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特開2023-95795赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光学レンズ、又は赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光導波路に用いる顔料組成物、膜、光学レンズ、光導波路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095795
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光学レンズ、又は赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光導波路に用いる顔料組成物、膜、光学レンズ、光導波路
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20230629BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20230629BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20230629BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230629BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20230629BHJP
   C09B 57/04 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
C09B67/20 J
G02B5/22
G02B1/04
C09B67/20 L
C08L101/00
C08K5/3415
C09B57/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192669
(22)【出願日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2021210190
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三上 譲司
(72)【発明者】
【氏名】千葉 優美香
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雄哉
【テーマコード(参考)】
2H148
4J002
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA14
2H148CA17
2H148CA20
4J002AA001
4J002BG071
4J002EU026
4J002FD096
4J002GP00
4J002GP01
(57)【要約】
【課題】本発明は、赤外線センサ又は赤外線通信機器用の光学レンズ又は光導波路に用いる高屈折率材料の用途において、高い屈折率を有し、透明性、耐熱性、及び耐光性に優れる、顔料組成物の提供を目的とする。
【解決手段】赤外線センサもしくは赤外線通信機器に使用する光学レンズ、又は赤外線センサもしくは赤外線通信機器に使用する光導波路に用いる顔料組成物であって、イソインドリン系顔料と、樹脂とを含有し、前記イソインドリン系顔料の含有率が顔料組成物における固形分の全質量を基準として40質量%以上であり、膜厚1.0μmの膜を形成した際に、23℃、波長850nmにおける屈折率が1.65以上である、顔料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線センサもしくは赤外線通信機器に使用する光学レンズ、又は赤外線センサもしくは赤外線通信機器に使用する光導波路に用いる顔料組成物であって、
イソインドリン系顔料と、樹脂とを含有し、
前記イソインドリン系顔料の含有率が顔料組成物における固形分の全質量を基準として40質量%以上であり、
膜厚1.0μmの膜を形成した際に、23℃、波長850nmにおける屈折率が1.65以上である、顔料組成物。
【請求項2】
イソインドリン系顔料が、一般式(1)で表される構造を有する、請求項1記載の顔料組成物。
一般式(1)
【化1】


(X、Xは、各々独立して、下記一般式(2)、(3)又は(4)を表す。Y~Yは、各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~4のアルコキシカルボニル基、炭素数2~4のアルキルカルボキシ基、ハロゲン原子、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のアルケニロキシ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基、-SO-O-R111、又は-SO-NH-R112を表し、これらのうち2つがそれぞれ水素原子を除いた形で環を形成してもよく、環を形成する際に間に2価の有機基が入ってもよい。R111、R112は各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)

一般式(2)
【化2】


(Y、Yは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のアルケニロキシ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、*は結合手を表す。)

一般式(3)
【化3】


(Yは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のアルケニロキシ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、*は結合手を表す。)

一般式(4)
【化4】
【請求項3】
さらに、硬化剤及び溶剤を含む、請求項1又は2記載の顔料組成物。
【請求項4】
800nm~1600nmにおける高屈折率材料として用いる請求項1又は2記載の顔料組成物。
【請求項5】
請求項1記載の顔料組成物を含む膜。
【請求項6】
請求項1記載の顔料組成物を含む、光学材料。
【請求項7】
請求項1記載の顔料組成物を含む、光学レンズ。
【請求項8】
請求項1記載の顔料組成物を含む、光導波路。
【請求項9】
請求項5記載の膜、請求項6記載の光学材料、請求項7記載の光学レンズ、又は請求項8記載の光導波路を具備する、赤外線センサ。
【請求項10】
請求項5記載の膜、請求項6記載の光学材料、請求項7記載の光学レンズ、又は請求項8記載の光導波路を具備する、赤外線通信機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光学レンズ、又は赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光導波路に用いる顔料組成物、並びにその顔料組成物を含む膜、光学レンズ、及び光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCD、CMOS等のセンサー素子や、ディスプレイ等の表示素子に用いられるガラス、フィルム及びシートの表面には、無機物又は有機物からなる表面保護層が設けられている。近年では、前記の表面保護層に、反射防止や光導波等の機能を付与する目的で、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した被覆層等が用いられている。このうち高屈折率層には、チタニア、ジルコニア、アルミナ等のセラミックスを蒸着等により形成した高屈折率無機膜や、芳香族含有樹脂からなる高屈折率有機膜が、目的に応じて用いられている。しかし、高屈折率無機膜を用いた場合、基材密着性の不足や、膜の脆弱性等の課題があった。よって、近年では高屈折率有機膜が広く使用されている。
【0003】
また、次世代ディスプレイとして注目されている有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという。)パネルは、外部からの水分やガスの浸透による有機EL素子の劣化を防止するために、酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ等からなる無機層と、アクリル樹脂やエポキシ樹脂を主成分とした有機系封止材からなる有機層との積層構造を有する。これらの無機層と有機層とは交互に積層される。ここで、無機層と有機層との屈折率差が小さいほど光の取り出し効率が向上するため、有機層の屈折率は高い方がよい。よって、高屈折率の有機系封止材が求められている。
【0004】
さらに、近年、三次元造形装置を用いた成形体が医療分野、光学分野等で広く使用されている。三次元造形に用いる造形用樹脂としては、光硬化性樹脂が用いられている(特許文献1、2)。特に医療機器、顕微鏡、各種カメラ等に用いられるレンズの成形体においては、レンズの薄型化のために、高屈折率の光造形用樹脂が求められている。
【0005】
上述のような表面保護層用の高屈折率有機材料、有機ELパネルの有機系封止剤、光造形用樹脂としては、硫黄を含有する樹脂や、芳香環が共役した構造を有するフルオレンのような樹脂が知られている(特許文献2、3、4)。
【0006】
昨今では、夜間に被写体を撮影するための固体撮像素子や、距離測定に用いるLidarなどの赤外線センサ、光導波路に光を伝搬させて使用する赤外線通信機器など、近赤外線を用いたセンシングや通信が広く普及しつつある。これらの光線を集光するためのレンズ等には、近赤外領域において高屈折率である光学材料を用いることが重要である。
【0007】
特許文献5には、可視光を遮蔽し近赤外線を透過させる、赤外線透過フィルタなどの製造に用いられる組成物と、それを用いて得られる膜が開示されており、その膜が、波長800nm以上の範囲において高屈折率となることが記載されている。しかし、特許文献5に記載された材料は、800nmより長波長の領域に吸収があり、800~1600nmの近赤外線を用いたセンシングや通信への使用は好ましくない。また、用いる色素の分散性が十分でないため、組成物により得られる膜の透明性の面で課題が残る。
【0008】
特許文献6には、近赤外領域において高屈折率及び高透過率を示す、有機色素を含む光学部材用膜状物が開示されているが、色素の添加量が非常に少なく、十分に高い屈折率は得られていない。
【0009】
特許文献7には、近赤外領域において高屈折率及び高透過率を示す、熱可塑性樹脂と色材とを含む樹脂組成物が開示されているが、耐光性や耐熱性が十分でなく、実用性の観点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-157543号公報
【特許文献2】特開2019-019245号公報
【特許文献3】特開2000-281787号公報
【特許文献4】特開2011-168721号公報
【特許文献5】国際公開第2019/065475号
【特許文献6】国際公開第2020/085499号
【特許文献7】国際公開第2020/138050号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近赤外線を用いたセンシングや通信の中でも、近年特に広く普及しつつある800~1600nmの光線を用いたセンシングや通信において、これらの光線を集光するための光学レンズや、これらの光線を伝搬させる光導波路には、高屈折率で、高い透明性及び耐性を持つ光学材料を用いることが重要である。
しかしながら、現状では十分な耐性を有する高屈折率材料の開発は進んでいなかった。
【0012】
本発明は、以上の課題に鑑み、800~1600nmの光線を用いた赤外線センサ又は赤外線通信機器用の光学レンズ又は光導波路に用いる高屈折率材料の用途において、高い屈折率を有し、透明性、耐熱性、及び耐光性に優れる、顔料組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち本発明は、赤外線センサもしくは赤外線通信機器に使用する光学レンズ、又は赤外線センサもしくは赤外線通信機器に使用する光導波路に用いる顔料組成物であって、
イソインドリン系顔料と、樹脂とを含有し、
前記イソインドリン系顔料の含有率が顔料組成物における固形分の全質量を基準として40質量%以上であり、
膜厚1.0μmの膜を形成した際に、23℃、波長850nmにおける屈折率が1.65以上である、顔料組成物に関する。
【0014】
また本発明は、イソインドリン系顔料が、一般式(1)で表される構造を有する、上記顔料組成物に関する。
一般式(1)
【化1】

(X、Xは、各々独立して、下記一般式(2)、(3)又は(4)を表す。Y~Yは、各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~4のアルコキシカルボニル基、炭素数2~4のアルキルカルボキシ基、ハロゲン原子、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のアルケニロキシ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基、-SO-O-R111、又は-SO-NH-R112を表し、これらのうち2つがそれぞれ水素原子を除いた形で環を形成してもよく、環を形成する際に間に2価の有機基が入ってもよい。R111、R112は各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)

一般式(2)
【化2】


(Y、Yは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のアルケニロキシ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、*は結合手を表す。)

一般式(3)
【化3】


(Yは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のアルケニロキシ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、*は結合手を表す。)

