(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095749
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 123/00 20060101AFI20230629BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C09J123/00
C09J123/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112770
(22)【出願日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2021211362
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】早川 大生
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦史
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DA101
4J040DA131
4J040DA152
4J040JA06
4J040JB01
4J040LA02
4J040LA08
4J040MA10
4J040MB09
4J040NA16
(57)【要約】
【課題】 優れた性能を有するホットメルト接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】 ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)と、を含み、
前記ポリオレフィン(A)が、軟化点130℃以上のポリオレフィン(A1)と、軟化点130℃未満のポリオレフィン(A2)と、を含むこと特徴とするホットメルト接着剤組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)と、を含み、
前記ポリオレフィン(A)が、軟化点130℃以上のポリオレフィン(A1)と、軟化点130℃未満のポリオレフィン(A2)と、を含むこと特徴とするホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
前記ホットメルト接着剤組成物中の、前記ポリオレフィン(A1)の含有量をMA1、前記ポリオレフィン(A2)の含有量をMA2、前記酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量をMBとしたとき、MA2/(MA1+MB)が1.0超5.0以下である、請求項1記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン(A1)の軟化点と、前記ポリオレフィン(A2)の軟化点との差が10~50℃である、請求項1又は2記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
前記ホットメルト接着剤組成物の結晶化温度が50~130℃である、請求項1又は2記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
スプレー塗布用である、請求項1又は2記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1又は2記載のホットメルト接着剤組成物の硬化物を含む、車両用内装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、圧着後、冷却固化するのみで被着物を固定化可能であり、作業性が高いことから、種々の分野で使用されている。
【0003】
自動車内装用等に用いる積層体の製造においては、例えば、特許文献1に開示されたオレフィンホットメルト接着剤等を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術に係るホットメルト接着剤は十分な性能を満たすものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、優れた性能を有するホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を行い、特定の成分を含むホットメルト接着剤組成物が前記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は下記の通りである。
【0008】
本発明は、
ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)と、を含み、
前記ポリオレフィン(A)が、軟化点130℃以上のポリオレフィン(A1)と、軟化点130℃未満のポリオレフィン(A2)と、を含むこと特徴とするホットメルト接着剤組成物である。
【0009】
前記ホットメルト接着剤組成物中の、前記ポリオレフィン(A1)の含有量をMA1、前記ポリオレフィン(A2)の含有量をMA2、前記酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量をMBとしたとき、MA2/(MA1+MB)が1.0超5.0以下であることが好ましい。
前記ポリオレフィン(A1)の軟化点と、前記ポリオレフィン(A2)の軟化点との差が10~50℃であることが好ましい。
前記ホットメルト接着剤組成物の結晶化温度が50~130℃であることが好ましい。
