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特開2023-95700光音響波測定装置、光音響波測定システム、及び、熱型光源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095700
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】光音響波測定装置、光音響波測定システム、及び、熱型光源
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
G01N29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211733
(22)【出願日】2021-12-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「IoT社会実現のための革新的センシング技術開発/革新的センシング技術開発/血中成分の非侵襲連続超高感度計測デバイス及び行動変容促進システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下山 勲
(72)【発明者】
【氏名】野田 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】塚越 拓哉
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA04
2G047AA12
2G047AC13
2G047BC13
2G047CA04
2G047EA15
(57)【要約】
【課題】光音響波測定装置の小型化を図る。
【解決手段】光音響波測定装置(100)は、変調パターンに応じた発熱に伴って、変調された赤外光を測定対象に対して照射する熱型光源(20)と、赤外光が照射された測定対象から放出される光音響波を気密室(11,12,13,14)にて受信し、気密室内の圧力の変化を圧力センサ(11)により測定する測定ユニット(10)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調パターンに応じた発熱に伴って、変調された赤外光を測定対象に対して照射する熱型光源と、
前記赤外光が照射された前記測定対象から放出される光音響波を気密室にて受信し、前記気密室内の圧力の変化を圧力センサにより測定する測定ユニットと、を備える、光音響波測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光音響波測定装置であって、
前記熱型光源は、電流が流れることにより発熱する電気抵抗である、光音響波測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光音響波測定装置であって、
前記電気抵抗は、導電体をパターニングして構成される、光音響波測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光音響波測定装置であって、
前記熱型光源は、所望の放射スペクトルに応じた温度に制御される、光音響波測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光音響波測定装置であって、
前記熱型光源は、温度センサを備え、前記温度センサによる取得温度を用いたフィードバック制御により、前記所望の放射スペクトルに応じた温度に制御される、光音響波測定装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光音響波測定装置であって、
前記熱型光源と前記測定対象との間に、所望の波長を透過するフィルタを備える、光音響波測定装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の光音響波測定装置であって、
前記熱型光源と前記測定対象との間に、前記測定対象に前記赤外光が集光される集光機構を備える、光音響波測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光音響波測定装置であって、
前記熱型光源は、複数設けられ、
前記集光機構は、前記複数の熱型光源の前記変調パターンの位相量を制御し、前記複数の熱型光源から照射される前記赤外光に指向性を持たせる、フェイズドアレイ構造である、光音響波測定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の光音響波測定装置であって、
前記熱型光源は、前記気密室内に設けられる、光音響波測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光音響波測定装置であって、
前記気密室は、前記熱型光源から前記赤外光が直接照射される部分に窓部を有し、
前記窓部は、前記赤外光の透過性が高い材料により構成される、光音響波測定装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光音響波測定装置であって、
