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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095610
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20230629BHJP
   B65H 16/06 20060101ALI20230629BHJP
   B65H 31/04 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B41J15/04
B65H16/06
B65H31/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211603
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕基
【テーマコード(参考)】
2C060
3F052
3F054
【Fターム(参考)】
2C060BA02
3F052AA01
3F052AB05
3F052BA02
3F052BA15
3F054AA01
3F054AC05
3F054BD03
3F054BD04
3F054CA02
3F054CA15
(57)【要約】
【課題】ロール紙の収納が容易でロール紙を適切に支持できるプリンタを提供する。
【解決手段】中心に孔が形成されたロール紙Rを収納する収納空間30が形成されたプリンタ1において、孔に入り込む突出部3321を有し、突出部3321が収納空間30内に突出した突出状態と突出部3321が収納空間30から退避した退避状態とに回動することで状態変化可能であって突出状態であるときにロール紙Rを支持するロール紙支持体332と、突出状態のロール紙支持体332と当接することで突出部3321の所定方向への回動を防止する被当接平面330aとを備え、ロール紙支持体332は、収納空間30内にロール紙Rを収納する際にロール紙Rに押されて移動し、移動することで被当接平面330aとの当接が解除されて所定方向へ回動可能になるものである。
【選択図】図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に孔が形成されたロール紙を収納する収納空間が形成されたプリンタにおいて、
前記孔に入り込む突出部を有し、該突出部が前記収納空間内に突出した突出状態と該突出部が該収納空間から退避した退避状態とに回動することで状態変化可能であって該突出状態であるときに前記ロール紙を支持するロール紙支持体と、
前記突出状態の前記ロール紙支持体と当接することで前記突出部の所定方向への回動を防止するストッパとを備え、
前記ロール紙支持体は、前記収納空間内に前記ロール紙を収納する際に該ロール紙に押されて移動し、移動することで前記ストッパとの当接が解除されて前記所定方向へ回動可能になるものであることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記ロール紙支持体は、このプリンタの前後方向に移動可能であって、後方へ向かうほど下方に位置し、前記ロール紙に押されて後方へ移動するものであることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記ロール紙支持体を前記ストッパに当接する位置に移動させ前記突出状態になるように該ロール紙支持体を付勢する弾性部材を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記突出部は、突出端に向かうに従って後方かつ上方に延びた中心線を曲面中心とした曲面が上側前面に形成されたものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙を収納する収納空間が形成されたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
帯状の用紙がロール状に巻かれたロール紙を収納空間に収納し、そのロール紙から用紙を引き出して印字を施すプリンタが知られている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1に記載されたプリンタは、ロール紙の中心に形成された孔に突出部を挿入することでその突出部でロール紙を回転可能に支持している。この突出部は、回動することで収納空間に突出した突出状態と収納空間から退避した退避状態との間で状態変化し、引張バネによって無負荷時には突出状態になるように付勢されている。ロール紙を収納空間に収納する際にはロール紙が突出部に当たり、突出部に回動方向の負荷が加わることで、突出部は引張バネの付勢に抗して回動して退避状態になる。そして、ロール紙の中心に形成された孔が突出部に対向する位置に達することで、突出部は突出状態に復帰してその孔に突出部が挿入される。
【0003】
特に、粘着剤が塗布されたラベル紙を用紙として用いることが想定されるプリンタにおいては、収納空間を画定するロール紙収納部の壁面にロール紙が接触しないように上述の突出部によってロール紙を支持する構成が採用されている。
【0004】
特許文献1に記載されたプリンタによれば、ロール紙を収納する際に突出部が回動して退避状態になった後にロール紙の中心に形成された孔へ突出部が挿入されて突出部でロール紙を支持できるので、プリンタへロール紙を収納することが容易になるといった効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-87652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたプリンタの構成では、バネによって突出部を突出状態にしているので、ロール紙に何らかの力が加わると突出部が収納空間から退避してロール紙が落下してしまうことがある。これに対し、ロール紙が外れにくいようにバネを強くすると、ロール紙を収納空間に入れにくくなるうえに、収納空間に入れる際に突出部でロール紙が傷ついてしまう虞もある。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、ロール紙の収納が容易でロール紙を適切に支持できるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のプリンタは、
中心に孔が形成されたロール紙を収納する収納空間が形成されたプリンタにおいて、
前記孔に入り込む突出部を有し、該突出部が前記収納空間内に突出した突出状態と該突出部が該収納空間から退避した退避状態とに回動することで状態変化可能であって該突出状態であるときに前記ロール紙を支持するロール紙支持体と、
前記突出状態の前記ロール紙支持体と当接することで前記突出部の所定方向への回動を防止するストッパとを備え、
前記ロール紙支持体は、前記収納空間内に前記ロール紙を収納する際に該ロール紙に押されて移動し、移動することで前記ストッパとの当接が解除されて前記所定方向へ回動可能になるものであることを特徴とする。
【0009】
このプリンタによれば、前記ロール紙支持体が前記ロール紙を支持している際に該ロール紙に力が加わっても、前記ストッパによって該ロール紙支持体が前記収納空間から退避してしまうことは防止される。従って、前記ロール紙が前記突出部から外れて落下してしまうことがない。そして、前記ロール紙を収納する際には、前記ロール紙支持体と前記ストッパとの当接が解除されて該ロール紙支持体が前記収納空間から退避できるようになるので、該ロール紙を容易に該収納空間に収納できる。
【0010】
ここで、前記所定方向は、前記突出部が下方に向かって回動する方向であってもよい。また、前記ロール紙支持体が前記ロール紙に押されて移動する方向は、該ロール紙支持体の回動中心方向であってもよい。
【0011】
また、このプリンタにおいて、
前記ロール紙支持体は、このプリンタの前後方向に移動可能であって、後方へ向かうほど下方に位置し、前記ロール紙に押されて後方へ移動するものであってもよい。
【0012】
このプリンタによれば、前記ロール紙に押された際に前記ロール紙支持体が後方に移動しやすくなるので、該ロール紙支持体と前記ストッパとの当接を簡単に解除できる。これにより、前記ロール紙を円滑に前記収納空間に収納できる。
【0013】
ここで、このプリンタは、閉じた状態において前記収納空間の上方を覆い、開くことでこのプリンタの前方斜め上方を開放するカバーを備えていてもよい。また、前記ロール紙支持体は、このプリンタの後方に向かうに従って下方に位置するように水平方向に対して傾斜した方向に延在する軸に沿って移動可能なものであってもよい。
【0014】
さらに、このプリンタにおいて、
前記ロール紙支持体を前記ストッパに当接する位置に移動させ前記突出状態になるように該ロール紙支持体を付勢する弾性部材を備えていてもよい。
【0015】
前記収納空間に前記ロール紙が収納されたときに、前記弾性部材の付勢力によって前記ロール紙支持体を前記突出状態に復帰させて前記ストッパに当接させることができる。
【0016】
加えて、このプリンタにおいて、
前記突出部は、突出端に向かうに従って後方かつ上方に延びた中心線を曲面中心とした曲面が上側前面に形成されたものであってもよい。
【0017】
