(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095829
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ミリ波透過性層用液状組成物、及びミリ波透過性積層体
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230629BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20230629BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20230629BHJP
C09D 11/02 20140101ALI20230629BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20230629BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/08
C08K5/00
C09D11/02
B32B7/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206168
(22)【出願日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2021210196
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】392008024
【氏名又は名称】十条ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 賢一
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J039
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AH02B
4F100AJ04B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AL01B
4F100AT00A
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4F100JG04
4F100YY00B
4J002AA001
4J002AB011
4J002AB021
4J002BC051
4J002BC061
4J002BG011
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4J002BG051
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4J039BE16
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4J039BE28
4J039CA02
4J039CA05
4J039FA02
4J039GA10
(57)【要約】
【課題】スクリーン印刷法等の簡易印刷法を用いて、外観の高級感に優れるとともに、優れたミリ波透過性を示すミリ波透過性層が効率的に得られるミリ波透過性層用液状組成物等を提供する。
【解決手段】ミリ波透過性層を形成するミリ波透過性層用液状組成物等であって、少なくとも下記配合成分(A)~(C)を含む。
(A)金属粒子100重量部
(B)ポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂0.1~50重量部
(C)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10GHz~300GHzの周波数を有するミリ波を透過させた場合の電磁波透過減衰量が2dB以下のミリ波透過性層を形成するミリ波透過性層用液状組成物であって、下記(A)~(C)の配合成分を含むことを特徴とするミリ波透過性層用液状組成物。
(A)金属粒子100重量部
(B)ポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂0.1~50重量部
(C)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
【請求項2】
配合成分(D)として、前記配合成分(A)100重量部に対して、前記配合成分(B)に対する架橋剤を、0.01~10重量部の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載のミリ波透過性層用液状組成物。
【請求項3】
前記配合成分(A)の平均粒径を0.01~90μmの範囲内の値とし、かつ、前記配合成分(A)の平均厚さを25μm以下の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のミリ波透過性層用液状組成物。
【請求項4】
前記配合成分(B)が、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及び、アクリルウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載のミリ波透過性層用液状組成物。
【請求項5】
前記配合成分(C)が、3-メトキシ-1-メチル-ブタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいはいずれか一方であることを特徴とする請求項1又は2に記載のミリ波透過性層用液状組成物。
【請求項6】
前記配合成分(D)が、イソシアネート化合物、又は、3~6官能の多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物であることを特徴とする請求項2に記載のミリ波透過性層用液状組成物。
【請求項7】
基材上に、下記(A)~(C)の配合成分を含むミリ波透過性層用液状組成物に由来し、かつ、10GHz~300GHzの周波数を有するミリ波を透過させた場合の電磁波透過減衰量が2dB以下であるミリ波透過性層を有することを特徴とするミリ波透過性積層体。
(A)金属粒子100重量部
(B)ポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂0.1~50重量部
(C)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
【請求項8】
前記ミリ波透過性層において、測定間距離を1cmとし、所定電圧条件下に測定される電気絶縁抵抗値を1×1011Ω以上の値とすることを特徴とする請求項7に記載のミリ波透過性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波透過性層用液状組成物(以下、単に、液状組成物と称する場合がある。)、及びミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体(以下、単に、ミリ波透過性積層体と称する場合がある。)に関する。
より詳細には、スクリーン印刷法等の印刷法を用いて、ミリ波透過性層等が効率的かつ安定的に形成できる液状組成物、それに由来してなるミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントやエンブレム等に装着され、前方等に位置する他自動車との衝突回避用のミリ波レーダーや、かかるミリ波レーダーの前方に配置されるミリ波透過性積層体が各種検討されている。
例えば、
図8(a)に示すように、かかるミリ波透過性積層体として、基材上に、金属(インジウム等)を真空蒸着し、ミリ波透過性と、その金属光沢に由来する外観とを兼ね備えた積層体が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
又、真空蒸着法にかわり、塗布方法によって、電磁波透過性積層体の塗膜を形成する方法も提案されている(例えば、特許文献2)。
より具体的には、
図8(b)に示すように、インジウム等の金属ナノ粒子、オキサゾリン基を含有する樹脂(a)、カルボキシル基を含有する樹脂(b)、及び、所定溶剤を含む電磁波透過性塗料組成物を準備し、それをスピンコート法等によって塗布してなる光輝性を有する電磁波透過性塗膜及びその形成方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-344032号(特許請求の範囲、
図1等)
【特許文献2】特開2012-46665号(特許請求の範囲、
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のミリ波透過性積層体を製造するに際して、金属(インジウム等)の真空蒸着処理を用いていることから、真空又は減圧容器中に、被処理物である基材を設置する必要があった。
そのため、大型で、複雑形状等の基材に対して、事実上、適用できないという問題が見られた。
又、真空蒸着処理の場合、相当大型の真空蒸着装置を用意する必要があって、薄膜であっても、相当の製造時間(真空状態とする準備期間を含む。)がかかるばかりか、製造コストが高くなって、経済的に不利になるという問題も見られた。
【0006】
又、特許文献2においては、金属ナノ粒子や溶剤等のほかに、特定の複数樹脂(オキサゾリン基を含有する樹脂(a)及びカルボキシル基を含有する樹脂(b))を用いる必要があった。しかも、それら複数樹脂のエタノール可溶性やジエチレングリコールジエチルエーテル溶解性を精度良く制御して、製造する必要性があった。
又、所定厚さの均一な塗膜を形成するためには、オキサゾリン基を含有する樹脂(a)におけるオキサゾリン基に対する、カルボキシル基を含有する樹脂(b)のカルボキシル基のモル比を厳格に制御する必要性もあった。
その上、所定架橋剤の配合や機能についても何ら着目しておらず、塗膜の耐熱性、機械的強度、更には、基材に対する密着性等が不十分であるという問題も見られた。
【0007】
そこで、本発明の発明者らは、少なくとも所定の配合成分(A)~(C)を、所定割合(配合比)で含むことによって、簡易塗布方法であっても、ミリ波透過性層用液状組成物に由来した所定塗膜が安定的に得られ、ひいては、所定電磁波透過減衰量を有し、耐久性や密着性等に優れたミリ波透過性層を効率的に形成できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、スクリーン印刷法等の簡易塗布方法を用いた場合でも、優れたミリ波透過性等を有するミリ波透過性層が、効率的かつ安定的に得られるミリ波透過性層用液状組成物、及び、それに由来してなるミリ波透過性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、10GHz~300GHzの周波数を有するミリ波を透過させた場合の電磁波透過減衰量が2dB以下のミリ波透過性層を形成するミリ波透過性層用液状組成物であって、下記(A)~(C)の配合成分を含むミリ波透過性層用液状組成物が提供され、上述した課題を解決することができる。
(A)金属粒子100重量部
(B)ポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂0.1~50重量部
(C)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
このように、配合成分(A)の金属粒子や、配合成分(C)の所定溶剤とともに、配合成分(B)のポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂(以下、PEGE)を含むことにより、真空蒸着法やスパッタリング等を用いることなく、スクリーン印刷法等の簡易塗布方法を用いて、所定のミリ波透過性層を効率的かつ安定的に形成することができる。
従って、外観の高級感に優れるとともに、優れたミリ波透過性を示し、かつ、耐久性や密着性等に優れたミリ波透過性層を経済的に得ることができる。
なお、配合成分(B)の所定溶媒(ポリエチレングリコールエーテル)に対する溶解性については、樹脂の種類、平均重量分子量、各種官能基の導入等によって適宜調整できるが、後述する実施例1に記載した評価基準に沿って、精度良く確認することができる。
【0009】
又、本発明の液状組成物を構成するにあたり、配合成分(D)として、配合成分(A)100重量部に対して、(B)成分に対する架橋剤を、0.01~10重量部の範囲で含むことが好ましい。
このように構成することによって、得られるミリ波透過性層の強度や密着性をより向上させることができ、しかも、液状組成物の塗布性や平滑性についても、更に向上させることができる。
【0010】
又、本発明の液状組成物を構成するにあたり、配合成分(A)の平均粒径を0.01~90μmの範囲内の値とし、かつ、配合成分(A)の平均厚さを25μm以下の値とすることが好ましい。
このように構成することによって、配合成分(A)の分散性や塗布性が更に向上し、均一表面等を有し、高級感に優れるとともに、優れたミリ波透過性等を有するミリ波透過性層を、効率的かつ安定的に得ることができる。
すなわち、ミリ波透過性層を形成した場合において、粒子同士が膜厚方向に重なりにくく、水平方向に配列しやすくなって、いわゆる海島状構造をより容易に形成できる。従って、良好なミリ波透過性層を更に容易に形成し、ひいては、金属粒子の非存在領域である海部を介して、ミリ波を安定的に透過させることができる。
