(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095692
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置及び該装置を用いた交通供用下におけるトンネル覆工再生工法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211718
(22)【出願日】2021-12-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】308029600
【氏名又は名称】株式会社デーロス・ジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】森井 直治
(72)【発明者】
【氏名】森山 守
(72)【発明者】
【氏名】林 承燦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翔平
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155KA02
2D155KA08
2D155KC05
2D155KC06
(57)【要約】
【課題】 幅狭空間内において、適切に短繊維をコンクリート内に分散投入しつつ、これらを確実に混練して繊維補強コンクリートを製造できる装置の提供。
【解決手段】 本発明に係る幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置は、幅狭空間内で繊維補強コンクリートの製造が可能な装置であって、細幅で奥行の長い全体形状を呈し、上段に、補強用の短繊維を分散しつつ投入するための繊維投入手段を奥行方向の奥側から手前側に向けて設ける一方、下段に、上記繊維投入手段から投入された短繊維と一緒にコンクリートを混練しつつ移送する混練手段を奥行方向の手前側から奥側に向けて設けたことにより、全体形状の幅を広くすることなく奥行と高さを利用して、上記繊維投入手段と上記混練手段を効率良く接続することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅狭空間内で繊維補強コンクリートの製造が可能な装置であって、細幅で奥行の長い全体形状を呈し、上段に、補強用の短繊維を分散しつつ投入するための繊維投入手段を奥行方向の奥側から手前側に向けて設ける一方、下段に、上記繊維投入手段から投入された短繊維と一緒にコンクリートを混練しつつ移送する混練手段を奥行方向の手前側から奥側に向けて設けたことを特徴とする幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置。
【請求項2】
上記繊維投入手段は奥行方向の奥側から手前側に向けて下り傾斜するように且つ回転可能に配された多角筒体を備え、該多角筒体は前端面を閉塞し後端面を開口して繊維供給口を設けると共に側面に多数の短冊状孔を穿設し、上記繊維供給口から供給した短繊維を上記多角筒体の傾斜と回転により分散しつつ上記短冊状孔から落下させて、上記混練手段に短繊維を投入することを特徴とする請求項1記載の幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置。
【請求項3】
上記混練手段は、奥行方向の手前側から奥側に向けて延びる流路と、該流路内に同流路の長手方向に沿って配される回転軸に螺旋形の羽根を設けたスクリューとを備え、上記繊維投入手段から投入された短繊維と外部から供給されるコンクリートとを混練して繊維補強コンクリートを製造しつつ該繊維補強コンクリートを奥行方向の手前側から奥側に向けて移送することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置。
【請求項4】
上記混練手段の流路は、奥行方向の奥側の端部を上下動可能であることを特徴とする請求項3記載の幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置。
【請求項5】
上記混練手段の脇に混和剤投入手段を設け、該混和剤投入手段は混和剤を入れるタンクと、該タンクから上記混練手段に混和剤を運ぶホース及びポンプを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置。
【請求項6】