前記圧力センサに対して前記気密室とは反対側に、外気とは隔てられた閉塞空間を備える、光音響波測定装置。
【請求項12】
赤外光を測定対象に対して照射する熱型光源と、
前記赤外光が照射された前記測定対象から放出される光音響波を気密室にて受信し、前記気密室内の圧力の変化を圧力センサにより測定する測定ユニットと、
前記熱型光源、及び、前記測定ユニットと接続されるコントローラと、を備える光音響波測定システムであって、
前記コントローラは、
変調パターンに応じて前記熱型光源を制御することで、変調された前記赤外光を前記測定対象に対して照射させ、
前記測定ユニットによって取得される前記気密室内の圧力の変化に応じて、前記測定対象の濃度を求める、光音響波測定システム。
【請求項13】
請求項12に記載の光音響波測定システムであって、
さらに、前記測定対象に応じた所望の波長を透過し、前記熱型光源から前記測定対象への経路に設けられるフィルタを備え、
前記コントローラは、
前記熱型光源の温度を変更することにより、前記所望の波長の赤外光の前記測定対象に対する強度を変化させる、光音響波測定システム。
【請求項14】
変調パターンに応じた発熱に伴って、変調された赤外光を測定対象に対して照射する熱型光源。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響波測定装置、光音響波測定システム、及び、熱型光源に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象の内部の分子濃度を測定する装置として、光音響波測定装置が知られている。測定対象に変調光を照射すると、内部の分子が光を吸収して瞬間的に熱膨張する際に、変調光の変調パターンに応じた光音響波(弾性波)が発生する。光音響波測定装置は、この光音響波を検出し、検出した光音響波の大きさに応じて、変調光を吸収した分子の濃度を求めることができる。このような光音響波測定装置の一例として、圧力センサを用いて光音響波に応じて変化する気密室の圧力変化を測定し、測定対象の分子濃度を測定するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-7824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術によれば、変調光の光源としてレーザ光源が用いられている。レーザ光源を用いて変調光を生成する場合には、レーザ光源に加えて、さらに光変調を行うチョッパ装置が必要となる。そのため、比較的大型なレーザ光源に加えて、チョッパ装置が必要となり、光音響波測定装置の全体が大型化してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、熱型光源を用いることにより、光音響波測定装置の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の一態様の光音響波測定装置は、変調パターンに応じた発熱に伴って、変調された赤外光を測定対象に対して照射する熱型光源と、赤外光が照射された測定対象から放出される光音響波を気密室にて受信し、気密室内の圧力の変化を圧力センサにより測定する測定ユニットと、を備える。
【0007】
本願発明のさらなる態様の光音響波測定システムは、赤外光を測定対象に対して照射する熱型光源と、赤外光が照射された測定対象から放出される光音響波を気密室にて受信し、気密室内の圧力の変化を圧力センサにより測定する測定ユニットと、熱型光源、及び、測定ユニットと接続されるコントローラと、を備える。コントローラは、変調パターンに応じて熱型光源を制御することで、変調された赤外光を測定対象に対して照射させ、測定ユニットによって取得される気密室内の圧力の変化に応じて、測定対象の濃度を求める。
【0008】
本願発明のさらなる態様の熱型光源は、変調パターンに応じた発熱に伴って、変調された赤外光を測定対象に対して照射する。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の一態様の光音響波測定装置によれば、光音響波測定装置の測定に用いられる光音響波を発生させるために必要な光源として、熱型光源が用いられる。熱型光源は、レーザ光源と比較すると小型化を図ることができる。レーザ光源はレーザ光の照射中には高温となっているため、レーザ光の照射のオン/オフを精度よく切り替えることができず、変調のためにチョッパ部をさらに備える必要がある。これに対して、熱型光源は構成が単純で小型化が容易であり、発熱していない間は冷却しやすいので、電流のオン/オフのみで変調制御が可能となり、チョッパ部が不要になる。このような熱型光源を赤外光の光源として用いることで、光音響波測定装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る光音響波測定装置の概略構成図である。
図2図2は、センサユニットの断面図である。
図3図3は、センサユニットの分解斜視図である。
図4図4は、熱型光源の概略構成図である。
