(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095655
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20230629BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 B
B60C11/03 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211677
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木場 洋人
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC20
3D131BC31
3D131BC44
3D131EB05U
3D131EB12V
3D131EB14V
3D131EB28V
3D131EC11V
3D131EC24V
(57)【要約】
【課題】デザイン性が高く、かつタイヤから発生する騒音を低減できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】実施形態の一例である空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延びる主溝20が形成されたトレッド10を備える。主溝20は、溝底に所定の間隔で形成された複数の細溝21を含む部分であって、タイヤ周方向に間隔をあけて配置された第1部分23と、複数の細溝21が存在しない部分であって、タイヤ周方向に第1部分23と交互に配置された第2部分24とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる第1の主溝が形成されたトレッドを備える空気入りタイヤであって、
前記第1の主溝は、
溝底に所定の間隔で形成された複数の細溝を含む部分であって、タイヤ周方向に間隔をあけて配置された第1部分と、
前記複数の細溝が存在しない部分であって、タイヤ周方向に前記第1部分と交互に配置された第2部分と、
を含む、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1の主溝の前記第1部分は、前記複数の細溝が形成された第1領域と、前記第1領域に向かって次第に深くなるように傾斜した第2領域とを含む、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1の主溝の前記第2部分には、前記トレッドの接地端側に向かって次第に深くなるように傾斜し、前記第1部分の前記第2領域と連続した斜面が形成されている、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記トレッドは、
前記トレッドのタイヤ軸方向中央に形成されたセンターブロックと、
前記第1の主溝と共に前記センターブロックを挟むように形成され、タイヤ周方向に延びる第2の主溝と、
を有し、
前記第2の主溝は、タイヤ周方向に交互に配置された前記第1部分および前記第2部分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1の主溝の前記第1部分と前記第2の主溝の前記第1部分は、タイヤ軸方向に並んで配置されている、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記トレッドは、摩耗インジケータを有し、
前記複数の細溝に挟まれた部分の高さは、前記摩耗インジケータの高さ以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記複数の細溝は、前記各主溝の側壁から、少なくとも溝幅の10%に相当する間隔をあけて形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記複数の細溝は、前記第1部分の長さ方向中央においてタイヤ軸方向に延び、前記第1部分の長さ方向両端においてタイヤ周方向に延びている、請求項1~7のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ周方向又は軸方向に延びる複数の溝と、各溝により区画された複数のブロックとを有するトレッドを備えた空気入りタイヤが広く知られている。また、車両走行時においてタイヤから発生する騒音を低減することを目的としたタイヤも幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、タイヤ周方向に沿って凹凸を繰り返すパターンで高さの異なる突起を溝底に設けたタイヤが開示されている。特許文献1には、タイヤの車外騒音を低減できるとの効果が記載されている。また、特許文献2には、溝壁および溝底に螺旋状の連続的な凹凸を設けたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-211210号公報
【特許文献2】特開2006-151314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、車両走行時において、タイヤから発生する騒音を低減することは重要な課題である。さらに、騒音を低減できると共に、高いデザイン性を有するタイヤが求められている。
【0005】
本発明の目的は、デザイン性が高く、かつタイヤから発生する騒音を低減できる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる第1の主溝が形成されたトレッドを備える空気入りタイヤであって、前記第1の主溝は、溝底に所定の間隔で形成された複数の細溝を含む部分であって、タイヤ周方向に間隔をあけて配置された第1部分と、前記複数の細溝が存在しない部分であって、タイヤ周方向に前記第1部分と交互に配置された第2部分とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、デザイン性が高く、かつタイヤから発生する騒音の低減効果に優れる。本発明に係る空気入りタイヤは、アグレッシブな意匠を特徴とする斬新なトレッドパターンを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの斜視図であって、タイヤの内部構造を併せて示す。
