(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095896
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/20 20200101AFI20230629BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20230629BHJP
H05B 47/19 20200101ALI20230629BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20230629BHJP
【FI】
H05B45/20
H05B45/10
H05B47/19
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071026
(22)【出願日】2023-04-24
(62)【分割の表示】P 2021537382の分割
【原出願日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2019145471
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019226564
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀崇
(72)【発明者】
【氏名】草野 民男
(72)【発明者】
【氏名】池田 晃平
(57)【要約】
【課題】光の演色性を制御しやすい照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置10は第1発光装置1aと複数の第2発光装置1bと制御部7とを備える。第1発光装置1aは360~430nmの波長領域に第1ピーク波長を有し、第1ピーク波長よりも短波長及び長波長のそれぞれに向かうにつれて連続的に光強度が減少する第1発光スペクトルを有する。複数の第2発光装置のそれぞれは360~430nmの波長領域に第2ピーク波長を有し、第2ピーク波長よりも長波長から750nmの波長領域に第3ピーク波長を有し、第2ピーク波長よりも短波長及び第3ピーク波長よりも長波長にそれぞれ向かうにつれて連続的に光強度が減少する第2発光スペクトルを有する。制御部7は第1発光装置1a及び複数の第2発光装置1bを制御する。複数の第2発光装置1bのそれぞれにおける第3ピーク波長が異なる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発光装置と、
複数の第2発光装置と、
制御部と、を備え、
前記第1発光装置は、360~430nmの波長領域に第1ピーク波長を有するとともに、前記第1ピーク波長よりも短波長および長波長にそれぞれ向かうにつれて、連続的に光強度が減少する第1発光スペクトルを有し、
前記複数の第2発光装置のそれぞれは、360~430nmの波長領域に第2ピーク波長を有するとともに、前記第2ピーク波長よりも長波長から750nmの波長領域に第3ピーク波長を有し、前記第2ピーク波長よりも短波長および前記第3ピーク波長よりも長波長にそれぞれ向かうにつれて、連続的に光強度が減少する第2発光スペクトルを有し、
前記制御部は、前記第1発光装置および前記第2発光装置を制御し、
前記複数の第2発光装置は、それぞれにおける前記第3ピーク波長が異なる、照明装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1発光装置および前記複数の第2発光装置のうち、発光させる発光装置を選択する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第1ピーク波長および前記第2ピーク波長は励起光であるとともに、前記第3ピーク波長は蛍光であり、
前記制御部は、発光させる発光装置として前記第1発光装置を選択するとともに、前記第1発光スペクトルに基づき、前記複数の第2発光装置のいずれを発光させるか制御する、請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1発光装置および前記複数の第2発光装置のうち、それぞれの発光装置の調光率を制御する、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1発光装置および前記複数の第2発光装置のうち、調光率の制御の基準となる発光装置を選択し、前記基準となる発光装置の調光率に基づき、それぞれの発光装置の調光率を制御する、請求項1~4のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1ピーク波長および前記第2ピーク波長は励起光であるとともに、前記第3ピーク波長は蛍光であり、
前記制御部は、前記第1発光装置の第1調光率を設定し、該第1調光率に基づき、前記複数の第2発光装置のそれぞれの調光率を制御する、請求項4または請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の第2発光装置のうち、前記第2ピーク波長よりも長波長から750nmの波長領域において最大の光強度となるピーク波長を有する前記第2発光装置の第2調光率を設定し、該第2調光率に基づき、前記第1発光装置および他の前記複数の第2発光装置のそれぞれの調光率を制御する、照明装置。
【請求項8】
前記複数の第2発光装置のそれぞれの前記第3ピーク波長は、半値幅が長波長に向かうにつれて大きい、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項9】
前記複数の第2発光装置のそれぞれの前記第3ピーク波長は、少なくとも10nm以上離れている、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項10】
前記第1発光装置の調光率と少なくとも1つの前記第2発光装置の調光率とが同じときに、前記第1発光装置の調光率とが同じ調光率で制御された前記第2発光装置の前記第2ピーク波長における光強度は、前記第1ピーク波長における光強度の25%以下である、請求項1~請求項9のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記複数の第2発光装置のうち、前記第2ピーク波長よりも長波長から750nmの波長領域において互いの前記第3ピーク波長の重なりが小さい前記第2発光装置を選択する、請求項1~請求項10のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記複数の第2発光装置のうち、前記第2ピーク波長よりも長波長から750nmの波長領域において互いの前記第3ピーク波長が重なる前記第2発光装置を選択する、請求項1~請求項10のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項13】
前記第1ピーク波長と、少なくとも1つの前記第2ピーク波長とは、同じである、請求項1~請求項12のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項14】
