(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095714
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】シューズのソール
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20230629BHJP
A43B 13/41 20060101ALI20230629BHJP
A43B 5/06 20220101ALI20230629BHJP
【FI】
A43B13/14 D
A43B13/41
A43B5/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211752
(22)【出願日】2021-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】梶原 遥
(72)【発明者】
【氏名】吉田 陽平
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA38
4F050BA42
4F050HA53
4F050HA56
4F050HA58
4F050HA60
4F050HA73
4F050HA85
4F050HA86
4F050JA09
(57)【要約】
【課題】荷重時にウィンドラス効果を促しかつ中足部から踵部における支持・挙上効果を高めて、走行効率を向上させる。
【解決手段】シューズのソール1において、踵部からつま先部まで前後方向に延設されたソール本体1Aと、ソール本体1Aに設けられ、ソール本体1Aに沿って前後方向に延びる湾曲プレートPとを設ける。ソール本体1Aの圧縮剛性は、中足趾節関節MP位置において最も低くなっている。また、ソール本体1Aが、前足部において、湾曲プレートPの上方に配置されたソール前足上部2A
1と、湾曲プレートPの下方に配置されたソール前足下部2B
1とを含んでおり、ソール本体1Aの圧縮剛性がソール前足下部2B
1において相対的に低くなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズのソールであって、
踵部からつま先部まで前後方向に延設されたソール本体と、
前記ソール本体に設けられ、前記ソール本体に沿って前後方向に延びる湾曲プレートとを備え、
前記ソール本体の圧縮剛性が、中足趾節関節位置において最も低くなっている、
ことを特徴とするシューズのソール。
【請求項2】
請求項1において、
前記ソール本体が、前足部において、前記湾曲プレートの上方に配置されたソール前足上部または前記湾曲プレートの下方に配置されたソール前足下部の少なくともいずれかを含んでいる、
ことを特徴とするシューズのソール。
【請求項3】
請求項2において、
前記ソール本体が、前記ソール前足上部および前記ソール前足下部を含み、前記ソール前足上部および前記ソール前足下部の圧縮剛性がこれらの領域以外の領域の圧縮剛性よりも低くなっており、または、前記ソール前足上部の圧縮剛性が当該ソール前足上部以外の領域の圧縮剛性よりも低くなっており、あるいは、前記ソール前足下部の圧縮剛性が当該ソール前足下部以外の領域の圧縮剛性よりも低くなっている、
ことを特徴とするシューズのソール。
【請求項4】
請求項1において、
前記湾曲プレートが、前足部から中足部において下凸状に湾曲する下凸状湾曲部を有し、中足部から前記踵部において略平坦状に延びる平坦状部または緩やかに凸状に湾曲しつつ延びる上凸状湾曲部を有している、
ことを特徴とするシューズのソール。
【請求項5】
請求項1において、
前記ソール本体がソール上面およびソール下面を有するとともに、
前記ソール上面の最後端の位置とつま先先端の位置を結ぶ直線を基準線Sとし、前記最後端の位置を原点Oとして原点Oから前記ソール上面に沿って測った前記つま先先端の位置までの道程をLとし、前記ソール上面に沿って原点Oから0.45×Lの位置を通って前記基準線Sと直交する線とソール下面との交点をCとし、ソールが点Cで地面と接地したソール姿勢を基準姿勢とするとき、
前記基準姿勢において、前記ソール上面に沿って原点Oから0.68×Lの位置にある中足趾節関節位置から前方側領域において、前記ソール下面が地面から離れているとともに、
前記ソール上面に沿って原点Oから0.15×Lの位置にある踵中心位置と原点Oから0.68×Lの位置にある中足趾節関節位置とを結ぶ直線が地面となす角度をθとするとき、前記基準姿勢において、
θ≧5°
に設定されている、
ことを特徴とするシューズのソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズのソールに関し、詳細には、荷重時にウィンドラス効果を促しかつ中足部から踵部における支持・挙上効果を高めて、走行効率を向上させることができるようにするための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2018-534028号公報には、履物板を内蔵したソール構造が開示されている(同公報の
図2、
図3等参照)。このソール構造(200)は、緩衝部材(250)と、緩衝部材(250)に設けられ、湾曲部を有する履物板(300)とを備えている。
【0003】
上記公報によれば、ランニング運動中にMTP関節におけるエネルギー損失を低減して足の回転が高められると記載されている(同公報の段落[0041]参照)。
【0004】
その一方、近年、長距離を効率よく走る上で、足の前足部(フォアフット)から接地するフォアフット走法が主流になってきている。一般に、フォアフット走法においては、前足部での接地直後に踵部が落ち込む(つまり降下する)が、その際、上記公報に記載された履物板のような板状部材は、このような踵部の落ち込みに対してある程度の効果は発揮されるだろうと推測される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記公報に記載されたような履物板のみでは、ウィンドラス効果を促して走行効率を向上させることができない。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、荷重時にウィンドラス効果を促しかつ中足部から踵部における支持・挙上効果を高めて、走行効率を向上させることができるシューズのソールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシューズのソールは、踵部からつま先部まで前後方向に延設されたソール本体と、ソール本体に設けられ、ソール本体に沿って前後方向に延びる湾曲プレートとを備え、ソール本体の圧縮剛性が中足趾節関節位置において最も低くなっている。ここで、「圧縮剛性」とは、圧縮荷重に対する変形のしにくさを表す概念であって、同じ圧縮荷重を作用させた際、圧縮剛性が高いものは変形量が小さく、圧縮剛性が低いものは変形量が大きい。
【0008】
本発明によれば、ソール本体の圧縮剛性が中足趾節関節位置において最も低くなっているので、ソール前足部での接地後の荷重時には、ソール前足部が(ソール中足部およびソール踵部の変形と比較して)相対的に大きく下方に沈み込むように変形する。これにより、足指が大きく屈曲して足底腱膜が引き伸ばされ、その結果、アーチが挙上して、ウィンドラス効果(すなわち、足指の屈曲によりアーチが挙上して足部の剛性がアップする効果)を促進でき、走行時の推進力をアップできる。この場合、ソール前足部での接地時に速やかにウィンドラス効果を発揮できるので、ウィンドラス効果の発揮のタイミングを早めることができ、速い走速度にも対応できるようになって、走行効率をアップできる。
【0009】
