(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095588
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】つけペン
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20230629BHJP
B43K 1/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B43K3/00 H
B43K1/02
B43K3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211565
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】守屋 知巳
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA01
2C350HA01
2C350HC01
2C350KA03
2C350KA07
(57)【要約】
【課題】インキ色の変更を簡単に行うことができ、さらに筆記距離を長くすることができるつけペンを得る。
【解決手段】軸体20の前方にペン体30を有したつけペン10であって、軸体20の前方に、ペン体30の裏面に当接するインキ貯留体40が固定され、インキ貯留体40が、ペン体30の裏面33に少なくとも一つが当接する複数の隔壁43と、複数の隔壁43の間で形成される複数の間隙44とを有し、間隙44が、軸筒20の軸心に対して20度から40度の範囲で傾斜する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の前方にペン体を有したつけペンであって、
前記軸体の前方に、前記ペン体の裏面に当接するインキ貯留体が固定され、
前記インキ貯留体が、前記ペン体の裏面に少なくとも一つが当接する複数の隔壁と、該複数の隔壁の間で形成される複数の間隙とを有し、
前記間隙が、前記軸筒の軸心に対して20度から40度の範囲で傾斜していることを特徴とするつけペン。
【請求項2】
前記ペン体が、前方の中心部に軸心に沿った切割りを有し、
前記複数の間隙の少なくとも最前方が、前記切割りの後端より前方に位置することを特徴とする請求項1に記載のつけペン。
【請求項3】
前記複数の隔壁の最後方に位置する隔壁と前記軸体の前端部との間に空間部が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載のつけペン。
【請求項4】
前記複数の隔壁の最前方に位置する隔壁のみが、前記ペン体の裏面に当接することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のつけペン。
【請求項5】
前記複数の間隙が前記ペン体の反対側から該ペン体側に向かって漸次狭くなることを特徴とする前記1項ないし4のいずれか1項に記載のつけペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸体の前方にペン体を有したつけペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、つけペンは、軸体の前方のペン体をインキ瓶のインキに浸漬させ、ペン体にインキを付着させた上で筆記を行う構造であり、ペン体に付着させることができるインキ量が限定されることから、一度のインキの付着による筆記距離に課題があった。
しかしながら、つけペンは構造が単純であることから、インキ色を変更したい場合には、ペン体に付着したインキを水で洗い流して、異なるインキ色のインキ瓶のインキにペン体を浸漬させ、異なるインキ色の筆跡を得ることが比較的簡単にできる。
【0003】
これに対し、万年筆は、軸筒の内部に、インキを収納したカートリッジや、インキ吸入器などのインキタンクを備えていることから(例えば、特許文献1参照)、インキタンクの内部に連通したペン芯を介して、インキタンク内のインキをペン体に供給させることができ、筆記距離を長くすることができる。
しかしながら、万年筆は、インキ色を変更したい場合には、軸筒の内部に収容されたインキカートリッジを交換したり、インキ吸入器内のインキを洗浄したりする必要があり、ペン芯のインキ溝や櫛溝や空気溝など、細い隙間に入り込んだインキを洗浄する必要があり、インキを除去するのに手間が掛かるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、インキ色の変更を簡単に行うことができ、さらに筆記距離を長くすることができるつけペンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるつけペンは、
「1.軸体の前方にペン体を有したつけペンであって、
前記軸体の前方に、前記ペン体の裏面に当接するインキ貯留体が固定され、
前記インキ貯留体が、前記ペン体の裏面に少なくとも一つが当接する複数の隔壁と、該複数の隔壁の間で形成される複数の間隙とを有し、
前記間隙が、前記軸筒の軸心に対して20度から40度の範囲で傾斜していることを特徴とするつけペン。
2.前記ペン体が、前方の中心部に軸心に沿った切割りを有し、
前記複数の間隙の少なくとも最前方が、前記切割りの後端より前方に位置することを特徴とする前記1項に記載のつけペン。
3.前記複数の隔壁の最後方に位置する隔壁と前記軸体の前端部との間に空間部が設けられたことを特徴とする前記1または2項に記載のつけペン。
4.前記複数の隔壁の最前方に位置する隔壁のみが、前記ペン体の裏面に当接することを特徴とする前記1項ないし3項のいずれか1項に記載のつけペン。
5.前記複数の間隙が前記ペン体の反対側から該ペン体側に向かって漸次狭くなることを特徴とする前記1項ないし4項のいずれか1項に記載のつけペン。」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インキ色の変更を簡単に行うことができ、さらに筆記距離を長くすることができるつけペンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0010】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0011】
図1から
図3は、本発明による一実施の形態を説明するための図であり、
図1Aは平面図、
図1Bは正面図、
図1Cは側面図である。
図2は、縦断面図である。
