IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パイロットコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-筆記具 図1
  • 特開-筆記具 図2
  • 特開-筆記具 図3
  • 特開-筆記具 図4
  • 特開-筆記具 図5
  • 特開-筆記具 図6
  • 特開-筆記具 図7
  • 特開-筆記具 図8
  • 特開-筆記具 図9
  • 特開-筆記具 図10
  • 特開-筆記具 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095594
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/00 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
B43K24/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211571
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】岩原 卓
(72)【発明者】
【氏名】菅原 良昌
(72)【発明者】
【氏名】清水 有羽
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HA08
2C353HA09
2C353HJ15
(57)【要約】
【課題】ペン先の没入状態において、ペン先の収容空間の密閉状態を十分に確保すること。
【解決手段】筆記具10は、前端開口部20aを有する軸筒20と、ペン先13を有する筆記部材12と、ペン先13を前端開口部20aから出没させる出没機構40と、ペン先13の没入状態においてペン先13の収容空間Sを密閉する密閉機構70と、を備え、密閉機構70は、軸筒20に対して固定された固定部材72と、筆記部材12と一体に前後動可能な移動部材74と、を有し、固定部材72と移動部材74とが軸方向daに当接することによって、収容空間Sを密閉する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端開口部を有する軸筒と、ペン先を有する筆記部材と、前記ペン先を前記前端開口部から出没させる出没機構と、前記ペン先の没入状態において前記ペン先の収容空間を密閉する密閉機構と、を備えた筆記具であって、
前記密閉機構は、
前記軸筒に対して固定された固定部材と、
前記筆記部材と一体に前後動可能な移動部材と、を有し、
前記固定部材と前記移動部材とが軸方向に当接することによって、前記収容空間を密閉する、筆記具。
【請求項2】
前記移動部材を後方に付勢する弾発部材を有する、請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記弾発部材は、前記移動部材を介して前記筆記部材を後方に付勢する、請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記収容空間の少なくとも一部を取り囲む筒状部材を有し、
前記移動部材は、前記筒状部材に当接している、請求項1~3のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項5】
前記移動部材は、前記軸方向に沿った空気の流れを許容する流路を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項6】
前記流路は、前記移動部材の外周面に形成された切欠き部を含む、請求項5に記載の筆記具。
【請求項7】
前記流路は、前記移動部材を貫通する貫通孔を含む、請求項5又は6に記載の筆記具。
【請求項8】
前記軸方向から見たときに、前記流路の全体と前記固定部材とが重なる、請求項5~7のいずれか一項に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸筒と、ペン先部を有する筆記部材と、ペン先部を軸筒から出没させる出没機構と、を備えた筆記具が知られている。また、このような筆記具において、ペン先部の没入状態において、ペン先部でのインキの乾燥を防止するために、ペン先の収容空間を密閉する密閉機構を備えた筆記具も知られている。
【0003】
