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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096057
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】治療レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7072 20060101AFI20230629BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61K31/7072
A61P35/00
A61P35/02
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/18
A61P1/16
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/02
A61P13/08
A61P13/10
A61P15/00
A61P17/00
A61P25/00
A61P27/02
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081290
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2020512557の分割
【原出願日】2018-08-30
(31)【優先権主張番号】1713916.3
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517395747
【氏名又は名称】ニューカナ パブリック リミテッド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー グリフィス
(57)【要約】
【課題】 5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を含んでなる癌治療における使用のための医薬組成物を提供する。
【解決手段】 医薬組成物は、所定の期間での静脈内注入によって投与される。或いは、医薬組成物は、手足症候群を発症した又は発症し易い癌患者に投与される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を含んでなる癌治療における使用のための医薬組成物であって、NUC-3373又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物が、1~4時間の期間で、静脈内注入によって投与されることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
投与が持続注入によるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
投与がボーラス投与である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
癌が、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、他の尿路上皮癌、胃腸癌(消化器の癌としても知られている)、肝臓癌、肺癌、胆道癌、前立腺癌、胆管細胞癌、腎癌、神経内分泌癌、肉腫、リンパ腫、白血病、子宮頸癌、胸腺癌、原発不明癌、中皮腫、副腎癌、子宮癌、卵管癌、腹膜癌、子宮内膜癌、精巣癌、頭頚部癌、中枢神経系の癌、基底細胞癌、ボーエン病、他の皮膚癌(悪性メラノーマ、メルケル細胞腫瘍、稀な付属器腫瘍を含む)、角結膜扁平上皮腫瘍、及び胚細胞性腫瘍からなる群から選ばれるものである、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
癌が、食道癌、胃癌、腸癌、小腸癌、結腸癌、虫垂粘膜性腫瘍、胚細胞カルチノイド、肝臓癌、胆道癌、胆嚢癌、肛門癌、及び直腸癌からなる群から選ばれ消化器癌である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
癌患者が手足症候群にも罹っている、請求項1~5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
患者が、先にNUC-3373以外の薬剤による治療レジメンから手足症候群を発症している、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
患者が、5-FU、カペシタビン又はテガフールによって治療された際に手足症候群を発症している、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
NUC-3373が、28日サイクルの第1日及び第15日に静脈内注入によって投与される、請求項1~8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を含んでなる対象者の癌を治療するための医薬組成物であって、対象者が、手足症候群に罹った又は発症し易い癌患者であることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項11】
