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  • 特開-ファブリックおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095742
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ファブリックおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20230629BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20230629BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20230629BHJP
   D03D 15/20 20210101ALI20230629BHJP
   D03D 15/54 20210101ALI20230629BHJP
   D01F 1/04 20060101ALI20230629BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
D03D1/00 Z
F21V3/00 100
F21V3/06 110
D03D15/20 100
D03D15/54
D01F1/04
G09F13/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022097157
(22)【出願日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】202111601962.9
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518150806
【氏名又は名称】▲達▼▲亜▼帆布(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】林 義堅
【テーマコード(参考)】
4L035
4L048
5C096
【Fターム(参考)】
4L035GG03
4L035JJ10
4L035JJ28
4L035KK05
4L035KK06
4L048AA56
4L048AB06
4L048AC01
4L048CA00
4L048DA24
5C096AA05
5C096BA01
5C096FA02
5C096FA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境保護要件を満たしながら、広告効果を高める白色度を実現する、広告の内照用クロスに適したファブリックおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ファブリックは、少なくとも90%を超える白色度を有するファブリックに織り込まれた糸を含み、糸は、白色マスターバッチから作製された繊維で構成される。広告の内照用クロスに適したファブリックの製造方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告の内照用クロスに適したファブリックであって、
少なくとも90%を超える白色度を有する前記ファブリックに織り込まれた糸であって、前記糸が、白色マスターバッチから作製された繊維で構成される糸を含むファブリック。
【請求項2】
前記白色マスターバッチが、担体樹脂および白色着色剤を含む、請求項1に記載のファブリック。
【請求項3】
前記担体樹脂がポリ塩化ビニル樹脂ではない、請求項2に記載のファブリック。
【請求項4】
広告の内照用クロスに適したファブリックの製造方法であって、
白色マスターバッチから作製された繊維で構成される糸を準備することと、
前記糸に対して糸染色工程を行い、少なくとも90%を超える白色度を有するファブリックを織ることと、
を含むファブリックの製造方法。
【請求項5】
前記白色度が、すすぎ工程によっては得られない、請求項4に記載のファブリックの製造方法。
【請求項6】
前記ファブリックの製造方法の節水率が、前記すすぎ工程と比較して少なくとも50%超である、請求項5に記載のファブリックの製造方法。
【請求項7】
前記ファブリックの製造方法の節水率が、前記すすぎ工程と比較して少なくとも65%超である、請求項6に記載のファブリックの製造方法。
【請求項8】
1種または複数種の化学物質がすすぎ工程で使用される、請求項5に記載のファブリックの製造方法。
【請求項9】
前記白色度が、カレンダ加工工程またはコーティング工程によっては得られない、請求項4に記載のファブリックの製造方法。
【請求項10】
前記繊維を生産することが、
担体樹脂および白色着色剤を含む前記白色マスターバッチを準備することと、
製織工程、編み工程、非編み工程またはタフティング工程を行うことと、