図5図5は、一般的な熱源における放射光の性質を示したグラフである。
図6図6は、熱型光源からの照射光の輝度を示すグラフである。
図7図7は、熱型光源の応答性を示すグラフである。
図8図8は、光音響波測定装置による測定結果を示すグラフである。
図9図9は、第2実施形態に係る光音響波測定装置の概略構成図である。
図10図10は、第3実施形態における、熱型光源の構成のバリエーションの一例を示す図である。
図11図11は、熱型光源の構成のバリエーションの他の一例を示す図である。
図12図12は、光音響波測定装置の構成のバリエーションの他の一例を示す図である。
図13図13は、第4実施形態に係る光音響波測定装置の概略構成図である。
図14図14は、第5実施形態に係る光音響波測定装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光音響波測定装置の概略構成図である。図1において、光音響波測定装置(以下、単に測定装置という)100は、光音響波測定を行う測定ユニット10、熱型光源20、回路部30を備える。測定装置100により、測定対象200内に存在する所定成分の濃度を測定することができる。
【0013】
測定対象200内の所定成分の濃度測定の概要は以下のとおりである。熱型光源20から放射される光が測定対象200に対して照射されると、測定対象200内の分子において光音響効果により光音響波(弾性波)が生じる。測定ユニット10は、測定対象200から生じる光音響波を検出する。回路部30は、測定ユニット10により測定された光音響波の強度の変化に応じて、測定対象200内の測定対象の液体の濃度を求める。
【0014】
本実施形態の例では、測定対象200は生体であり、測定対象200に対して熱型光源20から遠赤外光を照射すると、測定対象200内の血管201を流れる血中のグルコースから光音響波が放出される。測定ユニット10によって光音響波が検出され、その検出結果から、血管201内における血中グルコース濃度が求められる。以下、各構成の詳細について説明する。
【0015】
回路部30は、駆動部31、検出回路32、濃度算出部33、及びこれらを統括的に制御する制御部34を備える。
【0016】
熱型光源20は、駆動部31の制御に応じて遠赤外光(波長が10μm程度)の変調光を測定対象200に向かって出力する。熱型光源20は、後述のような電気抵抗であって、通電に応じて発熱とともに赤外光を照射する。また、通電の制御によって、遠赤外光の変調も行うことができる。さらに、熱型光源20の温度を制御することで、温度に応じた光(例えば、近赤外光や中赤外光)を照射させることができる。なお、1回の測定においてパルス光を複数回、例えば5回程度出力させる。強度変調した光としては、パルス光のように完全に光の出力を遮断したものに限らず、例えば所定レベル(>0)まで強度を低くするように光を変調してもよい。
【0017】
熱型光源20からの変調光が測定対象200に照射され、遠赤外の変調光が血管201まで達すると、血液中のグルコースが遠赤外光を吸収し、瞬間的に膨張して光音響波(弾性波)が発生する。この光音響波は、測定ユニット10が備える気密室の圧力変化を発生させ、この圧力変化はセンサユニット11によって測定される。ここで、グルコース濃度が高いほど大きな光音響波が発生するため、濃度算出部33は、光音響波の強度に応じて血中グルコース濃度を求めることができる。なお、濃度算出部33は、熱型光源20の変調周期と、測定ユニット10により測定される圧力の変化とを同期させて対応付けることで、ノイズを除去(低減)させ、より高い精度で濃度を求めることができる。
【0018】
測定ユニット10は、センサユニット11、筐体12、シール部材13、及び、接触部14を備える。
【0019】
筐体12は、上部が開放され、内部に空間を有する有底部材である。測定ユニット10は、有底部材である筐体12の側面の端部が、接触部14を介して測定対象200に対して押し付けられた状態で固定される。さらに、筐体12の内部空間は、センサユニット11に設けられる開口とは連通し、筐体12と接触部14との間の空間と一体となって、気密室を構成する。シール部材13が、筐体12と接触部14との間に設けられることにより、両者の密着度が上がり、筐体12内の空間(気密室)の気密性が向上する。シール部材13の一例は、オーリングであり、筐体12の側面の端部に設けられた溝部に配置される。シール部材は、シーリング部材とも称される。
【0020】
このように構成される気密室内の気圧の変化をセンサユニット11により測定することで、光音響波の強度を求めることができる。センサユニット11の構造については、後に、図2、3を用いて説明する。なお、図1においては、筐体12は上部が開放された有底部材であったが、これに限らない。筐体12は、内部に気密室となりえる空間が存在するものであれば、任意の構造であってもよい。
【0021】
