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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095613
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】製氷機およびその異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/25 20180101AFI20230629BHJP
【FI】
F25C1/25 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211612
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】傅 強飛
(72)【発明者】
【氏名】石槫 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】越 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 靖之
【テーマコード(参考)】
3L110
【Fターム(参考)】
3L110AA02
3L110AA07
(57)【要約】
【課題】異常を判定することができる製氷機およびその異常判定方法を提供する。
【解決手段】正転駆動で薬液容器34から製氷水タンク15に薬液を供給し、逆転駆動で製氷水タンク15内の液体を外部に排出する薬液ポンプ36と、製氷水タンク15内の液体の下限水位を検知するフロートスイッチFLと、循環ポンプPMの駆動により水循環経路を流れる水を外部に排出可能な排液弁32とを備える。製氷水タンク15に規定液位で水が貯留されている状態で、排水弁32を開放すると共に、循環ポンプPMの駆動を開始してからフロートスイッチFLが下限液位を検知するまでの第1時間と、循環ポンプPMの駆動および薬液ポンプ36の逆転駆動を開始してからフロートスイッチFLが下限液位を検知するまでの第2時間との差が、予め設定された閾値より小さい場合に、異常と判定する制御手段Cを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製氷水タンク(15)から製氷部(11)に製氷水を導くと共に製氷部(11)からの製氷水を製氷水タンク(15)に回収する水循環経路を備え、循環ポンプ(PM)の駆動により製氷水を前記水循環経路に循環して製氷部(11)に氷塊を生成する製氷運転と、前記循環ポンプ(PM)の駆動により前記製氷水タンク(15)に貯留した洗浄液を前記水循環経路に循環する洗浄運転とを行い得るよう構成された製氷機において、
正転駆動によって薬液容器(34)から前記製氷水タンク(15)に薬液を供給すると共に、逆転駆動によって製氷水タンク(15)内の液体を外部に排出する薬液ポンプ(36)と、
前記製氷水タンク(15)内の液体の下限液位を検知する検知手段(FL)と、
前記循環ポンプ(PM)の駆動により前記水循環経路を流れる液体を外部に排出可能な排液弁(32)と、
判定手段(C)と、を備え、
前記判定手段(C)は、前記製氷水タンク(15)に規定液位で水が貯留されている状態で、前記排液弁(32)を開放すると共に、前記循環ポンプ(PM)の駆動を開始してから前記検知手段(FL)が下限液位を検知するまでの第1時間(T1)と、前記製氷水タンク(15)に規定液位で水が貯留されている状態で、前記薬液ポンプ(36)の逆転駆動を開始すると共に、前記排液弁(32)を開放したもとで前記循環ポンプ(PM)の駆動を開始してから前記検知手段(FL)が下限液位を検知するまでの第2時間(T2)との差が、予め設定された閾値(X)より小さい場合に、異常と判定する
ことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
前記洗浄運転では、前記製氷水タンク(15)に規定液位まで水を貯留し、前記排液弁(32)を開放したもとで、前記循環ポンプ(PM)を駆動して製氷水タンク(15)内の水を排出する排水工程を実施した後、前記製氷水タンク(15)に規定液位まで水を貯留し、前記薬液ポンプ(36)を逆転駆動して薬液ポンプ(36)と製氷水タンク(15)とを連通する薬液の経路(37,38,40,41)に水を流すと共に、前記排液弁(32)を開放したもとで前記循環ポンプ(PM)を駆動する経路洗浄工程とを実施するよう構成され、
前記判定手段(C)は、前記排水工程において前記循環ポンプ(PM)の駆動を開始してから前記検知手段(FL)が下限液位を検知するまでの前記第1時間(T1)と、前記経路洗浄工程において前記薬液ポンプ(36)および循環ポンプ(PM)が共に駆動を開始してから前記検知手段(FL)が下限液位を検知するまでの前記第2時間(T2)との差に基づいて異常判定を行う請求項1記載の製氷機。
【請求項3】
前記経路洗浄工程において、前記循環ポンプ(PM)の駆動開始より事前時間(t3)だけ前から前記薬液ポンプ(36)の逆転駆動を開始するようにした請求項2記載の製氷機。
【請求項4】
前記薬液ポンプ(36)の逆転駆動により前記製氷水タンク(15)内の水を、前記経路洗浄工程において水が流れる薬液の経路(37,38,40,41)に充満させる手段(32)を備えた請求項2または3記載の製氷機。
【請求項5】
前記判定手段(C)が異常と判定した場合に、異常報知を行う報知手段(51)を備えた請求項1~4の何れか一項に記載の製氷機。
【請求項6】
前記判定手段(C)は、洗浄運転が実施されたことを記憶し、記憶した洗浄運転の実施時点から洗浄運転が実施されることなく洗浄報知条件が満たされた場合に、報知手段(51)によって洗浄運転の実施時期であることを報知するよう構成した請求項1~5の何れか一項に記載の製氷機。
【請求項7】
製氷水タンク(15)から製氷部(11)に製氷水を導くと共に製氷部(11)からの製氷水を製氷水タンク(15)に回収する水循環経路を備え、循環ポンプ(PM)の駆動により製氷水を前記水循環経路に循環して製氷部(11)に氷塊を生成する製氷運転と、前記循環ポンプ(PM)の駆動により前記製氷水タンク(15)に貯留した洗浄液を前記水循環経路に循環する洗浄運転とを行い得るよう構成された製氷機において、
前記洗浄運転では、
前記製氷水タンク(15)に規定液位で貯留した水を、前記循環ポンプ(PM)の駆動により外部に排出する排水工程と、該排水工程を実施した後に、前記製氷水タンク(15)に規定液位で水を貯留し、前記薬液ポンプ(36)を逆転駆動して薬液ポンプ(36)と製氷水タンク(15)とを連通する薬液の経路(37,38,40,41)に水を流すと共に、前記循環ポンプ(PM)の駆動により製氷水タンク(15)内の水を外部に排出する経路洗浄工程と、を実施するようにし、
前記排水工程において前記循環ポンプ(PM)の駆動を開始してから前記製氷水タンク(15)内の液位が下限液位となったことを検知手段(FL)が検知するまでの第1時間(T1)と、前記経路洗浄工程において前記薬液ポンプ(36)および循環ポンプ(PM)が共に駆動を開始してから前記検知手段(FL)が下限液位を検知するまでの第2時間(T2)との差が、予め設定された閾値(X)より小さい場合に、判定手段(C)が異常と判定する
ことを特徴とする製氷機の異常判定方法。
【請求項8】
前記経路洗浄工程において、前記循環ポンプ(PM)の駆動開始より事前時間(t3)だけ前から前記薬液ポンプ(36)の逆転駆動を開始して、正常状態における前記第1時間(T1)と第2時間(T2)との差が大きくなるようにし、