図3は、筆記時を示す縦断面図である。本実施の形態のつけペン10は、軸体20の前方にペン体30を有しており、ペン体30の下方には、インキ貯蔵体40が軸体20に固定され配設されている。
【0012】
軸体20の前方には開口部22が形成されており、開口部22の内面に形成した雌螺子に、内首50の外面に形成した雄螺子を螺合させて該内首50を軸体20と一体にしてある。内首50に形成した開口部51には、インキ貯留体40の円柱状の軸部41の後方に形成された大径軸42を挿着してある。ペン体30は、内首50に形成したスリット52に後方部31を挿着して固定されている。
【0013】
次に、
図2を用いてインキ貯留体40について詳述を行う。なお、
図2ではインキ貯留部40を側面視で表現してある。インキ貯留体40は、円柱状の軸部41の外面に複数の板状の隔壁43が設けられ、隔壁43の間には複数の間隙44が設けられている。隔壁43は、前方から後方に向かって第一隔壁43a,第二隔壁43b,第三隔壁43c,第四隔壁43dの4つが形成され、それぞれの隔壁43の間には、前方から後方に向かって、第一間隙44a,第二間隙44b,第三間隙44cの3つが形成されている。
【0014】
各隔壁43の厚みは、0.5mmから1.0mmの範囲で形成することが好ましく、本実施形態では各隔壁43の厚みを、ペン体30側(上側)で0.55mm、ペン体30の反対側(下側)で0.50mmに形成した。また、各間隙45の隙間巾(隔壁に直交する方向の距離)は、0.8mmから2.0mmの範囲で形成することが好ましく、本実施形態では各間隙45の隙間巾を、ペン体30側(上側)で0.80mm、ペン体30の反対側(下側)で0.85mmとなるよう形成した。
【0015】
また、隔壁43及び間隙44は、軸心に対して20度から40度の範囲で後方へ向かって外方に傾斜するよう形成することが好ましく、本実施形態では30度で傾斜するよう形成した。
【0016】
また、ペン体30の前方の中心部には長手方向に延びる切割り32が設けられており、切割り32の後端32aの位置が、第二隔壁43bと第三隔壁43cとの間に形成された第二間隙45bの上方に位置する。本実施形態では、ペン体30の切割り32の長さを、先端32bから後端32aまでの長さが10mmとなるように形成した。
【0017】
また、複数の隔壁43の最後方に位置する第四隔壁43dと、軸体20の前端21との間には空間部60が設けられている。本実施形態では、空間部60の軸線方向における長さが2.0mmとなるよう形成してある。
【0018】
本実施形形態では、複数の隔壁43の最前方に位置する第一隔壁43aのみが、ペン体30の裏面に当接する。残りの第二隔壁43b,第三隔壁43c,第四隔壁43dは、ペン体30の裏面33と若干離間している。
【0019】
次に、
図3を用いて、本実施形態のつけペンにて筆記を行う状態について説明を行う。
図3は、つけペン10のペン体30を、インキ瓶のインキに浸漬したあとの状態であり、紙面100に対して軸体20が45度傾斜した状態で筆記が行われている状態である。
インキ貯留体40の複数の間隙44には、インキ110が貯留されており、インキ110がペン体30の裏面33に接触している。前述の通り、本実施形態では、複数の隔壁43の最前方に位置する第一隔壁43aのみが、ペン体30の裏面33に当接しており、ペン体30と隔壁43aの間の微少な隙間に強い毛細管力が働いて、ペン体30の先端32bまでインキ110を効率よく供給させることができる。
【0020】
また、第一隔壁43aと第二隔壁43bとの間に形成される第一間隙44aが、切割り32の後端32aの位置より前方に位置していることから、インキ貯留体40に貯留されたインキ110を、ペン体30の前方位置でペン体30側に供給させることができ、円滑な筆記が可能となる。
【0021】
なお、一般的につけペンは、軸体20を紙面に対して40度から60度の角度で傾斜させて筆記することが多いが、本実施形態では、複数の間隙44のそれぞれが、軸心に対して30度の角度で後方へ向かって外方に傾斜していることから、筆記時において、インキ貯留体40の間隙44内に貯留されたインキ110が、ペン体30の反対側からこぼれることなく、ペン体30側に寄り、常にペン体30にインキ110を供給し続けることができる。
【0022】
さらに、各間隙44の隙間巾を、ペン体30側(上側)で0.80mm、ペン体30の反対側(下側)で0.85mmとなるように、ペン体30の反対側から該ペン体30側に向かって漸次狭くなるよう形成したことから、各間隙44内に毛細管力が生じて、ペン体30にインキ110を供給しやすくなる。
【0023】
本実施形態では、第一隔壁43a、第二隔壁43b、第三隔壁43cのそれぞれの長さを7.5mmで形成しており、第四隔壁43dの長さを6.5mmで形成しており、間隙44に、最大0.034mlのインキ110を貯留させて、長い距離を筆記することが可能となる。
【0024】
次に、つけペン10を洗浄する際について説明を行う。本実施形態では、インキ貯留体40を上方に向け、上方から水を流すことにより、間隙44内に水が入り込ませながらインキを洗浄することができる。このとき、本実施形態では、第一間隙45a,第二間隙45b,第三間隙45cが、狭い箇所でも0.8mmの隙間で形成してあることから、内部に水が入り込みやすく、インキを洗浄しやすい。
【0025】
また、第一隔壁43aのみがペン体30の裏面33に当接していることから、その他の第二隔壁43b,第三隔壁44c,第四隔壁44dとペン体30の裏面33との間のインキは簡単に洗浄することができる。なお、ペン体30の裏面33に当接している第一隔壁43aは、最前方にあることから、先端32b側から水を当てやすく、隙間のインキを洗浄しやすい。
【0026】
また、複数の隔壁43の最後方に位置する第四隔壁43dと、軸体20の前端21との間に、長さが2mmの空間部60を設けてあることから、空間部60に水を当てることで、軸体20の前端21も洗浄しやすい。
【0027】
以上の通り、本実施形態のつけペン10は、全ての部分が開放されており、また、各隙間が広いことから、簡単にインキを洗浄することができる。
【符号の説明】
【0028】
10…つけペン、
20…軸体、21…前端、22…開口部、
30…ペン体、31…後方部、32…切割り、32a…後端、32b…先端、33…裏面、
40…インキ貯蔵体、41…軸部、42…大径軸、
43…隔壁、
43a…第一隔壁、43b…第二隔壁、43c…第三隔壁、43d……第四隔壁、
44…間隙、
44a…第一間隙、44b…第二間隙、44c…第三間隙、
50…内首、51…開口部、52…スリット、
60…空間部、
100…紙面、110…インキ。