を含む請求項4に記載のファブリックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファブリックおよびその製造方法に関し、特に、広告の内照用クロスに適したファブリックおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に言えば、広告のライトボックス用クロスは、内照用クロスと外照用クロスに分けることができ、上記2種類のクロスの要件は、製品の要件によって異なる。例えば、広告のライトボックス用クロスに使用される内照用クロスに対しては、光量を増やす(点灯方式)ことにより、クロスに印刷された色が比較的鮮やかになり、それによって視認者の視覚体験が向上し、広告効果が得られる。広告の内照用クロスが呈する光透過率および色は、ファブリックの白色度に依存し、すなわちファブリックの白色度が高いほど、内照用クロスにより良好な色を呈することができる。そのため、広告の内照用クロスのファブリックにはある程度の白色度(白さの程度)が求められる。一方、広告業界では環境保護に対する意識が高まっている。そのため、環境保護要件を満たしながら、広告の内照用クロスに適し、かつ広告効果を高める白色度を有するファブリックを製造することが課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、環境保護要件を満たしながら、広告効果を高める白色度を実現する、広告の内照用クロスに適したファブリックおよびその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一実施形態によれば、広告の内照用クロスに適したファブリックは、少なくとも90%を超える白色度を有するファブリックに織り込まれた糸を含み、糸は、白色マスターバッチから作製された繊維で構成される。
【0005】
本開示の一実施形態によるファブリックでは、白色マスターバッチは、担体樹脂および白色着色剤を含む。
【0006】
本開示の一実施形態によるファブリックでは、担体樹脂はポリ塩化ビニル(PVC)樹脂ではない。
【0007】
本開示の一実施形態によれば、広告の内照用クロスに適したファブリックの製造方法は、以下を含む。白色マスターバッチから作製された繊維で構成される糸を準備する。糸に対して糸染色工程を行い、少なくとも90%を超える白色度を有するファブリックを織る。
【0008】
本開示の一実施形態によるファブリックの製造方法では、白色度はすすぎ工程によっては得られない。
【0009】
本開示の一実施形態によるファブリックの製造方法では、ファブリックの製造方法の節水率は、すすぎ工程と比較して少なくとも50%超である。
【0010】
本開示の一実施形態によるファブリックの製造方法では、ファブリックの製造方法の節水率は、すすぎ工程と比較して少なくとも65%超である。
【0011】
本開示の一実施形態によるファブリックの製造方法では、1種または複数の化学物質がすすぎ工程で使用される。
【0012】
本開示の一実施形態によるファブリックの製造方法では、カレンダ加工工程またはコーティング工程によっては白色度が得られない。
【0013】
本開示の一実施形態によるファブリックの製造方法では、繊維を生産することは以下を含む。担体樹脂および白色着色剤を含む白色マスターバッチを準備する。製織工程、編み工程、非編み工程またはタフティング工程を行う。
【発明の効果】
【0014】
上記に基づいて、本開示の一実施形態のファブリックは、少なくとも90%を超える白色度を有するファブリックに織り込まれた糸を含み、糸は、白色マスターバッチから作製された繊維で構成される。したがって、ファブリックは、環境保護要件を満たしながら広告効果を高める白色度を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例および比較例のUV露光後の色収差の変化の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示のファブリックおよびその製造方法を明確に説明するために、本開示を実施形態によって詳細に説明する。
【0017】
図1は、実施例および比較例のUV露光後の色収差の変化の概略図である。
【0018】
本開示の一実施形態によれば、広告の内照用クロスに適したファブリックは、少なくとも90%を超える白色度を有するファブリックに織り込まれた糸を含み、糸は、白色マスターバッチから作製された繊維で構成される。上記によれば、本開示の実施形態のファブリックは、環境保護要件を満たしながら、広告効果を高める白色度を達成することができる。
【0019】
さらに、本開示の一実施形態によるファブリックの製造方法は、以下を含む。まず、白色マスターバッチから作製された繊維で構成される糸を準備する。次に、糸に対して糸染色工程を行い、少なくとも90%を超える白色度を有するファブリックを織る。すなわち、本開示の一実施形態のファブリックの製造の初期段階では、繊維の白色度が(少なくとも90%超まで)増加するように、白色マスターバッチの添加によって対応する繊維を発色させる。次に、繊維から作製された糸は、糸染色工程によって対応するファブリックに織り込まれる。したがって、糸から織り込まれたファブリックは、広告効果を高める白色度を達成することができる。さらに、本開示の実施形態のファブリックの白色度は、すすぎ工程、カレンダ加工工程またはコーティング工程ではなく、糸染色工程によって得られるため、環境保護要件を満たすことができる。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0020】