前記収納空間内に前記ロール紙を収納する際に該ロール紙の縁部と前記曲面が接触し、該曲面が該ロール紙から押されるので前記ロール紙支持体が移動しやすい。また、前記ロール紙が接触する部分が前記曲面であるので該ロール紙の縁部が傷ついてしまうことも防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロール紙の収納が容易でロール紙を適切に支持できるプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に相当するプリンタを斜め上方から見た斜視図である。
図2図1に示したプリンタのカバーを開いたカバー開状態を示す斜視図である。
図3図1に示したプリンタの右側のヒンジ部を示す断面図である。
図4図1に示したプリンタのカバー開閉におけるブレーキ機構の様子を段階的に示す断面図である。
図5図1に示したプリンタの左側のヒンジ部を示す断面図である。
図6図2に示したカバーを開いたプリンタにおけるねじりコイルバネの様子を示す断面図である。
図7図2に示したカバーを開いたプリンタの平面図である。
図8】第1ガイドを図7のA-A線で切断した断面図である。
図9】搬送ガイド部と固定刃とプラテンユニットを図7のB-B線で切断した断面図である。
図10図2に示したカバーを開いたプリンタを正面やや下方から見た図である。
図11図1に示したプリンタの搬送ガイド部、固定刃、プラテンユニット、サーマルヘッドユニット及びアッパーガイドを幅方向中央で切断した図9と同様の断面図である。
図12図1に示したプリンタを幅方向の中央で切断した断面図である。
図13図1に示したプリンタのロール紙収納部に設けられた前方ガイドと一対の側方ガイドと落下検知部を示す平面図である。
図14】(a)は、図13に示したロール紙収納部に設けられたガイドピニオンとガイドラックとポテンションメータと側方ガイドを前側から見た正面図であり、(b)は、同図(a)からポテンションメータを外した正面図である。
図15図1に示したプリンタを幅方向の中央で切断して側方ガイドと前方ガイドと落下検知部とを側方から見た断面図である。
図16】ロール紙が落下した様子を示す図15と同様の断面図である。
図17】(a)は、図13に示した右側の側方ガイドを上方から見た図であり、(b)は、同図(a)に示した側方ガイドを左側から見た図である。
図18図17(a)に示した支持体案内軸とロール紙支持体と支持体引張バネの斜視図である。
図19図17(b)におけるD-D断面図である。
図20図17に示したロール紙支持体の、ロール紙を収納空間から取り出す際の動きを示す動作説明図である。
図21図17に示したロール紙支持体の、ロール紙を収納空間に収納する際の動きを示す動作説明図である。
図22】(a)は、図1に示したプリンタにおけるサーマルヘッドユニットとアッパーフレームを下方からみた下面図であり、(b)は、同図(a)におけるE-E断面図である。
図23図22に示したサーマルヘッドユニットの着脱に際して行われるヘッド取付レバーの操作を示す図である。
図24図2に示したプリンタの可動刃ユニットとアッパーフレームとを側面から見た図である。
図25図24に示した可動刃ユニットをスライド移動させてアッパーフレームから取り出す様子を示す図である。
図26】(a)は、図2に示した固定刃とロアフレームの正面図であり、(b)は、同図(a)に示した固定刃とロアフレームの側面図であり、(c)は、固定刃をロアフレームから取り出す様子を示す同図(b)と同様の側面図である。
図27図2に示したプリンタのプラテンユニットをロアフレームから取り出す様子を順に示すプラテンユニットとロアフレームの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本実施形態の説明では、加熱することで発色する帯状の用紙をロール状に巻き取ることで形成されたロール紙から用紙を引き出し、その用紙を選択的に加熱することで印字を行って印字済の用紙を排出するサーマルプリンタを例に挙げて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に相当するプリンタを斜め上方から見た斜視図である。図1では、左斜め下側が前側であり、右斜め上側が後側である。また、図1では、右斜め下側が左側であり、左斜め上側が右側である。
【0022】
図1に示すように、プリンタ1は、筐体2で覆われている。筐体2は、本体ケース21とカバー22で構成されている。本体ケース21とカバー22は、難燃性の樹脂を用いて成形されたものである。本体ケース21は、プリンタ1の下部を覆っている。カバー22は、その後端部に設けられたヒンジ部により開閉可能に本体ケース21に取り付けられている。
【0023】
図1には、カバー22が閉じられたカバー閉状態のプリンタ1が示されている。この図1では、プリンタ1の上方はカバー22によって覆われている。そして、プリンタ1の前面であって本体ケース21とカバー22の間には、印字された用紙が排出される用紙排出口1aが形成されている。カバー22の左側面には、オープンレバー220が設けられている。このオープンレバー220を前側に引くことで、不図示のカバーロック機構が解除されて本体ケース21に対してカバー22が回動可能になる。そして、カバー22の前側を上方に持ち上げることで、カバー22の後端部を回動中心としてカバー22が回動し、プリンタ1の前方斜め上方が開放されてプリンタ1の内部が露出する。
【0024】
図2は、図1に示したプリンタのカバーを開いたカバー開状態を示す斜視図である。プリンタ1のカバー22は、後端部分の左右それぞれに設けられたヒンジ部を中心に閉じられた状態から最大80度まで回動可能に構成されている。図2には、カバー22が80度まで開かれた様子が示されている。なお、カバー22の最大回動角度は80度以外でも構わない。
【0025】
図2に示すように、カバー22を開くことで、プリンタ1の前方斜め上方が開放され、本体ケース21及びカバー22内の構造物並びに後述する収納空間30が露出する。本体ケース21には、ロール紙収納部3と、搬送ガイド部4と、プラテンユニット5と、固定刃6とが配置されている。これらロール紙収納部3、搬送ガイド部4、プラテンユニット5及び固定刃6は、本体ケース21に固定された板金製のロアフレーム211に取り付けられている。ロール紙収納部3は、ロール紙を収納する収納空間30を画定している。カバー閉状態では、カバー22は、ロール紙収納部3、収納空間30、搬送ガイド部4、プラテンユニット5及び固定刃6の上方を覆っている。収納空間30には、レシート紙やラベル紙などの帯状の用紙がロール状に巻かれたロール紙R(図12参照)が収納される。ラベル紙には、帯状の台紙にラベルが貼付された台紙付ラベル紙と、台紙のないライナーレスラベル紙がある。本実施形態のプリンタ1は何れのラベル紙にも対応している。
【0026】
カバー22には、ヘッドユニット7と、可動刃ユニット8と、アッパーガイド9とが配置されている。これらヘッドユニット7、可動刃ユニット8及びアッパーガイド9は、カバー22に固定された板金製の第1アッパーフレーム221又はその第1アッパーフレーム221に固定された第2アッパーフレーム222に取り付けられている。
【0027】
図3は、図1に示したプリンタの右側のヒンジ部を示す断面図である。この図3では、本体ケース21とカバー22と右側のヒンジ部に設けられたブレーキ機構23が示されており、その他の構成要素は図示省略されている。
【0028】
本体ケース21とカバー22は、それらの後端部の左右それぞれに設けられたヒンジ部によって連結されている。図3に示すように、プリンタ1の右側に設けられたヒンジ部では、本体ケース21に固定された左ヒンジ軸213がカバー22に形成された左ヒンジ筒223に嵌り合っている。また、そのヒンジ部には、ブレーキ機構23が設けられている。ブレーキ機構23は、本体ケース21に固定された円筒状バネ231とカバー22に形成されたブレーキ筒232とを有している。円筒状バネ231は、上端と下端それぞれに外側に向かって突き出た摺動部231aが形成された概して円筒状をした樹脂製のものである。一方、ブレーキ筒232は、円筒状バネ231の外側を覆う円筒状をしている。ブレーキ筒232には、180度回転した位置2箇所に内側に向かって張り出した張出部232aが形成されている。
【0029】
図4は、図1に示したプリンタのカバー開閉におけるブレーキ機構の様子を段階的に示す断面図である。この図4では、右側のヒンジ部の周辺が示されており、断面を示すハッチングは省略されている。図4(a)にはカバー閉状態が示されており、図4(b)にはカバー閉状態からカバー22が40度開かれた状態が示されており、図4(c)にはカバー22が80度開かれたカバー開状態が示されている。
【0030】