特許文献1には、軸筒と、軸筒内に配置され先端にチップを有するカートリッジと、カートリッジの外周に外嵌されたOリングとを備えた出没式筆記具が開示されている。この出没式筆記具では、Oリングが軸筒の内面に密着することにより、軸筒の先端開口とOリングとの間の軸筒の内部空間を気密状態に維持し、チップにおけるインキの乾きが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-166500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された出没式筆記具では、カートリッジのチップを出没させる際には、軸筒とOリングとが径方向に当接したまま、軸筒に対してOリングが前後方向に摺動する。この場合、軸筒とOリングとの間に生じる摩擦によって、Oリングが摩耗したり破損したりするおそれがある。Oリングの摩耗や破損により軸筒とOリングとの間に隙間が生じると、軸筒の先端開口とOリングとの間の軸筒の内部空間を気密状態に維持することができなくなる。これにより、チップにおいてインキが乾燥する問題がある。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ペン先の没入状態において、ペン先の収容空間の密閉状態を十分に確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による筆記具は、
前端開口部を有する軸筒と、ペン先を有する筆記部材と、前記ペン先を前記前端開口部から出没させる出没機構と、前記ペン先の没入状態において前記ペン先の収容空間を密閉する密閉機構と、を備えた筆記具であって、
前記密閉機構は、
前記軸筒に対して固定された固定部材と、
前記筆記部材と一体に前後動可能な移動部材と、を有し、
前記固定部材と前記移動部材とが軸方向に当接することによって、前記収容空間を密閉する。
【0008】
本発明による筆記具において、
前記移動部材を後方に付勢する弾発部材を有してもよい。
【0009】
本発明による筆記具において、
前記弾発部材は、前記移動部材を介して前記筆記部材を後方に付勢してもよい。
【0010】
本発明による筆記具において、
前記収容空間の少なくとも一部を取り囲む筒状部材を有し、
前記移動部材は、前記筒状部材に当接してもよい。
【0011】
本発明による筆記具において、
前記移動部材は、前記軸方向に沿った空気の流れを許容する流路を含んでもよい。
【0012】
本発明による筆記具において、
前記流路は、前記移動部材の外周面に形成された切欠き部を含んでもよい。
【0013】
本発明による筆記具において、
前記流路は、前記移動部材を貫通する貫通孔を含んでもよい。
【0014】
本発明による筆記具において、
前記軸方向から見たときに、前記流路の全体と前記固定部材とが重なってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ペン先の没入状態において、ペン先の収容空間の密閉状態を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態について説明するための図であって、筆記具の一例を没入状態で示す縦断面図である。
図2図2は、図1の筆記具の前方部分を拡大して示す縦断面図である。
図3図3は、筆記具を突出状態で示す縦断面図である。
図4図4は、図3の筆記具の前方部分を拡大して示す縦断面図である。
図5図5は、筆記具の移動部材の断面形状の一例を示す横断面図である。
図6図6は、移動部材の断面形状の他の例を示す横断面図である。
図7図7は、移動部材の断面形状のさらに他の例を示す横断面図である。
図8図8は、移動部材の断面形状のさらに他の例を示す横断面図である。
図9図9は、移動部材の断面形状のさらに他の例を示す横断面図である。
図10図10は、移動部材の断面形状のさらに他の例を示す横断面図である。
図11図11は、移動部材の断面形状のさらに他の例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0018】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0019】
本明細書では、筆記具10の中心軸線Aが延びる方向(長手方向)を軸方向da、軸方向daと直交する方向を径方向、中心軸線A周りの円周に沿った方向を周方向dcとする。軸方向daに沿って、ペン先側を前方とし、ペン先と反対側を後方とする。また、径方向に沿って、中心軸線Aに近づく側を内側又は内方、中心軸線Aから遠ざかる側を外側又は外方とする。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態について説明するための図であって、筆記具10の一例を没入状態で示す縦断面図であり、図2は、没入状態の筆記具10の前方部分を拡大して示す縦断面図である。図3は、筆記具10を突出状態で示す縦断面図であり、図4は、突出状態の筆記具10の前方部分を拡大して示す縦断面図である。
【0021】
本実施形態の筆記具10は、筆記部材12と、軸筒20と、出没機構40と、密閉機構70とを含んでいる。筆記具10は、中心軸線Aに沿って延びている。筆記部材12は、紙面等の筆記面に筆跡を形成する部材である。筆記部材12は、軸筒20内に収容されている。筆記部材12としては、ボールペン、万年筆、マーカー等に用いられる部材が挙げられる。本実施形態では、筆記具10が万年筆である例について説明する。本実施形態の筆記部材12は、インキと、インキを収容する収容筒と、前端部に設けられたペン先13と、第1受部14と、突出部15とを有する。第1受部14は、筆記部材12の外面に形成された段部における前方を向く面であり、後述の移動部材74を介して、後述の弾発部材42の弾発力を受ける。突出部15は、筆記部材12の本体部から径方向の外側に突出する。