前記ホットメルト接着剤組成物は、スプレー塗布用であることが好ましい。
前記ホットメルト接着剤組成物は、車両用内装部材用であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記ホットメルト接着剤組成物の硬化物を含む、車両用内装部材であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた性能を有するホットメルト接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、複数の上限値と複数の下限値とが別々に記載されている場合、これらの上限値と下限値とを自由に組み合わせて設定可能な全ての数値範囲が本明細書に記載されているものとする。
【0013】
以下において、ある化合物が記載されている場合、その異性体も同時に記載されているものとする。
【0014】
また、本発明において、特に断らない限り、数平均分子量乃至は重量平均分子量の測定方法は、ゲルパーエミッションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。
なお、ポリオレフィンは常温で溶媒に溶けにくいため、ポリオレフィン(後述するポリオレフィン(A))の数平均分子量乃至は重量平均分子量の測定については、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等を溶媒として用いて、140~150℃の高温GPCで測定することが好ましい。
【0015】
また、本発明において、軟化点は、JIS K6863:1994『ホットメルト接着剤の軟化点試験方法』に準じて測定されたものとする。更に、本発明において、融点とは、DSCにて得られた融解ピーク温度を示す。
【0016】
以下、ホットメルト接着剤組成物、ホットメルト接着剤組成物の使用方法/用途等について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0017】
<<<<ホットメルト接着剤組成物>>>>
<<<ホットメルト接着剤組成物の成分>>>
ホットメルト接着剤組成物は、ポリオレフィン(A)を含む。また、ホットメルト接着剤組成物は、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)を含むことが好ましい。また、ホットメルト接着剤組成物は、その他の成分を含んでいてもよい。以下、それぞれの成分について説明する。
【0018】
<<ポリオレフィン(A)>>
ホットメルト接着剤組成物は、ポリオレフィンベースのホットメルト接着剤組成物である。
【0019】
ポリオレフィン(A)は、比較的軟化点の高いポリオレフィンと、比較的軟化点の低いポリオレフィンと、の混合物であることが好ましい。より具体的には、ポリオレフィン(A)は、軟化点130℃以上のポリオレフィン(A1)と、軟化点130℃未満のポリオレフィン(A2)と、を含むことが好ましい。
【0020】
ポリオレフィン(A1)の軟化点は、135℃以上、140℃以上、145℃以上、150℃以上、又は、155℃以上であってもよい。また、ポリオレフィン(A1)の軟化点は、180℃未満、175℃未満、170℃未満、又は、165℃未満であってもよい。
【0021】
ポリオレフィン(A2)の軟化点は、128℃未満、125℃未満、123℃未満、又は、120℃未満であってもよい。また、ポリオレフィン(A2)の軟化点は、100℃以上、105℃以上、110℃以上、又は、115℃以上であってもよい。
【0022】
ポリオレフィン(A1)の軟化点と、ポリオレフィン(A2)の軟化点との差は、0℃超であればよいが、5℃以上、10℃以上、15℃以上、20℃以上、25℃以上、又は30℃以上であることが好ましく、また、55℃以下、50℃以下、又は、45℃以下であることが好ましい。
【0023】
ポリオレフィン(A1)の軟化点やポリオレフィン(A2)の軟化点をこのような範囲とすることで、粘度特性や高温剥離強度に優れるホットメルト接着剤組成物を得ることができる。
【0024】
ポリオレフィンの軟化点は、分子量や使用するモノマーの種類や組成比等を変更することで調整可能である。
【0025】
ホットメルト接着剤組成物中のポリオレフィン全体の含有量(ポリオレフィン(A1)とポリオレフィン(A2)との合計の含有量)は、例えば、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、又は、65質量%以上とすることができ、また、90質量%以下、85質量%以下、80質量%、又は、75質量%以下とすることができる。
る。
【0026】
ホットメルト接着剤組成物中、ポリオレフィン(A1)の含有量MA1は、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、又は、10質量%以上であることが好ましく、また、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は、20質量%以下であることが好ましい。
【0027】
ホットメルト接着剤組成物中、ポリオレフィン(A2)の含有量MA2は、0.1質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は、50質量%以上であることが好ましく、また、80質量%以下、70質量%以下、又は、60質量%以下であることが好ましい。
