IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 廣東生益科技股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特開2023-95793低誘電損失不織布、その製造、およびその使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095793
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】低誘電損失不織布、その製造、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4209 20120101AFI20230629BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20230629BHJP
   C03C 25/1095 20180101ALI20230629BHJP
   C03C 25/30 20180101ALI20230629BHJP
   C03C 25/26 20180101ALI20230629BHJP
   D04H 1/4218 20120101ALI20230629BHJP
   D04H 1/587 20120101ALI20230629BHJP
   D21H 13/36 20060101ALI20230629BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
D04H1/4209
C08J5/04 CEW
C03C25/1095
C03C25/30
C03C25/26
D04H1/4218
D04H1/587
D21H13/36
H05K1/03 610T
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191883
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】202111598907.9
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】514309583
【氏名又は名称】廣東生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁 偉
(72)【発明者】
【氏名】柴 頌剛
(72)【発明者】
【氏名】劉 潜発
(72)【発明者】
【氏名】▲カク▼ 良鵬
【テーマコード(参考)】
4F072
4G060
4L047
4L055
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA04
4F072AB09
4F072AB29
4F072AB31
4F072AC08
4F072AD07
4F072AG03
4F072AG17
4F072AG19
4F072AH03
4F072AH31
4F072AJ15
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL13
4G060BA05
4G060BB02
4G060BC01
4G060BD15
4G060CB02
4L047AA01
4L047AA05
4L047AB07
4L047BA12
4L047BA21
4L047BC03
4L047BC14
4L047CA19
4L047CC13
4L047CC14
4L055AF01
4L055AF04
4L055AG58
4L055AG63
4L055AG69
4L055AG76
4L055AG85
4L055AG88
4L055AG89
4L055AG97
4L055AH37
4L055BE11
4L055EA08
4L055EA16
4L055EA32
4L055GA38
(57)【要約】
【課題】本発明は、無機繊維および接着剤からなる低誘電損失不織布、その製造およびその使用を提供する。
【解決手段】前記接着剤は、含フッ素樹脂エマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ポリフェニレンエーテル樹脂またはシアネート樹脂のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。本発明に係る不織布は、誘電性能が良く、補強効果が著しく、高周波通信分野における銅張板材料の様々な性能に対する要求を満たすことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維および接着剤からなる低誘電損失不織布であって、
前記接着剤は、含フッ素樹脂エマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ポリフェニレンエーテル樹脂またはシアネート樹脂のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せである、ことを特徴とする低誘電損失不織布。
【請求項2】
前記低誘電損失不織布のうち、無機繊維の重量%が60~95%であり、接着剤の重量%が5%~40%である、ことを特徴とする請求項1に記載の低誘電損失不織布。
【請求項3】
前記接着剤は、含フッ素樹脂エマルジョンであり、
