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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009596
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 37/00 20060101AFI20230113BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20230113BHJP
   B63H 23/32 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
F16C37/00 A
F16C17/02 Z
B63H23/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113009
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】岡本 倫知
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 健一
【テーマコード(参考)】
3J011
3J117
【Fターム(参考)】
3J011AA09
3J011BA02
3J011KA02
3J117EA10
3J117FA10
3J117GA10
(57)【要約】
【課題】簡素な構造で過剰な温度上昇を抑制できる軸受装置を提供する。
【解決手段】回転軸3が挿通されるハウジング2と、ハウジング2と回転軸3との間に配置される軸受部材4と、を備える軸受装置1であって、ハウジング2には、軸受部材4と回転軸3との隙間S1に供給される潤滑用流体Fが収容される内部空間Sが設けられ、ハウジング3の外面には、内部空間S1に発生する熱を放熱する放熱体6が配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が挿通されるハウジングと、
前記ハウジングと前記回転軸との間に配置される軸受部材と、を備える軸受装置であって、
前記ハウジングには、前記軸受部材と前記回転軸との隙間に供給される潤滑用流体が収容される内部空間が設けられ、
前記ハウジングの外面には、前記内部空間に発生する熱を放熱する放熱体が配置されている軸受装置。
【請求項2】
前記放熱体は、外部空間に露出する放熱部と、前記内部空間に露出する受熱部と、を備えている請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記受熱部は前記内部空間まで延びている請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記受熱部は前記内部空間の下部に設けられる液溜り部に配置されている請求項2または3に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記受熱部はフィンである請求項3または4に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記フィンは軸方向に沿って延びている請求項5に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記放熱部は軸方向に沿って延びている請求項2ないし6のいずれかに記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の回転軸を回転可能に支持する軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の推進装置等の回転機械を構成する回転軸の周りには、回転軸を回転可能に支持する軸受装置が設けられている。この軸受装置としては、回転軸が遊挿される筒状のハウジングと、ハウジングと回転軸との間に配置される軸受部材と、を備え、軸受部材と回転軸との間に潤滑油を供給して回転軸を円滑に回転させる軸受が広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される軸受装置は、ケースと、ケースに挿通される回転軸と、ケースの内周面と回転軸の外周面との間に配置される軸受部材と、を備えた中間軸受である。ケースと軸受部材との間には、外部から潤滑油が供給される環状の内部空間が形成されており、内部空間は回転軸と軸受部材との隙間に連通している。回転軸と軸受部材との隙間には、潤滑油が供給されることで油膜が形成される。そのため、回転軸と軸受部材とは円滑に相対回転可能になっている。
【0004】