【0011】
又、本発明の液状組成物を構成するにあたり、配合成分(B)が、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びアクリルウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
このように構成することによって、得られるミリ波透過性層の強度や密着性をより向上させることができ、しかも、液状組成物の塗布性や平滑性についても、更に向上させることができる。
【0012】
又、本発明の液状組成物を構成するにあたり、配合成分(C)が、3-メトキシ-1-メチル-ブタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいはいずれか一方であることが好ましい。
このように所定溶剤を制限することによって、各種印刷法に適用した場合であっても、より均一表面等を有し、高級感に優れるとともに、優れたミリ波透過性等を有するミリ波透過性層を、より効率的かつ安定的に得ることができる。
【0013】
又、本発明の液状組成物を構成するにあたり、配合成分(D)が、イソシアネート化合物、又は、3~6官能の多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物とあることが好ましい。
このように配合成分(D)である架橋剤の種類を制限することによって、配合成分(B)のセルロース樹脂やアクリ樹脂等に対する架橋反応を、より迅速かつ確実に行わせることができ、しかも、密着性等についても、更に向上させることができる。
【0014】
又、本発明の別の態様は、基材上に、下記(A)~(C)の配合成分を含む液状組成物に由来し、かつ、10GHz~300GHzの周波数を有するミリ波を透過させた場合の電磁波透過減衰量が2dB以下であるミリ波透過性層を有することを特徴とするミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体である。
(A)金属粒子100重量部
(B)ポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂0.1~50重量部
(C)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
このように構成することによって、真空蒸着法やスパッタリング等を用いることなく、スクリーン印刷法等の簡易な印刷法を用いて、優れたミリ波透過性を有するミリ波透過性層を、安定的かつ効率的に形成することができる。
従って、外観の高級感に優れるとともに、かつ、耐久性や密着性等に優れたミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体を効率的かつ経済的に得ることができる。
【0015】
又、本発明のミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体を構成するにあたり、ミリ波透過性層において、測定間距離(例えば、プローブ間距離、以下、同様である。)を1cmとし、所定電圧条件下(例えば、直流電圧1000V、以下、同様である。)に測定される電気絶縁抵抗値(以下、絶縁抵抗値と称する場合がある。)を1×1011Ω以上の値とすることが好ましい。
このように金属粒子による海島構造と相関する絶縁抵抗値を所定値に制御することによって、所定のミリ波透過性を有するミリ波透過性層を、更に安定的かつ均一に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)~(c)は、本発明のミリ波透過性積層体の概要を説明するために供する図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、本発明のパターン印刷したミリ波透過性積層体の概要を説明するために供する図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、本発明のミリ波透過性層のパターン形状を説明するために供する図である。
【
図4】
図4(a)は、配合成分(a)がインジウムによるミリ波透過性層のSEM像(倍率:23000)であり、
図4(b)は、配合成分(a)がアルミニウムによるミリ波透過性層のSEM像(倍率:500)である。
【
図5】
図5(a)~(b)は、それぞれ、配合成分(A)の配合量に対する、ミリ波透過性層における電磁波透過減衰量及び絶縁抵抗値への影響を説明するために供する図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明のミリ波透過性積層体を、ミリ波発生源上に配置した状態を説明するために供する図であり、
図6(b)は、金属光沢を有する外観を説明するために供する図である。
【
図7】
図7(a)~(b)は、それぞれ、本発明のミリ波透過性積層体の形成方法を説明するために供する図である。
【
図8】
図8(a)~(b)は、それぞれ、従来のミリ波透過性積層体等を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、10GHz~300GHzの周波数を有するミリ波を透過させた場合の電磁波透過減衰量が2dB以下のミリ波透過性層を形成するミリ波透過性層用液状組成物であって、下記(A)~(C)の配合成分を含むことを特徴とするミリ波透過性層用液状組成物である。
(A)金属粒子100重量部
(B)ポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂0.1~50重量部
(C)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
以下、第1の実施形態の液状組成物につき、適宜図面を参照しつつ、具体的に説明する。
【0018】
1.配合成分(A)
(1)種類
配合成分(A)は、少なくとも一種の金属粒子であることを特徴としている。
この理由は、このような金属粒子であれば、簡易印刷法であるスクリーン印刷法等を用いて、所定の電磁波透過減衰量を有するミリ波透過性層を、安定的に形成することが容易なためである。
従って、好適な金属粒子として、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、クロム、ビスマス、チタン、タングステン、バナジウム、タンタル、マンガン、亜鉛、コバルト、ニッケル、アンチモン、ロジウム、又は、白金等から選ばれる少なくとも一つ、又は、これらの混合物や合金、あるいは酸化物や硫化物等が挙げられる。
【0019】
そして、特に、インジウム粒子単独、或いは、インジウム粒子と、他の金属粒子との混合物(通常、インジウム粒子の含有量が、金属粒子の全体量に対して、50重量%以上)であれば、それらを含む液状組成物を塗布した場合であっても、水平方向に配列しやすくなって、平滑な塗膜になるとともに、隣接するインジウム粒子同士が相互に離間しやすくなる。
又、アルミニウム粒子、銀、及びスズであっても、当該アルミニウム粒子等が、塗布した場合に凝集しやすくなって、かかるアルミニウム粒子の凝集体中に、隙間部分やクラック部分が形成されやすくなる。
更に言えば、スクリーン印刷法等を用いれば、所定箇所のみに、アルミニウム粒子等の間に、任意の形状や大きさの空隙を形成することができる。
従って、アルミニウム粒子を使用した場合であっても、いわゆる海島状構造を形成できることから、所定のミリ波透過性(広義の電磁波透過性と称する場合がある。)を得ることができる。
【0020】
又、液状組成物における金属粒子の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、ミリ波透過性、海島状構造の島部の割合、更には、絶縁抵抗値との関係から、当該液状組成物の全体量を100重量%(質量%と同義、以下、同様である。)としたときに、1~40重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように配合成分(A)の配合量を制御することによって、液状組成物中における配合成分(A)の分散性や塗布性が更に向上するためである。
従って、均一表面等を有し、外観の高級感に更に優れるとともに、優れたミリ波透過性等を有するミリ波透過性層を効率的に得ることができる。
【0021】
より具体的には、液状組成物における金属粒子の配合量が1重量%未満の値になると、外観の高級感が、著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(A)の配合量が40重量%を超えた値になると、金属粒子の均一拡散が困難になり、ひいては、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したミリ波透過性層のミリ波透過性が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(A)の配合量を3~35重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、5~20重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0022】
(2)平均粒径
又、配合成分(A)の平均粒径(円相当径)は、JISZ8819-2(2019)に準拠して測定される値であり、ミリ波透過性や分散性、更には溶剤との相性等を考慮して決めることが好ましいが、通常、0.01~90μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように配合成分(A)の平均粒径を制御することによって、配合成分(A)の分散性や塗布性が更に向上し、均一表面等を有し、外観の高級感に更に優れるとともに、優れたミリ波透過性等を有するミリ波透過性層を効率的に得ることができるためである。
【0023】
より具体的には、配合成分(A)の平均粒径が0.01μm未満の値になると、液状組成物における金属粒子が凝集しやすくなって、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したミリ波透過性層のミリ波透過性が著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(A)の平均粒径が90μmを超えた値になると、金属粒子の均一拡散が困難になり、ひいては、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したミリ波透過性層のミリ波透過性が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(A)の平均粒径(円相当径)を0.05~70μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1~50μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、配合成分(A)の平均粒径(円相当径)は、画像処理装置や粒度分布計を用いて、算術平均値や、粒度分布チャートのD50として測定することもできるし、あるいは、配合成分(A)の電子顕微鏡写真から、間接的に測定することもできる。
【0024】
(3)粒子形状
又、配合成分(A)の粒子形状を、フレーク状(鱗片状、又は、薄片状と称する場合がある。)とすることが好ましい。
この理由は、このようなフレーク状であれば、所定厚さの塗膜において、厚さ方向に重なりにくく、水平方向に配列しやすくなって、いわゆる海島状構造を形成しやすいためである。
従って、フレーク状である金属粒子によれば、優れた電磁波透過減衰量や、絶縁抵抗値が所定範囲のミリ波透過性層を更に容易に形成し、ひいては、金属粒子の非存在領域である海部において、所定のミリ波(広義の電磁波と称する場合がある。)を容易に透過させることができる。
【0025】
又、配合成分(A)の粒子形状をフレーク状とした場合に、配合成分(A)の平均厚さを25μm以下の値とすることが好ましい。
この理由は、このように配合成分(A)の形状及びその平均厚さをそれぞれ制御することによって、更に均一表面等を有し、外観の高級感に更に優れるとともに、優れたミリ波透過性等を有するミリ波透過性層を効率的に得ることができるためである。
【0026】
より具体的には、配合成分(A)の平均厚さが25μmを超えた値になると、均一な島状構造を形成することが困難になって、ひいては、形成したミリ波透過性層のミリ波透過性が著しく低下する場合があるためである。
但し、金属粒子の均一拡散、及び、均一塗布をし易くする観点から、配合成分(A)の平均厚さを1nm以上とすることが好ましい。
従って、配合成分(A)の平均厚さを10nm~5μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20nm~1μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、配合成分(A)の平均厚さは、ノギスやマイクロメータを用いて直接的に測定することもできるし、あるいは、配合成分(A)の電子顕微鏡写真から、間接的に測定することもできる。
