離が3mm以上となるように、外筒シャフト30の内筒シャフト35に対する相対移動を制限する。これにより、
図9に示す結果から理解されるように、バルーン25の推定表面温度と実際の表面温度との温度差が大きくなりすぎることを効果的に抑制することができ、バルーン25の表面温度を精度高く推定することができる。
【0084】
図15A及び
図15Bに示す例では、
図15Aに示すように、相対移動制限部材90は外筒シャフト30に取り付けられ、バルーン25内に延び入っている。そして、外筒シャフト30の内筒シャフト35に対する相対移動は、相対移動制限部材90が加熱部材40に接触することによって制限される。言い換えると、外筒シャフト30は、相対移動制限部材90の遠位端90aが加熱部材40の近位端40bに接触するまで、内筒シャフト35に対して長手方向LDに沿って相対移動可能であるが、相対移動制限部材90の遠位端90aが加熱部材40の近位端40bに接触すると、内筒シャフト35に対して更に遠位側へ移動することはできない。このような相対移動制限部材90によれば、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合であっても、外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40の近位端40bとの距離DYを十分に大きく維持することができる。
【0085】
図示された例では、相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の遠位端30aに固定されている。相対移動制限部材90は、全体として長手方向LDに沿って延びている。相対移動制限部材90の長手方向LDに沿った長さは3mm以上である。このような相対移動制限部材90によれば、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合であっても、外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40の近位端40bとの距離DYを3mm以上に維持することができる。
【0086】
図15A及び
図15Bに示す例では、相対移動制限部材90は、2つの板状の制限要素91を含んでいる。2つの制限要素91は、それぞれ、全体として長手方向LDに沿って延びている。2つの制限要素91は、外筒シャフト30の周方向に沿って、互いから離間して配置されている。これにより、相対移動制限部材90は、相対移動制限部材90の遠位端90aが加熱部材40の近位端40bに接触したとき、加熱部材40に対して外筒シャフト30を安定して支持することができる。
図15Bに示すように、相対移動制限部材90の制限要素91は、外筒シャフト30の周方向に沿って、等間隔に配置されていることが好ましい。この場合、相対移動制限部材90は、相対移動制限部材90の遠位端90aが加熱部材40の近位端40bに接触したとき、加熱部材40に対して外筒シャフト30を効果的に安定して支持することができる。
【0087】
なお、
図15Bに示す相対移動制限部材90が含む制限要素91の数は、2つに限られない。相対移動制限部材90は、任意の数の制限要素91を含んでよい。例えば、
図15Cに示すように、相対移動制限部材90は、3つの制限要素91を含んでよい。相対移動制限部材90が複数の制限要素91を含む場合、複数の制限要素91は、外筒シャフト30の周方向に沿って、互いから離間して配置されることが好ましい。これにより、相対移動制限部材90は、相対移動制限部材90の遠位端90aが加熱部材40の近位端40bに接触したとき、加熱部材40に対して外筒シャフト30を安定して支持することができる。また、相対移動制限部材90が複数の制限要素91を含む場合、複数の制限要素91は、外筒シャフト30の周方向に沿って、等間隔に配置されていることが好ましい。この場合、相対移動制限部材90は、相対移動制限部材90の遠位端90aが加熱部材40の近位端40bに接触したとき、加熱部材40に対して外筒シャフト30を効果的に安定して支持することができる。もちろん、相対移動制限部材90は、単一の制限要素91で構成されていてもよい。
【0088】
図15Aに示す例では、相対移動制限部材90は、内筒シャフト35の外周面に向けて延びる部分92を有している。図示された例では、相対移動制限部材90の近位端90bにおける外筒シャフト30の中心軸線30Xと相対移動制限部材90との距離は、相対移動制限部材90の遠位端90aにおける外筒シャフト30の中心軸線30Xと相対移動制限部材90との距離よりも小さい。このような相対移動制限部材90によれば、部分92が内筒シャフト35に接触することによって、送液路LPとバルーン25の内部空間との接続部において、内筒シャフト35の外周面及び外筒シャフト30の内周面を、当該外周面及び当該内周面の全周に亘って互いから離間させることができる。この結果、バルーン25の表面を効率よく加熱することができる。具体的には、施術中にバルーンカテーテル15に外筒シャフト30及び内筒シャフト35を屈曲させる力が加わっても、送液路LPとバルーン25の内部空間との接続部においては、外筒シャフト30と内筒シャフト35との間の間隙が、内筒シャフト35の外周面及び外筒シャフト30の内周面31の全周に亘って安定して保持される。そして、送液路LPからの液体を、内筒シャフト35の外周面の全周を取り囲むようにしてバルーン25の内部空間に流入させて、内筒シャフト35の外周面上の加熱部材40に向かわせることができる。これにより、加熱部材40によって加熱された液体を、安定して効率良く拡散させることができる。