正常状態における前記第1時間(T1)と第2時間(T2)との第1の差と、異常状態における前記第1時間(T1)と第2時間(T2)との第2の差を広げるようにした請求項7記載の製氷機の異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製氷水の循環経路に、洗浄液を循環して洗浄する製氷機およびその異常判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製氷水タンクに貯留した製氷水を、冷凍装置により冷却されている製氷部と製氷水タンクとの間で、循環ポンプによって循環して製氷部に氷塊を生成する製氷運転と、製氷部を加熱して氷塊を離脱させる除氷運転とを交互に行う製氷サイクルを繰り返すことで、多量の氷塊を製造する自動製氷機(製氷機)が、喫茶店やレストラン等の施設その他の厨房において好適に使用されている。製氷水タンクに供給される製氷水には、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分等の様々なものが含まれているので、繰り返し製氷サイクルを行うことで、製氷水の循環経路に、前記ミネラル分が濃縮したスケールや水垢などの異物が付着してしまう。循環経路に異物が付着すると、該循環経路での製氷水の循環量が低下して製氷不良や製氷時間の増加を招いたり、氷塊に異物が混入して得られる氷塊の清浄度を損なったりする等、種々の問題を生じる。そこで、製氷水タンクに貯留した製氷水に、洗剤供給装置によって洗剤(薬剤)を供給し、製氷水で洗剤が希釈された洗浄水を、循環ポンプによって製氷水の循環経路に循環して洗浄するよう構成した自動製氷機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の洗剤供給装置は、洗剤が貯留された洗剤容器と、該洗剤タンクの洗剤を製氷水タンクに導びくための洗剤供給管(ホース)と、該洗剤供給管が接続された洗剤搬送ポンプとを備え、該洗剤搬送ポンプを駆動することで、洗剤容器から入側の洗剤供給管を介して吸引した洗剤を出側の洗剤供給管を介して製氷水タンクに供給するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-109126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記洗剤供給装置において、装置に発生する振動あるいはポンプ駆動時における洗剤の脈動等によって、洗剤搬送ポンプから出側の洗剤供給管が外れてしまう異常が発生すると、循環経路が適正に洗浄されなくなる。しかしながら、出側の洗剤供給管が外れた状態で洗剤搬送ポンプを駆動した場合、洗剤容器内の洗剤は通常通りに減少していくため、洗剤容器に洗剤を補充する際には異常を発見することは難しい。そのため、異常が長期間に亘って放置され、循環経路が適正に洗浄されなくなるばかりでなく、洗剤が無駄となったり、洗剤搬送ポンプの周囲に多量の洗剤が飛散して汚したり、または構成部品を劣化させる問題を招くおそれがあり、如何にして異常を判定するかが課題となっている。
【0006】
本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、異常を判定することができる製氷機およびその異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る製氷機は、
製氷水タンクから製氷部に製氷水を導くと共に製氷部からの製氷水を製氷水タンクに回収する水循環経路を備え、循環ポンプの駆動により製氷水を前記水循環経路に循環して製氷部に氷塊を生成する製氷運転と、前記循環ポンプの駆動により前記製氷水タンクに貯留した洗浄液を前記水循環経路に循環する洗浄運転とを行い得るよう構成された製氷機において、
正転駆動によって薬液容器から前記製氷水タンクに薬液を供給すると共に、逆転駆動によって製氷水タンク内の液体を外部に排出する薬液ポンプと、
前記製氷水タンク内の液体の下限液位を検知する検知手段と、
前記循環ポンプの駆動により前記水循環経路を流れる液体を外部に排出可能な排液弁と、
判定手段と、を備え、
前記判定手段は、前記製氷水タンクに規定液位で水が貯留されている状態で、前記排液弁を開放すると共に、前記循環ポンプの駆動を開始してから前記検知手段が下限液位を検知するまでの第1時間と、前記製氷水タンクに規定液位で水が貯留されている状態で、前記薬液ポンプの逆転駆動を開始すると共に、前記排液弁を開放したもとで前記循環ポンプの駆動を開始してから前記検知手段が下限液位を検知するまでの第2時間との差が、予め設定された閾値より小さい場合に、異常と判定することを要旨とする。
請求項1の発明では、循環ポンプのみを駆動する場合の排水に係る第1時間と、循環ポンプおよび薬液ポンプを駆動する場合の排水に係る第2時間との差から、異常を判定するので、ユーザーによっては発見することが難しい異常であっても早期に検出することができる。従って、異常状態が長期間に亘って放置されるのを防ぎ、水循環経路が長期間に亘って薬剤により洗浄されなくなったり、多量の薬液が無駄となったり、薬液によって周囲が汚れたり、あるいは薬液によって構成部品が劣化するのを防ぐことができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記洗浄運転では、前記製氷水タンクに規定液位まで水を貯留し、前記排液弁を開放したもとで、前記循環ポンプを駆動して製氷水タンク内の水を排出する排水工程を実施した後、前記製氷水タンクに規定液位まで水を貯留し、前記薬液ポンプを逆転駆動して薬液ポンプと製氷水タンクとを連通する薬液の経路に水を流すと共に、前記排液弁を開放したもとで前記循環ポンプを駆動する経路洗浄工程とを実施するよう構成され、
前記判定手段は、前記排水工程において前記循環ポンプの駆動を開始してから前記検知手段が下限液位を検知するまでの前記第1時間と、前記経路洗浄工程において前記薬液ポンプおよび循環ポンプが共に駆動を開始してから前記検知手段が下限液位を検知するまでの前記第2時間との差に基づいて異常判定を行うことを要旨とする。
請求項2の発明では、洗浄運転で行われる排水工程での第1時間と、経路洗浄工程での第2時間とで異常判定を行うので、異常判定のための工程を別途行う必要はない。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記経路洗浄工程において、前記循環ポンプの駆動開始より事前時間だけ前から前記薬液ポンプの逆転駆動を開始するようにしたことを要旨とする。
請求項3の発明では、正常状態における第1時間と第2時間との差を広げることができ、異常判定で用いる閾値を、誤判定が生じない値に容易に設定することができる。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記薬液ポンプの逆転駆動により前記製氷水タンク内の水を、前記経路洗浄工程において水が流れる薬液の経路に充満させる手段を備えたことを要旨とする。
請求項4の発明では、薬液の経路に残留する薬液中の水分が蒸発して濃度が高くなるのを防ぎ、薬液中の成分が管内に析出するのを防止することができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記判定手段が異常と判定した場合に、異常報知を行う報知手段を備えたことを要旨とする。
請求項5の発明では、異常が生じていることをユーザーに報知して、適切な対策を行うことが可能となる。
【0012】
請求項6に係る発明は、
前記判定手段は、洗浄運転が実施されたことを記憶し、記憶した洗浄運転の実施時点から洗浄運転が実施されることなく洗浄報知条件が満たされた場合に、報知手段によって洗浄運転の実施時期であることを報知するよう構成したことを要旨とする。
