(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095798
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】セファロスポリンCアシラーゼ活性を有するポリペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/55 20060101AFI20230629BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230629BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230629BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230629BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230629BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230629BHJP
C12P 35/06 20060101ALI20230629BHJP
C12N 9/78 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C12N15/55 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P35/06 A
C12N9/78
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196731
(22)【出願日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187761
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517167247
【氏名又は名称】アミコージェン・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】14-10 WORASAN-RO 950 BEON-GIL, MUNSAN-EUP, JINJU-SI, GYEONGSANGNAM-DO, 52840, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】朴 哲
(72)【発明者】
【氏名】王 垠善
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲紅▼仙
(72)【発明者】
【氏名】李 美京
(72)【発明者】
【氏名】孫 ▲児▼▲ルム▼
(72)【発明者】
【氏名】林 秀▲ジン▼
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD02
4B050LL05
4B064AH13
4B064CA02
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC24
4B064CD07
4B064CD12
4B064CD18
4B064DA02
4B065AA26X
4B065AA41Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA03
4B065CA34
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】セファロスポリンC(CPC)に対して優れた酵素活性を有するCPCアシラーゼの開発。
【解決手段】本明細書では、セファロスポリンC(CPC)アシラーゼ活性を有するポリペプチドおよびその使用が、開示される。より具体的には、点変異が導入され、それによって改善された酵素活性および/または安定性を示す変異CPCアシラーゼ、ならびに7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)を生成するための変異CPCアシラーゼの使用が、提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-サブユニットおよびβ-サブユニットを含むセファロスポリンC(CPC)アシラーゼに由来する、変異CPCアシラーゼであって、
配列番号3の前記α-サブユニットにおける11位のアラニン(A11α)の、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、イソロイシン(I)、バリン(V)、またはロイシン(L)での置換;
配列番号3の前記α-サブユニットにおける24位のグリシン(G24α)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換;
配列番号4の前記β-サブユニットにおける136位のアラニン(A136β)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換;
配列番号4の前記β-サブユニットにおける179位のイソロイシン(I179β)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換;および
配列番号4の前記β-サブユニットにおける453位のヒスチジン(H453β)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換による変異を含む、変異CPCアシラーゼ。
【請求項2】
前記置換が、
配列番号3の前記α-サブユニットにおけるA11αの、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、イソロイシン(I)、バリン(V)、またはロイシン(L)での置換;
配列番号3の前記α-サブユニットにおけるG24αの、アスパラギン酸(D)での置換(G24αD);
配列番号4の前記β-サブユニットにおけるA136βの、トレオニン(T)での置換(A136βT);
配列番号4の前記β-サブユニットにおけるI179βの、チロシン(Y)での置換(I179βY);および
配列番号4の前記β-サブユニットにおけるH453βの、トレオニン(T)での置換(H453β)
からなる群から選択される少なくとも1つの置換である、請求項1に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項3】
前記変異CPCアシラーゼが、以下の置換、
配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアラニン(A11α)の、アスパラギン(N)での置換;
配列番号3のα-サブユニットにおける24位のグリシン(G24α)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換;
配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアラニン(A136β)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換;および、
配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のイソロイシン(I179β)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換
による変異を含む、請求項1に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項4】
前記変異CPCアシラーゼが、配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のヒスチジンの、元のアミノ酸残基と異なるあるアミノ酸での置換による変異をさらに含む、請求項3記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項5】
配列番号4のβ-サブユニットにおけるH453βの、トレオニン(T)での置換(H453βT)により、453位のヒスチジンの置換が、行われる、請求項4に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項6】
前記置換が、以下の全ての置換、
配列番号3のα-サブユニットにおけるA11αの、アスパラギン(N)での置換(A11αN);
配列番号3のα-サブユニットにおけるG24αの、アスパラギン酸(D)での置換(G24αD);
配列番号4のβ-サブユニットにおけるA136βの、トレオニン(T)での置換(A136βT);および、
配列番号4のβ-サブユニットにおけるI179βの、チロシン(Y)での置換(I179βY)、
を含む、請求項2に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項7】
前記変異CPCアシラーゼが、配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のヒスチジン(H453β)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換による変異をさらに含む、請求項6に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項8】
配列番号4のβ-サブユニットにおけるH453βの、トレオニン(T)での置換(H453βT)により、453位のヒスチジンの置換が、行われる、請求項7に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項9】
前記変異CPCアシラーゼが、配列4のβ-サブユニットにおける、以下のアミノ酸:
45位のイソロイシン(I45β)、58位のフェニルアラニン(F58β)、153位のチロシン(Y153β)、177位のフェニルアラニン(F177β)、および382位のバリン(V382β)
から選択される少なくとも1つのアミノ酸の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での追加の置換による変異を、さらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項10】
前記追加の置換が、配列番号4のβ-サブユニットにおける、
I45βの、バリン(V)での置換(I45βV);
F58βの、バリン(V)での置換(F58βV);
Y153βの、トレオニン(T)での置換(Y153βT);
F177βの、ロイシン(L)での置換(F177βL);および、
V382βの、ロイシン(L)での置換(V382βL)
からなる群から選択される少なくとも1つの置換である、請求項9に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項11】
前記追加の置換が、配列番号4のβ-サブユニットにおける、
I45βの、バリン(V)での置換(I45βV);
F58βの、バリン(V)での置換(F58βV);
Y153βの、トレオニン(T)での置換(Y153βT);
F177βの、ロイシン(L)での置換(F177βL);および、
V382βの、ロイシン(L)での置換(V382βL)
の全ての置換を含む、請求項10に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項12】
前記変異CPCアシラーゼが、配列番号9または配列番号12のアミノ酸配列によって表される、請求項10に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項13】
(1)請求項1~8のいずれか1項に記載の変異CPCアシラーゼ、または
(2)(1)の変異CPCアシラーゼにおける変異に加えて、置換I45βV、置換F58βV、置換Y153βT、置換F177βLおよび置換V382βLからなる群から選択される少なくとも1つの置換による変異を含む変異CPCアシラーゼ、
をコードする、核酸分子。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸分子を担持する、組換え発現ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の核酸分子を含む、組換え細胞。
【請求項16】
7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその塩の生成のための組成物であって、