【0028】
ホットメルト接着剤組成物中、ポリオレフィン(A2)の含有量MA2とポリオレフィン(A1)の含有量MA1との比[MA2/MA1]は、1.0超、1.5以上、2.0以上、2.5以上、又は、3.0以上であることが好ましく、また、13.0以下、10.0以下、8.0以下、6.0以下、5.5以下、5.0以下、4.5以下、又は、4.0以下であることが好ましい。
【0029】
ポリオレフィン(A1)やポリオレフィン(A2)の含有量をこのような範囲とすることで、粘度特性や高温剥離強度に優れるホットメルト接着剤組成物を得ることができる。
【0030】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、及びこれら相互のポリマーブレンドが例示される。ポリオレフィン(A1)とポリオレフィン(A2)とは、モノマーの種類が同じであってもよいし異なっていてもよい。ポリオレフィン(A2)は、ポリブテン-1を含むことが好ましい。
【0031】
ポリオレフィンは、粘度特性等の観点から、ポリαオレフィンであることが好ましく、非晶性ポリαオレフィンであることがより好ましい。
【0032】
ポリαオレフィンとは、αオレフィンを重合させることにより得られるポリマーを示す。また、非晶性ポリαオレフィンとは、ポリαオレフィンの中でも、明確な融点を有しないものを示す。
【0033】
非晶性ポリαオレフィンは、公知のもの、例えば、特許第6001685号公報、特許第3153648号公報等に記載されたものを使用可能である。非晶性ポリαオレフィンは、例えば、プロピレン、エチレン、及び1-ブテンを単独で、又は、複数を組み合せて重合(又は共重合)させた非晶性のオレフィン系樹脂等とすることができる。
【0034】
ポリオレフィン(A1)及びポリオレフィン(A2)のいずれか一方のみが、ポリαオレフィン乃至は非晶性ポリαオレフィンであってもよいが、ポリオレフィン(A1)及びポリオレフィン(A2)が、共に、ポリαオレフィン乃至は非晶性ポリαオレフィンであることが好ましい。
【0035】
ここで、ポリオレフィン(A1)は、メタロセン触媒系ポリオレフィン(例えば、メタロセン触媒系のポリエチレン又はメタロセン触媒系のポリプロピレン)を含むことが好ましい。なお、メタロセン触媒系ポリオレフィンとは、メタロセン触媒を用いて合成されたポリオレフィンを示す。メタロセン触媒系ポリオレフィンは、低分子量成分や低結晶成分の析出が抑制されることから、剥離強度等に優れたホットメルト接着剤組成物を得ることができる。メタロセン触媒系ポリオレフィンを構成するモノマーは、前述のもの等を使用することができる。
【0036】
メタロセン触媒系ポリオレフィンの合成に使用されるメタロセン触媒は公知の触媒である。メタロセン触媒としては、例えば、二塩化ジルコノセン等シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する化合物であり、第IV族元素(例えば、ジルコニウム)等を中心金属として含む金属化合物(例えば、二塩化ジルコノセン)と、有機アルミニウム(例えば、メチルアルミノキサン)等の活性化剤と、を組み合わせた触媒が挙げられる。
【0037】
ポリオレフィン(A1)は、メタロセン触媒系ポリオレフィンと、メタロセン触媒系ポリオレフィン以外のポリオレフィンと、を含んでいてもよい。
【0038】
ポリオレフィン(A1)がメタロセン触媒系ポリオレフィンを含む場合、メタロセン触媒系ポリオレフィンは、ポリオレフィン(A1)全量を100質量部とした場合に、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、90質量部以上、95質量部以上、又は、99質量部以上とすることができる。
【0039】
別の観点では、ポリオレフィン(A1)がメタロセン触媒系ポリオレフィンを含む場合、メタロセン触媒系ポリオレフィンは、ポリオレフィン(A)全量を100質量部とした場合に、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、又は、20質量部以上とすることができ、また、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、又は、50質量部以下とすることができる。
【0040】
ポリオレフィン(ポリオレフィン(A1)及びポリオレフィン(A2))の重量平均分子量は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて特に限定されないが、例えば、10,000~500,000、10,000~200,000、15,000~150,000、又は、20,000~100,000であることが好ましい。ポリオレフィンの重量平均分子量をこのようは範囲とすることで、粘度特性等に優れたホットメルト接着剤組成物とすることができる。
なお、粘度特性等と剥離強度等とをバランスよく高めるという観点では、ポリオレフィン(特に、ポリオレフィン(A1))の高温GPC測定による重量平均分子量は、10,000以上、30,000以上、50,000以上、100,000以上、150,000以上、又は、200,000以上であることが好ましい。ポリオレフィン(特に、ポリオレフィン(A1))の高温GPC測定による重量平均分子量の上限は、例えば、500,000以下、450,000以下、又は、400,000以下である。
【0041】