上記請求項1乃至請求項5の何れかに記載の幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置を用いたトンネル覆工再生工法であって、既設トンネル内において、通行車両の安全を確保するために設けられた防護設備と覆工再生を施す施工面との間の幅狭空間に、上記繊維補強コンクリート製造装置を配備し、該繊維補強コンクリート製造装置で製造した繊維補強コンクリートで現場打ち再生覆工を造ることを特徴とする交通供用下におけるトンネル覆工再生工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅狭空間内で適切に繊維補強コンクリートを製造するための装置及び該装置を用いて施工する交通供用下のトンネル覆工再生工法に関する。なお、本願において、「コンクリート」とは、コンクリートと同様のセメント系材料であるモルタルを含むものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、土木構造物の補修や再生工事に繊維補強コンクリート(コンクリート内にビニロン繊維等の補強用の短繊維を混入し、コンクリートの引張強度等の補強を行ったコンクリート)が広く用いられている。
【0003】
しかし、繊維補強コンクリートは、製造現場から打設現場まで長距離圧送する場合、混入されている短繊維に起因して、輸送管内の閉塞や圧送負荷の急上昇等の圧送トラブルを生じやすい問題点を有している。
【0004】
だからといって、打設現場やその近くで繊維補強コンクリートを製造しようとすると、打設現場やその付近が狭い場合には適切に繊維補強コンクリートを製造することができない。特に下記非特許文献1に示されている、交通供用下におけるトンネル覆工再生の現場においては、通行車両の安全を確保する防護設備とトンネル内面の覆工再生施工面との間の空間(
図8の空間S)は一般的に幅が約2mの幅狭空間であり、補強用短繊維とコンクリートを有効に混練できる大型のミキサーやアジエーターを搬入することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】中日本高速道路株式会社金沢支社 「併用下における矢板工法トンネル覆工再生工に関する手引き(案)」 2020年1月(https://www.c-nexco.co.jp/pdf/contract_point_technical-standard_pdf/guidance01.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記説明したように、上記非特許文献1に示す、交通供用下のトンネル覆工再生工における打設現場は、幅狭空間であるため繊維補強コンクリート製造用のミキサーやアジエーターを搬入することができず、別の広い場所で繊維補強コンクリートを製造し、圧送トラブルに気を付けながら打設現場まで圧送しなければならないのが現状である。ただし、繊維補強コンクリートの製造現場から打設現場までの距離が1km前後となることも珍しくなく、このように圧送距離が長くなるほど圧送トラブルが生じる可能性は高くなる。
【0007】
よって、繊維補強コンクリートの圧送距離を可及的に短くするために、幅狭空間内の打設現場又はその近くに搬入可能なコンクリート製造装置が強く要望されている。
【0008】
加えて、補強用の短繊維として用いられる、ビニロン繊維等の合成樹脂製繊維は、
図9に示すように、一か所に集まると容易に互いに絡まりあい、いわゆるファイバーボールと称される塊状物となり易く、適正な繊維補強コンクリートの製造のためには、ばらばらとなっている短繊維をファイバーボールとならないように分散状態を保持しつつ、或いはファイバーボールとなった短繊維を解してばらばらにしつつ、一定のスピードで一定量の短繊維を連続的にコンクリート内へ投入する繊細な作業を強いられる。そして、この繊細な作業を人力でしかも連続的に行うことは困難である。
【0009】
したがって、要望されているコンクリート製造装置は、単に幅狭空間に搬入できてコンクリートを混練することができるだけではなく、繊細な繊維投入作業をも適切に且つ連続的に行うことができることが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、幅狭空間内において、適切に短繊維をコンクリート内に分散投入しつつ、これらを確実に混練して繊維補強コンクリートを製造できる装置及び該装置を用いたトンネル覆工再生工法を提供する。
【0011】
要述すると、本発明に係る幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置は、幅狭空間内で繊維補強コンクリートの製造が可能な装置であって、細幅で奥行の長い全体形状を呈し、上段に、補強用の短繊維を分散しつつ投入するための繊維投入手段を奥行方向の奥側から手前側に向けて設ける一方、下段に、上記繊維投入手段から投入された短繊維と一緒にコンクリートを混練しつつ移送する混練手段を奥行方向の手前側から奥側に向けて設けたことにより、全体形状の幅を広くすることなく奥行と高さを利用して、上記繊維投入手段と上記混練手段を効率良く接続することができる。
【0012】