(1)請求項1~8のいずれか1項に記載の変異CPCアシラーゼ;
(2)(1)の変異CPCアシラーゼにおける変異に加えて、I45βV、F58βV、Y153βT、F177βLおよびV382βLからなる群から選択される少なくとも1つの置換による変異を含む、変異CPCアシラーゼ:
(3)(1)の変異CPCアシラーゼをコードする核酸分子、または前記核酸分子を含む組換え発現ベクターもしくは組換え細胞;
(4)(2)の変異CPCアシラーゼをコードする核酸分子、または前記核酸分子を担持する組換え発現ベクター;および
(5)前記核酸分子または前記組換えベクターを含む組換え細胞、またはその培養物、
からなる群から選択されるうちの少なくとも1つを含む、組成物。
【請求項17】
化学式2の化合物またはその塩を生成するための方法であって、請求項16に記載の組成物と、化学式1の化合物またはその塩とを接触させるステップを含む、方法。
【化1】
【化2】
(式中、Rは、アセトキシ(-OCOCH
3)基、ヒドロキシ(-OH)基、または水素(-H)基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月24日に出願された韓国特許出願第10-2021-0187761号の優先権の利益を主張し、その開示全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、セファロスポリンC(CPC)アシラーゼ活性を有するポリペプチドおよびその使用、より具体的には、点突然変異が導入されているため改善された酵素活性および/または安定性を示す変異CPCアシラーゼ、ならびに7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)を生成するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
βラクタム系抗生物質の一種であるセファロスポリンC(以下、CPC)は、Acremonium chrysogenumなどの微生物によって産生される。CPCは、グラム陰性菌の細胞壁合成を阻害することにより、グラム陰性菌に対して抗生物質活性を示すが、活性が非常に弱いため、主に半合成セファロスポリン系抗生物質(以降、「セファロスポリン類」という)の原料調製に利用されている。中でも、CPCからD-α-アミノアジポイル側鎖を除去して得られる7-アミノセファロスポラン酸(以降、「7-ACA」という)は、世界の抗生物質市場の40%超を占めるほとんどのセファロスポリンの原料として使用されている。
【0004】
従来、CPCから7-ACAを調製するためには、化学的および酵素的プロセスが、存在する。化学的プロセスは複雑な反応条件と高い環境処理コストを必要とするため、近年は環境に優しい酵素的プロセスで7-ACAを生成する傾向にある。
【0005】
典型的な酵素プロセスは、以下の2つのステップからなる:第1ステップでは、CPCがD-アミノ酸オキシダーゼ(以降、「DAO」という)の酵素反応によってグルタリル-7-アミノセファロスポラン酸(以降、「Gl-7-ACA」という)に変換され、第2ステップは、Gl-7-ACAのアシラーゼの酵素反応によってGl-7-ACAから7-ACAに変換するよう適合されている(
図1の左の反応スキームを参照)。
【0006】
しかし、2ステップの酵素法では、第1ステップの酵素反応で生成される過酸化水素が基質(CPC)、反応生成物(Gl-7-ACA)、DAOを攻撃するため、生産収率が低いという欠点がある。
【0007】
この問題を解決するための代替案として、第一ステップを経ずにCPCから直接7-ACAを生成する1ステップ酵素プロセスが、提案される(
図1の右の反応スキームを参照)。このため、CPCから7-ACAを直接生成する触媒であるCPCアシラーゼが求められている。CPCアシラーゼは天然には存在しないため、天然に存在する様々なタイプのGl-7-ACAアシラーゼ(別名:グルタリルアミダーゼ(GA))を改変して合成している。しかし、Gl-7-ACAアシラーゼは、CPCに対する活性が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、CPCに対して優れた酵素活性を有するCPCアシラーゼの開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本明細書では、セファロスポリンC(以下、「CPC」という)に対する酵素活性が向上したCPCアシラーゼおよびその使用が、提供される。
【0010】
1つの態様では、α-サブユニットおよびβ-サブユニットを含むCPCアシラーゼに由来する、変異CPCアシラーゼであって、
対応する元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアラニン(A11α);
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のグリシン(G24α);
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアラニン(A136β);
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のイソロイシン(I179β);および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のヒスチジン(H453β)
からなる群から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ)の置換による変異を含む、変異CPCアシラーゼが、提供される。
【0011】
1つの実施形態では、前記変異CPCアシラーゼは、
(i-1)配列番号3のα-サブユニットにおけるA11αの、アスパラギン(N)での置換(A11αN);
(ii-1)配列番号3のα-サブユニットにおけるG24αの、アスパラギン酸(D)での置換(G24αD);
(iii-1)配列番号4のβ-サブユニットにおけるA136βの、トレオニン(T)での置換(A136βT);
(iv-1)配列番号4のβ-サブユニットにおけるI179βの、チロシン(Y)での置換(I179βY);
(v-1)配列番号4のβ-サブユニットにおけるH453βの、トレオニン(T)での置換(H453βT)、
からなる群から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ)の置換による変異を、含み得る。
【0012】
別の実施形態では、前記変異CPCアシラーゼは、上記のアミノ酸置換に加えて、配列番号4のβ-サブユニットにおける、以下の置換、
(vi)45位のイソロイシン(I45β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(vi-1)I45βV;
(vii)58位のフェニルアラニン(F58β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば(vii-1)F58βV、
(viii)153位のチロシン(Y153β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(viii-1)Y153βT;
(ix)177位のフェニルアラニン(F177β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ix-1)F177βL;および
(x)382位のバリン(V382β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(x-1)V382βL
から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ、例えば5つ)の置換による変異を、さらに含み得る。
【0013】
別の態様では、前述の変異CPCアシラーゼをコードする核酸配列、前記核酸配列を担持する組換え発現ベクター、ならびに前記核酸配列および/または前記組換え発現ベクターを固定する(含む)組換え細胞が、提供される。
【0014】
別の態様では、7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその塩を生成するための組成物であって、上記変異CPCアシラーゼ、前記変異CPCアシラーゼをコードする核酸分子、前記核酸分子を担持する組換え発現ベクター、前記核酸分子および/または前記組換え発現ベクターを含む組換え細胞、ならびに前記組換え細胞の培養物を含む、組成物が、提供される。
【0015】
別の態様では、7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその塩を生成するための、上記の変異CPCアシラーゼ、前記変異CPCアシラーゼをコードする核酸分子、前記核酸分子を担持する組換え発現ベクター、前記核酸分子および/または前記組換え発現ベクターを含む組換え細胞、ならびに前記組換え細胞の培養物からなる群から選択されるうちの少なくとも1つの使用が、提供される。
【0016】
別の態様では、上記の変異CPCアシラーゼ、前記変異CPCアシラーゼをコードする核酸分子、前記核酸分子を担持する組換え発現ベクター、前記核酸分子および/または前記組換え発現ベクターを含む組換え細胞、ならびに前記組換え細胞の培養物からなる群から選択される少なくとも1つを用いて、7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその塩を生成する方法が、提供される。
【0017】
(詳細な説明)
本出願では、セファロスポリンC(以下、「CPC」という)に対する酵素活性が向上したCPCアシラーゼ、およびその使用が、提供される。
【0018】
(用語の定義)
本明細書で使用され場合、ポリヌクレオチド(「遺伝子」または「核酸分子」と互換的に使用される)またはポリペプチド(「タンパク質」または「酵素」と互換的に使用される)が、「特定の核酸配列」もしくは「アミノ酸配列」を含む(または有する)、または「特定の核酸配列」もしくは「アミノ酸配列」から(本質的に)構成される、または、なる、という用語は、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドがその中に特定の核酸配列またはアミノ酸配列を本質的に含んでいることを意味するか、または、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの本来の機能および/または所望の機能を保持する程度に、特定の核酸配列またはアミノ酸配列に変異(欠失、置換、改変、および/または付加)を付与した結果、「実質的に同一の配列」を含むまたは有するものと解釈される。
【0019】
1つの実施形態において、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む(または有する)」または「(本質的に)特定の核酸配列またはアミノ酸配列から構成される、または、で表される」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、
(i)特定の核酸配列またはアミノ酸配列を本質的に含むか、または
(ii)前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列との、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上の配列同一性を有する核酸配列またはアミノ酸配列から本質的に構成されるかまたは含み、所望の機能を保持することを意味し得る。ここで、前記所望の機能は、CPCアシラーゼ機能(例えば、CPCを加水分解する触媒活性および/またはCPCから7-ACAを生成する触媒活性)(アミノ酸配列の場合)、またはそのようなCPCアシラーゼ機能を有するタンパク質をコードする機能であり得る。
【0020】
本明細書において、「配列同一性」という用語は、2つの核酸配列間または2つのアミノ酸配列間の一致の程度を意味し、百分率(%)で表すことができる。核酸配列との同一性に関しては、例えば、アルゴリズムBLAST(参照:Karlin and Altschul,Pro.Natl.Acad.Sci.米国,90,5873,1993)またはPearsonが開発したアルゴリズムFASTA(参照:Methods Enzymol,183,63,1990)を使用して、その判定を行うことができる。また、前記アルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNまたはBLASTXというプログラムが、開発されている(http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照)。