前記複数の第2発光装置は、それぞれの前記第2ピーク波長が同じである、請求項1~請求項13のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項15】
前記複数の第2発光装置は、それぞれの前記第2ピーク波長の半値幅が同じである、請求項1~14のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項16】
前記複数の第2発光装置の少なくとも1つの前記第2発光装置は、前記第3ピーク波長として610nm~730nmの波長領域にピーク波長Aを有し、
前記ピーク波長Aにおける光強度を1とした場合に、前記第2ピーク波長における相対光強度が0.05~0.3であり、440nm~480nmにおける相対光強度が0.1以下であり、480nmから前記ピーク波長Aまでの波長領域における光強度が連続的に増加している前記第2発光スペクトルを有する、請求項1~15のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項17】
発光スペクトルが、360nm~430nmの波長領域に励起ピーク波長および610nm~730nmの波長領域に発光ピーク波長を有するとともに、
前記発光ピーク波長における光強度を1とした場合に、前記励起ピーク波長における相対光強度が0.05~0.3であり、440nm~480nmにおける相対光強度が0.1以下であり、480nmから前記発光ピーク波長までの波長領域における光強度が連続的に増加している、照明装置。
【請求項18】
前記励起ピーク波長を有する光を発光する発光素子と、
前記発光素子が発光する光を、前記発光ピーク波長を有する光に変換する少なくとも1つの蛍光体と、を備える、請求項17に記載の照明装置。
【請求項19】
前記発光スペクトルで特定される光は、色温度が1800Kから2100Kである、請求項17または18に記載の照明装置。
【請求項20】
前記発光スペクトルで特定される光は、平均演色評価数Raが85以上である、請求項17~請求項19のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項21】
前記発光スペクトルの光強度を制御する制御部をさらに備える、請求項17~20のいずれか1つに記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蛍光灯や電球に代わってLED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子を光源とする照明装置が用いられていれる。また、例えば、家電製品や乗用自動車などの塗装面の外観検査用光源としても発光素子を光源とする照明装置が用いられている。
【0003】
半導体発光素子は、放射光の波長帯域が狭く、単一色の光しか放射できない。照明光を白色光としたい場合は、放射光の波長帯域が異なる複数の半導体発光素子を準備し、複数の放射光の混色によって白色光を実現している。または、同一波長の励起光によって波長帯域の異なる蛍光を発光する複数の蛍光体を準備し、半導体発光素子からの放射光と、半導体発光素子からの放射光によって励起されて発光する複数の蛍光の混色によって白色光を実現している。このような混色の手法を用いれば、白色光以外にも目的に応じたスペクトルを有する光源を作製することができる(特開2015-126160号公報参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、照明装置の発光強度および発光スペクトルの制御までは何ら記載も想定もされていなかった。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態に係る照明装置は、第1発光装置と、複数の第2発光装置と、制御部とを備える。第1発光装置は、360~430nmの波長領域に第1ピーク波長を有するとともに、第1ピーク波長よりも短波長および長波長にそれぞれ向かうにつれて、連続的に光強度が減少する第1発光スペクトルを有する。複数の第2発光装置のそれぞれは、360~430nmの波長領域に第2ピーク波長を有するとともに、第2ピーク波長よりも長波長から750nmの波長領域に第3ピーク波長を有し、第2ピーク波長よりも短波長および第3ピーク波長よりも長波長にそれぞれ向かうにつれて、連続的に光強度が減少する第2発光スペクトルをそれぞれ有する。制御部は、第1発光装置および複数の第2発光装置を制御する。複数の第2発光装置は、それぞれにおける第3ピーク波長が異なる。
【0006】
また、本開示の一実施形態に係る照明装置は、発光スペクトルが、360nm~430nmの波長領域に励起ピーク波長および610nm~730nmの波長領域に発光ピーク波長を有する。また、発光スペクトルは、前記発光ピーク波長における光強度を1とした場合に、前記励起ピーク波長における相対光強度が0.05~0.3であり、440nm~480nmにおける相対光強度が0.1以下であり、480nmから前記発光ピーク波長までの波長領域における光強度が連続的に増加している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態に係る発光装置の外観斜視図である。
【
図2】
図1に示す発光装置を仮想線で示す平面で切断したときの断面図である。
【
図4】本開示の実施形態の各発光装置における発光スペクトルを示すグラフである。
【
図5】本開示の実施形態の照明装置における外部放射光のスペクトルを示すグラフである。
【
図6】本開示の実施形態の発光装置および/または照明装置における外部放射光のスペクトルを示すグラフである。
【
図7】本開示の実施形態の発光装置および/または照明装置における外部放射光のスペクトルを示すグラフである。
【
図8】本開示の実施形態の発光装置および/または照明装置における外部放射光のスペクトルを示すグラフである。
【
図9】本開示の実施形態に係る発光装置を備える照明装置の外観斜視図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る照明装置の分解斜視図である。
【
図11】本開示の実施形態に係る照明装置の筐体から透光性基板を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図12】本開示の実施形態に係る照明装置の構成図である。
【
図13】本開示の他の実施形態に係る照明装置の構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本開示の実施形態に係る発光装置および照明装置を、図面を参照しながら説明する。
【0009】
<発光装置および照明装置の構成>
図1は、本開示の実施形態に係る発光装置の外観斜視図である。
図2は、
図1に示す発光装置を仮想線で示す平面で切断したときの断面図である。
図12は、本開示の実施形態に係る照明装置の構成図である。これらの図において、照明装置10は、第1発光装置1aと、複数の第2発光装置1bと、制御部7と、を備えている。また、第1発光装置1aおよび第2発光装置1bは、基板2と、発光素子3と、枠体4と、封止部材5と、を備えている。また、照明装置10は、第1発光装置1aと、複数の第2発光装置1bと、制御部7と、を備えている。第2発光装置1bは、基板2と、発光素子3と、枠体4と、封止部材5と、波長変換部材6と、を備えている。