しかも、本発明によれば、ソール本体に沿って前後方向に延びる湾曲プレートが設けられているので、ソール前足部での接地後の踵部の落ち込み(つまり降下)を湾曲プレートにより抑制して踵部の落ち込み量(つまり降下量)を低減できるとともに、前方への荷重の移動により湾曲プレートの前端側が下方に押された際には、湾曲プレートが後端側を持ち上げるように挙動することにより、ソール前足部の相対的な変形と連動して、足の中足部から踵部においてソールによる支持・挙上効果を高めることができ、アーチの挙上に追従して走行効率を向上できる。
【0010】
また、本発明によれば、ウィンドラス効果の促進により、足部の剛性がアップして安定性を向上できるとともに、離地時には地面に対するキック力を高めることができ、これにより、走行効率を一層向上できる。さらに、ソール前足部が相対的に大きく下方に沈み込むように変形することで、足裏に対する支持角度が増して、中足部から踵部における支持・挙上効果を一層高めることができる。
【0011】
本発明では、ソール本体が、前足部において、湾曲プレートの上方に配置されたソール前足上部または湾曲プレートの下方に配置されたソール前足下部の少なくともいずれかを含んでいる。すなわち、この場合には、ソール本体が、ソール前足上部のみ、ソール前足下部のみ、または、ソール前足上部およびソール前足下部を有している。ソール前足部の変形時には、ソール前足上部またはソール前足下部のいずれか、あるいは、ソール前足上部およびソール前足下部の双方が(ソール中足部およびソール踵部の変形と比較して)相対的に大きく下方に沈み込むように変形し、これにより、ウィンドラス効果を促進でき、走行時の推進力をアップできるとともに、走行効率をアップできる。
【0012】
本発明では、ソール本体が、ソール前足上部およびソール前足下部を含み、ソール前足上部およびソール前足下部の圧縮剛性がこれらの領域以外の領域の圧縮剛性よりも低くなっており、または、ソール前足上部の圧縮剛性がソール前足上部以外の領域(ソール前足下部含む)の圧縮剛性よりも低くなっており、あるいは、ソール前足下部の圧縮剛性がソール前足下部以外の領域(ソール前足上部含む)の圧縮剛性よりも低くなっている。
【0013】
この場合には、ソール前足上部およびソール前足下部の圧縮剛性が相対的に低くなっており、あるいは、ソール前足上部またはソール前足下部のいずれか一方の圧縮剛性が相対的に低くなっている。これらいずれの場合においても、ソール前足部での接地後の荷重時には、ソール前足部が(ソール中足部およびソール踵部の変形と比較して)相対的に大きく下方に沈み込むように変形し、これにより、足指が大きく屈曲して足底腱膜が引き伸ばされ、その結果、アーチが挙上して、ウィンドラス効果を促進でき、走行時の推進力をアップできるとともに、走行効率をアップできる。また、ソール前足上部の圧縮剛性がソール前足上部単体でまたはソール前足下部と併せて相対的に低くなっている場合には、足当たり性を向上できるとともに、足裏に対する突き上げを緩和できる。
【0014】
本発明では、湾曲プレートが、前足部から中足部において下凸状に湾曲する下凸状湾曲部を有し、中足部から踵部において略平坦状に延びる平坦状部または緩やかに凸状に湾曲しつつ延びる上凸状湾曲部を有している。
【0015】
本発明では、ソール本体がソール上面およびソール下面を有している。ソール上面の踵後端の位置とつま先先端の位置を結ぶ直線を基準線Sとし、踵後端の位置を原点Oとして原点Oからソール上面に沿って測ったつま先先端の位置までの道程をLとし、ソール上面に沿って原点Oから0.45×Lの位置を通って基準線Sと直交する線とソール下面との交点をCとし、ソールが点Cで地面と接地したソール姿勢を基準姿勢とするとき、基準姿勢においてソール上面に沿って原点Oから0.68×Lの位置にある中足趾節関節位置から前方側領域において、ソール下面が地面から離れているとともに、ソール上面に沿って原点Oから0.15×Lの位置にある踵中心位置と原点Oから0.68×Lの位置にある中足趾節関節位置とを結ぶ直線が地面となす角度をθとするとき、基準姿勢において、θ≧5°に設定されている。
【0016】
本発明によれば、ソール上面に沿って原点Oから0.15×Lの位置にある踵中心位置と原点Oから0.68×Lの位置にある中足趾節関節位置とを結ぶ直線が地面となす角度をθとするとき、基準姿勢において、θ≧5°に設定されているので、ソールの前足部に対して踵部を上方に配置して(つまりヒールアップの状態にして)、フォアフット姿勢に合致させることができ、これにより、接地時からソール下面による自然な支持効果を発揮できるようになるとともに、接地時における踵部の過度の落ち込みを防止して、接地後に踵部から前足部への乗り換えをスムーズに行えるようになる。
【0017】
なお、ソール下面において点Cに相当する位置に凹部や溝等が形成されている場合には、凹部や溝等の前後開口縁部を滑らかに結んでできる仮想面を仮想ソール下面として、当該仮想ソール下面上で点Cを決定するようにする。
【0018】
ここで、上述した特表2018-534028号公報に示すソールにおいては、緩衝部材(250)の剛性をソール前足側で相対的に低くする点は記載されておらず、同公報には、ウィンドラス効果を促進する観点からの記載はない。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係るシューズのソールによれば、荷重時にウィンドラス効果を促しかつ中足部から踵部における支持・挙上効果を高めて、走行効率を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図2】前記ソール(
図1)を備えたシューズ(アッパー省略)の着用時において足骨格および足底筋膜の状態を示す図である。
【
図3】前記シューズ(
図2)の走行時の状態を説明するための図であって、地面に対するソールの動きを(a)~(d)の順に時系列的に示している。
【
図3A】前記ソール(
図1)において踵部と前足部の厚み差(ドロップ)を説明するための図である。
【
図3B】前記ソール(
図1)において最大荷重が作用したときの変形状態を説明するための図である。
【
図3C】最大荷重の作用時に中足部が前足部に対して相対的に浮き上がる様子を説明するための図である。
【
図3D】前記ソール(
図1)においてつま先部に荷重が移動したときの湾曲プレートの変形の様子を説明するための図である。
【
図3E】前記湾曲プレート(
図3D)を前方側上方から見た全体斜視図である。
【
図3F】前記湾曲プレート(
図3D)を後方側上方から見た全体斜視図である。
【
図3I】前記ソール(
図3H)の3I-3I線縦断面概略図である。
【
図3J】
図3Hの第1の変形例によるソールの平面概略図である。
【
図3K】前記ソール(
図3J)の3K-3K線縦断面概略図である。
【
図3L】
図3Hの第2の変形例によるソールの平面概略図である。
【
図3M】前記ソール(
図3L)の3M-3M線縦断面概略図である。
【
図3N】
図3Hの第3の変形例によるソールの縦断面概略図である。
【
図3O】前記ソール(
図3N)における衝撃緩衝体の全体斜視図である。
【
図3P】前記ソール(
図1)の前足上部の形状が異なる場合の側面概略図である。
【
図3Q】
図3P中のソールの形状の詳細を説明するための側面図である。
【
図4】本発明の第2の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図5】前記ソール(
図4)を備えたシューズ(アッパー省略)の着用時において足骨格および足底筋膜の状態を示す図である。
【
図6】前記シューズ(
図5)の走行時の状態を説明するための図であって、地面に対するソールの動きを(a)~(d)の順に時系列的に示している。
【
図7】本発明の第3の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図8】前記ソール(
図7)を備えたシューズ(アッパー省略)の着用時において足骨格および足底筋膜の状態を示す図である。
【
図9】前記シューズ(
図8)の走行時の状態を説明するための図であって、地面に対するソールの動きを(a)~(d)の順に時系列的に示している。