図4(a)に示すように、カバー閉状態では、摺動部231aはブレーキ筒232の内周面のうち張出部232a以外の部分と対向しておりその内周面と接触していない。また、図4(c)に示すカバー開状態でも、同様に摺動部231aはブレーキ筒232の内周面と接触していない。このため、これらの状態では、円筒状バネ231は外力によって変形していない元来の形状をしている。一方、図4(b)に示すカバー22が40度開かれた状態では、2つの摺動部231aが2つの張出部232aそれぞれの内周面と接触して押されて円筒状バネ231は上下方向に潰されている。この状態では、摺動部231aと張出部232aの間に生じた摩擦によってカバー22の回動にブレーキがかかっている。この実施形態では、カバー閉状態から7度以上75度以下の範囲でカバー22が開かれた状態では摺動部231aの内周面と張出部232aとが対向して接触するように設定されている。逆にいえば、カバー22を7度以上75度以下に開いた状態以外では摺動部231aの内周面と張出部232aとが離れている。これにより、カバー閉状態とカバー開状態それぞれの状態では円筒状バネ231に負荷がかかることがないので、円筒状バネ231が劣化しにくい。なお、摺動部231aやブレーキ筒232の形状や材質によりブレーキの強さは任意に設定でき、それらの接触角度範囲も任意に設定できる。
【0031】
図5は、図1に示したプリンタの左側のヒンジ部を示す断面図である。また、図6は、図2に示したカバーを開いたプリンタにおけるねじりコイルバネの様子を示す断面図である。この図5及び図6では、本体ケース21とカバー22と左側のヒンジ部に設けられたねじりコイルバネ24が示されており、その他の構成要素は図示省略されている。
【0032】
図5に示すように、プリンタ1の左側に設けられたヒンジ部では、カバー22に形成された右ヒンジ軸224が本体ケース21に形成された右ヒンジ筒214に嵌り合っている。また、そのヒンジ部には、カバー22を開く方向に付勢するねじりコイルバネ24が設けられている。ねじりコイルバネ24のコイル部分は、右ヒンジ筒214が差し込まれている。図5に示したカバー閉状態では、ねじりコイルバネ24は開放する方向にカバー22を付勢しており、ねじりコイルバネ24のねじれ角は最大になっている。このカバー閉状態におけるねじりコイルバネ24のねじれ角は62度である。
【0033】
ねじりコイルバネ24による付勢力は、カバー22の開き角度が増加することで減少していき、カバー22を62度開くとねじり角がゼロになり付勢力もゼロになる。従って、図6に示すカバー開状態では、ねじりコイルバネ24の付勢力はゼロである。なお、カバー閉状態におけるねじりコイルバネ24のねじれ角は任意に設定でき、カバー開状態においてもねじれ角が残るように設定してもよい。
【0034】
本実施形態では、左右一方のヒンジ部にねじりコイルバネ24を設けているので、可動刃ユニット8(図2参照)などの重い構成要素がカバー22に取り付けられていてもカバー22を開けやすい。また、カバー22に取り付けられた構成要素の重さでカバー22が勢いよく閉じてしまうこともねじりコイルバネ24によって防止されている。さらに、他方のヒンジ部にブレーキ機構23を設けているので、カバー22が勢いよく閉じてしまうことをより防止できる上に、カバー22を開状態と閉状態の間の角度で停止させたときのカバー22の開閉方向の振動を素早く減衰させることができる。加えて、カバー22の開閉操作における使用者の操作感を高めることができる。
【0035】
図7は、図2に示したカバーを開いたプリンタの平面図である。
【0036】
図7に示すように、ロール紙収納部3は、前方ガイド31と、スライド軸32と、左右一対の側方ガイド33と、落下検知部34とを有している。左右一対の側方ガイド33は、プリンタ1の左右方向に移動可能に構成されている。ロール紙収納部3の構成については後に詳述する。以下、プリンタ1の左右方向を幅方向と称することがある。
【0037】
搬送ガイド部4は、第1ガイド41と、第2ガイド42と、第1用紙センサ43とを有している。第1ガイド41及び第2ガイド42は樹脂で構成されている。第1ガイド41には上方に向かって凸形状をした複数の第1リブ41aが形成されている。第1リブ41aのうち幅方向の中央に形成されたものはそれ以外のものと比較して前後方向の長さが少し短い。第2ガイド42にも第1リブ41aと同様の複数の第2リブ42aが形成されている。第1用紙センサ43は、第1ガイド41と第2ガイド42の間に配置されている。第1用紙センサ43は、発光素子と受光素子を同一面に有する反射型フォトセンサである。第1用紙センサ43は、白抜きの矢印で示すように幅方向に移動可能に構成されている。図7には、第1用紙センサ43が幅方向のちょうど中央に位置した様子が示されている。
【0038】
図8は、第1ガイドを図7のA-A線で切断した断面図である。
【0039】
図8に示すように、複数の第1リブ41aそれぞれの断面形状は同一である。第1リブ41aの断面形状は、左右に形成された直線形状の傾斜部と先端部に形成された幅方向に伸びる極短い直線形状とが曲線で接続された山形形状をしている。ただし、第1リブ41aの断面形状は、先端部に直線形状のないものであってもよく、傾斜部が円弧形状で形成されていてもよく、全体が円弧形状のみで形成されていてもよい。さらには、第1リブ41aの断面形状は、先端部が尖った概して三角形状をしていてもよい。上方に凸形状をした複数の第1リブ41aが形成されていることで、台紙のないライナーレスラベル紙のように搬送ガイド部4に貼り付きやすい用紙であっても貼り付きを抑制することができる。また、用紙の搬送負荷を減らすこともできる。なお、第2リブ42aは、第1リブ41aと同一の断面形状をしているため断面形状の説明は省略する。
【0040】
図9は、搬送ガイド部と固定刃とプラテンユニットを図7のB-B線で切断した断面図である。この図9には、ロアフレーム211も示されている。
【0041】
図9に示すように、第1ガイド41と第2ガイド42の間には、左右が逆のL字状の断面をしたスライドガイド431が設けられている。スライドガイド431は、幅方向に延在している。スライドガイドは、金属製の板で構成されており幅方向に並んで多数のスリット431aが形成されている。第1用紙センサ43は、スライドガイド431に沿って幅方向に移動可能に構成されている。第1用紙センサ43には、金属製のセンサ板バネ432が設けられている。第1用紙センサ43を幅方向に移動させると、このセンサ板バネ432がスリット431aに出入りする。これにより、第1用紙センサ43の移動にクリック感をもたせることができる。また、センサ板バネ432がスリット431aに入り込むことで、第1用紙センサ43を所望の位置で停止させた後、その位置で第1用紙センサ43を保持でき幅方向のがたつきも防止される。
【0042】
第1用紙センサ43は、ブラックマークセンサ、ペーパーエンドセンサまたはギャップセンサとして使用される。ブラックマークセンサとして使用されるときには、第1用紙センサ43は、ロール紙R(図12参照)の裏面に付されたブラックマークを光学的に検出するセンサーとして機能する。プリンタ1の不図示の制御部は、ブラックマークの検出結果に基づいてプリンタ1の動作を制御する。このブラックマークが付された幅方向の位置は画一的でなく、ロール紙Rの幅や種類によって異なっている。このプリンタ1では第1用紙センサ43を幅方向に移動可能にしているので、ブラックマークが幅方向のどの位置に付されていても、その位置に第1用紙センサ43の検出位置を一致させてブラックマークを検出することができる。
【0043】
上述したように第1用紙センサ43は、ペーパーエンドセンサとしても使用できる。ペーパーエンドセンサは、搬送ガイド部4の上を通過する用紙の有無を検出するセンサである。ペーパーエンドセンサとして使用する場合、用紙が通過する位置である用紙幅の内側に第1用紙センサ43を移動させて配置すればよい。なお、ペーパーエンドセンサとして使用する場合、通常は幅方向の中央に第1用紙センサ43を配置する。第1用紙センサ43をギャップセンサとして使用する場合は用紙が通過する用紙経路を挟んで対向する位置に受光素子または発光素子が必要になる。このギャップセンサとして使用する場合については後述する。第1用紙センサ43をブラックマークセンサ、ペーパーエンドセンサまたはギャップセンサの何れで機能させるかは、プリンタ1に設けられた不図示のディップスイッチまたはメモリスイッチによって選択できる。
【0044】
プラテンユニット5は、用紙搬送方向における第2ガイド42の下流側に配置されている。図7に示すように、プラテンユニット5は、プラテンローラ51と、プラテンフレーム52と、2つの軸受53とを有している。プラテンローラ51は、2つの軸受53によって回転自在に支持され、不図示のモータによって回転するシリコーンゴム製のローラである。シリコーンゴム製であるため、ライナーレスラベル紙のように下面に粘着剤が露出している用紙であってもプラテンローラ51に貼り付きにくい。なお、プラテンローラ51は、シリコーンゴム製以外のものであってもよいが、表面が非粘着性を備えているものであることが好ましい。また、プラテンローラ51を回転させるモータはステッピングモータであるが、ステッピングモータの代わりにDCモータなど他のモータを用いてもよい。モータは、ロアフレーム211に固定されている。また、ロアフレーム211には、モータの駆動力をプラテンローラ51に伝達する歯車輪列2111が取り付けられている。カバー22が閉じられた閉状態では、プラテンローラ51は、印字ヘッド71(図10参照)に対向して配置され、印字ヘッド71との間には用紙が挟み込まれる。プラテンローラ51の回転に伴い、印字ヘッド71とプラテンローラ51に挟み込まれた用紙は用紙搬送方向における下流側に搬送される。
【0045】