【0027】
(4)海島状構造
図4(a)によると、インジウムによる海島状構造においては、平均粒径(円相当径)0.2μmのインジウム粒子がそれぞれ島部を形成し、インジウム粒子同士の隙間が海部を形成していることが理解される。すなわち、インジウムによる海島状構造は、良好なミリ波透過性と、優れた外観と、を有するミリ波透過性層の形成を可能にするものである。
一方、
図4(b)によると、アルミニウムによる海島状構造においては、アルミニウム粒子の凝集体が島部を形成し、アルミニウム粒子の凝集体中のクラック部分が海部を形成していることが理解される。すなわち、アルミニウムによる海島状構造は、より汎用性が高いミリ波透過性層の形成を可能にするものである。
【0028】
2.配合成分(B)
(1)種類
配合成分(B)は、ポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂(又は、3-メトキシ-3-メチル-1ーブタノール(MMB)等に対する可溶性樹脂も同義であって、ポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂に含めることができるが、別途、MMB可溶性樹脂と称する場合もある。)である。
すなわち、ポリエチレングリコールエーテル(PEGE)や、MMB(3-メトキシ-3-メチル-1ーブタノール)や、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、あるいは、これらの混合物の特定溶媒に、実用上、問題ない程度の可溶性を示す樹脂であれば、液状組成物を構成する所定溶媒に対して、比較的少量の配合でもって、液状組成物における粘度を所望範囲に調整することができる。
従って、PEGE可溶性樹脂を、所定量配合することによって、簡易な塗布装置を用いた場合であっても、安定した塗布性を発揮することができる。しかも、これらのPEGE可溶性樹脂であれば、事実上、水溶性やアルコール可溶性にも優れており、安全性に優れた液状組成物を提供しやすくなる。
更に言えば、これらのPEGE可溶性樹脂であれば、得られるミリ波透過性層の機械的強度、均一性、密着性を向上させることができ、しかも、所定の官能基を有することによって、架橋剤との反応性についても高めることができる。
【0029】
又、配合成分(B)のPEGE可溶性樹脂が、より具体的には、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及び、アクリルウレタン樹脂(アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる複合樹脂)からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
この理由は、これらの樹脂であれば、比較的少量の配合でもって、粘度調整効果を発揮し、良好な塗布性を得ることができるためである。又、これらの樹脂であれば、所定の架橋剤と反応し、密着性や機械的強度に優れたミリ波透過性層とすることができるためである。
【0030】
又、セルロース樹脂としては、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース系樹脂を、一種単独、又は二種以上を組み合わせて使用するのが好ましい。
そして、これらのセルロース系樹脂の中でも、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系の樹脂であることがより好ましい。
この理由は、これらのセルロースアセテートブチレート樹脂等であれば、粘度調整効果を更に発揮するとともに、ミリ波透過性層の平滑性、また(A)成分である金属粒子の均一分散性につき、より寄与することができるためである。
【0031】
又、アクリル樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エチル-アクリル酸2-クロロエチル共重合体、アクリル酸nブチル-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等の少なくとも一つが挙げられる。
【0032】
又、ウレタン樹脂としては、イソシアネート基を有する化合物と、ヒドロキシル基を有する化合物を共重合させて得られる高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエステル系ウレタン、ポリエーテル系ウレタン、ポリカーボネート系ウレタン、アクリル系ウレタン等の少なくとも一つが挙げられる。
【0033】
又、アクリルウレタン樹脂は、アクリル樹脂単独や、ウレタン樹脂単独とは異なるものの、アクリル樹脂とウレタン樹脂とで一体化した複合樹脂であって、例えば、ウレタン樹脂存在下に水酸基を有するアクリル系単量体を重合して得られる複合樹脂であることが好ましい。
通常、かかるアクリルウレタン樹脂としてのウレタン/アクリル重量比が20:80~80:20の範囲内のものを用いることで、粘度調整効果やミリ波透過性層の良好な平滑性などの効果を得ることができる。
【0034】
又、ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸等の多価カルボン酸成分と、ジオール等の多価アルコール成分とを重縮合して得られるもので、多価カルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸等が挙げられ、多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等を挙げることができる。
すなわち、これらのポリエステル樹脂を用いることで、ミリ波透過性層のより平滑性や、(A)成分である金属粒子のより均一分散を得ることができる。
【0035】
(2)重量平均分子量
又、配合成分(B)であるPEGE可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)を5,000~100,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる重量平均分子量が5,000未満の値になると、粘度調整剤としての機能が低下し、比較的少量の配合では、粘度上昇が著しく低くなる場合があるためである。又、かかる重量平均分子量が、5,000未満の値になると、基材との密着不良を起こしやすくなるとともに、塗膜の平滑性が低下する場合があるためである。
一方、かかる重量平均分子量が100,000を超えると、金属粒子の均一拡散が困難になり、ひいては、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したミリ波透過性層のミリ波透過性が著しく低下する場合があるためである。しかも、ミリ波透過性層の表面強度が過度に硬くなり、柔軟性が低下する場合があるためである。
従って、PEGE可溶性樹脂の重量平均分子量を10,000~80,000の範囲内の値とすることが好ましく、15,000~50,000の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、PEGE可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値として算出することができる。
【0036】
(3)ガラス転移点
又、配合成分(B)であるPEGE可溶性樹脂のガラス転移点(Tg)を30~180℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるガラス転移点が30℃未満の値になると、ミリ波透過性層の機械的強度や耐久性が低下する場合があるためである。
一方、かかるガラス転移点が180℃を超えると、粘度調整剤としての機能が低下し、比較的少量の配合では、粘度上昇が著しく低くなったり、あるいは、ミリ波透過性層と、基材との間の密着性が低下しやすくなる場合があるためである。
従って、PEGE可溶性樹脂のガラス転移点を40~160℃の範囲内の値とすることが好ましく、50~140℃の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、PEGE可溶性樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)により、窒素気流中で、測定することができる。
【0037】
(4)配合量
又、配合成分(B)であるPEGE可溶性樹脂の配合量を、配合成分(A)100重量部(質量部と同義、以下、同様である。)に対して、0.1~50重量部の範囲内の値とすることを特徴としている。
この理由は、かかる配合成分(B)の配合量を制御することによって、配合成分(A)の分散性や塗布性が更に向上し、均一表面等を有し、ひいては、外観の高級感に更に優れるとともに、優れた耐久性や、ミリ波透過性等を有するミリ波透過性層を効率的に得られるためである。
【0038】
より具体的には、配合成分(B)の配合量が0.1重量部未満の値になると、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したミリ波透過性層のミリ波透過性が著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(B)の配合量が50重量部を超えた値になると、相対的に、金属粒子の配合量が減少し、ひいては、形成したミリ波透過性層のミリ波透過性が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(B)の配合量を3~25重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5~20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0039】
3.配合成分(C)
(1)種類
配合成分(C)は、有機溶剤であって、主として、配合成分(B)であるPEGE可溶性樹脂を溶解させ、配合成分(A)を均一に分散し、塗布しやすくするための分散剤である。
従って、配合成分(C)は、アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤を用いることが好ましい。
【0040】
例えば、アルコール溶剤である3-メトキシ-1-メチル-ブタノール(以下、MMBと略する場合がある。)や、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールの少なくとも一つであれば、安全性に優れているばかりか、配合成分(B)のセルロース樹脂を均一かつ迅速に溶解しやすく、ひいては、配合成分(A)の金属粒子を均一に分散させやすいことから、より好ましいと言える。
又、ケトン溶剤のメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の少なくとも一つであれば、配合成分(B)のセルロース樹脂を本発明の液状組成物中に均一に分散させやすいことから好ましいと言える。
炭化水素溶剤としては、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、コールタールナフサ等の少なくとも一つがあげられる。
又、エステル溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の少なくとも一つが挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等の少なくとも一つが挙げられる。
【0041】
又、プロピレングリコール溶剤のエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルであれば、印刷基材となる三次元成形加工が可能な樹脂フィルムへのダメージがほとんど無いため、得られたミリ波透過性積層体が良好な延伸性を示すことができる点から好ましいと言える。
そして、配合成分(C)の有機溶剤として、配合成分(B)のPEGE可溶性樹脂を、より溶解させやすいことから、3-メトキシ-1-メチル-ブタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいはいずれか一方であることが、最も好ましいと言える。
【0042】
(2)配合量
又、配合成分(C)の配合量を、配合成分(A)100重量部に対して、100~2500重量部の範囲内の値とすることを特徴としている。
この理由は、このように配合成分(C)の配合量を制御することによって、配合成分(A)の分散性や液状組成物における塗布性が更に向上し、ひいては、外観の高級感に更に優れるとともに、優れた耐久性や、ミリ波透過性等を有するミリ波透過性層を効率的に得ることができるためである。
【0043】