【
図2】実施形態の一例である空気入りタイヤの平面図である。
【
図10】主溝の第1領域の他の一例を示す図である。
【
図14】主溝の第1領域の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態および変形例の各構成要素を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0010】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の斜視図である。
図1では、空気入りタイヤ1の内部構造を併せて図示している。
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であって、タイヤ周方向に沿って環状に形成されたトレッド10を備える。トレッド10には、タイヤ周方向に延びる第1の主溝20が形成されている。主溝20は、タイヤ軸方向に曲がらず、タイヤ周方向に沿って略真っ直ぐに形成されている。トレッド10には、タイヤ周方向に延びる主溝が2本以上形成されていることが好ましく、本実施形態では、タイヤ軸方向に繰り返し屈曲しながらタイヤ周方向に延びた第2の主溝30が形成されている。
【0011】
トレッド10は、平面視台形のセンターブロック40を有する。センターブロック40は、トレッド10のタイヤ軸方向中央において、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。トレッド10は、さらに、第1クオーターブロック50と、第2クオータブロック70と、第1ショルダーブロック60と、第2ショルダーブロック80とを有する。また、トレッド10は、センターブロック40と第1クオーターブロック50の間に形成された溝状の窪み55と、第1ショルダーブロック60と第2クオーターブロック70の間に形成された副溝75とを有する。
【0012】
空気入りタイヤ1は、例えば、車両に対する装着方向が指定されたタイヤである。トレッド10は、タイヤ赤道CL(
図2参照)に対して左右非対称のトレッドパターンを有し、空気入りタイヤ1は、車両の右側と左側とで車両に装着する向きが反対になる。赤道CLとは、トレッド10のタイヤ軸方向の丁度中央を通るタイヤ周方向に沿った線を意味する。空気入りタイヤ1は、第1ショルダーブロック60が車両内側に位置するように車両に装着されることが好ましい。本明細書では、説明の便宜上「左右」の用語を使用するが、この左右とは、タイヤが車両に装着された状態で車両の進行方向に向かって左右を意味する。
【0013】
空気入りタイヤ1は、タイヤ軸方向外側に膨らんだ一対のサイドウォール11と、一対のビード12とを備える。ビード12は、ホイールのリムに固定される部分であって、ビードコア17とビードフィラー18を有する。サイドウォール11とビード12は、タイヤ周方向に沿って環状に形成され、空気入りタイヤ1の側面を構成している。サイドウォール11は、トレッド10のタイヤ軸方向両端からタイヤ径方向に延びている。
【0014】
空気入りタイヤ1には、トレッド10の接地端E1,E2と、サイドウォール11のタイヤ軸方向外側に最も張り出した部分との間に、サイドリブ13が形成されていてもよい。接地端E1は第1ショルダーブロック60側の接地端、接地端E2は第2ショルダーブロック80側の接地端である。サイドリブ13は、タイヤ軸方向外側に向かって突出し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。空気入りタイヤ1の接地端E1,E2、又はその近傍から左右のサイドリブ13までの部分は、ショルダー又はバットレス領域とも呼ばれる。
【0015】
トレッド10とサイドウォール11は、一般的に、異なる種類のゴムで構成されている。ショルダーは、トレッド10と同じゴムで構成されていてもよく、異なるゴムで構成されていてもよい。本明細書において、接地端E1,E2は、未使用の空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で所定の荷重を加えたときに平坦な路面に接地する領域のタイヤ軸方向両端と定義される。乗用車用タイヤの場合、所定の荷重は正規荷重の88%に相当する荷重である。
【0016】
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAおよびETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。正規内圧は、乗用車用タイヤの場合は通常180kPaとするが、Extra Load、又はReinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。レーシングカート用タイヤの場合、正規荷重は392Nである。
【0017】
空気入りタイヤ1は、カーカス14、ベルト15、およびインナーライナー16を備える。カーカス14は、ゴムで被覆されたコード層であり、荷重、衝撃、空気圧等に耐える空気入りタイヤ1の骨格を形成する。ベルト15は、トレッド10を構成するゴムとカーカス14の間に配置される補強帯である。ベルト15は、カーカス14を強く締めつけて空気入りタイヤ1の剛性を高める。インナーライナー16は、カーカス14の内周面に設けられたゴム層であって、空気入りタイヤ1の空気圧を保持する。
【0018】
空気入りタイヤ1が車両に対する装着方向が指定された方向性タイヤとして使用される場合、空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向を示すための表示を有することが好ましい。装着方向を示す表示は、タイヤの主回転方向を示す矢印等であってもよく、その構成は特に限定されない。一般的に、空気入りタイヤ1の側面にはセリアルと呼ばれる記号が設けられているが、装着方向を示す表示としてセリアルを用いてもよい。
【0019】
