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特開2023-95765ハイブリッド型電解コンデンサ用電解液及び前記電解液を用いたハイブリッド型電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095765
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ハイブリッド型電解コンデンサ用電解液及び前記電解液を用いたハイブリッド型電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20230629BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20230629BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20230629BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/15
H01G9/145
H01G9/028 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167979
(22)【出願日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021210975
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内橋 賢吾
(57)【要約】
【課題】高温環境下でのESRの上昇を抑制できるハイブリッド型電解コンデンサ用電解液を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるカルボン酸アニオン(A)と溶媒(B)を含み、溶媒(B)が、数平均分子量200以上20000以下のポリアルキレングリコール(b)を少なくとも含むハイブリッド型電解コンデンサ用電解液。
【化1】
[R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~5のアシル基、炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基又は炭素数2~4の不飽和脂肪族炭化水素基。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるカルボン酸アニオン(A)と溶媒(B)とを含み、溶媒(B)が、数平均分子量200以上20000以下のポリアルキレングリコール(b)を少なくとも含むハイブリッド型電解コンデンサ用電解液。
【化1】
[R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~5のアシル基、炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基又は炭素数2~4の不飽和脂肪族炭化水素基。]
【請求項2】
前記カルボン酸アニオン(A)が2,5-フランジカルボン酸アニオンである請求項1に記載のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液。
【請求項3】
前記カルボン酸アニオン(A)とポリアルキレングリコール(b)の重量比(b)/(A)が0.5~1000である請求項1に記載のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液。
【請求項4】
表面に誘電体層を有する陽極箔と、この陽極箔の誘電体層に接触した固体電解質(C)の層とを有するコンデンサ素子から形成されるハイブリッド型電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子には請求項1~3いずれか1項に記載のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液が含侵されており、前記固体電解質(C)が導電性高分子を含むハイブリッド型電解コンデンサ。
【請求項5】
前記導電性高分子がチオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、アルキル化エチレンジオキシチオフェン、アルコキシ化エチレンジオキシチオフェン、ピロール及びアニリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を構成単量体とする(共)重合体である請求項4に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド型電解コンデンサ用電解液及び前記電解液を用いたハイブリッド型電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド型電解コンデンサは、様々な電気製品及び電子製品において広く用いられており、その用途は電荷の蓄積、ノイズの除去及び位相の調整等多岐に渡っている。近年車載用途での使用が多くなっており、大電流化に対応した初期の等価直列抵抗(以下ESRと略称する)の低減や高温環境でのESRの上昇(悪化)抑制のニーズが高まっており、様々な改良が試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1では芳香族カルボン酸や脂肪族カルボン酸を電解液のアニオンとして使用することにより、大電流化に対応した初期のESRの低減や高温環境でのESRの上昇を防ぐ技術が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1及び2に記載の電解コンデンサでは、初期のESRは低減できるものの、高温環境でのESRの上昇を抑制する効果は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/119047号
【特許文献2】特開2017-38010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高温環境下でのESRの上昇を抑制できるハイブリッド型電解コンデンサ用電解液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、下記一般式(1)で表されるカルボン酸アニオン(A)と溶媒(B)とを含み、溶媒(B)が、数平均分子量200以上20000以下のポリアルキレングリコール(b)を少なくとも含むハイブリッド型電解コンデンサ用電解液である。
【0008】
【化1】