請求項6の発明では、洗浄運転が実施されてから洗浄報知条件が満たされるまでに洗浄運転が実施されない場合は、報知手段によって洗浄運転の実施時期であることを報知するようにしたので、洗浄運転が長期に亘って実施されない状況が生ずるのを抑制することができ、水循環経路にスケール等の異物が付着するのを防ぐことができる。
【0013】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項7の発明に係る製氷機の異常判定方法は、
製氷水タンクから製氷部に製氷水を導くと共に製氷部からの製氷水を製氷水タンクに回収する水循環経路を備え、循環ポンプの駆動により製氷水を前記水循環経路に循環して製氷部に氷塊を生成する製氷運転と、前記循環ポンプの駆動により前記製氷水タンクに貯留した洗浄液を前記水循環経路に循環する洗浄運転とを行い得るよう構成された製氷機において、
前記洗浄運転では、
前記製氷水タンクに規定液位で貯留した水を、前記循環ポンプの駆動により外部に排出する排水工程と、該排水工程を実施した後に、前記製氷水タンクに規定液位で水を貯留し、前記薬液ポンプを逆転駆動して薬液ポンプと製氷水タンクとを連通する薬液の経路に水を流すと共に、前記循環ポンプの駆動により製氷水タンク内の水を外部に排出する経路洗浄工程と、を実施するようにし、
前記排水工程において前記循環ポンプの駆動を開始してから前記製氷水タンク内の液位が下限液位となったことを検知手段が検知するまでの第1時間と、前記経路洗浄工程において前記薬液ポンプおよび循環ポンプが共に駆動を開始してから前記検知手段が下限液位を検知するまでの第2時間との差が、予め設定された閾値より小さい場合に、判定手段が異常と判定することを要旨とする。
請求項7の発明では、洗浄運転で行われる排水工程での第1時間と、経路洗浄工程での第2時間とで異常判定を行って、早期に異常を検出することができ、異常状態が長期間に亘って放置されるのを防ぎ、水循環経路が長期間に亘って薬剤により洗浄されなくなったり、多量の薬液が無駄となったり、薬液によって周囲が汚れたり、あるいは薬液によって構成部品が劣化するのを防ぐことができる。
【0014】
請求項8に係る発明は、
前記経路洗浄工程において、前記循環ポンプの駆動開始より事前時間だけ前から前記薬液ポンプの逆転駆動を開始して、正常状態における前記第1時間と第2時間との差が大きくなるようにし、
正常状態における前記第1時間と第2時間との第1の差と、異常状態における前記第1時間と第2時間との第2の差を広げるようにしたことを要旨とする。
請求項8の発明では、正常状態における第1時間と第2時間との差を広げることができ、異常判定で用いる閾値を、誤判定が生じない値に容易に設定することができ、異常判定の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る製氷機およびその異常判定方法によれば、薬液ポンプからの配管の外れ等の異常を判定することができ、異常状態による運転によって適正な洗浄がなされなくなったり、機械内が汚れたり、あるいは構成部品が劣化するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に係る製氷機構部および冷凍系を示す概略図である。
図2】実施例1に係る製氷機を示す要部概略斜視図である。
図3】実施例1に係る製氷機構部を示す要部概略平面図である。
図4】実施例1に係る製氷機構部を示す概略斜視図である。
図5】実施例1に係る製氷機の制御ブロック図である。
図6】洗浄運転を示すフローチャート図である。
図7】水洗浄工程を示すフローチャート図である。
図8】薬液洗浄工程を示すフローチャート図である。
図9】すすぎ工程を示すフローチャート図である。
図10】経路洗浄工程を示すフローチャート図である。
図11】製氷機構部の固定構造の第1変形例を示す概略斜視図である。
図12】製氷機構部の固定構造の第2変形例を示す説明図である。
図13】実施例2に係る製氷機の循環ポンプと薬液ポンプとの動作を示すタイミングチャート図である。
図14】実施例3に係る製氷機の循環ポンプと薬液ポンプとの動作を示すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る製氷機およびその異常判定方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、製氷機として、所謂流下式の製氷機を挙げて説明する。
【実施例0018】
図1図2に示す実施例1の製氷機における流下式の製氷機構部10は、所定間隔離間して対向配置されて上下方向に延在する製氷板(製氷部)11,11の対向面(裏面)に、冷凍系12から導出して横方向に蛇行する蒸発器13が密着固定され、製氷工程時に蒸発器13に冷媒を循環させて製氷板11,11を冷却するよう構成される。製氷板11,11の直下には、集水樋14が配設され、製氷工程に際し製氷板11,11の各製氷面(表面)に供給されて氷結に至らなかった製氷水が、集水樋14を介して製氷水タンク15に回収貯留されるようになっている。
【0019】
図2図3に示す如く、製氷機は、所要形状に成型された樹脂からなる外箱と、板金からなる内箱との間に断熱材を充填して構成された上方および前方に開放する筐体16を本体としており、筐体16の上部には、図示しないトップパネルが配設されて上部開口を閉塞するよう構成される。また、筐体16の前部には、貯氷室に貯留された氷塊の取出し口を開閉する開閉扉50が配設されると共に、該開閉扉50より上側には、前部開口を閉塞する図示しないフロントパネルが配設されている。筐体16の内部には、内部空間を前後に仕切る樹脂製の区画部材17が、筐体16を構成する幅方向に離間する側壁16a,16a間に延在するように配設されており、該区画部材17で区画される前側空間に、製氷機構部10が配置されると共に、後側空間に、冷凍系12を構成する圧縮器CMや凝縮器CD等の主要な構成部材が配置される。また、筐体16には、区画部材17の上側後方において、両側壁16a,16a間に延在するよう配置された板金からなる支持部材18が、その延在方向の各端部が対応する側壁16aの上面に夫々ネジ止め固定されており、当該支持部材18によって両側壁16a,16aの間隔が維持されるよう構成されている。
【0020】
図3に示す如く、前記製氷機構部10は、前記製氷板11,11の幅方向の両端に設けたブラケット19,19を介して前記区画部材17に配設されている。各ブラケット19には、区画部材17の上側に延出する延出部19aが設けられている。また、前記支持部材18には、幅方向に離間して各延出部19aに対応する位置に、区画部材17の上側に延出する固定部18aが夫々設けられている。実施例1では、区画部材17の上面と支持部材18の固定部18aとの間にブラット19の延出部19aを挟んだ状態で、固定部18aおよび延出部19aに設けた通孔に挿通したネジ20を、区画部材17に設けたネジ孔に螺挿することで、ブラケット19の上部は、区画部材17および支持部材18に位置決め固定されている。
【0021】