セリアルには、例えば、サイズコード、製造時期(製造年週)、製造場所(製造工場コード)などの情報が含まれる。車両の外側を向く空気入りタイヤ1の側面(サイドウォール11)のみにセリアルを設ける、或いは車両の外側を向く側面と内側を向く側面とで異なるセリアルを設けることで、車両に対する空気入りタイヤ1の装着方向を特定してもよい。具体例としては、空気入りタイヤ1の両側面に製造工場コードおよびサイズコードを設け、車両の外側を向く側面のみに製造年週を設けることが挙げられる。
【0020】
以下、
図2を参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッドパターンについて詳説する。
図2は、空気入りタイヤ1(トレッド10)の平面図である。
図2では、各ブロックの上面にドットハッチングを付している。ブロックの上面とは、プロファイル面α(
図4等参照)に沿った面であって、接地端E1からE2の範囲では路面に接地する接地面となる。プロファイル面αは、トレッド10の外周面に沿った面である。
【0021】
図2に示すように、トレッド10は、タイヤ周方向に延びる2本の主溝20,30と、主溝20につながった溝状の窪み55と、トレッド10のタイヤ軸方向中央側から接地端E1側に向かって延びる副溝75と、各溝により区画された複数のブロックとを有する。ブロックは、タイヤ径方向外側に向かって突出した部分であって、一般的に、陸とも呼ばれる。トレッド10は、ブロックとして、センターブロック40、第1クオーターブロック50、第1ショルダーブロック60、第2クオーターブロック70、および第2ショルダーブロック80を有する。
【0022】
主溝20は、センターブロック40と接地端E2側の第2ショルダーブロック80との間に形成され、タイヤ周方向に沿って略真っ直ぐに延びている。本実施形態では、赤道CL上において、センターブロック40と第1クオーターブロック50が窪み55を介してタイヤ周方向に交互に配置されている。第2ショルダーブロック80は、タイヤ周方向に連続したブロックであって、一定の幅で主溝20と平行に形成されている。トレッド10には、センターブロック40および第1クオーターブロック50と、第2ショルダーブロック80とを分断するように、主溝20が形成されている。
【0023】
主溝30は、センターブロック40と接地端E1側の第1ショルダーブロック60の間に形成され、タイヤ軸方向に繰り返し屈曲しながらタイヤ周方向に延びている。本実施形態では、センターブロック40と第1ショルダーブロック60の間に、第1クオーターブロック50と第2クオーターブロック70が介在している。第1クオーターブロック50と第2クオーターブロック70は、タイヤ周方向に連続したブロックであって、センターブロック40と第1ショルダーブロック60を避けるようにタイヤ軸方向に屈曲しながらタイヤ周方向に延びている。トレッド10には、第1クオーターブロック50と第2クオーターブロック70を分断するように、主溝30が形成されている。
【0024】
主溝20は、溝底に所定の間隔で形成された複数の細溝21を含む部分であって、タイヤ周方向に間隔をあけて配置された第1部分23と、複数の細溝21が存在しない部分であって、タイヤ周方向に第1部分23と交互に配置された第2部分24とを含む。溝底に所定の間隔で複数形成された細溝21は、車両走行時においてタイヤから発生する騒音を低減する機能を有する。主溝20の第1部分23をタイヤ周方向に間隔をあけて第2部分24と交互に配置することにより、騒音低減効果がより顕著になる。また、複数の細溝21は、陰影を際立たせてデザイン性を向上させ、ゴムの使用量削減にも寄与する。
【0025】
主溝30には、主溝20と同様に、溝底に所定の間隔で形成された複数の細溝31を含む部分である第1部分33と、複数の細溝31が存在しない第2部分34とが設けられている。主溝30は、第1部分33と第2部分34がタイヤ周方向に交互に配置されて構成されている。第1部分33は、タイヤ騒音の低減、デザイン性の向上、ゴム使用量の削減等に寄与する。本実施形態では、主溝20の第1部分23と、主溝30の第1部分33が、タイヤ軸方向に並んで配置されている。この場合、例えば、騒音低減効果がより顕著になり、またまとまりのあるデザインとなり洗練された印象を与える。
【0026】
トレッド10には、接地端E1側から順に、第1ショルダーブロック60、第2クオーターブロック70、第1クオーターブロック50、センターブロック40、および第2ショルダーブロック80が形成されている。センターブロック40と第1ショルダーブロック60は、タイヤ周方向に連続しておらず、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。第1クオーターブロック50、第2クオーターブロック70、および第2ショルダーブロック80は、タイヤ周方向に連続したブロックであって、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。
【0027】
センターブロック40と第1ショルダーブロック60は、平面視台形のブロックであって、それぞれタイヤ周方向に一列に並んで等間隔で配置されている。第1ショルダーブロック60は、トレッド10の接地端E1側の軸方向一端において、タイヤ周方向にセンターブロック40と交互に並ぶように形成される。センターブロック40の一部と第1ショルダーブロック60の一部はタイヤ周方向に重なり、センターブロック40と第1ショルダーブロック60の間を、第1クオーターブロック50、第2クオーターブロック70、および主溝30がジグザグ状に曲がって形成されている。
【0028】
センターブロック40と第1ショルダーブロック60は、台形の底辺である短辺および長辺がタイヤ周方向に沿うように配置されている。即ち、各ブロックの台形の斜辺は、タイヤ周方向および軸方向に傾斜している。このように、台形のブロックを整列配置することで、安定したトラクション性能が発揮される。なお、台形の短辺、長辺はそれぞれ、上底、下底とも呼ばれる。また、センターブロック40と第1ショルダーブロック60は、各台形の短辺が主溝30側に配置されている。この場合、タイヤ周方向に沿って、センターブロック40と第1ショルダーブロック60を規則的に配置することが容易になる。
【0029】