好ましくは、上記繊維投入手段は奥行方向の奥側から手前側に向けて下り傾斜するように且つ回転可能に配された多角筒体を備え、該多角筒体は前端面を閉塞し後端面を開口して繊維供給口を設けると共に側面に多数の短冊状孔を穿設し、上記繊維供給口から供給された短繊維を上記多角筒体の傾斜と回転により分散しつつ上記短冊状孔から落下させて、上記混練手段に短繊維を投入することにより、簡易構造且つ細幅ながらも確実に且つ連続的に短繊維を分散投入することができる。
【0013】
また、上記混練手段は、奥行方向の手前側から奥側に向けて延びる流路と、該流路内に同流路の長手方向に沿って配される回転軸に螺旋形の羽根を設けたスクリューとを備え、上記繊維投入手段から投入された短繊維と外部から供給されるコンクリートとを混練して繊維補強コンクリートを製造しつつ該繊維補強コンクリートを奥行方向の手前側から奥側に向けて移送することにより、簡易構造且つ細幅ながらも確実に短繊維を混入したコンクリートを混練し同時に移送することができる。
【0014】
好ましくは、上記混練手段の流路は、奥行方向の奥側の端部を上下動可能とし、たとえば、当該端部を上動させて、圧送ポンプのホッパー等へ混練済みのコンクリートを投入し易くすることができる。
【0015】
さらに、上記混練手段の脇に混和剤投入手段を設け、該混和剤投入手段は混和剤を入れるタンクと、該タンクから上記混練手段に混和剤を運ぶホース及びポンプを備えたことにより、所望コンクリート性能に応じて混和剤を投入することができる。
【0016】
本発明に係る交通供用下におけるトンネル覆工再生工法(以下、単に「トンネル覆工再生工法」という。)は、上述した本発明に係る幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置を用いたトンネル覆工再生工法であって、既設トンネル内において、通行車両の安全を確保するために設けられた防護設備と覆工再生を施す施工面との間の幅狭空間に、上記繊維補強コンクリート製造装置を配備し、該繊維補強コンクリート製造装置で製造した繊維補強コンクリートで現場打ち再生覆工を造ることにより、繊維補強コンクリートの圧送距離を可及的に短くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置によれば、幅狭空間に搬入することができ、当該幅狭空間内で適切に補強用短繊維をコンクリート内に分散投入することができると共に、これらを確実に混練して繊維補強コンクリートを製造することができる。
【0018】
本発明に係るトンネル覆工再生工法によれば、繊維補強コンクリートの圧送距離を可及的に短くすることができ、圧送トラブルを抑止することができると共に、高品質の繊維補強コンクリートを用いた施工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】繊維分散投入装置(繊維投入手段)の拡大平面図である。
【
図2】繊維分散投入装置(繊維投入手段)の左側面図である。
【
図3】繊維分散投入装置(繊維投入手段)の正面図である。
【
図5】多角筒体における隣接する一対の側面の拡大図である。
【
図6】繊維補強コンクリート製造装置の左側面図である。
【
図7】繊維補強コンクリート製造装置の平面図である。
【
図9】コンクリート補強用短繊維を箸で摘まんだ状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置及び該装置を用いたトンネル覆工再生工法の最適な実施例について、
図1乃至
図9に基づき説明する。
【0021】
<幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置21>
本発明に係る幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置21(以下、単に「繊維補強コンクリート製造装置」という。)は、
図8に基づき後述するトンネル覆工再生工における施工空間Sのような幅狭空間内で繊維補強コンクリートの製造が可能な装置である。
【0022】
繊維補強コンクリート製造装置21は、
図6,
図7に示すように、幅狭空間内に搬入できるように、全体形状として細幅で奥行の長い形状を呈している。そして奥行と高さを活かすために上下二段構成となっており、上段に、補強用の短繊維を分散しつつ投入するための繊維投入手段たる繊維分散投入装置1を奥行方向の奥側から手前側に向けて設ける一方、下段に、繊維分散投入装置1から投入された短繊維と一緒にコンクリートを混練しつつ移送する混練手段たる混練装置11を奥行方向の手前側から奥側に向けて設ける構成を有している。これにより、限られた幅において、繊維投入手段たる繊維分散投入装置1と混練手段たるミキサー装置11を効率良く接続することができる。なお、
図6,
図7中のWは移動用車輪である。
【0023】