【0089】
なお、相対移動制限部材90の各制限要素91が上述した部分92を有する場合であって、
図15B~
図15Cに示すように制限要素91が外筒シャフト30の周方向に沿って等間隔に配置されている場合、施術中にバルーンカテーテル15にカテーテルシャフト28を屈曲させる力が加わっても、外筒シャフト30と内筒シャフト35を
図13に示す同軸状態に維持することができる。この場合、バルーン25の表面をさらに効率よく加熱することができる。すなわち、この場合、送液路LPからの液体が、内筒シャフト35の外周面上の加熱部材40の外周面を均等に取り囲むようにバルーン25内へ流れることができる。これにより、加熱部材40を取り囲む加熱された液体を、さらに効率良く拡散させることができる。
【0090】
次に、
図16A~
図16Cを参照して、相対移動制限部材90の変形例について説明する。
図16Aに示す例では、相対移動制限部材90は、内筒シャフト35に固定されている。より詳細には、この例では、相対移動制限部材90は、加熱部材40の近位端40bと外筒シャフト30の遠位端30aとの間において、内筒シャフト35の外周面上に固定されている。この例において、相対移動制限部材90は、上記径方向において、外筒シャフト30の内周面よりも外側に延び出している。
図16Aに示す例では、外筒シャフト30の内筒シャフト35に対する相対移動は、外筒シャフト30の遠位端30aが相対移動制限部材90に接触することによって制限される。言い換えると、外筒シャフト30は、その遠位端30aが相対移動制限部材90の近位端90bに接触するまで、内筒シャフト35に対して長手方向LDに沿って相対移動可能であるが、外筒シャフト30の遠位端30aが相対移動制限部材90の近位端90bに接触すると、内筒シャフト35に対して更に遠位側へ移動することはできない。このような相対移動制限部材90によっても、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合であっても、外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40の近位端40bとの距離DYを十分に大きく維持することができる。
【0091】
図示された例では、相対移動制限部材90は、その近位端90bと加熱部材40の近位端40bとの距離が3mm以上となるように、配置されている。このような相対移動制限部材90によれば、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合であっても、外筒シャフト30の遠位端と加熱部材40との距離DYを3mm以上に維持することができる。
【0092】
図16A~
図16Bに示す例では、相対移動制限部材90は、2つの制限要素93を含んでいる。2つの制限要素93は、それぞれ、全体として内筒シャフト35の中心軸線35Xを中心とする円の径方向に沿って延びている。2つの制限要素93は、内筒シャフト35の周方向に沿って、互いから離間して配置されている。これにより、相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の遠位端30aが相対移動制限部材90の近位端90bに接触したとき、外筒シャフト30を安定して支持することができる。
図16Bに示すように、相対移動制限部材90の制限要素93は、内筒シャフト35の周方向に沿って、等間隔に配置されていることが好ましい。この場合、相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の遠位端30aが相対移動制限部材90の近位端90bに接触したとき、外筒シャフト30を効果的に安定して支持することができる。
【0093】
なお、
図16Aに示す例においても、相対移動制限部材90が含む制限要素93の数は、2つに限られない。相対移動制限部材90は、任意の数の制限要素93を含んでよい。例えば、
図16Cに示すように、相対移動制限部材90は、3つの制限要素93を含んでよい。相対移動制限部材90が複数の制限要素93を含む場合、複数の制限要素93は、内筒シャフト35の周方向に沿って、互いから離間して配置されることが好ましい。これにより、相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の遠位端30aが相対移動制限部材90の近位端90bに接触したとき、外筒シャフト30を安定して支持することができる。また、相対移動制限部材90が複数の制限要素93を含む場合、複数の制限要素93は、内筒シャフト35の周方向に沿って、等間隔に配置されていることが好ましい。この場合、相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の遠位端30aが相対移動制限部材90の近位端90bに接触したとき、外筒シャフト30を効果的に安定して支持することができる。もちろん、