好ましくは、前記含フッ素樹脂エマルジョンは、ポリパーフルオロエチレンプロピレンエマルジョン、ポリフッ化ビニリデンエマルジョン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体エマルジョン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体エマルジョン、ポリクロロトリフルオロエチレンエマルジョンまたはエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体エマルジョンから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せであり、
好ましくは、前記含フッ素樹脂エマルジョンの固形分が30~70%であり、
好ましくは、前記含フッ素樹脂エマルジョンのうち、含フッ素樹脂の粒径が0.10μm~0.40μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の低誘電損失不織布。
【請求項4】
前記ポリオレフィンエマルジョンは、不飽和ポリブタジエン樹脂エマルジョン、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体エマルジョン、水添スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体エマルジョンまたはスチレンブタジエン樹脂エマルジョンから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せであり、
好ましくは、前記ポリオレフィンエマルジョンのうち、固形分が30~70%である、ことを特徴とする請求項1に記載の低誘電損失不織布。
【請求項5】
前記無機繊維は、Eガラス繊維、NEガラス繊維、Lガラス繊維、石英繊維から選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せであり、
好ましくは、前記無機繊維の平均直径が10ミクロンよりも小さく、1~5ミクロンであることが好ましく、
好ましくは、前記無機繊維の平均長さが1~100ミリメートルであり、1~10ミリメートルであることが好ましい、ことを特徴とする請求項1に記載の低誘電損失不織布。
【請求項6】
前記低誘電損失不織布の単重が、20~200グラム/平方メートルであり、20~100グラム/平方メートルであることが好ましい、ことを特徴とする請求項1に記載の低誘電損失不織布。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の低誘電損失不織布の製造方法であって、
前記製造方法は、無機繊維と接着剤を混合し、浸漬し、抄紙によって成形させ、オーブン乾燥して、前記低誘電損失不織布を得るステップを含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の低誘電損失不織布、および浸漬によってその上に付着した樹脂組成物を含むプリプレグであって、
好ましくは、前記樹脂組成物は、含フッ素樹脂エマルジョンであり、
好ましくは、前記含フッ素樹脂エマルジョンは、ポリパーフルオロエチレンプロピレンエマルジョン、ポリフッ化ビニリデンエマルジョン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体エマルジョン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体エマルジョン、ポリクロロトリフルオロエチレンエマルジョンまたはエチレン-
クロロトリフルオロエチレン共重合体エマルジョンから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せである、ことを特徴とするプリプレグ。
【請求項9】
銅箔、および請求項8に記載のプリプレグを含む、ことを特徴とする銅張板。
【請求項10】
銅箔、および請求項8に記載のプリプレグを含む、ことを特徴とするプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板の技術分野に属し、低誘電損失不織布、その製造およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
銅張板は、携帯電話、パソコン、自動販売機、通信基地局、衛星、ウェアラブルデバイス、パイロットレス自動車、ドローンおよびスマートロボットなどの分野に広く適用されており、電子通信および情報産業における重要な基礎材料の1つである。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表される含フッ素樹脂は、他の重合体樹脂が達成できない低誘電定数、低誘電損失、高熱安定性および化学的安定性などの複数種の優れた性能を持っているため、理想的な銅張板基材である。含フッ素樹脂は高分子鎖のフレキシビリティが高いので、通常、含フッ素樹脂ベースの銅張板の機械的強度を向上させるために、無機材料を導入する必要がある。例えば、CN101857708Aでは、フッ素樹脂混合物でガラス繊維布を浸漬してベーキングした後、PTFEリノリウムを得ることが開示されているが、グラスクロスが経緯編成されるため、製造したPTFE銅張板が均一ではなく、銅張板の異なる箇所における誘電定数、CTE、および誘電損失がそれぞれ異なり、異なる箇所における信号送信遅延が異なってしまう。
【0003】
高周波銅張板基板の等方性に対する要求がますます強くなるにつれて、PTFE複合材料が卓越したDk一致性、極めて低い誘電損失を有しながら、補強材料を含まないPTFE膜よりも優れた機械的強度を備える、等方性の補強材料の開発が求められている。現在、誘電損失が極めて低い等方性の補強材料は存在しない。