プラテンフレーム52は、2つの軸受53を介してプラテンローラ51を支持する樹脂製のフレームである。プラテンフレーム52の上面には第1ガイド41と同じ断面形状をした複数の第3リブ52aが形成されている。プラテンフレーム52の左右端部には幅方向に貫通した小判形状の孔が形成されている。軸受53は、筒状の胴部とフランジ部とが一体となった焼結金属製のものである。軸受53の胴部の断面形状は、内側は円形状で、外側がプラテンフレーム52に形成された孔と同形状の小判形状をしている。2つの軸受53それぞれの胴部先端は、プラテンフレーム52の左右端部に形成された孔に挿入されている。
【0046】
固定刃6は、用紙搬送方向におけるプラテンユニット5の下流側に配置されている。固定刃6は、上端に刃先を有する板状の金属製のものである。固定刃6の表面にはフッ素コートが施されている。これにより、ライナーレスラベル紙のように粘着剤が露出している用紙であっても固定刃6に貼り付きにくい。なお、固定刃6は、フッ素コート以外の非粘着性を付与する表面処理を施したものであってもよく、材質自体が非粘着性を有するものであってもよい。固定刃6の幅方向両端部には、固定刃6をロアフレーム211から取り出すための固定刃取手61が形成されている。
【0047】
図10は、図2に示したカバーを開いたプリンタを正面やや下方から見た図である。
【0048】
図10に示すように、ヘッドユニット7は、印字ヘッド71とヘッドフレーム72とを有している。印字ヘッド71は、用紙幅方向である左右方向に並んだ複数の発熱素子を有するいわゆるサーマル式ヘッドである。これら複数の発熱素子を選択的に発熱させることで、印字ヘッド71とプラテンローラ51の間を通過する用紙に印字が施される。ヘッドフレーム72は、印字ヘッド71が固定された金属製の板である。ヘッドフレーム72は、ヘッドユニット7を第2アッパーフレーム222に着脱可能に取り付けるためのものである。ヘッドユニット7は、第2アッパーフレーム222に回動可能に取り付けられたヘッド取付レバー225を操作することで第2アッパーフレーム222から取り出すことができる。
【0049】
可動刃ユニット8は、可動刃81と、可動刃フレーム82と、2本のロックピン83とを有している。可動刃81は、可動刃フレーム82内に設けられた不図示の小型DCモータを駆動することで、カバー22を閉じた閉状態において固定刃6(図7参照)に対して進退方向に往復移動する。可動刃81が固定刃6に向かって進出することで、印字が施された印字済み用紙の可動刃81と固定刃6間にあった部分が切断される。可動刃81の表面にはフッ素コートが施されている。これにより、ライナーレスラベル紙のように粘着剤が露出している用紙であっても用紙が可動刃81に貼り付きにくい。なお、可動刃81は、フッ素コート以外の非粘着性を付与する表面処理を施したものであってもよく、材質自体が非粘着性を有するものであってもよい。
【0050】
可動刃フレーム82は概略直方体の外形をしている。この可動刃フレーム82は、上述した小型DCモータと、小型DCモータの駆動力を可動刃81の進退方向の移動に変換する駆動機構とを内部に有している。ロックピン83は、可動刃フレーム82に固定されている。2本のロックピン83は、可動刃フレーム82の幅方向両端部分からそれぞれ幅方向の外側に向かって突出している。可動刃ユニット8は、第1アッパーフレーム221に取り付けられた2つのロックレバ―226を操作することで、第1アッパーフレーム221から取り出す方向にスライド移動可能である。ロックレバ―226は、操作されていないときにはロックピン83に当接して可動刃ユニット8の移動を阻止している。
【0051】
アッパーガイド9には、2本のガイドローラ91と、第2用紙センサ92が配置されている。2本のガイドローラ91は、その軸心を中心に回転自在に取り付けられており、カバー22を閉じた閉状態においては、第1ガイド41(図7参照)と隙間をあけて対向する。第2用紙センサ92は、幅方向の中央に固定されている。第2用紙センサ92は、第1用紙センサ43(図7参照)と同じ反射型フォトセンサである。
【0052】
図11は、図1に示したプリンタの搬送ガイド部、固定刃、プラテンユニット、サーマルヘッドユニット及びアッパーガイドを幅方向中央で切断した図9と同様の断面図である。この図11でも、図9と同様に第1用紙センサ43は幅方向の中央に配置されている。
【0053】
図11に示すように、カバー22(図1参照)を閉じた閉状態では第2用紙センサ92は、用紙経路を挟んで第1用紙センサ43に対向している。なお、プラテンユニット5とヘッドユニット7との間および搬送ガイド部4とアッパーガイド9との間が用紙経路である。上述したディップスイッチまたはメモリスイッチによってギャップセンサが選択されている場合、第1用紙センサ43と第2用紙センサ92の両方を用い、併せて透過型フォトセンサとして使用する。詳細には、第1用紙センサ43の受光素子または発光素子のうちの一方と、第2用紙センサ92の受光素子または発光素子のうちの他方を用い、用紙経路を通過する用紙を透過して受光素子が受ける光の強度を検出する。この光の強度を判定することで、ダイカットラベル紙におけるラベル有部分(台紙にラベルが付いている部分)とラベル無部分(台紙のみの部分)とを判別することができる。本実施形態では、第1用紙センサ43の発光素子と第2用紙センサ92の受光素子を用いて透過型フォトセンサとして機能させている。ただし、第1用紙センサ43の受光素子と第2用紙センサ92の発光素子を用いて透過型フォトセンサとして機能させても構わない。なお、第1用紙センサ43の代わりに第2用紙センサ92をペーパーエンドセンサとして使用してもよい。
【0054】
本実施形態では、第1用紙センサ43の発光素子または受光素子の一方を、ギャップセンサとして使用する場合の素子としても利用しているので、発光素子または受光素子を第1用紙センサ43とは別に設置する場合と比較してプリンタ1を安価に構成できる。また、第1用紙センサ43と第2用紙センサ92に同一のセンサを用いているので、部品種類を削減できる上に量産効果も期待できる。これらによりプリンタ1をより安価に構成できる。
【0055】
図12は、図1に示したプリンタを幅方向の中央で切断した断面図である。この図12には、ロール紙Rと、ロール紙Rから引き出された用紙R1も示されている。なお、ロール紙Rの大きさはロール紙Rの種類によって異なり使用することで小径になっていくが、図12に示されているのは大径の使用初期のロール紙Rである。また、図12において、丸で囲って拡大して示したC部詳細図では、断面を示すハッチングは省略されている。
【0056】
図12に示すように、ロール紙Rは、中心部に孔が形成された紙管R0に帯状の用紙R1が巻かれたものである。収納空間30に収納されたロール紙Rは、詳しくは後述するロール紙支持体332によってロール紙収納部3の底面とは離間して支持されている。ロール紙Rから用紙R1を引き出すと、紙管R0に形成された孔の内周面がロール紙支持体332の上側面をこすりながら回転する。ロール紙Rから引き出された用紙R1は、ガイドローラ91に案内されて搬送ガイド部4とアッパーガイド9の間を通ってプラテンローラ51と印字ヘッド71に挟み込まれ、用紙排出口1aから前方に向かって排出される。用紙経路のうち搬送ガイド部4とアッパーガイド9の間に形成されている経路は、水平に対してやや傾斜しているが、その傾斜角は15度前後であり従来の一般的なサーマルプリンタよりも小さい。また、印字後の用紙R1は、プラテンフレーム52に形成された第3リブ52aによって、プラテンローラ51の近傍では略水平方向に搬送されていく。これらにより、プラテンローラ51における用紙R1の巻き付け角θ(接触角)は、15度程度になっている。この巻き付け角θは、10度以上20度以下であることが好ましい。10度未満だと、印字ヘッド71に形成された下方に突出している部分によって用紙R1が変形してしまう虞がある。20度を超えると、特に用紙R1がライナーレスラベル紙のように下面に粘着剤が露出しているものである場合にプラテンローラ51に用紙R1が貼り付いて紙詰まりを起こしやすくなる。
【0057】
この実施形態では、巻き付け角θを小さくしている上に、固定刃6、可動刃81及びプラテンローラ51に非粘着性を有するものを用い、さらに第1ガイド41(図7参照)、第2ガイド42及びプラテンフレーム52(図7参照)上面にリブを形成しているので、用紙R1の種類に関わらず安定して用紙R1を搬送することができる。これはライナーレスラベル紙のように下面に粘着剤が露出している用紙R1である場合に特に有効に作用するが、下面に粘着剤がない用紙R1であっても搬送抵抗を低下させるという効果を奏する。
【0058】
図13は、図1に示したプリンタのロール紙収納部に設けられた前方ガイドと一対の側方ガイドと落下検知部を示す平面図である。この図13には、ロール紙支持体332によって支持されたロール紙Rが二点鎖線で示されている。
【0059】