【0021】
本明細書において、「タンパク質(酵素)のアミノ酸配列における特定位置のアミノ酸残基」とは、前記アミノ酸配列における特定位置のアミノ酸残基、または前記タンパク質と同じ酵素活性を有する同種アイソタイプタンパク質および/または異種タンパク質における対応する位置のアミノ酸残基を意味する。
【0022】
本明細書に記載されるタンパク質のアミノ酸配列における第1のN末端アミノ酸残基がメチオニンである場合、メチオニンは天然状態で含まれる残基であってもよく、組換えプロセスで合成される残基であってもよい。メチオニンは、タンパク質のアミノ酸配列において1位に存在しない場合、組換え法でタンパク質を生成する際に、第1のN末端残基として付加され得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、それに続く数値と同一の数値またはある変動範囲内にある数値、例えば、所定の数値の±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1、±0.05または±0.01の変動範囲内の数値を含むことが意図されるが、これらに限定されない。
【0024】
以下、本開示について詳細に説明する。
【0025】
変異CPCアシラーゼ
本記載では、改善された酵素活性を有する変異CPCアシラーゼが説明される。前記変異CPCアシラーゼは、従来のGl-7-ACAアシラーゼがCPCアシラーゼ活性を有するように改変することから、生じ得る。
【0026】
典型的な2ステップの酵素プロセス(
図1の左の反応スキーム参照)に用いられるGl-7-ACAアシラーゼは、以下の表1(Gl-7-ACAアシラーゼの分類)のように5つのグループに分類される様々な土壌微生物において見出される(Sonawane,Crit.Rev.Biotech.26:95-120,2006)。
【0027】
【0028】
表1の分類に基づくと、同じグループ内のタンパク質は、サイズ、アミノ酸配列、基質特異性、および反応性が非常に似ているが、異なるグループにおけるタンパク質間では、大きく異なる特性が見られる。
【0029】
グループIIIのGl-7-ACAアシラーゼは、7-ACAおよび無機塩により活性が阻害されやすく、酵素反応の安定性が悪いという欠点がある。グループIIIのGl-7-ACAアシラーゼに由来する改変酵素でも、この欠点を有している。一方、グループII-BにおけるGl-7-ACAアシラーゼはIII群の酵素の欠点がないため、II-B群のGl-7-ACAアシラーゼを改変することにより、7-ACA生成のための1ステップ酵素プロセス(
図1の右の反応スキームを参照)に有利に適用可能な変異酵素を開発することが可能になる。
【0030】
ほとんどのGl-7-ACAアシラーゼは、α-サブユニット、スペーサーペプチド、およびβ-サブユニットの順で構成されている。本開示で用いる基本遺伝子(ga遺伝子)は、転写および翻訳を経て、約77kDaのサイズを有する不活性な単鎖から構成されるポリペプチドが生じる。次いで、スペーサーペプチドが切断処理され、18kDaのα-サブユニット(配列番号3)と58kDaのβ-サブユニット(配列番号4)とからなる二量体が形成される。
【0031】
従って、本明細書の変異CPCアシラーゼは、グループII-BのGl-7-ACAアシラーゼに加えられた改変から生じ得る。グループII-BにおけるGl-7-ACAアシラーゼは、Pseudomonas sp.株、例えば、Pseudomonas sp.GK16に由来するGl-7-ACAアシラーゼであり得る。
【0032】
Pseudomonas sp.GK16由来の野生型Gl-7-ACAアシラーゼ(配列番号1)は、例えば、配列番号2の核酸分子によってコードされ得るか、またはスペーサーペプチドを切断することによって二量体鎖にプロセシングされるN末端から順に、18kDaα-サブユニット(例えば、配列番号3)、スペーサーペプチド(例えば、配列番号5)、およびβ-サブユニット(例えば、配列番号4)を含む77kDa不活性単量体鎖に由来する18kDaのα-サブユニット(配列番号3)および58kDaのβ-サブユニット(配列番号4)を含む二量体の形態であり得る。また、α-サブユニットおよび/またはβ-サブユニットの1つまたは複数の残基に点変異を導入して、CPCアシラーゼ活性を有する変異体をもたらすことができる。
【0033】
1つの態様では、α-サブユニットおよびβ-サブユニットを含むCPCアシラーゼに由来する変異CPCアシラーゼであって、
対応する元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアラニン(A11α);
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のグリシン(G24α);
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアラニン(A136β);
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のイソロイシン(I179β);および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のヒスチジン(H453β)
からなる群から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ)の置換による変異を含む、変異CPCアシラーゼが、提供される。
【0034】
1つの態様では、α-サブユニットおよびβ-サブユニットを含むCPCアシラーゼに由来する変異CPCアシラーゼであって、
対応する元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアラニン(A11α);
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のグリシン(G24α);
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアラニン(A136β);および
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のイソロイシン(I179β)
からなる群から選択されるうちの少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ)の置換による変異を含む、変異CPCアシラーゼが、提供される。
【0035】
サブユニット上のアミノ酸残基を置換するためのアミノ酸は、アラニン(A、Ala)、アスパラギン(N、Asn)、トレオニン(T、Thr)、グルタミン酸(E、Glu)、セリン(S、Ser)、バリン(V、Val)、イソロイシン(I、Ile)、ロイシン(L、Leu)、アスパラギン酸(D、Asp)、システイン(C、Cys)、グルタミン(Q、Gln)、メチオニン(M、Met)、フェニルアラニン(F、Phe)、プロリン(P、Pro)、トリプトファン(W、Trp)、チロシン(Y、Tyr)、アルギニン(R、Arg)、ヒスチジン(H、His)、リジン(K、Lys)およびグリシン(G、Gly)からなる群から選択され得、対応する元のアミノ酸残基とは異なる。
【0036】
1つの実施形態では、前記変異CPCアシラーゼは、
(i-1)配列番号3のα-サブユニットにおけるA11αの、アスパラギン(N)での置換(A11αN);
(ii-1)配列番号3のα-サブユニットにおけるG24αの、アスパラギン酸(D)での置換(G24αD);
(iii-1)配列番号4のβ-サブユニットにおけるA136βの、トレオニン(T)での置換(A136βT);
(iv-1)配列番号4のβ-サブユニットにおけるI179βの、チロシン(Y)での置換(I179βY);および
(v-1)配列番号4のβ-サブユニットにおけるH453βの、トレオニン(T)での置換(H453βT)
からなる群から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ)の置換による変異を、含み得る。
【0037】
1つの実施形態では、前記変異CPCアシラーゼは、
(i-1)配列番号3のα-サブユニットにおけるA11αの、アスパラギン(N)での置換(A11αN);
(ii-1)配列番号3のα-サブユニットにおけるG24αの、アスパラギン酸(D)での置換(G24αD);
(iii-1)配列番号4のβ-サブユニットにおけるA136βの、トレオニン(T)での置換(A136βT);および
(iv-1)配列番号4のβ-サブユニットにおけるI179βの、チロシン(Y)での置換(I179βY)
からなる群から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、または4つ)の置換による変異を、含み得る。
【0038】
別の実施形態では、前記変異CPCアシラーゼは、アミノ酸置換(i)~(iv)(例えば、アミノ酸置換(i-1)、(ii-1)、(iii-1)、および(iv-1))からなる群から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、または4つ)の置換に加えて、(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のヒスチジンの、それとは異なるあるアミノ酸での置換による変異(H453β)、例えば、(v-1)配列番号4のβ-サブユニットにおけるH453βの、トレオニン(T)での置換(H453βT)による変異を、さらに含み得る。
【0039】
別の実施形態では、前記変異CPCアシラーゼは、アミノ酸置換(i)~(v)(例えば、アミノ酸置換(i-1)、(ii-1)、(iii-1)、(iv-1)、および(iv-1))からなる群から選択される上記のアミノ酸置換に加えて、配列番号4のβ-サブユニットにおける、
(vi)45位のイソロイシン(I45β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(vi-1)I45βV;
(vii)58位のフェニルアラニン(F58β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば(vii-1)F58βV、
(viii)153位のチロシン(Y153β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(viii-1)Y153βT;
(ix)177位のフェニルアラニン(F177β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ix-1)F177βL;および
(x)382位のバリン(V382β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(x-1)V382βL
から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ、例えば5つ)の置換による変異を、さらに含み得る。
【0040】
アミノ酸置換(vi)~(x)による変異を含む前記変異CPCアシラーゼ(例えば、アミノ酸置換(vi-1)、(vii-1)、(viii-1)、(ix-1)、および(x-1))は、CPCアシラーゼ活性を保持するが、アミノ酸置換(i)から(v)(例えば、アミノ酸置換(i-1)、(ii-1)、(iii-1)、(iv-1)、および(v-1))からなる群から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ)の置換により、さらに変異させると、より向上したCPCアシラーゼ活性および/または熱安定性を示す。
【0041】
第1の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN、
による変異を、含み得る。
【0042】
第2の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD
による変異を、含み得る。
【0043】