【0010】
発光素子3は、基板2上に位置している。枠体4は、基板2上に発光素子3を取り囲んで位置している。封止部材5は、枠体4で囲まれた内側の空間内に、枠体4で囲まれる空間の上部の一部を残して充填されている。波長変換部材6は、枠体4で囲まれた内側の空間の上部の一部に、封止部材5の上面に沿って枠体4内に収められている。なお、発光素子3は、例えば、LED(Light Emitting Diode)またはLD(Laser Diode)であって、半導体を用いたpn接合中の電子と正孔が再結合することによって、外部に向かって光を放出する。
【0011】
基板2は、絶縁性の材料を主とした基板であって、絶縁性の材料は、例えば、アルミナまたはムライト等のセラミック材料、あるいはガラスセラミック材料等からなる。または、これらの材料のうち複数の材料を混合した複合系材料から成る。また、基板2は、基板2の熱膨張を調整することが可能な金属酸化物微粒子を分散させた高分子樹脂を用いることができる。
【0012】
少なくとも基板2の上面または基板2の内部には、基板2の内外を電気的に導通する配線導体が設けられている。配線導体は、例えば、タングステン、モリブデン、マンガンまたは銅等の導電材料からなる。基板2がセラミック材料から成る場合は、例えば、タングステン等の粉末に有機溶剤を添加して得た金属ペーストを、基板2となるセラミックグリーンシートに所定パターンで印刷する。この後、複数のセラミックグリーンシートを積層して、焼成することにより得られる。なお、配線導体の表面には、酸化防止のために、例えば、ニッケルまたは金等のめっき層が形成されている。また、基板2の上面には、基板2の上方に効率良く光を反射させるために、配線導体およびめっき層と間隔を空けて、金属反射層が位置していてもよい。金属反射層は、例えば、アルミニウム、銀、金、銅またはプラチナ等である。
【0013】
発光素子3は、基板2の主面上に実装される。発光素子3は、基板2の上面に形成される配線導体の表面に被着するめっき層上に、例えば、ろう材または半田を介して電気的に接続される。発光素子3は、透光性基体と、透光性基体上に形成される光半導体層とを有している。透光性基体は、有機金属気相成長法または分子線エピタキシャル成長法等の化学気相成長法を用いて、光半導体層を成長させることが可能なものであればよい。透光性基体に用いられる材料としては、例えば、サファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、シリコンカーバイド、シリコンまたは二ホウ化ジルコニウム等を用いることができる。なお、透光性基体の厚みは、例えば50μm以上1000μm以下である。
【0014】
光半導体層は、透光性基体上に形成される第1半導体層と、第1半導体層上に形成される発光層と、発光層上に形成される第2半導体層とから構成されている。第1半導体層、発光層および第2半導体層は、例えば、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素等のIII-V族半導体、あるいは、窒化ガリウム、窒化アルミニウムまたは窒化インジウム等のIII族窒化物半導体等を用いることができる。なお、第1半導体層の厚みは、例えば1μm以上5μm以下であって、発光層の厚みは、例えば25nm以上150nm以下であって、第2半導体層の厚みは、例えば50nm以上600nm以下である。また、このように構成された発光素子3は例えば280nm以上450nm以下の波長領域の励起光を発することができる。
【0015】
枠体4は、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化イットリウム等のセラミック材料、あるいは多孔質材料、あるいは酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化イットリウム等の金属酸化物からなる粉末を混合させた樹脂材料から成る。枠体4は、基板2の主面に、例えば樹脂、ろう材または半田等を介して接続されている。枠体4は、発光素子3と間隔を空けて、発光素子3を取り囲むように基板2の主面上に設けられている。また、枠体4は、傾斜する内壁面が、基板2の主面から遠ざかるに従い、外方に向かって広がるように形成されている。そして、枠体4の内壁面が、発光素子3から発せられる励起光の反射面として機能する。なお、平面視して、枠体4の内壁面の形状を円形とすると、発光素子3が放射する光を一様に反射面にて外方に向かって反射させることができる。
【0016】
また、枠体4の傾斜する内壁面は、例えば、焼結材料からなる枠体4の内周面にタングステン、モリブデン、マンガン等から成る金属層と、金属層を被覆するニッケルまたは金等から成るめっき層を形成してもよい。このめっき層は、発光素子3の発する光を反射させる機能を有する。なお、枠体4の内壁面の傾斜角度は、基板2の主面に対して例えば55度以上70度以下の角度に設定されている。
【0017】
基板2および枠体4で囲まれる内側の空間には、光透過性の封止部材5が充填されている。封止部材5は、発光素子3を封止するとともに、発光素子3の内部から発せられる光を外部に光を取り出す。さらに、発光素子3の外部に取り出された光が透過する機能を備えている。封止部材5は、基板2および枠体4で囲まれる内側の空間内に、枠体4で囲まれる空間の一部を残して充填されている。封止部材5は、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の透光性の絶縁樹脂や透光性のガラス材料が用いられる。封止部材5の屈折率は、例えば1.4以上1.6以下に設定されている。
【0018】
波長変換部材6は、基板2および枠体4で囲まれた内側の空間の上部に、封止部材5の上面に沿って位置している。波長変換部材6は、枠体4内に収まるように形成されている。波長変換部材6は、発光素子3の発する光の波長を変換する機能を有している。すなわち、波長変換部材6は、発光素子3から発せられる光が封止部材5を介して内部に入射する。その際に、内部に含有される蛍光体が発光素子3から発せられる光によって励起されて、蛍光体からの蛍光を発する。また、発光素子3からの光の一部を透過させて放射するものである。波長変換部材6は、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の透光性の絶縁樹脂、または透光性のガラス材料からなり、その絶縁樹脂、ガラス材料中に、蛍光体が含有されている。蛍光体は、波長変換部材6中に均一に分散するようにしている。発光素子3および波長変換部材6中に含有される蛍光体としては、発光装置1から発せられる光の発光スペクトルが、
図4に示すような発光スペクトルとなるように選ばれる。
【0019】
図5に示すように、本開示の実施形態の第1発光装置1aでは、第1ピーク波長λ1が360~430nmに存在する発光素子3を用いる。また、第2発光装置1bでは、第2ピーク波長λ2が360~430nmとなる励起光を発する発光素子3を用いる。つまり、第2ピーク波長λ2は、励起光のピーク波長である。さらに第2発光装置1bは、励起光が蛍光体に照射されることにより、第2ピーク波長λ2よりも長波長から750nmの波長領域に第3ピーク波長λ3を有していてもよく、例えば、第3ピーク波長λ3が410~750nmの波長領域に出射される。このとき、複数の第2発光装置1bはそれぞれ少なくとも一部が異なる蛍光体を用いている。青色の蛍光を発する蛍光体と、青緑色の蛍光を発する蛍光体と、緑色の蛍光を発する蛍光体と、赤色の蛍光を発する蛍光体と、近赤外領域の蛍光を発する蛍光体とをさらに用いてもよい。また、これらの蛍光体を混合させたものであってもよい。