ここで、ポリオレフィン(A)は、引張強度が1.0MPa以上、又は、2.5MPa以上のポリオレフィンを含むことが好ましい。このような引張強度を有するポリオレフィンの含有量は、ポリオレフィン(A)全量を100質量部とした場合に、10質量部以上、25質量部以上、50質量部以上、75質量部以上、90質量部以上、又は、95質量部以上とすることができる。このようなポリオレフィン(A)を用いることで、剥離強度等に優れたホットメルト接着剤組成物とすることができる。
【0042】
別の観点では、ポリオレフィン(A)は、引張強度が5.0MPa以上、又は、6.0MPa以上のポリオレフィンを含むことが好ましい。このような引張強度を有するポリオレフィンの含有量は、ポリオレフィン(A)全量を100質量部とした場合に、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、又は、70質量部以上とすることができる。このようなポリオレフィン(A)を用いることで、剥離強度等に優れたホットメルト接着剤組成物とすることができる。
【0043】
更に別の観点では、ポリオレフィン(A)は、引張強度が10MPa以上、又は、15MPa以上のポリオレフィンを含むことが好ましい。このような引張強度を有するポリオレフィンの含有量は、ポリオレフィン(A)全量を100質量部とした場合に、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、又は、20質量部以上とすることができ、また、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、又は、50質量部以下とすることができる。このようなポリオレフィン(A)を用いることで、剥離強度等に優れたホットメルト接着剤組成物とすることができる。
【0044】
ポリオレフィンの引張強度の上限値は特に限定されないが、例えば、50MPa以下、30MPa以下、25MPa以下、又は、20MPa以下である。
【0045】
具体的な例として、ポリオレフィン(A1)がメタロセン触媒系ポリオレフィンを含む場合、メタロセン触媒系ポリオレフィンの引張強度は、5.0MPa以上、10MPa以上、又は、15MPa以上であることが好ましく、また、50MPa以下、30MPa以下、25MPa以下、又は、20MPa以下であることが好ましい。
【0046】
ポリオレフィンの引張強度は、ポリオレフィンを用いてASTM 1号試験片を作製し、当該試験片について、ASTM D638に従って引張速度5mm/minの試験条件で引張試験を実施して測定された値とする。
【0047】
<<酸変性ポリプロピレン>>
酸変性ポリプロピレンとは、ポリプロピレンに、不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフト重合させたものである。
【0048】
酸変性ポリプロピレンと、前述したポリオレフィンとを併用することにより、十分なオープンタイムを有し、高温での剥離強度等に優れたホットメルト接着剤組成物とすることができる。
【0049】
不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸モノエチルエステル等が挙げられる。
【0050】
酸変性ポリプロピレンは、高温剥離強度や塗工時の濡れ性を高めるという観点から、マレイン酸変性ポリプロピレン又は無水マレイン酸変性ポリプロピレンであることが好ましく、マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
【0051】
酸変性ポリプロピレンは、酸価が1.0~100mgKOH/gを満たすか、又は、酸含有量が0.5~10wt%を満たすことが好ましい。別の観点では、酸変性ポリプロピレンの酸価は、1.0~50mgKOH/g、又は、1.0~25mgKOH/gであることが好ましい。
酸価は、JIS K 0070に準拠して測定することができる。
【0052】
酸変性ポリプロピレンの融点は、例えば、60~180℃、又は、70~170℃とすることができる。別の観点では、酸変性ポリプロピレンの融点は、80~160℃、又は、100~150℃であることが好ましい。
【0053】
酸変性ポリプロピレンの重量平均分子量は、例えば、5,000~200,000、7,500~100,000とすることができる。別の観点では、酸変性ポリプロピレンの重量平均分子量は、7,500~75,000であることが好ましい。
【0054】
ホットメルト接着剤組成物中、酸変性ポリプロピレンの含有量MBは、0.1質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、又は、3質量%以上であることが好ましく、また、20質量%以下、15質量%以下、又は、12質量%以下であることが好ましい。
【0055】
ホットメルト接着剤組成物中、MA2/(MA1+MB)が、1.0超、1.1以上、1.2以上、1.5以上、又は、2.0以上であることが好ましく、また、10.0以下、8.0以下、6.0以下、5.0以下、4.0以下、又は、3.0以下であることが好ましい。このような範囲とすることで、オープンタイムを適切なものとしつつも粘度特性や高温剥離強度等をバランスよく高めることができる。
【0056】
<<その他の成分>>