対象者が、5-FU、カペシタビン又はテガフールのようなフルオロピリミジンによる治療後に手足症候群を発症している、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
癌が、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、他の尿路上皮癌、胃腸癌(消化器の癌としても知られている)、肝臓癌、肺癌、胆道癌、前立腺癌、胆管細胞癌、腎癌、神経内分泌癌、肉腫、リンパ腫、白血病、子宮頸癌、胸腺癌、原発不明癌、中皮腫、副腎癌、子宮癌、卵管癌、腹膜癌、子宮内膜癌、精巣癌、頭頚部癌、中枢神経系の癌、基底細胞癌、ボーエン病、他の皮膚癌(悪性メラノーマ、メルケル細胞腫瘍、稀な付属器腫瘍を含む)、角結膜扁平上皮腫瘍、及び胚細胞性腫瘍からなる群から選ばれるものである、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
癌が、食道癌、胃癌、腸癌、小腸癌、結腸癌、虫垂粘膜性腫瘍、胚細胞カルチノイド、肝臓癌、胆道癌、胆嚢癌、肛門癌、及び直腸癌からなる群から選ばれ消化器癌である、請求項10又は12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療における使用のための5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物に関する。本発明は、特別なサブグループの癌患者にNUC-3373を投与することによる癌の治療法にも関する。さらに、本発明はNUC-3373での治療に適した患者を選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NUC-3373
プロタイドは、ヌクレオシドのマクスドホスフェート誘導体である。これらは、抗ウイルス剤及び腫瘍学の両分野において、特に有望な治療剤であることが示されている。プロタイドは、親のヌクレオシドの有用性を制限する多くの本来の及び獲得された抵抗性機構を回避するように思われる。
【0003】
ヌクレオシド類似体、5FUDR、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)(1)及び様々な関連する化合物のProTideの適用は、多くのケースにおいて、特に、NUC-3373について、様々な癌モデルに対して、傑出し、5-フルオロウラシルにて得られる結果よりもはるかに優れているインビボ活性を発揮している。5-フルオロウラシル/FUDR分子へのプロタイドホスホルアミデート部分の付加は、主要な活性型の薬剤(FUDRモノホスフェート)を腫瘍細胞に送達するとの特異的な利点を付与する。臨床研究では、NUC-3373が、5FU及びその経口用プロドラッグであるカペシタビンに関わる主要な癌細胞抵抗性機構を克服し、高細胞内レベルの活性なFUDRモノホスフェート代謝物を発生し、腫瘍細胞の成長のはるかに多大の阻害を生ずることは証明されていない。さらに、正式のイヌ毒物学的研究では、NUC-3373は、5FUよりも有意に良好な耐性である(国際公開第2012/117246;McGuiganら, 「抗癌剤FUDRのホスホルアミデートProTideは、細胞において、予め形成された生物活性のモノホスフェートを成功裏に送達し、親ヌクレオシド以上の利点を付与する」, J. Med. Chem., 2011, 54, 7247-7258;及びVande Voordeら, 「NUC-3073(5-フルオロ-2’-デオキシウリジンのホスホルアミデートプロドラッグ)の細胞増殖抑制作用は、チミジンキナーゼによる活性化とは無関係であり、加リン酸分解酵素による分解には非感受性である」, Biochem. Pharmacol.; 2011, 82, 441-452)。
【0004】
NUC-3373(1)
【化1】
【0005】
NUC-3373は、一般的には、ホスフェート中心におけるエピマーである2つのジアステレオ異性体(S-エピマー及びR-エピマー)の混合物として調製される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
5-フルオロウラシルの治療効果は、正常な核酸形成を妨げるヌクレオチドの形成を介するものである。これは、肝臓におけるジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)による異化作用によって均衡化される。ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)欠損又は部分的欠損である癌細胞は5FU及び他の化学療法剤を分解することができない;ほとんどの分解は肝臓で行われる(DeLeve., 「薬物惹起性肝疾患」(第3版), 2013, p. 541-567)。5-フルオロウラシルの85%以上がDPDによって分解される;それ故、DPD活性は、5-フルオロウラシルの活性及び毒性の主要な決定要因である;DPD酵素の活性は、6倍以下の個人間変動でガウス分布を生ずる。DPDの正常な変動に加えて、DPD欠損を引き起こすDPYD遺伝子において変異があり、集団の3%未満で生ずる。低DPDレベル及びDPD欠損は5-フルオロウラシルのクリアランスを低減し、過酷な又は重篤な毒性を生ずる。