【0020】
各蛍光体は例えば、青色を示す蛍光体は、BaMgAl10O17:Eu、(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu,(Sr,Ba)10(PO4)6Cl2:Euであり、青緑色を示す蛍光体は、(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu,Sr4Al14O25:Euである。緑色を示す蛍光体は、SrSi2(O,Cl)2N2:Eu、(Sr,Ba,Mg)2SiO4:Eu2+、ZnS:Cu,Al、Zn2SiO4:Mnである。赤色を示す蛍光体としては、Y2O2S:Eu、Y2O3:Eu、SrCaClAlSiN3:Eu2+、CaAlSiN3:Eu、CaAlSi(ON)3:Euである。近赤外領域を示す蛍光体は、3Ga5O12:Crである。
【0021】
図12~
図13に示すように、本開示の実施形態に係る照明装置10は、上述した第1発光装置1aと、第2発光装置1bと、制御部7と、を備えている。以下、図面を参照しながら説明する。なお、照明装置10において、第1発光装置1aから発光した光の発光スペクトルを第1発光スペクトルとし、第2発光装置1bから発光した光の発光スペクトルを第2発光スペクトルとする。また、制御部7は、第1発光装置1aおよび第2発光装置1bを制御する。制御部7によって制御された第1発光スペクトルおよび第2発光スペクトルを合成した光の発光スペクトル、つまり、照明装置10から放射される光の発光スペクトルを、第3発光スペクトルとする。
【0022】
制御部7は、各発光装置にかかる調光率を制御する。調光率とは、各発光装置に加える電力、つまり定格電流値および/または定格電圧値を基準とした場合の電圧値および/または電流値比率のことをいう。また、PWM制御を用いる構成である場合は、電圧および/または電流のディーティー比のことをいう。その結果、各発光装置が出力する光束を調整することができる。
【0023】
例えば、制御部7は、第1発光装置1aおよび/または第2発光装置1bから発光する発光強度を調整することができる。なお、発光強度(光強度)とは、感光面に入射する光の照度すなわち単位面積当たりの入射光束のことである。各発光装置の発光強度の調整は、最大光強度を1とすると、強度が0から1までの間で任意の値に調整可能である。例えば、0.1毎の調整、0.01毎の調整等で、各発光装置から発光される光の強度の割合を調整することで様々な色の光の発光させることができる。また、第1発光装置1aおよび第2発光装置1bが複数の発光素子を有する場合には、
図13に示すように、発光装置1の回路に対して、どの発光素子に電圧を加えるか、どの程度の電圧または電流を加えるか等を調整することができる。
【0024】
また、照明装置10が、第1発光装置1aと第2ピーク波長λ2を有する第2発光装置1bを有する場合には、
図12に示すように、どの発光装置を発光させるか、どの発光装置の発光強度を大きくするか等の調整も可能である。つまり、照明装置10の第3発光スペクトルは、第1発光装置1aから発光される光のスペクトルである第1発光スペクトルと、第2発光装置1bから発光される光のスペクトルである第2発光スペクトルとを組み合わせたものである。この第1発光装置1aに加わる電圧または電流を調整することにより第1発光スペクトルの強度を調整することができ、第2発光装置1bに加わる電圧または電流を調整することにより第2発光スペクトルの強度を調整することができる。このように制御されて照明装置10から発せられる光の発光スペクトルが第3発光スペクトルである。このとき、どの発光装置を選択するかも制御部7にて調整される。
【0025】
より具体的には、制御部7は、発光させる発光装置として第1発光装置1aを選択するとともに、第1発光スペクトルに基づき、複数の第2発光装置1bのいずれを発光させるか制御することもできる。また、制御部7は、第1発光装置1aおよび複数の第2発光装置1bのうち、調光率の制御の基準となる発光装置を選択し、基準となる発光装置の調光率に基づき、それぞれの発光装置の調光率を制御することもできる。このとき、制御部7は、第1発光装置1aの第1調光率を設定し、第1調光率に基づき、複数の第2発光装置1bのそれぞれの調光率を制御してもよい。また、制御部7は、前記複数の第2発光装置1bのうち、第2ピーク波長λ2よりも長波長から750nmの波長領域において最大の光強度となるピーク波長を有する第2発光装置1bを選択し、この第2発光装置1bの第2調光率を設定する。そして、第2調光率に基づき、第1発光装置1aおよび他の複数の第2発光装置1bのそれぞれの調光率を制御してもよい。
【0026】
また、制御部7は外部から無線等で受信した信号や情報に基づいて上述した第1発光装置1aおよび/または第2発光装置1bへの制御を行なってもよい。なお、制御部7とはCPUなどの演算装置やメモリなどを含むものであってもよい。
【0027】
本開示の実施形態に係る照明装置10は、第1発光装置1aと、複数の第2発光装置1bと、制御部7を有している。第1発光装置1aは、360~430nmの波長領域に第1ピーク波長λ1を有するとともに、第1ピーク波長よりも短波長および長波長にそれぞれ向かうにつれて、360~750nmの範囲において連続的に光強度が減少する第1発光スペクトルを有している。連続的に光強度が減少するとは、波長領域の減少区間において発光スペクトルに極大値を有さないことを指す。なお、発光スペクトルの測定結果において、測定誤差にあたる微小な山や谷はピーク波長を特定するものとはみなさない。
【0028】
複数の第2発光装置1bのそれぞれは、360~430nmの波長領域に第2ピーク波長λ2を有するとともに、第2ピーク波長λ2よりも長波長側で、かつ、750nmまでの波長領域に第3ピーク波長λ3を有し、第2ピーク波長λ2よりも短波長および第3ピーク波長λ3よりも長波長にそれぞれ向かうにつれて、連続的に光強度が減少する第2発光スペクトルをそれぞれ有する。このとき、照明装置10は、第2発光装置1bを複数有している。複数の第2発光装置1bのそれぞれの第3ピーク波長λ3は、少なくとも430nm~750nmの波長領域において、異なる波長であるのがよい。
【0029】
上述したように、制御部7は、第1発光装置1aおよび複数の第2発光装置1bのうち、発光させる発光装置を選択することができる。また、制御部7は、第1発光装置1aおよび複数の第2発光装置1bのうち、それぞれの発光装置の調光率を制御することもできる。つまり、制御部7は、どの発光装置から発光させるか、そしてその発光装置をどの程度の明るさで発光させるかを制御することで、照明装置10の第3発光スペクトルを制御することができる。これにより、ピーク波長が異なるスペクトルを有する発光装置を各々制御することが可能となる。このため、第3発光スペクトルを様々な用途に応じて変化させることができる。