【0022】
出没機構40は、筆記具10を、軸筒20の前端開口部20aからペン先13が突出する突出状態と、前端開口部20aからペン先13が没入する没入状態と、に交互に切り換えるための機構である。
【0023】
軸筒20は、前軸21と、前軸21の前方に配置された先端部材30と、前軸21の後方に配置された後軸31とを含んでいる。軸筒20の中心軸線は、筆記具10の中心軸線Aと一致している。軸筒20の前端には、ペン先13が通過可能な前端開口部20aが設けられている。本実施形態では、先端部材30の前端に前端開口部20aが形成されている。
【0024】
前軸21は、略筒状の形状を有する部材であり、使用者が筆記具10で筆記を行う際に、指でつかむことが意図されている。前軸21は、内軸22と、内軸22に対して径方向の外側に配置された外軸25と、第1連結部材26と、筒状部材27と、前方密閉部材29とを含んでいる。
【0025】
内軸22は、筆記部材12の前方部分を収容する部材である。内軸22は、略筒状の形状を有する部材である。内軸22の内面は、大径部22aと、大径部22aの前方に位置する小径部22bとを含んでいる。小径部22bの径方向の寸法は、大径部22aの径方向の寸法よりも小さい。没入状態において、大径部22aは、筆記部材12の本体部少なくとも一部を収容し、小径部22bは、ペン先13を収容する。没入状態においてペン先13を収容する小径部22bの径方向の寸法が大径部22aの径方向の寸法よりも小さいことにより、後述する収容空間Sの容積が小さくなる。これにより、収容空間S内におけるペン先13からのインキの蒸発量を低減することができる。
【0026】
大径部22aと小径部22bとの間には、段部23が形成されている。また、大径部22aの内面には、筆記部材12の突出部15と係合する溝部24が形成されている。溝部24は軸方向daに延びる溝であり、筆記部材12の突出部15が溝部24内に位置することにより、筆記部材12が、軸筒20に対して軸方向daには移動可能且つ周方向には回転不能に支持される。内軸22は、例えば樹脂により形成される。
【0027】
外軸25は、使用者から視認される部材であるとともに、使用者が筆記具10で筆記を行う際に指でつかむ部材である。したがって、外軸25は、意匠性や使用者による持ちやすさを考慮して、適切な材料で形成される。例えば、外軸25は、樹脂、エラストマー、金属、木材等で形成されてもよい。第1連結部材26は、後軸31との連結部を構成する部材である。第1連結部材26は、内軸22及び外軸25の少なくとも一方の後端部に固定されている。例えば、第1連結部材26は、接着により内軸22及び外軸25の少なくとも一方の後端部に固定されてもよい。第1連結部材26は、例えば樹脂、金属等により形成される。なお、図示した例に限られず、内軸22及び外軸25が単一の部材で構成されてもよい。また、内軸22、外軸25及び第1連結部材26が単一の部材で構成されてもよい。すなわち、前軸21の全体が一体に形成されてもよい。
【0028】
筒状部材27及び前方密閉部材29は、ペン先13の収容空間Sを画定する部材である。筒状部材27は、中心軸線Aと一致する中心軸線を有する略円筒状の形状を有する部材である。筒状部材27は、内軸22に対して固定されている。詳細には、筒状部材27は、内軸22の小径部22bに取り付けられている。筒状部材27は、例えば、圧入、接着、ネジ部の螺合により、内軸22に取り付けられる。筒状部材27の材料は特に限られないが、例えば、金属、樹脂等を用いることができる。前方密閉部材29は、前端が後述の蓋部17により閉止されることにより、収容空間Sの前端部を密閉するための部材である。前方密閉部材29は、筒状部材27の前端に取り付けられている。とりわけ、前方密閉部材29は、前方密閉部材29と筒状部材27との間が密閉されるように、筒状部材27に取り付けられている。前方密閉部材29は、例えば、ゴム等の弾性部材で形成される。
【0029】
筒状部材27には、蓋部17が取り付けられている。蓋部17は、没入状態において前方密閉部材29の前端を閉止して収容空間Sを密閉するとともに、突出状態においてペン先13の突出を許容する。蓋部17は、弾発部材18により、ペン先13の収容空間を密閉する方向に付勢されている。弾発部材18は、例えばねじりバネである。本実施形態では、没入状態においては、弾発部材18の弾発力により蓋部17が閉じており、収容空間Sが密閉されている(図1及び図2参照)。これにより、ペン先13におけるインキの乾燥が抑制される。没入状態から突出状態に遷移する際には、前方に移動したペン先13が蓋部17を前方に押すことにより蓋部17が開き、ペン先13が軸筒20の前端開口部20aから前方へ突出する(図3及び図4参照)。この突出状態において、筆記具10による筆記が可能になる。
【0030】