センターブロック40は、第1ショルダーブロック60と同じ大きさであってもよく、第1ショルダーブロック60より大きくてもよいが、本実施形態では、第1ショルダーブロック60よりやや小さく形成されている。詳しくは後述するが、センターブロック40の台形の短辺、長辺、および斜辺に沿って、第1の斜面41、第2の斜面42、第3の斜面43,44がそれぞれ形成されている。同様に、第1ショルダーブロック60の台形の短辺に沿って斜面61が形成されている。
【0030】
センターブロック40は、溝状の窪み55と主溝20に囲まれている。窪み55は、斜面41,43,44に沿って平面視略U字に形成され、斜面42に沿って延びる主溝20と共にセンターブロック40の周りを囲んでいる。なお、センターブロック40の各斜面は、窪み55および主溝20の溝壁および溝底の一部を構成している。窪み55の外側には、センターブロック40と共に窪み55を挟むように第1クオーターブロック50が形成されている。
【0031】
第1クオーターブロック50は、接地端E1の方向に凸となるように窪み55に沿って形成された第1ゾーン51と、タイヤ周方向に真っ直ぐに延びた第2ゾーン52とを含み、第1ゾーン51と第2ゾーン52が交互に繰り返された形状を有する。主溝30は第1クオーターブロック50に沿って形成され、主溝30を隔てて第1クオーターブロック50と対向するように第2クオーターブロック70が形成されている。第2クオーターブロック70は、第1クオーターブロック50と同様に、接地端E1の方向に凸となるように形成された第1ゾーン71と、タイヤ周方向に真っ直ぐに延びた第2ゾーン72とを含む。第1ゾーン71は、タイヤ周方向に隣り合う第1ショルダーブロック60の間に入り込み、接地端E1を超える位置にわたって形成されている。
【0032】
トレッド10には、第1ショルダーブロック60の台形の短辺および斜辺に沿って、台形の三方を囲むように副溝75が形成されている。副溝75は、平面視略U字に形成され、第1ショルダーブロック60と第2クオーターブロック70を分断している。副溝75は、トレッド10の赤道CL側から軸方向外側に延び、接地端E1を超える位置にわたって形成されている。換言すると、接地端E1と、接地端E1につながった副溝75とにより、第1ショルダーブロック60の台形が形成されている。
【0033】
以下、
図2に加えて、
図3~
図7を適宜参照しながら、トレッドパターンの各構成要素について、さらに詳説する。
図3、
図6、および
図7は、それぞれ、
図2中のAA線断面、BB線断面、CC線断面の一部を示す図である。
図4は
図3中のF1部分拡大図、
図5は
図3中のF2部分拡大図である。
【0034】
[主溝20,30]
図2に示すように、主溝20,30は、赤道CLの両側にそれぞれ形成され、赤道CLと交差することなくタイヤ周方向に延びている。また、主溝20,30は、トレッド10のタイヤ軸方向中央に配置されたセンターブロック40と第1クオーターブロック50を左右両側から挟むように形成されている。上述の通り、主溝20はタイヤ周方向に沿って略真っ直ぐに形成され、主溝30はタイヤ周方向にジグザグ状に屈曲しながら延びている。主溝20,30の深さは、タイヤ周方向に沿って一定ではなく、例えば、深さが浅い部分と深い部分が規則的に繰り返されている。主溝20,30の最深地点は、窪み55および副溝75の最深地点より深くなっている。
【0035】
主溝20は、複数の細溝21が溝底に形成され、タイヤ騒音の低減機能を有する第1部分23において、第2部分24よりもやや幅広に形成されている。第1部分23は、複数の細溝21が形成された第1領域25aと、第1領域25aに向かって次第に深くなるように傾斜した第2領域25bとを含む。第1領域25aは、第2ショルダーブロック80に隣接して形成され、第2領域25bは、第1領域25aの赤道CL側に隣接して形成されている。第1領域25aは、主溝20に沿って長くなった平面視台形に形成され、台形の底辺はタイヤ周方向と平行で、短辺が赤道CL側を向いている。トレッド10のプロファイル面αに対する第2領域25bの傾斜角度は、例えば、30°~70°である。
【0036】
主溝20の各第1部分23は、第1クオーターブロック50の第2ゾーン52に隣接し、各第2部分24は、センターブロック40に隣接している。即ち、主溝20における第1部分23と第2部分24は、トレッド10のタイヤ軸方向中央のブロックと同じ繰り返し単位長さ(ピッチ)で、タイヤ周方向に沿って形成されている。主溝30の第1部分33と第2部分34についても同様に、トレッド10のタイヤ軸方向中央のブロックと同じピッチで形成されている。
【0037】
主溝30は、複数の細溝31が溝底に形成された第1部分33において、第2部分34よりも幅広に形成されている。複数の細溝31は主溝30の全幅にわたって形成され、第1部分33は、全体として平面視台形に形成されている。第1部分33の台形は、底辺がタイヤ周方向と平行で、短辺が赤道CL側を向いている。第2部分34は、第1クオーターブロック50の第1ゾーン51に沿って延びた幅が細い溝部分であって、接地端E1側に向かって凸となるように平面視略U字に形成されている。
【0038】
複数の細溝21,31は、例えば、互いに異なる溝幅で、異なる向きにランダムなパターンで形成されていてもよいが、安定した騒音低減効果を発揮し、デザイン性を高めるためには、ある程度規則的に形成されることが好ましい。細溝21,31は、タイヤ軸方向および周方向に対して交差する方向に延びていてもよいが、本実施形態では、タイヤ軸方向又は周方向に沿って形成されている。空気入りタイヤ1から発生する騒音は、ロードノイズとパターンノイズに大別される。細溝21,31は、パターンノイズの周波数帯をずらすことで、タイヤから発生する騒音を低減する。
【0039】
複数の細溝21は、例えば、互いに平行に形成され、第1部分23には、細溝21と、複数の細溝21に挟まれた部分であるリブ22とが、交互に繰り返されて溝底の凹凸構造が形成されている(細溝31についても同様)。詳しくは後述するが、細溝21,31は、第1部分23,33のタイヤ周方向中央においてタイヤ軸方向に延び、第1部分23,33のタイヤ周方向両端においてタイヤ周方向に延びている。
【0040】