【0030】
また、複数の第2発光装置1bのそれぞれの第3ピーク波長λ3は、異なる波長であり、複数の第2発光装置1bのそれぞれの第3ピーク波長λ3における半値幅は、長波長に向かうにつれて大きくなっていてもよい。太陽光スペクトルなどの可視光を再現する場合には、より長波長領域まで再現させる必要がある。このため、長波長にむかうにつれて半値幅が大きくなることで調光が容易となる。このとき、複数の第2発光装置1bのそれぞれの第3ピーク波長λ3同士は、少なくとも10nm以上離れていてもよい。ピーク波長の異なる発光スペクトルを有する照明装置において、それぞれの発光スペクトルが重なる波長領域が少ない程、広い波長領域を発光する照明とすることができる。
【0031】
また、第1発光装置1aの調光率と少なくとも1つの第2発光装置1bの調光率とが同じときに、この第2発光装置1bに対応する第2ピーク波長λ2における光強度は、第1ピーク波長λ1における光強度の25%以下であってもよい。つまり、第1発光装置1aの調光率と第2発光装置1bの調光率とが同じときには、360~430nmにおける光強度は、第1発光装置1aが最も大きくてよい。このとき、複数ある第2発光装置1bの励起光のピーク波長(第2ピーク波長λ2)が第1ピーク波長λ1と重なる場合、第2ピーク波長λ2の影響を低減させることができる。このため、360~430nmにあたる紫色領域の光を調光しやすくなる。
【0032】
また、第3発光スペクトルは、第1ピーク波長λ1、第2ピーク波長λ2および複数の第3ピーク波長λ3の位置にピーク波長を有していてもよい。照明装置10の発光スペクトルは、第1発光装置1aおよび複数の第2発光装置1bから発光された光の合成光による発光スペクトルであるため、それぞれの発光装置の調光率によって、光強度の大きさ等が変化する。このとき、複数の第2発光装置1bの第3ピーク波長λ3がそれぞれ離れていればいるほど、それぞれのピーク波長の光の重なりは小さく、ピーク位置が独立している。このような構成を満たしているときには、照明装置10として発光された光の第3発光スペクトルは、複数の第2発光装置1bのそれぞれにおける第3ピーク波長λ3と同じ波長にピーク波長を有する。ここで、重なりが小さいとは、対象とする2つの第3ピーク波長λ3が重なっている場合において、重なる境界の波長における光強度が、対象とする第3ピーク波長λ3のうちの高い方での光強度に対して、50%未満であれば、第3発光スペクトルのピークは第2発光装置1bの第3ピーク波長λ3と同じ波長に位置する。制御部7にて、このように複数の第2発光装置1bを選択することで、照明装置10は、各発光装置のピーク波長に第3発光スペクトルのピーク波長を有する光の再現を容易に調整できる。
【0033】
また、反対に、第3発光スペクトルは、第1ピーク波長λ1と第2ピーク波長λ2の他に、ある2つの第3ピーク波長λ3同士の間の波長領域の位置にピーク波長を有していてもよい。これは、複数の第2発光装置1bの第3ピーク波長λ3がそれぞれ近ければ近いほど、それぞれの第3ピーク波長λ3付近の光の重なりは大きくなる。このため、第3発光スペクトルは、最も光の重なりが大きい波長にピークを有する。このとき、第2発光スペクトルが重なっている。ここで、重なっているとは、対象とする2つの第3ピーク波長λ3が重なっている場合において、重なる境界の波長における光強度が、対象とする第3ピーク波長λ3のうち高い方での光強度に対して、50%以上であれば、第3発光スペクトルのピークは、対象とする複数の第2発光装置1bの第3ピーク波長λ3同士の間の波長に位置する。制御部7にて、このように複数の第2発光装置1bを選択することで、照明装置10は、各発光装置のピーク波長以外に第3発光スペクトルのピーク波長を有する光の再現を容易に調整できる。
【0034】
また、第1ピーク波長λ1と第2ピーク波長λ2とは、同じピーク波長であってもよいし、異なっていてもよい。さらに、複数の第2発光装置1bのそれぞれの第2ピーク波長λ2、つまり励起光の波長は、同じピーク波長であってもよいし、異なっていてもよい。なお、同じピーク波長とは、ピーク波長の差異が2nm未満であることをいう。これはピーク波長の設定が同じである発光素子の波長誤差が2nm未満ということである。第1ピーク波長λ1と第2ピーク波長λ2が同じピーク波長であるときには、それぞれのピーク波長が同じであるため、照明装置から出射される光の色むらや色のばらつきを低減することができる。このとき、複数の第2発光装置1bのそれぞれの第2ピーク波長λ2における半値幅は、同じであってもよい。それぞれの第2ピーク波長λ2の半値幅が同じであるときには、励起光の波長領域における色むらを低減することができる。
【0035】
なお、
図4は、照明装置10が、第1発光装置1aと7種類の第2発光装置1bとを有している場合の例であり、調光率が100%の状態のそれぞれの発光スペクトルを示している。例えば、第1発光装置1aは360~430nmの波長領域に第1ピーク波長を有する光を発光している。また、第2発光装置1bは360~430nmに第2ピーク波長を発光する発光素子を有しており、これを励起光として蛍光体に照射し、さらに第3ピーク波長を有する光を発光する。例えば、第2発光装置1bのうち、第2ピーク波長λ2から480nmの波長領域に第3ピーク波長λ3を有しているものを第2発光装置A、440~520nmの波長領域に第3ピーク波長λ3を有しているものを第2発光装置B、480~570nmの波長領域に第3ピーク波長λ3を有しているものを第2発光装置C、520~620nmの波長領域に第3ピーク波長λ3を有しているものを第2発光装置D、550~650nmの波長領域に第3ピーク波長λ3を有しているものを第2発光装置E、580~690nmの波長領域に第3ピーク波長λ3を有しているものを第2発光装置F、620~730nmの波長領域に第3ピーク波長λ3を有しているものを第2発光装置Gとする。
【0036】
図5には、第1発光装置1aの調光率が2%、第2発光装置Aの調光率が10%、第2発光装置Bの調光率が25%、第2発光装置Cの調光率が30%、第2発光装置Dの調光率が20%、第2発光装置Eの調光率が10%、第2発光装置Fの調光率が25%、第2発光装置Gの調光率が20%のとき、日中の太陽光の基準スペクトルであるD50に近いスペクトルとすることができる。また、第1発光装置1aの調光率が2%、第2発光装置Aの調光率が80%、第2発光装置Bの調光率が40%、第2発光装置Cの調光率が20%、第2発光装置Dの調光率が5%、第2発光装置Eの調光率が5%、第2発光装置Fの調光率が0%(消灯)、第2発光装置Gの調光率が0%(消灯)のとき、青色に近いスペクトルとすることができ、水中の太陽光スペクトルに近づけることもできる。
【0037】
このような構成である場合には、複数の第2発光装置1bの調光率を制御することで、様々な色の光を発光させることができる。
【0038】
さらに、本開示の実施形態に係る発光装置1は、各発光装置の調光率を調整することによって、太陽光のスペクトルに近似する、演色性の高い光を放射することができる。即ち、太陽光のスペクトルにおける光強度と、本開示の実施形態に係る照明装置10の第3発光スペクトルにおける光強度との差を小さくすることができ、太陽光のスペクトルに近似した光を発することができる照明装置10を作製することができる。