【0007】
臨床研究では、正常なDPD活性を有する患者の13%と比べて、低減されたDPD活性を有する患者の55%がグレードIVの好中球減少症に罹っていることが観察された(P=0.01)。さらに、毒性発現は、低DPD活性を有する患者において、正常なDPD活性を有する患者と比べて2倍の速さで生じた(10.0±7.6日対19.1±15.3日;P<0.05)(van Kullenburgら, Clin Cancer res. 6(12): 4705-12, 2000)。
【0008】
今まで、DPYDでは、39個の異なる突然変異及び多型が同定されている。IVS14+1G>A突然変異体は、最も一般的なものであることが証明されており、及び深刻な5FU毒性に罹った全ての患者の24~28%において検出されている。このように、DPD欠損症は重要な遺伝薬理学的症候群であると思われる(van Kullenberg., Eur. J. Cancer. 40(7): 939-50, 2004)。
【0009】
例えば、5FUの肝臓分解が低減されると、長期間、薬剤に露出されることになり、重大な毒作用性(粘膜炎、下痢、顆粒球減少症、神経障害、及び死亡を含む)につながる(Jin Ho Baekら, Korean J International Medicine, 21: 43-45, 2006)。逆に、DPD欠損ではない(例えば、正常なDPD)患者は、肝臓において、5FU(及び特定の他の化学療法剤)を分解することができるが、しかし、5FUは、潜在的に有毒な代謝物、例えば、α-フルオロ-β-アラニン(FBAL)及びジヒドロフルオロウラシル(dhFU)に分解され、その存在は、患者の30~60%における手足症候群(化学療法剤誘発性肢端紅斑又は手掌・足底発赤知覚不全症候群、手掌・足底紅斑)の発症と関連する(Krugerら, Acta Oncologica 1-8, 2015;Chiaraら, Eur J Cancer. 33: 967-969, 1997)。生命を脅かすものではないが、これは衰弱させる。
【0010】
それ故、既存の治療剤、例えば、5FU、及びカペシタビン又はテガフール(5FUのプロドラッグ)にて観察されるよりも、より良好な安全プロフィールを有する(副作用が少ない)癌についての処置を同定して、患者が、第1ラインで、これらの処置(例えば、薬剤)で治療されるか、又は患者が、副作用、例えば、手足症候群を発症する際、又はこのような副作用及び/又は毒性のより少ない副作用を発症し易いものとして判定される際に、これらの薬剤に切り替えられるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、癌治療のための治療レジメンを提供することにある。本発明の目的は、DPD欠損又は部分的DPD欠損の癌患者、又は手足症候群を発症する癌患者を治療する方法を提供することにもある。また、本発明の目的は、癌を治療するための療法の有効性を判定する方法提供することにある。さらに、本発明の目的は、対象者の癌がDPD欠損又は部分的欠損であるかどうかを判定し、このような癌を治療するための療法を提供する方法を提供することにある。
【0012】
本発明の目的は、既存の治療よりも、より効果的及び/又はより毒性が少なく/より安全である療法を提供することある。
【0013】
本発明のいくつかの具体例は、上記目的を満足する。
【0014】
第1の態様では、本発明は、癌治療における使用のための5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を提供するものであり、ここで、治療は、10時間以下、例えば、1~6時間の期間でのNUC-3373の投与によるものである。
【0015】
第2の態様では、本発明は、癌を治療する方法を提供するものであり、該方法は、このような治療を必要とする対象者に、10時間以下の期間で5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を投与することを含んでなる。
【0016】
第3の態様では、本発明は、癌治療における使用のための医薬の製造における、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物の使用を提供するものであり、ここで、治療は、10時間以下の期間でのNUC-3373を含んでなる医薬の投与によるものである。
【0017】
第4の態様では、本発明は、抗癌剤治療の有効性を判定する方法を提供するものであり、該方法は、抗癌剤治療を受ける対象者からの末梢血単核球(PBMCs)又は癌細胞の試料を検査して、PBMCs又は癌細胞における細胞内デオキシチミジンモノホスフェート(dTMP)のレベルを測定することを含んでなり、ここで、PBMCs又は癌細胞における細胞内dTMPのレベルにおける減少が、抗癌剤治療が有効であることを示す。
【0018】