【
図10】本発明の第4の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図11】本発明の第5の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図12】本発明の第5の実施例の変形例によるソールの側面概略図である。
【
図13】本発明の第6の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図14】本発明の第7の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図15】本発明の第8の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図16】本発明の第9の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図17】本発明の第10の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図18】本発明の第10の実施例の変形例によるソールの側面概略図である。
【
図19】本発明の第11の実施例によるソールの側面概略図である。
【
図20】本発明によるソールと足の骨格構造との位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1ないし
図3Qは、本発明の第1の実施例によるシューズのソールを説明するための図である。これらの図において、
図1ないし
図3Cおよび
図3Pはソールの側面概略図、
図3Dないし3Gは湾曲プレートを示す図、
図3H、
図3Jおよび
図3Lはソールの平面概略図、
図3I、
図3K、
図3Mおよび
図3Nはソールの縦断面概略図、
図3Oは衝撃緩衝部材の全体斜視図、
図3Qはソールの形状の詳細を説明するための側面図である。
図3Eないし
図3Gでは、図示の便宜上、背景をグレーに着色して示している。ここでは、シューズとしてスポーツシューズ、とくに中長距離用のランニングシューズを例にとる。
【0022】
以下の説明中、上方(上側/上)および下方(下側/下)とは、ソールの上下方向の位置関係を表し、前方(前側/前)および後方(後側/後)とは、ソールの前後方向の位置関係を表しており、幅方向とはソールの左右方向を指すものとする。すなわち、上方および下方は、
図1を例にとった場合、同図の上方および下方をそれぞれ指しており、前方および後方は、同図の左方および右方をそれぞれ指しており、幅方向は、同図の紙面垂直方向を指している。
【0023】
図1に示すように、ソール1は、上側に配置された上部ミッドソール2Aと、その下側に配置された下部ミッドソール2Bと、上下部ミッドソール2A、2B間で挟持された湾曲プレートPとを備えている。すなわち、この例では、湾曲プレートPの上方に上部ミッドソール2Aが配置され、湾曲プレートPの下方に下部ミッドソール2Bが配置されている。上下部ミッドソール2A、2Bによりソール本体1Aが構成されている。上部ミッドソール2Aの上面(つまりソール上面)20は、着用者の足裏に直接またはインソール等を介して接触する足裏当接面を形成している。下部ミッドソール2Bの下面(つまりソール下面)21は、アウトソール(図示せず)を介して地面と接触する接地面を形成している。
【0024】
上下部ミッドソール2A、2B(つまりソール本体1A)および湾曲プレートPは、踵部(
図1右端部)から中足部(同図左右方向略中央部)を経て前足部のつま先部(同図左端部)まで前後方向に延設されている。ソール上面20は、前足部において下方に沈み込みように凹状に湾曲形成された凹状湾曲部20aと、中足部から踵部において緩やかに凸状に湾曲しつつ延びる凸状湾曲部(または略平坦状に延びる平坦状部)20bとを有している。
【0025】
ソール本体1Aの形状について、さらに
図3Aを用いて説明する。
同図は
図1と同一のソール1を示している。
図3Aに示すように、ソール上面20の踵後端(同図右端)の位置を原点として原点からソール上面20に沿って測ったつま先先端の位置までの道程をLとし、ソール上面20に沿って原点から0.15×Lの位置にある踵中心位置を20hとし、ソール上面20に沿って原点から0.68×Lの位置にある中足趾節関節(MP関節)位置を20jとする。ここで、踵中心位置20hにおけるソール1の厚みをt
1とし、中足趾節関節位置20jにおけるソール1の厚みをt
2とするとき、
t
1>t
2
となっている。このとき、双方の厚みの差t
d(=t
1-t
2)はドロップと呼称される。
図3Aに示す例では、ソール1がドロップt
dを有している。また、同図に示す例では、ソール本体1Aの前足部(ソール前足部)の上面20a(つまり湾曲プレートPの上方に配置されたソール前足上部2A
1の上面20a)が、ソール本体1Aの中足部(ソール中足部)の上面20b(つまり湾曲プレートPの上方に配置されたソール中足上部2A
2の上面20b)に対して下方に沈んだ位置に配置されている。
【0026】
ここで、
図20は、ソール本体1Aと着用者の足Pの骨格図との位置関係を示しており、右足を底面側から見た図である。同図において、符号DP
1、PP
1、MT
1、SBはそれぞれ第1趾末節骨、第1趾基節骨、第1趾中足骨、種子骨を示し、符号DP
5、PP
5、MT
5はそれぞれ第5趾末節骨、第5趾基節骨、第5趾中足骨を示しており、符号CC、TL、CB、NB、CFはそれぞれ踵骨、距骨、立方骨、舟状骨、楔状骨を示している。楔状骨CFは、内甲側から外甲側に向かって順に配置された内側楔状骨CF
i、中間楔状骨CF
m、外側楔状骨CF
oから構成されている。また、符号MP、LF、TTはそれぞれ中足趾節関節、リスフラン関節、ショパール関節(横足根関節)を示している。
【0027】
中足趾節関節MPは、
図20に示すように、踵後端の位置を0%とし、つま先先端の位置を100%とするとき、踵後端から60%~80%の領域、より詳細には64%~72%の領域に位置しており、そこで、段落[0025]では、中足趾節関節(MP関節)位置として、これらの領域の中央値をとって踵後端から68%の位置とした。また、同図中、符号H、M、Fはそれぞれ踵部、中足部、前足部を示している。踵部Hは踵後端からショパール関節TTまでの領域を、中足部Mはショパール関節TTからリスフラン関節LFまでの領域を、前足部Fはリスフラン関節からつま先先端までの領域を指している。
【0028】
湾曲プレートPは、
図1に示すように、ソール本体1Aに沿って、上部ミッドソール2Aの上面20の湾曲形状に概略沿いつつ前後方向に延びている。湾曲プレートPは、前足部から中足部において下凸状に湾曲する下凸状湾曲部P
1と、中足部から踵部において略平坦状に延びる平坦状部(または緩やかに凸状に湾曲しつつ延びる上凸状湾曲部)P
2とを有している。ソール下面21は、つま先先端に向かって徐々につま先上がりとなるように凸状に湾曲形成された凸状湾曲部21aを有しており(すなわちトウスプリングを有しており)、中足部から踵部においては略平坦状に延びる平坦状部21bを有している。
【0029】
ソール1の上側にアッパー(図示せず)を接着や縫製等で固着することにより、シューズが構成されている。ソール1のアウトソール(図示せず)は、下部ミッドソール2Bの下面21に接着等で固着されている。
【0030】
上下部ミッドソール2A、2Bは軟質弾性部材から構成されており、具体的には、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性合成樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体から構成されている。
【0031】