図1に示すように、前記製氷水タンク15から循環ポンプPMを介して導出した製氷水供給管21は、製氷板11,11の上方に設けた製氷水散布器22に接続している。製氷水散布器22には、多数の散水孔(図示せず)が穿設され、製氷工程時に製氷水タンク15から循環ポンプPMの駆動により圧送された製氷水を、冷媒が循環する前記蒸発器13によって冷却されている製氷板11,11の製氷面に散水孔から散布して流下させるようになっている。そして、製氷水タンク15に貯留されている製氷水を、該製氷水タンク15に設けた後述するフロートスイッチFLが製氷終了水位である下限水位(下限液位)を検知するまで、製氷水タンク15と製氷水の循環経路(製氷水供給管21、製氷水散布器22、製氷板11,11、集水樋14)とに循環させることで、製氷板11,11の製氷面に所定の大きさの氷塊を生成するよう構成される。すなわち、製氷機は、製氷工程(製氷運転)時に製氷水が循環する循環経路としての水循環経路を備え、製氷水タンク15に貯留された製氷水や後述する薬液等の液体を、循環ポンプPMの駆動によって水循環経路に循環し得るよう構成されている。
【0022】
図1に示す如く、前記冷凍系12では、圧縮機CMで圧縮された気化冷媒が、冷媒吐出管23を経て凝縮器CDで液化した後に膨張弁EVで減圧され、蒸発器13で蒸発する過程で製氷板11,11と熱交換を行って、各製氷板11を氷点下にまで冷却させるよう構成される。また、蒸発器13で蒸発した気化冷媒は、冷媒吸入管24を経て圧縮機CMに帰還する。なお、図1の符号FMは、凝縮器CDを冷却する冷却ファンである。更に、圧縮機CMの冷媒吐出管23からホットガス管25が分岐され、このホットガス管25はホットガス弁HVを経て、蒸発器13の入口側に連通されている。製氷機は、除氷工程において、ホットガス弁HVを開放してホットガスを圧縮機CMからホットガス管25を介して蒸発器13に直接供給することで、両製氷板11,11を加熱する。
【0023】
前記製氷機は、除氷工程において製氷板11,11の裏側に除氷水を散布して、その昇温による除氷促進を行うための除氷水供給手段(給水手段)26が、製氷水タンク15や循環ポンプPM等の製氷水供給系とは別に設けられている。除氷水供給手段26は、図1に示す如く、外部水源に接続する給水管27と、対向する製氷板11,11の間の上部に設けられて給水管27が接続される除氷水散布器28と、給水管27に介挿された給水弁WVとを備える。すなわち製氷機は、除氷工程において給水弁WVを開放することで、ホットガスによる加熱と共に、外部水源からの常温の水を除氷水として除氷水散布器28に穿設した多数の散水孔(図示せず)を介して製氷板11,11の裏側に散布することで、製氷面に生成された氷塊の氷結面を融解させて、氷塊を自重により落下(離脱)させ、該氷塊が貯氷室に貯留される。なお、製氷板11,11の裏側を流下した除氷水は、製氷水と同様に集水樋14を介して製氷水タンク15に回収され、これが次回の製氷水として使用される。
【0024】
前記製氷水タンク15には、図1に示す如く、製氷工程の開始時における製氷水の製氷開始水位である上限水位WHを規定するオーバーフロー管29が、タンク底面から所定高さだけ上方に排出口を臨ませて設けられており、上限水位WHを超えて供給される余剰の水(製氷水、除氷水等)を外部に排出するよう構成される。また、製氷水タンク15には、タンク内の水位(液位)を検知する検知手段としてのフロートスイッチFLが配設される。フロートスイッチFLは、製氷水の水位に応じて支持部材に沿って上下するフロート30aと、該フロート30aを検知可能なセンサ30bとを備える(図5参照)。すなわち、フロートスイッチFLは、センサ30bにフロート30aが位置しているときに、上限水位WHより低い下限水位WLを検知する。また、前記製氷水供給管21に接続された排水管31の出口が、前記オーバーフロー管29の排出口の上側に臨んでいると共に、該排水管31の途中に排水弁32が介挿されており、該排水弁32を開放することで、前記循環ポンプPMから吐出されて製氷水供給管21を流通するすすぎ水等を、オーバーフロー管29を介して外部に排出可能に構成される。すなわち、実施例1の製氷機では、排水弁32を開放すると共に循環ポンプPMを駆動することで、製氷水タンク15に貯留されているすすぎ水等の液体を外部に排出するよう構成されている。
【0025】
図1図4に示す如く、製氷機には、水循環経路を洗浄する後述する洗浄運転(洗浄モード)に際し、前記製氷水タンク15に、薬液(薬剤)を供給する薬液供給装置33が設けられている。薬液供給装置33は、薬液が貯留されている薬液容器(充填パック等)34と、該薬液容器34から製氷水タンク15に薬液を導くと共に、製氷水タンク15内のすすぎ水等を外部に導びく薬液配管(配管)35と、薬液容器34の薬液を薬液配管35を介して製氷水タンク15に供給すると共に、製氷水タンク15内のすすぎ水(液体)等を前記オーバーフロー管29に排出する薬液ポンプ36と、を備えている。実施例1では、薬液ポンプ36として、可撓性を有するチューブをローラによって間欠的に押し潰すことによって、チューブ内の液体を圧送するチューブポンプが用いられ、薬液ポンプ36の正転駆動と逆転駆動とを切り替えることで、薬液を製氷水タンク15に供給したり、すすぎ水等をオーバーフロー管29に排出したりできるよう構成されている。薬液としては、カルシウムやマグネシウム等の水道水に含まれるミネラル分を主成分とするスケールを溶解するためのヒドロキシ酢酸やクエン酸やリン酸などのスケール除去液や、水循環経路を殺菌するための次亜塩素酸ナトリウム等の殺菌液など、水道水の性状や製氷機の使用環境などに応じた薬液を用いることができる。なお、薬液の交換は、薬液容器34を交換するだけで可能である。
【0026】
前記薬液配管35は、前記薬液容器34、薬液ポンプ36、製氷水タンク15およびオーバーフロー管29を相互に接続する複数の管から構成されている。すなわち、図1図4に示す如く、薬液ポンプ36の吸引部(可撓性チューブの一端)36aに一端が接続する吸入管(チューブ)37の他端に、継手であるチーズ38を介して供給管39の一端が接続されると共に、該供給管39の他端が薬液容器34に接続されている。また、薬液ポンプ36の吐出部(可撓性チューブの他端)36bに一端が接続する吐出管(チューブ)40の他端が、前記製氷水タンク15に連通されている。なお、吐出管40の他端は、製氷水タンク15の底部近傍で連通し、薬液ポンプ36の逆転駆動によって製氷水タンク15内のすすぎ水等を、薬液ポンプ36に吸引し得るようになっている。また、チーズ38に一端が接続されて供給管39から分岐する排出管41の他端が、前記オーバーフロー管29に接続されている。供給管39には、チーズ38との接続部より薬液容器側に、薬液ポンプ36から薬液容器34への薬液等の戻りを防ぐ第1チェックバルブ42が介挿されると共に、排出管41に、オーバーフロー管29から薬液ポンプ36へのすすぎ水等の戻りを防ぐ第2チェックバルブ43が介挿されている。実施例1では、供給管39、チーズ38、吸入管37、薬液ポンプ36の可撓性チューブ、吐出管40により、薬液容器34から製氷水タンク15へ薬液を供給する供給経路が構成され、吐出管40、薬液ポンプ36の可撓性チューブ、吸入管37、チーズ38、排出管41により、製氷水タンク15内のすすぎ水等を外部に排出する排出経路が構成される。すなわち、薬液ポンプ36を正転駆動すると、薬液容器34の薬液は、供給管39、チーズ38および吸入管37を介して吸引部36aからポンプ内に吸引された後、吐出部36bから吐出された薬液が吐出管40を介して製氷水タンク15に供給される。また、薬液ポンプ36を逆転駆動すると、製氷水タンク15に貯留されているすすぎ水等は、吐出管40を介して吐出部36bからポンプ内に吸引された後、吸引部36aから吐出されたすすぎ水等は、吸入管37からチーズ38に至り、第1チェックバルブ42によって供給管39へ逆流することなく排出管41を介してオーバーフロー管29に排出される。
【0027】