第5の態様では、本発明は、抗癌剤治療の有効性を判定する方法を提供するものであり、該方法は、抗癌剤治療を受ける対象者からの末梢血単核球(PBMCs)又は癌細胞の試料を検査して、PBMCs又は癌細胞における細胞内チミジル酸合成酵素(TS)のレベルを測定することを含んでなり、ここで、PBMCs又は癌細胞における細胞内TSのレベルにおける減少が、抗癌剤治療が有効であることを示す。
【0019】
5FUに曝露される際、TSのレベルは増大し、抵抗性に寄与する。NUC-3373による治療は高レベルの阻害剤FUDRMPを生ずるため、増大したTSレベルを有する(一般的には、5FUのような薬剤による治療後の抵抗性機構のために生ずる)患者においても、NUC-3373による治療は有効であることが推測される。
【0020】
第6の態様では、本発明は、抗癌剤治療の有効性を判定する方法を提供するものであり、該方法は、抗癌剤治療を受ける対象者からの末梢血単核球(PBMCs)又は癌細胞の試料を検査して、PBMCs又は癌細胞における細胞内デオキシウリジンモノホスフェート(dUMP)のレベルを測定することを含んでなり、ここで、PBMCs又は癌細胞における細胞内TdUMPのレベルにおける増大が、抗癌剤治療が有効であることを示す。
【0021】
本発明の第4~第6の態様の方法における使用のための好適な癌細胞は、対象者の癌を参照して選択される認識される。末梢血単核球(PBMCs)は、核を有する血液細胞、例えば、単球、リンパ球、及びマクロファージである。
【0022】
第7の態様では、本発明は、治療される癌細胞において、dUMPの細胞内レベルを増大させ、これにより、癌細胞を死滅させることによる癌治療における使用のための5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を提供するものである。理論によって縛られることを望むものではないが、このシナリオでは、癌細胞は、細胞DNA修復機構機構の効力の低減により又は細胞ストレスにより死滅されると思われる。
【0023】
第8の態様では、本発明は、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)における欠損又は部分的欠損の対象者における癌治療での使用のための5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を提供する。
【0024】
1具体例では、本発明の第8の態様は、DPDにおける欠損又は部分的欠損であると同定された対象者における癌治療での使用のための5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を提供する。
【0025】
第9の態様では、本発明は、癌を治療する方法を提供するものであり、該方法は、このような治療を必要とする対象者に、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を投与することを含んでなり、ここで、対象者が、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)における欠損又は部分的欠損である。対象者は、ここに開示するものを含む各種の好適な手段によって、DPDにおける欠損又は部分的欠損として同定される。
【0026】
第7~第10の態様のいずれかによる使用のためのNUC-3373は、ここに記載する各種の態様又は具体例において、治療方法又は医学的利用のいずれかに従って使用される。
【0027】
第10の態様では、本発明は、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物による治療に適した対象者を選択する方法を提供するものであり、該方法は、対象者の肝細胞、PBMCs、又は癌細胞が、DPD欠損又は部分的欠損であるかどうかを判定することを含んでなり、対象者の肝細胞、PBMCs、又は癌細胞が、DPD欠損又は部分的欠損であれば、当該対象者を、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)による治療に適するとして選択する。
【0028】
1具体例では、対象者の肝細胞、PBMCs、又は癌細胞が、DPD欠損又は部分的欠損であるかどうかを判定する方法は、対象者からのPBMCs又は癌細胞の試料におけるDPDの量又は活性を測定することによって行い、対象者のPBMCs又は癌細胞が、DPD欠損又は部分的欠損であれば、当該対象者を、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)による治療に適するとして選択する。
【0029】
第11の態様では、本発明は、癌患者が、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物による治療から恩恵を受けそうであるか、又は反応性であるかを判定する方法を提供するものであり、該方法は、患者から単離した癌細胞中で発現されたDPDタンパク質の量又は活性を測定することを含んでなり、患者の癌細胞が、基準値と比べて、減少されたDPDの量を発現すれば、当該患者は、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物による治療から恩恵を受けそうである又は反応性である。1具体例では、患者がDPD欠損又は部分的欠損であるかどうかの判定は、癌患者から予め単離した癌細胞について行われる。