図1において、上部ミッドソール2Aは、踵部からつま先部に至るまで一様なグレーで着色して示されているが、これは、上部ミッドソール2Aが踵部からつま先部にかけて一様な圧縮剛性を有していることを示している。これに対して、下部ミッドソール2Bは、踵部においては、上部ミッドソール2Aと同一の濃さのグレーで着色して示されているが、前足部においては、踵部よりも薄い(したがって、上部ミッドソール2Aよりも薄い)グレーで着色して示されている。これは、下部ミッドソール2Bの前足部の圧縮剛性が踵部(および上部ミッドソール2A)に対して相対的に低いことを示している。
【0032】
ここで「圧縮剛性」とは、圧縮荷重に対する変形のしにくさを表す概念であって、同じ圧縮荷重を作用させた際、圧縮剛性が高いものは変形量が小さく、圧縮剛性が低いものは変形量が大きい。したがって、下部ミッドソール2Bは前足部側で柔らかく、中足部側および踵部側で硬くなっている。
【0033】
別の言い方をすれば、ソール本体1Aは、前足部において、湾曲プレートPの上方に配置されたソール前足上部2A
1と、湾曲プレートPの下方に配置されたソール前足下部2B
1とを有しており、ソール本体1Aの圧縮剛性は、ソール前足下部2B
1において相対的に低くなっている。さらに付言すると、ソール本体1Aの圧縮剛性は、少なくとも、ソール前足下部2B
1の中足趾節関節(MP関節)位置20j(
図3A)において相対的に低くなっている。
【0034】
湾曲プレートPは、薄肉のシート状部材であって(
図3Eないし
図3G参照)、その厚みはたとえば1~2mm程度であるが、
図1では、図示の便宜上、太線で示されている。湾曲プレートPには、その幅方向略中央部および前後方向略中央部において、上方に山状に隆起しつつ前後方向に延びる隆起部(またはリブ)Pb(
図3E、
図3F)が設けられていてもよい。また、
図1の例では、湾曲プレートPの側面がソール本体1Aの側面に現われたものが示されているが、これとは異なり、湾曲プレートPの側面がソール本体1Aの側面に現われないように、湾曲プレートPはソール本体1Aに内蔵されるようにしてもよい。また、湾曲プレートPは、たとえば接着等により、上下部ミッドソール2A、2Bの界面に固着されている。なお、上下部ミッドソール2A、2Bのいずれか一方の成形時に湾曲プレートPをインサート成形し、これを上下部ミッドソール2A、2Bのいずれか他方に接着等で固着するようにしてもよい。
【0035】
湾曲プレートPは、比較的弾性に富む素材である熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリアミドエラストマー(PAE)、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂あるいはエポキシ樹脂等や不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂から構成されている。また、湾曲プレートPの素材としては、たとえば炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等を強化用繊維とし、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とした繊維強化プラスチック(FRP)を用いるようにしてもよい。
【0036】
アウトソール(図示せず)は硬質弾性部材から構成されており、具体的には、熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリアミドエラストマー(PAE)等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、またはラバーから構成されている。
【0037】
図2は、
図1のソール1に着用者の足Fが載った状態(つまりシューズ着用時)において、足骨格および足底筋膜の状態をしている。同図中、符号CCは踵骨を、TLは距骨を、MTは中足骨を、PHは趾骨をそれぞれ示しており、同図では、図示の便宜上、距骨TLが踵骨CCと一体に示されている。また、符号SAは足の縦アーチを示し、PFは足底筋膜を示している。足底筋膜PFは、足裏において踵骨CCおよび足趾PH間で底面視扇状に張られた縦走線維束である。
【0038】
次に、本実施例の作用効果について、
図1および
図2ならびに
図3Aないし
図3Gを参照しつつ、
図3を用いて説明する。
図3(a)は、ソール1が前足部で接地した局面を示している。このとき、ソール本体1Aにおいて湾曲プレートPの下方に配置されたソール前足下部2B
1が地面Rと接触している。
【0039】
図3(b)は、ソール1の接地後にソール1に最大荷重が作用した局面を示している。このとき、上述したように、ソール本体1Aの圧縮剛性は、ソール前足下部2B
1(好ましくは中足趾節関節位置)において相対的に低くなっているので、同図に示すように、ソール前足下部2B
1が相対的に大きく圧縮変形してソール1が下方に沈み込む。
【0040】
すると、足指が大きく屈曲して足底腱膜PFが引き伸ばされ(
図3(b)中の白抜き矢印参照)、その結果、アーチSAが挙上して、ウィンドラス効果(すなわち、足指の屈曲によりアーチSAが挙上して足部の剛性がアップする効果)を促進でき、走行時の推進力をアップできる。また、この場合には、前足部での接地時に速やかにウィンドラス効果を発揮できるので、ウィンドラス効果の発揮のタイミングを早めることができ、速い走速度にも対応できるようになって、走行効率をアップできる。しかも、この場合には、湾曲プレートPの上方に配置されたソール前足上部2A
1の上面20aが、湾曲プレートPの上方に配置されたソール中足上部2A
2の上面20bに対して下方に沈んだ位置に配置されているので(
図1参照)、足裏に対する支持角度が増して、走行効率を一層向上できる。
【0041】
また、ソール1の接地後には、踵部が下方に沈み込もうとするが(
図3(b)中の下向きの矢印参照)、このとき、湾曲プレートPにより踵部を支持することができ、これにより、踵部の落込み量(つまり降下量)を低減できる。この場合において、湾曲プレートPに隆起部Pb(
図3E、
図3F)が設けられているとき、湾曲プレートPの剛性がアップして、踵部の降下量を一層低減できる。さらに、ソール1の前足部に荷重が作用して、湾曲プレートPの前方側の下凸状湾曲部P
1が下方に押し込まれたとき、湾曲プレートPがシーソーのように挙動するシーソー効果により、湾曲プレートPの後方側の上凸状湾曲部P
2を持ち上げるように作用するので(同図中の上向きの矢印参照)、ソール前足下部2B
1の相対的な変形と連動して、足の中足部から踵部においてソール1による支持・挙上効果を高めることができ、アーチSAの挙上に追従して走行効率を向上できる。なお、
図3では、挙上したアーチSAが太線で示されている。また、この場合には、湾曲プレートPの上方にソール前足上部2A
1が配置されていることにより、足当たり性を向上できるとともに、足裏に対する突き上げを緩和できる。
【0042】
ここで、
図3Bは
図3(b)に対応しており、最大荷重の作用後におけるソール上面20を実線で示している。最大荷重の作用前におけるソール上面20は一点鎖線で示されている。同図中、最大荷重の作用後において、ソール上面20上の中足趾節関節位置を20j’とする。また、踵中心位置20hと最大荷重作用前の中足趾節関節位置20jとを結ぶ直線をTとし、踵中心位置20hと最大荷重作用後の中足趾節関節位置20j’とを結ぶ直線をT’とする。このとき、地面に対する各直線T、T’の傾きは、足裏に対する支持角度を表している。
【0043】
図3Bに示すように、最大荷重の作用により、地面に対する直線T’の傾きは直線Tの傾きより大きくなっており、足裏に対する支持角度が増している。これにより、中足部から踵部における支持・挙上効果をより一層高めることができるとともに、足部の剛性がさらにアップして安定性を一層向上できる。
【0044】