図5に示すように、製氷機は、圧縮機CM、冷却ファンFM、循環ポンプPM、ホットガス弁HV、給水弁WV、排水弁32、薬液ポンプ36の各種機器類が制御手段Cに電気的に接続され、この制御手段(判定手段)Cにより制御されるようになっている。また製氷機は、フロートスイッチFL(センサ30b)等の検知手段が制御手段Cに電気的に接続され、これらの検知手段の信号が制御手段Cに入力される。制御手段Cは、時間を計時する給水タイマ44、洗浄タイマ45、薬液タイマ46、排水タイマ47、洗浄報知タイマ60等の各種タイマを備え、各タイマ44,45,46,47,60は、制御手段Cの指令によって計時を開始する。また、制御手段Cは、後述するすすぎ工程の回数(すすぎ回数)をカウントするすすぎカウンタ48を備えている。また、制御手段Cは、各種情報を記憶する記憶部49を備えている。制御手段Cには、給水時間、薬液供給時間、水洗浄時間、薬液洗浄時間、洗浄報知時間、すすぎ回数等の各種機器を作動制御するためのデータ等の各種制御用データを入力し、その設定されたデータ値を表示する表示手段や設定手段の機能を有するタッチパネル51が接続されている。タッチパネル51は、制御手段Cにデータ設定された、各種設定値や運転状況などの情報を入力設定できる画面や、製氷運転と洗浄運転との選択切り替え画面などに、画面表示を切り替えることができる。なお、制御手段Cは、前記製氷機構部10で製造された氷塊で貯氷室内が満杯となったことを満氷検知手段(図示せず)が検知すると製氷運転を停止し、該満氷検知手段が満杯の非検知となった場合に、除氷工程から製氷運転を再開するよう各種機器を制御するよう構成される。
【0028】
製氷機は、該製氷機の運転を開始する際に実行される初期給水、除氷工程での除氷水の供給、後述する洗浄運転の各工程での水の供給に際し、前記製氷水タンク15に上限水位WHより多くの製氷水(除氷水)が供給されるように、制御手段Cが前記除氷水供給手段26を制御して、予め設定された給水時間だけ給水を行うよう構成される。具体的に、前記給水弁WVを開放してから給水タイマ44が所定の給水時間を計時すると給水弁WVを閉成するように制御手段Cで制御され、製氷工程および洗浄運転の後述する水洗浄工程、薬液洗浄工程、すすぎ工程の後述する排水工程および経路洗浄工程の開始時には上限水位(規定液位)WHで水が貯留されているよう構成される。
【0029】
実施例1の製氷機では、前記製氷板11,11に氷塊を生成する製氷工程と、製氷板11,11から氷塊を離脱させる除氷工程とからなる製氷サイクルを繰り返す製氷運転と、前記水循環経路を薬液等で洗浄する洗浄運転とを選択し得るよう構成される。なお、実施例1では、外部水源から水が供給された前記製氷水タンク15に、前記薬液供給装置33により所定量の薬液を供給し、該薬液を水で稀釈した稀釈液を製氷水の循環経路に循環させるよう構成されており、以後、稀釈液について、単に薬液と言う場合がある。洗浄運転は、制御手段Cにより圧縮機CMおよび冷却ファンFMが停止制御されると共にホットガス弁HVが閉成制御され、製氷板11を冷却または加熱しない状態とされる。そして、洗浄運転では、図6に示す如く、水循環経路に水(外部水源から供給された水)を循環する水洗浄工程と、水循環経路に薬液を循環する薬液洗浄工程と、水循環経路を水(外部水源から供給された水)ですすぐすすぎ工程と、薬液供給装置33の前記排出経路を水で洗浄する経路洗浄工程とが行われるようになっている。なお、すすぎ工程は、予め設定された設定回数(例えば3回等)だけ繰り返すよう構成されており、後述するように、制御手段Cが備えるすすぎカウンタ48は、すすぎ工程が終了する毎にカウントを1加算し、該すすぎカウンタ48が設定回数をカウントすると、制御手段Cは経路洗浄工程に移行するよう各種機器類を制御する。洗浄運転では、水や薬液を水循環経路に循環するようになっており、これら水や薬液が洗浄液となる。
【0030】
次に、洗浄運転の各工程につき、図7図10を参照して説明する。
【0031】
(水洗浄工程について)
水洗浄工程では、図7に示す如く、前記排水弁32を開放すると共に前記循環ポンプPMを駆動し(ステップS10)、前記製氷水タンク15に残留している製氷水等を排出する。製氷水タンク15から製氷水等が排出され、前記フロートスイッチFLが下限水位WLを検知する(タンク内に略水がない状態になって、ステップS11が肯定される)と、排水弁32を閉成すると共に前記循環ポンプPMを停止したもとで、前記給水弁WVを開放することで、製氷水タンク15に清浄な水を供給する(ステップS12)。また、給水タイマ44が計時を開始する。製氷水タンク15への水の供給によってタンク内水位が上昇し、前記フロートスイッチFLが下限水位WLを検知しなくなる(フロート30aがセンサ30bから離間する)と(ステップS13が肯定)、前記循環ポンプPMを駆動(ON)すると共に、洗浄タイマ45が計時を開始する(ステップS14)。なお、製氷水タンク内の水位が下限水位WLより上昇してから循環ポンプPMを駆動することにより、エア噛みを防止している。
【0032】
ステップS15において、給水タイマ44が所定の給水時間を計時すると、給水弁WVを閉成する(ステップS16)。前記循環ポンプPMの駆動により、製氷水タンク15に貯留されている水が水循環経路に循環されて、該水循環経路が水により洗浄される。そして、洗浄タイマ45が、予め設定された水洗浄時間を計時(水洗浄時間が経過)すると(ステップS17が肯定)、循環ポンプPMを停止し(ステップS18)、薬液洗浄工程に移行する。
【0033】
(薬液洗浄工程について)
薬液洗浄工程では、図8に示す如く、前記水洗浄工程のステップS10~S16と同様に、前記製氷水タンク15に残留している水洗浄に用いた水を排出した後、新たな清浄な水を製氷水タンク15に供給し、製氷水タンク15に所定量の水が供給されると給水を停止する(ステップS20~S26)。但し、薬液洗浄工程では、ステップS26において、循環ポンプPMを一旦停止する。
【0034】
次に、ステップS27において、前記薬液ポンプ36を正転駆動して薬液容器34の薬液を製氷水タンク15に供給すると共に、循環ポンプ36を駆動して薬液を水循環経路に循環させる。また、前記薬液タイマ46が計時を開始する。薬液タイマ46が薬液の供給時間を計時すると(ステップS28が肯定)、薬液ポンプ36を停止し、洗浄タイマ45が計時を開始する(ステップS29)。前記循環ポンプPMの駆動により、製氷水タンク15に貯留されている薬液(水で稀釈された薬液)が水循環経路に循環されて、該水循環経路が薬液により洗浄される。そして、洗浄タイマ45が、予め設定された薬液洗浄時間を計時(薬液洗浄時間が経過)すると(ステップS30が肯定)、循環ポンプPMを停止し(ステップS31)、すすぎ工程に移行する。
【0035】
(すすぎ工程について)
すすぎ工程では、図9に示す如く、前記水洗浄工程のステップS10~S14と同様に、前記製氷水タンク15に残留している薬液洗浄に用いた薬液を排出した後、新たな清浄な水を製氷水タンク15に供給し、タンク内水位が上昇して前記フロートスイッチFLが下限水位WLを検知しなくなると、前記循環ポンプPMを駆動する(ステップS40~S44)。そして、ステップS45において、給水タイマ44が給水時間を計時すると、給水弁WVを閉成すると共に、循環ポンプPMを停止する(ステップS46)。すすぎ工程では、給水タイマ44が給水時間を計時する前から循環ポンプPMの駆動を開始し、製氷水タンク15への給水を行いつつ水循環経路に水を循環して、該水循環経路をすすいでいる。
【0036】