接触部14は、遠赤外光の透過性が高く、物理的に振動しやすい物質により構成される。接触部14は、例えば、厚みが70μmのポリエチレンにより構成される。シリコンやゲルマニウムの薄膜は、物理的に振動しやすい性質を備えるため、接触部14は、厚みが100μm以下のシリコンやゲルマニウムの薄膜により構成されてもよい。接触部14は、測定対象の表面の変位に追従して変位するような材料で構成されるのが好ましい。光音響波の影響による変位は、測定対象内部においても生じ得るので、接触部14を弾性物質で形成することで、気密室における光音響波の影響を大きくでき、所定の成分の測定精度の向上を図ることができる。
【0022】
図2は、センサユニット11の拡大図である。図3のセンサユニット11の分解斜視図に示されるように、センサユニット11においては、内部が段状の開口を有する固定部材111に対して、センサ基板112が嵌め込まれて固定される。
【0023】
再び図2を参照すれば、固定部材111は、気密室側に設けられ、比較的小さな開口面積を有する開口111Aと、測定ユニット10の外側に設けられ、比較的大きな開口面積を有する開口111Bとを備える。開口111A、111Bは連通し、両者の間に段部が構成される。センサ基板112は、開口111Bに嵌め込まれ、固定部材111の段部において係止により固定される。
【0024】
センサ基板112は、シリコン基板113、絶縁層114、シリコン層115、ピエゾ抵抗層116、及び、金属層117が積層されて構成されている。シリコン基板113、絶縁層114、及び、金属層117は、それぞれ、開口113A、114A、及び、117Aを備える。開口113A、114A、及び、117Aは、固定部材111の気密室側に設けられる開口111Aと同程度の開口面積を備える。
【0025】
シリコン層115及びピエゾ抵抗層116は、一体となって、一方の端部(図2の左側)がシリコン基板113及び絶縁層114と、金属層117とに挟まれて固定される。シリコン層115及びピエゾ抵抗層116の他方の端部(図2の右側)は、溝部51が設けられることにより、固定されずに自由端となる。さらに、図3に示されるように、シリコン層115及びピエゾ抵抗層116は、中央部分の受圧部118が矩形状に構成され、フレーム119内に配置される。受圧部118は、一辺(図2の左側、図3の左下側)においてのみフレーム119に固定され、他の3辺はフレーム119に固定されていない自由端である。そのため、受圧部118は、片持ち状に構成される。このような受圧部118の構成を持つセンシング部分は、一般に、カンチレバーと称される。
【0026】
再び図2を参照すれば、片持ち状に構成される受圧部118(シリコン層115及びピエゾ抵抗層116)は、厚みが例えば0.3μm程度の板状部材である。その結果、受圧部118は、気密室(開口111A、113A、114A)と外部との気圧差に応じて、開口に対して垂直方向に変位(振動)する。ピエゾ抵抗層116は、圧縮または伸張によって抵抗値が増減する性質を備える。これにより、測定対象200から照射される光音響波に起因する気密室の変化を、ピエゾ抵抗層116の抵抗値を測定することで検出できる。
【0027】
図3は、センサユニット11の分解斜視図である。この図に示されるように、センサユニット11においては、固定部材111の有する開口111Bにセンサ基板112が嵌め込まれて固定される。
【0028】
センサ基板112を積層方向から見れば、矩形状の受圧部118が、フレーム119により取り囲まれ、一辺(左下側の辺)においてのみフレーム119に固定された片持ち状に構成される。なお、受圧部118のフレーム119への固定は、上述のように、シリコン層115及びピエゾ抵抗層116が一体となって、シリコン基板113及び絶縁層114と、金属層117とに挟まれることによりなされる。
【0029】
さらに、受圧部118がフレーム119に固定される一辺(左下側の辺)に着目すれば、受圧部118は、4つの梁部41~44を介して、フレーム119に固定されている。
【0030】
梁部41、42は対をなし、梁部43、44は対をなす。なお、梁部41、44は両端に位置し、梁部42と梁部43とは、切り込み溝部52を介して隣接する。対をなす梁部41と梁部42との間、及び、梁部43と梁部44との間には、フレーム119から突出して形成される矩形状の突出部45、46が設けられている。突出部45、46は、シリコン層115及びピエゾ抵抗層116により構成され、フレーム119と一体形成されている。突出部45、46は、フレーム119と接触する辺以外の3辺においては、溝部51を介して受圧部118と離間する。
【0031】
このように、受圧部118は、梁部41~44が設けられている一辺(左下側の辺)において、梁部41~44を介してフレーム119と接続されている。同時に、受圧部118は、溝部51を介して、梁部41~44が設けられていない三辺(右下側、右上側、及び、左上側)においてフレーム119から離間するとともに、突出部45、46とも離間する。上述のように、梁部42、43の間には、切り込み溝部52が設けられる。溝部51、及び、切り込み溝部52は、例えば、0.02μm~10μm程度の幅に形成されている。
【0032】