≪繊維投入手段(繊維分散投入装置1)≫
繊維補強コンクリート製造装置21の上段に配備される繊維投入手段たる繊維分散投入装置1は、コンクリート内に補強用の短繊維を分散しながら投入するための装置である。
【0024】
図1乃至
図3に示すように、繊維分散投入装置1は奥行方向の奥側(繊維補強コンクリート製造装置21の奥端部(前端部)21a側)から手前側(繊維補強コンクリート製造装置21の手前端部(後端部)21b側)に向けて下り傾斜するように且つ回転可能に配された多角筒体2を備え、該多角筒体2内に供給した短繊維が該多角筒体2の回転及び傾斜により塊状とならず分散され、後述する短冊状孔4から適量ずつ落下される。
【0025】
よって、後述するホッパー13を介してミキサー装置11と接続すれば、煩雑な作業を要せずに連続的に短繊維を分散投入することができ、繊維補強コンクリートの製造作業の省力化を図ることができるのは勿論のこと、高品質の繊維強化コンクリートを製造することができる。
【0026】
ここで、対象とする短繊維について説明する。混練コンクリート内に投入するための短繊維は、一般的にコンクリート補強に用いられるものであり、たとえば、ビニロン、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂製の繊維であり、全長が30~50mm程度の線状繊維又は平麺状繊維を用いる。
【0027】
多角筒体2は、文字通り、横断面が多角形状の筒体であり、当該多角形状に応じて複数の側面2cを備え、前端部2aを閉塞すると共に、後端部2bは開口して繊維供給部3を備えている。多角筒体2は、
図1乃至
図3に示すように、六角筒体とする他、断面形状が多角形であれば特に限定はないが、後述するように、複数対の側面2cによって効果的な短繊維の分散を図るため、断面形状が偶数角形であることが望ましい。
【0028】
また、
図4に示すように、多角筒体2の側面2cには、縦横に並列した多数の短冊状孔4が穿設されており、該短冊状孔4から多角筒体2の内部で分散された短繊維が塊状となることなくぱらぱらと排出される。短冊状孔4同士の間隔は特に限定はないが、対象とする短繊維の直径又は厚みと幅により適宜調整することができる。
【0029】
また、
図1乃至
図3に示すように、短冊状孔4は多角筒体2の側面2cの全ての面に設ける他、側面2cの一部の面、たとえば6面中の3面にのみ短冊状孔4を設けることができる。短繊維の多角筒体2への供給量や多角筒体2からコンクリートへの投入量によって適宜調整できる。
【0030】
好ましくは、短冊状孔4を多角筒体2の側面2cの全ての面に設けた上で、隣接する一対の側面2cに互いに異なる大きさの短冊状孔4を穿設する構成とすることにより、短繊維の塊状化を有効に防止すると共に、様々な姿勢で短繊維を落下させることができる。
【0031】
たとえば、
図5に示すように、多角筒体2の隣接する一対の側面2cの一方に穿設する短冊状孔4を、短繊維の全長よりも長い第一短冊状孔4Aとすると共に、他方に穿設する短冊状孔4を、短繊維の全長よりも短い第二短冊状孔4Bとする。ただし、第一短冊状孔4Aの短手方向の長さは短繊維の全長よりも短い構成とする。すなわち、第一短冊状孔4Aの長手方向の長さL1は短繊維の全長より長く設定し、第二短冊状孔4Bの長手方向の長さは短繊維の全長よりも短く設定する。好ましくは、第一短冊状孔4Aの短手方向の長さL2は長手方向の長さL1の半分以下の長さに設定する。また、第二短冊状孔4Bの短手方向の長さL4も長手方向の長さL3の半分以下の長さに設定する。
【0032】
このようにすることにより、第一短冊状孔4Aからは短繊維が落下しやすいだけでなく、できるだけ短繊維の長手方向に沿った面(平面・底面若しくは側面又は周面)側から落下させることができ、第二短冊状孔4Bからは短繊維が落下し難いだけでなく、落下するときにはできるだけ短繊維の短手方向に沿った面(小口面)側から落下させることができ、落下量だけでなく、落下姿勢をも考慮した調整が可能となる。よって、よりバリエーションをもって短繊維を落下させることができる。なお、本実施例においては、短冊状孔4の大きさの種類を二種類として説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、たとえば大中小の三種類の大きさの短冊状孔4を断面六角形の多角筒体2の六つの側面2cの二面ずつに設けても良い。
【0033】
また、短冊状孔4を穿設した側面2cには、
図5に示すように、開放する短冊状孔4の数を調整するための目隠しパネル7を設けることにより、短繊維の落下量を効果的に調整することができる。
【0034】
また、上記説明した短冊状孔4は多角形筒体2の前半部の側面2に設けることにより、多角筒体2の傾斜による勾配によって前半部に移動してきた短繊維を効率良く分散しつつ落下させることができる。なお、本発明においては、多角筒体2の後半部の側面2cにも短冊状孔4を設けることができるが、図示するように、後半部には窓5を設けて、多角筒体2内の短繊維の様子を視認できるようにするのが望ましい。
