(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000959
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】階段昇降作業装置
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20221222BHJP
B62D 61/12 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B25J5/00 C
B62D61/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102084
(22)【出願日】2021-06-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】721001731
【氏名又は名称】志村 裕司
(72)【発明者】
【氏名】志村 裕司
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707CS08
3C707KS36
3C707KX02
3C707WA13
3C707WA16
3C707WA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】屈伸式のアームを採用することで軽量かつ簡略な機構を実現し、昇降の動作を最適化することで動作工程数が少なく迅速に階段を昇降でき、さらに操舵装置と駆動装置を備えることで階段平面での作業が可能となる、階段昇降作業装置を提供する。
【解決手段】本体下面にある複数の車輪と、本体の前面と後面にある屈伸する2本のアームと、アームの先端にある複数の車輪から構成され、本体部の車輪で水平方向に移動し、2本のアームを伸ばして車体部を上方に持ち上げ、アーム部車輪を駆動させ水平方向に移動し、移動終了後アームを曲げて本体部を降ろし、本体部車輪を水平面に接地させる。この動作を繰り返すことで、階段を昇ることが可能となり、この動作を応用することで階段を降りることも可能になる。また必要に応じ左方向への移動、または右方向への移動を行い、階段平面上での作業をさせることが可能となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部下面の前後に配置される複数の車輪、車輪駆動機構、車輪操舵機構と、
本体部の前面と後面に取り付けられ、屈伸することで垂直方向への伸縮が可能になる2本のアーム部と、
アーム部の先端に取り付けられ、水平方向への移動が可能となる複数の車輪、車輪駆動機構と、
を備えて構成されることを特徴とする階段昇降装置。
【請求項2】
階段の上昇制御時には、(1)本体部に取り付けた車輪で水平方向に移動し、上階段の垂直面の手前で停止。(2)2本のアーム部を伸ばして車体部を上方に持ち上げる。(3)アーム部車輪を駆動させ水平方向に移動する。(4)本体部が上階段に移動した所で、アーム部を曲げて本体部を降ろし、本体部車輪を水平面に接地させる、という制御を繰り返し行い、
階段の下降制御時には、(1)本体部車輪で水平面を移動し、車輪が階段端部に来た時に停止させる、(2)次にアーム部を伸ばして本体部を上方に持ち上げ車輪を浮かす、(3)次にアーム部の車輪を駆動させ水平方向に移動する。(4)本体部が下階段に移動した所で、アーム部を曲げて本体部を降ろし、本体部車輪を水平面に接地させる。という制御を繰り返し行うことを特徴とする階段昇降装置。
【請求項3】
階段の上昇と左移動または右移動制御時には、(1)本体部に取り付けた車輪で水平方向に移動し、上階段の垂直面の手前で停止。(2)複数のアーム部を伸ばして車体部を上方に持ち上げる。(3)アーム部車輪を駆動させ水平方向に移動する。(4)本体部が下階段に移動した所で、アーム部を曲げて本体部を降ろし、本体部車輪を水平面に接地させる。(5)左移動の際は、本体部車輪を左に90°旋回して階段の左に移動する。また右移動の際は、本体部車輪を右に90°旋回して階段の右に移動する。という制御を必要に応じて必要な回数行い、
階段の下降と左移動または右移動制御時には、(1)本体部車輪で水平面を移動し、車輪が階段端部に来た時に停止させる、(2)次にアーム部を伸ばして本体部を上方に持ち上げ車輪を浮かす、(3)次にアーム部の車輪を駆動させ水平方向に移動する。(4)本体部が上階段に移動した所で、アーム部を曲げて本体部を降ろし、本体部車輪を水平面に接地させる。(5)左移動の際は、本体部車輪を左に90°旋回して階段の左に移動する。また右移動の際は、本体部車輪を右に90°旋回して階段の右に移動する。という制御を必要に応じて必要な回数行うことを特徴とする階段昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車輪とアーム部の屈伸によって自立的に階段を昇降し、また階段平面上での作業を可能とする階段昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の階段昇降装置には、特開平10-236350に掲載された脚伸縮方式の機構によって自立的に階段を昇降する階段昇降装置や、特開2006-341709に掲載された車輪駆動機構と転動駆動機構を利用した階段昇降装置など、様々な装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-236350号公報