さらに、金属層117においては、受圧部118が片持ち構造で固定される側(左下側)において、梁部41と44との間に絶縁溝部53が設けられ、反対側(右上側)において、中央部に絶縁溝部54が設けられる。絶縁溝部53、54は、金属層117内を電気的に絶縁するために設けられ、これにより、2つの電極47、48が形成される。
【0033】
ピエゾ抵抗層116の梁部41が電極47に接続され、梁部44が電極48と接続される。梁部42、43は、金属層117と電気的に絶縁されている。ピエゾ抵抗層116においては、一端の梁部41から受圧部118を経て他端の梁部44に至る経路で連結された略U字状に、導電経路が形成される。そのため、電極47、48の間の電流を測定することで、受圧部118の抵抗値を求めることができる。
【0034】
本構成においては、受圧部118は、梁部41~44の基端を中心に、その面の法線方向(図中の上下方向)に弾性的に変形自在である。この受圧部118の変形により梁部41~44が湾曲することで、ピエゾ抵抗層116の抵抗値が増減する。その結果、電極47、48の間の抵抗を測定することで、受信した光音響波に起因する気密室の気圧変化を測定できる。
【0035】
センサユニット11の作製方法は、以下のとおりである。ます、シリコン基板113、絶縁層114、シリコン層115が積層されたSOI(Silicon On Insulator)基板を用意する。シリコン基板113、絶縁層114、シリコン層115の厚みは、この順番で、例えば300μm、0.4μm、0.08μmである。このSOI基板のシリコン層115に対してドーピングを行い、シリコン層115の表層にピエゾ抵抗層116を形成する。ピエゾ抵抗層116の上に電極となる金属層117を形成した後、金属層117と、ピエゾ抵抗層116及びシリコン層115とを順次にエッチングすることにより、開口117A、並びに、溝部51及び切り込み溝部52を形成する。さらに、金属層117をエッチングして、絶縁溝部53、54を設けることで、電極47、48を形成する。最後に、反対面側からシリコン基板113と絶縁層114とをエッチングして、開口113A、114Aを形成する。このようにして、受圧部118を含むセンサ基板112が形成される。
【0036】
なお、測定ユニット10は、センサユニット11が備えるカンチレバーとは別に、参照抵抗となる同じ構成を備えるカンチレバー(不図示)を備えている。検出回路32は、気密室の外壁の一部をなすカンチレバーの抵抗値と、参照抵抗の抵抗値とを比較することで、気密室の気圧の変化を検出する。
【0037】
図4は、熱型光源20の概略構成図である。熱型光源20は、厚み1mm程度のガラスコンポジット材上に形成された銅箔を微細にパターニングして構成されている。この図においては、コンポジット材上の銅箔が設けられる面を、上方から見た図が示されている。例えば、銅箔の厚さは50μmであって、コンポジット材上においては、図上部の領域に設けられる電気抵抗21と、図下部の領域に設けられる2つの電極22、23とが設けられている。また、熱型光源20は、銅箔に限らず、タングステンにより構成されてもよい。熱型光源20は、金属等の導電体により構成することができる。
【0038】
この図の例においては、電気抵抗21は、0.2mm幅でパターニングされ、4.5mm毎に12回折り返されて構成される。電極22、23は、図上部の一端が電気抵抗21の両端と接続され、図下部の他端が電力源(駆動部31)と接続される。電気抵抗21は、比較的高い抵抗値を有しており、電極22、23に電力が印加されると、電気抵抗21に電流が流れ、発熱する。さらに、熱型光源20には、温度センサ(不図示)が設けられており、温度センサにより取得される電気抵抗21の温度が駆動部31へと入力される。駆動部31は、温度センサによる測定温度を用いたフィードバック制御を行うことで、電気抵抗21を所望の温度に保つことができる。
【0039】
図5は、一般的な熱源における放射光の波長及び輝度(強度)分布との関係を温度毎に示したグラフである。なお、この図においては、熱源からの光の放射率が100%である場合の放射スペクトラムが示されており、熱源の温度のそれぞれに対して、横軸に放射光の波長が示され、縦軸に輝度が示されている。この図における温度は、絶対温度(K)を用いて示されている。
【0040】
このグラフに示されるように、熱源の温度に応じて、放射スペクトラムが異なる。すなわち、熱源の温度に応じて、所定の帯域の波長の光が放射され、その波長帯域内において輝度がピークとなる波長が存在する。本実施形態においては、電気抵抗21を400Kとなるように制御して、遠赤外光を照射させた。熱源が400Kである場合には、波長が9.3μmの遠赤外光が、4・10-5kW/cm/μmのピーク強度で放射される。なお、このグラフにおいては温度が離散的に示されており、400Kと対応する輝度分布は示されていないが、400Kと対応する波長及び輝度は概ね理解できる。
【0041】