上記のような軸受装置にあっては、内部空間や潤滑油の温度が過剰に高くなると、潤滑油の粘度が低くなり、回転軸と軸受部材との間の油膜形成が不十分となり、異常摩耗や焼付きの原因になる虞があった。そこで、ケースの外側に真水や海水などの冷却媒体を循環させることで、ケースや潤滑油の冷却を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願平2-121737号(実開平4-78330)のマイクロフィルム(第5頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような軸受装置にあっては、冷却媒体によりケースや潤滑油の冷却を行うことで、回転軸と軸受部材との間に油膜を確実に形成し、回転軸と軸受部材との潤滑性を確保できるようになっている。しかしながら、ケースの外側に冷却媒体を循環させるための流路を構成する必要があった。そのため、軸受装置の構造が大型になり、組立作業も煩雑になるといった問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、簡素な構造で過剰な温度上昇を抑制できる軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の軸受装置は、
回転軸が挿通されるハウジングと、
前記ハウジングと前記回転軸との間に配置される軸受部材と、を備える軸受装置であって、
前記ハウジングには、前記軸受部材と前記回転軸との隙間に供給される潤滑用流体が収容される内部空間が設けられ、
前記ハウジングの外面には、前記内部空間に発生する熱を放熱する放熱体が配置されている。
これによれば、内部空間および潤滑用流体は放熱体の放熱作用により冷却される。そのため、内部空間および潤滑用流体の温度は簡素な構造で過剰な上昇が抑制される。
【0009】
前記放熱体は、外部空間に露出する放熱部と、前記内部空間に露出する受熱部と、を備えていてもよい。
これによれば、放熱体の受熱部が内部空間に露出するため、内部空間および潤滑用流体の熱を効率よく受熱し、外部空間に効率よく放熱できる。
【0010】
前記受熱部は前記内部空間まで延びていてもよい。
これによれば、放熱体の受熱部が内部空間まで延びているため、内部空間および潤滑用流体の熱をさらに効率よく受熱できる。
【0011】
前記受熱部は前記内部空間の下部に設けられる液溜り部に配置されていてもよい。
これによれば、受熱部は液溜り部に溜まる潤滑用流体の熱を確実に放熱することができる。
【0012】
前記受熱部はフィンであってもよい。
これによれば、受熱部は受熱面積が大きいため、受熱効率が高い。
【0013】
前記フィンは軸方向に沿って延びていてもよい。
これによれば、軸方向に沿って流れる潤滑用流体とフィンとは効率よく接触するため、受熱効率が高い。
【0014】
前記放熱部は軸方向に沿って延びていてもよい。
これによれば、軸方向に沿って流れる外部空間の空気と放熱部とは効率よく接触するため、放熱効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1における軸受装置を示す正面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図2のB-B断面図である。
図4】ハウジングの底面を下方から見た分解斜視図である。
図5】本発明の実施例2における軸受装置を示す正面図である。
図6図5の縦断面図である。
図7】実施例2における軸受装置の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る軸受装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0017】
実施例1に係る軸受装置につき、図1図4を参照して説明する。以下、図1の紙面手前側、図2の紙面左側を軸受装置の正面側(前方側)として説明する。
【0018】
図1及び図2に示されるように、軸受装置1は、船舶の推進装置等の回転機械を構成する回転軸3を支持するものである。具体的には、回転軸3は水平方向を向くように設置されている。回転軸3の機外側の端部には、推進用のプロペラが取付けられており、回転軸3の機内側の端部には、回転軸3に回転駆動する駆動源が配設されている。
【0019】
本実施例の軸受装置1は、プロペラと駆動源との間で回転軸3を支持する中間軸受である。この軸受装置1は、そのハウジング2に潤滑用流体としての潤滑油Fが封入された自己潤滑方式の軸受装置である。
【0020】
また、前記プロペラの近傍には、回転軸3を支持する船尾管軸受が配設されている(図示略)。尚、回転機械は、自動車や一般産業機械等の回転機械であってもよい。
【0021】
軸受装置1は、ハウジング2と、軸受部材4と、流体供給装置5と、放熱体6と、から主に構成されている。
【0022】
先ず、ハウジング2の構造について説明する。ハウジング2は、筒状部2Aと脚部2Bとを有している。筒状部2Aには、回転軸3が挿通されている。この筒状部2Aは前方に小径部2Aa、後方に大径部2Abが設けられている。脚部2Bは、筒状部2Aを支持している。
【0023】
ハウジング2は、下部ケース21と、上部ケース22と、から主に構成されている。
【0024】