先端部材30は、軸筒20の先端部分を形成する部材である。先端部材30は、筒状部材27、前方密閉部材29、蓋部17及び弾発部材18を保護する機能を有する。先端部材30は、略円錐台形状を有しており、前方に向かうにつれてその外径が小さくなっている。先端部材30の前端には、ペン先13が出没する前端開口部20aが形成されている。先端部材30の後端部が前軸21の前端部に取付けられることにより、先端部材30が前軸21に対して連結される。先端部材30は、例えば、圧入、接着、ネジ部の螺合により、前軸21に連結される。
【0031】
後軸31は、前軸21の後方に配置された、略筒状の形状を有する部材である。後軸31は、内軸32と、内軸32に対して径方向の外側に配置された外軸35と、第2連結部材36と、頭冠38とを含んでいる。
【0032】
内軸32は、筆記部材12の後方部分を収容する部材である。内軸32は、略筒状の形状を有する部材である。内軸32は、例えば、樹脂、金属、木材等で形成される。内軸32の内周面には、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯と、カム歯間に形成され軸方向daに延びる溝部と、が形成されている。
【0033】
外軸35は、使用者から視認される部材である。したがって、外軸35は、意匠性等を考慮して、適切な材料で形成される。例えば、外軸35は、樹脂、エラストマー、金属、木材等で形成されてもよい。第2連結部材36は、前軸21との連結部を構成する部材である。第2連結部材36は、内軸32及び外軸35の少なくとも一方の前端部に固定されている。例えば、第2連結部材36は、接着により内軸32及び外軸35の少なくとも一方の前端部に固定されてもよい。第2連結部材36は、例えば樹脂、金属等により形成される。なお、図示した例に限られず、内軸32及び外軸35が単一の部材で構成されてもよい。また、内軸32、外軸35及び第2連結部材36が単一の部材で構成されてもよい。すなわち、後軸31の全体が一体に形成されてもよい。
【0034】
出没機構40は、筆記具10を、突出状態と没入状態とに交互に切り換えるための機構である。本実施形態の出没機構40は、ノック部材50と、回転カム部材60と、第1弾発部材(弾発部材)42と、第2弾発部材44と、を含んでいる。
【0035】
第1弾発部材(弾発部材)42は、例えばコイルスプリングである。第1弾発部材42は、筆記部材12の第1受部14と、軸筒20(前軸21)の第2受部28との間に圧縮状態で配置されている。本実施形態では、第1受部14は、移動部材74を介して第1弾発部材42からの弾発力を受ける。これにより、第1弾発部材42は、軸筒20に対して筆記部材12を後方へ向けて常に付勢している。なお、第1弾発部材42は、出没機構40の一部を構成するとともに、後述するように密閉機構70の一部を構成する。
【0036】
ノック部材50は、使用者により操作されることが意図された部材である。ノック部材50は、操作部52と、操作部52の前方に位置する拡径部54と、を含んでいる。操作部52は、使用者の指等で押圧される部分である。操作部52は、軸筒20(後軸31)の後端から後方に突出している。没入状態及び突出状態において、操作部52の後端は軸筒20の後端から後方に突出する。拡径部54は、操作部52の径方向寸法よりも大きな径方向寸法を有する。軸筒20の後端部の内径は、操作部52は通過可能であるが、拡径部54は通過不能である大きさを有している。したがって、ノック部材50は、軸筒20の後端部から後方へ抜け出ることがない。
【0037】
拡径部54の前端には、前方に突出するカム歯が形成されている。また、拡径部54の外周面には、軸筒20(後軸31)の内周面に形成された溝部に係合する突出部が形成されている。ノック部材50は、突出部が軸筒20の溝部に係合した状態で、軸方向daに移動可能且つ周方向に回転不能に配置されている。
【0038】
ノック部材50の内部には、軸方向daに延びる穴部56が形成されている。本実施形態では、穴部56は、ノック部材50の前端において開口し、ノック部材50の後端において閉塞している。穴部56の内面には、径方向の内側に向かって突出する内方突出部58が形成されている。
【0039】
回転カム部材60は、その外面に、軸方向daに延びるとともに軸筒20の溝部に係合する複数の突条を有している。突条の後端には、軸方向da及び周方向に対して傾斜したカム面が形成されている。カム面は、ノック部材50のカム歯と係合する。回転カム部材60は、軸方向daに沿って後方に突出する後方突出部62を有している。後方突出部62の後端には、係合部64が設けられている。係合部64は、後方突出部62から径方向の外側に向かって突出する突出部である。係合部64は、ノック部材50の内方突出部58に係合して、ノック部材50と回転カム部材60との軸方向daの移動を規制する。
【0040】