【発明の効果】
【0009】
本発明の電解コンデンサ用電解液を用いた電解コンデンサは、高温環境下でESRの上昇を抑制するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液は、下記一般式(1)で表されるカルボン酸アニオン(A)と溶媒(B)とを含む。
【0011】
【化2】
[R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~5のアシル基、炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基又は炭素数2~4の不飽和脂肪族炭化水素基]
【0012】
前記カルボン酸アニオン(A)は、一般式(1)で表されるフラン骨格を有するジカルボン酸アニオンである。
【0013】
一般式(1)におけるR及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~5のアシル基、炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基又は炭素数2~4の不飽和脂肪族炭化水素基である。炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~5のアシル基、炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基及び炭素数2~4の不飽和脂肪族炭化水素基は、置換基を含んでいてもよい。ここで、置換基とは、水酸基、アルコキシ基、アシル基及びハロゲン原子である。
炭素数1~4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基及びt-ブトキシ基が挙げられる。
炭素数2~5のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、n-ペンタノイル基及びt-ペンタノイル基が挙げられる。
炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基及びt-ブチル基が挙げられる。
炭素数2~4の不飽和脂肪族炭化水素基としては、エテニル基、プロペニル基及びブテニル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられる。
【0014】
前記カルボン酸アニオン(A)としては、ESRの上昇抑制の観点から、好ましくは2,5-フランジカルボン酸アニオン、3,4-ジヒドロキシ-2,5-フランジカルボン酸アニオン及び3,4-ジメトキシ-2,5-フランジカルボン酸アニオンであり、更に好ましくは2,5-フランジカルボン酸アニオンである。
【0015】
本発明のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液は、前記カルボン酸アニオン(A)以外に酸アニオン(A’)を含んでもよい。酸アニオン(A’)としては、カルボン酸(フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、安息香酸、2-フランカルボン酸)、リン酸(リン酸、ジ亜リン酸、リン酸エステル)及びホウ酸(ホウ酸、ホウ酸エステル、ボロジサリチル酸)等の酸アニオンが挙げられる。
これらの酸アニオン(A’)の内、ESRの上昇抑制の観点から好ましくは、カルボン酸アニオンであり、更に好ましくはフタル酸アニオン及び2-フランカルボン酸アニオンであり、特に好ましくはフタル酸アニオンである。
これらの酸アニオン(A’)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記のアニオンの対カチオンとしては、アンモニウム、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム及びアミジニウムが挙げられる。1級アンモニウム、2級アンモニウム及び3級アンモニウムとしては、1級アミン、2級アミン及び3級アミンから生成されるアンモニウムが挙げられ、これらのアミンとして、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンタジン、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエタノールアミン等が挙げられる。アミジニウムとしては、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジイソプロピルイミダゾリウム、1,3-ジブチルイミダゾリウム、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム及び1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
前記のアニオンの対カチオンとしては、ESRの上昇抑制の観点から、好ましくはアンモニウム、第一級アンモニウム及び第三級アンモニウムであり、更に好ましくは第三級アンモニウムである。
【0018】
本発明における溶剤(B)は、数平均分子量200以上20000以下のポリアルキレングリコール(b)を少なくとも含む。
数平均分子量200以上20000以下のポリアルキレングリコール(b)としては、オキシアルキレン繰り返し単位のアルキレンの炭素数が2~6であるポリアルキレングリコールが挙げられる。
数平均分子量200以上20000以下のポリアルキレングリコール(b)のうち、好ましくは数平均分子量200以上20000以下の、オキシアルキレン繰り返し単位のアルキレンの炭素数が2~4であるポリアルキレングリコールであり、更に好ましくは数平均分子量200以上20000以下のポリエチレングリコール及び数平均分子量200以上20000以下のポリプロピレングリコールである。
溶剤(B)が数平均分子量200以上20000以下のポリアルキレングリコール(b)を含まない場合には、ESR上昇抑制又は含浸性に問題がある場合がある。
【0019】
ポリアルキレングリコール(b)の数平均分子量は、ESR上昇抑制及び含浸性の観点から好ましくは200~1500であり、更に好ましくは300~1000である。
前記ポリアルキレングリコール(b)の数平均分子量(以下、Mnと略記する場合がある)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリエチレングリコール換算の値である。なお、GPCの測定条件を以下に示す。
【0020】
装置(一例) :東ソー(株)製HLC-8120