一般式(4)
【化4】
【0015】
また本発明は、硬化剤及び溶剤を含む、上記顔料組成物に関する。
【0016】
また本発明は、800nm~1600nmにおける高屈折率材料として用いる、上記顔料組成物に関する。
【0017】
また本発明は、上記顔料組成物を含む膜に関する。
【0018】
また本発明は、上記顔料組成物を含む、光学材料に関する。
【0019】
また本発明は、上記顔料組成物を含む、光学レンズに関する。
【0020】
また本発明は、上記顔料組成物を含む、光導波路に関する。
【0021】
また本発明は、上記膜、上記光学材料、上記光学レンズ、又は上記光導波路を具備する、赤外線センサ又は赤外線通信機器に関する。
【発明の効果】
【0022】
上記の本発明によれば、赤外線センサ又は赤外線通信機器用の光学レンズ又は光導波路に用いる高屈折率材料の用途において、800~1600nmの波長領域において高い屈折率を有し、透明性、耐熱性、及び耐光性に優れる顔料組成物を提供できる。
【0023】
このような本発明の有機顔料組成物は、800~1600nmの波長領域における高屈折率が要求される赤外線センサ又は赤外線通信機器に用いる光学材料に用いられ、光学レンズ、光導波路等の光学材料用として特に好適に利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<本発明の顔料組成物について>
本発明の顔料組成物は、イソインドリン系顔料と、樹脂とを含有し、イソインドリン系顔料の含有率が顔料組成物における固形分の全質量を基準として40質量%以上であり、膜厚1.0μmの膜を形成した際に、23℃、波長850nmにおける屈折率が1.65以上である。
【0025】
<顔料組成物の光学特性について>
イソインドリン系顔料及び樹脂を含有することが、本発明の顔料組成物の特徴である。
本発明者らは、鋭意検討の末、顔料組成物が一定量以上のイソインドリン系顔料を含有する場合に、800~1600nmの波長領域で高屈折率になることを見出した。これにより、高屈折率に寄与することが知られている硫黄原子やヨウ素原子を含有しなくても高屈折率の膜を得ることができる。
【0026】
本発明の顔料組成物は、23℃、波長850nmにおける屈折率が1.65以上であり、好ましくは1.7以上であり、より好ましくは1.75以上であり、さらに好ましくは1.8以上である。屈折率の上限は特に限定されないが、好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2.4以下である。
なお、これは、本発明の顔料組成物が膜厚1.0μmの膜を形成した際の屈折率であり、本発明の有機顔料組成物に溶剤が含まれる場合は、塗工後にこれを揮発させた後の膜の屈折率が該当する。
【0027】
<顔料>
本発明の顔料組成物は、上記の光学特性を有するために顔料を含有する。顔料は、染料に比べ耐熱性、耐光性、耐薬品性が高い。近赤外線を集光する光学レンズや、近赤外線を伝搬させる光導波路に用いる光学材料には、耐光性が不可欠となる。また、様々なデバイスに組み込まれて用いられるために、製造工程における高温のプロセスや溶剤浸漬のプロセスにも耐えうることが重要であり、耐熱性、耐薬品性が必要となる。顔料は、耐熱性、耐光性に優れるため、本発明の顔料組成物は、赤外線センサ又は赤外線通信機器における高屈折率材料への使用が可能となる。
【0028】
本発明の顔料組成物においては、イソインドリン系顔料の含有率が、顔料組成物における固形分の全質量を基準として40質量%以上である。より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70%以上である。
顔料の含有率が、顔料組成物における固形分の全質量を基準として40質量%以上であることにより、800~1600nmの波長領域で高屈折率である膜を得ることができる。顔料の含有量の上限は特に限定されないが、95質量%未満であると、顔料の分散性に優れ、透明性の高い膜が得られる点、及び顔料組成物としての安定性に優れる点から好ましい。
なお、本明細書において、固形分とは、顔料組成物から有機溶媒等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
【0029】
<イソインドリン系顔料>
イソインドリン系顔料としては、例えばピグメントイエロー185、139、ピグメントレッド260、ピグメントオレンジ61、66、69が挙げられる。
【0030】
イソインドリン系顔料としては、一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(1)
【化5】


(X、Xは、各々独立して、下記一般式(2)、(3)又は(4)を表す。Y~Yは、各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~4のアルコキシカルボニル基、炭素数2~4のアルキルカルボキシ基、ハロゲン原子、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のアルケニロキシ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基、-SO-O-R111、又は-SO-NH-R112を表し、これらのうち2つがそれぞれ水素原子を除いた形で環を形成してもよく、環を形成する際に間に2価の有機基が入ってもよい。R111、R112は各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
一般式(2)
【化6】


(Y、Yは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のアルケニロキシ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、*は結合手を表す。)
一般式(3)
【化7】


