(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096049
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】管継手構造、配管構造、建物
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
E03C1/12 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081173
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2021116971の分割
【原出願日】2015-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 兵衛
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 武司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 総
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
(72)【発明者】
【氏名】萩森 之一
(57)【要約】
【課題】遮音防振性能をより高めて、建物への振動伝播を減らせるようにする。
【解決手段】床スラブ3に形成されたスラブ貫通孔部15へ挿入配置される樹脂製の管継手7を備え、
この樹脂製の管継手7が、少なくとも上記スラブ貫通孔部15内に位置する部分に熱膨張性の耐火材層16を有する管継手構造に関する。
上記樹脂製の管継手7における上記熱膨張性の耐火材層16の外周部を、遮音性および防振性を有する遮音防振シート41で覆うと共に、遮音防振シート41の上端部がスラブ貫通孔部15の上端部よりも上側に突出されるようにする。
この遮音防振シート41が、内側に無機質繊維層42を有し、外側に改質アスファルト層43を有する多層構造のものとされる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブに形成されたスラブ貫通孔部へ挿入配置される樹脂製の管継手を備え、
該樹脂製の管継手が、少なくとも前記スラブ貫通孔部内に位置する部分に熱膨張性の耐火材層を有する管継手構造において、
前記樹脂製の管継手における前記熱膨張性の耐火材層の外周部を、遮音性および防振性を有する遮音防振シートで覆うと共に、該遮音防振シートの上端部が前記スラブ貫通孔部の上端部よりも上側に突出されるようにし、
前記遮音防振シートが、内側に無機質繊維層を有し、外側に改質アスファルト層を有する多層構造のものとされたことを特徴とする管継手構造。
【請求項2】
請求項1に記載の管継手構造であって、
前記樹脂製の管継手の、前記スラブ貫通孔部よりも上側に位置する部分を遮音シートで覆うと共に、該遮音シートの下端部が前記スラブ貫通孔部の内部に挿入されたことを特徴とする管継手構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の管継手構造であって、
前記樹脂製の管継手の前記スラブ貫通孔部よりも上側に位置する部分に、横枝管に接続可能な横枝管接続部が設けられ、
少なくとも、該横枝管接続部の下部と、前記床スラブとの間に、前記樹脂製の管継手の高さ方向の位置を保持すると共に、樹脂製の管継手から前記床スラブへの振動の伝播を防止するための防振部材が介在設置されたことを特徴とする管継手構造。
【請求項4】
請求項1に記載の管継手構造であって、
前記遮音防振シートが、スペーサを介して前記熱膨張性の耐火材層の外周部に巻き付けられると共に、
前記遮音防振シートが、前記スペーサの位置をテープ状部材で固定されることにより、
前記遮音防振シートと前記熱膨張性の耐火材層の外周部との間に、空隙部を形成したことを特徴とする管継手構造。
【請求項5】
請求項4に記載の管継手構造であって、
前記スペーサ、および、前記テープ状部材が、前記スラブ貫通孔部の端部またはその近傍の位置に設けられたことを特徴とする管継手構造。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載された管継手構造であって、
前記無機質繊維層がグラスウールで構成され、
前記スペーサが発泡テープで構成され、
前記テープ状部材がブチルテープ状部材で構成されたことを特徴とする管継手構造。
【請求項7】
樹脂製の排水用管部材を、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載された管継手構造を用いて接続した排水配管構造であって、