より具体的には、配合成分(C)の配合量が100重量部未満の値になると、液状組成物を均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したミリ波透過性層のミリ波透過性が著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(C)の配合量が2500重量部を超えた値になると、金属粒子の均一拡散が困難になり、ひいては、スクリーン印刷法等によって、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したミリ波透過性層のミリ波透過性が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(C)の配合量を200~1500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、300~1000重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0044】
4.配合成分(D)
(1)種類
配合成分(D)は、所定の架橋剤であって、任意配合成分ではあるものの、主として、配合成分(B)であるセルロース樹脂等が有する官能基(ヒドロキシ基、カルボキシル基等)と反応して、ミリ波透過性層に架橋構造を導入することができる化合物である。
従って、このような架橋剤として、多官能アルコキシ基(アルコキシ基が加水分解したヒドロキシ基を含む。以下、同様である)を有するケイ素含有化合物、イソシアネート化合物、ブロック化イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、金属系化合物及びオキサゾリン化合物の少なくとも一つを用いることが好ましい。
【0045】
特に、液状組成物が水性であっても、配合成分(C)が、多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物、より具体的には、3~6官能の多官能アルコキシ基(加水分解したヒドロキシ基を含む)を有するケイ素含有化合物であることが好ましい。
より具体的には、ビス-(3-メトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(3-エトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(3-プロポキシシリルプロピル)アミン、
ビス-(2-メトキシメチル)アミン、ビス-(2-メトキシエチル)アミン、ビス-(2-メトキシプロピル)アミン、ビス-(3-メトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス-(3-エトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス-(3ープロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス-(2-メトキシメチル)イソシアヌレート、ビス-(2-メトキシエチル)イソシアヌレート、ビス-(2-メトキシプロピル)イソシアヌレート、3-メトキシシリルプロピルコハク酸、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミンの加水分解縮合物等の少なくとも一つが挙げられる。
【0046】
特に、これらのうち、ビス-(3-メトキシシリルプロピル)アミンや、ビス-(3-エトキシシリルプロピル)アミン等は、両末端に複数アルコキシ基を有し、溶液状態では、比較的安定的であるのに、所定温度に加熱すると、架橋剤として、セルロース樹脂等が有するヒドロキシ基と適度に反応しやすいことから好適である。
又、多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物であれば、分子内、特に、分子末端に電気陰性度の高いケイ素原子(Si)を有することから、得られたミリ波透過性層が、各種基材に対して、良好な密着性(接着性)を示すやすくすることもできる。
【0047】
又、配合成分(D)の架橋剤の補強或いは密着性向上のために、上述した多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物以外のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を併用することも好ましい。
より具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトメチルジメトキシシラン、3-メルカプトトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシチタン、3-アミノプロピルトリエトキシチタン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシチタン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシチタン、3-ウレイドプロピルトリエトキシチタン、3-ウレイドプロピルトリメトキシチタン及び3-アミノプロピルトリエトキシアルミニウムの少なくとも一つを配合することが好ましい。
この理由は、このような比較的低分子量のシランカップリング剤を、所定量(上述した多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物等100重量部に対して、通常、1~30重量部)を併用することにより、配合成分(B)である、所定樹脂が有する官能基と反応を任意に制御できるとともに、各種金属粒子や基材との間の密着性についても、更に強固に制御できる場合があるためである。
【0048】
又、配合成分(D)の架橋剤として、液状組成物の硬化性を早めるとともに、ミリ波透過性層の機械的強度や密着性より高めるために、イソシアネート化合物を用いることも好ましい。
このようなイソシアネート化合物は、(B)PEG可溶性樹脂として、特に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂との硬化反応を効果的に促進させる際に有効である。
このようなイソシアネート化合物の種類としては特に限定されないが、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及び芳香族ジイソシアネートなどのジイソシアネートが好ましく、例えば、脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート等、脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサンジイソシアネート等、芳香族ジイソシアネートとしては、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。又、これらジイソシアネートの二量体、三量体などや、水との反応により生成するビュウレット体が挙げられる。これらは1種単独、又は2種以上を使用することができる。
【0049】
又、イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、タケネートD-110N、D-120N、D-127N、D-160N、D-170N、D-165N、D-178N等(三井化学株式会社製)、デュラネート24A-100、22A-75P、TPA-100、P301-75E、TKA-100、21S-75E(旭化成ケミカルズ株式会社製)、JA-930、JA-940、JA-945、JA-950、JA-960、JA-970(十条ケミカル株式会社製)等の少なくとも一つが挙げられる。
【0050】
(2)配合量
又、配合成分(D)の配合量を、通常、配合成分(A)100重量部に対して、0.01~10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように配合成分(D)の配合量を制御することによって、得られたミリ波透過性層の機械的強度、耐久性、更には、基材に対する密着性や、塗布性等を飛躍的に向上させることができるためである。
【0051】
より具体的には、かかる配合成分(D)の配合量が0.01重量部未満の値になると、得られたミリ波透過性層の機械的強度や耐久性が低下したり、あるいは、基材に対する密着性等が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる配合成分(D)の配合量が10重量部を超えた値になると、液状組成物におけるポットライフ(可使時間)が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(D)の配合量を、配合成分(A)100重量部に対して、0.1~8重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.5~6重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0052】
5.配合成分(E)
(1)種類
配合成分(E)は、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、及び、オレフィン系表面調整剤の少なくとも一つであって、主として、配合成分(A)を、他の配合成分と、均一に分散させやすくし、更には、コーティング用樹脂組成物の流動性、消泡性、レベリング性等の印刷特性を向上させるための化合物である。
より具体的には、配合成分(E)が、これらシリコーン系表面調整剤等の場合、その重量平均分子量が1000~30000の範囲内の値であることが好ましい。
又、シリコーン系表面調整剤の場合、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられるが、市販品を用いることもでき、例えば、BYK302、BYK310、BYK333、BYK392(以上、ビッグケミージャパン製)の少なくとも一つが好適である。
又、フッ素系化合物としては、例えば、BYK-340(ビックケミージャパン製)、DIC株式会社製のメガファックシリーズなどから選ばれる少なくとも一つが好適である。
更に、アクリル系表面調整剤の場合、所定のアクリル系共重合体が挙げられるが、市販品を用いることもでき、BYK350、BYK354、BYK392(以上、ビッグケミージャパン製)、共栄社化学株式会社製のポリフローシリーズの中から選ばれる少なくとも一つが好適である。
オレフィン系表面調整剤としては、共栄社化学株式会社製のフローレンシリーズの中から選ばれる少なくとも一つが好適である。
【0053】
又、配合成分(E)の配合量についても、用途に応じて適否選択できるが、通常、配合成分(A)100重量部に対して、0.1~20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように配合成分(E)の配合量を制御することによって、液状組成物を均一に塗布することが容易になったり、あるいは、形成したミリ波透過性層におけるミリ波透過性が、良好に発揮できるためである。
【0054】
より具体的には、配合成分(E)の配合量が0.1重量部未満の値になると、得られたミリ波透過性層の耐久性や基材に対する密着性等が著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(E)の配合量が20重量部を超えた値になると、液状組成物に由来する塗膜の耐久性や密着性が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(E)の配合量を0.5~15重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1~10重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0055】
6.添加剤
又、液状組成物は、各種添加剤として、従来公知のものを適宜含むことが好ましい。
例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、金属キレート、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分、カップリング剤などの少なくとも一つを、通常、液状組成物の配合成分(A)100重量部に対して、0.1~20重量部の割合で配合することが好ましい。
【0056】
7.粘度
液状組成物の粘度は、コーティング法に適合させて適宜変更することができるが、通常、1~1000mPa・sec(測定温度:25℃、以下、同様である。)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように液状組成物の粘度を制御することによって、各種コーティング法に適用した場合に、液状組成物を均一に塗布することが容易になったり、あるいは、形成したミリ波透過性層のミリ波透過性が良好に、発揮できるためである。
【0057】
より具体的には、液状組成物の粘度が1mPa・sec未満の値になると、スクリーン印刷法等に適用した場合に、液だれしたり、あるいは、液状組成物における金属粒子の均一拡散が困難になる場合があるためである。
一方、液状組成物の粘度が1000mPa・secを超えた値になると、液状組成物におけるシェルフライフが著しく低下する場合があるためである。
従って、液状組成物の粘度1.5~500mPa・secの範囲内の値とすることが好ましく、2~200mPa・secの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0058】
8.ミリ波透過性層
(1)電磁波透過減衰量