本発明のホットメルト接着剤組成物は、前述した成分以外に、必要に応じてその他の成分(例えば、各種の添加剤)を含有することができる。添加剤としては、例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤、顔料、染料、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、光安定剤、安定剤、分散剤、溶剤等が挙げられる。
【0057】
その他の成分として粘着付与剤を含む場合、粘着付与剤は、天然樹脂系であってもよいが、石油樹脂(炭化水素樹脂)、水素添加(水添)石油樹脂(炭化水素樹脂)、スチレン系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等の合成樹脂であることが好ましい。また、粘着付与剤は、(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂、(水添)芳香族系(C9系)石油樹脂、(水添)共重合系(C5/C9系)石油樹脂、(水添)ジシクロペンタジエン系石油樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂等の(水添)石油樹脂であることが好ましく、(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂であることが特に好ましい。
【0058】
ホットメルト接着剤組成物中、粘着付与剤の含有量は、5~40質量%、10~35質量%、又は、15~30質量%とすることができる。
【0059】
<<<ホットメルト接着剤組成物の物性>>>
ホットメルト接着剤組成物の200℃における溶融粘度は、30,000mPa・s以下、25,000mPa・s以下、20,000mPa・s以下、10,000mPa・s以下、8,000mPa・s以下、6,000mPa・s以下、5,000mPa・s以下、又は、4,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0060】
ホットメルト接着剤組成物の180℃における溶融粘度は、75,000mPa・s以下、50,000mPa・s以下、30,000mPa・s以下、20,000mPa・s以下、15,000mPa・s以下、10,000mPa・s以下、8,000mPa・s以下、又は、6,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0061】
ホットメルト接着剤組成物の160℃における溶融粘度は、150,000mPa・s以下、100,000mPa・s以下、60,000mPa・s以下、40,000mPa・s以下、30,000mPa・s以下、15,000mPa・s以下、12,000mPa・s以下、又は、11,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0062】
溶融粘度は、所定の温度に加温されたホットメルト接着剤組成物について、平行平板レオメータを用い、振り角10%、角周波数1rad/sの条件で測定したものとする。
【0063】
ホットメルト接着剤組成物の結晶化温度は、40~135℃、50~130℃、又は、60~125℃であることが好ましい。このような範囲とすることで、オープンタイムを適切なものとしつつも粘度特性や高温剥離強度等をバランスよく高めることができる。
【0064】
結晶化温度は、JIS-K7121に準じて測定したものとする。
【0065】
<<<ホットメルト接着剤組成物の製造方法>>>
ホットメルト接着剤組成物は、公知の方法により製造可能である。例えば、一軸又は二軸押出機等の連続混練機、もしくは、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、高剪断Z翼ミキサー等のバッチ式混練機に、前述した原料を投入し、所定時間混練すればよい。
【0066】
<<<<ホットメルト接着剤組成物の使用方法/用途>>>>
ホットメルト接着剤組成物は、従来公知の種々の使用方法を適用することができる。以下では、ホットメルト接着剤組成物をスプレー塗布用とした場合について説明するが、ホットメルト接着剤組成物の使用方法はこれには限定されず、公知の方法により接着対象面に塗布されてもよい。
【0067】
先ず、ホットメルト接着剤組成物を溶融した状態で保持する(溶融工程)。
【0068】
次に、溶融状態であるホットメルト接着剤組成物を、接着対象面の少なくとも一方に、所望の塗布量となるようにスプレー塗布する(塗布工程)。スプレー方法としては、公知の方法、例えば、カーテンスプレー、オメガスプレー、スパイラルスプレー、サミットスプレー等を適用可能である。
【0069】
塗布工程後、一方の接着対象面に他方の接着対象面を押し付けた状態で維持し、ホットメルト接着剤組成物を冷却固化させる(固化工程)。
【0070】
なお、塗布工程の前に、接着対象面に公知の表面処理を行ってもよい。
【0071】
本形態に係るホットメルト接着剤組成物は、優れた性能を有することから、種々の用途に使用できる。特に、優れた粘度特性や高温剥離強度、十分なオープンタイム等を有し、スプレー塗布が可能であるため、接着対象の形状を問わずに適用可能である。また、本形態に係るホットメルト接着剤組成物は、PEやPP等のオレフィン部材用の接着剤(オレフィン部材同士の貼り合わせ、及び、オレフィン部材とオレフィン以外の材料の部材との貼り合わせに使用される接着剤)に特に適する。換言すれば、本形態に係るホットメルト接着剤組成物は、ホットメルト接着剤組成物の硬化物である接着層を含む積層体(例えば、PEやPP等のオレフィン部材を含む積層体)を製造する用途に適する。この場合、オレフィン部材と積層させる部材の素材は、天然素材及び人工素材並びにこれらの複合素材のいずれであってもよく、本革、人工皮革、ファブリック素材等を幅広く使用可能である。