前記樹脂製の排水用管部材の外周部を、内側に無機質繊維層を有し、外側に改質アスファルト層を有する多層構造の遮音防振シートで覆ったことを特徴とする排水配管構造。
【請求項8】
請求項7に記載の排水配管構造を有することを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管継手構造、配管構造、建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビルなどの建物には、その内部に排水路や給水路などの配管構造が設けられる。
【0003】
このような配管構造は、各階層を上下に貫く立管と、各階層内部に延設された横枝管と、これら立管と横枝管とを接続する管継手とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、このような管継手は、その内部で、流体の合流や方向変更や減勢(流速低減)などが行われるため、立管や横枝管と比べて発生する騒音が大きいという問題がある。
【0005】
そこで、管継手の外面を遮音材で覆って遮音を行うことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年においては、排水時に上記した管継手に発生する振動に起因する騒音が問題となってきており、建物の躯体への振動の伝播を減らすことが求められる。
【0008】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決することを、主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、
床スラブに形成されたスラブ貫通孔部へ挿入配置される樹脂製の管継手を備え、
該樹脂製の管継手が、少なくとも前記スラブ貫通孔部内に位置する部分に熱膨張性の耐火材層を有する管継手構造において、
前記樹脂製の管継手における前記熱膨張性の耐火材層の外周部を、遮音性および防振性を有する遮音防振シートで覆うと共に、該遮音防振シートの上端部が前記スラブ貫通孔部の上端部よりも上に突出されるようにし、
前記遮音防振シートが、内側に無機質繊維層を有し、外側に改質アスファルト層を有する多層構造のものとされたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成によって、遮音防振性能をより高めて、建物への振動伝播を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態の実施の形態にかかる管継手構造を備えた配管構造および建物の縦断面図である。
【
図3】
図2の管継手構造を遮音防振シートで覆った状態を示す図である。
【
図4】
図3の遮音防振シート上端部周辺の拡大図である。
【
図5】管継手に取付けられる遮音防振シートの断面図である。
【
図8】スペーサを用いた場合の
図3と同様の図である。
【
図9】高遮音シートの取付け状態を示す
図3と同様の図である。
【
図10】高遮音シートの取付け状態を示す
図8と同様の図である。
【
図12】排水用管部材に取付けられる遮音防振シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図12は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例0013】
<構成>以下、構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、集合住宅やオフィスビルなどの建物1には、その内部に排水路や給水路などの配管が設けられる。
【0015】
このような配管の構造(配管構造)は、各階層の床部を構成する床スラブ3を上下に貫く立管4,5と、各階層内部に延設された横枝管6と、これら立管4,5と横枝管6とを接続する管継手7とを備えている。
【0016】
この場合、立管4,5と横枝管6とは、樹脂製の排水用管部材とされる。管継手7は、上下方向へ延びて、その上端部と下端部とに、立管接続部11,12を有する筒状の継手本体13と、この継手本体13の側面に設けられた横枝管接続部14とを有するものとされる。
【0017】
そして、管継手7は、樹脂製のものとされる。この管継手7は、床スラブ3に形成されたスラブ貫通孔部15へ挿入配置される。
この樹脂製の管継手7が、少なくとも上記スラブ貫通孔部15内に位置する部分に熱膨張性の耐火材層16を有するものとされる。
【0018】