第3の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT
による変異を、含み得る。
【0044】
第4の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば(iv-1)I179βY
による変異を、含み得る。
【0045】
第5の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0046】
第6の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;および
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD
による変異を、含み得る。
【0047】
第7の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;および
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT
による変異を、含み得る。
【0048】
第8の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;および
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY
による変異を、含み得る。
【0049】
第9の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0050】
第10の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;および
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT
による変異を、含み得る。
【0051】
第11の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;および
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY
による変異を、含み得る。
【0052】
第12の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0053】
第13の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;および
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY
による変異を、含み得る。
【0054】
第14の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0055】
第15の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0056】
第16の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;および
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT
による変異を、含み得る。
【0057】
第17の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;および
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY
による変異を、含み得る。
【0058】
第18の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0059】
第19の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;および
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY
による変異を、含み得る。
【0060】
第20の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0061】
第21の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0062】
第22の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;および
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY
による変異を、含み得る。
【0063】
第23の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0064】
第24の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0065】
第25の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;および
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY
による変異を、含み得る。
【0066】
第26の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0067】
第27の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0068】
第28の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0069】
第29の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0070】
第30の実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、以下の置換、
(i)配列番号3のα-サブユニットにおける11位のアミノ酸残基アラニン(A11α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(i-1)A11αN;
(ii)配列番号3のα-サブユニットにおける24位のアミノ酸残基グリシン(G24α)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ii-1)G24αD;
(iii)配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアミノ酸残基アラニン(A136β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iii-1)A136βT;
(iv)配列番号4のβ-サブユニットにおける179位のアミノ酸残基イソロイシン(I179β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(iv-1)I179βY;および
(v)配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のアミノ酸残基ヒスチジン(H453β)の、異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(v-1)H453βT
による変異を、含み得る。
【0071】
別の態様において、第1~第28のいずれかの実施形態による変異CPCアシラーゼは、配列番号4のβ-サブユニットにおいて、以下の置換、
(vi)45位のイソロイシン(I45β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(vi-1)I45βV;
(vii)58位のフェニルアラニン(F58β) の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば(vii-1)F58βV、
(viii)153位のチロシン(Y153β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(viii-1)Y153βT;
(ix)177位のフェニルアラニン(F177β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(ix-1)F177βL;および
(x)382位のバリン(V382β)の、それとは異なるあるアミノ酸での置換、例えば、(x-1)V382βL
から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ、例えば5つ)による変異を、さらに含み得る。
【0072】
前述のアミノ酸置換(i)~(v)(例えば、アミノ酸置換(i-1)、(ii-1)、(iii-1)、(iv-1)、および(v-1))からなる群から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ)の置換により、本明細書で提供される変異CPCアシラーゼは、いずれの変異(置換)も有していないCPCアシラーゼと比較して、CPCに対する酵素活性(アシラーゼ活性)、熱安定性、またはその両方が向上している可能性がある。
【0073】
より詳細には、アミノ酸置換(vi)~(x)(例えば、アミノ酸置換(vi-1)、(vii-1)、(viii-1)、(ix-1)、および(x-1))(しかしアミノ酸置換(i)~(v)(例えば、アミノ酸置換(i-1)、(ii-1)、(iii-1)、(iv-1)、および(v-1))のいずれでもない)の少なくとも1つによる変異を含む変異CPCアシラーゼと比較して、本願で提供される変異体CPCアシラーゼは、
CPCに対する酵素活性に関して、約2倍以上、約2.5倍以上、約3倍以上、約3.5倍以上、約4倍以上、約4.5倍以上、約5倍以上、約5.5倍以上、約6倍以上、約6.5倍以上、約7倍以上、約7.5倍以上、約8倍以上、約8.5倍以上、約9倍以上、約9.5倍以上、約10倍以上、約10.5倍以上、約11倍以上、約11.5倍以上、約12倍以上、約12.5倍以上、約13倍以上、約13.5倍以上、約14倍以上、約14.5倍以上、約15倍以上(上限は特に設けられず、例えば約100倍、約90倍、約80倍、約70倍、約60倍、約50倍、約40倍、約30倍または約25倍までであるが、それらに限定されない)向上している、および/または、
熱安定性に関して、1.05倍以上、約1.08倍以上、約1.1倍以上、約1.3倍以上、約1.5倍以上、約1.8倍以上、約2倍以上、または約2.3倍以上(上限は特に設けられず、例えば、約10倍、約9倍、約8倍、約7倍、約6倍、約5倍、約4倍、約3.5倍、または約3倍までであるが、それらに限定されない)向上している。
【0074】
この点に関して、用語「CPCに対する酵素活性」は、CPCアシラーゼ活性を指し、酵素活性を示すCPCアシラーゼの単位は、1分間に1マイクロモルの基質CPCの7-ACAへの変換を触媒する酵素量と定義される。例えば、CPCに対するアシラーゼ活性とは、酵素を、細胞溶解緩衝液(1.25mg/mLリゾチーム、1.25mM EDTA、0.375%(w/v)Triton X-100)中で、25℃で2時間放置し、次いで10℃で1時間放置した後、10℃で16~18時間反応させたときのCPCからの7-ACAの生産能を意味し得る。用語「熱安定性」という用語は、高温(約40℃以上、例えば、約45℃、約50℃、約55℃、または約60℃)でのCPCからの7-ACAの生産能、例えば、酵素を、細胞溶解緩衝液(1.25mg/mLリゾチーム、1.25mM EDTA、0.375%(w/v) TritonX-100)中、25℃で2時間放置し、次いで55℃で1.5時間放置した後、10℃で16~18時間基質CPCと反応させる場合の生産能を意味し得る(例4および表3参照)。
【0075】
1つの実施形態において、本明細書で提供される変異CPCアシラーゼは、例えば、組換え法または化学合成によって生成される非天然型酵素であり得るが、それに限定されない。
【0076】
(核酸分子、組換え発現ベクター、および組換え細胞)
【0077】
別の態様では、上記した変異CPCアシラーゼをコードする核酸分子が提供される。核酸分子は、変異CPCアシラーゼの全長配列をコードするものであってもよく、変異CPCにおけるα-サブユニットをコードする核酸分子と、β-サブユニットをコードする核酸分子との組合せであってもよい。
【0078】