ステップS46において前記循環ポンプPMを停止してから予め設定された一定時間が経過(洗浄タイマ45が一定時間を計時)すると、前記排水弁32を開放すると共に循環ポンプPMの駆動を開始することで(ステップS47)、製氷水タンク15内の水を外部に排出する排水工程を開始する。なお、循環ポンプPMを一定時間だけ停止することで、水循環経路を循環していた水が製氷水タンク15に戻り、排水工程の開始時(循環ポンプPMの駆動開始時)には製氷水タンク15には上限水位(規定液位)WHで水が貯留している。そして、製氷水タンク15から水が排出されることで、前記フロートスイッチFLが下限水位WLを検知すると(ステップS48が肯定)、前記循環ポンプPMを停止すると共に、排水弁32を閉成し(ステップS49)、ステップS50に移行する。ステップS50ですすぎカウンタ48はカウントを1加算し、該すすぎカウンタ48のカウント数が設定回数に達していなければ(ステップS51が否定)、ステップS40に戻ってすすぎ工程を繰り返す。すすぎカウンタ48のカウント数が設定回数に達した(ステップS51が肯定の)場合は、経路洗浄工程に移行する。実施例1では、すすぎ工程は、排水弁32を閉成したもとで循環ポンプPMを駆動して水循環経路を水(すすぎ水)ですすぐ工程を行った後に、排水弁32を開放したもとで循環ポンプPMを駆動してすすぎに用いた水を製氷水タンク15から排出する排水工程が行われる。
【0037】
(経路洗浄工程について)
経路洗浄工程では、図10に示す如く、ステップS60で給水弁WVを開放して製氷水タンク15に清浄な水を供給すると共に、給水タイマ44の計時を開始する。なお、すすぎ工程の終了時には、前記排水弁32は閉成されているので、製氷水タンク15には清浄な水が貯留される。ステップS61において、給水タイマ44が給水時間を計時すると、給水弁WVを閉成する。このとき、し、前記排水弁32を開放したもとで循環ポンプPMを駆動して製氷水タンク15の水を外部に排出すると共に、薬液ポンプ36を逆転駆動し、製氷水タンク15に貯留されている水を、薬液ポンプ36で吸引して前記排出経路(吐出管40、薬液ポンプ36の可撓性チューブ、吸入管37、チーズ38、排出管41)を通してオーバーフロー管29に排出する(ステップS62)。すなわち、経路洗浄工程では、製氷水タンク15に所定量(規定液位)の水が貯留された状態で、該製氷水タンク15内の水を、循環ポンプPMおよび排水弁32によって外部に排出すると共に、薬液供給装置33によっても排出する。
【0038】
そして、製氷水タンク15から水が排出されることで、前記フロートスイッチFLが下限水位WLを検知すると(ステップS63が肯定)、前記循環ポンプPMおよび薬液ポンプ36を停止すると共に、排水弁32を閉成し(ステップS64)、洗浄運転を終了する。
【0039】
前記制御手段Cは、洗浄運転中のすすぎ工程において、前記循環ポンプPMの駆動開始(ステップS47)を条件として前記排水タイマ47の計時を開始させ、前記フロートスイッチFLが下限水位WLを検知した条件(ステップS48が肯定)で計時を停止し、その計時した排水時間を記憶部49に記憶する。また、制御手段Cは、すすぎ工程が行われる毎に、排水時間を記憶し、設定回数だけ行われるすすぎ工程(排水工程)の内で、最大値の排水時間を第1時間T1として記憶する。制御手段Cは、経路洗浄工程においても、すすぎ工程の場合と同様に、循環ポンプPM(薬液ポンプ36)の駆動開始(ステップS62)を条件として排水タイマ47の計時を開始させ、フロートスイッチFLが下限水位WLを検知した条件(ステップS63が肯定)で計時を停止し、その計時した排水時間を第2時間T2として記憶部49に記憶する。そして、制御手段Cは、第1時間T1と第2時間T2との差が、予め設定された閾値Xより小さい場合は、何らかの異常が発生していると判定し、異常報知表示(異常報知)をタッチパネル(報知手段)51で実行するよう構成される。
【0040】
ここで、前記薬液ポンプ36から吐出管40が外れていない正常状態では、すすぎ工程(排水工程)において、循環ポンプPMのみが駆動されることで、製氷水タンク15に上限水位WHで貯留されている水(すすぎに用いた水)が、下限水位WLとなるまで排水管31を介して外部に排出されるのに掛かる排水時間(第1時間T1)は、経路洗浄工程において、循環ポンプPMを駆動すると共に、薬液ポンプ36を逆転駆動して排水を行う場合において、製氷水タンク15に上限水位WHで貯留されている水が、下限水位WLとなるまで排水管31および薬液供給装置33の排出経路を介して外部に排出されるのに掛かる排水時間(第2時間T2)より長くなる。これに対し、薬液ポンプ36から吐出管40が外れている異常状態では、経路洗浄工程において、薬液ポンプ36を逆転駆動しても、製氷水タンク15内の水は薬液ポンプ36に吸引されないため、薬液ポンプ36による排水はなされず、経路洗浄工程での排水時間(両ポンプPM,36が共に駆動する第2時間T2)は、すすぎ工程での排水時間(第1時間T1)と略同じになる。そこで、制御手段Cは、第1時間T1と第2時間T2との差が、予め設定された閾値Xより小さい場合に、異常が発生していると判定する。なお、閾値Xは、正常状態においても、第1時間T1や第2時間T2は、ある程変動する場合があるので、実験等によって、誤差を含めて適正に異常を判定し得る値に設定される。
【0041】
実施例1の製氷機では、前記制御手段Cは、前記洗浄運転が実施されると、該洗浄運転が実施されたことを前記記憶部49に記憶し、該記憶部49に記憶した最新の洗浄運転の実施時点から新たな洗浄運転が実施されることなく洗浄報知条件が満たされた場合に、報知手段としての前記タッチパネル51に、洗浄運転の実施時期であることを報知する洗浄報知表示を表示するよう構成されている。実施例1では、洗浄報知条件として期間(時間)が設定されている。具体的に、制御手段Cは、前記タッチパネル51によって洗浄運転が選択されると、前記洗浄報知タイマ60の計時を開始すると共に、当該洗浄運転が実施された日時を記憶部49に記憶する。そして、洗浄報知タイマ60が、洗浄報知条件としての洗浄報知時間(期間)を計時したときに、タッチパネル51に洗浄報知表示を表示するようタッチパネル51を制御する。なお、制御手段Cは、洗浄報知タイマ60が洗浄報知時間を計時する前に、製氷運転または洗浄運転が実施された場合は、洗浄報知タイマ60をリセットする。また、制御手段Cは、洗浄運転が実施されると、その実施日時をタッチパネル51に表示すると共に、該表示を、洗浄運転が実施される毎に更新する。
【0042】
〔実施例1の作用〕
次に、実施例1に係る製氷機の作用につき、異常判定方法との関係で説明する。
【0043】
実施例1の製氷機は、洗浄運転で行われるすすぎ工程(の排水工程)における排水時間(第1時間T1)と、経路洗浄工程における排水時間(第2時間T2)とを比較し、両時間T1,T2の差が、予め設定された閾値Xより小さい場合に、制御手段Cが、異常が発生していると判定するよう構成したので、異常を好適に検出することができる。すなわち、前記薬液供給装置33において、薬液容器34に薬液を補充する際には発見することが難しい、前記吐出管40の外れ異常であっても、該異常を早期に検出することができる。また、異常報知をタッチパネル51で行うので、異常が生じていることをユーザーに報知することができ、適切な対策を行うことが可能となる。従って、異常状態が長期間に亘って放置されるのを防ぎ、水循環経路が長期間に亘って薬剤により洗浄されなくなったり、多量の薬液が無駄となったり、薬液によって周囲が汚れたり、あるいは薬液によって構成部品が劣化するのを防ぐことができる。また、洗浄運転で行われるすすぎ工程での第1時間と、経路洗浄工程での第2時間とで異常判定を行うので、異常判定のための工程を別途行う必要はなく、異常判定のために肯定数が増加することはない。