図6は、本実施形態の熱型光源20からの照射光の輝度を示すグラフである。このグラフにおいては、一定の時間、熱型光源20が400Kで発熱した場合における放射光について示されている。横軸が波長を示し、縦軸が輝度を示す。なお、左側のグラフにおいては波長及び輝度が対数にて示されている。右側のグラフは、左側のグラフの一部の拡大図であって、輝度及び波長が自然数にて示されている。このグラフに示されるように、上記条件で熱型光源20を制御した場合に、9.3μmのピーク波長の遠赤外光が照射されることが確認できた。
【0042】
図7は、本実施形態の熱型光源20の応答性を示すグラフである。このグラフにおいては、横方向に時間が示され、縦方向に所望の遠赤外光(波長:9.3μm)の強度が示されている。このグラフの例においては、電気抵抗21の初期抵抗値は1.2Ωであり、電気抵抗21に対して2.5Vの電圧が周期的に印加された。電圧の印加/停止は、約1秒周期で繰り返されたものとする。電圧が印加されている間は、3.3Aの電流が流れていることが確認されており、電流と電圧との関係から、制御中の電気抵抗21の抵抗値が0.76Ωであることが理解できる。
【0043】
このグラフに示されるように、電圧の周期的な印加に応じて、熱型光源20から放射される遠赤外光の光強度は増加と減少とが繰り返される。そして、電圧の印加/停止が経時的に繰り返されることにより、光強度は全体として大きくなる。なお、このグラフの例においては、変調パターンは、約1秒周期での繰り返しであったが、これに限らない。任意のパターンで電流を制御することで、任意の変調パターンを実現してもよい。
【0044】
このように、電気抵抗21を備える熱型光源20を遠赤外光の光源として利用することにより、約1秒間隔という比較的高い応答特性を備える遠赤外光の出力を、簡易な構成により実現することができた。これは、電気抵抗21が銅箔を微細にパターニングされて構成されており、このような構成により電気抵抗21の冷却効率が高く、電圧の印加が停止されている間に十分冷却されるので、熱型光源20の応答性の低下が抑制されていると考えられる。
【0045】
また、本実施形態においては、熱型光源20から遠赤外光が照射される例について説明したが、これに限らない。電気抵抗21の温度を別の温度に制御することにより、照射光の放射スペクトラムを変化させることができる。そのため、熱型光源20の温度を制御することで、熱型光源20から他の波長の光、例えば、近赤外光や中赤外光の強度を大きくすることが可能となる。
【0046】
図8は、測定装置100による測定結果を示すグラフである。このグラフによれば、実線でセンサユニット11の抵抗値変化率が示され、破線で熱型光源20からの照射光の強度が示されている。なお、抵抗値変化率は、気密室に設けられたセンサユニット11(カンチレバー)の抵抗値の、参照抵抗に対する変化率を示すものである。
【0047】
このグラフの例においては、測定対象200はグルコース溶液であって、電気抵抗21は、400Kとなるように制御された。電気抵抗21には、2.5Aの電流の印加/停止を繰り返すことにより、熱型光源20からの遠赤外光の照射強度は増減を繰り返し、所定の時間経過後に一定の強度範囲で振動するようになる。そして、遠赤外光の照射強度の変化に対応して、センサユニット11の抵抗値変化率の増減が検出されている。
【0048】
このような結果により、電気抵抗21からなる熱型光源20に用いて遠赤外光を照射させても、グルコース溶液から放出される光音響波によって測定ユニット10の気密室の圧力が変化し、その圧力の変化をカンチレバーにより測定できることが示された。その結果、レーザ光源を用いる場合と比較して、光源を小型化し、測定装置100全体の小型化を図ることができる。
【0049】
さらに、濃度算出部33によるグルコース溶液の濃度測定は、センサユニット11による圧力変化率の変化パターンと、熱型光源20の変調パターンとを同期させて行われる。チョッパ部を用いて変調させる場合には、チョッパ部における動作にオーバーヘッドが発生するため、オーバーヘッド時間を考慮して同期させる必要がある。これに対して、熱型光源20を用いる場合には、駆動部31による電気抵抗21の通電タイミングに応じて変調パターンが定まるため、遠赤外光の変調パターンと検出回路32による測定結果との同期が容易になる。
【0050】
なお、本実施形態においては、熱型光源20から遠赤外光を照射させる例について説明したが、これに限らない。熱型光源20の制御温度を変更することにより、近赤外光や中赤外光を測定対象200に照射してもよい。
【0051】
本実施形態においては、測定ユニット10が1つ設けられる例について説明したが、これに限らず、複数設けてもよい。例えば、複数の測定ユニット10の測定可能な圧力変化の振動数帯域が重複することで、光音響波の発生位置を特定することができる。複数の測定ユニット10の測定可能な圧力変化の振動数帯域が異なることで、測定対象に応じた振動を検出できることになるので、同時に複数の測定対象の濃度を測定できる。
【0052】
また、本実施形態においては、熱型光源20は、光音響波測定装置100に用いられたが、これに限らない。熱型光源20は、変調パターンに応じて制御されることで、変調された赤外光を任意の測定対象に対して照射することができる。