さらに、本開示の一実施形態の繊維を生産することは、少なくとも以下を含む。まず、担体樹脂および白色着色剤を含む白色マスターバッチを準備する。次に、製織工程、編み工程、非編み工程またはタフティング工程を行い、上記の繊維を得る。上記のすすぎ工程は、例えば、糊抜き、洗浄、漂白、精練、および染色などの複数の処理によって白色度を達成するために、1種または複数の化学物質を使用するので、すすぎ工程はかなりの量のエネルギーおよび化学物質を消費し、環境に優しくない。一方、カレンダ加工工程またはコーティング工程では、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂をファブリックにカレンダ加工またはコーティングして、必要な白色度を達成する。ポリ塩化ビニルは安定性が乏しい「毒性プラスチック」であるため、ポリ塩化ビニルの特性を安定化するためには対応する安定剤が必要である。さらに、原料の採掘から、製造、使用、および廃棄までのポリ塩化ビニルのすべてのライフサイクル段階は、環境および人間の健康に害を及ぼす可能性がある。したがって、ポリ塩化ビニル樹脂の使用は、環境に対してとても悪影響を及ぼす可能性がある。本開示の一実施形態の担体樹脂はポリ塩化ビニル樹脂でなくてもよく、ファブリックは化学残留物を有していなくてもよい。したがって、本開示の一実施形態のファブリックは、すすぎ工程、カレンダ加工工程、またはコーティング工程で生じるような環境問題を引き起こさず、すすぎ工程などのような多数の手順を実行する必要性を回避することができる。したがって、製造工程が簡略化され、製造コストが低減される。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0021】
一部の実施形態では、本開示の一実施形態によるファブリックの製造方法の節水率は、すすぎ工程と比較して少なくとも50%超である。さらに、本開示の一実施形態によるファブリックの製造方法の節水率は、すすぎ工程と比較して少なくとも65%超であり得る。
【0022】
以下、実施例1~実施例2および比較例1~比較例2を参照して、本開示の効果をより詳細に説明する。
【0023】
〈実施例1〉
【0024】
本開示の一実施形態(糸染色工程)により製造されたファブリック(Moonlight River)を使用した。
【0025】
〈実施例2〉
【0026】
実施例1により製造したファブリックからなる内照用クロスを使用した。
【0027】
〈比較例1〉
【0028】
すすぎ工程を用いて製造したファブリック(Samba Backlit Textile)を使用した。
【0029】
〈比較例2〉
【0030】
比較例1により製造したファブリックからなる内照用クロスを使用した。
【0031】
本明細書で説明が省略されている内照用クロスの組成および仕様は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内の内容に従って当業者によって容易に理解されることに留意されたい。
【0032】
実施例1および比較例1を、ISO14046:2014に規定された試験方法を使用して分析し、結果を表1に示す。結論は以下の通りである。実施例1の節水率は、比較例1と比較して67.29%であり、本開示の一実施形態の糸染色工程により製造したファブリックを使用することで、良好な節水効果が達成できることを意味する。
【0033】
【表1】
【0034】
一部の実施形態では、本開示の一実施形態の糸染色工程により製造したファブリックは、90.7%の白色度に達し得る。この白色度は、すすぎ工程により製造したファブリックの白色度(98.2%)と同様である。SB/T 10786-2012で規定された試験方法を使用する。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0035】
実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2を紫外線(UV)露光法により試験した。結果を表2、表3、および図1に示す。結論は以下の通りである。UV露光後、すすぎ工程によって得られた白色度は、マスターバッチから得られた白色度よりも大きな変動を示し、比較例1のファブリックおよび比較例2の内照用クロスは、それぞれ本開示の実施例1のファブリックおよび実施例2の内照用クロスよりも大きな色変化を示し、これは、すすぎ工程によって得られた色は、マスターバッチ染色工程から得られた色よりも不安定であったことを意味する。さらに、特化したマスターバッチの担体は、製品の同種のプラスチックのものであり、良好な適合が達成される。加熱溶融後の顔料粒子をプラスチック製品中に良好に分散させることができる。したがって、マスターバッチは比較的良好な分散性を有する。プラスチック加工において顔料を直接使用する場合、顔料は、保管および使用中に空気と直接接触することがあり、水分を吸収して酸化することがある。マスターバッチの場合、顔料の化学的安定性を長期間維持することができるように、樹脂担体は顔料を空気および水分から隔離することができる。したがって、化学的顔料および色の安定性を維持することができる。