ミリ波透過性層の電磁波透過減衰量は、所定方法で測定した場合に、10GHz~300GHzの周波数を有するミリ波を透過させた場合の電磁波透過減衰量(電磁波損失量と称する場合がある。)を2dB以下とすることを特徴とする。
この理由は、このように電磁波透過減衰量を制御することによって、電波を送受信する装置に用いられる場合に、電磁波の損失が少なく、正確に電磁波を送受信することができる場合があるためであり、この値は小さいほど好ましい。
従って、かかるミリ波透過性層の電磁波透過減衰量を1dB以下とすることがより好ましく、0.5dB以下とすることが更に好ましい。
但し、かかるミリ波透過性層の電磁波透過減衰量が、0.1dB未満であると、使用可能な(A)成分、(B)成分、(C)成分等の種類や配合量等が過度に制限される場合がある。
そのため、電磁波透過減衰量は、0.1dB以上であることが好ましい。
なお、マイクロ波帯域(1GHz)における電磁波透過性と、ミリ波レーダーの周波数帯域(76~80GHz)における電磁波透過性との間には良好な相関性があって、比較的近い値を示すことが判明している。
従って、マイクロ波電界透過減衰量が小さく、マイクロ波帯域における電磁波透過性に優れるミリ波透過性層は、ミリ波レーダーの周波数帯域における電磁波透過性にも優れると言える。
【0059】
ここで、ミリ波透過性層の電磁波透過減衰量としては、例えば、
図5(a)に示すように、配合成分(A)の配合量によって制御することができる。
すなわち、
図5(a)は、横軸に、金属粒子(フレーク状インジウム粒子)の配合量がとって示してあり、縦軸に、ミリ波透過性層の電磁波透過減衰量の値がとって示してある。
かかる
図5(a)中の特性曲線から理解されるように、金属粒子の配合量と、それを含んでなるミリ波透過性層の電磁波透過減衰量とは、比例的な関係がある。そして、通常、液状組成物100重量%に対して、金属粒子の配合量を好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下、更に好ましくは30重量%以下とすることにより、ミリ波透過性層の電磁波透過減衰量を2dB以下の値とすることができる。
【0060】
(2)電気絶縁抵抗値
ミリ波透過性層の電気絶縁抵抗値(以下、単に、絶縁抵抗値と称する場合がある。)を1×1011Ω以上の値とすることが好ましい。
この理由は、このように絶縁抵抗値を制御することによって、金属粒子による海島状構造の状態を、間接的ではあるが、確実に制御するためである。
すなわち、ミリ波透過性層の絶縁抵抗値が、1×1011Ω未満の値になると、形成したミリ波透過性層における金属粒子による海島状構造が確実に形成されず、ミリ波透過性が著しく低下する場合があるためである。
一方、ミリ波透過性層の絶縁抵抗値が過度に高くなると、選択可能な材料種が過度に制限されたり、外観における高級感が過度に低下する場合があるためである。
従って、ミリ波透過性層の絶縁抵抗値を1×1012Ω~1×1015Ωの範囲内の値とすることがより好ましく、1×1013Ω~1×1014Ωの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、ミリ波透過性層の絶縁抵抗値は、後述する実施例1で示す測定方法で測定することができる。
【0061】
又、ミリ波透過性層の絶縁抵抗値としては、例えば、
図5(b)に示すように、配合成分(A)の配合量によって制御することが好ましい。
すなわち、
図5(b)は、横軸に、金属粒子(フレーク状インジウム粒子)の配合量がとって示してあり、縦軸に、ミリ波透過性層の絶縁抵抗値がとって示してある。
かかる
図5(b)中の特性曲線から理解されるように、金属粒子の配合量と、それを含んでなるミリ波透過性層の絶縁抵抗値とは、反比例的な関係がある。
そして、通常、液状組成物100重量%に対して、金属粒子の配合量を好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下、更に好ましくは30重量%以下とすることにより、ミリ波透過性層の絶縁抵抗値を1×10
11Ω以上の値とすることができる。
【0062】
(3)厚さ
ミリ波透過性層の厚さは、用途にもよるが、通常、0.1~500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにミリ波透過性層の厚さを制御することによって、可視光透過率や、可視光反射率を制御し、更には、均一な塗膜として、ミリ波透過性層を形成しやすくするためである。
すなわち、ミリ波透過性層の厚さが、0.1μm未満の値になると、均一な厚さのミリ波透過性層を形成することが困難となる場合があるばかりか、機械的強度や耐久性が著しく低下する場合があるためである。
一方、ミリ波透過性層の厚さが、過度に厚くなり、500μmを超えると、良好な可視光透過率や可視光反射率、更には、良好なミリ波透過性を得ることが困難になる場合があるためである。
従って、ミリ波透過性層の厚さを1~100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、5~50μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0063】
(4)表面粗さ(Ra)
ミリ波透過性層の表面粗さ(Ra)は、JISB0601(1994)に準拠して測定される値であり、用途にもよるが、通常、1μm以下の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにミリ波透過性層の表面粗さ(Ra)を制御することによって、可視光透過率や、可視光反射率を制御し、更には、均一な塗膜として、ミリ波透過性層を形成しやすくするためである。
【0064】
より具体的には、ミリ波透過性層の表面粗さ(Ra)が1μmを超えた値になると、均一な厚さのミリ波透過性層を形成することが困難となる場合があるばかりか、機械的強度や耐久性が低下して、使用可能な範囲が過度に狭くなる場合があるためである。
但し、海島状構造の境界を明確にして、表面粗さの制御をし易くする観点から、表面粗さを0.01μm以上とすることがより好ましい。
従って、ミリ波透過性層の表面粗さ(Ra)を0.05~0.4μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1~0.15μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、実施例において、後述するように、かかるミリ波透過性層の表面粗さ(Ra)は、非接触式の表面粗さ計を用いて、精度良く測定することができる。
【0065】
(5)海島状構造
海島状構造は、隣接する金属粒子が各々独立し、互いにわずかに離反し、又は一部接触した状態で敷き詰められてなる構造と定義される。
ここで、
図4(a)に、本発明の一実施形態におけるインジウムによる海島状構造のミリ波透過性層のSEM像を示し、
図4(b)に、本発明の一実施形態におけるアルミニウムによる海島状構造のミリ波透過性層のSEM像を示す。
このような海島状構造のミリ波透過性層は、例えば、基材上に、本発明の液状組成物を塗布することによって、容易に形成することができる。
【0066】
(6)可視光反射率
又、ミリ波透過性層は、可視光反射率として、波長400~700nmの可視光に対する可視光反射率(平均値)を20%以上とすることが好ましく、便宜的には、代表値である500nmにおいて、可視光反射率が20%以上であることが好ましい。
この理由は、かかる可視光反射率が20%未満となると、ミリ波透過性層における反射光の強度が著しく低下し、十分な金属光沢が得られない場合があるためである。
但し、電磁波透過性を向上させる観点から、可視光反射率を80%以下とすることが好ましい。
従って、可視光反射率を25~70%の範囲内の値とすることがより好ましく、30~60%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、ミリ波透過性層における可視光反射率は、後述する実施例1に示すように、例えば、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計U4100を用いて測定することができる。
【0067】
(7)可視光透過率
又、ミリ波透過性層は、可視光透過率として、波長400~700nmの可視光に対する可視光透過率(平均値)を20%以上とすることが好ましく、便宜的には、代表値である500nmにおいて、可視光透過率が20%以上であることが好ましい。
この理由は、可視光透過率が20%未満となると、電磁波透過減衰量が高くなる傾向にあり、電磁波透過率が2dBを超える場合があるためである。
但し、外観の高級感を向上させる観点から、可視光透過率を80%以下とすることが好ましい。
従って、可視光透過率を30~75%の範囲内の値とすることがより好ましく、40~70%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、ミリ波透過性層における可視光透過率は、後述する実施例1に示すように、例えば、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計U4100を用いて測定することができる。
【0068】
(8)賦形性
ミリ波透過性積層体を、180°に折り曲げたり、150%に伸張させた場合に、ミリ波透過性層にクラック生じたり、破損したりしないように、賦形性を有することが好ましい。
より具体的には、ミリ波透過性積層体を、立ち上がりとしての曲面部分(R=0.5mm)を有する金型内に収容し、その金型内に、溶融状態の樹脂を注入し、更にそれを室温まで冷却して、所定形状の成形品とする際に、ミリ波透過性層にクラック生じず、破損しないことが好ましい。
すなわち、自動車等のエンブレムに、ミリ波透過性積層体を装着する際に、半径0.5mmの仮想円があることを想定し、その仮想円に沿って立ち上がる曲面部分を有する金型内に、溶融状態の樹脂を注入し、それを室温まで冷却して、所定形状のエンブレムに加工することが好ましいためである。
【0069】
そして、ミリ波透過性層に用いられる金属粒子の種類が、フレーク状インジウム単独使用の場合、あるいは、例えば、金属粒子の全体量を100重量%としたとき、フレーク状インジウムを50重量%以上含む場合であれば、一定条件下、180°に折り曲げたり、R=0.5mmで湾曲させたような場合に、クラック等が生じず、比較的良好な賦形性が得られることが判明してる。
又、スクリーン印刷法等を用いて、
図3(a)~(c)に示すように、ミリ波透過性層を所定パターン化することは、賦形性を著しく向上させられることから、より好ましい態様である。
【0070】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、基材上に、下記(A)~(C)の配合成分を含むミリ波透過性層用液状組成物に由来し、かつ、10GHz~300GHzの周波数を有するミリ波を透過させた場合の電磁波透過減衰量が2dB以下であるミリ波透過性層を有することを特徴とするミリ波透過性積層体である。
(A)金属粒子100重量部
(B)ポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂0.1~50重量部
(C)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
以下、本発明の第2の実施形態につき、適宜図面を参照しつつ、具体的に説明する。
【0071】
1.ミリ波透過性層
(1)基本構成
ミリ波透過性層の基本構成は、第1の実施形態で説明いた内容と同様であって、10GHz~300GHzの周波数を有するミリ波を透過させた場合の電磁波透過減衰量が2dB以下である、所定のミリ波透過性を有する金属粒子含有樹脂層である。
【0072】
従って、例えば、
図2(a)に示すように、基材10上に、ミリ波透過性層12を有し、当該ミリ波透過性層が保護層14に覆われ、ミリ波透過性層12が島部12aと、海部12bと、を有するミリ波透過性積層体100である。
又、
図2(b)~(c)に示すように、基材10上に、ミリ波透過性層12と、装飾層13と、を有するミリ波透過性積層体100’や保護層14上に接着剤層16を有するミリ波透過性積層体100’’とすることも好ましい。
その上、図示しないものの、装飾層として、青、赤、黄色等の透明度の高い、光透過性を有する透過インキ(例えば、十条ケミカル株製、PIMインキ3700シリーズや762インキ)に由来した透明着色層を、基材の両面又は片面に設けることによって、高級感や輝度感のあるアルマイト染色調に優れたミリ波透過性積層体とすることも好ましい。
しかも、保護層の一部又は、別部材として、赤外線透過型インキ(例えば、十条ケミカル株製、PIMインキ3700シリーズやTG-IRインキ)を使用した押さえ層を設けることによって、ミリ波透過性を、より減衰させにくいことから好適な態様である。
【0073】
(2)パターン
又、例えば、
図2(a)に示すように、ミリ波透過性層について、所定のパターン部18と、スリット部19とを有する、ミリ波透過性積層体102とすることも好ましい。
更に、
図2(b)~(c)に示すように、装飾層13を有するミリ波透過性積層体102’や保護層14上に接着剤層16を有するミリ波透過性積層体102’’とすることも好ましい。