(Yは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のアルケニロキシ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、*は結合手を表す。)
一般式(4)
【化8】
【0031】
炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基が挙げられ、炭素数1~4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基等が挙げられる。炭素数2~4のアルケニル基としては、エチレニル基、プロペニル基、ブチレニル基等が挙げられる。炭素数3~10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基板、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0032】
~Yは、上記基の2つがそれぞれ水素原子を除いた形で環を形成してもよく、例えばYおよびYが一体となってフェニル基を形成してもよい。
【0033】
一般式(1)で表されるイソインドリン系顔料は、単独で、又は2種類以上を併用して使用できる。また、異性体を含む混合物であってもよい。
【0034】
なお、イソインドリン系顔料として、例えばピグメントイエロー185、139等の黄色の色相を示すものは、比視感度が最も高い波長領域である555nm付近の光を透過させるため、顔料組成物の視認性が非常に高い。これにより、800~1600nmの近赤外線に対する高屈折率材料として工業的に使用する場合に、目視で高屈折率材料の内部の傷やシミなどを確認しやすくなり、また目視で該高屈折率材料の向こう側も確認することができ、高屈折率材料として好ましく使用することができる。
【0035】
一般式(1)で表される構造を有するイソインドリン系顔料としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
本発明の顔料組成物は、その他、イソインドリン系以外の顔料を含んでもよい。
黄色顔料としては、例えばピグメント イエロー1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、187、188、193、194、198、199、213、214、218、219、220、221が挙げられる。
【0040】
赤色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、57:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、97、122、123、146、149、150、168、169、170、176、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、209、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、254、255、264、268、270、272、273、274、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287が挙げられる。
橙色顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ36、38、43、51、55、59、71、73が挙げられる。
【0041】
青色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー1、1:2、1:3、2、2:1、2:2、3、8、9、10、10:1、11、12、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、19、22、24、24:1、53、56、56:1、57、58、59、60、61、62、64が挙げられる。
【0042】
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン7、10、36、37、58、62、63が挙げられる。
また、アルミフタロシアニン顔料を用いることも好ましく、例えば、特開2004-333817号公報、特許第4893859号公報等に記載のアルミニウムフタロシアニン顔料を用いることもできる。
【0043】
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50が挙げられる。
【0044】
(無機顔料)
その他、無機顔料を併用することもできる。無機顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤
、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、合成鉄黒等が挙げられる。無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、有機顔料と組合せて用いられる。
【0045】
また、染料を併用することもできる。染料は、例えば、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料が挙げられ、いずれも併用することができる。また例えば、アントラキノン系染料、モノアゾ系染料、ジスアゾ系染料、オキサジン系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系性染料、トリフェニルメタン系性染料、シアニン系染料、スクアリリウム系染料が挙げられ、いずれも併用することができる。
【0046】
以下、上記の顔料及び染料を総称して、着色剤ということがある。
【0047】
さらに、紫外線吸収剤を併用することもできる。紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられ、いずれも併用することができる。
【0048】
高屈折率材料としての性能だけでなく、特定の波長領域の透過、吸収を制御したい場合は、上記の染料や紫外線吸収剤が好適に用いられる。
例えば、近赤外線をセンシングする際に、その光線よりも短波長の領域をカットしたい場合は、青色顔料、赤色顔料や紫色顔料に黄色顔料や紫外線吸収剤を加え、IRパス材料としての機能を持たせることができる。
【0049】
(顔料の微細化)
本発明の顔料組成物においては、高い透過率を得る観点から、有機顔料はソルトミリング処理などにより微細化されていることが好ましい。顔料の一次粒子径は、着色剤担体中への分散が良好なことから、10nm以上であることが好ましい。また、散乱の少ない塗膜を形成できることから、80nm以下であることが好ましい。特に好ましい範囲は、20~60nmの範囲である。
【0050】
(ソルトミリング処理)
ソルトミリング処理とは、顔料と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤との混合物を、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等の混練機を用いて、加熱しながら機械的に混練した後、水洗により水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を除去する処理である。水溶性無機塩は、破砕助剤として働くものであり、ソルトミリング時に無機塩の硬度の高さを利用して顔料が破砕される。顔料をソルトミリング処理する際の条件を最適化することにより、一次粒子径が非常に微細であり、また、分布の幅がせまく、シャープな粒度分布をもつ顔料を得ることができる。
【0051】
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等を用いることができるが、価格の点から塩化ナトリウム(食塩)を用いるのが好ましい。水溶性無機塩は、処理効率と生産効率の両面から、顔料の全質量を基準(100質量%)として、50~2000質量%用いることが好ましく、300~1000質量%用いることが最も好ましい。
【0052】
水溶性有機溶剤は、顔料及び水溶性無機塩を湿潤する働きをするものであり、水に溶解(混和)し、かつ用いる無機塩を実質的に溶解しないものであれば特に限定されない。ただし、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から、沸点120℃以上の高沸点溶剤が好ましい。例えば、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-(イソペンチルオキシ)エタノール、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液状のポリエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液状のポリプロピレングリコールが用いられる。水溶性有機溶剤は、顔料の全質量を基準(100質量%)として、5~1000質量%用いることが好ましく、50~500質量%用いることがより好ましい。
【0053】
顔料をソルトミリング処理する際には、必要に応じて樹脂を添加してもよい。用いられる樹脂の種類は特に限定されず、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等を用いることができる。用いられる樹脂は、室温で固体であり、水不溶性であることが好ましく、かつ上記有機溶剤に一部可溶であることがさらに好ましい。樹脂の使用量は、顔料の全質量を基準(100質量%)として、5~200質量%の範囲であることが好ましい。
【0054】
<樹脂>
本発明の顔料組成物は、樹脂を含有する。樹脂としては、例えば、バインダー樹脂としてのはたらきをするもの、分散剤としてのはたらきをするものが挙げられる。バインダー樹脂は、顔料をその樹脂中に分散するものであって、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。分散剤としてのはたらきをする樹脂型分散剤については、後述する。
【0055】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0056】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びフェノール樹脂等が挙げられる。
【0057】
バインダー樹脂の可視光領域の400~700nmの全波長領域における分光透過率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。また、酸性基含有エチレン性不飽和単量体を共重合したアルカリ可溶性ビニル系樹脂を用いることが好ましい。
【0058】
酸性基含有エチレン性不飽和単量体を共重合したアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボキシ基、スルホン基等の酸性基を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂として具体的には、酸性基を有するアクリル樹脂、α-オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、又はイソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、酸性基を有するアクリル樹脂、及びスチレン/スチレンスルホン酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂、特に酸性基を有するアクリル樹脂は、耐熱性、透明性が高いため、好適に用いられる。
【0059】
酸性基含有エチレン性不単量体を共重合したアルカリ可溶性樹脂の光感度を向上させるために、エチレン性不飽和活性二重結合を有するエネルギー線硬化性樹脂を用いることもできる。また、側鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を用いると、諸耐性の観点から好ましい。
【0060】
エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば以下に示す(a)や(b)の方法により不飽和エチレン性二重結合を導入した樹脂が挙げられる。
【0061】
[方法(a)]
方法(a)として、エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖エポキシ基に、不飽和エチレン性二重結合を有する不飽和一塩基酸のカルボキシ基を付加反応させ、更に、生成したヒドロキシ基に、多塩基酸無水物を反応させ、不飽和エチレン性二重結合及びカルボキシ基を導入する方法がある。
【0062】
エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4エポキシブチル(メタ)アクリレート、及び3,4エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。次工程の不飽和一塩基酸との反応性の観点で、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0063】
不飽和一塩基酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o-、m-、p-ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
多塩基酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。カルボキシ基の数を増やすため、必要に応じて、トリメリット酸無水物等のトリカルボン酸無水物を用いたり、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を用いて、残った無水物基を加水分解したりすることもできる。また、多塩基酸無水物として、不飽和エチレン性二重結合を有する、エトラヒドロ無水フタル酸、又は無水マレイン酸を用いると、更に不飽和エチレン性二重結合を増やすことができる。
【0065】
方法(a)の類似の方法として、例えば、カルボキシ基を有する不飽和エチレン性単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖カルボキシ基の一部に、エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体を付加反応させ、不飽和エチレン性二重結合及びカルボキシ基を導入する方法がある。
【0066】
[方法(b)]
方法(b)として、ヒドロキシ基を有する不飽和エチレン性単量体を使用し、他のカルボキシ基を有する不飽和一塩基酸の単量体や、他の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖ヒドロキシ基に、イソシアネート基を有する不飽和エチレン性単量体のイソシアネート基を反応させる方法がある。
【0067】
ヒドロキシ基を有する不飽和エチレン性単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-若しくは3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-若しくは3-若しくは4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、又はシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。また、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、(ポリ)γ-バレロラクトン、(ポリ)ε-カプロラクトン、及び/又は(ポリ)12-ヒドロキシステアリン酸等を付加した(ポリ)エステルモノ(メタ)アクリレートも使用できる。塗膜異物抑制の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又はグリセロール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0068】
イソシアネート基を有する不飽和エチレン性単量体としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1-ビス〔(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定することなく、2種類以上併用することもできる。
【0069】
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、着色剤を好ましく分散させるためには、10,000~100,000の範囲が好ましく、より好ましくは10,000~80,000の範囲である。また数平均分子量(Mn)は5,000~50,000の範囲が好ましく、Mw/Mnの値は10以下であることが好ましい。
【0070】
バインダー樹脂は、顔料の分散性、浸透性、及び耐熱性の観点から、着色剤吸着基及び現像時のアルカリ可溶基としてはたらくカルボキシ基、バインダー樹脂以外の着色剤担体及び溶剤に対する親和性基としてはたらく脂肪族基及び芳香族基のバランスが、顔料及び造塩化合物の分散性、浸透性、耐久性にとって重要であり、酸価20~300mgKOH/gの樹脂を用いることが好ましい。酸価が、20mgKOH/g未満では、現像液に対する溶解性が悪く、微細パターンを形成するのが困難である。300mgKOH/gを超えると、微細パターンが残らなくなる。
ここで、着色剤担体とは、着色剤を親和、吸着等により担持させる樹脂やその他の低分子成分のことである。
【0071】
バインダー樹脂は、成膜性及び諸耐性の観点から、着色剤の全質量を基準(100質量%)として、30質量%以上の量で用いることが好ましく、着色剤濃度を高くし、良好な色特性を発現させる観点から、500質量%以下の量で用いることが好ましい。
【0072】
<有機溶剤>
本発明の顔料組成物には、着色剤を充分に着色剤担体中に分散、浸透させ、高屈折率材料の成形を容易にするために有機溶剤を含有させることができる。
【0073】
有機溶剤としては、例えば乳酸エチル、ベンジルアルコール、1,2,3-トリクロロプロパン、1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ジオキサン、2-ヘプタノン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3-メトキシブチルアセテート、4-ヘプタノン、m-キシレン、m-ジエチルベンゼン、m-ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、n-ブチルアルコール、n-ブチルベンゼン、n-プロピルアセテート、o-キシレン、o-クロロトルエン、o-ジエチルベンゼン、o-ジクロロベンゼン、p-クロロトルエン、p-ジエチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、γ-ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n-アミル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステルが挙げられる。
【0074】
中でも、顔料の分散性、溶解性が良好なことから、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類やシクロヘキサノン等のケトン類を用いることが好ましい。特に、安全衛生面と低粘度化の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
【0075】
これらの有機溶剤は、1種を単独で、若しくは2種以上を混合して用いることができる。2種以上の混合溶剤とする場合、上記の好ましい有機溶剤が65~95質量%含有されていることが好ましい。
【0076】
また有機溶剤は、顔料組成物を適正な粘度に調節し、高屈折率材料の形成性を向上させる観点から、着色剤の全質量を基準(100質量%)として、800~4000質量%の量で用いることが好ましい。
【0077】
<分散>
本発明の顔料組成物は、顔料、及び必要に応じて含有する樹脂、溶剤からなる着色剤担体中に、好ましくは色素誘導体などの分散助剤と一緒に、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、アトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散して製造することができる。また、本発明の顔料組成物は、顔料、染料、その他の着色剤等を別々に着色剤担体に分散したものを混合して製造することもできる。
【0078】
(分散助剤)
着色剤を着色剤担体中に分散する際には、適宜、色素誘導体、樹脂型分散剤、界面活性剤等の分散助剤を用いることができる。分散助剤は、着色剤の分散に優れ、分散後の着色剤の再凝集を防止する効果が大きいので、分散助剤を用いて着色剤を着色剤担体中に分散してなる顔料組成物を用いた場合には、分光透過率の高い膜が得られる。
【0079】
《色素誘導体》
色素誘導体としては、有機顔料、アントラキノン、アクリドン又はトリアジンに、塩基性置換基、酸性置換基、又は置換基を有していてもよいフタルイミドメチル基を導入した化合物が挙げられ、例えば、特開昭63-305173号公報、特公昭57-15620号公報、特公昭59-40172号公報、特公昭63-17102号公報、特公平5-9469号公報等に記載されているものを使用でき、これらは単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0080】