別の態様では、核酸分子を担持する組換えベクターが提供される。前記組換えベクターは、適切な宿主細胞において核酸分子を発現させることができる発現ベクターであり得る。前記組換えベクターは、前記変異CPCアシラーゼの全長配列をコードする核酸分子(例えば、1つのベクターにおけるα-サブユニットをコードする核酸分子およびβ-サブユニットをコードする核酸分子)を担持する単一ベクターであってもよく、または前記変異CPCアシラーゼのα-サブユニットをコードする核酸分子を担持する第1組換えベクターと、前記変異CPCアシラーゼのβ-サブユニットをコードする核酸分子を担持する第2組換えベクターとの組み合わせであってもよい。
【0079】
別の態様では、核酸分子および/または組換えベクターを含む組換え細胞が提供される。前記組換え細胞は、核酸分子および/または組換えベクターを、適切な宿主細胞に導入することによって得ることができる。
【0080】
1つの実施形態において、前記組換え細胞は、大腸菌(Escherichia coli)株であってもよく、例えば、大腸菌(Escherichia coli)MC1061に核酸分子を導入して得られる大腸菌(Escherichia coli)MC1061-pBC-TEP11株(寄託番号:KCTC 14821BP)などであり得るが、これらに限定されない。
【0081】
前記変異CPCアシラーゼは、前記組換え細胞を、適切な培地中、適切な条件下で培養することにより生成され得る。
【0082】
1つの実施形態において、前記変異CPCアシラーゼは、変異CPCアシラーゼの全長配列をコードする核酸分子を有する組換えベクターで形質転換された宿主細胞を適切な培地および条件で培養することによって、生成され得る。別の実施形態では、変異CPCアシラーゼのα-サブユニットをコードする遺伝子またはそれと機能的に同等な配列を有する遺伝子を担持する組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞と、前記変異CPCアシラーゼのβ-サブユニットをコードする遺伝子またはそれと機能的に同等な配列を有する遺伝子を担持する組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞とを、それぞれの適切な培地および条件で培養して対応するCPCアシラーゼサブユニットタンパク質を得た後、in vitroでこの2つのサブユニットタンパク質を混合することによって、前記変異CPCアシラーゼが、生成され得る。
【0083】
本開示に従って上記のように調製された変異CPCアシラーゼは、目的産物の生成のために用いてもよいし、使用前に精製してもよい。前記変異CPCアシラーゼの単離および精製は、CPCアシラーゼの既知の性質をそのまま利用して様々なクロマトグラフィー法によるタンパク質分離方法をそのまま使用するか、または実験目的に合わせて変更した方法で、行うことができる。あるいは、ヒスチジンペプチドとニッケルカラム成分との結合親和性、または、セルロース結合ドメイン(CBD)とセルロースとの結合親和性などの特定の結合親和性を用いた親和性クロマトグラフィーによって、前記変異CPCアシラーゼが、精製され得る。
【0084】
また、本開示の変異CPCアシラーゼは、遊離状態ではなく、固定化された状態で使用され得る。前記変異CPCアシラーゼは、当該技術分野で公知の典型的な方法を用いて固定化され得る。これに関して、セルロース、デンプン、デキストラン、アガロースなどの天然ポリマー;ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、Eupergit Cなどの合成ポリマー;またはシリカ、ベントナイト、金属などの鉱物が、担体として使用され得る。前記変異CPCアシラーゼは、共有結合、疎水性結合、物理的吸着、マイクロカプセル化などによって、担体に結合させることができる。また、担体-酵素コンジュゲート形態での前記変異CPCアシラーゼの固定化は、担体の臭化シアンと酵素との間に共有結合を形成するグルタルアルデヒドによって実現することができる。CPCアシラーゼを含む微生物は、酵素を別途精製することなく、そのまま固定化することができる。このような全細胞固定化を採用する場合、そこに含まれる変異CPCアシラーゼの反応性を高めるために、細胞を穿刺するか、または表面発現などの技法を適用してもよい。
【0085】
本明細書に開示された核酸配列のコード領域において、そのコード領域から発現されるポリペプチドのアミノ酸配列および/または機能を変更しないことを条件として、タンパク質が発現される生物によって好まれるコドンを考慮して、そのコドン縮重により種々の改変または修飾を行うことができる。
【0086】
核酸分子またはベクターの導入は、当業者によって適切に選択された公知の形質転換法を用いて行うことができる。本明細書において、「形質転換」という用語は、核酸分子によってコードされたタンパク質が宿主細胞内で発現するように、標的タンパク質(外来タンパク質)をコードする核酸を担持するベクターを、宿主細胞内に導入することを意味する。形質転換された核酸分子は、宿主細胞内で発現している限り、宿主細胞の染色体に組み込まれた状態、および/または染色体外に存在する状態のいずれであってもよい。さらに、前記核酸分子は、標的タンパク質をコードするDNAおよび/またはRNAを含む。前記核酸分子は、宿主細胞に導入され、そこで発現することができる限り、いかなる形態で導入されてもよい。例えば、前記核酸分子は、その自律的な発現に必要な全てのエレメントを含む遺伝子構築物である発現カセットの形態を介して宿主細胞内に導入され得る。典型的には、前記発現カセットは、プロモーター、転写終結シグナル、リボソーム結合部位、および/または翻訳終結シグナルなど、核酸分子に作動可能に連結された発現調節エレメントを含む。前記発現カセットは、自己複製可能な発現ベクターの形態であってもよい。また、前記核酸分子は、そのまま宿主細胞に導入され、宿主細胞での発現に必要な配列に作動可能に連結され得る。本明細書において、用語「作動可能に連結された」とは、発現調節エレメントが標的タンパク質(外来タンパク質)をコードする核酸分子の転写を制御(例えば、開始)するための、核酸分子と発現調節エレメント(例えば、プロモーター)との間の機能的な連結を意味する。前記機能的な連結は、当該技術分野において公知の遺伝子組換え技術を用いて行うことができる。一例として、前記連結は、典型的な部位特異的DNA切断およびライゲーションによって実施され得るが、それらに限定されない。
【0087】
宿主細胞(微生物)への核酸分子の導入を確実にする限り、任意の形質転換体が、本開示において使用され得る。宿主細胞に応じて、当技術分野で公知の形質転換技術を適切に選択することができる。当該技術分野で公知の形質転換法の例としては、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム(CaPO4)沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)沈殿、マイクロインジェクション、ポリエチレングリコール(PEG)媒介取り込み、DEAE-デキストラン媒介遺伝子導入、カチオン性リポソーム媒介遺伝子導入、リポフェクション、酢酸リチウム・DMSO法、熱ショック、粒子ガン衝撃法(particle gun bombardment)、炭化ケイ素ウィスカー(silicon carbide whiskers)および超音波処理が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
宿主細胞のゲノム(染色体)への核酸分子の導入(挿入)は、当業者によって適切に選択された公知の方法を用いて行うことができる。例えば、前記核酸分子は、RNAガイドエンドヌクレアーゼ系またはCRISPR系(例えば、(a)RNAガイドエンドヌクレアーゼ(すなわち、Cas9タンパク質など)、それをコードする遺伝子、またはその遺伝子を担持するベクター;および(b)ガイドRNA(すなわち、シングルガイドRNA(sgRNA)など))、それをコードするDNA、またはそのDNAを担持するベクターを含む混合物(例えば、RNAガイドエンドヌクレアーゼタンパク質とガイドRNAとの混合物など)、複合体(例えば、リボ核タンパク質(RNP))、組換えベクター(例えば、RNAガイドエンドヌクレアーゼ遺伝子と、ガイドRNAをコードするDNAとの両方を有するベクター)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、標的タンパク質をコードする核酸分子のヌクレオチド配列を含むDNA構築物を指し、これは、適切な宿主細胞において標的タンパク質を発現するために適切な発現調節配列に作動可能に連結される。前記調節配列は、転写を開始することができるプロモーター、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および/または転写および/または翻訳の終結を調節する配列を含み得る。適切な宿主細胞に形質転換された後、ベクターは、宿主ゲノムから独立して複製または機能し得るか、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。
【0090】
本発明で使用できるベクターは、宿主細胞内で複製可能であれば特に限定されず、当技術分野で公知の任意のベクターを使用することができる。従来のベクターの例としては、天然または組換えプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージなどが挙げられる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとして、pWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、またはCharon21Aが、使用され得、プラスミドベクターの例としては、pBC型(例えば、pBC-KS(+))、pBR型(例えば、pBR322、pBR325)、pUC型(例えば、pUC118、pUC119)、pBluescriptII型、pGEM型、pTZ型、pCL型、pET型(例えば、pET-22b(+))、Bacillus subtilis由来プラスミド(例えば、pUB110、pTP5)、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス由来のプラスミド、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルス由来のプラスミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
通常用いられる任意の種類の単細胞生物が、宿主細胞として利用可能である。例えば、前記宿主細胞は、各種細菌(例えば、Clostridia属、Escherichia属など)などの原核微生物、および酵母などの真核微生物からなる群から選択することができる。例えば、Clostridia属微生物(例えば、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、Clostridium saccharoperbutylacetonicum、Clostridium saccharobutylicum)、Escherichia属微生物(例えば、大腸菌(Escherichia coli))などが選択され得るが、これらに限定されない。
【0092】
本明細書で利用可能なベクターは、周知の発現ベクターおよび/または核酸分子を染色体へ挿入するためのベクターであり得る。宿主細胞の染色体への核酸分子の挿入は、当該技術分野において公知の任意の方法、例えば、相同組換えまたはCRISPRシステムによって実施することができるが、これらに限定されない。前記ベクターは、染色体への挿入を示すための選択マーカーをさらに含み得る。前記選択マーカーは、形質転換細胞を選択するため、すなわち、ポリヌクレオチドが挿入されているか否かを決定するために適合され、薬剤耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性、または表面タンパク質の発現などの選択可能な表現型をもたらす遺伝子から選択され得る。選択剤の存在下では、選択マーカーを発現している細胞のみが、生存しているか、あるいは異なる発現形質を示すため、選択され得る。
【0093】
7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)の生成
【0094】