【0039】
本開示の実施形態の照明装置10は、建物内、家屋内などの屋内で用いられる照明において、例えば、第1発光装置1aおよび複数の第2発光装置1bの組み合わせを1組であってもよいし、複数個配列して構成されてもよい。例えば、居住空間の照明装置であれば、屋内であっても太陽光が照射されたような照明環境を構築することができる。また、塗装された物品、例えば乗用自動車などの外観検査用の照明装置として用いれば、屋内であっても太陽光が照射されたような検査環境を構築することができる。屋内にいても太陽光のスペクトルに近い光が照射されることによって、太陽光の下で見える色に近い見え方にすること(演色性の向上)ができ、色の検査を行なう場合に、より正確に、より使用環境に近い状態で検査することができる。
【0040】
また、本開示の太陽光に近づけるように制御する一環として、朝から夕方までの太陽光を連続的に変化させるような制御を行なってもよい。朝から夕方までの太陽光を連続的に変化させることによって、人間の体内リズムに合わせることができる。この場合には、例えば、朝を再現する場合には、青色領域の光の調光率を高くして、高色温度の光を発光するように調整すればよい。また、夕方を再現する場合には、赤色領域の光の調光率を高くして、低色温度の光を発光するように調整すればよい。このとき、平均演色評価数Raを85以上になるよう、調光率を調整することもできる。
【0041】
また、本開示における照明装置10および発光装置1は、
図6~
図8に示すように、低色温度の光として、和ろうそく(色温度:1800~2100K)の光を再現することができる。具体的には、複数の第2発光装置1bのうちの1つが、610~730nmの波長領域にピーク波長を有しているものであってもよい。このとき、この条件の第2発光装置1bのみを制御部7にて発光させるようにすればよい。なお、このとき第2発光装置1bが有する発光スペクトルは、ピーク波長における相対光強度が0.05~0.3であり、440nm~480nmにおける相対光強度が0.1以下であってもよい。
【0042】
また、複数の第2発光装置1bの発光強度を制御部7で調整することにより、以下の条件の610~730nmの波長領域にピーク波長Aを有する和ろうそくを再現した光を発光してもよい。その条件とは、第2ピーク波長における相対光強度が0.05~0.3であり、440nm~480nmにおける相対光強度が0.1以下で、かつ480nmからピーク波長Aまでの波長領域における光強度は連続的に増加しているものである。このとき、調光率について、第2発光装置B~Eの割合を低く、例えば20%未満とし、第2発光装置Fおよび第2発光装置Gの割合を高く、例えば50%以上とすればよい。
【0043】
<和ろうそく再現の照明装置および発光装置>
上述したように、照明装置10は、複数の発光装置1の中に、和ろうそくを再現する発光装置1が含まれていてもよいし、複数の発光装置1の調光率を制御することによって、和ろうそくの光を再現してもよい。また、
図6~
図8に示した発光スペクトルは、照明装置10ではなく、発光装置1そのものが有しており、発光装置1から発光された光が和ろうそくの光を再現することもできる。
【0044】
発光装置1そのものが和ろうそくの光を再現する場合には、発光装置1は、発光素子3と、波長変換部材6とを有している。また、照明装置10または発光装置1から発光された光の発光スペクトルは、610nm~730nmの波長領域に発光ピーク波長を有し、360nm~430nmの波長領域に励起ピーク波長を有する発光スペクトルで特定される光を発光する。また、発光ピーク波長における光強度を1とした場合に、励起ピーク波長における相対光強度が0.05~0.3であり、440nm~480nmにおける相対光強度が0.1以下である。そして、480nmから発光ピーク波長までの波長領域における光強度は連続的に増加している。
【0045】
波長変換部材6は、複数の蛍光体60を備えていてもよい。蛍光体60は、360nm~430nmの波長領域にピーク波長(励起ピーク波長λe)を有する光を、610nm~730nmの波長領域にピーク波長(発光ピーク波長λL)を有する光に変換する。波長変換部材6は、発光素子3が発光する光を、610nm~730nmの波長領域にピーク波長を有する光に変換することが可能な位置に設けられている。なお、610nm~730nmの波長領域は、可視光領域に含まれる。
【0046】
蛍光体60は、600nm~660nmの波長領域にピーク波長を有する蛍光体を含んでいてもよい。600nm~660nmの波長領域にピーク波長を有する蛍光体としては、例えば、赤色を示す蛍光体である。赤色を示す蛍光体は、例えば、Y2O2S:Eu、Y2O3:Eu、SrCaClAlSiN3:Eu2+、CaAlSiN3:Eu、又はCaAlSi(ON)3:Euなどを用いることができる。赤色を示す蛍光体は、波長変換部材6の内部へと入射した光を、600nm~660nmの波長領域にピーク波長を有する光に変換し、変換した光を放出する。また、波長変換部材6は、上述の赤色を示す蛍光体の他に、例えば、近赤外領域の色を示し、680nm~800nmの波長領域にピーク波長を有する蛍光体を含んでいてもよい。近赤外領域の色を示す蛍光体としては、例えば、3Ga5O12:Crなどが挙げられる。これらの蛍光体のうち1つを選択する、あるいはいくつかを組み合わせることで、610nm~730nmに発光ピーク波長λLを有する蛍光体60とすることができる。
【0047】
本開示では、他の色の蛍光体を含んでいなくてもよい。他の色の蛍光体を含んでいないことによって、610nm~730nmに発光ピーク波長λLを有する赤色を再現することができる。特に、本開示では、他の蛍光体を含んでいないことに加えて、後述する青色の波長領域における相対光強度が小さい(0.1以下)であるため、青色発光のLEDを用いた場合と比較して、610nm~730nmに発光ピーク波長λLを有する赤色の光の再現率を向上させることができる。なお、上述したような他の蛍光体を、発光ピーク波長λLに影響のない程度に、微量だけ含んでいてもよい。赤色以外の蛍光体を微量に含んでいることにより、自然な色に近づけることができる。
【0048】
なお、上述したピーク波長および後述するピーク波長とは、スペクトルが極大値を示すもの、つまりスペクトルの谷から山になり、また谷になるなかの、山となる箇所の波長のことを指す。ただし、スペクトルは、蛍光体を用いて様々な色を出射するとき、微小な山および谷を有する場合がある。このような微小な山および谷は、ピーク波長を特定する際には用いない。すなわち、例えば、谷から谷までの幅が20nm以下における極大値はピークとはみなさないとしてもよい。
【0049】
<和ろうそく再現の照明装置および発光装置の発光スペクトル>