【0053】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、接触部14は単一の部材で構成されたが、これに限らない。本実施形態においては、接触部14の一部を異なる部材により構成する例について説明する。
【0054】
図9は、第2実施形態の測定装置100の概略構成図であって、図1に対応する。この図によれば、第1実施形態の測定装置100と比較すると、接触部14の一部が別部材で構成されることにより、窓部60が形成されている。接触部14において窓部60以外は、物理的に振動しやすい物質で構成され、窓部60は、遠赤外光の透過性が高い物質で構成される。例えば、接触部14の窓部60以外の部分は、ポリエチレンで構成され、窓部60は、シリコンやゲルマニウムの薄膜(例えば、厚みが100μm以下)により構成される。このようにすることで、測定対象200に対して照射される遠赤外光の強度を大きくできるので、測定対象200からより強い光音響波が発生することが期待される。その結果、気密室の圧力変化が大きくなり、測定装置100の測定精度を向上させることができる。
【0055】
他の態様として、窓部60は、例えば遠赤外光の照射による変質や、遠赤外光の吸収による変質がなく、遠赤外光の影響を受けにくい材料で構成されてもよい。窓部60は、このような性質を任意選択的に有してもよく、遠赤外光の高透過性、高耐熱性、高耐久性のうち少なくとも1つを備えるように構成されてもよい。窓部60は、例えば、熱に強いシリコンやゲルマニウムの薄膜により構成される。一例として、ゲルマニウムは1mm程度の厚みであって、変形しにくい。一般的に、材料の厚さが大きくなると遠赤外光を透過しにくいので、窓部60の材料は、遠赤外光を透過量が十分となるように材料及び厚さが設計により定められる。なお、遠赤外光を十分に透過するのであれば、厚みが大きい方が、気密室への外気圧の影響を抑制できるので、好ましい。他にも、窓部60は、ポリエチレンにより構成されてもよい。
【0056】
なお、熱型光源20は、気密室の外側に設けられてもよい。このような構成では、熱型光源20と測定対象200との間に、測定ユニット10が設けられる。そして、熱型光源20からの照射光の導光路においては、接触部14の一部に加えて、気密室において外側と区切る壁部(図下側)に、同様の遠赤外光の透過性の高い部材で構成された窓部が設けられる。このように構成することで、熱型光源20が、測定ユニット10の外側にあり、測定ユニット10を介して測定対象200に対して遠赤外光を照射するような構成であっても、測定対象200に対して照射される遠赤外光の強度が大きくなり、測定装置100の測定精度を向上させることができる。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態においては、熱型光源20の構成のバリエーションについて説明する。
【0058】
図10は、熱型光源20の配置の一例を示す図である。この図によれば、支持部25は凹状の放物面状に湾曲して構成され、その表面に複数の熱型光源20が設けられている。放物面状に表面が構成された支持部25の上に熱型光源20が配置されることで、複数の熱型光源20から照射される遠赤外光は、放物面の中心において集中して強度が大きくなる。例えば、放物面の中心が測定対象200(血管201)となるように、支持部25を構成して測定装置100内に配置することで、測定対象200に対して照射される遠赤外光の強度を大きくできるので、測定装置100の測定精度を向上させることができる。なお、支持部25は、放物面に限らず、熱型光源20からの照射光を測定対象200において集光可能に構成された集光面を備えればよい。集光面は、例えば、湾曲する鏡面により構成されるミラーであってもよい。さらに、放物面や湾曲するミラーのような形状/形態の集光面に限らず、任意の集光機構を備えてもよい。例えば、複数の熱型光源20が集光面上に配置され、これらの熱型光源20から照射された赤外光の合成波が、測定対象200に集光されるのであれば、集光機構は任意の形状/形態をとることができる。
【0059】
図11は、熱型光源20の配置の他の一例を示す図である。この図によれば、板状の支持部26の上に複数の熱型光源20が設けられており。熱型光源20のそれぞれは、個々の変調パターンに応じて変調される。これらの熱型光源20は、複数の熱型光源20から照射された遠赤外光が測定対象200(血管201)に集中するように、それぞれの位相に差をつけて変調制御される。このように構成しても、測定対象200内に照射される遠赤外光の強度を大きくできるので、測定装置100の測定精度を向上させることができる。
【0060】
他に、複数の熱型光源20により、指向性を備えるフェイズドアレイを構成してもよい。詳細には、平面上に配置される複数の熱型光源20に対して、位相器とアンテナ素子とを設け、遠赤外光の変調パターンの位相量を制御することで、照射される遠赤外光に指向性を持たせてもよい。
【0061】