ここで、管継手7は、難燃性を備えた塩化ビニル樹脂などの樹脂組成物によって主に構成される。管継手7は、横枝管接続部14が床スラブ3の上面よりも上側に位置するようにスラブ貫通孔部15へ挿入配置される。そして、樹脂製の管継手7が挿入配置されたスラブ貫通孔部15は、モルタル17によって塞がれる。
【0019】
次に、
図2を用いて、管継手7の具体的な構造(管継手構造)について説明する。管継手7の継手本体13は、上部本体部21と、本体中間部22と、下部本体部23との、3つの継手構成部品によって主に構成されている。
【0020】
このうち、上部本体部21は、主に、スラブ貫通孔部15よりも上側へ突出する部分であり、上側の立管接続部11と、単数または複数の横枝管接続部14と、を有している。上側の立管接続部11と、横枝管接続部14とは、それぞれ、立管4と横枝管6とを、熱伸縮の影響を吸収できるように接続するための伸縮用受口とされている。この伸縮用受口は、それぞれ、筒状の受口本体部25と、この受口本体部25の端部に挿入配置されたゴム製のシールパッキン26と、受口本体部25の端部に外嵌されてシールパッキン26を保持するリングキャップ部27と、を有するものとされる。この伸縮用受口は、上部本体部21の上端部および側面に形成された取付用開口部28に対し、それぞれ装着した状態で接着固定される。
【0021】
本体中間部22は、主に、スラブ貫通孔部15へ挿入配置される部分である。この本体中間部22は、円筒形状を有するものとされて、上部本体部21の下端に形成された下部接続口部31と、下部本体部23の上端に形成された上部接続口部32との間に差し込んで接着固定されるようになっている。上記した熱膨張性の耐火材層16は、この本体中間部22に形成される。そのために、本体中間部22は、熱膨張性の耐火材層16によって主に構成される。熱膨張性の耐火材層16には、熱膨張性黒鉛を含有したポリ塩化ビニル系樹脂組成物などが使用される。なお、本体中間部22は、例えば、熱膨張性の耐火材層16の内周と外周とを、熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる被覆層で被覆した3層構造のものなどとすることができる。
【0022】
下部本体部23は、主に、スラブ貫通孔部15よりも下側へ突出する部分であり、下端部に下側の立管接続部12を有している。この場合、下部本体部23は、下細り形状の筒体とされている。下側の立管接続部12は、立管5の上端部を挿入して接着固定するようにした固定受口とされている。
【0023】
更に、上部本体部21の内部には、上側の立管4や横枝管6からの排水を受ける第一の旋回羽根35が設けられている。また、本体中間部22の内部に対し、必要に応じて、第二の旋回羽根36を設けるようにしても良い。更に、下部本体部23の内部には、第三の旋回羽根37が設けられている。これらの旋回羽根35~37は、主に、排水の合流や方向変更や減勢(流速低減)などを行うためのものであり、騒音の発生源となり易いものである。なお、管継手7の構成は、上記に限るものではない。
【0024】
そして、以上のような基本的または全体的な構成に対し、この実施例は、以下のような構成を備えている。
【0025】
(1)
図3に示すように、上記樹脂製の管継手7における上記熱膨張性の耐火材層16の外周部を、遮音性および防振性を有する遮音防振シート41で覆うようにする。この際、
図4の部分拡大図に示すように、遮音防振シート41の上端部がスラブ貫通孔部15の上端部(または床スラブ3の上面)よりも上側に突出されるようにする。
そして、この遮音防振シート41が、
図5に示すように、内側に無機質繊維層42を有し、外側に改質アスファルト層43を有する多層構造のものとされる。
【0026】
ここで、遮音防振シート41は、主に、本体中間部22を覆うものとされる。この場合には、本体中間部22と、下部本体部23との両方を覆うようにしている。これにより、遮音防振シート41の下端部は、スラブ貫通孔部15の下端部よりも下側に突出されることになる。遮音防振シート41は、少なくとも、無機質繊維層42による内側表層、および、改質アスファルト層43による外側表層を有するものとされる。無機質繊維層42と改質アスファルト層43との間には、両者の接着性を高めるためのポリエステル系の不織布45(接着層)などを備えるようにしても良い。また、無機質繊維層42および改質アスファルト層43の表面に対し、これらを保護すると共に見栄えを向上ためのポリエステル系の不織布45などを備えるようにしても良い。遮音防振シート41は、テープ状部材44を用いて管継手7などに貼付けられる。
【0027】
(2)
図3に示すように、上記樹脂製の管継手7の、上記スラブ貫通孔部15よりも上側に位置する部分(上部本体部21)を遮音シート46で覆うようにする。そして、この遮音シート46の下端部が上記スラブ貫通孔部15の内部に挿入されるようにする。