図3Cは、最大荷重の作用時に中足部が前足部に対して相対的に浮き上がる(つまり上方に押し上げられる)様子を説明するための図であって、同図中、符号Fsは着用者の足裏を示している。同図に示すように、最大荷重の作用時には、前足部が下方に沈み込むことにより、中足部が相対的に押し上げられて足裏Fsを上方に持ち上げ、その結果、アーチの挙上に追従できる。
【0045】
図3Dは、湾曲プレートPのシーソー効果を説明するための図である。同図に示すように、湾曲プレートPの前方側(図示左側)の下凸状湾曲部P
1に矢印f
1方向から押付力が作用して下凸状湾曲部P
1が下方に押し込まれたとき、湾曲プレートPが矢印Rv方向に回転することで湾曲プレートPがシーソーのように挙動することにより、湾曲プレートPの後方側(図示右側)の上凸状湾曲部P
2が矢印f
2方向に押し上げられる。これにより、踵部の落込み量が低減されて、荷重時に中足部から踵部における支持・挙上効果が高められるようになる。
【0046】
図3(c)は、足指が最大屈曲状態に移行して、ソール1が最大屈曲した局面を示している。このとき、足底腱膜PFがさらに引き伸ばされることにより(同図中の白抜き矢印参照)、アーチSAがさらに挙上して、ウィンドラス効果をさらに促進できる。また、湾曲プレートPのシーソー効果が一層発揮されることにより、中足部から踵部における支持・挙上効果をより一層高めることができる。
【0047】
図3(d)は、ソール1のつま先での蹴り出し直後の局面を示しており、ソール1が地面Rから離地した局面を示している。この場合には、ウィンドラス効果により、足部の剛性がアップして安定性が向上しているので、離地時には、地面Rに対するキック力を高めることができ、走行効率を向上できる。
【0048】
次に、
図3Hはソール1の平面概略図であり、
図3Iはその3I-3I線縦断面概略図である。なお、この例では、下部ミッドソール2Bの下面(つまりソール下面)21は、中足部から踵部にかけての領域において略平坦状に延びておらず、踵後端側に向かうにしたがい徐々に上方に立ち上がる湾曲部21bを有している。
図3Iでは、図示の便宜上、ハッチングを省略して示している。これらの図に示すように、ソール本体1Aの前足部において、湾曲プレートPの下方に配置されたソール前足下部2B
1には、上下方向に延びる多数の穴(縦穴)23が形成されている。穴23は、好ましくは、中足趾節関節(MP関節)位置に対応する位置において相対的に多く形成されている。各縦穴23の下端は、ソール下面21には開口しておらず、上端は上下部ミッドソール2、3の界面に開口しており、上端開口部は湾曲プレートPにより覆われている。この例では、ソール本体1Aの踵部にも同様の縦穴24が形成されているが、その個数は前足部側の縦穴23と比べてはるかに少ない。また、中足部に縦穴は形成されていない。このような構成により、ソール本体1Aの圧縮剛性は、ソール前足下部2B
1において相対的に低くなっている。なお、各図中、符号20dは、上部ミッドソール2Aの外周縁部に沿って上方に立ち上がるように配設された立壁部である。
【0049】
図3Jおよび
図3Kは、
図3Hおよび
図3Iの第1の変形例を示している。
図3Jはソール1の平面概略図であり、
図3Kはその3K-3K線縦断面概略図である。なお、この例においても、下部ミッドソール2Bの下面(つまりソール下面)21は、中足部から踵部にかけての領域において略平坦状に延びておらず、踵後端側に向かうにしたがい徐々に上方に立ち上がる湾曲部21bを有している。
図3Kでは、図示の便宜上、ハッチングを省略して示している。これらの図に示すように、ソール本体1Aの前足部において、湾曲プレートPの下方に配置されたソール前足下部2B
1には、上下方向に延びる多数の穴(縦穴)23が形成されている。穴23は、好ましくは、中足趾節関節(MP関節)位置に対応する位置において相対的に多く形成されている。各縦穴23の下端は、ソール下面21には開口しておらず、上端は上下部ミッドソール2、3の界面に開口しており、上端開口部は湾曲プレートPにより覆われている。なお、この例では、ソール本体1Aの中足部にも同様の縦穴24が形成されているが、その個数は前足部側の縦穴23と比べてはるかに少ない。また、踵部に縦穴は形成されていない。このような構成により、ソール本体1Aの圧縮剛性は、ソール前足下部2B
1において相対的に低くなっている。
【0050】
図3Lおよび
図3Mは、
図3Hおよび
図3Iの第2の変形例を示している。
図3Lはソール1の平面概略図であり、
図3Mはその3M-3M線縦断面概略図である。なお、この例においても、下部ミッドソール2Bの下面(つまりソール下面)21は、中足部から踵部にかけての領域において略平坦状に延びておらず、踵後端側に向かうにしたがい徐々に上方に立ち上がる湾曲部21bを有している。
図3Mでは、図示の便宜上、ソール本体1Aのハッチングを省略して示している。これらの図に示すように、ソール本体1Aの前足部のソール前足下部2B
1において、中足趾節関節(MP関節)位置に対応する位置には、板状の軟質材26が設けられている。軟質材26は、下部ミッドソール2Bの上面に形成された凹部に収容されており、湾曲プレートPにより上方から覆われている。軟質材26としては、たとえば発泡ラバーや発泡ウレタン等が用いられるが、これらには限定されない。なお、発泡成形の際には、原料としてビーズを用いたいわゆるビーズ発泡を行うようにしてもよい。軟質材26の硬度としては、たとえばアスカーCスケールで20C程度のものが採用される。このとき、上下部ミッドソール2A、2Bの硬度は、たとえばアスカーCスケールで40C程度である。このような構成により、ソール本体1Aの圧縮剛性は、ソール前足下部2B
1において(とくに中足趾節関節(MP関節)位置において)相対的に低くなっている。
【0051】
図3Hないし
図3Mの例では、ソール前足下部2B
1に縦穴23を形成したり、ソール前足下部2B
1に軟質材26を配設したりした例を示したが、本発明の適用はこれらに限定されない。ソール本体1Aの発泡率をソール前足下部2B
1において相対的に高くするようにして、ソール前足下部2B
1の圧縮剛性を下げるようにしてもよい。
【0052】
図3Nおよび
図3Oは、
図3Hおよび
図3Iの第3の変形例を示している。この第3の変形例では、
図3Nに示すように、ソール前足下部2B
1に開口部2Bhが形成され、当該開口部2Bh内に衝撃緩衝体30が収容されている。
【0053】
衝撃緩衝体30は、
図3Oに示すように、円周上に略均等間隔で配置された複数個(この例では6個)の衝撃緩衝部31を有している。各衝撃緩衝部31は、上下方向に間隔を隔てて配設された天板部31aおよび底板部31bと、これらを上下に連結するとともに、周方向外方に向かって弾性変形可能な壁部31cとを備えている。各衝撃緩衝部31は、各壁部31cに取り付けられかつ周方向に配設された連結部材32によって互いに連結されている。
【0054】
衝撃緩衝体30に下向きの荷重が作用すると、各衝撃緩衝部材31の天板部31aに作用する荷重により、各壁部31cが周方向外方に向かって弾性変形して天板部31aが下方に移動し、これにより、ソール前足下部2B1が下方に沈み込み変形するようになっている。このような構成により、ソール本体1Aの圧縮剛性は、ソール前足下部2B1において相対的に低くなっている。
【0055】
次に、
図3Pは、ソール前足上部の形状が
図1のソール1と異なる場合の側面概略図である。
図1に示したソール1においては、ソール上面20が、前足部において下方に沈み込みように凹状に湾曲形成された凹状湾曲部20aと、中足部から踵部において緩やかに凸状に湾曲しつつ延びる凸状湾曲部(または略平坦状に延びる平坦状部)20bとを有しており、湾曲プレートPの上方に配置されたソール前足上部2A
1の上面20aが、湾曲プレートPの上方に配置されたソール中足上部2A
2の上面20bに対して下方に沈んだ位置に配置されている例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