ノック部材50と回転カム部材60との間には、第2弾発部材44が配置されている。第2弾発部材44は、例えばコイルスプリングである。第2弾発部材44は、筆記部材12の後方における軸筒20内に配置されている。詳細には、第2弾発部材44は、ノック部材50と回転カム部材60との間に圧縮状態で配置されている。したがって、第2弾発部材44は、回転カム部材60に対してノック部材50を後方へ向けて常に付勢している。これにより、ノック部材50は、回転カム部材60に対して後方へ移動するが、回転カム部材60の係合部64がノック部材50の内方突出部58に係合することにより、ノック部材50が回転カム部材60に対してそれ以上後方へ移動することが妨げられる。回転カム部材60の係合部64がノック部材50の内方突出部58に係合した状態で、第2弾発部材44によってノック部材50が後方へ付勢されることにより、ノック部材50ががたつくことが抑制される。
【0041】
軸筒20の溝部、ノック部材50のカム歯及び突出部、並びに、回転カム部材60の突条及びカム面の具体的な構造及び動作は公知であるので、詳細な説明は省略する。一例として、これらの具体的な構造として、特開2013-006281号公報に開示された機構の構造を用いることが可能である。
【0042】
本実施形態の筆記具10は、ペン先13の収容空間Sを密閉する密閉機構70を有する。以下、主に図2を参照しながら、この密閉機構70について説明する。本実施形態の密閉機構70は、収容空間Sの後端を密閉する機構である。密閉機構70は、固定部材72と、移動部材74と、第1弾発部材(弾発部材)42と、第2弾発部材44とを含む。
【0043】
固定部材72は、軸筒20(前軸21)に対して固定された部材である。固定部材72は、中心軸線Aを取り囲んで周方向dcに延びる環状の形状を有している。とりわけ、固定部材72は、筆記部材12の外側に配置されている。また、固定部材72は、径方向において筆記部材12と軸筒20との間に配置されている。径方向に沿って、固定部材72の内周面73と筆記部材12との間には、隙間が形成されている。この隙間は、筆記部材12が前方へ移動した際に収容空間Sから流出した空気が流れる流路となる。図2に示された例では、固定部材72は、軸筒20の筒状部材27に対して固定されている。筒状部材27の後端部は、内軸22の段部23から後方へ突出して延びており、固定部材72は、この後端部に固定されている。固定部材72は、例えば、接着、圧入等により、筒状部材27に取り付けられる。固定部材72の材料としては、例えば、ゴム等の弾性材料を用いることができる。
【0044】
移動部材74は、筒状部材27に対して径方向の内側に配置された部材である。移動部材74は、中心軸線Aを取り囲んで周方向dcに延びる環状の形状を有している。本実施形態では、移動部材74は、軸方向daにおいて、第1弾発部材42と筆記部材12の第1受部14との間に配置されている。したがって、移動部材74は、第1弾発部材42の弾発力により、第1受部14へ向けて付勢されている。これにより、没入状態から突出状態へ遷移する際に、筆記部材12が前方へ移動すると、移動部材74は第1受部14からの押圧力を受けて筆記部材12とともに前方へ移動する。また、突出状態から没入状態へ遷移する際に、筆記部材12が後方へ移動すると、移動部材74は第1弾発部材42の弾発力を受けて筆記部材12とともに後方へ移動する。すなわち、移動部材74は、没入状態から突出状態へ遷移する際にも、突出状態から没入状態へ遷移する際にも、筆記部材12と一体に前後動可能である。
【0045】
図2に示された例では、移動部材74は、筒状部材27に当接している。とりわけ、移動部材74における径方向外側に位置する外周面75が、筒状部材27の内周面に当接している。なお、移動部材74の外周面75は、周方向dcの全周にわたって筒状部材27に当接してもよいし、一部に後述する隙間が設けられることにより、周方向dcの全周のうち一部のみが筒状部材27に当接してもよい。移動部材74が筒状部材27に当接している場合、移動部材74が前後動する際には、移動部材74は筒状部材27に当接したまま移動する。これにより、移動部材74と筒状部材27との間に摩擦力が生じる。これにより、筒状部材27に対する移動部材74の移動速度が小さくなる。上述したように、突出状態において、ノック部材50が前方へ押圧された後にこの押圧が解除されると、第1弾発部材42の弾発力により、筆記部材12が後方に向かって移動する。このとき、筒状部材27に対する移動部材74の移動速度が小さくなることにより、使用者がノック部材50の押圧を解除した後に、筆記部材12はゆっくりと後方へ移動する。したがって、ノック部材50もゆっくりと後方へ移動する。これにより、筆記具10の出没動作に高級感を与えることができる。
【0046】
没入状態において、筆記部材12は、第2弾発部材44の弾発力により、回転カム部材60を介して前方へ向けて付勢されている。したがって、没入状態では、筆記部材12の第1受部14は、移動部材74に対して密着している。すなわち、移動部材74と第1受部14との間が密閉される。
【0047】
第1弾発部材42の弾発力は、第2弾発部材44の弾発力よりも大きい。移動部材74が筒状部材27に当接している場合には、第1弾発部材42の弾発力は、移動部材74と筒状部材27との間に生じる摩擦力と第2弾発部材44の弾発力との和よりも大きい。これにより、没入状態において、移動部材74は、軸方向daの移動可能範囲の最後部に位置し、固定部材72に対して軸方向daの前方から当接する。とりわけ、移動部材74は、固定部材72に対して密着する。すなわち、移動部材74と固定部材72との間が密閉される。したがって、密閉機構70により、収容空間Sの後端が密閉される。