主溝20の第1部分23と主溝30の第1部分33は、第1クオーターブロック50の第2ゾーン52を隔ててタイヤ軸方向に並んで配置されている。そして、第1領域25aの台形の短辺と、第1部分33の台形の短辺が、第2ゾーン52を挟んで対向している。平面視において、第1領域25aの面積は、例えば、第1部分33の面積以上であり、第1部分33の面積の1.3倍以下である。主溝20の第2部分24と主溝30の第2部分34についても、センターブロック40、窪み55、および第1クオーターブロック50を隔ててタイヤ軸方向に並んで配置されている。
【0041】
図3~
図5に示すように、主溝20の第2部分24には、接地端E1側に向かって次第に深くなるように傾斜した斜面26と、第2ショルダーブロック80に沿うように延びる側溝27とが形成されている。側溝27は、タイヤ周方向に真っ直ぐに延び、主溝30の第2部分34と同様に、細い幅で深く形成されている。本実施形態では、側溝27の底、および細溝21の底が同じ深さに形成され、主溝20の最深部分となっている。また、主溝30の細溝31の底、および第2部分34の底が同じ深さに形成され、主溝30の最深部分となっている。
【0042】
第2部分24の深さは、センターブロック40側から第2ショルダーブロック80側に向かって次第に深くなっている。第2部分24の溝壁を形成するセンターブロック40の斜面42は、プロファイル面αに対して角度θ2で傾斜している。斜面26は、プロファイル面αに平行な面βに対して角度θ5で傾斜し、斜面42の下端から側溝27にわたって第2部分24の幅の50%を超える幅で形成されている。斜面26の幅の一例は、第2部分24の幅の50%~95%、又は60%~90%である。
【0043】
第2部分24の斜面26は、第1部分23の第2領域25bと連続して形成されている。第2領域25bは、上述の通り、複数の細溝21が形成された第1領域25aに向かって次第に深くなるように傾斜した斜面である。斜面26の傾斜角度θ5は、斜面42の傾斜角度θ2より小さく、また第2領域25bの傾斜角度より小さい。第2領域25bは、例えば、斜面26に向かって次第に傾斜が緩やかになっている。
【0044】
図7に示すように、第1部分23,33において、細溝21,31は同じ深さで形成され、リブ22,32は同じ高さで形成されている。トレッド10には、摩耗インジケータ(図示せず)が設けられている。摩耗インジケータは、主溝20,30の少なくとも一方の溝底に配置された突起であって、トレッドゴムの摩耗レベルを確認する指標である。リブ22,32の高さは、摩耗インジケータの高さ以下であることが好ましく、摩耗インジケータの高さと同等であることが特に好ましい。この場合、トレッドゴムが摩耗インジケータの高さレベルまで摩耗しても、騒音低減機能、即ち溝底の凹凸構造を確保できる。
【0045】
[センターブロック40]
図2に示すように、センターブロック40は、トレッド10のタイヤ軸方向中央に形成された平面視台形のブロックであって、台形の各辺に沿って斜面を有している。センターブロック40は、上面(接地面)が台形であればよい。台形には、実質的に台形と認められるものが含まれ、例えば、角が面取りされて丸みを帯びた略台形であってもよい。センターブロック40は、台形の短辺が接地端E1側を向き、長辺が接地端E2側を向いて、短辺と長辺がタイヤ周方向に平行な状態で配置されている。センターブロック40の台形の長辺は、短辺よりも赤道CL寄りに位置している。
【0046】
センターブロック40の台形の斜辺は、タイヤ周方向および軸方向に対して傾斜している。台形の2つの斜辺は、タイヤ軸方向に対し、接地端E1側から接地端E2側に向かって互いに離れるように傾斜しているが、例えば、タイヤ軸方向に対する各斜辺の傾斜角度は同じであり、また各斜辺の長さも同じである。センターブロック40のタイヤ周方向両端には、台形の斜辺に沿った第3の斜面43,44が形成されている。斜面43,44は、互いに同じ大きさで形成されている。
【0047】
センターブロック40は、上述の通り、タイヤ周方向に一列に並んで等間隔で配置されている。ここで、等間隔には、完全な等間隔だけでなく、実質的に等間隔と認められる場合が含まれる。センターブロック40を等間隔で配置することにより、安定したトラクション性能を確保できる。タイヤ周方向に隣り合うセンターブロック40の間隔(第1のセンターブロック40の斜面43と、第2のセンターブロック40の斜面44との最短距離)は、例えば、センターブロック40の台形の短辺の長さより長く、台形の長辺の長さより短い。タイヤ周方向に沿ったセンターブロック40の個数の一例は、20個~30個である。
【0048】
図4~
図6に示すように、トレッド10の外周面に沿ったプロファイル面αに対する各斜面の傾斜角度は、第3の斜面43,44、第1の斜面41、第2の斜面42の順で次第に大きくなっている(θ3,θ4<θ1<θ2)。プロファイル面αに対する斜面43,44の傾斜角度θ3,θ4は、互いに異なっていてもよいが、本実施形態では同じである。即ち、タイヤ周方向に向いた斜面43,44は傾斜が緩やかで、タイヤ軸方向に向いた斜面41,42は傾斜がきつくなっている。この場合、良好な乗り心地性能を確保しつつ、トラクション性能を改善できる。特に、車両の外側を向く斜面42の傾斜角度θ2を大きくすることで、例えば、コーナリングパワー(CP)が向上する。
【0049】
プロファイル面αに対する斜面41の傾斜角度θ1は、30°~70°が好ましく、40°~60°がより好ましい。プロファイル面αに対する斜面42の傾斜角度θ2は、60°~80°が好ましく、65°~75°がより好ましい。プロファイル面αに対する斜面43の傾斜角度θ3は、20°~50°が好ましく、25°~45°がより好ましい。センターブロック40の各斜面の傾斜角度が当該範囲内であれば、良好な乗り心地性能とトラクション性能をより効果的に両立できる。
【0050】
[第1クオーターブロック50]
図2に示すように、第1クオーターブロック50は、窪み55を隔ててセンターブロック40の三方を囲むように形成され、主溝30に沿ってタイヤ周方向に連続している。第1クオーターブロック50の第1ゾーン51は、一定の幅を有する細い帯状に形成され、窪み55を隔ててセンターブロック40の台形の短辺と2つの斜辺に沿うように延びている。そして、第1ゾーン51は、接地端E1側に向かって凸となるように平面視略U字に形成されている。第1クオーターブロック50の第2ゾーン52は、各センターブロック40の間でタイヤ周方向に沿って延び、2つの第1ゾーン51を連結している。