下部ケース21は、正面視上向き略C字状を成す半筒部位21aを備えている。半筒部位21aは、筒状部2Aの下半分を構成している。半筒部位21aの周方向両端部には、下部フランジ部21cが設けられている。
【0025】
また、半筒部位21aの周方向中央部には、下方に延びる脚部2Bが設けられている。脚部2Bの下端部21bは、回転機械が設置される船体の床面にボルト7により固定されている。この脚部2Bの底部には、開口部202が左右に2つ並列して形成されている(図4参照)。開口部202は、後述する液溜り部201と外部空間とを連通している。
【0026】
上部ケース22は、正面視下向き略C字状に設けられている。上部ケース22は、筒状部2Aの上半分を構成している。上部ケース22の周方向両端部には、上部フランジ部22aが設けられている。
【0027】
下部ケース21及び上部ケース22は、図示しないガスケットを介して下部フランジ部21cと上部フランジ部22aとがボルト・ナット8で固定されることで上下に連結され、ハウジング2を構成している。
【0028】
このように構成されたハウジング2は、特に図2に示されるように、前方から順に、第1内周面2a、第2内周面2b、第3内周面2c、第4内周面2d、第5内周面2e、第6内周面2f、第7内周面2gを有している。第4内周面2dには筒状の軸受部材4が内嵌・固定されている。
【0029】
第1内周面2aは、環状をなし、回転軸3よりも大径をなしている。
【0030】
第2内周面2bは、環状をなし、第1内周面2aよりも小径であり、回転軸3よりも僅かに大径である。第2内周面2bと回転軸3の外周面とは僅かに離間した状態となっている。
【0031】
第1内周面2aと第2内周面2bとは、環状の連結面2hにより連結されている。
【0032】
第3内周面2cは、上部が半環状をなし、第1内周面2aよりも大径である。第3内周面2cと第2内周面2bとは、環状の連結面2jにより連結されている。
【0033】
第4内周面2dは、環状をなし、第1内周面2aよりも小径であり、第2内周面2bよりも大径である。第4内周面2dと第3内周面2cとは、環状の連結面2kにより連結されている。この第4内周面2dの軸方向中央部には、内径方向に開口する凹溝200が環状に形成されている。
【0034】
第5内周面2eは、左右部が円弧状を成し、第3内周面2cよりも大径である。第5内周面2eと第4内周面2dとは、環状の連結面2mにより連結されている。
【0035】
第6内周面2fは、環状をなし、第2内周面2bと同径である。第6内周面2fと回転軸3の外周面とは僅かに離間した状態となっている。また、第6内周面2fと第5内周面2eとは、環状の連結面2nにより連結されている。
【0036】
第7内周面2gは、環状をなし、第1内周面2aと同径である。第7内周面2gと第6内周面2fとは、環状の連結面2pにより連結されている。
【0037】
ハウジング2の前端部には、第1内周面2aと連結面2hにより、前方及び内径方向に開放する第1環状溝23が形成されている。
【0038】
軸受部材4の前方には、連結面2j、第3内周面2c、連結面2k、および軸受部材4の前面により区画された第2環状溝24が形成されている。第2環状溝24は内径方向に開口している。
【0039】
軸受部材4の後方には、軸受部材4の後面、連結面2m、第5内周面2e、連結面2nにより区画された第3環状溝25が形成されている。第3環状溝25は内径方向に開口している。
【0040】
ハウジング2の後端部には、第7内周面2gと連結面2pにより、後方及び内径方向に開放する第4環状溝26が形成されている。
【0041】
前述した第1環状溝23は、その下部近傍において連通孔21hを通じて第2環状溝24に連通している。
【0042】
また、第2環状溝24は、その下部近傍において第1連通部21dを通じて中空部21eに連通している。
【0043】
第1連通部21dは、脚部2Bの前方側に設けられている。詳しくは、第1連通部21dは、第2環状溝24から外径側下方に延び、さらに後方側に屈曲して延びている。言い換えれば、第1連通部21dは、断面視略L字状を成している。
【0044】
この第1連通部21dは、脚部2Bの前壁に設けられる貫通孔203(図2参照)を通じて外部空間に連通している。貫通孔203にはキャップ204が着脱可能に取付けられている。貫通孔203にはドレン管を接続可能であり、ドレン管を通じて中空部21eの潤滑油Fを外部空間に排出することができるようになっている。
【0045】
中空部21eは、脚部2Bの軸方向中央部に設けられている。この中空部21eは、左右方向に幅広な空間となっている。
【0046】
また、第3環状溝25は、その下部近傍において第2連通部21fを通じて中空部21eに連通している。
【0047】
第2連通部21fは、脚部2Bの後方側に設けられている。詳しくは、第2連通部21fは、第3環状溝25から外径側下方に延びている。この第2連通部21fは、開口21gを通じて中空部21eと連通している。