上述したように、ロール紙収納部3は、前方ガイド31と、スライド軸32と、左右一対の側方ガイド33と、落下検知部34とを有している。前方ガイド31は、ロール紙収納部3の前壁を構成するものであり、ロアフレーム211(図2参照)に固定された樹脂製のものである。前方ガイド31の上面には、側方ガイド33間の距離を認識させるための目盛りが描かれている。前方ガイド31の前側面には、後述するガイドピニオン311(図14参照)とポテンションメータ312(図14(a)参照)が取り付けられている。また、前方ガイド31の前側面には、後述するガイドラック335(図14参照)の幅方向への移動を案内する不図示のレールも形成されている。スライド軸32は、幅方向に延在した軸であり、その両端部は前方ガイド31によって保持されている。
【0060】
左右一対の側方ガイド33は、スライド軸32に沿って幅方向に移動可能に構成されている。一対の側方ガイド33の間の空間がロール紙Rを収納する収納空間30になる。左側の側方ガイド33には、側方ガイド33の幅方向への移動可否を切り替えるためのガイド固定レバー334が取り付けられている。また、左側の側方ガイド33には、側方ガイド33間の距離を認識させるための目印が形成されている。それら以外は、左右の側方ガイド33は幅方向に直交する面に対してほぼ面対称に構成されている。このため以下の説明では、左右一対の側方ガイド33の一方について説明し、共通する構成については他方の側方ガイド33に関する説明を省略することがある。側方ガイド33は、側方ガイド本体330と、支持体案内軸331と、ロール紙支持体332と、支持体引張バネ333と、ガイドラック335(図14参照)とを有する。この支持体引張バネ333は弾性部材の一例に相当する。側方ガイド本体330は、ロール紙収納部3の側壁を構成する樹脂製のものである。この側方ガイド本体330に支持体案内軸331と、ロール紙支持体332と、支持体引張バネ333と、ガイドラック335とが取り付けられている。ロール紙支持体332は、突出部3321を有している。なお、ロール紙支持体332は、その全体が一体に成形された例えばPOM(ポリアセタール樹脂)やPC(ポリカーボネート樹脂)等の樹脂製のものであり、突出部3321はロール紙支持体332の一部として形成されている。ロール紙支持体332がロール紙Rを支持しているときには、その突出部3321が収納空間30に向かって突出してロール紙Rの紙管R0(図12参照)に形成された孔に入り込んでいる。なお突出部3321を構成する樹脂としては、硬い材料を選択し耐摩耗性をあげるとよりよい。これによりロール紙Rを収納空間30に収納する際に、突出部3321とロール紙Rが接触し摩擦するが、この摩擦によって突出部3321が摩耗してしまうことを抑制できる。そのほか突出部3321のロール紙Rとの接触面を表面処理し、摩擦度合いを低減させることによりロール紙Rをスムースに収納することが可能になりロール紙Rのプリンタ1へのセット性が向上する。また突出部3321のロール紙Rとの接触面を表面処理し、摩擦度合いを増加させることによりロール紙Rの保持力が向上し不要な落下を防止することが可能となる。
【0061】
図14(a)は、図13に示したロール紙収納部に設けられたガイドピニオンとガイドラックとポテンションメータと側方ガイドを前側から見た正面図であり、図14(b)は、同図(a)からポテンションメータを外した正面図である。なお、図14(a)は、図13に示した構成要素から前方ガイド31を消去した正面図ともいえる。
【0062】
図14(b)に示すように、左右の側方ガイド本体330それぞれには、ガイドラック335がネジ止めされている。ガイドラック335は、側方ガイド本体330とともに幅方向に移動する。左右の側方ガイド本体330に固定されたガイドラック335どうしの間には、前方ガイド31(図13参照)に回転自在に取り付けられたガイドピニオン311が配置されている。2つのガイドラック335はそれぞれガイドピニオン311にかみ合いラックアンドピニオン機構が形成されている。このラックアンドピニオン機構により、一対の側方ガイド33のうち一方を幅方向に移動させると他方の側方ガイド33が反対方向に移動する。ガイドラック335には、前方に向かって突出した長円状のメータ嵌合筒3351が形成されている。この嵌合筒3351には、図14(a)に示したポテンションメータ312に設けられた不図示の軸が挿入されている。ポテンションメータ312は、移動量を電圧変換する可変抵抗器であり、上述の軸の位置、すなわち側方ガイド33の位置に応じて電圧が変化する。このポテンションメータ312による電圧情報を取得することで、プリンタ1の制御部は、側方ガイド33の位置を把握することができる。
【0063】
図15は、図1に示したプリンタを幅方向の中央で切断して側方ガイドと前方ガイドと落下検知部とを側方から見た断面図である。この図15には、ロール紙支持体332によって支持されたロール紙Rが二点鎖線で示されている。
【0064】
図15に示すように落下検知部34は、検知シャフト341と、落下検知レバー342と、落下検知センサ343とを有している。検知シャフト341、落下検知レバー342及び落下検知センサ343それぞれは、ロール紙収納部3の底部近傍に配置されている。検知シャフト341は、前方ガイド31に固定されている。落下検知レバー342は、その検知シャフト341に回動自在に取り付けられている。また、落下検知レバー342は、不図示のバネによって、図15における時計回りに回動するように付勢されている。落下検知レバー342の前側部分には下方に向かって突出した突当て部342aが形成されている。この突当て部342aがロール紙収納部3の不図示の底面に突き当たることで、落下検知レバー342は、図15に示した位置よりも図15における時計回りに回動しないようになっている。落下検知レバー342は、ロール紙Rが収納空間30に存在しないときやロール紙Rがロール紙支持体332に支持されているときには、図15に示した姿勢(角度位置)になっている。この姿勢では、落下検知レバー342の前端は、落下検知センサ343の検出範囲よりも少し下方に位置している。落下検知センサ343は平面視でコの字状をした透過型フォトセンサであり、コの字状部分の間の検出範囲に遮蔽物があるか否かを検出する。図15の姿勢では落下検知レバー342前端が落下検知センサ343の検出範囲よりも下にあるため、落下検知センサ343は遮蔽物無しを出力している。
【0065】
図16は、ロール紙が落下した様子を示す図15と同様の断面図である。なお、図16ではロール紙Rは実線で示され、ロール紙Rのハッチングは省略されている。
【0066】
図16に示すように、ロール紙Rの収納ミスなどの何らかの原因でロール紙Rがロール紙支持体332から外れて落下すると、ロール紙Rの重さで落下検知レバー342は不図示のバネに抗して図16における反時計回りに回動する。この図16に示した姿勢では落下検知レバー342の前端が落下検知センサ343の検出範囲を遮蔽するため、落下検知センサ343は遮蔽物有りを出力している。落下検知センサ343から遮蔽物有りを受信することで、プリンタ1の制御部は、ロール紙Rが落下していることを認識できる。
【0067】
ロール紙Rがライナーレスラベル紙である場合、通常はロール紙Rの外側面が印字面で内側面に粘着面である。その場合、ロール紙Rから用紙R1(図12参照)を引き出す際に内側面にあった粘着剤の一部がロール紙Rの印字面に付着して印字面に少量の粘着剤が残ってしまうことがある。そして、その粘着剤が印字面に残ったロール紙Rを落下した状態で回転させると、ロール紙収納部3の底部に堆積した紙粉などのゴミが印字面の粘着剤に付着して用紙R1が搬送されて付着部分の印字が抜けてしまうことがある。また、ロール紙Rを落下した状態で回転させると、引き出された用紙R1が搬送された際に、ロール紙Rが収納空間30内で暴れてロール紙収納部3の壁面に衝突することで搬送負荷に大きな変動が生じることがある。特にロール紙Rがライナーレスラベル紙である場合、ロール紙Rから用紙R1を引き出すための搬送力が大きいので落下しているロール紙Rが大きく暴れて搬送負荷の大きな変動が生じやすい。さらに、ロール紙Rがラベル紙である場合、粘着剤が側面にはみ出していることがあり、そのはみ出した粘着剤が側方ガイド本体330に付着してロール紙Rの回転を妨げることもある。これによっても搬送負荷の変動が生じてしまうことがある。加えて、ロール紙Rがライナーレスラベル紙である場合、経年劣化によってロール紙Rが波打ってしまい、外径が一定でなくなってしまうことがある。そのようなロール紙Rが落下した状態でロール紙Rから用紙R1を引き出して搬送する場合も搬送負荷に変動が生じてしまう。そして、これらの搬送負荷の変動により用紙R1の安定した搬送ができなくなり印字が乱れてしまうことがあり、最悪の場合モータの搬送力を超えてしまい用紙R1の搬送ができなくなる虞もある。なお、本実施形態のようにステッピングモータの駆動力で用紙R1を搬送している場合、モータの搬送力を超えるとモータが脱調して回転不能に陥ってしまう。
【0068】
本実施形態では、ロール紙Rが落下していることをプリンタ1の制御部が認識できるので、エラー表示を行ったり、プリンタ1の動作を停止することが可能になる。これにより、印字が乱れてしまうことや用紙R1(図12参照)が搬送不能になってしまうことを防止できる。
【0069】
図17(a)は、図13に示した右側の側方ガイドを上方から見た図であり、図17(b)は、同図(a)に示した側方ガイドを左側から見た図である。また、図18は、図17(a)に示した支持体案内軸とロール紙支持体と支持体引張バネの斜視図である。