色素誘導体の配合量は、顔料の分散性向上の観点から、顔料の全量を基準(100質量%)として、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、最も好ましくは3質量%以上である。また、耐熱性、耐光性の観点から、添加顔料の全量を基準(100質量%)として、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0081】
《樹脂型分散剤》
樹脂型分散剤は、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、着色剤担体と相溶性のある部位とを有し、添加顔料に吸着して着色剤担体への分散を安定化するはたらきをするものである。樹脂型分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシ基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が用いられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0082】
市販の樹脂型分散剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155又はAnti-Terra-U、203、204、又はBYK-P104、P104S、220S、6919、又はLactimon、Lactimon-WS又はBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE-3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、76500等、BASFジャパン社製のEFKA-46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503、等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0083】
《ブロックアクリル型塩基性分散剤》
本発明の顔料組成物においては、樹脂型分散剤として、ブロックアクリル型塩基性分散剤を用いることが好ましい。ブロックアクリル型塩基性分散剤とは、塩基性基を有するブロックタイプのアクリル重合体である。中でも、一方のブロックが塩基性基を有するエチレン性不飽和単量体の重合体であり、他方のブロックが塩基性基を有しないエチレン性不飽和単量体の重合体であるものがより好ましい。
【0084】
ブロックアクリル型塩基性分散剤がAB型ブロックの場合、より好ましい様態は上記の通りであるが、BAB型ブロックの場合、Aブロックが塩基性基を有するエチレン性不飽和単量体の重合体であり、Bブロックが塩基性基を有しないエチレン性不飽和単量体の重合体であるものがより好ましい。
【0085】
樹脂型分散剤としてブロックアクリル型塩基性分散剤を用いることにより、塩基性基を有するブロックが顔料の表面に吸着し、塩基性基を有しないもう一方のブロックが溶媒との親和性を保ちつつ立体障害のはたらきをすることで、良好な分散性を発現すると考えられる。
【0086】
一般的に、樹脂型分散剤は色素誘導体を併用することで良好な分散性を得られる傾向にあるが、ブロックアクリル型塩基性分散剤を用いた場合、上記のメカニズムにより色素誘導体がなくても良好な分散性が得られることが多い。そして、色素誘導体は、本発明で使用する顔料とは異なる分光を有することが多いため、色素誘導体を用いないほうが、顔料組成物としてより高い屈折率を発現させることができる。
【0087】
塩基性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、3級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、4級アンモニウム塩を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、これらを併用することが特に好ましい。
【0088】
3級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジプロピルアミノエチルメタクリレートが挙げられ、4級アンモニウム塩基を有するエチレン性不飽和単量体としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルプロピルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルブチルクロライド塩、メタクリル酸ジエチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジエチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリル酸ジエメチルアミノエチルプロピルクロライド塩、メタクリル酸ジエチルアミノエチルブチルクロライド塩、アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、アクリル酸ジメチルアミノエチルプロピルクロライド塩、アクリル酸ジメチルアミノエチルブチルクロライド塩等が挙げられる。
【0089】
塩基性基を有するエチレン性不飽和単量体として、3級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と4級アンモニウム塩を有するエチレン性不飽和単量体を併用する場合、ブロックアクリル型塩基性分散剤の代表的な合成方法は2つ挙げられる。
【0090】
1つ目の方法は、これらのエチレン性不飽和単量体を別々に合成して、塩基性基を有するブロックを重合する際に、これらを混合して使用する方法である。
【0091】
2つ目の方法は、3級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体を用いて塩基性基を有するブロックを重合し、塩基性基を有しないもう一方のブロックも重合させて、ブロック重合を終えた後、塩化ベンジルのような4級化剤と反応させて、3級アミノ基の一部を4級アンモニウム塩にする方法である。4級化剤としては、例えば、塩化ベンジル、ヨードブタン、ヨードプロパン、ヨードエタン、ブロモブタン、ブロモプロパン、ブロモエタン、クロロブタンのようなハロゲン化アルキルが挙げられる。
3級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、4級アンモニウム塩を有するエチレン性不飽和単量体は、分子内にアミド結合を有するものであると、有機顔料の表面に吸着しやすく、より高い分散性が得られるため好ましい。
【0092】
ブロックポリマーの合成は、例えば、先にAブロックを合成し、その後にBブロックを合成することで、A-Bブロックポリマーを製造できる。また、まず、Bブロックを合成し、次いでAブロックを合成し、さらにBブロックを合成することでB-A-Bブロックポリマーを製造できる。なお、Aブロック及びBブロックの合成順は任意である。
【0093】
リビングラジカル重合に使用するラジカル重合開始剤は、アゾ系化合物、過酸化物が好ましい。
【0094】
アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2、2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]が挙げられる。
【0095】
過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、又はジアセチルパーオキシドが挙げられる。重合開始剤は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0096】
重合の反応温度は、40~150℃が好ましく、50~110℃がより好ましい。反応時間は、3~30時間が好ましく、5~20時間がより好ましい。
【0097】
リビングラジカル重合は、公知の重合法で行うことができるところ、RAFT重合(可逆的付加開裂連鎖移動重合)が好ましい。RAFT重合は、RAFT剤の存在下、モノマーをラジカル重合する方法であり、ポリマーの分子量及び分子量分布を制御しやすい。
【0098】
RAFT剤は、連鎖移動効果、及び重合開始効果を有する化合物であり、例えば、ジチオベンゾエート型、トリチオカーボネート型、ジチオカルバメート型、キサンテト型、これらの前駆体であるジスルフィド型が挙げられる。
【0099】
ジチオベンゾエート型としては、例えば、ジチオ安息香酸2-シアノ-2-プロピル、4-シアノ-4-(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸、ベンゾジチオ酸2-フェニル-2-プロピルが挙げられる。
【0100】
トリチオカーボネート型としては、例えば、4-[(2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-4-シアノペンタン酸、2-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-シアノ-2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル、2-メチル-2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、S,S-ジベンジルトリチオ炭酸、トリチオ炭酸=ビス[4-(アリルオキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス[4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス{4-[エチル-(2-アセチルオキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸=ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンジル]が挙げられる。
【0101】
ジチオカルバメート型としては、例えば、4-クロロ-3,5-ジメチルピラゾ-ル-1-カルボジチオ酸2'-シアノブタン-2'-イル、3,5-ジメチルピラゾ-ル-1-カルボジチオ酸2'-シアノブタン-2'-イル、3,5-ジメチルピラゾ-ル-1-カルボジチオ酸シアノメチル、N-メチル-N-フェニルジチオカルバミン酸シアノメチルが挙げられる。
【0102】
ジスルフィド型としては、例えば、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィド、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィドが挙げられる。これらはA-Bブロックポリマーの製造に好ましい。
【0103】
これらの中でも、合成時の反応制御が容易なトリチオカーボネート型化合物が好ましく、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-シアノ-2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル、トリチオ炭酸ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィドがより好ましい。
【0104】
RAFT剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
【0105】
ブロックアクリル型塩基性分散剤の合成においては、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、又はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0106】
(カルボキシ基を有する樹脂型分散剤)
また、本発明で使用する樹脂型分散剤は、例えば、カルボキシ基を有する樹脂型分散剤として、下記(S1)又は(S2)を含有することも好ましい。
(S1)水酸基を有する重合体の水酸基と、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物である樹脂型分散剤。
(S2)水酸基を有する化合物の水酸基と、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、エチレン性不飽和単量体を重合した重合体である樹脂型分散剤。
【0107】
[樹脂型分散剤(S1)]
樹脂型分散剤(S1)は、WO2008/007776号公報、特開2008-029901号公報、特開2009-155406号公報等の公知の方法で製造することができる。水酸基を有する重合体(p)は、末端に水酸基を有する重合体であることが好ましく、例えば、水酸基を有する化合物(q)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(r)を重合した重合体として得ることができる。水酸基を有する化合物(q)としては、分子内に水酸基とチオール基を有する化合物であることが好ましい。末端の水酸基は複数であることが好ましいため、中でも、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(q1)が好適に用いられる。
【0108】
すなわち、より好ましい一例である、片末端に2つの水酸基を有する重合体は、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(q1)の存在下に、単量体(r1)を含むエチレン性不飽和単量体(r)を重合した重合体(p1)として得ることができる。水酸基を有する重合体(p)の水酸基は、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基と反応してエステル結合を形成する一方、無水環は開環し、カルボン酸を生じる。
【0109】
[樹脂型分散剤(S2)]
樹脂型分散剤(S2)は、特開2009-155406号公報、特開2010-185934号公報、特開2011-157416号公報等の公知の方法で製造することができ、例えば、水酸基を有する化合物(q)の水酸基と、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、エチレン性不飽和単量体(r)を重合することで得られる。中でも、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(q1)の水酸基と、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、単量体(r1)を含むエチレン性不飽和単量体(r)を重合した重合体であることが好ましい。
【0110】
(S1)と(S2)は、エチレン性不飽和単量体(r)を重合した重合体部位の導入を先に行うか後で行うかの違いである。諸条件により分子量等が若干異なることがあるが、原料と反応条件が同じであれば、理論上は同じものができる。
【0111】
樹脂型分散剤は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0112】
《界面活性剤》
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート等のノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物等のカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0113】
樹脂型分散剤、界面活性剤を添加する場合の配合量は、顔料の全量を基準(100質量%)として、好ましくは0.1~200質量%、さらに好ましくは0.1~150質量%である。樹脂型分散剤、界面活性剤の配合量が上記範囲であることにより、好ましい分散性を発現させることができる。
【0114】
<光重合性単量体>
本発明の顔料組成物は、さらに光重合性単量体及び/又は光重合開始剤を添加し、感光性顔料組成物として使用することができる。本発明の光重合性単量体には、紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれ、これらを単独で、又は2種以上混合して用いることができる。モノマーの配合量は、着色剤の全質量を基準(100質量%)として、5~150質量%であることが好ましく、光硬化性及び現像性の観点から10~100質量%であることがより好ましい。
【0115】
紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマー、オリゴマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、
スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0116】
これらの市販品としては、日本化薬社製のKAYARAD R-128H、R526、PEG400DA、MAND、NPGDA、R-167、HX-220、R-551、R712、R-604、R-684、GPO-303、TMPTA、DPHA、DPEA-12、DPHA-2C、D-310、D-330、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120、及び東亜合成社製のアロニックスM-303、M-305、M-306、M-309、M-310、M-321、M-325、M-350、M-360、M-313、M-315、M-400、M-402、M-403、M-404、M-405、M-406、M-450、M-452、M-408、M-211B、M-101A、大阪有機社製のビスコート#310HP、#335HP、#700、#295、#330、#360、#GPT、#400、#405、新中村化学社製のNKエステルA-9300等を好適に使用することができる。
【0117】
(酸基を有する重合性化合物)
本発明における光重合性単量体は、酸基を有する重合性化合物を含有してもよい。酸基としては、スルホン酸基やカルボキシル基、リン酸基等を挙げることができる。
酸基を有する重合性化合物はアルカリ可溶性が高いため、特に微細パターンを形成するうえでは、酸基を有する重合性化合物を含有すると好ましい。
【0118】
酸基を有する重合性化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との遊離水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート類と、ジカルボン酸類とのエステル化物;多価カルボン酸と、モノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類とのエステル化物等を挙げることができる。具体例としては、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のモノヒドロキシオリゴアクリレート又はモノヒドロキシオリゴメタクリレート類と、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸等のジカルボン酸類との遊離カルボキシル基含有モノエステル化物;プロパン-1,2,3-トリカルボン酸(トリカルバリル酸)、ブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸等のトリカルボン酸類と、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のモノヒドロキシモノアクリレート又はモノヒドロキシモノメタクリレート類との遊離カルボキシル基含有オリゴエステル化物等が挙げられるが、本発明の効果はこれらに限定されるものではない。
【0119】
これらの市販品としては、大阪有機社製のビスコート#2500P、及び東亜合成社製アロニックスM-5300、M-5400、M-5700、M-510、M-520等を好適に使用することができる。
【0120】
(ウレタン結合を有する重合性化合物)
本発明における光重合性単量体は、エチレン性不飽和結合とウレタン結合を少なくとも1つずつ含有する重合性化合物を含有してもよい。例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレートに多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレートや、アルコールに多官能イソシアネートを反応させ、さらに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0121】
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレー、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルプロピルメタクリレート、エポキシ基含有化合物とカルボキシ(メタ)アクリレートの反応物、水酸基含有ポリオールポリアクリレート等が挙げられる。
【0122】
また、多官能イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0123】
これらの市販品としては、共栄社化学社製のAH-600、AT-600、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、UF-8001G、DAUA-167、新中村化学工業社製のUA-160TM、大阪有機化学工業社製のUV-4108F、UV-4117F等を好適に使用することができる。
なお、水酸基を有する重合性化合物はアルカリ現像液と親和性が高いので、微細パターンを形成するうえでは、水酸基を有する化合物を含有することが好ましい。
【0124】
上記の光重合性単量体は、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0125】
光重合性単量体の配合量は、感光性着色組成物の全不揮発分を基準(100質量部)として、1~50質量部であることが好ましく、光硬化性及び現像性の観点から2~40質量部であることがより好ましい。