図16Aに示す例においても、相対移動制限部材90は、単一の制限要素93で構成されていてもよい。
【0094】
次に、
図17A~
図17Eを参照して、相対移動制限部材90の他の変形例について説明する。
図17A~
図17Cに示す例では、相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の内周面に固定される第1制限部材94と、内筒シャフト35の外周面に固定される第2制限部材95とを含んでいる。第1制限部材94は、外筒シャフト30の内周面から、外筒シャフト30の中心軸線30Xを中心とする円の径方向内側に延び出している。また、第2制限部材95は、内筒シャフト35の外周面から、内筒シャフト35の中心軸線35Xを中心とする円の径方向外側に延び出している。長手方向LDに見て、第1制限部材94の少なくとも一部は、第2制限部材95の少なくとも一部と重なっている。第1制限部材94は、第2制限部材95よりも近位側に配置されている。
図17A~
図17Cに示す例では、外筒シャフト30の内筒シャフト35に対する相対移動は、第1制限部材94が第2制限部材95に近位側から接触することによって制限される。言い換えると、外筒シャフト30は、第1制限部材94の遠位側を向く面94aが第2制限部材95の近位側を向く面95bに接触するまで、内筒シャフト35に対して長手方向LDに沿って相対移動可能であるが、第1制限部材94の遠位側を向く面94aが第2制限部材95の近位側を向く面95bに接触すると、内筒シャフト35に対して更に遠位側へ移動することはできない。このような相対移動制限部材90によっても、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合であっても、外筒シャフト30の遠位端と加熱部材40との距離DYを十分に大きく維持することができる。
【0095】
図示された例では、第1制限部材94及び第2制限部材95は、第1制限部材94と第2制限部材95が接触したときの外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40の近位端40bとの距離が3mm以上となるように、配置されている。このような相対移動制限部材90によれば、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合であっても、外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40の近位端40bとの距離DYを3mm以上に維持することができる。
【0096】
図17A~
図17Cに示す例では、第1制限部材94及び第2制限部材95は、それぞれ単一の制限要素96,97で構成されているが、これに限られない。第1制限部材94及び第2制限部材95は、それぞれ複数の制限要素96,97を含んでいてもよい。
図17D~
図17Eに示す例では、第1制限部材94及び第2制限部材95は、それぞれ2つの制限要素96,97を含んでいる。第1制限部材94の2つの制限要素96は、外筒シャフト30の周方向に沿って、互いから離間して配置されている。これに対応して、第2制限部材95の2つの制限要素97は、内筒シャフト35の周方向に沿って、互いから離間して配置されている。これにより、第1制限部材94が第2制限部材95に接触したとき、第2制限部材95は外筒シャフト30を安定して支持することができる。なお、
図17Dに示すように、第1制限部材94の制限要素96は、外筒シャフト30の周方向に沿って、等間隔に配置されていることが好ましい。これに対応して、
図17Dに示すように、第2制限部材95の制限要素97は、内筒シャフト35の周方向に沿って、等間隔に配置されていることが好ましい。この場合、第1制限部材94が第2制限部材95に接触したとき、第2制限部材95は外筒シャフト30を効果的に安定して支持することができる。
【0097】
もちろん、第1制限部材94及び第2制限部材95が複数の制限要素96,97を含む場合、各制限部材94,95の制限要素96,97の数は、2つに限られない。各制限部材94,95は、3以上の制限要素96,97を含んでよい。この場合、第1制限部材94の複数の制限要素96は、外筒シャフト30の周方向に沿って、互いから離間して配置されることが好ましい。これに対応して、第2制限部材95の複数の制限要素97は、内筒シャフト35の周方向に沿って、互いから離間して配置されることが好ましい。これにより、第1制限部材94が第2制限部材95に接触したとき、第2制限部材95は外筒シャフト30を安定して支持することができる。また、各制限部材94,95が3以上の制限要素96,97を含んでいる場合、第1制限部材94の複数の制限要素97は、外筒シャフト30の周方向に沿って、等間隔に配置されることが好ましい。これに対応して、第2制限部材95の複数の制限要素97は、内筒シャフト35の周方向に沿って、等間隔に配置されることが好ましい。この場合、第1制限部材94が第2制限部材95に接触したとき、第2制限部材95は外筒シャフト30を効果的に安定して支持することができる。