【0036】
また、表2および図1に示す結果によれば、UV露光後に、比較例1のファブリックおよび比較例2の内照用クロスのいずれも、本開示の実施例1および実施例2のファブリックよりも大きい色収差を示した。したがって、すすぎ工程はマスターバッチよりも低い色安定性を示した。表1の色収差は式(1)により算出し、式中、ΔL=L試料-L標準(明度収差)、Δa=a試料-a標準(赤色/緑色収差)、およびΔb=b試料-b標準(黄色/青色収差)である。
【0037】
【表2】
【0038】
【数1】
【0039】
【表3】
【0040】
一部の実施形態では、白色着色剤は、担体樹脂上に均一に接着されてもよく、担体樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂以外の任意の適切な樹脂であってもよい。さらに、白色マスターバッチは、実際の設計要件に応じて適切な添加剤を含んでもよい。
【0041】
一部の実施形態では、本開示の一実施形態のファブリックが製造された後、ファブリックは、積層工程、カレンダ加工工程、ナイフスクレイピング工程、コーティング工程、ボンディング工程、またはそれらの組合せに供され得、広告の内照用クロスに所望のスプレー塗装効果を達成する。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0042】
本開示は、上記で説明した態様に限定されず、ファブリックのパラメータ(メッシュ密度、光透過率、厚さ、カウントまたは他のファブリックパラメータなど)に限定されないことに留意されたい。糸染色工程により製造され、少なくとも90%を超える白色度を有する広告の内照用クロスに適した任意のファブリックは、本開示の範囲内に含まれる。
【0043】
要約すると、本開示の一実施形態のファブリックは、少なくとも90%を超える白色度を有するファブリックに織り込まれた糸を含み、糸は、白色マスターバッチから作製された繊維で構成される。したがって、ファブリックは、環境保護要件を満たしながら、広告効果を高める白色度を達成することができる。さらに、本開示の一実施形態の担体樹脂はポリ塩化ビニル樹脂でなくてもよく、ファブリックは化学残留物を有していなくてもよい。したがって、本開示の一実施形態のファブリックは、すすぎ工程、カレンダ加工工程、またはコーティング工程で生じるような環境問題を引き起こさず、すすぎ工程などのような多数の手順を実行する必要性を回避することができる。したがって、製造工程が簡略化され、製造コストが低減される。
上記の実施形態を参照して本開示を説明したが、これらは本開示を限定することを意図しない。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対して修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義され、上記の詳細な説明によっては定義されない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示のファブリックおよびその製造方法は、環境保護要件を満たしながら広告効果を高める白色度を有する広告の内照用クロスに適切であり得る。
【符号の説明】
【0045】
なし
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告の内照用クロスに適したファブリックの製造方法であって、
白色マスターバッチから作製された繊維で構成される糸を準備することと、
前記糸に対して糸染色工程を行い、少なくとも90%を超える白色度を有するファブリックを織ることと、
を含み、
前記白色度が、すすぎ工程によっては得られないものであり、
前記すすぎ工程で1種または複数種の化学物質が使用され、
前記ファブリックの製造方法の節水率が50%超であり、但し、前記節水率が下記の数式(1)によって計算され、
【数1】

数式(1)において、
XがISO14046:2014によって測定され、すすぎ工程で使用された水の量であり、
YがISO14046:2014によって測定され、ファブリックの製造方法で使用された水の量である、
ファブリックの製造方法。
【請求項2】
前記ファブリックの製造方法の節水率が65%超である、請求項に記載のファブリックの製造方法。
【請求項3】
前記白色度が、カレンダ加工工程またはコーティング工程によっては得られない、請求項に記載のファブリックの製造方法。
【請求項4】
前記繊維を生産することが、
担体樹脂および白色着色剤を含む前記白色マスターバッチを準備することと、
製織工程、編み工程、非編み工程またはタフティング工程を行うことと、
を含む請求項に記載のファブリックの製造方法。
【外国語明細書】