すなわち、特に形状は限定されないものの、円又は楕円のドット状、ライン状、ハニカム状とすることが好ましい。
【0074】
更には、各パターンについて、島部12aと、海部12bと、を反転させた反転ドット状、反転ライン状、反転ハニカム状とすることも好ましい。
この理由は、このようにパターン化することにより、賦形等によって基材10が変形した場合であっても、ミリ波透過性層12におけるクラックや剥がれを有効に防止することができるためである。
加えて、ミリ波透過性層12の海島状構造における、島部12aと、海部12bとの境界を明確にすることによって、電磁波透過性や絶縁抵抗値の制御をより容易にすることができるためである。
【0075】
従って、特に、
図3(a)~(c)に示すように、ハニカム状構造、反転ハニカム状構造、又はライン状構造の、パターン部(18a~18c)と、スリット部(19a~19c)とを有する、ミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体(100a~100c)であることが更に好ましい。
【0076】
(3)多層構造
又、ミリ波透過性層は、図示しないものの、少なくとも第1のミリ波透過性層と、第2のミリ波透過性層とを含む、2層以上の多層構造であることも好ましい。
この理由は、かかる多層構造とすることによって、厚さ調整が容易になって、より機械的強度を高めたり、耐久性を向上させたり、更には、ミリ波透過性をより安定化させたりできるためである。
又、ミリ波透過性層を、2層以上の多層構造とする場合、基材側から、外側に向かって、第1のミリ波透過性層と、第2のミリ波透過性層との構成(厚さや組成)を全く同一とすることも好ましいが、それぞれ構成を異ならせることも好ましい。
例えば、第1のミリ波透過性層の金属粒子の配合量を相対的に少なくし、第2のミリ波透過性層の金属粒子の配合量を相対的に多くすることによって、所定のミリ波透過性等を維持したまま、多層構造のミリ波透過性層として、基材に対する密着性を有効に向上させることができる。
又、例えば、第1のミリ波透過性層における所定樹脂の配合量を相対的に多くし、第2のミリ波透過性層の層における所定樹脂の配合量を相対的に多くすることによって、同様に、所定のミリ波透過性等を維持したまま、基材に対する密着性を有効に向上させることができる。
【0077】
2.基材
ミリ波透過性積層体の一部を構成する基材(以下、基材フィルムと称する場合もある。)の種類は、用途によって適宜選択されるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、ポリウレタン、アクリル(PMMA)、ABSなどの単独重合体や共重合体からなる少なくとも一つの樹脂基材を用いることが好ましい。
これらの樹脂基材であれば、光透過率(例えば、可視光透過率が90%以上)に優れ、ミリ波透過性層との密着性に優れ、しかも、光輝性や電磁波透過性に影響を与えることが少ないためである。
【0078】
但し、上記材料の中でも、透明性、耐久性、耐熱性等と、コストとのバランスが更に良いことから、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーの少なくとも一つが好ましい。
又、樹脂基材のほかに、無機基材として、透明性が高く、耐熱性、硬度等に優れたガラスを含むセラミック等も好ましい。
更に、基材は、単層フィルムでもよいし、積層フィルムでもよい。そして、加工のし易さ等から、厚さを、通常、5~500μmの範囲内の値とすることが好ましく、10~300μmの範囲内の値とすることがより好ましく、15~100μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
その他、ミリ波透過性層との付着力を強くするために、基材の両面又は片面に、プラズマ処理や易接着処理などが施してあることも好ましい。
【0079】
3.装飾層
ミリ波透過性積層体は、基材の表面に、直接的又は間接的に、装飾層(着色層や透明樹脂層も含む)を備えることが好ましい。
より具体的には、
図1(b)に示すように、基材10のミリ波透過性層12と同一側の面に形成された装飾層13を備えた構成であることが好ましい。
又、装飾層13を設ける位置は特に限定されないが、ミリ波透過性層12と基材10との間、又は、基材10のミリ波透過性層12と同一側の面に設けることがより好ましい。
この理由は、ミリ波透過性層12を有するミリ波透過性積層体を介して、反射した光を視認することで、装飾層13を重ねて視認したり、あるいは、ミリ波透過性層12を有するミリ波透過性積層体の周囲に装飾層13を形成し、装飾効果や、賦形性を向上させることができるためである。
【0080】
特に、
図6(a)~(b)に示すように、ミリ波透過性層12を有するミリ波透過性積層体が装飾層13を有している場合には、かかるミリ波透過性層積層体は、光源2上に配置されていることが好ましい。
この理由は、ミリ波透過性積層体のミリ波透過性層12を介して、ミリ波を照射することが可能になり、外観の高級感と、ミリ波レーダーとしての機能を両立させることができるためである。
すなわち、
図6(a)に示すように、光源2から検出対象3へ照射されたミリ波X1について、透過しないミリ波X2の強度を小さくすることが容易にでなる。
又、検出対象3に反射したミリ波X3について、透過しないミリ波X4の強度を小さくすることが容易になって、影響を少なくすることができる。
更に、
図6(b)に示すように、視認対象50からの光Y1は、ミリ波透過性層12を透過する光Y3の強度を抑えつつ、反射光Y2として視認者52に視認されることもできる。
そして、かかる装飾層は、例えば、先述の基材10に用いることができる材料に対して、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、インクジェット、あるいはレーザープリンタ等の公知の印刷法を用いることにより形成することができる。
【0081】
4.接着剤層
又、ミリ波透過性積層体は、接着剤(粘着剤も含む。以下、同様である。)を含んでなる接着剤層を備えることも好ましい。
すなわち、かかる接着剤層を介して、ミリ波透過性層は、被着部材に貼付されて用いられることになる。
ここで、接着剤の種類は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及びポリエーテル系粘着剤のいずれかを単独で、或いは、2種類以上を組み合わせて使用することができる。
但し、透明性、加工性及び耐久性などが更に良好なことから、アクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤等を用いることが、より好ましい。
【0082】
又、接着剤層は、ミリ波透過性層上に形成されることが好ましく、透明粘着剤からなることが好ましい。
この場合、ミリ波透過性層は、透明な被着部材の視認される側(外側)の面とは反対側(内側)の面に貼付されて用いられることが好ましい。
図1(c)に、本発明の一態様による装飾層、基材10、ミリ波透過性層12、接着剤層16をこの順に備えるミリ波透過性層12が透明な被着部材の内側の面に貼付された状態の概略断面図を示す。
本実施形態では、透明な被着部材と接着剤層を通してミリ波透過性層が視認される。すなわち、本態様のミリ波透過性層は透明な被着部材を内側から装飾できる。
従って、被着部材にミリ波透過性層を貼付して得られる製品においてミリ波透過性層は、外部と接触することがなく、傷つきにくい。又、被着部材の質感をそのまま活かしつつ被着部材を装飾することができる。
透明な被着部材としては、例えばガラスやプラスチックからなる被着部材を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
又、透明粘着剤は着色されていてもよい。この場合、ミリ波透過性層が着色された接着剤層を通して視認されることとなるので、着色された金属光沢を発現することができる。
通常着色された金属光沢を発現させる場合には、別途着色のための層を設けるため、ミリ波透過性層の全体の厚みは増加する。しかし、着色された透明粘着剤を用いることで、厚みの増加を伴わずに着色された金属光沢を発現させることができる。
ミリ波透過性層を透明な被着部材の内側に貼付して用いる場合において、被着部材が、例えば、携帯電話機やスマートフォン等の精密機器の筐体基板である場合、筐体内部のスペースの圧迫を抑制するために、ミリ波透過性層の厚みは小さいことが好ましい。
従って、本実施形態のミリ波透過性層を用いて着色された金属光沢を発現する場合には、着色された透明粘着剤を用いることが好ましい。
透明粘着剤を着色する方法は特に限定されないが、例えば色素を微量添加することにより着色することができる。
なお、ミリ波透過性層が接着剤層を備える場合には、被着部材に貼付する際まで接着剤層を保護するために、接着剤層の上に剥離ライナーを設けることが好ましい。
【0084】
5.その他の層
(1)保護層
図1(a)~(c)に示すように、基材10のミリ波透過性層12が積層してある面と同一側の表面に、保護層14を備えることも好ましい。
このよう保護層14を備えることにより、ミリ波透過性層の耐久性や長期間にわたるミリ波透過性等を著しく向上させることができるためである。
従って、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリーレン樹脂(PEEK樹脂)、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、サーリーン樹脂等の少なくとも一つを用いて、保護層とすることが好ましい。
【0085】
(2)紫外線吸収層
ミリ波透過性層の所定場所に、直接的又は間接的に、紫外線吸収層を備えることも好ましい。
すなわち、図示しないものの、基材のミリ波透過性層が積層してある基材とは反対側の表面、あるいは、ミリ波透過性層と、基材との間、更には、ミリ波透過性層上に、紫外線吸収層を備えることも好ましい。
【0086】
6.用途
ミリ波透過性層を、基材に対して積層する方法は特に限定されないが、例えば、塗布方法により積層することが好ましい。
すなわち、液状組成物をスクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、ロールコート法、ナイフコート法、スプレー塗布、フレキソ印刷、インクジェット、又は、スピンコート法の少なくとも一つを用いて、塗膜を形成することが好ましい。
従って、ミリ波透過性層は、優れた電磁波透過性を安定的に有することから、電波を送受信する装置の装飾に使用することが好適な用途である。
【0087】
例えば、携帯電話機やスマートフォン、コンピューター等の電子機器の筐体や、自動車、航空機、船舶、ドローン等のフロント部分に使用することが好ましい。
又、本実施形態のミリ波透過性層は、基材フィルムのミリ波透過性層が設けられる側とは反対側に光源を備える態様で使用することにより、光源の点灯時と消灯時で異なる外観を得ることができる。
【0088】
その他、特に、図示しないものの、ミリ波透過性層が、基材フィルムのミリ波透過性層が設けられた側と同一側に、全面又は部分的に装飾層を備えるとともに、それが、可視光源上に配置されている態様を含む用途も好ましい。
このような用途であれば、可視光源の消灯時には鏡のような外観を視認することができる一方、点灯時には装飾層が透けて見え、所定画像や所定情報、更には、スイッチ等として使用可能な外観を視認することができる。
そして、このような態様のミリ波透過性層を含む用途であれば、移動可能なロボットの安全衝突防止装置や、移動可能なディスプレイを備えたPCや搬送車、ドローンの位置センサー、更には、弱視者の誘導装置等、幅広い用途に展開することができる。
【0089】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、基材上に、配合成分として、
(A)金属粒子100重量部
(B)ポリエチレングリコールエーテル可溶性樹脂0.1~50重量部
(C)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
を含む所定液状組成物に由来した、10GHz~300GHzの周波数を有するミリ波を透過させた場合の電磁波透過減衰量が2dB以下であるミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体の形成方法であって、下記工程(1)~(3)を含むことを特徴とするミリ波透過性積層体の形成方法である。
(1)所定液状組成物を準備する工程
(2)基材上に、所定液状組成物をスクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、ロールコート法、ナイフコート法、又は、スピンコート法の少なくとも一つを用いて、塗膜を形成する工程
(3)塗膜を80℃以上に加熱し、ミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体とする工程
このように、所定液状組成物に由来したミリ波透過性層を有する、ミリ波透過性積層体を形成することによって、スクリーン印刷法等の簡易印刷法を用いて、所定のミリ波透過性層を均一かつ安定的に形成することができる。そのため、外観の高級感に優れるとともに、優れたミリ波透過性を示す所定のミリ波透過性積層体を安定的に得ることができる。