【0048】
さらに第3環状溝25は、その上部近傍において上部空間29に連通している。詳しくは、ハウジング2の筒状部2Aにおける大径部2Abの上部近傍には、上方に筒状に延出される延出部29aを有しており、この延出部29aの上部開口は着脱可能な蓋部材29bにより閉塞されている。前記上部空間29は、延出部29aと蓋部材29bで囲まれた空間である。
【0049】
また、第4環状溝26は、その底部近傍において連通孔21jを通じて第3環状溝25に連通している。
【0050】
中空部21e、第1連通部21dの一部、第2連通部21fの一部、すなわちハウジング2の内部空間Sにおける下部は、潤滑油が貯留される液溜り部201として機能している。
【0051】
尚、ハウジング2の内部空間Sは、第1環状溝23、第2環状溝24、第1環状溝23と第2環状溝24との間の空間、回転軸3の外周面と軸受部材4の内周面との隙間S1(図3参照)、環状溝10、第3環状溝25、第4環状溝26、第3環状溝25と第4環状溝26との間の空間、液溜り部201、上部空間29を含む。
【0052】
ハウジング2の前端面及び後端面には、カバー27,28がそれぞれ固定されている。尚、前後のカバー27,28は同一構成のため、前方側のカバー27のみ説明し後方側のカバー28の説明を省略する。
【0053】
カバー27は、固定部27aと、第1延設部27bと、第2延設部27cと、を備えている。
【0054】
固定部27aは軸方向視で環状を成し、第1内周面2aよりも内径方向、すなわち回転軸3に向けて延びている。固定部27aの内周面と回転軸3の外周面とは僅かに離間した状態となっている。言い換えれば、第1環状溝23の前方側の開口はカバー27によりほぼ覆われている。
【0055】
第1延設部27bは、固定部27aの内径端から後方側、すなわち機内側に筒状に延びている。
【0056】
第2延設部27cは、第1延設部27bの後端から外径方向に環状に延びている。第2延設部27cの外径端は、第1内周面2aよりも内径側に離間して配置されている。
【0057】
カバー27には、固定部27aと、第1延設部27bと、第2延設部27cにより断面視U字状の回収溝27Aが形成されている。
【0058】
回転軸3には、第1環状溝23及び第4環状溝26にそれぞれ配置される油切りリング9が固定されている。この油切りリング9は、第1環状溝23及び第4環状溝26内に流入した潤滑油Fの一部を遠心力により外径側に飛散させる。油切りリング9により飛散した潤滑油Fは、カバー27の回収溝27A及びカバー28の回収溝で回収され、連通孔21h,21jを通じて第2環状溝24及び第3環状溝25に排出される。尚、第1環状溝23及び第4環状溝26内に流入した潤滑油Fの大部分は、連通孔21h,21jを通じてそのまま第2環状溝24及び第3環状溝25に排出される。
【0059】
次に、軸受部材4について図2および図3を用いて説明する。軸受部材4は、筒状を成す金属製の所謂ブッシュである。軸受部材4は、軸方向の寸法が筒状部2Aよりも短く形成されている。この軸受部材4は、その外周面が筒状部2Aの軸方向中央部に設けられた第4内周面2dに固定されている。
【0060】
また、軸受部材4は、回転軸3を遊挿可能な内径を有している。また、軸受部材4の外周面における軸方向中央部には、外径方向に開口する凹溝41が環状に形成されている。
【0061】
ハウジング2と軸受部材4とが固定された状態にあっては、ハウジング2と軸受部材4との間には、向かい合う凹溝41と凹溝200とにより環状溝10が形成されている。この環状溝10には、ハウジング2に接続された給油管11や後述する連通孔54から潤滑油Fを供給することが可能となっている。
【0062】
また、図3を参照し、軸受部材4には、径方向に貫通する貫通孔42が周方向に離間して複数(本実施例では2個)設けられている。この貫通孔42は凹溝41と回転軸3の外周面と軸受部材4の内周面との隙間S1を連通している。詳しくは、軸受部材4には、軸方向から見ておよそ3時の位置と、9時の位置に貫通孔42が設けられている。
【0063】
これによれば、環状溝10内の潤滑油Fは、貫通孔42を通じて隙間S1内に供給され、回転軸3の回転方向に引き込まれるようになっている。したがって回転軸3と軸受部材4とは、円滑に相対回転可能になっている。
【0064】
また、隙間S1から前方側に移動する潤滑油Fは、第2環状溝24及び第1連通部21dを通じて液溜り部201に貯留されるようになっている。隙間S1から後方側に移動する潤滑油Fは、第3環状溝25及び第2連通部21fを通じて液溜り部201に貯留されるようになっている。
【0065】
次に、流体供給装置5について図2を参照して説明する。
【0066】
流体供給装置5は、オイルカラー51と、オイルカットプレート52と、溝53と、から主に構成されている。オイルカラー51は回転軸3に固定されており、第3環状溝25に配置されている。オイルカラー51は回転軸3とともに回転することで、液溜り部201内の潤滑油Fを上方にすくい上げ可能となっている。