【0044】
実施例1の製氷機では、洗浄運転が実施されてから洗浄報知時間が経過するまでに洗浄運転が実施されない場合は、前記タッチパネル51に洗浄運転を促す洗浄報知表示を表示するので、洗浄運転が長期に亘って実施されない状況が生ずるのを抑制することができ、水循環経路にスケール等の異物が付着するのを防ぐことができる。また、タッチパネル51には、常に最新の洗浄運転の実施日時が表示されるので、ユーザが洗浄運転の実施日時を把握することができ、洗浄運転の未実施を抑制できる。
【0045】
実施例1の製氷機では、前記製氷機構部10は、製氷板11に設けたブラケット19,19の延出部19a,19aが、筐体16における両側壁16a,16a間に配設した支持部材18にネジ止め固定されている。製氷機構部10が前側上部に配設された前記区画部材17は、製氷機構部10の重さが前方に傾く方向に作用するが、両側壁16a,16a間に架設した支持部材18に、前記ブラケット19の上部に設けた延出部19aを固定しているので、区画部材17が傾くのは防止され、これによって製氷板11が傾くのを防ぐことができる。また、内箱が樹脂製で内箱と外箱との間に断熱材が充填されている筐体16は、両側壁16a,16aが外側に変形し易いが、支持部材18によって両側壁16a,16aは連結されているので、両側壁16a,16aの間隔が広がるのを防ぐことができる。これにより、筐体内を前後に仕切っている区画部材17と、両側壁16a,16aとの間に隙間が生ずるのを防ぎ、製氷機構部10が配置されている前側空間の冷気が、冷凍系12が配置されている後側空間に漏れるのを防止することができる。また、支持部材18の固定部18aと、区画部材17の上面とでブラケット19の延出部19aを挟んで共通のネジ20によって支持部材18、ブラケット19および区画部材17を相互に固定しているので、支持部材18と区画部材17、および支持部材18とブラケット19を別々にネジ止め固定する場合に比べてネジ止め箇所を低減することができ、組み付け作業時間を短縮し得る。
【0046】
ここで、従来の製氷機では、筐体の天面に、内部空間を上側から覆う前側のトップパネルと、後側のリアパネルとが分割されて着脱自在に配設されていた。そこで、前記区画部材17が傾くのを防ぐため、リアパネルを、前記後側空間を覆い得る前後寸法とし、該リアパネルの前端部に区画部材17を固定することが考えられる。しかし、リアパネルの前後寸法を長くすると、コストが嵩む難点がある。また、筐体内部の各種機器の点検等に際しては、トップパネルのみを取り外しても後側空間内の各種機器の点検はできず、リアパネルも取り外す必要があり、手間が掛かる。しかし、実施例1では、両側壁16a,16a間に架設した支持部材18によって区画部材17が傾くのを防止する構成としたので、リアパネルを無くしたり、またはリアパネルの前後寸法を短かくしたりでき、コストを低減し得ると共に、トップパネルを取り外すのみで、後側空間内の各種機器を含めて点検を行うことが可能となり、メンテナンス性が向上する。また、リアパネルに区画部材17を固定する構成において、区画部材17にリアパネルを固定する位置と、区画部材17にブラケット19を固定する位置とが幅方向に離間する場合、該区画部材17にせん断応力が生ずるが、実施例1では支持部材18、区画部材17およびブラケット19を共通のネジ20で固定しているので、区画部材17にせん断応力が生ずることはない。
【0047】
図11図12は、実施例1における製氷機構部の固定構造の変形例を示すものであって、実施例1と異なる構成部分につき説明し、同一および同種の部分には同じ符号を付して詳細説明は省略するものとする。
【0048】
図11に示す第1変形例は、前記ブラケット19の延出部19aに、上方に延出する係合部52が設けられると共に、前記支持部材18における固定部18aに対応する後側位置に、係合部52が係合可能な被係合部としてのスリット53が形成されている。スリット53は、係合部52が挿通係合された状態で、延出部19aおよび固定部18aに設けたネジ止め用の通孔(図示せず)が上下方向に整列するように設けられている。すなわち、前記区画部材17に、ブラケット19の延出部19aを位置決めした状態で、該延出部19aに設けた係合部52がスリット53に挿通するように支持部材18を位置付ければ、延出部19aおよび固定部18aの通孔が整列するので、ネジ止め作業が容易となる。
【0049】
図12に示す第2変形例は、前記ブラケット19の延出部19aに、上方に延出する係合爪54が設けられると共に、前記支持部材18に、係合爪54が係合可能な被係合部としてのスリット55が形成されている。係合爪54は、延出端部に弾性変形可能な爪部54aが設けられており、係合爪54は、爪部54aを弾性変形させつつスリット55に挿通することで、該スリット55を抜けた爪部54aが弾性復帰することで、該爪部54aが支持部材18に引掛かって抜け止めされるよう構成される。第2変形例では、ブラケット19の延出部19aおよび区画部材17には、ネジ止め用の通孔やネジ孔は設けられておらず、係合爪54によってブラケット19の延出部19aが支持部材18に位置決めされるよう構成される。
【0050】
第2変形例では、前記ブラケット19を区画部材17に取り付けた状態で、該ブラケット19の係合爪54を、支持部材18のスリット55に挿通した後、該支持部材18を前記両側壁16a,16aにネジ止め固定する。第2変形例では、係合爪54を支持部材18に係合して取り付けるので、ネジ止め作業を省略して作業性を向上することができる。また、係合爪54の爪部54aによって支持部材18に対してブラケット19の上下方向の変位は抑えられ、係合爪54がスリット55から抜けてしまうことはない。また、係合爪54がスリット55に挿通されているので、支持部材18によって区画部材17が傾くのも防ぐことができる。
【0051】
図13図14は、製氷機の別の実施例(実施例2~実施例3)を示すものであって、別の実施例については、実施例1と異なる構成部分につき説明し、同一および同種の部分には同じ符号を付して詳細説明は省略するものとする。
【実施例0052】
実施例2の製氷機では、図13に示す如く、前記制御手段Cは、前記洗浄運転における経路洗浄工程において、前記循環ポンプPMの駆動開始より事前時間t3だけ前から前記薬液ポンプ36の逆転駆動を開始し、前記製氷水タンク15に貯留されている水を所定量だけ排出し、その後に循環ポンプPMの駆動を開始するよう構成される。具体的に、実施例2の製氷機では、図10に示す経路洗浄工程において、ステップS61で給水タイマ44が給水時間を計時すると、給水弁WVを閉成し、薬液ポンプ36の逆転駆動を開始する。また、洗浄タイマ45の計時を開始し、該洗浄タイマ45が事前時間t3を計時すると、前記排水弁32を開放して循環ポンプPMの駆動を開始すると共に、排水タイマ47の計時を開始する。そして、フロートスイッチFLが下限水位WLを検知した条件で排水タイマ47の計時を停止し、その計時した排水時間(循環ポンプPMおよび薬液ポンプ36が共に駆動している時間)を第2時間T2として記憶部49に記憶する。言い替えると、製氷水タンク15に上限水位(規定液位)WHで水が貯留されている状態で、薬液ポンプ36の逆転駆動を開始した後、事前時間t3だけ遅延して排水弁32を開放すると共に循環ポンプPMの駆動を開始する。すなわち、前記吐出管40が外れていない正常状態において、すすぎ工程における循環ポンプPMの駆動開始時における製氷水タンク15内の水の量と、経路洗浄工程における循環ポンプPMの駆動開始時における製氷水タンク15内の水の量との差を多くし、これによって前記第1時間と第2時間との差が大きくなるよう設定されている。