【0004】
従来の不織布は、補強および等方性の特徴を有するが、一般的にエポキシ系接着剤、アクリレート系接着剤、メラミン系接着剤またはポリビニルアルコール系接着剤を使用し、これらの接着剤による誘電損失が大きい。エポキシ系接着剤、アクリレート系接着剤、メラミン系接着剤またはポリビニルアルコール系接着剤による誘電損失は大きく、主流の高周波周製品に用いられる炭化水素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはPTFE樹脂による誘電損失よりもはるかに大きい。従来の不織布が高周波製品に用いられると、炭化水素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはPTFE樹脂による誘電の利点を失うことがあるため、当業者は、ガラス繊維布の補強および低誘電損失の特徴を利用して、如何にガラス繊維布の経緯編成による異方性を克服するか、たとえば、グラスクロスを開繊し、グラスクロスを前処理して樹脂を浸漬するなどの手段で経緯編成による欠陥を低減させることを検討している。
【発明の概要】
【0005】
従来技術における欠陥に対して、本発明は、低誘電損失不織布、その製造およびその使用を提供することを目的とする。本発明に係る不織布は、誘電性能が良く、補強効果が著しく、高周波通信分野における銅張板材料の様々な性能に対する要求を満たすことができる。
【0006】
その目的を達成するために、本発明は、以下の技術案を講じた。
【0007】
一側面として、本発明は、無機繊維および接着剤からなる低誘電損失不織布であって、前記接着剤は、含フッ素樹脂エマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ポリフェニレンエーテル樹脂またはシアネート樹脂のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せである低誘電損失不織布を提供する。
【0008】
本発明において、前記接着剤を用いることにより、不織布は、低い誘電損失を有し、均一性が良く、厚みが一致し、繊維の異方性分布が一致し、引張強度が高く、低誘電損失樹脂を浸漬させる時に多くの誘電フィラーを添加して低誘電損失高周波銅箔張板を製造することができる。
【0009】
本発明において、前記低誘電損失不織布とは、不織布の誘電損失が0.0015(10GHz)よりも小さいものを指す。
【0010】
好ましくは、前記低誘電損失不織布のうち、無機繊維の重量%は、60~95%(たとえば、60%、62%、65%、68%、70%、73%、75%、78%、80%、83%、85%、88%、90%、93%または95%)であり、接着剤の重量%は、5%~40%(たとえば、5%、8%、10%、15%、18%、20%、23%、25%、28%、30%、33%、35%、38%または40%)である。
【0011】
前記接着剤は、含フッ素樹脂エマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ポリフェニレンエーテル樹脂またはシアネート樹脂のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。これらの含フッ素樹脂エマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ポリフェニレンエーテル樹脂またはシアネート樹脂に対して、必要に応じて溶剤を添加して、適当な粘度に溶解、希釈することにより、接着剤を得た。
【0012】
誘電性能が低い点から考えれば、好ましくは、前記接着剤は、含フッ素樹脂エマルジョンである。
【0013】
好ましくは、前記含フッ素樹脂エマルジョンは、ポリパーフルオロエチレンプロピレンエマルジョン、ポリフッ化ビニリデンエマルジョン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体エマルジョン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体エマルジョン、ポリクロロトリフルオロエチレンエマルジョンまたはエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体エマルジョンから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。
【0014】
好ましくは、前記含フッ素樹脂エマルジョンのうち、固形分は、30~70%、たとえば、30%、35%、38%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%である。
【0015】
好ましくは、前記含フッ素樹脂エマルジョンのうち、含フッ素樹脂の粒径が0.10μm~0.40μmである。
【0016】
本明細書において、含フッ素樹脂エマルジョンの粒径は、レーザ回折法で測定され、測定機器は、マルバーンレーザー粒度分布測定装置(型番MS3000)である。本明細書において、誘電定数および誘電損失は、SPDR(splite post dielectric resonator)方法で測定され、周波数が10GHzである。
【0017】