【0048】
従来の出没式筆記具では、Oリング等の密閉部材が軸筒等の部材に対して径方向に密着することにより、ペン先の収容空間を密閉していた。このような筆記具では、密閉部材が筆記部材とともに前後動すると、密閉部材が軸筒等の部材に対して摺動し、密閉部材が摩耗したり破損したりする場合がある。密閉部材の摩耗や破損により軸筒と密閉部材との間に隙間が生じると、収容空間を気密状態に維持することができなくなる。これにより、ペン先においてインキが乾燥するおそれがある。
【0049】
これに対して、本実施形態では、固定部材72と移動部材74とが軸方向daに当接することによって、ペン先13の収容空間Sを密閉する。これにより、移動部材74に摩耗や破損が生じ、筒状部材27と移動部材74との間に隙間が生じたとしても、固定部材72と移動部材74とは軸方向daに密着するので、収容空間Sの密閉を維持することができる。
【0050】
また、従来技術のように、密閉部材が軸筒等の部材に対して径方向に密着することにより、ペン先の収容空間を密閉する場合、密閉部材が所定の寸法よりも小さいと、密閉部材が軸筒等の部材との間に隙間が生じ、収容空間を適切に密閉できなくなる。また、密閉部材が所定の寸法よりも大きいと、密閉部材が軸筒等の部材との間に生じる摩擦力が大きくなり、筆記部材の前後動が妨げられる。したがって、この場合には、密閉部材についての高い寸法精度が要求され、部品の製造コストが上昇する。
【0051】
これに対して、本実施形態では、第1弾発部材42の弾発力により、軸方向daに沿って移動部材74が固定部材72に押し付けられるので、移動部材74や固定部材72の寸法精度が高くなくても、移動部材74を固定部材72に対して適切に密着させることができる。これにより、部品の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0052】
筆記部材12と筒状部材27との間の空間が移動部材74によって完全に密閉されている場合、没入状態から筆記部材12が前方へ移動した際に、蓋部17と移動部材74とにより密閉された空間の体積が減少するのにともなって、この空間の圧力が増大する。この場合、増大した圧力により筆記部材12を後方へ押し戻す力が発生し得る。これにより、筆記具10を没入状態から突出状態へ遷移させるために、使用者がノック部材50に大きな押圧力を与えなければならない場合がある。また、蓋部17と移動部材74とにより密閉された空間の圧力が上昇した状態で蓋部17が開いた場合、蓋部17が開いた瞬間に当該空間の圧力が急減する。この圧力の急減により、ペン先13からインキが漏れ出すおそれもある。なお、後述するように、この増大した圧力は、ペン先13が蓋部17を前方に押す際に、蓋部17を開くための補助力ともなり得る。したがって、筆記部材12と筒状部材27との間の空間が移動部材74によって完全に密閉されている形態も、好ましい実施形態から排除されない。
【0053】
本実施形態では、移動部材74は、軸方向daに沿った空気の流れを許容する流路76を含んでいる。これにより、没入状態から筆記部材12が前方へ移動した際に、移動部材74が固定部材72から離間すると、蓋部17と移動部材74との間の空間と移動部材74よりも後方の空間とが流路76を介して連通する。したがって、蓋部17と移動部材74との間の空間の体積が減少しても、この空間の圧力は変化しない。これにより、使用者は、この空間内の圧力による筆記部材12を後方へ押し戻す力を受けることなく、ノック部材50を前方へ押圧することができる。また、蓋部17が開いた際に、蓋部17と移動部材74との間の空間の圧力が急減することがないので、ペン先13からインキが漏れ出すことを抑制することができる。
【0054】
以下、図5図11を参照して、このような流路76の具体的な形状の例について説明する。図5図11は、図2のA-A線に対応する横断面図であり、移動部材74における中心軸線Aと直交する断面が示されている。図5図11では、軸方向daに沿って見たときの固定部材72の内周面73が破線で示されている。また、図5図11では、筆記部材12の図示は省略している。
【0055】
流路76は、移動部材74の外周面75に形成され、軸方向daに延びる切欠き部77を含んでもよい。図5図8に示された例では、移動部材74は、円形状の外周面75に形成された切欠き部77を有している。とりわけ、図示された例では、移動部材74は、周方向dcに並んだ複数の切欠き部77を有している。本実施形態では、切欠き部77は、軸方向daと平行に延びているが、これに限られず、切欠き部77は、軸方向daに対して傾斜した方向に延びてもよい。図5に示された例では、切欠き部77は、軸方向daから見て直線状の形状を有している。図6に示された例では、切欠き部77は、一定の深さを有する形状を有している。ここでの深さは、外周面75の延長線から径方向の内側に向かって測定される寸法である。図7に示された例では、切欠き部77は、径方向の内側に向かって凸となる円弧形状を有している。図8に示された例では、切欠き部77は、径方向の外側に向かって凸となる2つの円弧を組み合わせた形状を有している。なお、図5に示された例では、移動部材74は4個の切欠き部77を有し、図6に示された例では、移動部材74は6個の切欠き部77を有し、図7に示された例では、移動部材74は8個の切欠き部77を有し、図8に示された例では、移動部材74は12個の切欠き部77を有しているが、切欠き部77の数は任意でありこれらに限られない。