【0051】
第1クオーターブロック50の高さは、センターブロック40の高さ以下であり、かつ摩耗インジケータの高さより高いことが好ましい。本明細書において、ブロックの高さとは、主溝20,30の最深部分に沿ったトレッド10の基準面からブロック上面までの最短距離を意味する(摩耗インジケータについても同様)。本実施形態では、第1クオーターブロック50がセンターブロック40と同じ高さで形成され、第1クオーターブロック50の上面は、路面に接する接地面となっている。
【0052】
図3および
図4に示すように、第1クオーターブロック50の第1ゾーン51は、主溝30と窪み55によって挟まれている。主溝30と窪み55の間に第1クオーターブロック50を設けることにより、良好な排水性を確保しつつ、トレッド10のブロック剛性を全体として高めることができる。また、接地面積が大きくなり、例えば、トラクション性能、制動性能等が向上する。第1ゾーン51の幅は、特に限定されないが、本実施形態では、窪み55の幅より細く、主溝30の第2部分34の幅より太くなっている。
【0053】
図6に示すように、トレッド10の赤道CL上には、タイヤ周方向に沿って、センターブロック40と第1クオーターブロック50の第2ゾーン52が、窪み55を隔てて交互に配置されている。センターブロック40のタイヤ周方向に沿った長さは、主溝20側で長く、主溝30側で短いが、第2ゾーン52のタイヤ周方向に沿った長さは、主溝20側で短く、主溝30側で長い。また、赤道CL上において、センターブロック40のタイヤ周方向に沿った長さは、第2ゾーン52のタイヤ周方向に沿った長さより長くなっている。
【0054】
図7に示すように、第1クオーターブロック50の第2ゾーン52は、主溝20,30の幅が広くなった第1部分23,33によりタイヤ軸方向両側から挟まれている。なお、第1部分23,33において、主溝20,30同士の間隔が最小となっている。第2ゾーン52は、第1部分23,33よりも幅広に形成されている。この場合、2本の主溝の幅が広がって接近した部分において、トレッド10のブロック剛性を高くし、ブロックの耐久性を効果的に改善できる。さらに、第1部分23,33に形成されたリブ22,32によって第2ゾーン52が補強される。
【0055】
[窪み55]
図2に示すように、窪み55は、センターブロック40と第1クオーターブロック50の間に形成され、堀のようにセンターブロック40の三方を囲んでいる。窪み55は、センターブロック40の台形の短辺および斜辺に沿って溝状に延び、平面視略U字に形成されている。窪み55は、接地端E2側の両端が主溝20に連通しており、センターブロック40の周囲の雨水等を主溝20に流すことができる。窪み55は、センターブロック40の台形の短辺に沿った部分よりも、斜面に沿った部分で幅広に形成され、かつ主溝20に近づくほど、次第に幅が広がっている。この場合、トレッド10のタイヤ軸方向中央における排水性がより良好になる。
【0056】
窪み55は、主溝20から接地端E1側に延び、タイヤ周方向に副溝75と重なる位置にわたって形成されている。副溝75は、トレッド10のタイヤ軸方向一端において、タイヤ周方向に間隔をあけて形成され、窪み55は、タイヤ周方向に隣り合う副溝75の間に入り込むように形成されている。タイヤ周方向に窪み55と副溝75が重なるように配置することで、排水性をより効果的に高めることができる。
【0057】
図3、
図4、および
図6に示すように、窪み55の深さは、主溝20,30よりも浅く、主溝20に近づくほど、次第に深くなっている。この場合、センターブロック40および第1クオーターブロック50の耐久性を確保しつつ、排水性を向上させることができる。また、窪み55の幅方向の深さは、センターブロック40の台形の斜面に沿って次第に深くなり、斜面の下端で最も深くなっている。窪み55は、最も浅い部分において、摩耗インジケータの上面より深く形成されていることが好ましい。
【0058】
[第1ショルダーブロック60]
図2に示すように、第1ショルダーブロック60は、トレッド10のタイヤ軸方向端部に形成された平面視台形のブロックであって、少なくとも短辺に沿って斜面61を有している。空気入りタイヤ1は、第1ショルダーブロック60が車両内側に位置するように、車両に装着されることが好適である。第1ショルダーブロック60は、接地面が実質的に台形と認められる形状を有していればよい。第1ショルダーブロック60の台形の短辺、斜辺は副溝75により形成され、接地端E1が台形の長辺となっている。
【0059】
第1ショルダーブロック60は、台形の短辺が赤道CL側を向いて、短辺と長辺がタイヤ周方向に平行な状態で配置されている。第1ショルダーブロック60の台形の斜辺は、センターブロック40の場合と同様に、タイヤ周方向および軸方向に対して傾斜している。台形の2つの斜辺は、タイヤ軸方向に対し、赤道CL側から接地端E1側に向かって互いに離れるように傾斜しているが、例えば、タイヤ軸方向に対する各斜辺の傾斜角度は同じであり、また各斜辺の長さも同じである。なお、第1ショルダーブロック60の台形の斜辺に沿って、斜面が形成されていてもよい。
【0060】
第1ショルダーブロック60は、タイヤ周方向に隣り合うセンターブロック40の間に入り込み、タイヤ周方向にセンターブロック40と重なる位置にわたって形成されている。この場合、トレッド10の全体としてブロック剛性を高めることができ、安定したブロック耐久性、トラクション性能を実現できる。第1ショルダーブロック60の接地面積は、例えば、センターブロック40の接地面積より大きく、1.1倍~1.5倍であってもよい。第1ショルダーブロック60は、タイヤ周方向にセンターブロック40と同じピッチで同数形成されている。
【0061】
図7に示すように、第1ショルダーブロック60の台形の短辺に沿った斜面61は、主溝20,30のリブ22,32と同等、又はそれ以上の深さまで形成されていてもよい。斜面61は、副溝75の溝壁および溝底を形成し、副溝75の深さは斜面61の下端で最も深くなっている。プロファイル面αに対する斜面61の傾斜角度は、主溝20の第2領域25bの傾斜角度より大きく、センターブロック40の斜面42の傾斜角度θ2より小さくてもよい。車両の外側を向く斜面61の傾斜角度を大きくすることで、例えば、CP特性が向上する。