本開示の照明装置10および発光装置1の発光スペクトルは、上述したように360nm~430nmの波長領域に励起ピーク波長λeと、610nm~730nmの波長領域に発光ピーク波長λLとを有する。このとき、発光ピーク波長λLにおける光強度を1とした場合に、励起ピーク波長λeにおける相対光強度が0.05~0.3であり、440nm~480nmにおける相対光強度が0.1以下であるのがよい。また、480nmから発光ピーク波長λLまでの波長領域における光強度は連続的に増加しているのがよい。励起ピーク波長λeは、発光素子3の励起光である。該励起光の相対光強度が0.05~0.3であれば、漏れ光として直接の紫色の光が外部に放射されたとしても発光させたい光の色への影響が少ない。また、発光強度を十分保つことができる。また、440nm~480nmにおける相対光強度が0.1以下であることによって、人間が感じる青色をほとんど含まないため、発光した光の色への影響が少なく、目的とする光の再現率が向上する。そして、480nmから発光ピーク波長λLまでの波長領域における光強度が連続的に増加していることによって、該波長領域にピーク波長を有さないため、発光ピーク波長λL付近の色を好適に再現することができる。
【0050】
ここで、480nmから発光ピーク波長λLまでの波長領域における光強度が連続的に増加しているとは、例えば、480nmから発光ピーク波長λLまでの波長領域において、スペクトルが極大値を有さないことを指す。なお、前述したように、スペクトルは、微小な山および谷を有する場合があるが、このような微小な山および谷は、ここでいう極大値を特定する際には用いなくてよい。
【0051】
本開示の第1~第3実施形態に係る照明装置10および発光装置1の発光スペクトルについて、
図6~
図8を参照して、具体的に説明する。なお、第1~第3実施形態に照明装置10および係る発光装置1は、蛍光体60を構成する材料、分量等がそれぞれ異なる。発光スペクトルは、例えば、分光測光装置などにより分光法を用いて測定される。第1~第3実施形態に係る照明装置10および発光装置1は、ろうそくの光色を模した光色を発光する装置である。そのため、
図6~
図8では、ろうそくの光の実測値と、各実施形態の測定値とを比較して示している。より具体的には、ろうそく(1)として、ろうそくの光が明るく揺らいでいるときの実測値を、ろうそく(2)として、ろうそくの光が静かに安定しているときの実測値を、ろうそく(3)として、ろうそくの光が暗く揺らいでいるときの実測値を示している。また、各実施形態の(1)として、明るく揺らいでいるときの光を再現したもの、(2)として、静かに安定しているときの光を再現したもの、(3)として、暗く揺らいでいるときの光を再現したものを示している。以下、各実施形態における発光ピーク波長λLは、それぞれ第1実施形態では、発光ピーク波長λL1、第2実施形態では、発光ピーク波長λL2、第3実施形態では、発光ピーク波長λL3とする。
【0052】
(第1実施形態)
図6に示すように、第1実施形態の発光スペクトルは、610nm~650nmの波長領域に発光ピーク波長λL1を有する。なお、
図6では630nm付近に発光ピーク波長λL1が位置している。発光ピーク波長λL1は、蛍光体60が放射する光の波長に対応する。610nm~650nmの波長領域に発光ピーク波長λL1が位置する場合には、蛍光体60は、上述した赤色の蛍光体60を主に含んでいる。本実施形態での第2ピーク波長λ2での相対光強度は、約0.26であり、また、440nm~480nmにおける相対光強度が0.1以下である。このことによって、人間が感じる青色をほとんど含まないため、発光した光の色への影響が少なく、目的とする光の再現率が向上する。そして、480nmから発光ピーク波長λL1(630nm付近)までの波長領域における光強度は連続的に増加していることによって、この間にピーク波長を有さない。このため、発光ピーク波長λL1付近、つまり610nm~650nmの色を再現することができる。第1実施形態に係る照明装置10および発光装置1は、他の実施形態と比較してより赤色がはっきりとした明るい光を実現することができる。
【0053】
(第2実施形態)
図7に示すように、第2実施形態の発光スペクトルは、620nm~670nmの波長領域に発光ピーク波長λL2を有する。なお、
図7では645nm付近に発光ピーク波長λL2が位置している。発光ピーク波長λL2は、蛍光体60が放射する光の波長に対応する。620nm~670nmの波長領域に発光ピーク波長λL2が位置する場合には、蛍光体60は、上述した赤色の蛍光体60を主に含んでいる。本実施形態での第2ピーク波長λ2での相対光強度は、約0.25であり、また、440nm~480nmにおける相対光強度が0.09以下である。このことによって、人間が感じる青色をほとんど含まないため、発光した光の色への影響が少なく、目的とする光の再現率が向上する。そして、480nmから発光ピーク波長λL2(645nm付近)までの波長領域における光強度は連続的に増加していることによって、この間にピーク波長を有さない。このため、発光ピーク波長λL2付近、つまり620nm~670nmの色を再現することができる。特に、第2実施形態に係る照明装置10および発光装置1は、明るさとろうそくの光に近い色温度とを備えた、バランスのよいものにするができる。
【0054】
(第3実施形態)
図8に示すように、第3実施形態の発光スペクトルは、690nm~730nmの波長領域に発光ピーク波長λL3を有する。なお、
図8では715nm付近に発光ピーク波長λL3が位置している。発光ピーク波長λL3は、蛍光体60が放射する光の波長に対応する。690nm~730nmの波長領域に発光ピーク波長λL3が位置する場合には、蛍光体60は、上述した近赤外線領域の色の蛍光体60を主に含んでいる。本実施形態での第2ピーク波長λ2での相対光強度は、約0.06であり、また、440nm~480nmにおける相対光強度が0.08以下である。このことによって、人間が感じる青色をほとんど含まないため、発光した光の色への影響が少なく、目的とする光の再現率が向上する。そして、480nmから発光ピーク波長λL3(715nm付近)までの波長領域における光強度は連続的に増加していることによって、この間にピーク波長を有さない。このため、発光ピーク波長λL3付近、つまり690nm~730nmの色を再現することができる。第3実施形態に係る照明装置10および照明装置10および発光装置1は、
図8に示すようにろうそくの光の実測値に沿った光、つまり再現率の高い光を実現することができる。
【0055】
以上より、本開示の照明装置10および発光装置1が発光する光の発光スペクトルは、上述したような構成であることによって、人間が感じる青色の光をほとんど含まないため、青色の光の発光した光の色への影響が少ない。また、目的とする光の色(赤色)の再現率を向上させることができる。特に、色温度2000Kのろうそくの光の再現を目的とする場合には、第2実施形態の発光装置1が、明るさと色温度の再現率等のバランスからよりろうそくの光に近いものを再現することができる。
【0056】
<照明装置および発光装置の演色性>
本開示に係る照明装置10および発光装置1の演色性について説明する。
【0057】
「演色性」とは、光源の品質を評価する指標の1つであり、自然光を基準として、色の見え方を演色評価数により数値化するものである。演色評価数は、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R10、特殊演色評価数R11、特殊演色評価数R12、特殊演色評価数R13、特殊演色評価数R14、特殊演色評価数R15、などで表すことができる。例えば、平均演色評価数Ra=100の光源は、太陽と白熱電球である。