【0070】
図17(b)に示すように、側方ガイド本体330には、下方に凹んだ切欠部3301が形成されている。この切欠部3301の前壁下方には、後方に向かって突出し、上面に平坦な被当接平面3302aが形成された切欠段部3302が形成されている。この被当接平面3302aは、ストッパの一例に相当する。
【0071】
支持体案内軸331は、切欠部3301の前壁と後壁に掛け渡されるように切欠部3301内で延在している。支持体案内軸331は、このプリンタの後方に向かうに従って下方に位置するように水平方向に対して傾斜した前後方向に延在している。支持体案内軸331の傾斜角度は水平方向に対して10度である。以下、支持体案内軸331の延在方向を案内軸方向と称することがある。支持体案内軸331は、案内軸方向の両端部が側方ガイド本体330に支持されることで側方ガイド本体330に取り付けられている。図18に示すようにロール紙支持体332には支持体貫通孔332aが形成されており、その支持体貫通孔332aに支持体案内軸331が通ることで、ロール紙支持体332は支持体案内軸331に取り付けられている。これによりロール紙支持体332は、支持体案内軸331を中心として回動自在かつ支持体案内軸331に沿った案内軸方向に直動自在になっている。支持体案内軸331は、支持体案内軸331回りに回動することで、突出部3321が収納空間30に向かって突出した突出状態と、突出部3321が収納空間30から退避した退避状態とに状態変化する。図17(a)、図17(b)及び図18には、突出状態の支持体案内軸331が示されている。ロール紙支持体332がロール紙Rを支持しているときは、ロール紙支持体332は突出状態になっている。
【0072】
図17(a)に示すように、支持体引張バネ333は、一端が側方ガイド本体330に連結され、他端はロール紙支持体332に連結されている。支持体引張バネ333は、支持体案内軸331が突出状態では、バネ中心が支持体案内軸331と略平行になるように側方ガイド本体330とロール紙支持体332に連結されている。この支持体引張バネ333によりロール紙支持体332は、外部からの力が加わっていないときには前方に引っ張られて最も前側に位置し、かつ突出状態になる。以下、この位置を基本位置と称することがある。図17(a)、図17(b)及び図18には、この基本位置にあるロール紙支持体332が示されている。また以下、案内軸方向のうちロール紙支持体332が基本位置に近づく方向を復帰方向と称し、ロール紙支持体332が基本位置から遠ざかる方向を離脱方向と称することがある。図18に示すように、突出部3321は、復帰方向側が三角柱状で離脱方向側が半円柱状をした軸を、突出端に向かうに従って離脱方向側になる傾斜面CFが形成されるように斜めに切断し、半円柱状部SC表面、三角柱状部TP表面及び傾斜面CFの間それぞれをR状に面取りした形状をしている。図17(a)及び図17(b)において丸で囲った拡大図から分かるように、突出状態のロール紙支持体332における三角柱状部TP表面と傾斜面CF表面との間の面取り部分は、突出端に向かうに従って後方かつ上方に延びた中心線CLを曲面中心とした曲面になっている。特に上側前面に形成された曲面はロール紙R(図13参照)の収納時に機能する面であるため、以下この上側前面に形成された曲面を機能曲面RFと称する。図18では、機能曲面RFが分かりやすいように濃淡のある薄墨を施している。
【0073】
図18に示すように、ロール紙支持体332の復帰方向端部には、ストッパ当接部3322が形成されている。ストッパ当接部3322には、突出状態のロール紙支持体332において下方になる部分に平坦な当接平面3322aが形成され、同状態において右側になる部分に支持体貫通孔332aと中心線が一致する円弧状の当接円弧面3322bが形成されている。当接平面3322aと当接円弧面3322bは連続している。
【0074】
図19は、図17(b)におけるD-D断面図である。
【0075】
図19に示すように、基本位置で突出状態にあるロール紙支持体332の当接平面3322aは、被当接平面3302aと当接している。当接平面3322aは支持体案内軸331の中心位置よりも左側(プリンタ1幅方向内側)で被当接平面3302aと当接しているため、図19に示すロール紙支持体332は、被当接平面3302aによって図19における時計回りの回動が防止されている。つまり、基本位置で突出状態にあるロール紙支持体332は、突出部3321が下方に移動する方向に回動できない。一方、当接平面3322aは、支持体案内軸331の中心位置よりも右側(プリンタ1幅方向外側)には存在していないため、基本位置で突出状態にあるロール紙支持体332は、図19における反時計回りには回動することができる。つまり、基本位置で突出状態にあるロール紙支持体332は、突出部3321が上方に移動する方向には回動できる。なお、この回動においては、当接円弧面3322bが被当接平面3302aと摺接し、又はほんの少し被当接平面3302aと隙間をあけて対向しながらロール紙支持体332は回動する。
【0076】
続けて、ロール紙R(図13参照)を収納空間30(図13参照)から取り出す際と、ロール紙Rを収納空間30に収納する際におけるロール紙支持体332の動きについて説明する。
【0077】
図20は、図17に示したロール紙支持体の、ロール紙を収納空間から取り出す際の動きを示す動作説明図である。
【0078】
図20(a1)は、ロール紙支持体332が基本位置で突出状態にある右側の側方ガイド33の一部を上方から見た図である。この図20(a1)は、ロール紙支持体332がロール紙Rを支持しているときのロール紙支持体332の位置と姿勢を示している。図20(b1)は、同図(a1)に示した側方ガイドを左側から見た図である。上述したように、ロール紙支持体332がロール紙Rを支持しているときには図20(b1)に二点鎖線で示した紙管R0に形成された孔に突出部3321が入り込み、紙管R0の内周面が半円柱状部SCの周面と接している。ロール紙Rから引き出された用紙R1(図12参照)が搬送されると、ロール紙Rは、前方斜め上方(図20(b1)における左上)に向かって引っ張られる。このため、用紙R1の搬送時には紙管R0は図20(b1)における左上に少し移動するが、突出部3321の離脱方向側が半円柱状部SCで構成されているためその際にも紙管R0の内周面が半円柱状部SCの周面と摺動してロール紙Rは円滑に回転できる。また、図20(a1)及び図20(b1)の状態では、図19に示したように当接平面3322aと被当接平面3302aが当接してロール紙支持体332は、突出部3321が下方に移動する方向には回動できない。このため、ロール紙Rに下側の力が加わってもロール紙Rが突出部3321の支持を外れて落下してしまうことはない。
【0079】
図20(a2)は、ロール紙Rを収納空間30から取り出す際にロール紙支持体332が回動して突出部3321が上側に退避した様子を上方から見た図であり、図20(b2)は、同図(a2)に示した側方ガイドを左側から見た図である。ロール紙Rを取り出す際は、図2に示すようにカバー22を開いてプリンタ1の前方斜め上方を開放して開口を形成し、その開口からロール紙Rを取り出す。収納空間30にあるロール紙Rを前方斜め上方に持ち上げると、まず紙管R0の下側内周面が突出部3321の下端にあたる。その後、紙管R0に突出部3321が押され、図20(a2)及び図20(b2)に示すように突出部3321が上方に移動する方向にロール紙支持体332が回動して突出部3321が収納空間30から退避した退避状態になる。退避状態では支持体引張バネ333が突出状態よりも伸びるため、ロール紙支持体332は突出状態に復帰しようとするものの、突出部3321とロール紙Rの側面が接している間は退避状態が維持される。そして、ロール紙Rが収納空間30から出されるとロール紙支持体332は突出状態に復帰して図20(a1)および図20(b1)の状態になる。
【0080】
図21は、図17に示したロール紙支持体の、ロール紙を収納空間に収納する際の動きを示す動作説明図である。
【0081】
図21(a1)は、図20(a1)と同様に、ロール紙支持体332が基本位置で突出状態にある右側の側方ガイド33の一部を上方から見た図である。この図21(a1)は、収納空間30にロール紙Rが収納される前のロール紙支持体332の位置と姿勢を示している。図21(b1)は、同図(a1)に示した側方ガイドを左側から見た図である。図21(a1)及び図21(b1)には、ロール紙Rを収納する際に、外周面が突出部3321に接触した瞬間のロール紙Rが二点鎖線で示されている。なお、図21では、収納されるロール紙Rの幅に対して左右の側方ガイド33の間の距離が適正に設定されている場合を前提として二点鎖線でロール紙Rを示している。ロール紙Rを収納する際は、図2に示したようにカバー22を開き、本体ケース21と開かれたカバー22の間の開口を通して収納空間30にロール紙Rを収納する。ロール紙Rを前方斜め上方から収納空間30に近づけると、図21(a1)及び図21(b1)に示すように、まずロール紙Rの縁が突出部3321の上側前面の機能曲面RF(図17及び図18参照)に接する。機能曲面RFは、上述の中心線(図17及び図18参照)を曲面中心とした曲面であるため、後方斜め下向きの力を突出部3321がロール紙Rから受けると、離脱方向に移動させる力がロール紙支持体332に加わる。加えて、離脱方向が後方に向かうほど下方に位置するように傾斜した方向であるので、ロール紙支持体332を離脱方向に移動させる力はより強くなる。図21(b1)には、ロール紙支持体332がロール紙Rから受ける力の方向が白抜きの矢印で示されている。なお、機能曲面RFが中心線CLを曲面中心とした曲面であること及び離脱方向が傾斜していることから、ロール紙Rから受ける力がほぼ真下に向かうものであっても、ロール紙支持体332には離脱方向に移動させる力が加わる。また、ロール紙支持体332には、突出部3321を下方に回動させる方向にも力が加わるものの、この時点では当接平面3322aと被当接平面3302a(共に図19参照)とが接しているのでロール紙支持体332は回動できない。ここで、ロール紙Rの縁と接する部分が角形状であると、ロール紙Rの縁部が傷ついてしまう虞があるが、接する部分が機能曲面RFであるためロール紙Rは傷つきにくい。