【0062】
[第2クオーターブロック70]
図2に示すように、第2クオーターブロック70は、副溝75を隔てて第1ショルダーブロック60の三方を囲むように形成されている。また、第1クオーターブロック50と同様に、主溝30に沿って形成され、タイヤ周方向に連続している。第2クオーターブロック70の第1ゾーン71は、赤道CL側から接地端E1側に延びてタイヤ周方向に隣り合う第1ショルダーブロック60の間に入り込み、接地端E1を超える位置にわたって形成されている。第2クオーターブロック70の第2ゾーン72は、各センターブロック40の間でタイヤ周方向に沿って延び、2つの第1ゾーン71を連結している。
【0063】
第2クオーターブロック70の高さは、センターブロック40、第1ショルダーブロック60等と同じ高さで形成され、第2クオーターブロック70の上面は、路面に接地する接地面となっている。第2クオーターブロック70の第1ゾーン71は、接地端E1側から赤道CL側に向かってタイヤ周方向長さが次第に長くなるように拡大した第1の部分と、第1の部分から主溝30に沿って二股に分かれた第2の部分とを含む。
【0064】
図7に示すように、第2クオーターブロック70の第2ゾーン72は、主溝30の第1部分33と副溝75により挟まれた部分であって、第1クオーターブロック50の第2ゾーン52と平行に形成されている。第2ゾーン72の幅は、例えば、副溝75の幅と同等であり、第1部分33の幅より細くなっている。本実施形態では、第1部分33のリブ32により第2ゾーン52,72が連結された構造となっている。また、副溝75の溝壁および溝底を形成する第2ゾーン72の側壁は、第1ショルダーブロック60に向かって緩やかに傾斜している。このため、溝幅が広くなった部分においても、ブロックの高い耐久性を確保できる。
【0065】
[副溝75]
図2に示すように、副溝75は、第1ショルダーブロック60の台形の短辺および斜辺に沿って延び、平面視略U字に形成されている。副溝75は、台形の短辺と第2クオーターブロック70との間において、他の部分よりも幅広に形成されている。副溝75は、タイヤ周方向に等間隔で形成され、タイヤ周方向につながっておらず、主溝30にもつながっていない。また、副溝75は、トレッド10のタイヤ軸方向中央から接地端E1を超える位置にわたって延び、当該中央から雨水等を容易に排水できる。この場合、高いブロック剛性を確保しつつ、良好な排水性を実現できる。
【0066】
本実施形態では、上述のように、窪み55の一部と副溝75の一部がタイヤ周方向に重なり、窪み55と副溝75がタイヤ周方向に交互に並ぶように形成されている。即ち、窪み55と副溝75は、センターブロック40と第1ショルダーブロック60の配置と同様に、タイヤ周方向に沿って千鳥状に配置されている。また、窪み55と副溝75の間には、第1クオーターブロック50と第1ショルダーブロック60を介して主溝30が形成されている。これにより、高いブロック剛性と良好な排水性の両立が容易になる。
【0067】
図7に示すように、副溝75の幅が広くなった部分、即ち第1ショルダーブロック60の台形の短辺と第2クオーターブロック70との間に位置する部分には、副溝75の幅方向両側から溝底に向かって斜面が形成されている。当該斜面は、第1ショルダーブロック60の短辺に沿って形成された斜面61、および第2クオーターブロック70の第2ゾーン72の側壁である。斜面61は、第2ゾーン72の側壁よりも、プロファイル面αに対する傾斜角度が大きくなっている。
【0068】
[第2ショルダーブロック80]
図2に示すように、第2ショルダーブロック80は、トレッド10のタイヤ軸方向他端において、主溝20に隣接する位置から接地端E2を超える位置にわたって形成されている。
図2では、第2ショルダーブロック80に溝は図示されていないが、例えば、タイヤ軸方向に延びる溝が形成されていてもよい。なお、第2ショルダーブロック80に形成される溝形状は特に限定されない。第2ショルダーブロック80は、上述の通り、一定の幅で主溝20と平行に形成されている。
【0069】
図8は、主溝20の第1部分23のタイヤ周方向断面(
図2中のDD線断面)の一部を示す。なお、主溝30の第1部分33の断面構造も、
図8に示す断面構造と同様である。
【0070】
図8に示すように、主溝20の第1部分23(第1領域25a)には、溝底に所定間隔で複数の細溝21が形成され、細溝21とリブ22が交互に配置された溝底凹凸形状が形成されている。所定間隔で複数形成された細溝21は、パターンノイズの周波数帯をずらしてタイヤから発生する騒音を低減し、またデザイン面でも陰影を際立たせてより洗練された印象を与える。さらに、ゴム使用量の削減にも寄与する。
【0071】
細溝21の深さDpの一例は、0.5mm~2mmである。なお、細溝21の深さDpは、言い換えると、細溝21の底からのリブ22の高さである。リブ22の上面は、例えば、主溝20の第2部分24の斜面26と同程度の深さに形成されており、主溝20の第1の溝底といえる。リブ22の上面は、第2領域25bと同様に傾斜していてもよいが、本実施形態では、プロファイル面αと平行に形成されている。細溝21の底は、第2部分24の側溝27の底と同程度の深さであり、第2の溝底といえる。即ち、主溝20は、少なくとも2段の深さで形成されている。
【0072】
複数の細溝21の幅は、互いに異なっていてもよいが、本実施形態では、各細溝21が同じ幅Wで形成されている。細溝21の幅の一例は、0.1mm~0.5mmである。リブ22の幅は、細溝21の幅W以下であってもよいが、本実施形態では、細溝21の幅Wより大きくなっている。リブ22には、幅がW1の第1リブ22aと、幅がW2の第2リブ22bとが含まれていてもよく、幅が互いに異なる3種類以上のリブが含まれていてもよい。或いは、各リブ22の幅は同じであってもよい。デザイン面、ブロック耐久性等の観点から、溝底凹凸構造の好適な一例としては、細溝21の間隔が均一(リブ22の幅が一定)で、リブ22の幅が細溝21の幅より大きくなった構造が挙げられる。