【0058】
本開示に係る照明装置10および発光装置1は、平均演色評価数Raが85以上である演色性に優れた発光装置1を実現できる。例えば、第1実施形態の照明装置10および発光装置1は、平均演色評価数Raが88.0であり、第2実施形態の照明装置10および発光装置1は、平均演色評価数Raが88.1であり、第3実施形態の照明装置10および発光装置1は、平均演色評価数Raが88.4である。
【0059】
<照明装置および発光装置の色温度>
色温度は、光源が発する光の色を数値化するものであり、K(ケルビン)という単位で表される。色温度が低いとは、光源が発する光の色が、赤みがかった光であることを意味する。色温度が高いとは、光源が発する光の色が、青みがかった光であることを意味する。例えば、白熱電球が発する光の色温度は、約2800Kである。例えば、昼白色の光の色温度は、約4200Kである。
【0060】
第1実施形態に係る照明装置10および発光装置1の発光スペクトルで特定される光は、2083Kの色温度を有する。第2実施形態に係る照明装置10および発光装置1の発光スペクトルで特定される光は、1964Kの色温度を有する。第3実施形態に係る照明装置10および発光装置1の発光スペクトルで特定される光は、1825Kの色温度を有する。
【0061】
第1~第3実施形態に係る照明装置10および発光装置1の発光スペクトルは、測定バラツキを含めると、1800K~2100Kの2000K程度を示しており、温かみのある和ろうそくのような赤色を再現することができる。
【0062】
また、和ろうそくの光を再現する発光装置1を少なくとも1つ備えた照明装置10については、上述した構成と同様に発光装置1の光の強度(調光率)を調節する制御部7を備えていてもよい。制御部7は、発光装置1に流れる電流値を制御することで、発光装置1から発光される光の強度を調整することができる。また、制御部7は、調光率を時間的に変化させたり、調光率をランダムに変化させたりすることで、発光装置1から発光される光が揺らいでいるように調整することができる。なお、制御部7は、配線基板12に一緒に取り付けられていてもよいし、照明装置10に受信部を備えておき、外部から無線通信で配線基板12等の電流を制御する部分に指令を出すものであってもよい。
【0063】
このように照明装置10が、調光を制御することができる制御部7を有することによって、同じ色温度の光であっても強弱(明暗)をつけた光を再現することができる。
【0064】
<照明装置の使用例>
本開示の照明装置10は、ろうそく(和ろうそく)の光を再現することができる。例えば、照明装置10は、寺院の柱や日本絵画、壁面等を照らす照明として使用され、ろうそくの光のもとで見た色を体感することができる。また、その光の強度を調節することで、ろうそくの揺らぎのような変化を再現することができる。
【0065】
なお、照明装置10は、建物内、家屋内などの屋内で使用されるのみならず、屋外で使用されてもよい。
【0066】
<照明装置の構成>
図9~
図11に示すように、照明装置10は、上方に開口している長尺の筐体11と、筐体11内に長手方向に沿ってライン状に複数個配列された発光装置1と、複数の発光装置1が実装される長尺の配線基板12と、筐体11によって支持され、筐体11の開口を閉塞する長尺の透光性基板13とを備えている。
【0067】
筐体11は、透光性基板13を保持する機能と、発光装置1の発する熱を外部に放散させる機能とを有している。筐体11は、例えば、アルミニウム、銅またはステンレス等の金属、プラスチックまたは樹脂等から構成される。筐体11は、長手方向に延びる底部21a、および底部21aの幅方向の両端部から立設している。さらに、長手方向に延びる一対の支持部21bを有し、上方および長手方向の両側で開口している長尺の本体部21と、本体部21における長手方向一方側および他方側の開口をそれぞれ閉塞する2つの蓋部22とから成っている。各支持部21bの筐体11の内側における上部には、長手方向に沿って透光性基板13を保持するための凹所が互いに対向するように形成された保持部が設けられている。筐体11は、長手方向の長さが、例えば、100mm以上2000mm以下に設定されている。
【0068】
配線基板12は、筐体11内の底面に固定される。配線基板12は、例えば、リジッド基板、フレキシブル基板またはリジッドフレキシブル基板等のプリント基板が用いられる。配線基板12の配線パターンと発光装置1における基板2の配線パターンとが、半田または導電性接着剤を介して電気的に接続される。そして、配線基板12からの信号が基板2を介して発光素子3に伝わり、発光素子3が発光する。なお、配線基板12には、外部に設けられた電源から配線を介して電力が供給される。
【0069】
透光性基板13は、発光装置1から発せられる光が透過する材料からなり、例えば、アクリル樹脂またはガラス等の光透過性材料から構成される。透光性基板13は、矩形状の板体であって、長手方向の長さが、例えば、98mm以上1998mm以下に設定されている。透光性基板13は、本体部21における長手方向一方側または他方側の開口から、上述の各支持部21bに形成されている凹所内に挿し込む。その後、長手方向に沿ってスライドさせることにより、複数の発光装置1から離れた位置で、一対の支持部21bによって支持される。そして、本体部21における長手方向一方側および他方側の開口を蓋部22で閉塞することにより、照明装置10は構成される。
【0070】
なお、上記の照明装置10は、複数の発光装置1を直線状に配列した線発光の照明装置であるが、これに限らず複数の発光装置1をマトリクス状や千鳥格子状に配列した面発光の照明装置であってもよい。
【0071】
本開示の実施形態における照明装置10の第2発光装置1bのそれぞれは、1つの波長変換部材6中に含まれる蛍光体として、上記のように、青色の蛍光を放射する蛍光体、青緑色の蛍光を放射する蛍光体、緑色の蛍光を放射する蛍光体、赤色の蛍光を放射する蛍光体および近赤外領域の蛍光を放射する蛍光体からなる5種類の蛍光体のいずれか、あるいはその中の複数を含む構成としたが、これに限らず、2種類の波長変換部材を備えるようにしてもよい。2種類の波長変換部材を備える場合には、第1の波長変換部材とし、第2の波長変換部材とに異なる蛍光体を分散あるいは、異なる組合せで蛍光体を分散させればよい。そして、1つの発光装置にこれら2つの波長変換部材を設け、それぞれの波長変換部材を通過して出射される光を混合するようにしてもよい。このようにすることで、放射される光の演色性をコントロールしやすくできる。
【0072】
なお、本開示は上述の実施形態の例に限定されるものではなく、数値などの種々の変形は可能である。本実施形態における特徴部の種々の組み合わせは上述の実施形態の例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0073】
1 発光装置
1a 第1発光装置
1b 第2発光装置
10 照明装置
11 筐体
12 配線基板
13 透光性基板
2 基板
21 本体部
21a 底部
21b 支持部
22 蓋部
3 発光素子
4 枠体
5 封止部材
6 波長変換部材
60 蛍光体
7 制御部
λ1 第1ピーク波長
λ2 第2ピーク波長
λ3 第3ピーク波長
λe 励起ピーク波長
λL 発光ピーク波長