【0056】
図3Pに示すソール1では、前足部に凹状湾曲部は形成されておらず、ソール前足上部2A
1からソール中足上部2A
2にかけての領域でソール上面20が略平坦状(つまりフラット)に形成されている。
【0057】
この場合においても、ソール本体1Aの圧縮剛性は、ソール前足下部2B1において相対的に低くなっているので、荷重の作用時には、ソール前足下部2B1が相対的に大きく圧縮変形してソール1が下方に沈み込むことにより、足指が屈曲して足底腱膜が引き伸ばされ、その結果、アーチSAが挙上して、ウィンドラス効果を促進できる。
【0058】
図3Qは、
図3Pのソール1について、より好ましい形状の詳細を示している。
図3Qに示すように、ソール上面20の踵後端(同図右端)の位置S
0とつま先先端(同図左端)の位置Seとを結ぶ直線を基準線Sとする。ここで、ソール上面20は、シューズの組立時に使用するラスト(靴型)の底面の形状と一致している。次に、踵後端の位置S
0を原点Oとして原点Oからソール上面20に沿って測ったつま先先端の位置Seまでの道程をLとし、ソール上面20に沿って原点Oから0.45×Lの位置20mを通って基準線Sと直交する線とソール下面31との交点をCとする。この例では、下部ミッドソール2Bの下面にアウトソール3が設けられているので、アウトソール3の下面31をソール下面とする。また、同図では、位置20mを通って基準線Sと直交する線と基準線Sとの交点がSpで示されている。ソール1が点Cで地面Rと接地したソール姿勢を基準姿勢とするとき、基準姿勢において、つま先部におけるソール下面31が地面Rから離れている(つまり浮いている)。より好ましくは、基準姿勢において、ソール上面20に沿って原点Oから0.68×Lの位置20jにある中足趾節関節(MP関節)位置から前方側領域において、ソール下面31が地面から離れている。
【0059】
また、ソール上面20に沿って原点Oから0.15×Lの位置にある踵中心位置20hと原点Oから0.68×Lの位置にある中足趾節関節位置20jとを結ぶ直線Tが地面Rとなす角度(鋭角)をθとするとき、基準姿勢において、
θ≧5°
に設定されている。
【0060】
この場合には、ソール1の接地時の局面において、ソール1が点Cで地面Rと接地する基準姿勢を維持している。このとき、つま先部(好ましくは原点Oから0.68×Lの位置にある中足趾節関節位置20jから前方側領域)におけるソール下面31が地面Rから離れて配置されている(つまり地面Rから浮いている)ので、自然なフォアフット走行を促進させることができる。
【0061】
また、基準姿勢においては、ソール上面20に沿って原点Oから0.15×Lの位置にある踵中心位置20hと原点Oから0.68×Lの位置にある中足趾節関節位置20jとを結ぶ直線Tが地面となす角度をθとするとき、不等式θ≧5°を満足している。これにより、ソール1において踵部を前足部に対して上方に配置(つまりヒールアップの状態)にして、フォアフット姿勢に合致させることができる。
【0062】
ここで、ソール1の踵部、中足部および前足部を、原点Oからソール上面20に沿って測ったつま先先端の位置Seまでの道程Lを用いて表すと、以下のようになる。
i) 踵部: 0~0.25×L
ii) 中足部: 0.25×L~0.60×L
iii)前足部: 0.60×L~1.00×L
【0063】
<第2の実施例>
図4ないし
図6は、本発明の第2の実施例によるシューズ(ランニングシューズ)のソールを説明するための図である。これらの図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0064】
前記第1の実施例では、ソール本体1Aの剛性がソール前足下部2B
1において相対的に低くなっている例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。この第2の実施例では、
図4に示すように、下部ミッドソール2Bが踵部からつま先部に至るまで一様なグレーで着色して示されていて、下部ミッドソール2Bが踵部からつま先部において一様な圧縮剛性を有しているのに対して、上部ミッドソール2Aは踵部においては下部ミッドソール2Bと同一の濃さのグレーで着色して示されているが、前足部においては踵部よりも薄い(よって下部ミッドソール2Bよりも薄い)グレーで着色して示されている。したがって、ソール本体1Aの圧縮剛性は、ソール前足上部2A
1において(少なくとも中足趾節関節位置において)他の領域に対して相対的に低くなっている。
【0065】
図5は、
図4のソール1に着用者の足Fが載った状態(つまりシューズ着用時/荷重作用前)において、足骨格および足底筋膜の状態をしており、前記第1の実施例の
図2に対応している。
【0066】
次に、本実施例の作用効果について、
図4および
図5を参照しつつ、
図6を用いて説明する。
図6(a)は、ソール1が前足部で接地した局面を示している。このとき、ソール本体1Aにおいて湾曲プレートPの下方に配置されたソール前足下部2B
1が地面Rと接触している。
【0067】
図6(b)は、ソール1の接地後にソール1に最大荷重が作用した局面を示している。このとき、上述したように、ソール本体1Aの圧縮剛性は、ソール前足上部2A
1(少なくとも中足趾節関節位置)において相対的に低くなっているので、同図に示すように、ソール前足上部2A
1が相対的に大きく圧縮変形してソール1が下方に沈み込む。
【0068】
すると、足指が大きく屈曲して足底腱膜PFが引き伸ばされ(
図6(b)中の白抜き矢印参照)、その結果、アーチSAが挙上して、ウィンドラス効果(足指の屈曲によりアーチSAが挙上して足部の剛性がアップする効果)を促進でき、走行時の推進力をアップできる。また、この場合には、前足部での接地時に速やかにウィンドラス効果を発揮できるので、ウィンドラス効果の発揮のタイミングを早めることができ、速い走速度にも対応できるようになって、走行効率をアップできる。しかも、この場合には、湾曲プレートPの上方に配置されたソール前足上部2A
1の上面20aが、湾曲プレートPの上方に配置されたソール中足上部2A
2の上面20bに対して下方に沈んだ位置に配置されているので(
図4参照)、足裏に対する支持角度が増して、走行効率を一層向上できる。
【0069】
また、ソール1の接地後には、踵部が下方に沈み込もうとするが(
図6(b)中の下向きの矢印参照)、このとき、湾曲プレートPにより踵部を支持することができ、これにより、踵部の落込み量(降下量)を低減できる。さらに、ソール1の前足部に荷重が作用して、湾曲プレートPの前方側の下凸状湾曲部P
1が下方に押し込まれたとき、湾曲プレートPのシーソー効果により、湾曲プレートPの後方側の上凸状湾曲部P
2を持ち上げるように作用するので(同図中の上向きの矢印参照)、ソール前足上部2A
1の相対的な変形と連動して、足の中足部から踵部においてソール1による支持・挙上効果を高めることができ、アーチSAの挙上に追従して走行効率を向上できる。また、この場合には、湾曲プレートPの上方に柔らかいソール前足上部2A
1が配置されていることにより、足当たり性をさらに向上できるとともに、足裏に対する突き上げを一層緩和できる。
【0070】
さらに、この場合においても、最大荷重の作用時には、足裏に対する支持角度が増しているので、中足部から踵部における支持・挙上効果をより一層高めることができるとともに、足部の剛性がさらにアップして安定性を一層向上できる。
【0071】
図6(c)は、足指が最大屈曲状態に移行して、ソール1が最大屈曲した局面を示している。このとき、足底腱膜PFがさらに引き伸ばされることにより(同図中の白抜き矢印参照)、アーチSAがさらに挙上して、ウィンドラス効果をさらに促進できる。また、湾曲プレートPのシーソー効果がさらに発揮されることにより、中足部から踵部における支持・挙上効果をよりより一層高めることができる。
【0072】