【0126】
<光重合開始剤>
本発明の顔料組成物は、該組成物を紫外線照射により硬化させることができる。光重合開始剤を使用する際の配合量は、着色剤の全量を基準として、1~200質量%であることが好ましく、光硬化性及び現像性の観点から2~150質量%であることがより好ましい。
【0127】
光重合開始剤としては、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、又は2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、又はベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、又は3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、又は2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、又は2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、又はO-(アセチル)-N-(1-フェニル-2-オキソ-2-(4’-メトキシ-ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン等のオキシムエステル系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、又は2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物;9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物;ボレート系化合物;カルバゾール系化合物;イミダゾール系化合物;あるいは、チタノセン系化合物が用いられる。
特に、オキシムエステル系化合物は感度が高く、少量で光硬化性を発現するため、微細パターンを形成するうえでは、オキシムエステル系化合物を使用することが好ましい。
【0128】
<増感剤>
さらに、本発明の顔料組成物には、増感剤を含有させることができる。増感剤としては、例えば、カルコン誘導体、ジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2-ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ-ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、又はミヒラーケトン誘導体、α-アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’-ジエチルイソフタロフェノン、3,3'又は4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンが挙げられる。
【0129】
さらに具体的には、大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、及び「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の増感剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す増感剤を含有させることもできる。
【0130】
増感剤は、必要に応じて任意の比率で2種以上用いても構わない。増感剤を使用する際の配合量は、顔料組成物中に含まれる光重合開始剤の全質量を基準(100質量%)として、1~60質量%であることが好ましく、光硬化性、現像性の観点から2~50質量%であることがより好ましい。
【0131】
<アミン系化合物>
また、本発明の顔料組成物には、溶存している酸素を還元する働きのあるアミン系化合物を含有させることができる。このようなアミン系化合物としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、及びN,N-ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。
【0132】
<レベリング剤>
本発明の顔料組成物には、組成物のレベリング性を良くするため、レベリング剤を添加することが好ましい。レベリング剤としては、主鎖にポリエーテル構造又はポリエステル構造を有するジメチルシロキサンが好ましい。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、東レ・ダウコーニング社製FZ-2122、ビックケミー社製BYK-333などが挙げられる。主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、ビックケミー社製BYK-310、BYK-370などが挙げられる。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンと、主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンとは、併用することもできる。レベリング剤の含有量は通常、顔料組成物の全質量を基準(100質量%)として、0.003~0.5質量%用いることが好ましい。
【0133】
レベリング剤として特に好ましいものとしては、分子内に疎水基と親水基を有するいわゆる界面活性剤の一種で、親水基を有しながらも水に対する溶解性が小さく、顔料組成物に添加した場合、その表面張力低下能が低いという特徴を有し、さらに表面張力低下能が低いにも拘らずガラス板への濡れ性が良好なものが有用であり、泡立ちによる膜の欠陥が出現しない添加量において十分に帯電性を抑止できるものが好ましく使用できる。このような好ましい特性を有するレベリング剤として、ポリアルキレンオキサイド単位を有するジメチルポリシロキサンが好ましく使用できる。ポリアルキレンオキサイド単位としては、ポリエチレンオキサイド単位、ポリプロピレンオキサイド単位があり、ジメチルポリシロキサンは、ポリエチレンオキサイド単位とポリプロピレンオキサイド単位とを共に有していてもよい。
【0134】
また、ポリアルキレンオキサイド単位のジメチルポリシロキサンとの結合形態は、ポリアルキレンオキサイド単位がジメチルポリシロキサンの繰り返し単位中に結合したペンダント型、ジメチルポリシロキサンの末端に結合した末端変性型、ジメチルポリシロキサンと交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマー型のいずれであってもよい。ポリアルキレンオキサイド単位を有するジメチルポリシロキサンは、東レ・ダウコーニング株式会社から市販されており、例えば、FZ-2110、FZ-2122、FZ-2130、FZ-2166、FZ-2191、FZ-2203、FZ-2207が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
レベリング剤には、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は両性の界面活性剤を補助的に加えることも可能である。界面活性剤は、2種以上混合して使用しても構わない。
【0136】
レベリング剤に補助的に加えるアニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルが挙げられる。
【0137】
レベリング剤に補助的に加えるカオチン性界面活性剤としては、例えば、アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。レベリング剤に補助的に加えるノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤、フッ素系やシリコーン系の界面活性剤が挙げられる。
【0138】
<硬化剤、硬化促進剤>
また本発明の顔料組成物には、熱硬化性樹脂の硬化を補助するため、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤などを含んでいてもよい。硬化剤としては、フェノール系樹脂、アミン系化合物、酸無水物、活性エステル、カルボン酸系化合物、スルホン酸系化合物などが有効であるが、特にこれらに限定されるものではなく、熱硬化性樹脂と反応し得るものであれば、いずれの硬化剤を使用してもよい。また、これらの中でも、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物、アミン系硬化剤が好ましく挙げられる。前記硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物(例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等)、4級アンモニウム塩化合物(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等)、ブロックイソシアネート化合物(例えば、ジメチルアミン等)、イミダゾール誘導体二環式アミジン化合物及びその塩(例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等)、リン化合物(例えば、トリフェニルホスフィン等)、グアナミン化合物(例えば、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等)、S-トリアジン誘導体(例えば、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等)などを用いることができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記硬化促進剤の含有量としては、熱硬化性樹脂全量に対し、0.01~15質量%が好ましい。
【0139】
<硬化剤、硬化促進剤>
また本発明の顔料組成物には、熱硬化性樹脂の硬化を補助するため、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤などを含んでいてもよい。硬化剤としては、フェノール系樹脂、アミン系化合物、酸無水物、活性エステル、カルボン酸系化合物、スルホン酸系化合物などが有効であるが、特にこれらに限定されるものではなく、熱硬化性樹脂と反応し得るものであれば、いずれの硬化剤を使用してもよい。また、これらの中でも、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物、アミン系硬化剤が好ましく挙げられる。前記硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物(例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等)、4級アンモニウム塩化合物(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等)、ブロックイソシアネート化合物(例えば、ジメチルアミン等)、イミダゾール誘導体二環式アミジン化合物及びその塩(例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等)、リン化合物(例えば、トリフェニルホスフィン等)、グアナミン化合物(例えば、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等)、S-トリアジン誘導体(例えば、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等)を用いることができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記硬化促進剤の含有量としては、熱硬化性樹脂全量に対し、0.01~15質量%が好ましい。
【0140】
<その他の添加剤成分>
本発明の顔料組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。また、基材との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
【0141】
貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸及びそのメチルエーテル、t-ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩が挙げられる。貯蔵安定剤は、着色剤の全量を基準(100質量%)として、0.1~10質量%の量で用いることができる。
【0142】
密着向上剤としては、例えば、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等のシランカップリング剤が挙げられる。密着向上剤は、顔料組成物中の着色剤の全量を基準(100質量%)として、0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%の量で用いることができる。
【0143】
<粗大粒子の除去>
本発明の顔料組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子及び混入した塵の除去を行うことが好ましい。このように顔料組成物は、実質的に0.5μm以上の粒子を含まないことが好ましい。より好ましくは0.3μm以下であることが好ましい。
【0144】
<顔料組成物を含む膜とその利用>
本発明の顔料組成物を、例えば、溶剤揮発、露光(光硬化)又は加熱(熱硬化)によって硬化することで、本発明の顔料組成物を含む膜が得られる。膜の形成方法は、上記に限定されない。
光硬化において露光する光線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV-LED等が使用できる。また、露光後、硬化物の物性を安定化させるためにポストベークを施してもよい。ポストベークの方法としては、特に限定されないが、通常、ホットプレート、オーブン等を使用して、50~260℃、1~120分間の範囲で行われる。
熱硬化における加熱条件としては、特に限定されないが、通常、50~300℃、1~120分間の範囲から適宜選択される。また、加熱手段としては、特に限定されないが、例えばホットプレート、オーブン等が挙げられる。
【0145】
上記本発明の顔料組成物を含む膜は、800~1600nmの波長領域において高屈折率となり、赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光学レンズ、又は、赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光導波路の形成材料として好適である。
【0146】
なお、上記本発明の顔料組成物は、ドーム状、シート状等、任意の形状に成形し、膜を作製することができる。
【0147】
例えば、次のようにして成形することができる。ガラス等の透明基板上に、光重合開始剤及び光重合性単量体を含有する本発明の顔料組成物をポッティングし、その上から所望の成形加工型を押し当てることにより、上記成形加工型内へ顔料組成物を充填させ、そこへ光照射を行うことにより硬化させることができる。そして、その後、上記成形加工型を取り外すことにより、透明基板上で一体化された顔料組成物の硬化物を得ることができる。あるいは、光を透過する透明型内へ顔料組成物を充填し光硬化させることも可能である。このような製法により、例えばハイブリッドレンズを作製することができる。また、本発明の顔料組成物は、成形加工型内でそれ自身単独で硬化させて光学レンズ等の光学部品とすることもできる。
また、マイクロレンズとして成形することもできる。マイクロレンズの製造方法の1つとして、エッチバック法が知られている。本発明の顔料組成物の塗膜上にレジストパターンを形成し、熱処理によってこのレジストパターンをリフローしてレンズパターンを形成する。このレジストパターンをリフローして形成したレンズパターンをエッチングマスクとして、下層の本発明の顔料組成物の塗膜をエッチバックし、レンズパターン形状を本発明の顔料組成物の膜に転写することによってマイクロレンズを作製する。また、マイクロレンズの別の製造方法として、光重合開始剤及びアルカリ可溶性樹脂を含む本発明の顔料組成物を露光・現像することによりレジストパターンを形成し、熱処理によりリフローすることにより、マイクロレンズを作製する方法もある。
また、光導波路として成形する場合は、例えば、光重合開始剤及びアルカリ可溶性樹脂を含む本発明の顔料組成物を露光・現像することによりレジストパターンを形成し、さらに光重合開始剤及びアルカリ可溶性樹脂を含み、屈折率の異なる別の樹脂組成物又は顔料組成物を露光・現像することにより隣接するレジストパターンを形成することにより、コア及びクラッドが形成し、光導波路を作製できる。
【0148】
なお、本明細書において、赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光学レンズとは、赤外線を集光するためのレンズを指し、例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、ピックアップ用レンズ、車載カメラ用レンズ、携帯カメラ用レンズ、デジタルカメラ用レンズ、OHP用レンズ、マイクロレンズが挙げられる。
【0149】
なお、本明細書において、赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光導波路とは、赤外線を伝搬させるための導波路を指し、シート状、板状等、その形状は限定されない。用途としては、例えば、コンピューターやセンサーデバイスの光通信等に使用するケーブルのほか、デバイス内部の光通信に用いる光インターコネクションや、また赤外線センサ等が赤外線をセンシングする際の光路上に使用される材料が挙げられる。
【実施例0150】
以下に、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下「質量部」は単に「部」、「質量%」は単に「%」と記載する。
【0151】
<イソインドリン系顔料の製造>
【0152】
(合成例1-1)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した3Lの4口フラスコに、水700部、1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmol、28%アンモニア水100部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-メチルアセトアミド361.7mmolを水100部に溶解させた溶液を、滴下漏斗にて30分かけて滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。原料の消失はUPLC(超高速高分離液体クロマトグラフィ)にて確認した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いてろ別し、固形分を得た。この固形分の全量を以下の反応に使用した。
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した3Lの4口フラスコに、原料として先の調製で得た固形分の全量、水1200部、80%酢酸400部を加え、撹拌した。そこへバルビツール酸396.1mmolを加え、85℃にて撹拌した。加熱撹拌は、原料として使用した上記固形分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、この反応スラリーを室温まで冷却後、ブフナー漏斗を用いてろ別し、水2000部にて3回洗浄を行って固形分を得た。この固形分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン系顔料(a-1)を105.7部(収率91%)得た。
【0153】
(合成例1-2)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した3Lの4口フラスコに、水800部、80%酢酸800部を加え、撹拌した。そこへバルビツール酸688.9mmolを加え、85℃にて撹拌し、バルビツール酸を溶解させた。そこへ1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmolを加え、85℃にて撹拌した。撹拌は、原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。その後、この反応スラリーを室温まで冷却後、ブフナー漏斗を用いてろ別し、水2000部にて3回洗浄を行って固形分を得た。この固形分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物(a-2)を121.5部(収率96%)得た。
【0154】
(合成例1-3)
合成例1-1の2-シアノ-N-メチルアセトアミドを2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリルに変更した以外は、合成例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-3)を130.7(収率89%)得た。
【0155】
(合成例1-4)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した3Lの4口フラスコに、水1200部、1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmol、28%アンモニア水200部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-(3,4-ジクロロフェニル)アセトアミド792.3mmolを水200部に溶解させた溶液を、滴下漏斗にて30分かけて滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。原料の消失はUPLC(超高速高分離液体クロマトグラフィ)にて確認した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いてろ別し、固形分を得た。