【0035】
多角筒体2は既述のように傾斜した状態で回転可能に設けられている。回転の駆動源として、既知のモータM等の駆動源を用いると共に、
図1乃至
図3に示すように、該モータMにより回転用車輪wを回転させ、該回転させた回転用車輪wと多角筒体2側のレールrを係合させて安定して多角筒体2を回転できるようにする。また、周波数等によりモータMを制御し、回転用車輪wの回転速度、ひいては多角筒体2の回転速度(時間当たりの回転数)を制御することができる。なお、
図1乃至
図3中の1aはモータMを保護する筐体である。また、本発明においては、繊維分散投入装置1をコンクリート打設現場で使用する際などに多角筒体2自体を筐体で覆って保護することを排除しない。
【0036】
また、多角筒体2の繊維供給部3に接続するベルトコンベア6を備えることにより、当該多角筒体2自体への供給を定量化することができ、より高効率の連続分散投入を実現する。なお、ベルトコンベア6のベルト6aには仕切り6bを設け、短繊維供給のタイミングや量を計ることが望ましい。また、図中の6cはホッパーであり、多角筒体2へ供給する短繊維が周囲に落下しないように、ベルト6aへと導くためのものである。
【0037】
多角筒体2の傾斜角度θは、支持部1bの高さを調整することにより適宜変更することができる。好ましくは5度~40度とし、より好ましくは12度~18度とする。短冊状孔4の大きさや短冊状孔4同士の間隔等によるが約15度が最も好ましい。これにより、多角筒体2の回転と相まって、適切に短繊維を分散させることができると共に、短繊維を該多角筒体2の前半部に連続的に導くことができる。
【0038】
また、
図1乃至
図3に示すように、多角筒体2の下位に該多角筒体2の下方を覆うようにガイドパネル8を設け、該ガイドパネル8によって落下してきた短繊維を適切にキャッチすると共に収集してホッパー13へ投入することができる。
【0039】
上記のとおり、繊維分散投入装置1において、多角筒体2は繊維供給口3から供給された短繊維を当該多角筒体2の傾斜と回転により分散しつつ短冊状孔4から落下させて、未混練手段に短繊維を確実に且つ連続的に分散投入することができる。
【0040】
≪混練手段(ミキサー装置11)≫
混練手段としてのミキサー装置11は、
図6,
図7に示すように、スクリューコンベア12を有し、奥行方向の手前側(繊維補強コンクリート製造装置21の手前端部(後端部)21b側)から奥側(繊維補強コンクリート製造装置21の奥端部(前端部)21a側)に向けて延びる流路12bと、該流路内に同流路の長手方向に沿って配される回転軸に螺旋形の羽根を設けたスクリュー12aとを備え、上述した繊維分散投入装置1(繊維投入手段)から投入された短繊維と外部から供給されるコンクリートとを混練して繊維補強コンクリートを製造しつつ該繊維補強コンクリートを奥行方向の手前側から奥側に向けて移送することにより、簡易構造且つ細幅ながらも確実に短繊維を混入したコンクリートを混練し同時に移送することができる。
【0041】
流路12bは、管状でも断面半円形の溝状でも良く、コンクリートと短繊維を適切に混練することができれば、特に限定はない。また、スクリュー12aの形状も、コンクリートと短繊維を適切に混練することができ且つこれらを移送することができれば、特に限定はない。
【0042】
また、流路12bは、好ましくは、回動可能に設けられた回動支持部11aにより奥行方向の奥側の端部を上下動可能とし、たとえば、当該端部を上動させて、圧送ポンプのホッパー等へ混練済みのコンクリートを投入し易くすることができる。なお、
図6中の11bは11aと同様にスクリューコンベア12の流路12bを支持する支持部である。
【0043】
≪混和剤投入手段≫
本発明に係る繊維補強コンクリート製造装置21にあっては、上述した繊維投入手段と混練手段の他に、さらに、混和剤投入手段を設けることができる。混和剤投入手段は、
図6,
図7に示すように、下段において、混練手段たるミキサー装置11の脇に設ける。混和剤投入手段は混和剤を入れるタンクCと、該タンクCからミキサー装置11に混和剤を運ぶホース(図示せず)及びポンプ(図示せず)を備えたことにより、所望のコンクリート性能に応じて混和剤を投入することができる。なお、ポンプとしては既知の液体用ポンプを用いることができ、混和剤の投入量を調整することができる。また、タンクCは複数設けることができ、必要な混和剤の種類や性質によって準備するタンクCの数を変更することができる。
【0044】