図6(d)は、ソール1のつま先での蹴り出し直後の局面を示しており、ソール1が地面Rから離地した局面を示している。この場合には、ウィンドラス効果により、足部の剛性がアップして安定性が向上しているので、離地時には、地面Rに対するキック力を高めることができ、走行効率を向上できる。
【0073】
このように、第2の実施例においても、前記第1の実施例と同様に、最大荷重の作用時には、ソール1の前足部が相対的に大きく圧縮変形してソール1の前足部が相対的に大きく下方に沈み込むように変形することにより、ウィンドラス効果を促進できるとともに、湾曲プレートPの作用により、中足部から踵部における支持・挙上効果を高めることができる。
【0074】
<第3の実施例>
図7ないし
図9は、本発明の第3の実施例によるシューズ(ランニングシューズ)のソールを説明するための図である。これらの図において、前記第1、第2の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0075】
前記第1および第2の実施例では、主に、下部ミッドソール2Bの下面(ソール下面)21が中足部から踵部にかけての領域において略平坦状に延びる平坦状面21bを有している場合を例にとって示したが(
図1、
図3A、
図3P、
図4参照)、本発明の適用はこれに限定されない。
【0076】
この第3の実施例では、
図7に示すように、下部ミッドソール2Bの下面(ソール下面)21が、中足部から踵部にかけての領域において、上方に向かって凹状に湾曲しつつ延びる凹状湾曲部21bを有している。このとき、ソール1は、全体として湾曲しつつ前後方向に延びており、ソール下面21は、中足部において下凸状のラウンド形状を有している。また、このとき、同図に示すように、踵中心位置20hにおけるソール1の厚みをt
1とし、中足趾節関節位置20jにおけるソール1の厚みをt
2とするとき、
t
1=t
2
となっており、このとき、双方の厚みの差であるドロップは0になっている。その一方、ラストの設計において、踵中心位置20hと中足趾節関節位置20jの差である踵高差(つまりPCup)はPuである。
【0077】
また、
図7において着色されたグレーの濃度から分かるように、この第3の実施例においては、前記第1の実施例と同様に、下部ミッドソール2Bの前足部の圧縮剛性は、ソール前足下部2B
1において(少なくとも中足趾節関節位置において)他の領域に対して相対的に低くなっている。
【0078】
図8は、
図7のソール1に着用者の足Fが載った状態(つまりシューズ着用時/荷重作用前)において、足骨格および足底筋膜の状態をしている。
【0079】
次に、本実施例の作用効果について、
図7および
図8を参照しつつ、
図9を用いて説明する。
図9(a)は、ソール1が前足部で接地した局面を示している。このとき、ソール本体1Aにおいて湾曲プレートPの下方に配置されたソール前足下部2B
1が地面Rと接触している。
【0080】
図9(b)は、ソール1の接地後にソール1に最大荷重が作用した局面を示している。このとき、上述したように、ソール本体1Aの圧縮剛性は、ソール前足下部2B
1(少なくとも中足趾節関節位置)において相対的に低くなっているので、同図に示すように、ソール前足下部2B
1が相対的に大きく圧縮変形してソール1の前足部が下方に沈み込む。
【0081】
すると、足指が大きく屈曲して足底腱膜PFが引き伸ばされ(
図9(b)中の白抜き矢印参照)、その結果、アーチSAが挙上して、ウィンドラス効果(足指の屈曲によりアーチSAが挙上して足部の剛性がアップする効果)を促進でき、走行時の推進力をアップできる。また、この場合には、前足部での接地時に速やかにウィンドラス効果を発揮できるので、ウィンドラス効果の発揮のタイミングを早めることができ、速い走速度にも対応できるようになって、走行効率をアップできる。しかも、この場合には、湾曲プレートPの上方に配置されたソール前足上部2A
1の上面20aが、湾曲プレートPの上方に配置されたソール中足上部2A
2の上面20bに対して下方に沈んだ位置に配置されているので(
図7参照)、足裏に対する支持角度が増して、走行効率を一層向上できる。
【0082】
また、ソール1の接地後には、踵部が下方に沈み込もうとするが(
図9(b)中の下向きの矢印参照)、このとき、湾曲プレートPにより踵部を支持することができ、これにより、踵部の落込み量(降下量)を低減できる。さらに、ソール1の前足部に荷重が作用して、湾曲プレートPの前方側の下凸状湾曲部P
1が下方に押し込まれたとき、湾曲プレートPのシーソー効果により、湾曲プレートPの後方側の上凸状湾曲部P
2を持ち上げるように作用するので(同図中の上向きの矢印参照)、ソール前足上部2A
1の相対的な変形と連動して、足の中足部から踵部においてソール1による支持・挙上効果を高めることができ、アーチSAの挙上に追従して走行効率を向上できる。また、この場合には、湾曲プレートPの上方にソール前足上部2A
1が配置されていることにより、足当たり性を向上できるとともに、足裏に対する突き上げを緩和できる。
【0083】
さらに、この場合においても、最大荷重の作用時には、足裏に対する支持角度が増しているので、中足部から踵部における支持・挙上効果をより一層高めることができるとともに、足部の剛性がさらにアップして安定性を一層向上できる。
【0084】
図9(c)は、足指が最大屈曲状態に移行して、ソール1が最大屈曲した局面を示している。このとき、足底腱膜PFがさらに引き伸ばされることにより(同図中の白抜き矢印参照)、アーチSAがさらに挙上して、ウィンドラス効果をさらに促進できる。また、湾曲プレートPのシーソー効果がさらに発揮されることにより、中足部から踵部における支持・挙上効果をより一層高めることができる。
【0085】
図9(d)は、ソール1のつま先での蹴り出し直後の局面を示しており、ソール1が地面Rから離地した局面を示している。この場合には、ウィンドラス効果により、足部の剛性がアップして安定性が向上しているので、離地時には、地面Rに対するキック力を高めることができ、走行効率を向上できる。
【0086】
このように、第3の実施例においても、前記第1および第2の実施例と同様に、最大荷重の作用時には、ソール1の前足部が相対的に大きく圧縮変形してソール1の前足部が相対的に大きく下方に沈み込むように変形することにより、アーチが挙上してウィンドラス効果を促進できるとともに、湾曲プレートPの作用により、中足部から踵部における支持・挙上効果を高めることができる。さらに、第3の実施例では、ソール下面21bに凹状湾曲部21bを設けたことにより、ソール全体が湾曲しつつ前後方向に延びているので、フォアフット走行の維持が容易になって、走行効率をさらに向上できる。
【0087】
<第4の実施例>
図10は、本発明の第4の実施例によるシューズ(ランニングシューズ)のソールを説明するための図であって、同図において、前記第1ないし第3の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0088】
前記第1ないし第3の実施例では、湾曲プレートPの上下にそれぞれ配置されたソール前足上部2A
1、ソール前足下部2B
1のいずれか一方の圧縮剛性が他方の圧縮剛性より低くなっている例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
図10に示すように、この第4の実施例では、ソール前足上部2A
1およびソール前足下部2B
1の双方の圧縮剛性がこれらの領域以外の領域の圧縮剛性より相対的に低くなっている。この場合には、ソール前足部の相対的な沈み込み変形を一層助長することができる。
【0089】
<第5の実施例>
図11および
図12は、本発明の第5の実施例によるシューズ(ランニングシューズ)のソールを説明するための図であって、これらの図において、前記第1ないし第4の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0090】