その後、この反応スラリーをブフナー漏斗を用いてろ別し、水2000部にて3回洗浄を行って固形分を得た。この固形分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン系顔料(a-4)を127.5部(収率65%)得た。
【0156】
(合成例1-5)
合成例1-1の2-シアノ-N-メチルアセトアミドをN-(4-クロロフェニル)-2-シアノアセトアミドに、バルビツール酸を1-(4-メチルフェニル)バルビツール酸に変更した以外は、合成例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-5)を158.8部(収率88%)得た。
【0157】
(合成例1-6)
合成例1-1のバルビツール酸を1,3-ジメチルバルビツール酸に変更した以外は、合成例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-6)を115.8部(収率92%)得た。
【0158】
(合成例1-7)
合成例1-2のバルビツール酸を1,3-ジメチルバルビツール酸に変更した以外は、合成例1-2と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-7)を138.6部(収率95%)得た。
【0159】
(合成例1-8)
合成例1-1の1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmolを1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン256.1mmolに、2-シアノ-N-メチルアセトアミド361.7mmolを268.9mmolに、バルビツール酸396.1mmolを294.5mmolに変更した以外は、合成例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-8)を88.3部(収率89%)得た。
【0160】
(合成例1-9)
合成例1-2の1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmolを1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン256.1mmolに、バルビツール酸688.9mmolを537.9mmolに変更した以外は、合成例1-2と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-9)を96.2部(収率90%)得た。
【0161】
(合成例1-10)
合成例1-4の2-シアノ-N-(3,4-ジクロロフェニル)アセトアミドを2-シアノ-N-メチルアセトアミドに変更した以外は、合成例1-4と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-10)を54.0部(収率51%)得た。
【0162】
(合成例1-11)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した3Lの4口フラスコに、水700部、1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmol、28%アンモニア水100部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-メチルアセトアミド396.1mmolを水100部に溶解させた溶液を、滴下漏斗にて30分かけて滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。原料の消失はUPLC(超高速高分離液体クロマトグラフィ)にて確認した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いてろ別し、固形分を得た。この固形分の全量を以下の反応に使用した。
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した3Lの4口フラスコに、原料として先の調製で得た固形分の全量、水1200部、28%アンモニア水150部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-(3,4-ジクロロフェニル)アセトアミド396.1mmolを水100部に溶解させた溶液を、滴下漏斗にて30分かけて滴下した。30℃にて原料として使用した上記固形分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、この反応スラリーをブフナー漏斗を用いてろ別し、水2000部にて3回洗浄を行って固形分を得た。この固形分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン系顔料(a-11)を69.4部(収率46%)得た。
【0163】
(合成例1-12)
合成例1-4の2-シアノ-N-(3,4-ジクロロフェニル)アセトアミドを2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリルに変更した以外は、合成例1-4と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-12)を73.6部(収率44%)得た。
【0164】
(合成例1-13)
合成例1-2のバルビツール酸を1-(4-メチルフェニル)バルビツール酸に変更した以外は、合成例1-2と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-13)を160.3部(収率85%)得た。
【0165】
(合成例1-14)
合成例1-1のバルビツール酸を1-(4-メチルフェニル)バルビツール酸に変更した以外は、合成例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-14)を123.7部(収率84%)得た。
【0166】
(合成例1-15)
合成例1-1の1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmolを4-メトキシ-1,3-ジイミノイソインドリン285.4mmolに、2-シアノ-N-メチルアセトアミド361.7mmolを299.7mmolに、バルビツール酸396.1mmolを328.2mmolに変更した以外は、合成例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-15)を81.8部(収率78%)得た。
【0167】
(合成例1-16)
合成例1-15のバルビツール酸を1,3-ジメチルバルビツール酸に変更した以外は、合成例1-15と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-16)を86.9部(収率77%)得た。
【0168】
(合成例1-17)
合成例1-2の1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmolを4-メトキシ-1,3-ジイミノイソインドリン285.4mmolに、バルビツール酸688.9mmolを570.8mmolに変更した以外は、合成例1-2と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-17)を93.0部(収率82%)得た。
【0169】
(合成例1-18)
合成例1-17のバルビツール酸を1,3-ジメチルバルビツール酸に変更した以外は、合成例1-17と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-18)を103.5部(収率80%)得た。
【0170】
(合成例1-19)
合成例1-15の2-シアノ-N-メチルアセトアミドを2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリルに変更した以外は、合成例1-15と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-19)を96.4部(収率74%)得た。
【0171】
(合成例1-20)
合成例1-17のバルビツール酸を1-(4-メチルフェニル)バルビツール酸に変更した以外は、合成例1-17と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-20)を118.6部(収率75%)得た。
【0172】
(合成例1-21)
合成例1-4の1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmolを4-メトキシ-1,3-ジイミノイソインドリン285.4mmolに、2-シアノ-N-(3,4-ジクロロフェニル)アセトアミド792.3mmolを656.4mmolに変更した以外は、合成例1-4と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-21)を71.8部(収率42%)得た。
【0173】
(合成例1-22)
合成例1-4の1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmolを1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン256.1mmolに、2-シアノ-N-(3,4-ジクロロフェニル)アセトアミド792.3mmolを2-シアノ-N-メチルアセトアミド589.1mmolに変更した以外は、合成例1-4と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-22)を36.6部(収率40%)得た。
【0174】
(合成例1-23)
合成例1-11の1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmolを1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン256.1mmolに、2-シアノ-N-メチルアセトアミド396.1mmolを294.5mmolに、2-シアノ-N-(3,4-ジクロロフェニル)アセトアミド396.1mmolを294.5mmolに変更した以外は、合成例1-11と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-23)を48.8部(収率39%)得た。
【0175】
(合成例1-24)
合成例1-22の2-シアノ-N-メチルアセトアミドを2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリルに変更した以外は、合成例1-22と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-24)を53.5部(収率39%)得た。
【0176】
(合成例1-25)
合成例1-11の1,3-ジイミノイソインドリン344.5mmolを1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン256.1mmolに、2-シアノ-N-メチルアセトアミド396.1mmolを294.5mmolに、2-シアノ-N-(3,4-ジクロロフェニル)アセトアミド396.1mmolを2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル294.5mmolに変更した以外は、合成例1-11と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-25)を46.9部(収率41%)得た。
【0177】
(合成例1-26)
合成例1-9のバルビツール酸を1-(4-メチルフェニル)バルビツール酸に変更した以外は、合成例1-9と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-26)を105.6部(収率69%)得た。
【0178】
(合成例1-27)
合成例1-8のバルビツール酸を1-(4-メチルフェニル)バルビツール酸に変更した以外は、合成例1-8と同様に反応操作を行い、イソインドリン系顔料(a-27)を83.2部(収率68%)得た。
【0179】
合成例1-1~1-27で得られたイソインドリン系顔料の構造を表1に示す。なお、例えば、合成例1-15の化合物に見られるように、Y及びYと、Y及びYとの関係が非対称となる場合は、化合物は異性体の混合物として得られる。
【0180】
イソインドリン化合物の同定は、マススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数(理論値)とを比較することによって実施した。マススペクトラムの分子イオンピークの測定は、Waters社のACQUITY UPLS H-Class(使用カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 Column 130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)/Ms TAP XEVO TQDを用いて実施した。イソインドリン化合物(合成例1-1~1-27)について、理論分子量と、質量分析の測定値を表1に示す。測定値は測定の性質上、化合物のH(プロトン)が脱離するため、理論分子量の質量数-(マイナス)1の値であれば、化合物が一致することになる。
【0181】
【表1】
【0182】
表1中、Phはフェニル基を表し、例えばPh-Meはフェニル基中の1つの水素がメチル基に置換された構造を表す。また、Npは、一般式(1)において、Y、Yが以下のような構造であることを表す。
【0183】
【化12】
【0184】
<微細化顔料の製造>
(イソインドリン系顔料(a-1)の微細化)
イソインドリン系顔料(a-1)を10部、塩化ナトリウム100部、エチレングリコール12.5部をステンレス製ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、60℃で12時間混練した。次に、混練した混合物を温水に投入し、約80℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状として、濾過及び水洗をして食塩及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ粉砕することにより、9.4部のイソインドリン系微細化顔料(a-1K)を得た。
【0185】
(イソインドリン系顔料(a-2)~(a-27)の微細化)
イソインドリン系顔料(a-2)~(a-27)についても、イソインドリン系顔料(a-1)同様に微細化処理を行い、イソインドリン系微細化顔料(a-2K)~(a-27K)を得た。
【0186】
(黄色微細化顔料(PY-1)の製造)
黄色顔料C.I.ピグメント イエロー 74(トーヨーカラー社製「LIONOGEN YELLOW 0390」)を200部、塩化ナトリウム1400部、及びジエチレングリコール360部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次に、この混練物を8リットルの温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリーを形成した。このスラリーを濾過し、水洗を繰り返すことによって塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、黄色微細化顔料(PY-1)を得た。
【0187】
(黄色微細化顔料(PY-2)の製造)
黄色顔料C.I.ピグメント イエロー 74を、黄色顔料C.I.ピグメント イエロー 12(トーヨーカラー社製「FINESS YELLOW G-20S-12」)に変更した以外は、黄色微細化顔料(PY-1)の製造と同様に行い、97部の黄色微細化顔料(PY-2)を得た。
【0188】
(赤色微細化顔料(PR-1)の製造)
市販のC.I.ピグメントレッド242(PR242)(クラリアント社製「Sandorin Scarlet 4RF」)100部、塩化ナトリウム1200部、及びジエチレングリコール120部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、60℃で6時間混練し、ソルトミリング処理した。得られた混練物を3リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間撹拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、98部の赤色微細化顔料(PR-1)を得た。
【0189】
(赤色微細化顔料(PR-2)の製造)
C.I.ピグメントレッド242(PR242)(クラリアント社製「Sandorin Scarlet 4RF」)を、C.I.ピグメントレッド269(PR269)(山陽色素株式会社製「PermanentCarmine 3810」)に変更した以外は、赤色微細化顔料(PR-1)の製造と同様にして、97部の赤色微細化顔料(PR-2)を得た。
【0190】
(赤色微細化顔料(PR-3)の製造)
C.I.ピグメントレッド242(PR242)(クラリアント社製「Sandorin Scarlet 4RF」)を、C.I.ピグメントレッド57:1(トーヨーカラー社製「LIONOL RED TT-5701G」)に変更した以外は、赤色微細化顔料(PR-1)の製造と同様にして、96部の赤色微細化顔料(PR-3)を得た。
【0191】
(赤色微細化顔料(PR-4)の製造)
C.I.ピグメントレッド242(PR242)(クラリアント社製「Sandorin Scarlet 4RF」)を、C.I.ピグメントレッド48:3(トーヨーカラー社製「LIONOL RED TT-4803」)に変更した以外は、赤色微細化顔料(PR-1)の製造と同様にして、99部の赤色微細化顔料(PR-4)を得た。
【0192】
(赤色微細化顔料(PR-5)の製造)
C.I.ピグメントレッド242(PR242)(クラリアント社製「Sandorin Scarlet 4RF」)を、C.I.ピグメントレッド146(トーヨーカラー社製「LIONOL RED 5620」)に変更した以外は、赤色微細化顔料(PR-1)の製造と同様にして、97部の赤色微細化顔料(PR-5)を得た。
【0193】
(青色微細化顔料(PB-1)の製造)
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメントブルー15:6(トーヨーカラー社製「リオノールブルーES」)100部、粉砕した食塩800部、及びジエチレングリコール100部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、70℃で12時間混練した。この混合物を温水3000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩及び溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、98部の青色微細化顔料(PB-1)を得た。
【0194】
(紫色微細化顔料(PV-1)の製造)
ジオキサジン系紫色顔料C.I.ピグメントバイオレット23(Clariant社製「FastVioletRL」)120部、粉砕した食塩1600部、及びジエチレングリコール100部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、90℃で18時間混練した。この混合物を温水5000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩及び溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、118部の紫色微細化顔料(P-2)を得た。
【0195】
<顔料の平均一次粒子径の測定>
顔料の平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定した。具体的には、個々の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、平均をその顔料粒子の粒径とした。次に、100個以上の顔料粒子について、それぞれの粒子の体積(質量) を、求めた粒径の立方体と近似して求め、体積平均粒径を平均一次粒子径とした。
なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)を用いた。
この方法で測定した結果、イソインドリン系顔料(a-1)の平均一次粒子径は460nmであった。
上記方法により測定した顔料及び微細化顔料の平均一次粒子径を、表2-1に示す。なお、(a-1)、(a-2)は、上記微細化処理を行う前のクルード顔料である。
【0196】
【表2】
【0197】
<顔料の金属原子の含有量の測定>
顔料は、微量の金属原子を含むことが一般的である。
顔料(a-1K)、(a-2K)、(a-6K)について、金属原子の含有量を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定したところ、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Ti、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、SiおよびAlがいずれも微量含まれていた。これらの金属原子の含有量を表2-2に示す。
【0198】
【表2】