なお、上部本体部21については、上記と同じ遮音防振シート41で覆うようにしても良い。この場合には、遮音シート46は、
図6に示すような、厚さ1.2mm程度の軟質塩化ビニル樹脂などによる単層構造のものとされている。遮音シート46の内側表層には、ポリエステル系の不織布45などを備えるようにしても良い。遮音シート46は、テープ状部材52を用いて管継手7や遮音防振シート41などに貼付けられる。
【0028】
(3)既に上記したように、上記樹脂製の管継手7の上記スラブ貫通孔部15よりも上側に位置する部分に、横枝管6に接続可能な横枝管接続部14が設けられている。
そこで、
図7に示すように、少なくとも、この横枝管接続部14の下部と、上記床スラブ3との間に、上記樹脂製の管継手7の高さ方向の位置を保持すると共に、樹脂製の管継手7から上記床スラブ3への振動の伝播を防止するための防振部材47を介在設置するようにしても良い。
【0029】
ここで、防振部材47については、上記した遮音防振シート41と(厚みなども含めて)同じものとすることができる。そして、横枝管接続部14の下部と、上記床スラブ3の上面との間隔、または、横枝管接続部14の下部と、床スラブ3の上面から上方へ突出された遮音防振シート41の上端部との間隔は、防振部材47の厚みとほぼ等しいか、それよりも若干狭くなるようにするのが好ましい。なお、防振部材47については、横枝管接続部14の外周に巻き付けるように設置しても良い。
【0030】
(4)或いは、
図8に示すように、上記遮音防振シート41が、スペーサ51を介して上記熱膨張性の耐火材層16の外周部に巻き付けられるようにしても良い。
そして、上記遮音防振シート41が、上記スペーサ51の位置をテープ状部材44で固定されることにより、
上記遮音防振シート41と上記熱膨張性の耐火材層16の外周部との間に、空隙部53が形成されるようにする。
【0031】
ここで、スペーサ51やテープ状部材44は、遮音防振シート41が潰れて遮音性能や防振性能を発揮できなくなるのを防止するために用いられるものである。空隙部53の大きさは、スペーサ51の厚みによって設定される。遮音防振シート41の厚みや、空隙部53の大きさは、スラブ貫通孔部15内へ挿入できる範囲内で設定される。
【0032】
なお、遮音シート46の下端部は、図では、遮音防振シート41の上端部から離して設置されているが、遮音防振シート41の上端部に突き当てるように設置したり、遮音防振シート41の上端部の外側を覆うように設置したりしても良い。
【0033】
(5)上記スペーサ51、および、上記テープ状部材44が、上記スラブ貫通孔部15の上端部またはその近傍の位置に設けられる。
【0034】
ここで、スラブ貫通孔部15の下端部に対してもスペーサ51およびテープ状部材44を設けるようにしても良い。テープ状部材44は、上下方向や周方向などに対して適宜貼り付けることができる。最も上側または最も下側に位置する周方向のテープ状部材44は、好ましくは、スラブ貫通孔部15の外側に出る位置に貼り付けるようにする。
【0035】
(6)より具体的には、上記無機質繊維層42がグラスウールで構成されるようにする。
また、上記スペーサ51が発泡テープで構成されるようにする。
そして、上記テープ状部材44がブチルゴムテープで構成されるようにする。
【0036】
ここで、遮音防振シート41の無機質繊維層42を構成するグラスウールには、例えば、密度が50kg/cm3、厚みが10mm程度のものを使用することができる。また、遮音防振シート41の改質アスファルト層43には、例えば、厚みが3.5mm程度のものを使用することができる。なお、上記した遮音シート46に貼り付けるテープ状部材52については、ブチルゴムテープとしても良いが、この場合には、塩化ビニル系のテープとしている。
【0037】
更に、
図9(
図3に対応)または
図10(
図8に対応)などに示すように、スラブ貫通孔部15へ樹脂製の管継手7が挿入され、スラブ貫通孔部15がモルタル17によって塞がれた後で、スラブ貫通孔部15よりも下側に位置する、樹脂製の管継手7の下部および下側の立管5の上端部周辺を、高遮音シート61で覆うようにしても良い。
【0038】
この高遮音シート61は、例えば、
図11に示すように、内側にPETフェルトなどの有機質繊維層62を有し、外側に軟質塩化ビニル樹脂層63を有する多層構造のものとされる。この場合、有機質繊維層62は、例えば、面密度が300g/m2、厚みが10mm程度のものとされる。また、軟質塩化ビニル樹脂層63は、例えば、厚みが1.0mm程度のものとされる。なお、高遮音シート61の上端部は、図では、床スラブ3の下面から離して設置されているが、床スラブ3の下面に突き当たるように設置しても良い。また、この高遮音シート61は、上部本体部21を覆うのに用いても良い。