本明細書の別の態様では、7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその塩を生成するための組成物が提供され、前記組成物は、前述した変異CPCアシラーゼ、前記変異CPCアシラーゼをコードする核酸配列、前記核酸配列を担持する組換え発現ベクター、前記核酸配列および/または前記組換え発現ベクターを含む組換え細胞、ならびに前記組換え細胞の培養物、からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0095】
別の態様では、7-ACAまたはその塩を生成するための、前述した変異CPCアシラーゼ、前記変異CPCアシラーゼをコードする核酸配列、前記核酸配列を担持する組換え発現ベクター、前記核酸配列および/または前記組換え発現ベクターを含む組換え細胞、ならびに前記組換え細胞の培養物からなる群から選択されるうちの少なくとも1つの使用が、提供される。
【0096】
別の態様では、前記変異CPCアシラーゼ、前記変異CPCアシラーゼをコードする核酸配列、前記核酸配列を担持する組換え発現ベクター、前記核酸配列および/または前記組換え発現ベクターを含む組換え細胞、および前記組換え細胞の培養物からなる群より選択される少なくとも1つを用いて7-ACAまたはその塩を生成する方法が、提供される。
【0097】
別の態様では、化学式2の化合物またはその塩を生成する方法が提供され、この方法は、前述した変異CPCアシラーゼ、前記変異CPCアシラーゼをコードする核酸配列、前記核酸配列を担持する組換え発現ベクター、前記核酸配列および/または前記組換え発現ベクターを含む組換え細胞、および前記組換え細胞の培養物からなる群から選択された少なくとも1つと、化学式1の化合物またはその塩とを接触させるステップを含む。
【化1】
【化2】
(式中、Rは、アセトキシ(-OCOCH
3)基、ヒドロキシ(-OH)基、または水素(-H)基である。)
【0098】
前記塩は、任意のタイプの薬学的に許容可能な塩であり得る。例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩など)が使用され得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、化学式1の化合物は、CPC基質化合物であってもよく、化学式2の化合物は、7-ACAであってもよい。
【0099】
化学式2の化合物またはその塩、例えば7-ACAまたはその塩を生成するための、本明細書で提供される方法は、CPCから直接7-ACAまたはその塩を生成するための1ステップの方法であり得る。
【0100】
すなわち、本方法は、CPCをD-アミノ酸オキシダーゼで処理するステップを含まなくてもよい。D-アミノ酸オキシダーゼの酵素反応により、CPCは、グルタリル-7-アミノセファロスポラン酸(以下、「Gl-7-ACA」という)に変換されるが、その際に過酸化水素も発生し、基質(CPC)、反応生成物(Gl-7-ACA)およびD-アミノ酸オキシダーゼを攻撃するので、生産収率が低下する。これに対し、本明細書で提供される方法は、CPCをD-アミノ酸オキシダーゼで処理するステップを含まず、CPCから直接7-ACAまたはその塩を生成し、それにより、課題が解決される。
【0101】
前記組換え細胞は、前記変異CPCアシラーゼを生成するための株である。
【0102】
変異CPCアシラーゼ産生株または前記変異CPCアシラーゼ産生株の培養物(例えば、液相、半固相、もしくは固相の培養物、または、培養物の濃縮物もしくは乾燥形態)内にあってもよく、または組成物の形態であってもよく、単離状態または固定化状態にあってもよい、前記変異CPCアシラーゼと、化学式1の化合物と、を接触させることによって、化学式2の化合物が、調製され得る。前記変異CPCアシラーゼと化学式1の化合物との接触は、水または水溶液(例えば、緩衝液)中で行われ得る。この際、酵素反応の条件は、化学式1の化合物の濃度が1~500mM、前記変異CPCアシラーゼの量が0.1~100U/mL、反応混合物のpHが7~10、反応時間が0.1~24時間、反応温度が4~40℃であるが、これらに限定されない。前記酵素反応を通じて生成された化学式2の化合物は、典型的な方法で分離および/または精製され得る。
【0103】
また、前記変異CPCアシラーゼと化学式1の化合物とを接触させることにより、細胞内で、化学式2の化合物が、調製され得る。前記変異CPCアシラーゼコード遺伝子または機能的に同等の配列を有する誘導体を担持する組換え発現ベクターが、大腸菌(Escherichia coli)またはAcremonium chrysogenumなどの化学式1の化合物を生合成できる菌株に導入され、得られた形質転換体が、適切な培地で適切な条件下で培養され、この際に、生合成された化学式1の化合物が、形質転換体内の前記変異CPCアシラーゼと自然発生的に接触し、化学式2の化合物が、調製される。
【0104】
(発明の効果)
【0105】
本発明は、セファロスポリンの原料として使用される7-ACAを生成するための変異型酵素を提供する。より具体的には、セファロスポリンCに対する酵素活性および/または熱安定性が向上するように変異させたセファロスポリンCアシラーゼおよびこれを用いた7-ACAの生成方法が、提供される。これにより、本開示の変異CPCアシラーゼは、従来の変異CPCアシラーゼ(PM2)と比較して、CPC基質に対する酵素活性が約5倍、例えば、約5~約21倍高く、熱活性が約2.5倍高い。また、本開示の技法は、CPCから直接7-ACAを効率的に生成できるという利点を有する1ステッププロセスである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】CPCから7-ACAを生成するための1ステップおよび2ステップの酵素プロセスを示す概略図である。
【
図2】1つの実施形態による変異CPCアシラーゼを調製するプロセスを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本開示のより良い理解は、本開示を説明するために記載されているが、本開示を限定すると解釈されるべきではない以下の実施例に照らして得ることができる。本開示の主旨を逸脱しない範囲で以下の実施例を変更し得ることは、当業者に自明である。
【0108】
実施例1:変異CPCアシラーゼの調製および活性測定
【0109】
1-1.pBC-PM2プラスミドの構築
【0110】
酵素活性が向上した変異CPCアシラーゼを開発するために、Pseudomonassp.GK16株(Matsudaら、J.Bacteriol.163:1222-1228、1985)由来のグルタリルアミダーゼ(GA)変異体(配列番号6)をコードする遺伝子(以下「pm遺伝子」という、配列番号7)を、ベース遺伝子として使用した。グルタリルアミダーゼ(GA)変異体(以下、「PM2変異体」という)は、野生型α-サブユニット(配列番号3)、スペーサー(配列番号5)、および β-サブユニット(配列番号:4)の5重変異体(I45βV/F58βV/Y153βT/F177βL/V382βL;配列番号:8)がN末端からこの順番でペプチド結合を介し連結されている、単鎖ポリペプチドである(韓国特許第10-2014-0094150A号参照;参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0111】
本明細書では、pm遺伝子を前駆体として用い、配列番号3の野生型α-サブユニットと配列番号8の変異β-サブユニットとが配列番号5のスペーサーを介して互いにペプチド結合で連結した一本鎖ポリペプチド(配列番号6)が発現され、細胞内の自己触媒プロセスによってα-サブユニットとβ-サブユニットとからなる成熟活性二量体に発達する。配列番号7のpm遺伝子をpBC-KS(+)ベクター(Stratagene,米国)のXbaIおよびNotI制限酵素認識部位によって認識される部位に挿入し、PM2変異体を発現させるためのpBC-PM2プラスミドを構築した。具体的な構築方法は、以下の通りである。
【0112】
pm遺伝子DNA産物(約2.1kbのサイズ)を制限酵素XbaIとNotIで消化し、精製キット(QIAquick Gel Extraction Kit;QIAGEN,ドイツ)を用いて精製し、挿入するDNAを調製した。また、別途、pBC KS(+)ベクター(Stratagene、米国)をXbaIとNotIで切断し、CIP(Calf Intestinal Alkaline Phosphatase)で脱リン酸化して、ベクターDNAを得た。調製した挿入すべきDNAを、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs,スウェーデン)の存在下、16℃で12~16時間、ベクターDNAにライゲーションし、ライゲーション混合物をエレクトロポレーションにより大腸菌(E.coli)MC1061に形質転換させた。この菌株を20μg/mLのクロラムフェニコール抗生物質を含むLB寒天プレートに広げ、30℃で一晩静置培養し、形質転換体を選択した。選択された形質転換体からプラスミドを単離し、塩基配列決定を行って挿入DNAの塩基配列を同定した。得られた、配列番号7のヌクレオチド配列を有するpm遺伝子を担持するpBC-PM2プラスミドは、β-サブユニットの5重変異体(I45βV/F58βV/Y153βT/F177βL/V382βL)を含むPM2変異タンパク質を発現するように設計された。
【0113】
1-2.酵素液の調製
【0114】
実施例1-1で調製したpBC-PM2血漿含有組換え大腸菌(E.coli)形質転換体を、CPC(セファロスポリンC)アシラーゼの生産性についてアッセイした。このアッセイに用いるため、CPCアシラーゼ補酵素溶液を以下のように調製した:20μg/mLのクロラムフェニコールを含むLBブロス(1%Bacto-tryptone、0.5%酵母エキス(yeast extract)、0.5%NaCl)3mLに大腸菌形質転換体を接種し、200rpmで撹拌しながら30℃で16時間培養を行った。その後、この培養液350μLを20μg/mLクロラムフェニコールを含む新鮮なLB培地35mLに接種し、200rpmで攪拌しながら25℃で48時間培養を行った。得られた培養液を遠心分離(4℃、8000rpm、10分)して細胞塊を回収し、これを0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)で1回洗浄した。この細胞を35mLの同緩衝液に懸濁し、超音波処理(Vibra Cell VC750,Sonics&Materials Inc,米国)により4℃で10分間溶解し、その後4℃、13500rpmで20分間遠心分離を行った。こうして形成された上清を変異CPCアシラーゼ補酵素溶液とした。以下、各株から調製した酵素溶液を用いて、上記の方法でCPCアシラーゼの活性および熱安定性を測定した。
【0115】
1.3.CPCアシラーゼ活性の測定
【0116】
実施例1.2で調製したCPCアシラーゼの活性は、Parkらの方法(Parkら、Kor.J.Appl.Microbiol.Biotechnol.23:559-564,1995)を用い、それに改変を加えて以下のように測定した。
【0117】
CPC基質(純度90%;Hayao、中国)を0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)に40mMの濃度で溶解し、基質溶液を得た。このCPC基質溶液20μLに、実施例1.2で調製した酵素溶液20μL(マイクロリットル)を加えた。37℃で5分間酵素反応を行った後、50mM NaOH-20%(w/v)氷酢酸(1:2、NaOH:氷酢酸、容量比)を200μL加えて反応を停止させた。その後、13000rpmで5分間遠心分離を行い、こうして形成された上清200μLに、0.5%(w/v)PDAB(p-ジメチルアミノベンズアルデヒド;Sigma,米国)のメタノール溶液を40μL加えた。10分間反応させた後、415nmで吸光度を読み取った。吸光度を標準物質の検量線に投影することにより、定量を行った。この際、1単位は、1分間に1マイクロモルのCPC基質を7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)に変換することを触媒する酵素の量と定義される。別途、CPC基質に対する比活性は、ブラッドフォード法(Bradford,M.,Anal.Biochem.72:248-254,1976)により酵素溶液中で定量した全タンパク質1ミリグラムあたりの酵素の活性単位で表した。