カラム(一例):TSKgel G2500PWXL 2本〔東ソー(株)製〕
測定温度: 40℃
試料溶液: 水/メタノール(体積比8/2)
溶液注入量: 100μl
検出装置: 屈折率検出器
基準物質: 東ソー(株)製標準ポリエチレングリコール(EASiVial PEG)12点(重量平均分子量: 106 194 282 400 600 1000 1500 4000 7000 13000 20000 30000)
【0021】
本発明における溶剤(B)は前記ポリアルキレングリコール(b)以外の溶剤を含んでもよく、その他の溶剤としては、アルコール溶剤[メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリン等]、アミド溶剤(N-メチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド及びN,N-ジメチルホルムアミド等)、ラクトン溶剤(α-アセチル-γ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びδ-バレロラクトン等)、ニトリル溶剤(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル及びベンゾニトリル等)、スルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド及びジエチルスルホキシド)及びスルホン溶剤(スルホラン及びエチルメチルスルホン等)等が挙げられる。
前記その他の溶剤のうち、ESRの上昇抑制の観点から好ましくは、アルコール溶剤及びラクトン溶剤であり、更に好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリンであり、特に好ましくはエチレングリコールである。
これらの溶剤(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液において、高温環境下でESRの上昇抑制及び溶解性の観点からハイブリッド型電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する前記カルボン酸アニオン(A)の重量割合は、好ましくは0.05~40重量%であり、更に好ましくは1~30重量%であり、特に好ましくは1~20重量%である。
ハイブリッド型電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する前記の溶剤(B)の重量割合は、高温環境下でESRの上昇抑制の観点から、好ましくは1~99.5重量%であり、更に好ましくは10~70重量%、特に好ましくは20~50重量%である。
【0023】
本発明のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液において、カルボン酸アニオン(A)とポリアルキレングリコール(b)の重量比(b)/(A)は、高温環境下でESRの上昇抑制及び初期ESRの観点から、好ましくは0.5~1000であり、更に好ましくは、1~100であり、特に好ましくは1~20である。
【0024】
本発明のハイブリッド型電解コンデンサは、表面に誘電体層を有する陽極箔と、この陽極箔の誘電体層に接触した固体電解質(C)の層とを有するコンデンサ素子から形成される。
【0025】
本発明において、固体電解質(C)は導電性高分子を含む。
導電性高分子としては、チオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、アルキル化エチレンジオキシチオフェン、アルコキシ化エチレンジオキシチオフェン、ピロール及びアニリン等を構成単量体とする(共)重合体が挙げられる。
導電性高分子は、1種でも、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のハイブリッド型電解コンデンサは、表面に誘電体層を有する陽極箔と、この陽極箔の誘電体層に接触した固体電解質(C)の層とを有するコンデンサ素子から形成されるハイブリッド型電解コンデンサである。
前記コンデンサ素子には前記ハイブリッド型電解コンデンサ用電解液が含侵されており、前記固体電解質(C)が導電性高分子を含む。
コンデンサ素子と一対のリード線と外装体とを有する。一対のリード線はそれぞれ、コンデンサ素子に接続されている。外装体はリード線を他方の端部を外部に導出するようにして、コンデンサ素子を封入している。
外装体は、筒状のケースと、封口体とで構成されており、このケースには電解液を含浸したコンデンサ素子を収納し、封口体にはリード線をそれぞれ挿通させる貫通孔に通し、ケースの外周面に設けた絞り加工部で圧縮することによって封止する。
【0027】
陽極箔はアルミニウム箔をエッジング処理により、粗面化し、さらにその表面に誘電体である陽極酸化皮膜を化成処理によって形成され、表面に誘電体層を有する陽極箔となる。
コンデンサ素子は陽極箔以外にさらに、陰極箔とセパレータも有するが、陽極箔と陰極箔とセパレータを積層して巻回することでコンデンサ素子が構成される。そして、陽極箔と陰極箔との間に導電性高分子を含む固体電解質(C)の層を作成する。作成方法としては、導電性高分子溶液に含浸させ、その後乾燥させる方法や、導電性高分子を電解重合させるなどの方法がある。
以上のように形成されたコンデンサ素子内に形成された固体電解質(C)の隙間に電解液が入り込み、ハイブリッド型電解コンデンサが作成される。
【0028】
ハイブリッド型電解コンデンサとしては、前記電解コンデンサ用電解液を含んでいればよく、形状及び大きさ等は限定されない。本発明のハイブリッド型電解コンデンサとしては、例えば、捲き取り形の電解コンデンサであって、陽極表面に酸化アルミニウムが形成された陽極(酸化アルミニウム箔)と陰極アルミニウム箔との間に、セパレータを介在させて捲回することにより構成されたコンデンサが挙げられる。
例えば、本発明の電解コンデンサ用電解液を駆動用電解液としてセパレータ(クラフト紙及びマニラ紙等)に含浸し、陽陰極と共に、有底筒状のアルミニウムケースに収納した後、アルミニウムケースの開口部を封口ゴム(ブチルゴム及びシリコーンゴム等)で密閉することで得ることができる。
【0029】
本発明のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液を用いたハイブリッド型電解コンデンサは、初期のESRを低減できる点で優れるだけでなく、高温時のESRの上昇を抑制できる点で優れている。高温時のESRの上昇を抑制できるメカニズムとしては以下のことが推定される。