【0039】
(7)そして、樹脂製の排水用管部材(立管4,5および横枝管6など)を、上記した管継手構造を用いて接続した排水配管構造に対し、
上記樹脂製の排水用管部材の外周部を、
図12に示すような、内側に無機質繊維層65を有し、外側に改質アスファルト層66を有する多層構造の遮音防振シート67で覆うようにする(
図3、
図8~
図10参照)。
【0040】
ここで、遮音防振シート67の無機質繊維層65には、例えば、密度が120kg/cm3、厚みが10mm程度のグラスウールが使用される。また、遮音防振シート67の改質アスファルト層66には、例えば、厚みが3.5mm程度のものが使用される。無機質繊維層65の内側表層、および、改質アスファルト層66の外側表層、並びに、無機質繊維層65と改質アスファルト層66との中間層には、それぞれ、ポリエステル系の不織布45などを備えるようにしても良い。なお、遮音防振シート67は、図では、管継手7の上端部や下端部が露出するように設置されているが、管継手7の上端部や下端部を覆うように設置しても良い。
【0041】
(8)既に上記しているが、上記した建物1が上記した排水配管構造を有するものとされる。
【0042】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0043】
(作用効果1)
樹脂製の管継手7を、床スラブ3に形成されたスラブ貫通孔部15へ挿入配置する。そして、この樹脂製の管継手7に対して樹脂製の排水用管部材(立管4,5および横枝管6など)を接続する。これにより、床スラブ3を貫通して複数の階層間に延びる排水配管構造を構築することができる。なお、上記した排水配管構造は、例えば、下側から組み立てて行くようにする。
【0044】
そして、上記した樹脂製の管継手7が、少なくともスラブ貫通孔部15内に位置する部分に熱膨張性の耐火材層16を有するものとされた。これにより、火災発生時に、熱膨張性の耐火材層16が膨張してスラブ貫通孔部15を塞ぐ(遮蔽する)ことで、炎を食い止めて異なる階層への延焼を防止することができる。
【0045】
一方、上記した排水配管構造では、内部を流れる排水によって騒音や振動が発生する。そして、この騒音や振動が、居室へ伝わると、居住性が低下する原因となる。このような騒音や振動は、排水の合流や方向変更や減勢(流速低減)などが行われる管継手7の内部で最も生じ易い。しかも、管継手7は、床スラブ3に形成されたスラブ貫通孔部15内に設置されるため、管継手7で発生した騒音や振動は、床スラブ3を介して直接的に居室へ伝わり易い。
【0046】
そこで、樹脂製の管継手7における熱膨張性の耐火材層16の外周部を、遮音性および防振性を有する遮音防振シート41で覆うようにした。しかも、遮音防振シート41の上端部がスラブ貫通孔部15の上端部よりも上側に突出されるようにした。これにより、遮音防振シート41の介在によって管継手7が床スラブ3と直接接触されないようになるので、管継手7で発生した騒音や振動が床スラブ3を介して居室へ伝わるのを、高い遮音防振性を有する遮音防振シート41で妨げて、騒音や振動を低減することができる。
【0047】
この際、遮音防振シート41を、内側に無機質繊維層42を有し、外側に改質アスファルト層43を有する多層構造のものとした。内側の無機質繊維層42は、密度および剛性が低く、共振周波数が極めて低いことにより、振動を伝え難い特性を有している。また、外側の改質アスファルト層43は、比重が高く、共振周波数が極めて低いことにより、振動を伝え難い特性を有している。これにより、遮音および防振原理の異なる複数の素材による多重の遮音防振効果で、樹脂製の管継手7から床スラブ3(または建物1)への騒音や振動の伝達を効果的に防止することができる。
【0048】
なお、遮音防振シート41においては、内側に無機質繊維層42を有し、外側に改質アスファルト層43を有するように施工する場合と、内側に改質アスファルト層43を有し、外側に無機質繊維層42を有するように施工する場合とが考えられるが、実験の結果、両者は、得られる遮音防振効果が異なっており、前者の方が後者よりも高い効果が得られることが確認された。
【0049】