【特許文献2】特開2006-341709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平10-236350に掲載されたものは、小型の機械ではあるものの、脚の本数が6本と多く、階段を登る工程も10工程必要であるため、重量の重さと制御の複雑さが考えられる。特開2006-341709に掲載されたものは、車輪の直径が大きいため装置自体が比較的大きく、階段を登る工程も10工程必要であるため、重量の重さと制御の複雑さが考えられる。
【0005】
そこで本発明は、階段の昇降を円滑に行うため、アームの本数を最小限にし、軽量で簡略な機構を実現し、昇降の動作を最適化することで、迅速に階段を昇降できる装置とし、また操舵と駆動が可能な車輪により、左または右方向への移動が可能な、階段昇降装置を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、2本のアームで階段を昇降させることができる分、従来のように6本の脚で昇降させる方式に比べて、装置構成を小型化でき、使用部品の削減、軽量化を図ることができる。
【0007】
請求項2の発明によれば、本体下部の車輪と2本のアームとアーム先端の車輪を連携させることで、4つの工程で階段の一段を登ることができるため、従来のように10の工程で階段の一段を登る方式に比べて、昇降動作が速くでき、時間の削減に効果が大きいと考えられる。
【0008】
請求項3の発明によれば、階段を登ることあるいは降りることに加えて、階段の平面部分を左に移動または右に移動することが可能となるため、従来ではできなかった階段上での作業をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態にかかる階段昇降装置の平面図。
【
図2】本発明の実施形態にかかる階段昇降装置の正面図。
【
図3】本発明の実施形態にかかる階段昇降装置の左側面図。
【
図4】本発明の実施形態にかかる階段昇降装置が、階段を昇るときの動作を示す概念図。
【
図5】本発明の実施形態にかかる階段昇降装置が、階段を降りるときの動作を示す概念図。
【
図6】本発明の実施形態にかかる階段昇降装置が、階段を昇った後に左または右に移動する時の動作を示す概念図。
【
図7】本発明の実施形態にかかる階段昇降装置が、階段を降りた後に左または右に移動する時の動作を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は階段昇降装置の平面図で、
図2は階段昇降装置の正面図、
図3は階段昇降装置の左側面図である。
図1、
図2、
図3において、本階段昇降装置は、本体1と、床平面や踊り場での走行時や階段平面部を直進移動、左右移動するための走行手段である4個の走行車輪2a , 2b , 2c , 2d と、本体の前面と後面に取り付けられ屈曲させることにより垂直方向に伸縮可能なアーム部としての2本のアーム3a , 3bと、アーム部の先端に取り付けられ、本体を持ち上げた時の走行手段である4個の走行車輪4a , 4b , 4c , 4d と、走行動作や昇降動作の際に終了点を発見するためのセンサ 5a , 5b , 5c , 5d , 5e と、から構成される。
【実施例0011】
図4は、階段1段目から階段2段目へ昇る動作を(A) , (B) , (C) , (D) の4工程で表した概念図であり、ここではその概略を説明する。
図4(A) 階段昇降装置の本体1下部に取り付けた車輪2a , 2b , 2c , 2dを駆動し、水平方向に移動し、階段2段目の垂直面S2vをセンサ5aで検出し、適切な位置で車輪を停止させる。
図4(B) 次に本体前面と後面に取り付けた2本のアーム3a , 3b を伸ばして、車体1を上方に持ち上げ、本体1下部の車輪2a , 2b , 2c , 2dが階段2段目の水平面S2hより高くなるようにする。
【0012】
図4(C) 次にこの高さを維持したままアーム部車輪4a , 4b , 4c , 4dを駆動させ、水平方向に移動し、本体1下部の全ての車輪2a , 2b , 2c , 2dが階段2段目の水平面S2h上に来たことを示す階段2段目端部をセンサ5cで検出し、適切な位置で車輪を停止させる。このときアーム3b に接触しないように制御する。
図4(D) 最後にアーム3a , 3bを曲げて本体1を下方に降ろし、本体下部車輪2a , 2b , 2c , 2dを階段2段目の水平面S2hに接地させる。このようにして階段を一段昇る動作が終了し、上記一連の動作を繰り返すことによって、本階段昇降装置が直線的に複数の階段を昇ることが可能になる。
図5は、階段2段目から階段1段目へ降りる動作を(A) , (B) , (C) , (D) の4工程で表した概念図であり、ここではその概略を説明する。
図5(A) 階段昇降装置の本体1下部に取り付けた車輪2a , 2b , 2c , 2dを駆動し、水平方向に移動し、階段2段目の端部をセンサ5cで検出し、適切な位置で車輪を停止させる。
図5(B) 次に本体側面に取り付けた複数のアーム3a , 3bを伸ばして、車体1を上方に持ち上げ、本体1下部の車輪2a , 2b , 2c , 2dが階段2段目の水平面S2hより浮くようにする。
図5(C) 次にこの高さを維持したままアーム部車輪4a , 4b , 4c , 4dを駆動させ、水平方向に移動し、本体1下部の全ての車輪2a , 2b , 2c , 2dが階段1段目の水平面S1h上に来たことを示す階段2段目端部をセンサ5bで検出し、適切な位置で車輪を停止させる。このときアーム部車輪 4bの脱輪に注意する。
図5(D) 最後にアーム3a , 3bを曲げて本体1を下方に降ろし、本体下部車輪2a , 2b , 2c , 2dを階段1段目の水平面S1hに接地させる。このようにして階段を一段降りる動作が終了し、上記一連の動作を繰り返すことによって、本階段昇降装置が直線的に複数の階段を降りることが可能になる。