【0082】
図21(a2)は、同図(a1)からロール紙Rを少し収納空間30に押し込んだときの右側の側方ガイド33の一部を上方から見た図である。図21(b2)は、同図(a2)に示した側方ガイドを左側から見た図である。図21(a2)及び図21(b2)に示すように、ロール紙Rによって突出部3321が押されると、ロール紙支持体332は、ロール紙Rに押されて支持体引張バネに抗して離脱方向(後方)に移動する。これによって、当接平面3322aと被当接平面3302a(共に図19参照)の当接が解除され、突出部3321が下方に移動する方向にロール紙支持体332は回動可能になる。なお、当接平面3322aと被当接平面3302aが離間した瞬間からロール紙支持体332は、突出部3321が下方に移動する方向に回動し始めるが、図21(a2)及び図21(b2)では、回動し始める前のロール紙支持体332が示されている。
【0083】
図21(a3)は、同図(a2)からロール紙Rをさらに収納空間30に押し込んだときの右側の側方ガイド33の一部を上方から見た図である。図21(b3)は、同図(a3)に示した側方ガイドを左側から見た図である。図21(a3)及び図21(b3)に示すように、ロール紙支持体332が離脱方向に移動して当接平面3322aと被当接平面3302a(共に図19参照)が離間した後、突出部3321が下方に移動する方向にロール紙支持体332は回動する。これによりロール紙支持体332は、突出部3321が収納空間30から退避した退避状態になる。その後、ロール紙Rをさらに収納空間30に押し込んでロール紙Rの紙管R0(図20(b1)参照)に形成された孔に突出部3321が対向すると、支持体引張バネ333によってロール紙支持体332が回動して突出状態になり復帰方向に移動する。そして、図20(a1)及び図20(b1)に示した状態になる。
【0084】
この実施形態のプリンタ1によれば、ロール紙Rをロール紙支持体332が支持している際にロール紙Rにロール紙Rを落下させる方向に力が加わっても、当接平面3322aと被当接平面3302aが接しているので、突出部3321が下方に移動する方向に回動してしまうことはない。従って、ロール紙Rが突出部3321から外れて落下してしまうことが確実に防止される。なお、ロール紙Rに上方向に向かう力が加わってもロール紙Rの自重に相殺されるので、人為的な大きな力でない限りロール紙Rが上方に大きく移動してしまうことはない。このため、人為的な操作以外で、突出部3321が上方に移動する方向にロール紙支持体332が回動してしまうことは考えられない。また、ロール紙Rを収納空間30に受け入れる際には、ロール紙支持体332が離脱方向に移動して当接平面3322aと被当接平面3302aの当接が解除されるので、ロール紙Rを容易に収納空間30に収納してロール紙支持体332で支持できる。
【0085】
続いて、プリンタ1の各構成ユニットを着脱するための構造と着脱手順について順に説明する。
【0086】
図22(a)は、図1に示したプリンタにおけるサーマルヘッドユニットとアッパーフレームを下方からみた下面図であり、図22(b)は、同図(a)におけるE-E断面図である。なお、図22を用いた説明および図中における上下前後左右は、カバーを閉じたプリンタにおける方向である。
【0087】
上述したように、ヘッドユニット7は、印字ヘッド71とヘッドフレーム72とを有しており、印字ヘッド71はヘッドフレーム72に固定されている。ヘッドユニット7は、第2アッパーフレーム222に着脱可能に取り付けられている。ヘッドユニット7と第2アッパーフレーム222の間には、不図示の圧縮バネが設けられており、その圧縮バネによりヘッドユニット7の印字ヘッド71が設けられた前側部分は下方に向かって付勢されている。カバー22(図1参照)が閉じられた状態では、ヘッドユニット7は、印字ヘッド71がプラテンローラ51(図2参照)に突き当たることで圧縮バネに抗して印字ヘッド71がほんの少し上側に持ち上げられている。図22(b)には、カバー22が閉じられて印字ヘッド71がほんの少し上側に持ち上げられた状態のヘッドユニット7が示されている。一方、カバー22が開かれた状態では、ヘッドユニット7は、図22(b)に示した位置よりも後端側を中心に前端側が少し下側に回動する。そして、ヘッドフレーム72の先端に形成された2つのヘッド爪721が、第2アッパーフレーム222に形成された爪受部2221に引っ掛かかることでそれ以上の回動が防止されている。
【0088】
第2アッパーフレーム222の後端は下方に向かって折り曲げられ、その折り曲げられた部分にヘッド取付ピン2223が固定されている。ヘッド取付ピン2223には、樹脂製のヘッド取付レバー225が回動自在に取り付けられている。ヘッド取付レバー225にはレバー筒部2251が形成されている。レバー筒部2251の内側の孔はヘッド取付ピン2223の外周よりもほんの少し大きい直径の孔であり、その孔にヘッド取付ピン2223が挿入されている。ヘッドフレーム72の後端には上方に向かって折り曲げられたヘッド折曲部722が形成されている。そのヘッド折曲部722には、ヘッドユニット7の装着状態においてレバー筒部2251の外周と接するヘッド切欠部722a(図23(b1)参照)が形成されている。
【0089】
図23は、図22に示したサーマルヘッドユニットの着脱に際して行われるヘッド取付レバーの操作を示す図である。なお、図23を用いた説明および図中における上下前後左右は、カバーを閉じたプリンタ1における方向である。
【0090】
図23(a1)は、図22(a)に示したヘッドユニット7と第2アッパーフレーム222を後方から見た図であり、図23(b1)は、図22(a)におけるF-F断面図である。図23(a1)に示すように、ヘッドユニット7が第2アッパーフレーム222に保持されている際には、ヘッド取付レバー225は右側に位置している。図23(b1)に示すように、レバー筒部2251は、円柱の2箇所が平行な筒部平面2251aで切り取られた断面が小判形状の外周面をしている。また、ヘッド切欠部722aは、上側が円弧状で下側が直線状の凹みを形成している。ヘッド切欠部722aの円弧状部分の内径は、レバー筒部2251の外周面に形成された円弧面の内径よりもほんの少しだけ大きい。ヘッド切欠部722aの直線状部分の間隔は、レバー筒部2251の外周面に形成された平行な2つの筒部平面2251aの間隔よりもほんの少しだけ広い。ヘッド取付レバー225が右側にあるときには、レバー筒部2251の外周面に形成された円弧面が左右方向の端部に位置し、その左右の円弧面それぞれがヘッド切欠部722aの円弧状部分に接している。これにより、ヘッドフレーム72の後端の下方への移動が規制され、ヘッドフレーム72は第2アッパーフレーム222に保持されている。
【0091】
図23(a2)は、同図(a1)からヘッド取付レバー225を同図(a1)における反時計回りに回動させた状態を示す図であり、図23(b2)は、その状態におけるF-F断面図である。図23(a2)に示すように、ヘッド取付レバー225を図23(a1)の位置から同図における反時計回りに90度回動させると、ヘッド取付レバー225は左側に位置する。また、図23(b2)に示すように、レバー筒部2251の外周面に形成された筒部平面2251aが左右方向の端部に位置するため、レバー筒部2251はヘッド切欠部722aの直線状部分を通って下方に移動することができるようになる。これにより、ヘッドフレーム72の後端は第2アッパーフレーム222から下方に向かって移動自在になる。
【0092】
ヘッドユニット7をカバー22(図2参照)から外して取り出す場合、カバー22をあけた後、図23(a1)の状態にあるヘッド取付レバー225を図23(a2)に示す状態になるように90度回動させる。そして、ヘッドユニット7の後端を下方に移動させてヘッドユニット7の後端を第2アッパーフレーム222から外し、ヘッド爪721を爪受部2221から離す。その後、印字ヘッド71とプリンタ1の制御部とをつなぐ不図示のケーブルのコネクタを外すことでヘッドユニット7をカバー22から取り出すことができる。ヘッドユニット7を第2アッパーフレーム222に取り付ける際は、取り出す場合と逆の手順で行う。このように、この実施形態のヘッドユニット7は、カバー22に容易に着脱できるので、メンテナンスや部品交換における作業性がよい。