【0098】
なお、相対移動制限部材90を外筒シャフト30又は内筒シャフト35に固定する方法としては、任意の方法が採用可能である。例えば、相対移動制限部材90は、接着又は熱溶着によって外筒シャフト30又は内筒シャフト35に固定されてよい。
【0099】
また、相対移動制限部材90の材料としては、抗血栓性に優れる材料を用いて作製されていることが好ましい。抗血栓性に優れる材料として、フッ素ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン系ポリマー又はポリイミド等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
さらに、
図15Aに示す例では、相対移動制限部材90が内筒シャフト35に接触して内筒シャフト35に対して相対移動する。この場合、相対移動制限部材90の材料は、内筒シャフト35を外筒シャフト30に対して相対移動させる際に相対移動制限部材90と内筒シャフト35との間に働く摩擦力を考慮して決定されることが好ましい。すなわち、上記摩擦力によって内筒シャフト35と外筒シャフト30との円滑な摺動が阻害されることのないように、相対移動制限部材90の材料が決定されることが、好ましい。
【0101】
さらに、図示された例では、加熱部材40の周囲の加熱された液体を効率良く拡散させるための、さらなる工夫がなされている。具体的には、
図15A、
図16A及び
図17Aから理解されるように、加熱部材40は、内筒シャフト35の中心軸線35X方向から外筒シャフト30の内容積を投影した範囲内に配置されている。このような範囲内に加熱部材40を配置することにより、外筒シャフト30の内周面31と内筒シャフト35の外周面36とで囲まれた領域である送液路LPからバルーン25内へ供給される液体が加熱部材40へ向かうことを促進することができ、加熱部材40の周囲の液体の拡散効率を向上させることができる。
【0102】
以上のように、本実施の形態によれば、バルーンカテーテル15は、バルーン25とカテーテルシャフト28と温度センサ45と加熱部材40と相対移動制限部材90とを備えている。カテーテルシャフト28は、バルーン25の近位端25bに接続した外筒シャフト30と、バルーン25内に延び出してバルーン25の遠位端25bに接続した内筒シャフト35とを有している。内筒シャフト35は、外筒シャフト30内を通る。内筒シャフト35と外筒シャフト30との間隙は、バルーン25の内部空間に通じる送液路LPを成している。温度センサ45は、外筒シャフト30と内筒シャフト35との間に配置されている。加熱部材40は、バルーン25内において内筒シャフト35の外周面上に配置されバルーン25内の液体を加熱する。相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の遠位端30aが加熱部材40に接近する方向での外筒シャフト30の内筒シャフト35に対する相対移動を制限する。
【0103】
このようなバルーンカテーテル15によれば、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合であっても、外筒シャフト30が加熱部材に接近しすぎることが防止される。これにより、攪拌装置75によってバルーン25内から液体排出が行われる際、バルーン25の表面に沿って流れた液体が送液路LPに引き込まれやすくなり、温度センサ45でバルーン25の実際の表面温度に近い液体温度を測定することができる。この結果、バルーン25の実際の表面温度と温度センサ45で実測した温度に基づく推定表面温度との間のずれを抑制することができる。この結果、バルーン25の表面温度を精度よく推定することができる。
【0104】
また、本実施の形態によるバルーンカテーテル15において、相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の遠位端30aと加熱部材40の近位端40bとの距離が3mm以上となるように、外筒シャフト30の内筒シャフト35に対する相対移動を制限する。この場合、バルーン25の推定表面温度と実際の表面温度との温度差が大きくなりすぎることを効果的に抑制することができ、バルーン25の表面温度を精度高く推定することができる。
【0105】
また、本実施の形態によるバルーンカテーテル15において、相対移動制限部材90は、外筒シャフト30に固定されてバルーン25内に延び入っている。外筒シャフト30記内筒シャフト35に対する相対移動は、相対移動制限部材90が加熱部材40に接触することによって制限される。このような相対移動制限部材90によれば、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合に外筒シャフト30が加熱部材40に接近しすぎることを、防止することができる。