前記第1ないし第4の実施例では、湾曲プレートPの上下にソール前足上部2A
1およびソール前足下部2B
1がそれぞれ配置された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
図11および
図12に示すように、この第5の実施例では、下部ミッドソール2Bが前足部に設けられておらず、前足部には上部ミッドソール2Aのみが設けられている。そのため、前足部においては、湾曲プレートPの上方にソール前足上部2A
1のみが配置されている。ソール前足上部2A
1の圧縮剛性は他の領域の圧縮剛性より相対的に低くなっている。なお、
図11に示す例では、下部ミッドソール2Bが中足部および踵部に設けられているが、
図12に示す例は、
図11の変形例であって、下部ミッドソール2Bは設けられていない。この第5の実施例においても、ソール前足部の相対的な沈み込み変形を助長することができる。
【0091】
<第6の実施例>
図13は、本発明の第6の実施例によるシューズ(ランニングシューズ)のソールを説明するための図であって、同図において、前記第1ないし第5の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0092】
前記第5の実施例では、前足部に上部ミッドソール2Aのみが設けられた例を示したが、この第6の実施例では、前足部に下部ミッドソール2Bのみが設けられており、この例ではさらに、中足部および踵部においても下部ミッドソール2Bのみが設けられている。よって、前足部において、湾曲プレートPの上方にソール前足上部は設けられておらず、ソール前足下部2B1のみが設けられている。ソール前足下部2B1の圧縮剛性は他の領域の圧縮剛性より相対的に低くなっている。この第6の実施例においても、ソール前足部の相対的な沈み込み変形を助長することができる。
【0093】
<第7の実施例>
図14は、本発明の第7の実施例によるシューズ(ランニングシューズ)のソールを説明するための図であって、同図において、前記第1ないし第6の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0094】
前記第1ないし第6の実施例では、湾曲プレートPの下凸状湾曲部P1が中足部から前足部にかけて延設された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。湾曲プレートPの下凸状湾曲部P1は、前足部まで延設されずに、踵部から中足部までの領域内に配設されていてもよい。この第7の実施例(後述する第8ないし第11の実施においても同様)は、このような湾曲プレートPを有するソールの例を示している。
【0095】
図14に示すように、第7の実施例において、上部ミッドソール2Aおよび下部ミッドソール2Bの界面の湾曲形状および配設領域は、前記第1ないし第4の実施例と同様であって、前足部には、ソール前足上部2A
1およびソール前足下部2B
1が配置されている。ソール前足下部2B
1の圧縮剛性は、他の領域の圧縮剛性より低くなっている。この第7の実施例においても、ソール前足部の相対的な沈み込み変形を助長することができる。なお、第7の実施例は、前記第1の実施例の
図1に対応しているが、湾曲プレートPが前足部まで延設されていない点で前記第1の実施例と異なっている。
【0096】
<第8の実施例>
図15は、本発明の第8の実施例によるシューズ(ランニングシューズ)のソールを説明するための図であって、同図において、前記第1ないし第7の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0097】
図15に示すように、第8の実施例において、上部ミッドソール2Aおよび下部ミッドソール2Bの界面の湾曲形状および配設領域は、前記第1ないし第4および第7の実施例と同様であって、前足部には、ソール前足上部2A
1およびソール前足下部2B
1が配置されている。ソール前足上部2A
1の圧縮剛性は、他の領域の圧縮剛性より低くなっている。この第8の実施例においても、ソール前足部の相対的な沈み込み変形を助長することができる。なお、第8の実施例は、前記第2の実施例の
図4に対応しているが、湾曲プレートPが前足部まで延設されていない点で前記第2の実施例と異なっている。
【0098】
<第9の実施例>
図16は、本発明の第9の実施例によるシューズ(ランニングシューズ)のソールを説明するための図であって、同図において、前記第1ないし第8の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0099】
図16に示すように、第9の実施例において、上部ミッドソール2Aおよび下部ミッドソール2Bの界面の湾曲形状および配設領域は、前記第1ないし第4、第7および
図8の実施例と同様であって、前足部には、ソール前足上部2A
1およびソール前足下部2B
1が配置されている。ソール前足上部2A
1およびソール前足下部2B
1の圧縮剛性は、他の領域の圧縮剛性より低くなっている。この第9の実施例においても、ソール前足部の相対的な沈み込み変形を助長することができる。なお、第9の実施例は、前記第4の実施例の
図10に対応しているが、湾曲プレートPが前足部まで延設されていない点で前記第4の実施例と異なっている。
【0100】
<第10の実施例>
図17および
図18は、本発明の第10の実施例によるシューズ(ランニングシューズ)のソールを説明するための図であって、同図において、前記第1ないし第9の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0101】
図17、
図18は、前記第5の実施例の
図11、
図12にそれぞれ対応しており、湾曲プレートPが前足部まで延設されてない点において前記第5の実施例と異なっている。よって、ソール前足上部2A
1の圧縮剛性は、他の領域の圧縮剛性より低くなっている。この第10の実施例においても、ソール前足部の相対的な沈み込み変形を助長することができる。
【0102】
<第11の実施例>
図19は、本発明の第11の実施例によるシューズ(ランニングシューズ)のソールを説明するための図であって、同図において、前記第1ないし第10の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0103】
図19は、前記第6の実施例の
図13に対応しており、湾曲プレートPが前足部まで延設されてない点において前記第6の実施例と異なっている。よって、ソール前足下部2B
1の圧縮剛性は、他の領域の圧縮剛性より低くなっている。この第11の実施例においても、ソール前足部の相対的な沈み込み変形を助長することができる。
【0104】
<その他の変形例>
上述した実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のように、本発明は、荷重時にウィンドラス効果を促進し、中足部から踵部における支持・挙上効果を高め、走行効率を向上させるようにするためのシューズのソールに有用である。
【符号の説明】
【0106】
1: ソール
1A: ソール本体
2A1: ソール前足上部
2B1: ソール前足下部
20: 上面/ソール上面
20a: 凹状湾曲部
20b: 凸状湾曲部
20h: 踵中心位置
20j: 中足趾節関節位置
21: 下面/ソール下面
S: 基準線
S0: 最後端の位置
Se: つま先先端の位置
L: 道程
C: 交点
θ: 角度
P: 湾曲プレート
R: 地面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特表2018-534028号公報(段落[0041]、
図2および
図3等参照)
【手続補正書】
【提出日】2022-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】