上記のとおり、本発明に係る繊維補強コンクリート製造装置1によれば、幅狭空間に搬入することができ、当該幅狭空間内で適切に補強用短繊維をコンクリート内に分散投入することができると共に、これらを確実に混練して繊維補強コンクリートを製造することができる。
【0045】
<トンネル覆工再生工法>
本発明に係るトンネル覆工再生工法は、上述した本発明に係る繊維補強コンクリート製造装置を用いたトンネル覆工再生工法であって、
図8に示すように、既設トンネルT内において、車道Rを通過する通行車両の安全を確保するために設けられた防護工と称される防護設備Pと覆工再生を施す施工面Taとの間の幅狭空間Sに、繊維補強コンクリート製造装置21を配備し、該繊維補強コンクリート製造装置21が有する繊維分散投入装置1(繊維投入手段)及びミキサー装置11(混練手段)で製造した繊維補強コンクリートで現場打ち再生覆工を造ることができる。
【0046】
よって、打設現場、つまりセントル(型枠)の近くで繊維補強コンクリートを製造することができ、繊維補強コンクリートの圧送距離を可及的に短くすることができるので、圧送トラブルを抑止できると共に、高品質の繊維補強コンクリートを用いた施工が可能となる。
【0047】
なお、本願において、下限値と上限値間を「~」で示した数値範囲は、該下限値と上限値間の全ての数値(整数値と小数値)を表したものである。
【符号の説明】
【0048】
1…繊維分散投入装置(繊維投入手段)、1a…筐体、1b…支持部、2…多角筒体、2a…前端部、2b…後端部、2c…側面、3…繊維供給部、4…短冊状孔、4A…第一短冊状孔、4B…第二短冊状孔、5…窓、6…ベルトコンベア、6a…ベルト、6b…仕切り、6c…ホッパー、7…目隠しパネル、8…ガイドパネル、θ…多角筒体の傾斜角度、L1…第一短冊状孔の長手方向の長さ、L2…第一短冊状孔の短手方向の長さ、L3…第二短冊状孔の長手方向の長さ、L4…第二短冊状孔の短手方向の長さ、M…モータ、w…回転用車輪、r…レール、11…ミキサー装置(混練手段)、11a…回動支持部、11b…支持部、12…スクリューコンベア、12a…スクリュー、12b…流路、13…ホッパー、21…繊維補強コンクリート製造装置、21a…奥端部(前端部)、21b…手前端部(後端部)、W…移動用車輪、C…タンク、T…既設トンネル、Ta…施工面、R…車道、S…施工空間、P…防護設備。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-25
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅狭空間内で繊維補強コンクリートの製造が可能な装置であって、細幅で奥行の長い全体形状を呈し、上段に、補強用の短繊維を分散しつつ投入するための繊維投入手段を奥行方向の奥側から手前側に向けて設ける一方、下段に、上記繊維投入手段から投入された短繊維と一緒にコンクリートを混練しつつ移送する混練手段を奥行方向の手前側から奥側に向けて設け、上記繊維投入手段は奥行方向の奥側から手前側に向けて下り傾斜するように且つ回転可能に配された多角筒体を備え、該多角筒体は前端面を閉塞し後端面を開口して繊維供給口を設けると共に側面に多数の短冊状孔を穿設し、上記繊維供給口から供給した短繊維を上記多角筒体の傾斜と回転により分散しつつ上記短冊状孔から落下させて、上記混練手段に短繊維を投入する構成を有し、上記混練手段は、奥行方向の手前側から奥側に向けて延びる流路と、該流路内に同流路の長手方向に沿って配される回転軸に螺旋形の羽根を設けたスクリューとを備え、上記繊維投入手段から投入された短繊維と外部から供給されるコンクリートとを混練して繊維補強コンクリートを製造しつつ該繊維補強コンクリートを奥行方向の手前側から奥側に向けて移送する構成を有することを特徴とする幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置。
【請求項2】
上記混練手段の流路は、奥行方向の奥側の端部を上下動可能であることを特徴とする請求項1記載の幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置。
【請求項3】
上記混練手段の脇に混和剤投入手段を設け、該混和剤投入手段は混和剤を入れるタンクと、該タンクから上記混練手段に混和剤を運ぶホース及びポンプを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置。
【請求項4】
上記請求項1乃至請求項3の何れかに記載の幅狭空間用繊維補強コンクリート製造装置を用いたトンネル覆工再生工法であって、既設トンネル内において、通行車両の安全を確保するために設けられた防護設備と覆工再生を施す施工面との間の幅狭空間に、上記繊維補強コンクリート製造装置を配備し、該繊維補強コンクリート製造装置で製造した繊維補強コンクリートで現場打ち再生覆工を造ることを特徴とする交通供用下におけるトンネル覆工再生工法。