【0093】
図24は、図2に示したプリンタの可動刃ユニットとアッパーフレームとを側面から見た図である。
【0094】
上述したように、可動刃ユニット8は、第1アッパーフレーム221に取り付けられた2つのロックレバ―226を操作することで、可動刃ユニット8を取り出す方向(図24における右方向)に向かってスライド移動可能になる。図24(a)は、ロックレバ―226がロックピン83に当接して可動刃ユニット8のスライド移動が規制された様子を示しており、図24(b)は、ロックレバ―226が操作されて可動刃ユニット8のスライド移動が可能になった様子を示している。図24(a)に示すように、第1アッパーフレーム221には、ロックレバ―226と、ロックレバー軸227と、ロックバネ228とが取り付けられている。これらロックレバ―226、ロックレバー軸227およびロックバネ228は、第1アッパーフレーム221の左右それぞれに対称に取り付けられているため、図24に描かれている右側のものについて説明し、左側のものは説明を省略する。ロックレバー軸227は、第1アッパーフレーム221に根本部分が固定され、第1アッパーフレーム221から幅方向外側に向かって突出している。ロックレバ―226は、ロックレバー軸227に回動自在に取り付けられている。ロックバネ228は、一端がロックレバ―226に連結され、他端が第1アッパーフレーム221に連結されている。そして、ロックレバ―226は、ロックバネ228によって、図24における反時計回りに回動するように付勢されている。第1アッパーフレーム221には幅方向外側に向かって突出した回り止め221aが形成されているため、ロックレバ―226は図24(a)に示した姿勢より反時計回りには回動できないようになっている。図24(a)に示す可動刃ユニット8は、ロックレバ―226に形成されたラッチ部226aにロックピン83が掛け止められることで可動刃ユニット8を取り出す方向へのスライド移動が規制されている。
【0095】
図24(b)に示すように、ロックバネ228に抗してロックレバ―226を操作して図24における時計回りに回動させるとラッチ部226aがロックピン83から外れ、可動刃ユニット8のスライド移動が可能になる。なお、実際には、第1アッパーフレーム221には可動刃ユニット8を取り出す方向へ付勢するバネが取り付けられているため、ロックレバ―226を操作すると可動刃ユニット8は取り出す方向へ少しスライド移動する。
【0096】
図25は、図24に示した可動刃ユニットをスライド移動させてアッパーフレームから取り出す様子を示す図である。
【0097】
図25(a)は、可動刃ユニット8をスライド移動させて少し抜き出した様子を示しており、図25(b)は、可動刃ユニット8を第1アッパーフレーム221から取り出した様子を示している。図25(a)に示すように可動刃ユニット8を少し抜き出したら、可動刃ユニット8とプリンタ1の制御部とをつなぐ不図示のケーブルのコネクタを外す。そして、さらに可動刃ユニット8を取り出す方向へスライド移動させることで、図25(b)に示すように、可動刃ユニット8を第1アッパーフレーム221から取り出すことができる。可動刃ユニット8を第1アッパーフレーム221に取り付ける際は、取り出す場合と逆の手順で行う。このように、この実施形態の可動刃ユニット8は、カバー22(図2参照)に容易に着脱できるので、メンテナンスや部品交換における作業性がよい。
【0098】
図26(a)は、図2に示した固定刃とロアフレームの正面図であり、図26(b)は、同図(a)に示した固定刃とロアフレームの側面図であり、図26(c)は、固定刃をロアフレームから取り出す様子を示す同図(b)と同様の側面図である。
【0099】
図26(a)および図26(b)に示すように、固定刃6は、ロアフレーム211の前側上部に取り付けられている。ロアフレーム211は、左右の側板が下端でつながった正面視で90度時計回りに回転したコの字状をしている。左右の側板は、幅方向に直交する面に対してほぼ面対称の形状をしている。このため以下の説明では、左右の側板の一方について説明し、共通する形状については他方の側板に関する説明を省略することがある。固定刃6は、ロアフレーム211の両側板に形成された第1切欠き211aに下端が差し込まれ、ロアフレーム211の両側板に形成された該して180度回転したL字状をした固定刃受部211bによって上方への移動が規制されている。また、固定刃6の上側部分は、不図示のバネによって後ろ側に向かって付勢されている。固定刃6の幅方向両端上部には、固定刃6を着脱する際に用いる固定刃取手61が形成されている。
【0100】
固定刃取手61をバネに抗して前側に引き寄せることで、図26(c)に示すように、固定刃6の上端が固定刃受部211bから外れて固定刃6を前方斜め上方に向かって取り出すことが可能になる。固定刃6をロアフレーム211に取り付ける際は、まず固定刃6の下端を切欠き221aに差し込んで、固定刃6の上端を固定刃受部211bに嵌め込む。このように、この実施形態の固定刃6は、本体ケース21(図2参照)に容易に着脱できるので、メンテナンスや部品交換における作業性がよい。
【0101】
図27は、図2に示したプリンタのプラテンユニットをロアフレームから取り出す様子を順に示すプラテンユニットとロアフレームの断面図である。この図27は、ロアフレーム211の左の側板の直ぐ幅方向外側(左側)でプラテンユニット5とロアフレーム211を切断して幅方向内側に向かって見た図である。
【0102】
上述したように、プラテンユニット5は、プラテンローラ51(図2参照)と、プラテンフレーム52と、2つの軸受53とを有している。2つの軸受53の胴部は、円柱の2箇所が平行な胴部平面53aで切り取られた断面が小判形状の外周面をしている。図27(c)に示すように、ロアフレーム211の両側板には第2切欠き211cが形成されている。第2切欠き211cは、下側が円弧状で上側が直線状の凹みを形成している。第2切欠き211cの円弧状部分の内径は、軸受53の胴部の外周面に形成された円弧面の内径よりもほんの少しだけ大きい。第2切欠き211cの直線状部分の間隔は、軸受53の胴部の外周面に形成された平行な2つの胴部平面53aの間隔よりもほんの少しだけ広い。図27(a)に示すように、プラテンユニット5がロアフレーム211に取り付けられているときには、軸受53の胴部の外周面に形成された円弧面が左右方向の端部に位置し
、その左右の円弧面それぞれが第2切欠き211cの円弧状部分に接している。これにより、プラテンユニット5の移動が規制され、プラテンユニット5はロアフレーム211に保持されている。このため、プラテンユニット5はロアフレーム211から取り外し不能になっている。そして、図26(b)に示したように、固定刃6がロアフレーム211に取り付けられているときは、その固定刃6によって図27(a)に示すプラテンフレーム52は回動することができない。
【0103】
プラテンユニット5をロアフレーム211から取り出す場合、カバー22をあけ上述した手順で固定刃6を取り出す。その後、図27(b)に示すように、プラテンフレーム52を、図27における反時計回りに回動させる。プラテンフレーム52は、図27(b)の位置で回転止め部材に突き当たるため、それよりも反時計回りには回動できない。図27(b)の状態では、胴部平面53aが第2切欠き211cの直線状部分と平行になり、プラテンユニット5を前方斜め上方に移動させることができる。そして、プラテンユニット5を前方斜め上方に移動させることで、図27(c)に示すようにロアフレーム211からプラテンユニット5を取り出す。プラテンユニット5をロアフレーム211に取り付ける際は、取り出す場合と逆の手順で行う。このように、この実施形態のプラテンユニット5は、本体ケース21(図2参照)に容易に着脱できるので、メンテナンスや部品交換における作業性がよい。
【0104】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、本実施形態では、サーマル式の印字ヘッドを用いたプリンタ1について説明したが、インパクトドット式などの他の方式の印字ヘッドを用いたプリンタ1であってもよい。また、左右一対の側方ガイド33それぞれに同じ動きが可能なロール紙支持体332を設けたが、片側の側方ガイド33には固定されたロール紙支持体332を設けてもよい。さらに、ロール紙Rが水平方向に近い角度で前方から収納されることが想定される場合等には、支持体案内軸331は、水平方向に延在していてもよく、後方に向かうに従って上方に位置するように傾斜した方向に延在していてもよい。加えて、紙管R0を有するロール紙Rを用いる例を説明したが、紙管R0がなく中心部の孔の周囲に用紙R1のみが巻かれたロール紙Rを用いてもよい。
【0105】
なお、以上説明した各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 プリンタ
30 収納空間
332 ロール紙支持体
330a 被当接平面
3321 突出部
R ロール紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
図16
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