【0072】
本形態に係るホットメルト接着剤組成物は、例えば、飛行機、船、車両(自動車、鉄道車両)等の乗物における内装部材用(内装部材固定用)として好適に使用可能であり、車両用内装部材用として特に好適に使用可能である。車両用内装部材用としては、より具体的には、自動車内装部材(インパネ、ピラー、ドアトリム等)の表皮固定用とすることができる。
【0073】
本形態に係るホットメルト接着剤組成物の硬化物を含む部材(例えば、本形態に係るホットメルト接着剤組成物の硬化物を接着層として含む積層体乃至は車両用内装部材)は、安定して優れた剥離強度(特に、優れた高温剥離強度)を発揮し易い。
【0074】
<<<本形態に係るホットメルト接着剤組成物の好ましい形態>>>
第1の好ましい形態に係るホットメルト接着剤組成物は、
非晶性ポリαオレフィン(A)と、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)と、を含み、
非晶性ポリαオレフィン(A)が、軟化点130℃以上の非晶性ポリαオレフィン(A1)と、軟化点130℃未満の非晶性ポリαオレフィン(A2)と、を含むホットメルト接着剤組成物である。
また、ホットメルト接着剤組成物中、非晶性ポリαオレフィン(A1)の含有量をMA1、非晶性ポリαオレフィン(A2)の含有量をMA2、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の含有量をMBとしたとき、MA2/(MA1+MB)が1.0超5.0以下であることが好ましい。
更に、非晶性ポリαオレフィン(A1)の軟化点と、非晶性ポリαオレフィン(A2)の軟化点との差が10~50℃であることが好ましい。
【0075】
また、第1の好ましい形態に係るホットメルト接着剤組成物は、
軟化点130℃以上の非晶性ポリαオレフィン(A1)と、軟化点130℃未満の非晶性ポリαオレフィン(A2)と、を含む、スプレー塗布用のホットメルト接着剤組成物であってもよい。
【0076】
第2の好ましい形態に係るホットメルト接着剤組成物は、
ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)と、を含み、
オレフィン(A)が、軟化点130℃以上のポリオレフィン(A1)と、軟化点130℃未満のポリオレフィン(A2)とを含み、
ポリオレフィン(A1)は、メタロセン触媒系ポリオレフィンを含む。
ポリオレフィン(A1)は、引張強度が10MPa以上であることが好ましい。
ポリオレフィン(A2)は、非晶性ポリαオレフィン(A2)であることが好ましい。
ホットメルト接着剤組成物中、ポリオレフィン(A1)の含有量をMA1、ポリオレフィン(A2)の含有量をMA2、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の含有量をMBとしたとき、MA2/(MA1+MB)が1.0超5.0以下であることが好ましい。
ポリオレフィン(A1)の軟化点と、ポリオレフィン(A2)の軟化点との差が10~50℃であることが好ましい。
ホットメルト接着剤組成物は、スプレー塗布用であることが好ましい。
【実施例0077】
以下、実施例により、本発明のホットメルト接着剤組成物を具体的に説明するが、本発明はこれらには限定されない。
【0078】
<<ホットメルト接着剤組成物の製造>>
表に記載した通りの原料を準備し、全ての原料をミキサーに投入し、180℃で20分混練して、各実施例及び各比較例にかかるホットメルト接着剤組成物を得た。
表中、タフマーPN20300(三井化学社製)は、メタロセン触媒系のポリオレフィンである。
表中、VESTOPLAST807の高温GPC測定による重量平均分子量は62,000であり、タフマーPN20300の高温GPC測定による重量平均分子量は252,000であった。
【0079】
<<分析/評価>>
<溶融粘度、結晶化温度>
前述した方法に従って、ホットメルト接着剤組成物の溶融粘度及び結晶化温度を測定した。
【0080】
<剥離強度>
以下に示す方法に従って、剥離強度を測定した。
ファブリック等で構成された表皮及びPP樹脂を被着体とする。
ファブリック等で構成された表皮を塗布面とする。
100×25mm角の表皮に塗布量55g/m2を目標に、溶融状態のホットメルト接着剤(180℃)をスプレー塗布する。
塗布してから30s又は60s経過後、PP樹脂と表皮とを貼り合わせる(圧着:500g×10sec)。
得られた積層体を24h、23℃で湿度50%の恒温恒湿部屋に放置する。
放置後、オートグラフにて剥離試験(環境温度:90℃、引張速度:200mm/min)を実施する。
各ホットメルト接着剤は、30s経過後及び60s経過後の剥離強度が0.5N以上であることから、ある程度実用的な高温剥離強度を有すると考えられるが、60s経過後の剥離強度が1.0N超であるホットメルト接着剤、又は、30s経過後及び60s経過後の剥離強度が1.0N超乃至は1.5N以上である各実施例に係るホットメルト接着剤は、十分なオープンタイムを有し、安定して優れた高温剥離強度を有すると考えられる。
また、60s経過後の剥離強度が3.5超乃至は4.0以上であるホットメルト接着剤は、顕著に優れた高温剥離強度を有すると考えられる。
【0081】
【0082】