図12には、測定装置100の熱型光源20に関する他の態様が示されている。この図によれば、熱型光源20と測定対象200との間の、熱型光源20からの遠赤外光の導光路に、フィルタ70が設けられている。フィルタ70は、所定の波長の遠赤外光のみを透過する性質を有している。このようなフィルタ70を備えることにより、所定の波長の遠赤外光を測定対象200に照射することができる。さらに、フィルタ70は、測定対象200の血管201において遠赤外光が集中するように、レンズ状に構成され、その焦点が測定対象200内となるように配置されてもよい。
【0062】
このように、熱型光源20について、遠赤外光の集光や、所定の波長以外の波長光を遮断可能に構成することにより、測定装置100の測定精度を向上させることができる。さらに、熱型光源20の温度を制御することにより、フィルタ70を介して、所望の波長の赤外光の測定対象200に対する強度を制御することができる。また、熱型光源20の温度を変化させると、異なるスペクトラムの放射が実現される。このような場合に、それぞれが異なる波長を透過するフィルタ70を複数設ければ、測定対象200に照射される複数の波長の赤外光の強度を変化させることができる。このようにして、測定対象200に到達する赤外光の波長及び強度を制御ができる。また、熱型光源20の温度を経時的に変化させることにより、1回の制御で種々の波長及び強度の赤外光を測定対象200に照射することができる。また、フィルタ70は1つであってもよく、この場合には、熱型光源20の温度を変更することにより、所定の波長の赤外光の強度を変化させることができる。
【0063】
(第4実施形態)
第1~3実施形態においては、測定ユニット10において、筐体12の壁面に対してセンサユニット11が取り付けられる例について説明したが、これに限らない。第4実施形態においては、センサユニット11が筐体12の壁面の一部を構成する例について説明する。
【0064】
図13は、第4実施形態に係る測定装置100の概略構成図である。図1に示される第1実施形態の測定装置100と比較すれば、シール部材13が削除され、筐体12の形状が変更されている。筐体12は、他の実施形態と同様に、気密室を構成する。さらに、センサユニット11は、固定部材111を備えず、センサ基板112が固定部材111に嵌め込まれることなく、筐体12の壁面の一部を構成している。
【0065】
このように構成しても、センサユニット11によって気密室における光音響波(弾性波)に起因する気圧変化が測定される。その結果、気密室の気圧変化を測定しやすくなるので、測定装置100の測定精度を向上させることができる。
【0066】
(第5実施形態)
第4実施形態においては、測定ユニット10において、センサユニット11が筐体12の壁面の一部を構成し、センサユニット11は、気密室と外側とを隔てるように構成されたが、これに限らない。第5実施形態においては、センサユニット11(カンチレバー)の気密室と反対側において、さらに、閉塞空間が設けられる例について説明する。
【0067】
図14は、第5実施形態に係る測定装置100の概略構成図である。図13に示される第4実施形態の測定装置100と比較すれば、センサユニット11(カンチレバー)の測定対象200側の反対側において、さらに、筐体16が設けられている。筐体16の内部は、筐体12と同様に、閉ざされており閉塞空間を構成する。
【0068】
センサユニット11は、測定対象200から放出される光音響波の影響を受けた気密室の圧力を検出するが、これは、変位の両方向(この図では上下方向)に面する空間の気圧差に起因する変位をセンシング部分(カンチレバー)により測定することにより行われる。すなわち、第1~第4実施形態においては、センサユニット11は、気密室と外気との間の圧力差に起因するセンシング部分の変位を測定する。これに対して、第5実施形態においては、測定対象200から近く、光音響波の影響を受けやすい図上方の気密室と、測定対象200から遠く、光音響波の影響を受けにくい図下方の閉塞空間との圧力差に起因するセンシング部分の変位を測定することで、光音響波の大きさを測定する。センサユニット11の気密室の反対側に閉塞空間が設けられることにより、センシング部分が直接外気と接触する場合よりも、周囲の影響を受けにくくなり、その結果、測定装置100の測定精度を向上させることができる。なお、本実施形態においては、センサユニット11により隔てられる筐体12内の気密室と、筐体16内の閉塞空間とは異なる開口面積及び容積として示されたが、これに限らない。気密室、閉塞空間ともに、任意の大きさとすることができる。
【0069】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0070】
10 測定ユニット
11 センサユニット
12、16 筐体
13 シール部材
14 接触部
20 熱型光源
21 電気抵抗
22、23 電極
30 回路部
60 窓部
70 フィルタ
100 光音響波測定装置
200 測定対象
201 血管

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14