【0067】
オイルカットプレート52はオイルカラー51の上部近傍、すなわち上部空間29に配置されている。具体的には、オイルカットプレート52は溝53の後方の側面を構成する壁部53aの上端から後方側に延びて配置されている。このオイルカットプレート52は、オイルカラー51により上方にすくい上げられた潤滑油Fを掻き取り、その潤滑油Fを溝53に誘導するようになっている。
【0068】
溝53は延出部29a内に形成されており、上方に開口し、周方向に延びている。この溝53の底部には連通孔54が形成されている。この連通孔54は環状溝10と溝53とを連通している。すなわち、溝53内に流入した潤滑油Fは連通孔54を通じて環状溝10内に供給されるようになっている。
【0069】
次に、放熱体6について図1図4を用いて説明する。
【0070】
本実施例の放熱体6は、図1、3を参照し、軸方向から見て左右に2つ離間して配置されている。
【0071】
放熱体6は、ベース板61と、複数の放熱フィン62(本実施例では8個)と、を備えている。ベース板61及び放熱フィン62は熱伝導率の高い金属により構成されている。尚、ベース板61及び放熱フィン62はハウジング2よりも熱伝導率の高い素材により構成されていることが好ましい。
【0072】
特に図4に示されるように、ベース板61は、ハウジング2の底部に設けられた開口部202よりも若干大きい矩形状を成す平板である。本実施例では、ベース板61は、水平方向に延びている。
【0073】
放熱フィン62は軸方向に延びる帯状を成しており、ベース板61の下面に固定されている。放熱フィン62は、ベース板61に直交、すなわち本実施例では垂直下方向に延びている。各放熱フィン62は、幅方向に離間して並列して配置されている。すなわち、放熱体6は、各放熱フィン62により表面積が大きくなっているため、放熱効率が高くなっている。
【0074】
放熱体6は、開口部202を閉塞するようにネジ64によりハウジング2に固定されている。すなわち、放熱体6のベース板61の上面はハウジング2の内部空間Sに露出する受熱部、放熱フィン62は外部空間に露出する放熱部として機能している。
【0075】
放熱体6とハウジング2との間には、ベース板61の外縁に沿った形状を成す無端状のガスケット63が介在している。これにより、放熱体6とハウジング2との隙間から潤滑油Fが漏れることが防止されている。
【0076】
以上説明したように、ハウジング2の外面には、ハウジング2の内部空間Sに発生する熱を放熱する放熱体6が配置されているため、ハウジング2の内部空間Sおよび潤滑油Fは放熱体6の放熱作用により冷却される。このように、ハウジング2の内部空間Sおよび潤滑油Fの温度は簡素な構造の放熱体6により過剰な上昇が抑制される。言い換えれば、ハウジング2の外側に冷却媒体を循環させるための流路等の複雑な構造を必要としない。
【0077】
また、放熱体6は、外部空間に露出する放熱フィン62と、ハウジング2の内部空間Sに露出するベース板61と、を備えている。これによれば、放熱体6は、ハウジング2の内部空間Sに露出するベース板61により液溜り部201内の潤滑油Fの熱を効率よく受熱し、外部空間に露出する放熱フィン62により外部空間に効率よく放熱することができる。
【0078】
また、ベース板61は、ハウジング2の内部空間Sの下部に設けられる液溜り部201に配置されている。これによれば、ベース板61は、液溜り部201に溜まる潤滑油Fに接触するため、該潤滑油Fの熱を確実に放熱することができる。
【0079】
また、放熱フィン62は、軸方向に沿って延びている。これによれば、放熱フィン62は、船首と船尾との間、すなわち回転軸3の軸方向に沿って流れる外部空間の空気(図2の白矢印参照)の流れを阻害しない。言い換えれば、外部空間の空気と放熱フィン62とは効率よく接触するため、放熱効率が高い。
【0080】
また、左右一対の脚部2Bと床面とにより前後に延びる通路が形成されているため、外部空間の空気が軸方向に流れやすい。そのため、ハウジング2の内部空間Sおよび潤滑油Fの熱は、放熱体6により効率よく放熱される。
【実施例0081】
次に、実施例2に係る軸受装置につき、図5及び図6を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0082】
本実施例2の軸受装置100は、放熱体600の構成が実施例1の放熱体6と異なり、その他の構成は同一である。
【0083】
図5及び図6に示されるように、放熱体600は、受熱部としてのベース板601と、放熱部としての複数の放熱フィン602(本実施例では8個)と、受熱部としての複数の受熱フィン603(本実施例では8個)と、を備えている。尚、ベース板601及び放熱フィン602は実施例1のベース板61及び放熱フィン62と同一構造である。さらに尚、受熱フィン603はベース板601及び放熱フィン602と同様に、熱伝導率の高い金属により構成されている。