【0056】
流路76は、移動部材74を貫通する貫通孔78を含んでもよい。図9及び図10に示された例では、移動部材74は、軸方向daに沿って延びる貫通孔78を有している。とりわけ、図示された例では、移動部材74は、周方向dcに並んだ複数の貫通孔78を有している。本実施形態では、貫通孔78は、軸方向daと平行に延びているが、これに限られず、貫通孔78は、軸方向daに対して傾斜した方向に延びてもよい。図9に示された例では、貫通孔78は、軸方向daから見て円形の形状を有している。図10に示された例では、貫通孔78は、周方向dcに沿って延びる長円状の形状を有している。なお、図9に示された例では、移動部材74は16個の貫通孔78を有し、図10に示された例では、移動部材74は3個の貫通孔78を有しているが、貫通孔78の数は任意でありこれらに限られない。なお、流路76は、切欠き部77及び貫通孔78の両方を含んでもよい。
【0057】
移動部材74は、筒状部材27に当接していなくてもよい。図11に示された例では、移動部材74の外周面75と筒状部材27の内周面との間には、外周面75の全周にわたって隙間が形成されており、この隙間が流路76を形成する。
【0058】
図5図11に示された例では、軸方向daから見たときに、流路76の全体が、固定部材72の内周面よりも径方向の外側に位置している。すなわち、軸方向daから見たときに、流路76の全体と固定部材72とが重なっている。この場合、移動部材74が固定部材72に対して軸方向daに密着したときに、固定部材72により流路76の全体が閉塞される。これにより、没入状態において収容空間Sの後端が適切に密閉される。
【0059】
次に、図1図4を参照して、出没機構40及び密閉機構70の動作について説明する。
【0060】
没入状態(図1及び図2)において使用者がノック部材50を前方へ押圧すると、回転カム部材60を介して筆記部材12が前方に向かって移動する。このとき、移動部材74も筆記部材12と一体的に前方に向かって移動する。移動部材74が固定部材72から離間すると、蓋部17と移動部材74との間の空間と移動部材74よりも後方の空間とが、流路76及び固定部材72の内周面73と筆記部材12との間に形成された隙間を介して連通する。筆記部材12がさらに前方に向かって移動すると、ペン先13が弾発部材18の弾発力に抗して蓋部17を前方に押すことにより蓋部17が開く。このとき、蓋部17と移動部材74との間の空間と移動部材74よりも後方の空間とが、連通しているので、使用者は、この空間内の圧力による筆記部材12を後方へ押し戻す力を受けることなく、ノック部材50を前方へ押圧することができる。また、蓋部17が開いた際に、蓋部17と移動部材74との間の空間の圧力が急減することがないので、ペン先13からインキが漏れ出すことを抑制することができる。さらに筆記部材12が前方に向かって移動すると、ペン先13が前端開口部20aから前方へ突出する。ノック部材50の前方への押圧が解除されても、筆記部材12は、ペン先13が前端開口部20aから前方へ突出した状態を維持する。これにより、筆記具10が没入状態から突出状態に遷移する。
【0061】
また、突出状態(図3及び図4)において、使用者がノック部材50を前方へ押圧すると、筆記部材12が前方に向かって微小距離だけ移動する。ノック部材50の前方への押圧が解除されると、第1弾発部材42の弾発力により、筆記部材12が後方に向かって移動し、ペン先13が前端開口部20aから没入する。さらに筆記部材12が後方に向かって移動すると、ペン先13が収容空間S内に収容され、弾発部材18の弾発力により蓋部17が前方密閉部材29の前端を閉止する。さらに筆記部材12が後方に向かって移動すると、移動部材74が固定部材72に対して軸方向daに密着する。このとき、固定部材72により流路76の全体が閉塞され、収容空間Sが密閉される。収容空間Sが密閉されることにより、没入状態において、ペン先13でのインキの乾燥が抑制される。
【0062】
なお、移動部材74が流路76を有していない場合には、没入状態から筆記部材12が前方へ移動した際に、蓋部17と移動部材74とにより密閉された空間の体積が減少するのにともなって、この空間の圧力が増大する。この場合、増大した圧力により、蓋部17は、当該蓋部17が開く方向に作用する力を受ける。したがって、この増大した圧力は、ペン先13が蓋部17を前方に押す際に、蓋部17を開くための補助力となる。したがって、移動部材74が流路76を有していない形態も、好ましい実施形態の1つである。