【0199】
<染料の製造>
(赤色染料(DR-1)の製造)
赤色酸性染料C.I.ベーシックレッド12を39.2部、水392部、メタノール39.2部を混合し、塩化ジデシルジメチルアンモニウム36.2部を水362部に溶解させた溶液を少しずつ加えた。徐々に粉体が析出してきたので、ヌッチェ上でこれを濾過し、水200部を2回ふりかけ洗浄した。その後、粉体を取り出し、80℃で8時間乾燥し、C.I.ベーシックレッド12と塩化ジデシルジメチルアンモニウムの造塩物である赤色染料(DR-1)70.1部を得た。
【0200】
(赤色染料(DR-2)の製造)
赤色酸性染料C.I.アシッドレッド52を58.0部、水580部、メタノール58.0部を混合し、塩化ジデシルジメチルアンモニウム36.2部を水362部に溶解させた溶液を少しずつ加えた。徐々に粉体が析出してきたので、ヌッチェ上でこれを濾過し、水200部を2回ふりかけ洗浄した。その後、粉体を取り出し、80℃で8時間乾燥し、C.I.アシッドレッド52と塩化ジデシルジメチルアンモニウムの造塩物である赤色染料(DR-2)90.6部を得た。
【0201】
(黄色染料(DY-1)の製造)
黄色酸性染料C.I.アシッドイエロー49を42.6部、水426部、メタノール42.6部を混合し、塩化ジデシルジメチルアンモニウム36.2部を水362部に溶解させた溶液を少しずつ加えた。徐々に粉体が析出してきたので、ヌッチェ上でこれを濾過し、水200部を2回ふりかけ洗浄した。その後、粉体を取り出し、80℃で8時間乾燥し、C.I.アシッドレッド52と塩化ジデシルジメチルアンモニウムの造塩物である黄色染料(DY-1)90.6部を得た。
【0202】
<バインダー樹脂溶液の調製>
(バインダー樹脂溶液1の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn-ブチルメタクリレート13.3部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量26000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してバインダー樹脂溶液1を調製した。ここで、バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0203】
(バインダー樹脂溶液2の調製)
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管及び撹拌装置を備えたセパラブル4口フラスコにシクロヘキサノン370部を仕込み、80℃に昇温し、フラスコ内を窒素置換した後、滴下管より、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成社製アロニックスM110)18部、ベンジルメタクリレート10部、グリシジルメタクリレート18.2部、メタクリル酸メチル25部、及び2,2 '-アゾビスイソブチロニトリル2.0部の混合物を2 時間かけて滴下した。滴下後、更に100℃ で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1.0部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、更に100℃ で1時間反応を続けた。次に、容器内を空気置換に替え、アクリル酸9.3部(グリシジル基の100%)にトリスジメチルアミノフェノール0.5部及びハイドロキノン0.1部を上記容器内に投入し、120℃で6時間反応を続け固形分酸価0.5となったところで反応を終了し、共重合体溶液を得た。更に、引き続きテトラヒドロ無水フタル酸19.5部(生成した水酸基の100%)、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で3.5時間反応させカルボキシル基と、共重合体溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにシクロヘキサノンを添加してバインダー樹脂溶液2を調製した。重量平均分子量(Mw)は19000であった。
【0204】
<樹脂型分散剤の調製>
(塩基性樹脂型分散剤1溶液の調製)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、メチルメタクリレート60部、nーブチルメタクリレート20部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル9.3部、塩化第一銅5.6部、PGMAc133部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応装置に、PGMAc61部、第二ブロックモノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレート20部(以下、DMという)を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。ジメチルアミノエチルメタクリレート投入から2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認し、反応溶液を室温まで冷却して重合を停止した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40質量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が71.4mgKOH/g、重量平均分子量9900(Mw)、不揮発分が40質量%のポリ(メタ)アクリレート骨格であり、3級アミノ基を有する塩基性樹脂型分散剤1溶液を得た。
【0205】
(塩基性樹脂型分散剤溶液2の調整)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、メチルメタクリレート60部、nーブチルメタクリレート20部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル9.3部、塩化第一銅5.6部、PGMAc133部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応装置に、PGMAc61部、第二ブロックモノマーとしてメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液25.6部(三菱レイヨン社製「アクリエステルDMC78」)を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド投入から2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認し、反応溶液を室温まで冷却して重合を停止した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40重量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が29.4mgKOH/g、重量平均分子量9800(Mw)の、ポリ(メタ)アクリレート骨格と4級アンモニウム塩基を有する塩基性樹脂型分散剤溶液2を得た。
【0206】
(塩基性樹脂型分散剤溶液3の調整)
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、4-ジメチルアミノ-1,2-エポキシブタン55部、テトラヒドロフラン(THF)120部を仕込み、70℃で加熱撹拌し、メタクリル酸35部を60分かけて滴下した。滴下完了後、70℃でさらに2時間加熱撹拌しH-NMRで反応が完結していることを確認したのち、室温に放冷した。反応溶液を、イオン交換水300部、飽和炭酸水素ナトリウム200部、飽和食塩水200部で順次洗浄後、有機層に硫酸マグネシウム20gを加え、撹拌後、ろ過を行った。得られた溶液の溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、淡黄色透明の液体として、下記のモノマー(b-3)を31部得た(収率42%)。得られた化合物の同定は、H-NMRで実施した。
【0207】
モノマー(b-3)
【化11】
【0208】
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メチルメタクリレート17.6部、n-ブチルメタクリレート52.8部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル2.6部、塩化第一銅5.6部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応槽に、PGMAc25部、第二ブロックモノマーとして、エチレン性不飽和単量体(b-3)25.1部を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。エチレン性不飽和単量体(b-3)投入から2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認した。
さらに、この反応装置に、ベンジルクロライド4.5部を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま3時間撹拌し、その後冷却した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40重量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が50mgKOH/g、4級アンモニウム塩価が20mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9,800、不揮発分が40重量%の塩基性樹脂型分散剤溶液3を得た。
【0209】
(酸性樹脂型分散剤溶液1の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート45部、メタクリル酸5部、n-ブチルメタクリレート50部、PGMAc45.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6部を添加して、さらにAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.12部を加え、12時間反応した。不揮発分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物9.7部、PGMAc70.3部、触媒としてDBU(1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン)0.20部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。PGMAcを加えて不揮発分40%に調整した。このようにして、酸価75、重量平均分子量9000、ポリ(メタ)アクリレート骨格であり、芳香族カルボキシ基を有する酸性樹脂型分散剤溶液1を得た。
【0210】
(酸性樹脂型分散剤溶液2の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート50部、n-ブチルメタクリレート50部、PGMAc45.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6部を添加して、さらにAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.12部を加え、12時間反応した。不揮発分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物9.7部、PGMAc70.3部、触媒としてDBU(1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン)0.20部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。PGMAcを加えて不揮発分40%に調整した。このようにして、酸価43、重量平均分子量9000、ポリ(メタ)アクリレート骨格であり、芳香族カルボキシ基を有する酸性樹脂型分散剤溶液2を得た。
【0211】
(酸性樹脂型分散剤溶液3の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート50部、n-ブチルメタクリレート50部、PGMAc45.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6部を添加して、さらにAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.12部を加え、12時間反応した。不揮発分測定により95%が反応したことを確認した。次に、トリメリット酸無水物19.2部、PGMAc70.3部、触媒としてDBU(1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン)0.20部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。PGMAcを加えて不揮発分40%に調整した。このようにして、酸価90、重量平均分子量9000、ポリ(メタ)アクリレート骨格であり、芳香族カルボキシ基を有する酸性樹脂型分散剤溶液3を得た。
【0212】
(酸性樹脂型分散剤溶液4の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート45部、メタクリル酸5部、n-ブチルメタクリレート50部、PGMAc45.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール2部を添加して、さらにAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.12部を加え、12時間反応した。不揮発分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物3.2部、PGMAc70.3部、触媒としてDBU(1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン)0.20部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。PGMAcを加えて不揮発分40%に調整した。このようにして、酸価47、重量平均分子量18000、ポリ(メタ)アクリレート骨格であり、芳香族カルボキシ基を有する酸性樹脂型分散剤溶液4を得た。
【0213】
(酸性樹脂型分散剤溶液5の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、1-チオグリセロール108部、ピロメリット酸無水物174部、PGMAc(メトキシプロピルアセテート)650部、触媒としてモノブチルスズオキシド0.2部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で5時間反応させた(第一工程)。酸価の測定で95%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した。次に、第一工程で得られた化合物を固形分換算で160部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート200部、エチルアクリレート200部、t-ブチルアクリレート150部、2-メトキシエチルアクリレート200部、メチルアクリレート200部、メタクリル酸50部、PGMAc663部を仕込み、反応容器内を80℃に加熱して、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.2部を添加し、12時間反応した(第二工程)。固形分測定により95%が反応したことを確認した。最後に、第二工程で得られた化合物の50%PGMAc溶液を500部、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)27.0部、ヒドロキノン0.1部を仕込み、IRにてイソシアネート基に基づく2270cm-1のピークの消失を確認するまで反応を行った(第三工程)。ピーク消失の確認後、反応溶液を冷却して、PGMAcで固形分調整することにより不揮発分40%の酸性樹脂型分散剤溶液5を得た。得られた分散剤の酸価は68、不飽和二重結合当量は1593、重量平均分子量は13000であった。
【0214】
(酸性樹脂型分散剤溶液6の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、tert-ブチルアクリレート50.0部、メチルメタクリレート50.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート25.0部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を50℃に加熱し、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6.0部を添加した。90℃に昇温し、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45.7部に溶解した溶液を添加して、10時間反応した。不揮発分測定により95%が反応したことを確認した。
次に、ピロメリット酸二無水物(ダイセル化学工業社製)を14.5部、PGMAc38.0部、触媒として1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン0.2部を追加し、120℃で5時間反応させた。その後、3-メトキシブタノール12.1gを追加し、120℃で3時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。反応終了後、不揮発分が40質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加して調製し、酸価95mgKOH/g、重量平均分子量9500の酸性樹脂型分散剤溶液6の溶液を得た。
【0215】
(酸性樹脂型分散剤溶液7の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6部、PMA14.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70.8部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、5時間反応させた。その後、3-メトキシブタノール12.1gを追加し、120℃で3時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した後、系内の温度を70℃に冷却し、t-ブチルアクリレート50.0部、メチルメタクリレート50.0部を仕込み、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート38.0部を添加して、10時間反応した。不揮発分測定により重合が95%進行したことを確認し反応を終了した。反応終了後、不揮発分が40質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加して調製し、酸価93mgKOH/g、重量平均分子量10800の酸性樹脂型分散剤溶液7の溶液を得た。
【0216】
(酸性樹脂型分散剤溶液8の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、大阪有機化学工業社製OXE-30((3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート)35部、メタクリル酸5部、t-ブチルメタクリレート60部、PGMAc45.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6部を添加して、さらにAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.12部を加え、12時間反応した。不揮発分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物9.7部、PGMAc70.3部、触媒としてDBU(1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン)0.20部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。PGMAcを加えて不揮発分40%に調整した。このようにして、酸価75、重量平均分子量9000、ポリ(メタ)アクリレート骨格であり、芳香族カルボキシ基を有する酸性樹脂型分散剤溶液8を得た。
【0217】
(酸性樹脂型分散剤溶液9の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール12部、PMA12部、トリメリット酸無水物11部、PGMAc35部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した後、系内の温度を70℃に冷却し、メチルメタクリレート80部とブチルアクリレート80部、ヒドロキシエチルメタクリレート20部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート20部を仕込み、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.5部を溶解したPGMAc溶液200部を添加して、10時間反応した。固形分測定により重合が95%進行したことを確認し反応を終了した。PGMAcを加えて不揮発分40%に調整し、酸価53、重量平均分子量10000の酸性樹脂型分散剤溶液9を得た。
【0218】
(酸性樹脂型分散剤溶液10の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール12部、PMA15部、ネオペンチルグリコール11部、トリメリット酸無水物14部、PGMAc52部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した後、系内の温度を70℃に冷却し、メチルメタクリレート80部とブチルアクリレート100部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート20部を仕込み、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.5部を溶解したPGMAc溶液200部を添加して、10時間反応した。固形分測定により重合が95%進行したことを確認し反応を終了した。PGMAcを加えて不揮発分40%に調整し、酸価63、重量平均分子量9000の酸性樹脂型分散剤溶液10を得た。
【0219】
<比較高屈折率樹脂の製造>
(比較高屈折率樹脂1)
高屈折率樹脂として、フルオレン系ポリエステルである比較高屈折率樹脂1を合成した。
1Lのセパラブルフラスコに、9-フルオレノン45g(0.25モル、大阪ガスケミカル(株)製)、エチレングリコールモノ(2-ナフチル)エーテル188g(1モル)、3-メルカプトプロピオン酸1gを投入した後に、60℃まで加温して完全に溶解させた。その後、硫酸54gを徐々に投入して、60℃を維持しつつ5時間攪拌したところ、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて9-フルオレノンの転化率が99%以上であることを確認できた。得られた反応液に48質量%水酸化ナトリウム水溶液を投入して中和した後、キシレン400gを添加して蒸留水にて数回洗浄し、冷却することで結晶を析出させた。さらに、ろ過して乾燥したところ、87g(収率67%)の結晶として、目的とする9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF)を得た。得られた結晶のHPLC純度を測定したところ、98.3%であった。なお、得られたサンプルは、1H-NMR及びマススペクトルにより、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF)であることを確認した。
【0220】
反応器に、上記のBNEF(0.80モル)、エチレングリコール(以下、EGという)(0.20モル)、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(以下、DMNという)(0.30モル)、9,9-ジ(2-メトキシカルボニルエチル)フルオレン(9,9-ジ(カルボキシエチル)フルオレン又はフルオレン-9,9-ジプロピオン酸のジメチルエステル、以下、FDPMという)0.70モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10-4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10-4モルを加えて攪拌しながら徐々に加熱溶融し、250℃まで昇温した後、10000Paまで段階的に減圧した。270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の攪拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0221】
なお、FDPMは、特開2005-89422号公報の実施例1において、アクリル酸t-ブチルに代えてアクリル酸メチルを用いて合成した。
【0222】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBNEF由来、20モル%がEG由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の30モル%がDMN由来、70モル%がFDPM由来であった。
【0223】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは31300、589nmにおける屈折率は1.66であった。
【0224】
得られたポリエステル樹脂を、シクロヘキサノンに不揮発分20%になるように溶解させ、比較高屈折率樹脂1とした。
【0225】
<顔料組成物の製造>
[実施例1]
(顔料組成物(D-1)の製造)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、顔料組成物(D-1)を作製した。
イソインドリン系微細化顔料(a-1K):8.0部
塩基性樹脂型分散剤1溶液 :8.0部
バインダー樹脂溶液1 :44.0部
PGMAc(メトキシプロピルアセテート):40.0部
【0226】
[実施例2~34、37~49、比較例1~10、製造例1、2]
(顔料組成物(D-2)~(D-56))
組成を表3に示す通りに変更した以外は、顔料組成物(D-1)と同様にして、顔料組成物(D-2)~(D-56)を作製した。
色素誘導体1の構造を下記に示す。
(色素誘導体1)
【化13】