以下、第3の実施形態の特徴的な構成を説明するとし、第1の実施形態及び第2の実施形態と重複する部分の説明は、適宜省略するものとする。
【0090】
1.工程(1)
工程(1)は、所定のミリ波透過性層用液状組成物を準備する工程である。
なお、かかる液状組成物の内容については、基本的に第1の実施形態で既に説明したのと同様であることから、ここでの再度の説明は省略する。
【0091】
2.工程(2)
工程(2)は、所定塗布方法で、基材上に、所定の液状組成物に由来した塗膜を形成する工程である。
ここで、工程(2)の所定塗布方法の内容は特に制限されるものでなく、スクリーン印刷法やグラビアコート法、あるいは、簡易なバーコート法等であっても良い。
但し、塗膜から得られるミリ波透過性層における電磁波透過性や絶縁抵抗値を所望値により精度良く制御するためには、スクリーン印刷法を用いることがより好ましい。
【0092】
以下、
図7(a)~(d)を参照しつつ、スクリーン印刷法を例にとって、工程(2)に関して、より具体的に説明する。
すなわち、
図7(a)に示すように、基材10上に、所望のパターンを有するスクリーン34を準備するとともに、スクレーバー32aが、A1方向に移動することにより、スクリーン34上の液状組成物11をスクリーン目に充填する。
次いで、
図7(b)に示すように、液状組成物11を充填後に、スクレーバー32aが、B1方向に上昇するとともに、それに同期し、スキージ32bが、B2方向に下降する。
次いで、
図7(c)に示すように、スキージ32bが、A2方向に移動することにより、液状組成物11がスクリーン目から押し出され、基材10上に、ミリ波の透過性層における島部12aと、ミリ波の透過性層における海部12bと、をパターン印刷することができる。
最後に、
図7(d)に示すように、印刷された基材10に、ヒーター36aから熱風36bを吹き付けることで、後述する工程(3)に準じて、パターン化されたミリ波透過性層12を有する基材10を加熱処理して得ることができる。
【0093】
ここで、スクリーン印刷法を用いる場合、ミリ波透過性層を有する基材の用途や、外観、ミリ波透過性等を総合的に考慮して、スクリーンのメッシュを定めることが好ましい。
但し、通常、スクリーンのメッシュを100~1000の範囲内の値とすることが好ましく、200~600の範囲内の値とすることがより好ましく、300~500の範囲内の値とすることが更に好ましい。
又、工程(2)を実施するに際して、所定の液状組成物における溶剤種の依存性がより少ないことから、グラビアコート法やバーコート法を用いることも好ましい。
なお、工程(2)で用いる基材や、塗膜等については、基本的に第2の実施形態で既に説明した内容であることから、ここでの再度の説明は省略する。
【0094】
3.工程(3)
工程(3)は、塗膜を所定温度に加熱し、溶剤を飛散させながら、架橋剤を反応させて、塗膜を熱硬化するとともに、所定の電磁波透過性を発揮するミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体とする工程である。
すなわち、塗膜の厚さや、溶剤種等にもよるが、通常、オーブン等を用いて、80~120℃で、10~120分加熱することが好ましく、85~100℃で、15~100分加熱することがより好ましく、88~95℃で、20~80分加熱することが更に好ましい。
なお、ミリ波透過性層及びミリ波透過性積層体については、基本的に、第2の実施形態等で既に説明した内容であることから、第3の実施形態における再度の説明は省略する。
【0095】
4.変形例
又、ミリ波透過性積層体の形成方法を実施するに際して、第3の実施形態の変形例として、一旦、剥離部材(第2の基材と称する場合がある。)に、ミリ波透過性層を形成し、それを所定基材(第1の基材と称する場合がある。)に対して、転写する方法も好適である。
すなわち、下記工程(1´)~工程(4´)により、ミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体を製造することも好ましい。
【0096】
(1)工程(1´)
工程(1)と同様に、所定液状組成物を準備する。
【0097】
(2)工程(2´)
次いで、工程(2´)において、工程(2)に準じて、第2の基材である剥離部材を準備し、その上に、所定液状組成物をスクリーン印刷法等の少なくとも一つを用いて、塗膜を形成する。
なお、第2の基材である剥離部材は、シリコーン系剥離剤やフッ素系剥離剤等によって表面処理された、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂基材や、基材自体に剥離性を備えた低密度ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂基材であることが好ましい。
【0098】
(3)工程(3´)
次いで、工程(3´)において、工程(3)に準じて、塗膜を40℃以上、80℃未満で1~60分加熱し、一部未硬化状態の塗膜とするか、或いは、塗膜を80℃以上で、5~120分加熱し、ほぼ硬化状態の塗膜とすることも好ましい。
すなわち、塗膜の状態を、加熱温度や加熱時間を変えて、溶剤を一部又はほぼ全部飛散乾燥させ、次工程の転写工程における所望状態とすることが好ましい。
【0099】
(4)工程(4´)
最後に、工程(4´)において、第1の基材であるポリカーボネート基材等に対し、塗膜を転写させ、ミリ波透過性積層体とする。
又、必要によって、加熱しながら転写しても良く、あるいは、転写後、80℃以上に加熱し、所定の電磁波透過性を発揮する、ミリ波透過性積層体としても良い。
【0100】
5.その他の形成方法の具体例
又、第3の実施形態の形成方法の他の具体例として、図示しないものの、グラビアコート法を用いた製造例について、説明する。
すなわち、例えば、インキパンに溜められた液状組成物に対して、回転するシリンダ(グラビアロール)の一部を浸漬させる。
次いで、シリンダがまきあげた液状組成物の一部を、ドクターブレードが、シリンダの表面に沿って、余分としてそぎ落とす。すると、シリンダに形成された版面の窪みに、液状組成物が満たされる。
最後に、かかるシリンダと、圧着ローラとの間に通された基材に、液状組成物を転写することで、ミリ波透過性層における島部と、ミリ波透過性層における海部と、を所定パターンとして印刷することができる。
【実施例0101】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、特に理由なく、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
【0102】
[実施例1]
1.ミリ波透過性層用液状組成物の製造
(1)フレーク状インジウム分散液の作成
所定容器内に、市販のフレーク状インジウム分散液(尾池工業株式会社製、49CJ―1120(主溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル、PGM)、フレーク状インジウムの平均粒径0.38μm、平均厚さ60nm、固形分濃度20%)を準備し、それを3-メトキシ-1-メチル-ブタノール(MMB)に溶剤置換し、86重量%のMMBを含む所定のフレーク状インジウム分散液を作成した。
【0103】
(2)ミリ波透過性層用液状組成物の作成
次いで、攪拌機付きの容器内に、10gの所定のフレーク状インジウム分散液を収容し、ニトロセルロース樹脂と、架橋剤と、アルコール溶剤とを、所定割合となるように、配合した。
すなわち、配合成分(A)のフレーク状インジウム粒子100重量部に対して、配合成分(B)のセルロースアセテートブチレート樹脂(イーストマンコダック社製、品番:CAB-553-0.4、重量平均分子量:2万、ガラス転移点:136℃、以下、SABと称する場合がある。)10重量部と、配合成分(C)のアルコール溶剤としてのMMBを400重量部と、配合成分(D)の架橋剤としての6官能アルコキシアミノシラン化合物であるビス-(3-メトキシシリルプロピル)アミンを5重量部と、配合成分(E)のシリコーン系レベリング剤を5重量部の割合となるように均一に配合した。
その際、得られた液状組成物の粘度が2mPa・sec(測定温度25℃)であることを確認した。
【0104】
又、配合成分(B)のSABが、PEGE可溶性であることを以下の評価方法方に沿って、確認した。
すなわち、室温にて、ガラスシャーレに、所定樹脂を0.5g秤量して、載置した。
次いで、スポイトを用いて、PEGEを約1mlずつ滴下しながら、スパチュラで、攪拌して、所定樹脂と混合し、粘ちょう物とした。
次いで、得られた粘ちょう物が透明(白濁が観察されない状態)になるまで、10mlのPEGEの滴下と、スパチュラによる攪拌につき、同様の操作を繰り返した。
【0105】
最後に、透明となった粘ちょう物を、厚さ100μmのPETフィルムに塗布し、それを、オーブン内で、80℃、10分、加熱乾燥させて、透明性が保持されていることを確認し、下記評価基準に準じて、PEGE可溶性を評価した。
そして、下記評価結果が△以上であれば、実用上、問題ないPEGE可溶性を発揮すると言え、より好ましくは、〇以上のPEGE可溶性を有することであり、更に好ましくは、◎のPEGE可溶性を有することである。
【0106】
◎:10mlのPEGEを用いて、所定樹脂の粘ちょう物が透明になった。
〇:10mlのPEGEを用いて、所定樹脂の粘ちょう物が微濁したが、フィルム上の皮膜は透明であった。
△:10mlのPEGEを用いて、所定樹脂の粘ちょう物及びフィルム上の皮膜が微濁した。
×:10mlのPEGEを用いて、所定樹脂の粘ちょう物が白濁した。
【0107】
なお、PEGE単体の代わりに、MMB単体や、PEGE/MMBの混合物(例えば、重量比:5/95~95/5)、更には、MMB/PGMの混合物(例えば、重量比:20/80~80/20)を用いても、同様の結果が得られることが別途確認されている。
従って、本発明において、MMBやPEGE/MMB等に対する可溶性樹脂についても、PEGE可溶性樹脂と同様の可溶性結果が得られることを前提として、PEGE可溶性樹脂に含めて、そのように称呼することができる。
【0108】
2.ミリ波透過性層用液状組成物の塗布
次いで、得られた液状組成物を、スクリーン印刷法(ポリエステルメッシュ:425、メッシュ厚:40μm、乳剤厚:10μm、開口率:21%)を用いて、厚さ0.5mmのA4版のポリカーボネートフィルム上に、塗布した。
なお、液状組成物を塗布する際の印刷性(評価1)を、下記に示す通り、目視観察して評価した。
【0109】
3.塗膜の加熱
次いで、オーブン内で、100℃、60分の条件で、ポリカーボネートフィルム上に形成した塗膜につき、加熱処理を行い、所定厚さ1μmのミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体としての評価用サンプルとした。
【0110】
4.ミリ波透過性層及びミリ波透過性積層体の評価
(1)印刷性(評価1)
得られたミリ波透過性層を有するミリ波透過性積層体の外観を目視判断し、下記基準に準拠して、印刷性を評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:コーティングむらが、全く観察されず、均一塗膜としての波透過性層である。
〇:コーティングむらが、ほとんど観察されず、均一塗膜としての波透過性層である。
△:コーティングむらが、少々観察されるが、ほぼ均一な塗膜としての波透過性層が得られる。
×:コーティングむらが、顕著に観察され、均一な塗膜としての波透過性層が得られない。
【0111】
(2)電磁波透過減衰量の測定(評価2)
評価1で用いたミリ波透過性積層体につき、KEC法測定評価治具及びアジレント社製スペクトルアナライザCXAsignalAnalyzerNA9000Aを用い、1GHzにおける電磁波透過減衰量を測定し、下記基準に準拠して、評価した。得られた結果を表2に示す。
なお、KEC法に変わって、FS法(フレースペース法)に準拠して、所定のミリ波測定機器(例えば、アンリツ社製、ME7838A)であっても、電磁波透過減衰量を測定し、評価することができる。
◎:電磁波透過減衰量が、0.5dB以下である。
〇:電磁波透過減衰量が、1dB以下である。
△:電磁波透過減衰量が、2dB以下である。
×:電磁波透過減衰量が、2dBを超えている。
【0112】
(3)可視光透過率の測定(評価3)
評価1で用いたミリ波透過性積層体につき、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計U4100を用い、得られたミリ波透過性層の波長400~700nmの可視光に対する可視光透過率(平均値)を測定し、下記基準に準拠して、評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:可視光透過率が、40~70%の範囲内の値である。
○:可視光透過率が、30以上~40未満%、又は、70超~75%以下の値である。
△:可視光透過率が、20以上~30未満%、又は、75超~80%以下の値である。
×:可視光透過率が、20%未満、又は、80%を超える値である。
【0113】