【0106】
また、本実施の形態によるバルーンカテーテル15において、相対移動制限部材90は、送液路LPとバルーン25の内部空間との接続部において内筒シャフト35の外周面及び外筒シャフト30の内周面が上記外周面及び上記内周面の全周に亘って互いから離間するように、内筒シャフト35の外周面に向けて延びる部分92を有する。このような相対移動制限部材90によれば、加熱部材40によって加熱された液体を、安定して効率良く拡散させることができ、バルーン25の表面を効率よく加熱することができる。
【0107】
また、本実施の形態によるバルーンカテーテル15において、相対移動制限部材90は、バルーン25の内部において内筒シャフト35の外周面に固定されている。外筒シャフト30の内筒シャフト35に対する相対移動は、外筒シャフト30の遠位端30aが相対移動制限部材90に接触することによって制限される。このような相対移動制限部材90によっても、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合に外筒シャフト30が加熱部材40に接近しすぎることを、防止することができる。
【0108】
また、本実施の形態によるバルーンカテーテル15において、相対移動制限部材90は、外筒シャフト30の内周面に固定される第1制限部材94と、内筒シャフト35の外周面に固定される第2制限部材95とを含む。外筒シャフト30の内筒シャフト35に対する相対移動は、第1制限部材94が第2制限部材95に接触することによって制限される。このような相対移動制限部材90によっても、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合に外筒シャフト30が加熱部材40に接近しすぎることを、防止することができる。
【0109】
また、本実施の形態によるバルーンカテーテル15において、加熱部材40は、内筒シャフト35の中心軸線35X方向から外筒シャフト30の内容積を投影した範囲内に配置されている。このようなバルーンカテーテル15によれば、外筒シャフト30の内周面31と内筒シャフト35の外周面36とで囲まれた領域(送液路LP)からバルーン25内へ供給される液体が加熱部材40へ向かうことを促進することができ、加熱部材40の周囲の液体の拡散効率を向上させることができる。
【0110】
また、本実施の形態によるバルーンカテーテル15において、外筒シャフト30の遠位端30aから温度センサ45までの距離DXは、5mm以上150mm以下である。この場合、攪拌装置75によってバルーン25内から液体排出が行われる際にバルーン25の表面に沿って流れた液体が安定して温度センサ45に到達し、温度センサ45はバルーン25の実際の表面温度に近い液体温度を安定して測定することができる。
【0111】
また、本実施の形態によるバルーンカテーテルシステム10は、上記バルーンカテーテル15と、送液路LPに液体を供給する供給装置74と、送液路LPへの液体供給及び送液路LPからの液体排出を繰り返してバルーン25内の液体を攪拌する攪拌装置75と、加熱部材40に電気的に接続され、加熱部材40に電気的エネルギーを付与する制御装置70と、を備えている。
【0112】
このようなバルーンカテーテルシステム10によれば、アブレーション中にバルーン25が標的部位に押し付けられた場合であっても、外筒シャフト30が加熱部材に接近しすぎることが防止される。これにより、攪拌装置75によってバルーン25内から液体排出が行われる際、バルーン25の表面に沿って流れた液体が送液路LPに引き込まれやすくなり、温度センサ45でバルーン25の実際の表面温度に近い液体の温度を測定することができる。この結果、バルーン25の表面温度を精度よく推定することができる。
【0113】
また、本実施の形態によるバルーンカテーテルシステム10において、制御装置70は、温度センサ45が取得した温度に関する情報に基づいて加熱部材40に電気的エネルギーを付与するように制御してもよい。
【0114】
上述した実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、上述した実施の形態やその変形を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、心房細動等の不整脈、子宮内膜症及び癌等の治療を行うためのバルーンカテーテルシステム及びバルーンカテーテルに用いることができる。
【符号の説明】
【0116】
10・・・カテーテルシステム、15・・・バルーンカテーテル、25・・・バルーン、30・・・外筒シャフト、30X・・・外筒シャフトの中心軸線、35・・・内筒シャフト、35X・・・内筒シャフトの中心軸線、40・・・加熱部材、45・・・温度センサ、50・・・ハンドル、70・・・制御装置、75・・・攪拌装置、90・・・相対移動制限部材、91・・・制限要素、92・・・内筒シャフト35の外周面に向けて延びる部分、93・・・制限要素、94・・・第1制限部材、95・・・第2制限部材、LP・・・送液路