【0084】
受熱フィン603は、軸方向に延びる帯状を成しており、ベース板601の上面に固定されている。受熱フィン603は、ベース板601に直交、すなわち本実施例では垂直上方向に延びている。各受熱フィン603は、幅方向に離間して並列して配置されている。すなわち、放熱体600は、各受熱フィン603により表面積が大きくなっているため、受熱効率が高くなっている。
【0085】
受熱フィン603は、放熱体600がハウジング2に固定された状態において、開口部202を通じて液溜り部201内に延びている。これによれば、放熱体600の受熱フィン603が液溜り部201まで延びているため、実施例1に比べて内部空間Sおよび潤滑油Fの熱を効率よく受熱できる。
【0086】
また、受熱フィン603は、軸方向に沿って延びている。これによれば、受熱フィン603は、オイルカラー51の動作により液溜り部201内で生じる潤滑油Fの前方側から後方側への流れ、すなわち軸方向の流れ(図6の黒矢印参照)を阻害しない。言い換えれば、外部空間の空気と受熱フィン603とは効率よく接触するため、受熱効率が高い。
【0087】
尚、本実施例2では、放熱フィン602の軸方向寸法が開口部202の軸方向寸法よりも若干大きい形態を例示したが、これに限られない。例えば、図7に示されるように、変形例の軸受装置100’は、放熱フィン602’の軸方向寸法が脚部2Bの軸方向寸法よりも長くなっていてもよい。また、放熱フィンは開口部や受熱フィンよりも軸方向に短く形成されていてもよい。
【0088】
さらに尚、当該変形例の構成は実施例1に適用されてもよい。
【0089】
また、本実施例2および変形例では、ベース板の上面及び下面にそれぞれ受熱フィンと放熱フィンが溶接等により固定されている形態を例示したが、受熱フィンと放熱フィンが1つの部材で一体に構成されていてもよい。これによれば、受熱フィンと放熱フィンが一体であるため、熱伝導性が良好である。
【0090】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0091】
例えば、前記実施例1,2では、受熱部がハウジングの内部空間に露出している形態を例示したが、放熱体がハウジングの内部空間に露出していなくてもよく、ハウジングと外部空間との熱交換に加えて、放熱体により内部空間および潤滑用流体の放熱が行われればよい。
【0092】
また、前記実施例1,2では、放熱体はハウジングの内部空間の下部に設けられる液溜り部に配置される形態を例示したが、これに限られず、ハウジングの内部空間の上部や側部などの自由な位置に配置されていてもよい。この場合であっても、ハウジングの内部空間の空気や潤滑用流体を放熱できる。
【0093】
また、前記実施例1,2では、受熱部および放熱部はフィンである形態を例示したが、これに限られず自由に形成することができる。好ましくは、受熱部および放熱部はハウジングよりも放熱しやすい形状、または熱伝導率の高い素材で構成されている。
【0094】
また、前記実施例1,2では、自己潤滑方式の軸受装置について説明したが、これに限られず、ポンプにより外部から潤滑用流体を軸受部材と回転軸との隙間に注入する強制潤滑方式の軸受装置であってもよい。
【0095】
また、前記実施例1,2では、軸受部材が金属製である形態を例示したが、軸受部材は合成樹脂等により構成されていてもよい。
【0096】
また、前記実施例1,2では、軸受部材が筒状を成すブッシュである形態を説明したが、本発明はこれに限られず、ブッシュ以外の軸受部材であってもよい。
【0097】
また、軸受部材は半割もしくは3分割以上の分割部材から構成されていてもよい。また、軸受部材は筒状に限られず、回転軸を支持可能であれば、回転軸の下部を支持する円弧状を成していてもよい。
【0098】
また、前記実施例1,2では、放熱体がネジによりハウジングに固定される形態を例示したが、放熱体は溶接等によりハウジングに固定されていてもよい。
【0099】
また、前記実施例1,2では、放熱体がハウジングに対して2つ配置される形態を例示したが、放熱体は1つ、または3つ以上ハウジングに対して配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 軸受装置
2 ハウジング
3 回転軸
4 軸受部材
6 放熱体
10 環状溝
51 オイルカラー
52 オイルカットプレート
61 ベース板(受熱部)
62 放熱フィン(放熱部)
100 軸受装置
201 液溜り部
202 開口部
600 放熱体
601 ベース板(受熱部)
602 放熱フィン(放熱部)
603 受熱フィン(受熱部)
F 潤滑油(潤滑用流体)
S 内部空間
S1 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7