【0118】
CPCアシラーゼ活性の測定の結果、実施例1.1で調製した組換え大腸菌(E.coli)MC1061(pBC-PM2)株は、約1300ユニット/Lの生産性でCPCアシラーゼを発現すると測定された。
【0119】
実施例2:高活性CPCアシラーゼの調製と選択
【0120】
2.1.エラープローンPCRによるプライマリライブラリの構築
【0121】
向上したCPCアシラーゼ活性を有する変異CPCアシラーゼを調製するために、実施例1.1に記載したpm遺伝子の塩基配列に人為的にランダムな変異を加えた。この目的のため、エラープローンPCRを行い、変異ライブラリを構築した。変異ライブラリの構築の具体的なプロセスは、以下の通りである。
【0122】
Diversity PCR Random Mutagenesis kit(Clontech,米国)を用いて、1,000bpあたり1~2個の変異が生じるように、エラープローンPCRを行った。PCR反応混合物は、基質DNAとして1ng/μLのpBC-PM2プラスミド(実施例1.1)、10pmolのT3プライマー(配列番号15)、10pmolのT7プライマー(配列番号16)、2mMのdGTP、50× Diversity dNTP mix、10× TITANIUM Taq バッファーおよびTITANIUM Taq ポリメラーゼが全量を50μLで混合されたものだった。PCR反応条件は以下の通りである。PCRは95℃で2分間の予備変性で開始し、95℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニーリング、68℃で3分間の伸長を18サイクル行い、その後68℃で5分間の最終伸長を行った。この条件では、エラープローンPCRによる増幅の結果、約2.1kbのサイズの変異DNA断片が得られた。
【0123】
エラープローンPCRによって得られた変異遺伝子、すなわち2.1kbのPCR産物を制限酵素XbaIとNotIで切断し、精製キット(QIAquick Gel Extraction Kit;QIAGEN,ドイツ)を用いて精製し、挿入DNAを調製した。また、別途、pBC-KS(+)ベクター(Stratagene,米国)をXbaIとNotIで切断し、CIPで脱リン酸化してベクターDNAを得た。調製した挿入DNAを、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs、スウェーデン)の存在下、16℃で12~16時間ベクターDNAにライゲーションし、ライゲーション混合物をエレクトロポレーションにより大腸菌(E.coli)MC1061に形質転換させた。この菌株を20μg/mLのクロラムフェニコール抗生物質を含むLB寒天プレートに広げ、30℃で一晩静置培養し、ランダム変異ライブラリを構築した。
【0124】
前記変異ライブラリの中から、CPC基質に対する反応性が向上した変異CPCアシラーゼを、以下のようにスクリーニングした。
【0125】
上記のように追加の変異が導入された変異CPCアシラーゼ遺伝子を含む大腸菌(E.coli)MC1061形質転換体を、クロラムフェニコール添加LBブロスを160μLずつ含む96ウェルプレートに接種し、165rpmで撹拌しながら30℃で60~70時間培養を行った。その後、各ウェルから取り出した培養液20μLを新しい96ウェルプレートに移し、105μLの細胞溶解緩衝液(1.25mg/mLリゾチーム、1.25mM EDTA、および0.375%(w/v) Triton X-100)を加えて、25℃で2時間、その後10℃で1時間インキュベートした。各ウェルに、50mM CPCを25mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)に溶解した基質溶液を125μL加え、10℃で16~18時間、CPC基質に対する加水分解反応を行った。加水分解反応後、上清40μLを新しい96ウェルプレートの各ウェルに移した。酵素反応を反応停止液(酢酸:250mM NaOH、2:1)100μLで停止し、発色試薬(メタノール中 0.5%(w/v)PDAB)30μLを加え、室温で10分間静置した。その後、96ウェルプレートリーダーを用いて7-ACAの生成を示す波長である415nmでの吸光度を読み取り、CPC基質に対する活性が向上した変異体をスクリーニングした。
【0126】
その結果、約30000の変異体の中から、PM2に比べてCPCアシラーゼ活性が向上した4つの変異体(EM5、EM9、EM17、およびEM42)(I45βV/F58sV/Y153βT/177βL/V382βL変異を含む)が選択された。変異体の遺伝子をシークエンシングにより、EM5変異体酵素ではアミノ酸残基A11α(α-サブユニットの11位のアラニン)がアスパラギンに置換(A11αN)され、EM9変異体酵素ではアミノ酸残基G24αがアスパラギン酸に置換(A11αD)され、EM17変異体ではアミノ酸残基A136β(β-サブユニット136位のアラニン)がトレオニンに置換(A136βT)され、EM42変異体ではアミノ酸残基I179βがチロシンに置換(I179βY)されていることが判明した。
【0127】
2.2.部位特異的変異導入(DNAシャッフリング)による二次変異ライブラリの構築-改変株の選択(CSH17)
【0128】
CPCアシラーゼ活性をさらに高めるために、4つのアミノ酸残基(A11αN、G24αD、A136βT、およびI179βY)の部位特異的変異ライブラリを、実施例2.1のエラープローンPCRで得られた改変株の活性に基づいて構築した。
【0129】
簡単に説明すると、A11αおよびG24αについての変異ライブラリを構築するために、基質PM2およびEM5上でM13-Rプライマー(配列番号17)およびSH24α-Rプライマー(配列番号18)を用いてPCRを行い、約240bpのサイズのPCR産物を得た。G24α、A136β、およびI179βに対する変異ライブラリは、基質PM2およびEM17に対してSH24α-Fプライマー(配列番号19)およびSH179β-Rプライマー(配列番号20)を用いてPCRを行い、約975bpのサイズのPCR生成物を得ることにより構築された。I179βの変異ライブラリについては、PM2を鋳型として、SH179β-Fプライマー(配列番号21)およびM13-Fプライマー(配列番号22)を用いてPCRを行い、約1,120bpのサイズのPCR産物を得た。
【0130】
PCR反応液の最終容量100μLには、対応する基質DNA、プライマー、pfu-x緩衝液、dNTPs mix、およびpfu-xポリメラーゼが含まれていた。PCRは95℃で2分間の予備変性で開始し、95℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニーリング、68℃で3分間の伸長を18サイクル行い、68℃で5分間の最終伸長を行った。
【0131】
この条件でPCRを行って得られた約240bp、約975bp、約1120bpのサイズを有するPCR産物を混合し、T3プライマー(配列番号15)とT7プライマー(配列番号16)を用いたPCRに供して複数の変異を有する2.1kb DNAフラグメントを増幅させた。この2.1kbのPCR産物を、実施例2.1と同様の方法でpBC-KS(+)ベクターDNAに挿入し、大腸菌(E.coli)MC1061に形質転換して部位特異的変異ライブラリを構築した。
【0132】
部位特異的変異ライブラリでは、実施例2.1と同様にして、CPC基質に対して活性を高めた変異CPCアシラーゼを探索した。その結果、実施例2.1と同様にして、PM2よりもCPCアシラーゼ活性が高い四重変異体(A11αN/G24αD/A136βT/I179βY)を選択し、CSH17と命名した。CSH17変異酵素(配列番号9)は、配列番号10のα-サブユニットおよび配列番号11のβ-サブユニットを含む。
【0133】
実施例3:酵素安定性に必要な熱安定性が向上した変異体の調製と選択-エラープローンPCRによる3次変異ライブラリの構築-改変株TEP11の選択
【0134】
実施例2.2で調製した改変株CSH17の熱安定性をさらに高めるため、CSH17(配列番号9)をコードするDNAを鋳型DNAとして使用し、実施例2.1と同様の方法でエラープローン変異ライブラリを構築した。
【0135】
前記変異ライブラリにおいて、熱処理条件以外は実施例2.1と同様にして、熱安定性が向上した変異CPCアシラーゼを探索した。すなわち、CSH17(配列番号9)をコードするDNAを鋳型として、エラープローンPCR(実施例2.1参照)を行い、ランダム変異ライブラリを構築した。得られた、変異を導入した変異CPCアシラーゼ遺伝子を含む大腸菌(E.coli)MC1061形質転換体を、クロラムフェニコール添加LBブロスを各ウェル160μLずつ含む96ウェルプレートに接種し、165rpmで撹拌しながら30℃で60~70時間培養を行った。その後、各ウェルから取り出した培養液20μLを新たな96ウェルプレートに移し、105μLの細胞溶解緩衝液(1.25mg/mLリゾチーム、1.25mM EDTA、および0.375%(w/v)Triton X-100)を加え、25℃で2時間インキュベートし、次に55℃で1.5時間加熱処理を行った。各ウェルに、50mM CPCを25mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)に溶解した基質溶液を125μL加え、10℃で16~18時間、CPC基質に対する加水分解反応を行った。
【0136】
このようにして構築したエラープローン変異ライブラリにおいて、熱安定性が向上した変異CPCアシラーゼを探索した。その結果、H453βのトレオニンでの置換による変異(H453βT)+CSH17変異(四重変異A11αN/G24αD/A136βT/I179βY)を含む株が、CSH17変異体と比較して、高いCPCアシラーゼ活性と著しく高い熱安定性とを示すことを確認し、TEP11と命名した。TEP11(配列番号12)は、配列番号13のα-サブユニットおよび配列番号14のβ-サブユニットを含む。
【0137】
以下では、実施例2および3の代表的な変異体を、CPCアシラーゼ活性および熱安定性についてアッセイした。
【0138】
実施例4:CPCアシラーゼ変異体の活性と熱安定性のアッセイ
【0139】
実施例2および3のCPCアシラーゼ変異体について、それぞれ実施例1.3および3と同様の方法で酵素活性および熱安定性についてアッセイした。結果を表2および3にまとめた(変異酵素の活性または熱安定性は、PM2に対する相対値(倍率)として表す)。
【0140】
【0141】
【0142】
変異酵素の中で、TEP11変異酵素が最も高い活性と熱安定性を示すことが観察された。TEP11変異酵素をコードする遺伝子を担持するpBC-TEP11プラスミドを大腸菌(E.coli)MC1061株に形質転換し、これを「Escherichia coli MC1061-pBC-TEP11」と命名し、2021年12月13日付で大韓民国全羅北道井邑市に所在するKorean Collection for Type Culturesに寄託した(寄託番号:KCTC 14821BP)。
【0143】
実施例5:CPCアシラーゼ変異体の酵素活性と熱安定性の比較(対 野生型CPCアシラーゼ)
【0144】
実施例2および実施例3で選択した5つのCPCアシラーゼ変異(A11αN、G24αD、A136βT、I179βY、H453βT)を野生型CPCアシラーゼに導入した変異酵素について、酵素活性および熱安定性を評価した。
【0145】
5つのCPCアシラーゼ変異(A11αN、G24αD、A136βT、I179βY、およびH453βT)を含む変異体を、それぞれ部位特異的変異導入法により調製した。
【0146】
簡単に説明すると、野生型CPCアシラーゼ(配列番号1)を鋳型として、5つのCPCアシラーゼ変異体(A11αN、G24αD、A136βT、I179βY、およびH453βT)を、PCRによって調製した。PCRにおけるプライマーを、以下の表4にまとめた。
【0147】
【0148】