【0030】
第12の態様では、本発明は、DPD欠損又は部分的欠損である癌を有する対象者を治療する方法における、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物の使用を提供する。
【0031】
第13の態様では、本発明は、癌を有する対象者を治療する方法での使用のための医薬の製造における、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物の使用を提供するものであり、前記方法は、
(i)対象者の癌がDPD欠損又は部分的欠損であるかどうかを判定すること、及び
(ii)癌がDPD欠損又は部分的欠損であると同定された対象者に、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)を投与すること
を含んでなる。
【0032】
特定の具体例では、対象者から予め単離された癌細胞含有試料を、DPD活性、DPDタンパク質の存在、又はその代用物についてテストすることによって、対象者の癌がDPD欠損又は部分的欠損であるかどうかを決定する。ここで使用するように、「患者」及び「対象者」は同じ意味で使用される。
【0033】
例として、好適な代用物としては、mRNA、DPD分解生成物、又は血漿中におけるジデヒドロウラシル/ウラシルの比が含まれる。
【0034】
第14の態様では、本発明は、NUC-3373以外の薬剤によって癌を治療する際、手足症候群を発症する危険がある又は発症する(発症している)対象者の癌治療での使用のための5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を提供する。特別な具体例では、患者は、5FU又はカペシタビンによって治療される際、又は治療後に、手足症候群を発症する危険があるか又は発症する。更なる態様では、手足症候群に罹った対象者における癌治療での使用のための5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物が提供される。特別な具体例では、対象者は、NUC-3373以外の薬剤による治療後に手足症候群を発症している。特別な具体例では、「NUC-3373以外の薬剤」は、フルオロピリミジン(例えば、5FU)、カペシタビン、又はテガフールである。
【0035】
5FUにて治療された患者の30~60%は、皮膚の異常、例えば、手足症候群を発症することが知られている。このような患者は、一般的には、正常レベルのDPDを発現する。このような潜在的に弱められた副作用は、毒性の副生物、例えば、抗癌剤、例えば、5FU及びカペシタビン(5FUのプロドラッグ)で治療される際のα-フルオロ-β-アラニン(FBAL)及びジヒドロフルオロウラシル(dhFU)の増大によると思われる。FBAL及びdhFUは、治験用量でのNUC-3373の投与後では、非常に低いレベルで検出されるか又は検出されず、NUC-3373の投与が、FBAL及びdhFUと関連する副作用、例えば、手足症候群を生ずることは予測されない。これは、癌治療を受ける際、例えば、5FU又はカペシタビンにて治療される際に手足症候群を発症する(又はこの症候群を発症する恐れがある)患者は、NUC-3373による治療に切り替えることによって、利益が受けられることを意味する。
【0036】
1具体例では、本発明の第14の態様は、5FU又はカペシタビンによる治療後に手足症候群を発症した対象者における使用のための5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を提供する。
【0037】
第15の態様では、本発明は、癌を治療する方法を提供するものであり、該方法は、手足症候群を発症した癌対象者に、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物を投与することを含んでなる。特別な具体例では、患者は、5FU又はカペシタビンによる治療を受けたとの理由により手足症候群を発症している。特別な具体例では、患者の癌治療は、NUC-3373に切り替えられる。
【0038】
第16の態様では、本発明は、癌対象者を治療する方法における使用のための医薬の製造における5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物の使用を提供するものであり、前記方法は、
(i)癌対象者が手足症候群を有しているかどうかを判定すること、及び
(ii)手足症候群を発症した癌対象者に、薬学上有効な量の5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)を登用すること
を含んでなる。
【0039】
第17の態様では、本発明は、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物による治療に関して、癌対象者を選定する方法を提供するものであり、当該方法は、対象者が手足症候群を発症しているかどうかを判定し、対象者が手足症候群を発症していれば、当該対象者を、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)による治療に適するとして選定することを含んでなる。