好ましくは、前記ポリオレフィンエマルジョンは、不飽和ポリブタジエン樹脂エマルジョン、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体(SBS)エマルジョン、水添スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体(SEBS)エマルジョンまたはスチレンブタジエン樹脂エマルジョンから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。ポリオレフィンエマルジョンの固形分は、30~70%、たとえば、30%、35%、38%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%である。
【0018】
好ましくは、前記無機繊維は、Eガラス繊維、NEガラス繊維、Lガラス繊維、石英繊維から選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。
【0019】
好ましくは、前記無機繊維の平均直径は、10ミクロンよりも小さく、たとえば、9ミクロン、8ミクロン、7ミクロン、6ミクロン、5ミクロン、4ミクロン、3ミクロン、2ミクロンまたは1ミクロンなどであり、1~5ミクロンであることが好ましい。
【0020】
好ましくは、前記無機繊維の平均長さは、1~100ミリメートル、たとえば、100ミリメートル、90ミリメートル、80ミリメートル、70ミリメートル、60ミリメートル、50ミリメートル、40ミリメートル、30ミリメートル、20ミリメートル、10ミリメートル、5ミリメートルである。本発明における無機フィラーの平均直径、平均長さは、いずれも走査型電子顕微鏡により観察、測定されるものである。
【0021】
好ましくは、前記低誘電損失不織布の単重は、20~200グラム/平方メートルであり、たとえば、20グラム/平方メートル、25グラム/平方メートル、30グラム/平方メートル、35グラム/平方メートル、40グラム/平方メートル、50グラム/平方メートル、60グラム/平方メートル、80グラム/平方メートル、100グラム/平方メートル、120グラム/平方メートル、150グラム/平方メートル、180グラム/平方メートルまたは200グラム/平方メートルであり、20~100グラム/平方メートルであることが好ましい。
【0022】
別の側面として、本発明は、無機繊維と接着剤を混合し、浸漬し、抄紙によって成形させ、オーブン乾燥して前記低誘電損失不織布を得る、低誘電損失不織布の製造方法を提供する。
【0023】
好ましくは、前記浸漬の時間は、40~50minであり、たとえば、40min、43min、45min、48minまたは50minである。
【0024】
好ましくは、前記オーブン乾燥の温度は、120~150℃であり、たとえば、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃または150℃である。
【0025】
接着剤が含フッ素樹脂エマルジョンから選ばれる場合、含フッ素樹脂が熔融して成膜するように、オーブン乾燥後に焼結のステップを追加する必要がある。
【0026】
好ましくは、前記焼結の温度は、220℃~370℃であり、たとえば、220℃、230℃、250℃、270℃、290℃、300℃、320℃、340℃、360℃または370℃であり、焼結の時間は、28~30minである。
【0027】
別の側面として、本発明は、上述した低誘電損失不織布、および浸漬によってその上に付着した樹脂組成物を含むプリプレグを提供する。
【0028】
好ましくは、前記樹脂組成物は、含フッ素樹脂エマルジョンである。
【0029】
好ましくは、前記含フッ素樹脂エマルジョンは、ポリパーフルオロエチレンプロピレンエマルジョン、ポリフッ化ビニリデンエマルジョン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体エマルジョン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体エマルジョン、ポリクロロトリフルオロエチレンエマルジョンまたはエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体エマルジョンから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。
【0030】
別の側面として、本発明は、銅箔、および上述したプリプレグを含む銅張板を提供する。
【0031】
別の側面として、本発明は、銅箔、および上述したプリプレグを含むプリント回路基板を提供する。
【0032】
従来技術に対して、本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0033】
本発明に係る不織布は、誘電損失が低く、均一性が良く、厚みが一致し、繊維の異方性分布が一致し、引張強度が高く、低誘電損失樹脂を浸漬させる時に多くの誘電フィラーを添加して低誘電損失および高剥離強度の高周波銅張板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、具体的な実施形態によって、本発明の技術案をさらに説明する。当業者は、前記実施例が本発明を理解するためのものに過ぎず、本発明を具体的に制限するものと見なすべきではないことを理解すべきである。
【0035】
以下の実施例および比較例に用いられる原料は、以下の通りである。
【0036】
FEP樹脂エマルジョン:粒径0.20μm、固形分50wt%、日本ダイキン株式会社製、型番:ND-110。
【0037】
PFA樹脂エマルジョン:粒径0.20μm、固形分55wt%、日本ダイキン株式会社製、型番:AD-2CR。
【0038】