【0073】
リブ22の側壁(細溝21の溝壁)は、リブ22の下端側が拡幅するように傾斜している。細溝21の底に垂直な仮想線に対する当該側壁の傾斜角度θa,θbは、例えば、1°以上であり、好ましくは1°~5°である。また、リブ22の側壁の下端部分は、リブ22の内側に向かって湾曲していてもよい。リブ22がこのような側壁形状を有する場合、タイヤの製造時に金型から容易に離型できる。また、複数の細溝21は、後述の
図14に示すように、主溝20の側壁から、少なくとも溝幅の10%に相当する間隔をあけて形成されていてもよい。
【0074】
図9および
図10は、主溝30の第1部分33の拡大図である。
図9および
図10では、図面の明瞭化のため、リブ32の上面にドットハッチングを付している。以下の説明は、主溝20の第1部分23にも適用できる。溝底に形成された複数の細溝31は、上述のように、第1部分33のタイヤ周方向中央においてタイヤ軸方向に延び、第1部分23,33のタイヤ周方向両端においてタイヤ周方向に延びている。この場合、パターンノイズの周波数帯をより効果的にずらすことができ、騒音低減効果がより顕著になる。また、デザイン面でも斬新で洗練された印象を与える。
【0075】
図9に示す例では、タイヤ軸方向に延びる細溝31a、タイヤ周方向に延びる細溝31b、および途中で屈曲した細溝31cが溝底形成されている。細溝31cは、途中で直角に曲がった屈曲部を有し、タイヤ周方向に延びる部分と、タイヤ軸方向に延びる部分とを含んでいる。第1部分33のタイヤ周方向両端には、2本の細溝31bと1本の細溝31cが形成されている。
図10に示すように、第1部分33には、タイヤ軸方向に延びる細溝31aとタイヤ周方向に延びる細溝31bだけが形成され、屈曲部を有する細溝31cが形成されていなくてもよい。
【0076】
細溝31aは、互いに同じ幅で平行に形成されている。第1部分33のタイヤ周方向中央には、リブ32aを中心として、そのタイヤ周方向両側に、リブ32aよりもやや幅の狭いリブ32bが2本ずつ形成されている。なお、各リブの幅は同じであってもよく、細溝31aが等間隔で配置されていてもよい。第1部分33のタイヤ周方向両端には、タイヤ軸方向に延びるリブ部分と、タイヤ周方向に延びる複数のリブ部分が連結され、全体として櫛歯状に形成されたリブ32cが配置されている。
【0077】
以上のように、空気入りタイヤ1は、デザイン性が高く、かつ車両走行時に発生する騒音が小さい。主溝20,30の溝底に所定間隔で形成された複数の細溝21,31は、陰影を際立たせて斬新で洗練された印象を与えると共に、パターンノイズの周波数帯を効果的にずらすことができ、タイヤから発生する騒音を低減する。また、複数の細溝21,31が形成された第1部分23,33と、第2部分24,34とをタイヤ周方向に交互に配置することで、騒音低減効果がより顕著になる。
【0078】
空気入りタイヤ1のトレッドパターンは、さらに、アグレッシブで斬新なデザインでありながら、高いブロック耐久性と優れたトラクション性能を実現する。空気入りタイヤ1は、例えば、排水性も良好でウェットグリップ性能にも優れる。
【0079】
なお、上述の実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、
図11に示すように、騒音低減用の溝底構造は、タイヤ軸方向に延びる複数の細溝21x,31xのみにより形成されていてもよい。主溝20xの第1部分23x(第1領域25x)には、タイヤ軸方向に延びる細溝21xとリブ22xが交互に配置され、タイヤ周方向に沿って細溝21xが等間隔で配置されている。主溝30xの第1部分33xにおいても同様に、その全長にわたって、タイヤ軸方向に延びる細溝31xとリブ32xがタイヤ周方向に交互に形成されている。
【0080】
図12に示すように、騒音低減用の溝底構造は、タイヤ周方向に延びる複数の細溝21x,31xのみにより形成されていてもよい。主溝20yの第1部分23y(第1領域25y)には、タイヤ周方向に延びる細溝21yとリブ22yがタイヤ軸方向に交互に配置されている。主溝30yの第1部分33yにおいても同様に、その全長にわたって、タイヤ周方向に延びる細溝31yとリブ32yがタイヤ軸方向に交互に形成されている。
【0081】
また、本発明に係るトレッドには、上述した細溝の形成パターンを2種類以上含む主溝が形成されていてもよい。
図13に示す主溝20zには、
図11に示す第1部分23x(第1領域25x)と、
図12に示す第1部分23y(第1領域25y)とが、第2部分24を介してタイヤ周方向に交互に形成されている。また、主溝30zについても同様に、第1部分33xと第1部分33yが第2部分34を介してタイヤ周方向に交互に形成されている。
図13に示す例では、第1領域25xと第1部分33yがタイヤ軸方向に並び、第1領域25yと第1部分33xがタイヤ軸方向に並んでいるが、細溝の形成パターンの配置の組み合わせはこれに限定されない。
【0082】
図14に例示する主溝の第1部分33zでは、複数の細溝31zが、主溝の側壁から、少なくとも溝幅の10%に相当する間隔をあけて形成されていている。
図14に示す例では、細溝31zのタイヤ軸方向両側において、細溝31zと主溝の側壁との間に、主溝の幅Aの10%に相当する長さの隙間が設けられている。この場合、ブロックの耐久性がさらに改善される。なお、リブ32zは、タイヤ周方向につながった状態となっている。
【符号の説明】
【0083】
1 空気入りタイヤ、10 トレッド、11 サイドウォール、12 ビード、13 サイドリブ、14 カーカス、15 ベルト、16 インナーライナー、17 ビードコア、18 ビードフィラー、20,30 主溝、21,31 細溝、22,32 リブ、22a 第1リブ、22b 第2リブ、23,33 第1部分、24,34 第2部分、25a 第1領域、25b 第2領域、26,41,42,43,44,61 斜面、27 側溝、40 センターブロック、50 第1クオーターブロック、51,71 第1ゾーン、52,72 第2ゾーン、55 窪み、60 第1ショルダーブロック、70 第2クオーターブロック、75 副溝、80 第2ショルダーブロック、CL 赤道、E1,E2 接地端