【0063】
本実施形態の筆記具10は、前端開口部20aを有する軸筒20と、ペン先13を有する筆記部材12と、ペン先13を前端開口部20aから出没させる出没機構40と、ペン先13の没入状態においてペン先13の収容空間Sを密閉する密閉機構70と、を備え、密閉機構70は、軸筒20に対して固定された固定部材72と、筆記部材12と一体に前後動可能な移動部材74と、を有し、固定部材72と移動部材74とが軸方向daに当接することによって、収容空間Sを密閉する。
【0064】
このような筆記具10によれば、固定部材72と移動部材74とが軸方向daに当接することによって、ペン先13の収容空間Sを密閉する。これにより、移動部材74に摩耗や破損が生じ、筒状部材27と移動部材74との間に隙間が生じたとしても、固定部材72と移動部材74とは軸方向daに密着するので、収容空間Sの密閉を維持することができる。したがって、没入状態において、収容空間Sの密閉状態を十分に確保することができる。
【0065】
本実施形態の筆記具10は、移動部材74を後方に付勢する弾発部材42を有する。
【0066】
このような筆記具10によれば、弾発部材42の弾発力により、軸方向daに沿って移動部材74が固定部材72に押し付けられるので、移動部材74や固定部材72の寸法精度が高くなくても、移動部材74を固定部材72に対して適切に密着させることができる。これにより、部品の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0067】
本実施形態の筆記具10では、弾発部材42は、移動部材74を介して筆記部材12を後方に付勢する。
【0068】
このような筆記具10によれば、弾発部材42が、移動部材74を後方に付勢する機能と、筆記部材12を後方に付勢する機能との両方を発揮する。換言すると、1つの弾発部材42により、移動部材74を後方に付勢するとともに、筆記部材12を後方に付勢することができる。したがって、部品点数の増加を抑制することができる。
【0069】
本実施形態の筆記具10は、収容空間Sの少なくとも一部を取り囲む筒状部材27を有し、移動部材74は、筒状部材27に当接している。
【0070】
このような筆記具10によれば、移動部材74と筒状部材27との間に摩擦力が生じる。これにより、筒状部材27に対する移動部材74の移動速度が小さくなる。これにより、突出状態から没入状態へ遷移する際に、筆記部材12とともにノック部材50がゆっくりと後方へ移動する。これにより、筆記具10の出没動作に高級感を与えることができる。
【0071】
本実施形態の筆記具10では、移動部材74は、軸方向daに沿った空気の流れを許容する流路76を含む。
【0072】
本実施形態の筆記具10では、流路76は、移動部材74の外周面に形成された切欠き部77を含む。
【0073】
本実施形態の筆記具10では、流路76は、移動部材74を貫通する貫通孔78を含む。
【0074】
このような筆記具10によれば、没入状態から筆記部材12が前方へ移動した際に、移動部材74が固定部材72から離間すると、蓋部17と移動部材74との間の空間と移動部材74よりも後方の空間とが流路76を介して連通する。したがって、蓋部17と移動部材74との間の空間の体積が減少しても、この空間の圧力は変化しない。これにより、使用者は、この空間内の圧力による筆記部材12を後方へ押し戻す力を受けることなく、ノック部材50を前方へ押圧することができる。また、蓋部17が開いた際に、蓋部17と移動部材74との間の空間の圧力が急減することがないので、ペン先13からインキが漏れ出すことを抑制することができる。
【0075】
本実施形態の筆記具10では、軸方向daから見たときに、流路76の全体と固定部材72とが重なる。
【0076】
このような筆記具10によれば、移動部材74が固定部材72に対して軸方向daに密着したときに、固定部材72により流路76の全体が閉塞される。これにより、没入状態において収容空間Sの後端が適切に密閉される。
【符号の説明】
【0077】
10 筆記具
12 筆記部材
13 ペン先
14 第1受部
15 突出部
17 蓋部
18 弾発部材
20 軸筒
20a 前端開口部
21 前軸
22 内軸
22a 大径部
22b 小径部
23 段部
24 溝部
25 外軸
26 第1連結部材
27 筒状部材
28 第2受部
29 前方密閉部材
30 先端部材
31 後軸
32 内軸
35 外軸
36 第2連結部材
38 頭冠
40 出没機構
42 第1弾発部材(弾発部材)
44 第2弾発部材
50 ノック部材
52 操作部
54 拡径部
56 穴部
58 内方突出部
60 回転カム部材
62 後方突出部
64 係合部
70 密閉機構
72 固定部材
73 内周面
74 移動部材
75 外周面
76 流路
77 切欠き部
78 貫通孔
da 軸方向
dc 周方向
A 中心軸線
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11