【0227】
[比較例8]
(染料組成物(DD-1)の製造)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、染料組成物(DD-1)を作製した。
赤色染料(DR-1):10.0部
樹脂型分散剤1溶液 :10.0部
バインダー樹脂溶液1 :30.0部
PGMAc(メトキシプロピルアセテート):50.0部
【0228】
[比較例9、10]
(染料組成物(DD-2)~(DD-3))
組成を表3に示す通りに変更した以外は、染料組成物(DD-1)と同様にして、染料組成物(DD-2)~(DD-3)を作製した。
【0229】
【表3】
【0230】
【表3】

【0231】
[実施例35]
(顔料組成物(E-1))
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合し、顔料組成物(E-1)を作製した。
顔料組成物(D-42) :20.0部
顔料組成物(D-43) :20.0部
顔料組成物(D-6) :60.0部
なお、顔料組成物(D-6)はイソインドリン系微細化顔料(a-2K)を固形分中顔料濃度にして70%含有する分散液であり、顔料組成物(E-1)の固形分中にはイソインドリン系微細化顔料(a-2K)が42%含まれる。これを表4に示す。
【0232】
【表4】
【0233】
[実施例36]
(顔料組成物(E-2))
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合し、顔料組成物(E-2)を作製した。
顔料組成物(D-5) :100.0部
Tinuvin326 :2.0部
PGMAc :18.0部
Tinuvin326は、BASF社製紫外線吸収剤である。
なお、顔料組成物(D-5)はイソインドリン系微細化顔料(a-2K)を固形分中顔料濃度50%含有する分散液であり、顔料組成物(E-2)の固形分中にイソインドリン系微細化顔料(a-2K)が45.5%含まれる。これを表5に示す。
【0234】
【表5】
【0235】
<評価用膜の作製>
実施例1で製造した顔料組成物(D-1)を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて回転数を調整して塗布し、100℃10分間乾燥後、膜厚1.0μmの膜が形成された基板を得た。
【0236】
実施例2~49、比較例1~10についても、実施例1と同様の操作を行い、膜厚1.0μmの膜が形成された基板を得た。
【0237】
<評価>
上記評価用膜を用い、下記の評価を行った。結果を表6に示す。
[透明性]
上記膜が形成された基板について、ヘイズメーターでヘイズを測定し、下記の基準により透明性を判定した。
〇:ヘイズが0.5未満
△:ヘイズが0.5以上1.0未満
×:ヘイズが1.0以上
【0238】
[屈折率]
上記膜が形成された基板について、分光エリプソメトリー測定を行い、850nm、940nm、及び1550nmにおける屈折率を求めた。
【0239】
[耐光性]
上記膜が形成された基板について、キセノンウェザーメーターで、300~400nmが60W/mの照度で20時間暴露し、耐光性試験を行った。
400~700nmにおける極大吸収波長の吸光度の変化について、下記の基準により判定を行った。
〇:極大吸収波長の吸光度の減少率が5%未満
△:極大吸収波長の吸光度の減少率が5%以上、30%未満
×:極大吸収波長の吸光度の減少率が30%以上
【0240】
[耐熱性]
上記膜が形成された基板を250℃で1時間加熱し、耐熱性試験を行った。
400~700nmにおける極大吸収波長の吸光度の変化について、下記の基準により判定を行った。
〇:極大吸収波長の吸光度の減少率が5%未満
△:極大吸収波長の吸光度の減少率が5%以上、30%未満
×:極大吸収波長の吸光度の減少率が30%以上
【0241】
【表6】
【0242】
<比較高屈折率樹脂溶液1の評価>
比較高屈折率樹脂溶液1を100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した後、70℃で20分間乾燥させ、次いで230℃で30分間加熱処理を行った。
上記所作においてスピンコートの回転数を調整し、膜厚1.0μmの膜が形成された基板を得て、分光エリプソメトリー測定を行い、850nm及び940nm、1550nmにおける屈折率を求めたところ、850nmにおける屈折率は1.63、940nmにおける屈折率は1.62、1550nmにおける屈折率は1.60であった。
【0243】
<硬化性組成物の製造>
[実施例50]
(硬化性組成物(DC-1)の製造)
下記組成の混合物を均一になるように撹拌混合し、硬化性組成物(XR-1)を作製した。
顔料組成物(D-3): 100部
EHPE3150(エポキシ硬化剤、ダイセル化学工業社製): 3.3部
PGMAc: 13.3部
【0244】
[実施例51]
(硬化性組成物(DC-2)の製造)
組成を表7に示す通りに変更した以外は、硬化性組成物(DC-1)と同様に、硬化性組成物(DC-2)を作製した。
【0245】
【表7】
【0246】
<感光性組成物の製造>
[実施例52]
(感光性組成物(DR-1)の製造)
下記組成の混合物を均一になるように撹拌混合し、感光性組成物(XR-1)を作製した。
顔料組成物(D-3):100.0部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM-402」):6.4部
光重合開始剤(BASF社製「イルガキュアー907」):1.6部
PGMAc:32.0部
【0247】
[実施例53~55]
(感光性組成物(DR-2)~(DR-4)の製造)
組成を表8に示す通りに変更した以外は、感光性組成物(DR-1)と同様に、感光性組成物(DR-2)~(DR-4)を作製した。
【0248】
【表8】
【0249】
<硬化性組成物及び感光性組成物の評価用膜の作製>
硬化性組成物(DC-1)、(DC-2)を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて回転数を調整して塗布し、100℃10分間乾燥後、膜厚1.0μmの膜が形成された基板を得た。
【0250】
感光性組成物(DR-1)~(DR-4)を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した後、70℃で20分間乾燥させた。次いで、この基板を室温に冷却した後、超高圧水銀ランプを用い、紫外線を露光した。
その後、この基板を23℃の0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液にて30秒間スプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥した。さらに、クリーンオーブン中で、230℃で30分間加熱処理を行った。
上記所作においてスピンコートの回転数を調整し、膜厚1.0μmの膜が形成された基板を得た。
【0251】
<硬化性組成物及び感光性組成物の評価>
上記評価用膜を用い、下記の評価を行った。結果を表9に示す。
[透明性]
上記、硬化性組成物及び感光性組成物の膜が形成された基板について、ヘイズメーターでヘイズを測定し、以下の基準により透明性を判定した。
〇:ヘイズが0.5未満
△:ヘイズが0.5以上1.0未満
×:ヘイズが1.0以上
【0252】
[屈折率]
上記膜が形成された基板について、分光エリプソメトリー測定を行い、850nm、940nm、及び1550nmにおける屈折率を求めた。
【0253】
[耐薬品性]
上記膜が形成された基板について、200℃、5分間の加熱処理を行った後、メチルエチルケトンで膨潤させたガーゼを巻いたハンマーで50回擦り、塗膜面を観察した。耐薬品性試験として、以下の基準により判定を行った。
〇:塗膜は無傷。
△:塗膜の一部に剥がれが生じる。
×:塗膜が完全に溶解する。
【0254】
【表9】
【0255】
以上より、本発明の顔料組成物は、800~1600nmの波長領域においてとりわけ高屈折率であり、透明性、耐熱性、及び耐光性に優れる膜となり得るため、赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光学レンズ、又は赤外線センサもしくは赤外線通信機器用の光導波路の用途として有用である。