PTFE樹脂エマルジョン:粒径0.25μm、固形分55wt%、日本ダイキン株式会社製、型番:D210C。
【0039】
ポリオレフィンエマルジョン:粒径0.1μm、固形分45wt%、北京燕山石化のサンプル。
【0040】
ポリフェニレンエーテル接着剤:100部のビニル変性ポリフェニレンエーテル(三菱ガスOPE-2ST)を量り、トルエン溶剤に溶解させ、均一に撹拌した後、ポリフェニレンエーテル接着剤を得た。
【0041】
低熱膨張係数樹脂A:上記PTFE樹脂エマルジョンを450g量り、高速撹拌混合を2h行って、均一な樹脂組成物を得た。
【0042】
熱硬化性樹脂A:30重量部のエチレンプロピレンゴム(数平均分子量80000g/mol、米国ライオンケミカル会社)、40重量部のポリブタジエン(分子量3200g/mol、日本曹達株式会社)、2重量部の過酸化ベンゾイル(上海康朗生物科学技術有限公司)を50重量部のキシレンに溶解させ、均一に混合して、均一な樹脂組成物を得た。
【0043】
熱硬化性樹脂B:70重量部のメタクリレートブロックポリフェニレンエーテル樹脂MMA-PPE(SA9000、SABIC会社)、および70重量部の溶剤であるトルエン溶剤を混合し、完全に溶解させて、官能性ポリフェニレンエーテル樹脂溶液を得た後、30重量部のスチレン-ブタジエン共重合体R100(Sartomer公司)を架橋硬化剤として添加し、3重量部の過酸化クメンDCPを開始剤として添加し、15重量部の
臭素難燃剤であるエチル-ビス(テトラブロモフタルイミド)BT-93W(アルベマール会社:臭素含有量67.2%)を添加し、上記混合物をトルエンに混合し、撹拌しながら溶解させて、均一な樹脂組成物を得た。
【0044】
平均直径5μmのEガラス繊維:中国巨石股フン有限公司
【0045】
平均直径5μmのNEガラス繊維:中国巨石股フン有限公司
【0046】
平均直径1μmおよび5μmの石英繊維:中国神玖
【0047】
平均直径8μmのEガラス繊維:中国巨石股フン有限公司
【0048】
エポキシ接着剤および平均直径13μmのEガラス繊維により製造された不織布:陜西華特
【0049】
アクリレート接着剤および平均直径13μmのEガラス繊維により製造された不織布:陜西華特
【0050】
メラミン接着剤および平均直径13μmのEガラス繊維により製造された不織布:陜西華特。
【0051】
実施例1
【0052】
本実施例において、低誘電損失不織布が提供される。前記低誘電損失不織布は、ガラス繊維および接着剤からなり、前記接着剤は、FEPエマルジョンである。
【0053】
具体的な製造方法は、以下のステップを含む。
【0054】
92重量部のEガラス繊維(平均直径5ミクロン)および8重量部のFEP接着剤を45min浸漬し、抄紙によって成形させた。その後、150℃のオーブンで乾燥した後、300℃の高温オーブンの環境下で30min焼結した。取り出して冷却させた後、単重20グラム/平方メートルの不織布Aを製造した。
【0055】
実施例2
【0056】
85重量部のNEガラス繊維(平均直径5ミクロン)および15重量部のFEP接着剤を45min浸漬し、抄紙によって成形させた。そして、150℃のオーブンで乾燥した後、300℃の高温オーブンの環境下で30min焼結した。取り出して冷却させた後、単重75グラム/平方メートルの不織布Bを製造した。
【0057】
実施例3
【0058】
70重量部の石英繊維(平均直径1μmおよび5μm、重量比1:4)および30重量部のFEP接着剤を45min浸漬し、抄紙によって成形させた。その後、140℃のオーブンで乾燥した後、220℃の高温オーブンの環境下で28min焼結した。取り出して冷却させた後、単重75グラム/平方メートルの不織布Cを製造した。
【0059】
実施例4
【0060】
85重量部のEガラス繊維(平均直径8ミクロン)および15重量部のFEP接着剤を
45min浸漬し、抄紙によって成形させた。その後、140℃のオーブンで乾燥した後、350℃の高温オーブンの環境下で28min焼結した。取り出して冷却させた後、単重75グラム/平方メートルの不織布Dを製造した。
【0061】
実施例5
【0062】
85重量部のEガラス繊維(平均直径8ミクロン)および15重量部のポリオレフィン接着剤を45min浸漬し、抄紙によって成形させた。その後、120℃のオーブンの環境下で乾燥した。取り出して冷却させた後、単重120グラム/平方メートルの不織布Eを製造した。
【0063】
実施例6
【0064】
85重量部のEガラス繊維(平均直径8ミクロン)および15重量部のビニル変性ポリフェニレンエーテル(三菱ガスOPE-2ST)接着剤を45min浸漬し、抄紙によって成形させた。その後、200℃のオーブンの環境下で乾燥した。取り出して冷却させた後、単重120グラム/平方メートルの不織布Fを製造した。
【0065】
上述した実施例における不織布の主要な材料およびパラメータを表1に纏める。
【表1】
【0066】
実施例7
【0067】
本実施例においてPTFE銅張板が提供される。その製造方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0068】
ステップ(1):低熱膨張係数樹脂Aのガム液をサイジング機で実施例1における不織布Aに浸入させて、サイジング樹脂の含有量が90%のプリプレグHを得た。
【0069】
ステップ(2):ステップ(1)で得たプリプレグHを100℃の真空オーブンに置き、1h蒸し焼いて水分を除去し、260℃下で1h蒸し焼いて助剤を除去し、350℃で10min蒸し焼いた後、厚み0.25mmの粘着シートを得た。