PCR反応液の最終容量100μLには、対応する基質DNA、プライマー、pfu-xバッファー、dNTP mix、およびpfu-xポリメラーゼが含まれていた。PCRは95℃で2分間の予備変性で開始し、95℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニーリング、68℃で3分間の伸長を18サイクル行い、その後68℃で5分間の最終伸長を行った。この条件で得られた2.1kbのサイズのPCR産物を、実施例2.1と同様の方法でpBC-KS(+)ベクターDNAに挿入し、大腸菌(E.coli)MC1061に形質転換して部位特異的変異株を得た。比較のため、野生型CPCアシラーゼ(配列番号1)を大腸菌(E.coli)MC1061に導入し、組換え株を調製した。
【0149】
上記で調製した5種類のCPCアシラーゼ変異株を、野生型株(配列番号1)と比較して、実施例1.3(酵素活性)および実施例3(熱安定性、40℃で30分間放置した酵素溶液を用いて測定)の方法を参照してCPC基質に対する酵素活性および熱安定性を評価した。その結果を下記表5に示す。
【0150】
【0151】
表5に示されるように、5つのCPCアシラーゼ変異(A11αN、G24αD、A136βT、I179βY、およびH453βT)を単独で導入した各変異体は、野生型(配列番号1)と比較して、CPC基質に対して約2.9~約6.2倍、熱活性に対して約2.4倍高い活性を示した。
【0152】
実施例6:A11α変異によるCPCアシラーゼ変異体の酵素活性と熱安定性の比較
【0153】
実施例5を参照して、CPCアシラーゼを、A11αに対する変異残基に従って、酵素活性および熱安定性についてアッセイした。
【0154】
簡単に説明すると、部位特異的変異誘発は、野生型CPCアシラーゼ配列(配列番号1)を鋳型として行い、アミノ酸残基A11αを、それぞれアスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)およびトレオニン(T)で置換したCPCアシラーゼ変異体A11αN、A11αP、A11αQ、A11αI、A11αV、A11αLおよびA11αTを得ることを目的とする。
【0155】
上記で調製したCPCアシラーゼ変異体および野生型CPCアシラーゼを、実施例1.3(酵素活性)および実施例3(熱安定性、40℃で30分間放置した酵素溶液を用いて測定)の方法を参照して、CPC基質に対する酵素活性および熱安定性を評価した。
【0156】
CPCアシラーゼ変異体のアッセイ結果を、野生型CPCアシラーゼに対する相対値(倍率)として、以下の表6に示す。
【0157】
【0158】
表6に示すように、CPCアシラーゼ変異体A11αN、A11αP、A11αQ、A11αI、A11αV、A11αLのCPC基質に対する酵素活性は、野生型よりも優れており、CPCアシラーゼ変異体A11αTよりも約2.3~5倍高いことが示された。また、CPCアシラーゼ変異体A11αN、A11αP、A11αQ、A11αI、A11αV、およびA11αLは熱安定性において野生型と同等かそれ以上であったが、CPCアシラーゼ変異体A11αTは、野生型より安定性が低かった。さらに、CPCアシラーゼ変異体A11αN、A11αP、A11αQ、A11αI、A11αV、およびA11αLは、前記CPCアシラーゼ変異体A11αTと比較して、安定性が約1.14倍~1.22倍向上していることを示した。
【0159】
このデータから、A11αをアスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、イソロイシン(I)、バリン(V)、またはロイシン(L)で置換した変異CPCアシラーゼは、野生型、および同じアミノ酸残基(A11α)を、異なるあるアミノ酸(例えば、トレオニン(T))で置換した変異体に比べて、著しく向上した特性を保持していると理解された。
【0160】
上記の説明から、本開示は、その技術的精神または本質的な特徴を変更することなく、異なる具体的な形態で実施され得ることが当業者には理解されよう。したがって、上記の実施形態は、限定的なものではなく、すべての態様において例示的なものであることが理解されるべきである。本開示の範囲は、それらに先行する記載によってではなく、添付の請求項によって定義され、したがって、請求項の計量値またはその同等物の範囲に含まれるすべての変更および改変は、請求項によって包含されることを意図している。
【0161】
(寄託番号)
寄託機関:Korean Collection for Type Culture
寄託番号:KCTC 14821BP
寄託日:2021年12月13日
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-サブユニットおよびβ-サブユニットを含むセファロスポリンC(CPC)アシラーゼに由来する、変異CPCアシラーゼであって、
ここで、前記変異CPCアシラーゼが、配列番号4のβ-サブユニットにおけるI179βの、チロシン(Y)での置換(I179βY)による変異を含む、変異CPCアシラーゼ。
【請求項2】
前記変異CPCアシラーゼが、
配列番号3の前記α-サブユニットにおける11位のアラニン(A11α)の、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、イソロイシン(I)、バリン(V)、またはロイシン(L)での置換;
配列番号3の前記α-サブユニットにおける24位のグリシン(G24α)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換;および
配列番号4の前記β-サブユニットにおける136位のアラニン(A136β)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換、
からなる群から選択される少なくとも1つによる変異をさらに含む請求項1に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項3】
前記変異CPCアシラーゼが、
配列番号3の前記α-サブユニットにおける11位のアラニン(A11α)の、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、イソロイシン(I)、バリン(V)、またはロイシン(L)での置換;
配列番号3のα-サブユニットにおける24位のグリシン(G24α)の、アスパラギン酸(D)での置換(G24αD);および
配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアラニン(A136β)の、トレオニン(T)での置換(A136βT)、
からなる群から選択される少なくとも1つによる変異をさらに含む請求項1に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項4】
前記変異CPCアシラーゼが、
配列番号3の前記α-サブユニットにおける11位のアラニン(A11α)の、アスパラギン(N)での置換(A11αN);
配列番号3のα-サブユニットにおける24位のグリシン(G24α)の、アスパラギン酸(D)での置換(G24αD);および
配列番号4のβ-サブユニットにおける136位のアラニン(A136β)の、トレオニン(T)での置換(A136βT);
からなる群から選択される少なくとも1つによる変異をさらに含む請求項1に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項5】
前記変異CPCアシラーゼが、以下の全ての置換、
配列番号3のα-サブユニットにおけるA11αの、アスパラギン(N)での置換(A11αN);
配列番号3のα-サブユニットにおけるG24αの、アスパラギン酸(D)での置換(G24αD);
配列番号4のβ-サブユニットにおけるA136βの、トレオニン(T)での置換(A136βT);および
配列番号4のβ-サブユニットにおけるI179βの、チロシン(Y)での置換(I179βY)、
による変異を含む、請求項4に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項6】
前記変異CPCアシラーゼが、配列番号4のβ-サブユニットにおける453位のヒスチジン(H453β)の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での置換による変異をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項7】
配列番号4のβ-サブユニットにおけるH453βの、トレオニン(T)での置換(H453βT)により、453位のヒスチジンの置換が、行われる、請求項6に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項8】
前記変異CPCアシラーゼが、配列番号4のβ-サブユニットにおける、以下のアミノ酸:
45位のイソロイシン(I45β)、58位のフェニルアラニン(F58β)、153位のチロシン(Y153β)、177位のフェニルアラニン(F177β)、および382位のバリン(V382β)
から選択される少なくとも1つのアミノ酸の、元のアミノ酸残基とは異なるあるアミノ酸での追加の置換による変異を、さらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項9】
前記追加の置換が、配列番号4のβ-サブユニットにおける、
I45βの、バリン(V)での置換(I45βV);
F58βの、バリン(V)での置換(F58βV);
Y153βの、トレオニン(T)での置換(Y153βT);
F177βの、ロイシン(L)での置換(F177βL);および
V382βの、ロイシン(L)での置換(V382βL)、
からなる群から選択される少なくとも1つの置換である、請求項8に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項10】
前記追加の置換が、配列番号4のβ-サブユニットにおける、
I45βの、バリン(V)での置換(I45βV);
F58βの、バリン(V)での置換(F58βV);
Y153βの、トレオニン(T)での置換(Y153βT);
F177βの、ロイシン(L)での置換(F177βL);および
V382βの、ロイシン(L)での置換(V382βL)、
の全ての置換を含む、請求項9に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項11】
前記変異CPCアシラーゼが、配列番号9または配列番号12のアミノ酸配列によって表される、請求項9に記載の変異CPCアシラーゼ。
【請求項12】
(1)請求項1~7のいずれか1項に記載の変異CPCアシラーゼ、または
(2)(1)の変異CPCアシラーゼにおける変異に加えて、置換I45βV、置換F58βV、置換Y153βT、置換F177βLおよび置換V382βLからなる群から選択される少なくとも1つの置換による変異を含む変異CPCアシラーゼ、
をコードする、核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を担持する、組換え発現ベクター。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸分子を含む、組換え細胞。
【請求項15】
7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその塩の生成のための組成物であって、
(1)請求項1~7のいずれか1項に記載の変異CPCアシラーゼ;
(2)(1)の変異CPCアシラーゼにおける変異に加えて、I45βV、F58βV、Y153βT、F177βLおよびV382βLからなる群から選択される少なくとも1つの置換による変異を含む、変異CPCアシラーゼ:
(3)(1)の変異CPCアシラーゼをコードする核酸分子、または前記核酸分子を含む組換え発現ベクターもしくは組換え細胞;
(4)(2)の変異CPCアシラーゼをコードする核酸分子、または前記核酸分子を担持する組換え発現ベクター;および
(5)前記核酸分子または前記組換えベクターを含む組換え細胞、またはその培養物、
からなる群から選択されるうちの少なくとも1つを含む、組成物。
【請求項16】
化学式2の化合物またはその塩を生成するための方法であって、請求項
15に記載の組成物と、化学式1の化合物またはその塩とを接触させるステップを含む、方法。
【化1】
【化2】
(式中、Rは、アセトキシ(-OCOCH
3)基、ヒドロキシ(-OH)基、または水素(-H)基である。)
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】