(4)電気絶縁抵抗値の測定(評価4)
評価1で用いたミリ波透過性積層体につき、JISC1302:2018に準拠した超絶縁計SM-8215(日置電機株式会社製)を用いて、電気絶縁抵抗値の測定を行った。
すなわち、測定端子間としてのプローブ間の距離を1cm、測定電圧が、直流電圧1000Vの条件となるように、測定端子をミリ波透過性層の表面に20秒以上、押し当てた。
その状態で、電気絶縁抵抗値を測定し、下記基準に準拠して評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:電気絶縁抵抗値が、1×1013Ω以上の値である。
〇:電気絶縁抵抗値が、1×1012Ω以上の値である。
△:電気絶縁抵抗値が、1×1011Ω以上の値である。
×:電気絶縁抵抗値が、1×1011Ω未満の値である。
【0114】
(5)可視光反射率の測定(評価5)
評価1で用いたミリ波透過性積層体につき、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計U4100を用い、得られたミリ波透過性層の波長400~700nmの可視光に対する可視光反射率(平均値)を測定し、下記基準に準拠して、評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:可視光反射率が、30~60%の範囲内の値である。
〇:可視光反射率が、25%以上~30%未満、又は、60%超~70%以下の値である。
△:可視光反射率が、20%以上~25%未満、又は、70%超~80%以下の値である。
×:可視光反射率が、20%未満、又は、80%を超える値である。
【0115】
(6)表面粗さ(評価6)
評価1で用いたミリ波透過性積層体における表面粗さ(Ra)を、非接触式レーザー表面粗さ計(LASERTEC社製、OPTELICSHYBRIDC3)を用いて、測定し、以下の基準で外観評価を行った。得られた結果を表2に示す。
◎:表面粗さ(Ra)が、0.1~0.15μmの範囲内の値である。
〇:表面粗さ(Ra)が、0.05μm以上~0.1μm未満、又は、0.15μm超~0.4μm以下の値である。
△:表面粗さ(Ra)が、0.01μm以上~0.05μm未満、又は、0.4μm超~1μm以下の範囲内の値である。
×:表面粗さ(Ra)が、0.01μm未満、又は、1μmを超える値である。
【0116】
(7)密着性(評価7)
評価1で用いたミリ波透過性積層体における、ミリ波透過性層の密着性を、JIS5400に準拠して、クロスカット法で測定し、以下の基準で密着性を評価した。
すなわち、ミリ波透過性層を所定大きさ(1mm角の碁盤目、100個)にカットし、それに対して市販の粘着テープ(3M製、メンディングテープ)を用いて剥離試験を実施し、以下の基準で密着性を評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:剥がれた碁盤目数が、0個/100個である。
〇:剥がれた碁盤目数が、1~5個/100個である。
△:剥がれた碁盤目数が、6~10個/100個である。
×:剥がれた碁盤目数が、11個以上/100個以上である。
【0117】
(8)賦形性(評価8)
評価1で用いたミリ波透過性積層体を、立ち上がりとしての曲面部分(R=0.5mm)を有する金型内に収容した。
次いで、射出成形装置により、曲面部分を有する金型内に、溶融状態のポリカーボネート樹脂を注入し、それを室温まで冷却して、所定形状の成形品を得た。
最後に、得られた成形品の外部表面に積層されたミリ波透過性層の外観を観察し、以下の基準で賦形性を評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:ミリ波透過性層において、クラックが、全く観察されない。
〇:ミリ波透過性層において、クラックが、ほとんど観察されない。
△:ミリ波透過性層において、クラックが、少々観察される。
×:ミリ波透過性層において、クラックが、顕著に観察される。
【0118】
[実施例2]
実施例2では、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(C)の架橋剤としての6官能アルコキシアミノシラン化合物(6APSi)の配合量を3重量部とするとともに、アルコール溶剤としてのMMB単独のかわりに、MMB/PGM=80/20(重量比)の混合溶剤に変えた以外は、実施例1と同様に、ミリ波透過性積層体を作成し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0119】
[実施例3]
実施例3では、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(C)の架橋剤としての6官能アルコキシアミノシラン化合物を、3官能アルコキシアミノシラン化合物である3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3APSi)とするとともに、アルコール溶剤としてのMMB単独のかわりに、MMB/PGM=20/80(重量比)の混合溶剤に変えた以外は、実施例1と同様に、ミリ波透過性積層体を作成し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0120】
[実施例4]
実施例4では、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(B)のセルロースアセテートブチレート樹脂10重量部のかわりに、ポリプロピレングリコールエーテル可溶性(評価◎)のアクリル系樹脂B-814(オランダ、DSMN.V.社製、重量平均分子量:4万、酸価:10mg/g)を20重量部とするとともに、架橋剤としてのトリレンジイソシアネート(TDI)を5重量部に変え、更に、スクリーン印刷法に用いるスクリーンにつき、ポリエステルメッシュ:425のかわりに、ポリエステルメッシュ:300(メッシュ厚:57μm、乳剤厚:10μm、開口率:33%)に変えた以外は、実施例1と同様に、ミリ波透過性積層体を作成し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0121】
[実施例5]
実施例5では、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(B)のセルロースアセテートブチレート樹脂10重量部のかわりに、ポリプロピレングリコールエーテル可溶性(評価◎)のウレタンアクリル系樹脂8UA-017(大成ファインケミカル(株)製、重量平均分子量:5万、酸価:10mg/g、ガラス転移点:50℃)を30重量部とするとともに、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を3重量部に変え、更に、スクリーン印刷法(ポリエステルメッシュ:425)のかわりに、バーコート法(No.3)に変えた以外は、実施例1と同様に、ミリ波透過性積層体を作成し、評価した。又、印刷性の評価基準は、実施例1と同様にして、得られた塗膜の外観を目視判断し、バーコート法による印刷性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0122】
[実施例6]
実施例6では、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(B)のSAB10重量部のかわりに、ポロプロピレングリコールエーテル可溶性(評価◎)のセルロースエステル樹脂(イーストマンコダック社製、商品名:CAP-504-0.2、重量平均分子量:1.5万、ガラス転移点:159℃、以下、CAPと称する場合がある。)を15重量部とするとともに、スクリーン印刷法(ポリエステルメッシュ:425)のかわりに、グラビアロール法のグラビアメッシュ:300/インチに変え、グラビア印刷した以外は、実施例1と同様に、ミリ波透過性積層体を作成し、評価した。又、印刷性の評価基準は、実施例1と同様にして、得られた塗膜の外観を目視判断し、グラビアロール法による印刷性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0123】
[実施例7]
実施例7では、表1に示すように、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(A)の金属粒子として、フレーク状インジウムと、平均粒径8μm及び平均厚さ0.03μmを有するアルミニウムフレークとの混合物(重量比:90/10)を用いた以外は、実施例1と同様に、ミリ波透過性積層体を作成し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0124】
[実施例8]
実施例8では、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(A)の金属粒子として、フレーク状インジウムと、平均粒径8μm及び平均厚さ0.03μmを有するアルミニウムフレークと、平均粒径10μm及び平均厚さ0.03μmを有するスズとの混合物(重量比:80/10/10)を用いた以外は、実施例1と同様に、ミリ波透過性積層体を作成し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0125】
[比較例1]
比較例1では、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(A)の金属粒子として、平均粒径8μmのアルミニウム粒子を用い、当該アルミニウム粒子の配合量100重量部当たり、PEGE可溶性樹脂を0.05重量部、グリコールエーテル溶剤(GE)を95重量部とした以外は、実施例1と同様に、得られたミリ波透過性層を有する積層体を作成し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0126】
[比較例2]
比較例2では、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(B)のSABのかわりに、ポリエチレングリコールエーテル等に対する可溶性を有しないアクリル系樹脂(MMA系、重量平均分子量:約100万)を用い、その配合量を10重量部とした以外は、実施例1と同様に、ミリ波透過性積層体を作成し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0127】
[比較例3]
比較例3では、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(C)の架橋剤を配合せず、有機溶剤として、セロソルブ系有機溶剤のエチレングリコールモノエチルエーテル(EGME)を用い、その配合量を、配合成分(A)のフレーク状インジウム粒子100重量部に対して、80重量部とした以外は、実施例1と同様に、ミリ波透過性積層体を作成し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0128】
[比較例4]
比較例4では、表1に示すように、実施例1の液状組成物において、配合成分(D)の架橋剤としての6官能アルコキシアミノシラン化合物であるビス-(3-メトキシシリルプロピル)アミンの配合量を0.01重量部とするとともに、有機溶剤として、セロソルブ系有機溶剤のエチレングリコールモノエチルエーテル(EGME)を用い、その配合量を、配合成分(A)のフレーク状インジウム粒子100重量部に対して、2600重量部とした以外は、実施例1と同様に、ミリ波透過性積層体を作成し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0129】
【0130】
【表2】
評価1:印刷性、評価2:電磁波透過減衰量、評価3:可視光透過率、評価4:絶縁抵抗値、評価5:可視光反射率、評価6:表面粗さ、評価7:密着性、評価8:賦形性
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、配合成分(A)の金属粒子や、配合成分(C)の所定溶剤とともに、配合成分(B)の所定樹脂等を所定割合で含む液状組成物を構成し、それに由来したミリ波透過性層によれば、真空蒸着法やスパッタリング等を用いることなく、スクリーン印刷法等の簡易塗布方法を用いて、効率的かつ安定的に形成できるようになった。
すなわち、ミリ波透過性層として、電磁波透過減衰量が少なく、かつ、絶縁抵抗値も所定値以上に、極めて簡易的かつ、安定的に制御できるようになった。
従って、本発明のミリ波透過性積層体は、所定の装飾表面を有するミリ波レーダーの表面部品等として、最適であることが判明した。
なお、本発明の、配合成分(A)の金属粒子、配合成分(B)の所定樹脂、配合成分(C)の所定溶剤とともに、配合成分(D)の架橋剤等を所定割合で含む液状組成物を、可視光透過率を20~80%としたハーフミラー層を形成するコーティング用液状組成物としても好適に使用することができる。
すなわち、配合成分として、下記(A)~(C)あるいは(A)~(D)等の配合成分を含むコーティング用液状組成物を、スクリーン印刷法等の簡易塗布方法を用いた場合、所定の可視光透過率を有するハーフミラー層を、所定基材上に、効率的かつ安定的に形成できることが確認されている。