【0053】
ここで、前記循環ポンプPMの流量(吐出量)に対して、使用される薬液ポンプ36の流量(吐出量)が小さい場合、正常状態における第1時間T1と、第2時間T2との時間差も小さくなり、正常状態における両時間T1,T2の時間差(第1の差)と、異常状態における両時間T1,T2の時間差(第2の差)との差も小さくなる。この場合に、正常状態における両時間T1,T2の時間差では異常と判定しないようにするためには、異常判定における前記閾値Xを設定する範囲も狭くなってしまい、各種機器の運転状況のばらつきの影響によっては、異常判定を誤るおそれがある。
【0054】
例えば、製氷水タンク15の容量:2.0l、循環ポンプPMの流量:1.5l/min、薬液ポンプ36の流量:0.1l/minの条件で正常状態の場合は、すすぎ工程での第1時間T1は80秒であるのに対し、循環ポンプPMと薬液ポンプ36とを同時に駆動開始したときの経路洗浄工程での第2時間T2は75秒となり、その時間差(第1の差)は、5秒となる。従って、閾値Xは5秒より小さい数値範囲から設定しなければならず、各種機器の運転状況のばらつきの影響による時間差の誤差が大きくなった場合に、誤判定の可能性が高くなる。
これに対し、例えば事前時間t3を2分に設定した場合、前記と同条件で正常状態の場合は、すすぎ工程での第1時間T1は80秒であるのに対し、薬液ポンプ36の駆動開始から2分後に循環ポンプPMを駆動開始したときの経路洗浄工程での第2時間T2は67.5秒となり、その時間差(第1は差)は、12.5秒となる。従って、閾値Xを設定可能な範囲は広く、各種機器の運転状況のばらつきの影響によって生ずる誤差を考慮して余裕をもって閾値Xの値を設定することができる。
【0055】
すなわち、実施例2では、正常状態における両時間T1,T2の時間差を予め大きくなるよう設定しているので、正常状態における両時間T1,T2の時間差(第1の差)と、異常状態における両時間T1,T2の時間差(第2の差)との差も広がり、異常判定における閾値Xとして、誤判定が生じない値を容易に設定することができる。これにより、各種機器の運転状況のばらつきの影響により第2の差が変化した場合であっても、誤判定することなく異常を精度よく判定することができる。また、前記事前時間t3を、使用される薬液ポンプ36の流量に応じて変更することで、各種流量の薬液ポンプ36に対応することができる。
【実施例0056】
ここで、前記薬液供給装置33において、前記経路洗浄工程が終了したときは、前記供給管39内(第1チェックバルブ42から薬液容器34までの間)に薬液が残っているのに対し、前記吸入管37や排出管41には薬液は残っておらず、該吸入管37および排出管41内は空気が存在する状態となる。このため、供給管39に残っている薬液と空気との境界部において、薬液中の水分が経時的に空気中に蒸発し、薬液の濃度が高くなると薬液中の成分(例えばクエン酸)が管内に析出し、薬液のスムーズな供給が阻害されるおそれがある。そこで、実施例3の製氷機では、図14に示す如く、前記製氷運転において、前記製氷水タンク15に水が貯留され、かつ前記排水弁32が閉成されている状態で、前記薬液ポンプ36を逆転駆動し、前記排出経路を水で満たすよう構成される。当該薬液ポンプ36を逆転駆動する時間は、前記排水弁32までの排出経路内を水で満たすことができる充満時間t4(例えば、5秒)に設定される。実施例4では、排水弁32が、経路洗浄工程において水が流れる薬液の経路(排出経路)に水を充満させる手段となる。
【0057】
製氷機では、電源がONされた場合や、前記満氷検知手段が満杯検知から非検知となった場合には、前記製氷水タンク15に残留している水を排出した後に、前記除氷水供給手段26によって製氷水タンク15に前記上限水位WHまで水を供給する初期除氷サイクルが実行される。初期除氷サイクルが実行された後の前記循環ポンプPMの駆動が開始される時期には、製氷水タンク15には上限水位WHまで水(製氷水)が貯留されている。そこで、実施例3では、図14に示す如く、初期除氷サイクル後に循環ポンプPMの駆動が開始されたときに、薬液ポンプ36を逆転駆動することで、排水経路に確実に水を充満させるよう構成される。
【0058】
実施例3の製氷機では、前記製氷水タンク15に水が貯留されている状態で、前記薬液ポンプ36を逆転駆動して排出経路内を水で満たすよう構成したので、前記供給管39内に残っている薬液と空気との接触が、薬液と水との接触とに置き換わる。これにより、薬液中の水分が蒸発して濃度が高くなるの防ぎ、薬液中の成分が管内に析出するのを防止することができる。また、初期除氷サイクルが行われる毎に、薬液供給装置33における排出経路内の水は入れ替わるので、経路内に同じ水が長期に亘って滞溜することでの変質のおそれはない。
【0059】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例1や別の実施例では、除氷水の給水時間およびオーバーフローパイプによって上限水位を規定するよう構成したが、フロートスイッチに下限水位の検知用のフロートとは別に、上限水位の検知用のフロートを設け、フロートスイッチによって上限水位を規定する構成を採用することができる。
(2) 実施例1では、循環ポンプの駆動により製氷水タンクから吸引した水を、排水管を介してオーバーフローパイプに排出するよう構成したが、排水管から直接外部に水を排出する構成を採用することができる。
(3) 実施例1では、薬液ポンプの逆転駆動による製氷水タンクから吸引した水を、オーバーフローパイプに排出するよう構成したが、該オーバーフローパイプを介することなく外部に排出する構成を採用することができる。
(4) 実施例1では、洗浄報知表示を表示する洗浄報知条件として、時間を挙げたが、製氷運転の回数を洗浄報知条件とすることができる。例えば、製氷運転を50回実施した条件で、洗浄報知表示を表示する構成を採用することができる。
(5) 実施例1では、報知手段としてタッチパネルを挙げたが、7セグの表示手段や、ランプなどの発光手段や、ブザー音や合成音声などの聴覚的な音出力手段を採用することができる。
(6) 製氷機に、パーソナルコンピュータ等の外部端末に通信にて情報を出力可能な外部出力手段を設け、外部端末で洗浄運転の実施状況を確認することができる構成を採用することができる。また、外部端末に複数の製氷機を繋げることで、複数の製氷機の情報を集約することができる。
(7) 各別の実施例で示した構成や、変更例で挙げた各構成は、実施例1に限らず他の別の実施例に採用することができる。
(8) 実施例等では、流下式の製氷機構部の製氷部として、一対の製氷板からなる構成としたが、製氷部は、1つの製氷板であってもよく、また、一対の製氷板からなる製氷対を複数備える製氷部としてもよい。また、製氷機の製氷機構部は、実施例等では流下式を挙げたが、噴射式など、製氷水を循環して製氷を行う各種型式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
11 製氷板(製氷部),15 製氷水タンク
32 排水弁(排液弁,薬液の経路に水を充満させる手段),34 薬液容器
36 薬液ポンプ,37 吸入管(排出経路),38 チーズ(排出経路)
40 吐出管(排出経路),41 排出管(排出経路),51 タッチパネル(報知手段)
C 制御手段(判定手段),T1 第1時間,T2 第2時間,t3 事前時間,X 閾値
PM 循環ポンプ,FL フロートスイッチ(検知手段)
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