更に、内側の無機質繊維層42は、難燃性で内部に多くの空間を有するものである。また、外側の改質アスファルト層43は、高温で柔らかくなる性質を有している。これにより、火災発生時に膨張した熱膨張性の耐火材層16が無機質繊維層42の空間内へ入り込むと共に、高温で柔らかくなった外側の改質アスファルト層43が内側の無機質繊維層42に付着したり、更に無機質繊維層42の空間内へ入り込んだりすることによって、スラブ貫通孔部15に対する遮蔽性が上がり、耐火性能がより向上されることも確認された。また、スラブ貫通孔部15が塞がれるまでの時間も、熱膨張性の耐火材層16のみの場合よりも短くなることが確認された。
【0050】
(作用効果2)
上記樹脂製の管継手7の、上記スラブ貫通孔部15よりも上側に位置する部分(上部本体部21)を遮音シート46で覆った。そして、この遮音シート46の下端部が上記スラブ貫通孔部15の内部に挿入されるようにした。これにより、火災発生時に、遮音防振シート41とモルタル17との間に隙間ができた場合に、この隙間を通って煙が上階へ漏れ出すのを、隙間の外側を覆うように設けられた遮音シート46によって防止することができる。
【0051】
(作用効果3)
少なくとも、横枝管接続部14の下部と、上記床スラブ3との間に、防振部材47を介在設置した。これにより、上記樹脂製の管継手7(の横枝管接続部14)の高さ方向の位置を保持すると共に、樹脂製の管継手7(の横枝管接続部14)から上記床スラブ3への振動の伝播を防止することができる。
【0052】
(作用効果4)
或いは、スペーサ51とテープ状部材44とを用いて、遮音防振シート41を、(樹脂製の管継手7における)熱膨張性の耐火材層16の外周部に巻き付け固定するようにしても良い。このように、スペーサ51とテープ状部材44とを用いた固定とすることにより、遮音防振シート41に圧力が掛かり過ぎないようにしつつ遮音防振シート41をしっかり固定することが可能となるので、遮音防振シート41(の無機質繊維層42)が潰れてその機能(遮音防振機能や耐火機能)を発揮できなくなってしまうような不具合を防止できる。更に、スラブ貫通孔部15への樹脂製の管継手7の施工後には、必要に応じて、テープ状部材44を、遮音防振シート41から剥がすことができる。これにより、遮音防振シート41(の無機質繊維層42)を初期状態に復帰させて、その機能を十分に発揮させることができる。
【0053】
また、遮音防振シート41を、熱膨張性の耐火材層16の外周部との間に、空隙部53を形成するように固定した。これにより、空隙部53が音や振動を遮る空間となるので、遮音防振層を増やすことができ、遮音防振機能をより高めることができる。
【0054】
(作用効果5)
スペーサ51、および、テープ状部材44を、スラブ貫通孔部15の上端部またはその近傍の位置に設けた。音や振動は、床スラブ3の内部よりも表面に沿って伝わり易いので、床スラブ3の表面に最も近い、スラブ貫通孔部15の端部の位置またはその近傍にスペーサ51およびテープ状部材44を設けることにより、樹脂製の管継手7から床スラブ3の表面への音や振動の伝達を有効に妨げることができる。その結果、床スラブ3の表面に沿った音や振動の伝達を低減することができ、建物1の遮音防振性能を高めることができる。
【0055】
(作用効果6)
無機質繊維層42をグラスウールで構成した。グラスウールには、例えば、密度が50kg/cm3、厚みが10mm程度のものを使用することができる。また、改質アスファルト層43には、厚みが3.5mm程度のものを使用することができる。また、スペーサ51を発泡テープで構成した。そして、テープ状部材44を、ブチルゴムテープで構成した。これらを用いることにより、上記した作用効果を実際に得ることができる。
【0056】
更に、スラブ貫通孔部15へ樹脂製の管継手7が挿入され、スラブ貫通孔部15がモルタル17によって塞がれた後で、スラブ貫通孔部15よりも下側に位置する、樹脂製の管継手7の下部および下側の立管4,5の上端部周辺を、
図11に示すように、高遮音シート61で覆うようにしても良い。これにより、更に、遮音性能を高めることができる。
【0057】
(作用効果7)
排水配管構造は、樹脂製の排水用管部材(立管4,5および横枝管6など)を、上記した管継手構造を用いて接続したものとされる。この排水配管構造では、樹脂製の排水用管部材外周部を、内側に無機質繊維層65を有し、外側に改質アスファルト層66を有する多層構造の遮音防振シート67で覆うようにした。これにより、管継手構造については、上記と同様の作用効果を得ることができると共に、排水用管部材についても、遮音防振シート67によって、管継手7と同様の遮音防振効果を得ることができる。
【0058】
(作用効果8)
上記排水配管構造を備えた建物1によれは、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。