従来のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液の性能劣化(ESR維持率の低下等)は、固体電解質を構成する導電性高分子の酸化劣化及び脱ドープ等が原因であると考えられる。
ここで、本発明のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液は、カルボン酸アニオン(A)のフラン骨格上の酸素原子が、前記の電解質に作用することによって、前記電解質の性能劣化の原因となる酸化劣化及び脱ドープ等を抑制できていることが考えられる。
【0030】
<その他>
本発明は、以下の構成を含んでもよい。
<1>下記一般式(1)で表されるカルボン酸アニオン(A)と溶媒(B)とを含み、溶媒(B)が、数平均分子量200以上20000以下のポリアルキレングリコール(b)を少なくとも含むハイブリッド型電解コンデンサ用電解液。
【0031】
【化3】
[R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~5のアシル基、炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基又は炭素数2~4の不飽和脂肪族炭化水素基。]
<2>前記カルボン酸アニオン(A)が2,5-フランジカルボン酸アニオンである<1>記載のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液。
<3>前記カルボン酸アニオン(A)とポリアルキレングリコール(b)の重量比(b)/(A)が0.5~1000である<1>又は<2>記載のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液。
<4>表面に誘電体層を有する陽極箔と、この陽極箔の誘電体層に接触した固体電解質(C)の層とを有するコンデンサ素子から形成されるハイブリッド型電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子には<1>~<3>いずれか1項に記載のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液が含侵されており、前記固体電解質(C)が導電性高分子を含むハイブリッド型電解コンデンサ。
<5>前記導電性高分子がチオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、アルキル化エチレンジオキシチオフェン、アルコキシ化エチレンジオキシチオフェン、ピロール及びアニリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を構成単量体とする(共)重合体である<4>に記載の電解コンデンサ。
【実施例0032】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
<ハイブリッド型コンデンサ用電解液の調製>
表1に記載の重量部数の組成で混合しハイブリッド型コンデンサ用電解液(X-1)~(X-13)及び比較のハイブリッド型コンデンサ用電解液(X’-1)~(X’-5)を調製した。
【0034】
【表1】
【0035】
<ハイブリッド型電解コンデンサの作製>
誘電体層を有する陽極箔(化成済みアルミ箔:JCC社製、115HC9‐323Vf)と陰極箔(未化成アルミ箔:JCC社製、80LJ11B)に電極用タブを接続し、セパレータとしてクラフト紙を介して対向させ素子を得た。切断面や欠損部を修復するためホウ酸アンモニウム水溶液中で前記素子に250Vの電圧で修復化成を行い、コンデンサ素子(理論容量:30.0μF)を得た。
次にPEDOT/PSS水分散液(3,4-エチレンジオキシチオフェンを構成単量体とする重合体とポリスチレンスルホン酸を含む)(へレウス社製:CleviosPH500)にコンデンサ素子を1分間真空含浸(真空度:20mmHg)し、150℃で30分間乾燥させ、誘電体層表面に固体電解質層を形成した。
続いて表1に記載の実施例及び比較例のハイブリッド型コンデンサ用電解液をそれぞれに50℃で1分間真空(真空度:20mmHg)含浸した。
最後に固体電解質層を有し、電解液を含侵したコンデンサ素子をケースに格納し、カシメを行うことで、実施例及び比較例のハイブリッド型電解コンデンサを得た。
【0036】
実施例及び比較例で得たハイブリッド型電解コンデンサについて、高温試験前(初期)の「等価直列抵抗(ESR)」及び「容量」を下記方法で評価した。結果を表2に示す。
<ESR>
ハイブリッド型電解コンデンサについて、100kHzにおけるESR値を、LCRメーター(日置電機製LCRハイテスタ3532-50)を用いて測定した。
ESR値が低い程、動作の安定性に優れるコンデンサであることを示す。
<容量>
ハイブリッド型電解コンデンサについて、120Hzにおける容量を、LCRメーター(日置電機製LCRハイテスタ3532-50)を用いて測定した。
<高温試験後の評価>
ハイブリッド型コンデンサを125℃、500時間、恒温槽に放置した後に、初期評価と同様の評価を行った。高温試験後の静電容量を初期の静電容量で除して100をかけて静電容量維持率を求めた。高温試験後のESR値を初期のESR値で除して100をかけてESR維持率を求めた。
静電容量維持率(%)=[高温試験後の静電容量(μF)]/[初期の静電容量(μF)]×100
ESR維持率(%)=[高温試験後のESR値(Ω)]/[初期のESR値(Ω)]×100
【0037】
【表2】
【0038】
本発明の実施例のハイブリッド型コンデンサは、初期特性も良好であり、高温試験後でも良好な結果となった。
一方、比較例のハイブリッド型コンデンサは、数平均分子量200以上20000以下のポリアルキレングリコール(b)が含まれないため、又は、カルボン酸アニオン(A)が含まれないため、導電性高分子の劣化を抑制できず、高温試験後にESRの上昇及び静電容量の低下が大きい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液を用いたハイブリッド型電解コンデンサは、高温環境下でESRの上昇を抑制するため、大電流化に対応した電気製品及び電子製品の部品として好適に使用できる。
本発明のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液は、外気温の影響を受け、かつ、駆動時に高温になりやすいノートパソコン等のモバイル用途、特に車載用途のハイブリッド型電解コンデンサ用電解液として好適である。