【0070】
ステップ(3):1枚の粘着シートの上下両面に、厚み1OZの銅箔を被覆して積層し、400PSIの圧力を加えて(最高温度が380℃であり、保留時間が60minである)、PTFE銅張板を得た。
【0071】
実施例8
【0072】
ステップ(1)において、不織布Aの代わりに、不織布Bを使用する以外、実施例7と同様にしてプリプレグIを得た。
【0073】
実施例9
【0074】
ステップ(1)において、不織布Aの代わりに、不織布Cを使用する以外、実施例7と同様にしてプリプレグJを得た。
【0075】
実施例10
【0076】
ステップ(1)において、不織布Aの代わりに、不織布Dを使用する以外、実施例7と同様にしてプリプレグKを得た。
【0077】
実施例11
【0078】
本実施例において、高周波回路基板が提供される。その製造方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0079】
ステップ(1):熱硬化性樹脂Aのガム液をサイジング機で実施例5における不織布Eに浸入させて、サイジング樹脂の含有量が90%のプリプレグMを得た。
【0080】
ステップ(2):ステップ(1)におけるプリプレグMを100℃のオーブンに置き、1h蒸し焼き、溶剤を除去して、粘着シートを得た。
【0081】
ステップ(3):1枚の粘着シートの樹脂層の上下両面に、厚み1OZの銅箔を被覆して積層し、プレス装置に置いて硬化を行うことにより、高周波回路基板を製造した。そのうち、前記硬化の温度は200℃であり、90min硬化し、前記硬化の圧力は50kg/cmである。
【0082】
実施例12
【0083】
本実施例において、高周波回路基板が提供される。その製造方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0084】
ステップ(1):熱硬化性樹脂Bのガム液をサイジング機で実施例6における不織布Fに浸入させて、サイジング樹脂の含有量が90%のプリプレグNを得た。
【0085】
ステップ(2):ステップ(1)におけるプリプレグNを100℃のオーブンで乾燥させ、トルエン溶剤を除去して、粘着シートを製造した。
【0086】
ステップ(3):1枚の粘着シートの樹脂層の上下両面に、厚み1OZの銅箔を被覆し、プレス装置で90min真空積層硬化して(硬化圧力が50kg/cmであり、硬化温度が200℃である)、高周波回路基板を製造した。
【0087】
比較例1
【0088】
ステップ(1)において不織布Aの代わりに、エポキシ接着剤の不織布以外、実施例7と同様にする。
【0089】
比較例2
【0090】
ステップ(1)において不織布Aの代わりに、アクリレート接着剤を使用する以外、実施例7と同様にする。
【0091】
比較例3
【0092】
ステップ(1)において不織布Aの代わりに、メラミン接着剤の不織布を使用する以外、実施例7と同様にする。
【0093】
比較例4
【0094】
ステップ(1)において不織布Eの代わりに、エポキシ接着剤の不織布を使用する以外、実施例11と同様にする。
【0095】
比較例5
【0096】
ステップ(1)において、不織布Fの代わりに、エポキシ接着剤の不織布を使用する以外、実施例12と同様にする。
【0097】
比較例6
【0098】
ステップ(1)において、不織布Aにおける接着剤が過剰であり、比率が50%である以外、実施例7と同様である。
【0099】
実施例7~12および比較例1~6における銅張板または高周波回路基板に対して性能評価を行った。方法は、以下の通りである。
1、DkおよびDf:SPDR(splite post dielectric resonator)方法で測定した。測定条件は、A状態であり、周波数は、10GHzである。
2、剥離強度:GB/T 4722-2017 7.2方法。
【0100】
テスト結果を表2および表3に示す。
【表2】

【表3】
【0101】
表2および表3から、以下のことが分かる。
【0102】
実施例7~10において、損失が低い接着剤で製造した不織布とPTFEを混合して銅張板を製造することにより、その誘電損失(Dk(10GHz)が2.26よりも低く、Df(10GHz)が0.0013)よりも低く、剥離強度が1.3N/mm以上であり、比較例1~3において一般的な不織布で製造した銅張板の性能よりも明らかに優れている。
【0103】
実施例11および比較例4において、損失が低い接着剤で製造した不織布と炭化水素体系を用いて銅張板を製造することにより、その誘電損失および剥離強度が、比較例4において一般的な不織布で製造した銅張板の性能よりも明らかに優れている。
【0104】
実施例12および比較例5において、損失が低い接着剤で製造した不織布とポリフェニレンエーテル体系を用いて銅張板を製造することにより、その誘電損失および剥離強度が比較例5において一般的な不織布で製造した銅張板の性能よりも明らかに優れている。
【0105】
比較例6において用いられた損失が低い接着剤は過量であったため、板材の誘電損失が高すぎた。
【0106】
本発明は上記実施例によって本発明に係る低誘電損失不識布、その製造およびその使用を説明したが、本発明は上記実施例に限られるものではない、即ち、本発明は上記実施例によって実施しなければならないものではないことを出願人は声明する。当業者にとって、本願に対する如何なる改良、本願の製品の各原料への等価置換及び補助成分の追加、具体的な実施形態の選択等はいずれも本願の保護範囲及び開示範囲に入ることは明瞭である。