【0040】
第12~第17の態様のいずれかによる使用のためのNUC-3373は、ここに記載する各種の態様又は具体例において、治療方法又は医学的利用のいずれかに従って使用される。
【0041】
第18の態様では、本発明は、活性な抗癌剤の細胞への送達が達成されたかどうかを判定する方法を提供するものであり、当該方法は、抗癌剤治療を受けた対象者からの末梢血単核球(PBMCs)又は癌細胞の試料を分析して、PBMCs又は癌細胞における細胞内デオキシウリジンモノホスフェート(dUMP)を測定することを含んでなり、PBMCs又は癌細胞における細胞内dUMPのレベルの増大は、細胞内への活性な抗癌剤の送達が達成されることを表示する。特別な具体例では、活性な薬剤はNUC-3373である。
【0042】
さらに、添付図面を参照して、本発明の具体例を、以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】血漿中のNUC-3373についてのCmax及びAUCを示す。
図2】細胞内FUDRモノホスフェートについてのCmax及びAUCを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
詳細な説明
本発明の第1~第3の態様は、NUC-3373が、5-フルオロウラシル(5FU;NUC-3373が誘導される「親」化合物である)に関するよりもかなり長い期間投与された後も、血行中に保持されるとの発明者らの驚くべき知見に基づくものである。さらに実施例において説明するように、発明者らは、NUC-3373が、5FUについての半減期がわずか8~14分であるのに対して、概ね9.4時間の血漿半減期を有するとの知見を得た。この差は、NUC-3373の治療上の有効レベルが、5FUの連続46~48時間の投与後よりも、この投与後、かなり長い期間、維持されることを意味する。結果として、NUC-3373による有効な抗癌剤治療は、5~10時間以下、例えば、3又は4時間、及び1又は2時間の短時間の投与期間を使用できる。これは、多くの癌の治療のための現在のケア基準である5FUによる現在の治療プロトコルとは、明らかな対照をなすものである。より短い半減期の5FUでは、治療上の活性を達成するために、薬剤が、患者に対して長期間で最適に投与されることを必要とする。46~48時間での5FUの持続注入による治療は普通であり、5FUの短い半減期(8~14分)を強調するものである。この注入は、しばしば、5FUの大量投与(短期注入)から始められる。持続注入とは、通常、長い期間で、液体を血管に投与することをいう。
【0045】
NUC-3373の治療上有効なレベルは、かなり短い期間の注入を使用しても、対象者において達成され、本発明の医学的利用及び治療方法の能力により、多くの顕著な利点が提供されることが評価されるであろう。本発明の医学的利用及び治療方法の重要な1つの利益は、レシピエントが受けた低減された破壊及び侵襲性にある。従来の治療が必要とする46~48時間の範囲の長い注入期間は、レシピエントが経験する生活の質を低減させる。
【0046】
投与の期間が低減されることによって、病院において過ごす時間が低減され、従って、レシピエントが体験する生活の質が増大することが評価されるであろう。また、投与期間が低減されることにより、医療費が低減される。
【0047】
本発明の第4、第5、及び第6の態様によって提供される抗癌治療の有効性を評価する方法は、NUC-3373での治療により、投与された対象者の細胞におけるdTMP及びTSレベル及び/又は活性が枯渇され、及びdUMPがdTMPに転化されないため、NUC-3373による治療により、細胞内dUMPの蓄積が増大されるとの発明者らの驚くべき知見に起因するものである。これは新規の知見であり、NUC-3373が、その治療効果を達成する方法の指示を提供するだけでなく、治療の有効性をモニターする方法を提供する。細胞内dTMP又はTSレベル又はPBMCsにおける活性の枯渇は、5FUを受けた患者では観察されない。再度、これは、その親化合物と比べて、NUC-3373の相違点及び増大された有効性の表示を提供する。TSは、デオキシウリジンモノホスフェート(dUMP)のデオキシチミジンモノホスフェート(dTMP)への転化に対して触媒作用を発揮する。その結果、dTMPはリン酸化されて、DNA複製及び修復用のバイタル前駆体であるdTTPを生成する(Wilsonら, Nat Rev Clin Oncol. 11(5):282-98, 2014)。それ故、細胞内TSレベルの低減又はTSの阻害は、細胞におけるdUMPのレベルの増大を生じ、DNA損傷を生ずる。
【0048】
このNUC-3373の新規の作用モードの指示は、本発明の第7の態様の医学的利用を強調する。NUC-3373での治療が、癌細胞におけるdUMTの細胞内蓄積を増大させ、このようにして、細胞死を生じさせるとのこの新規の作用モードの認識は、新規の臨床応用におけるこの化合物の使用を可能にする。本発明の第7の態様の具体例では、NUC-3373は、細胞におけるdUMPのレベルを増大させること(DNA損傷を生ずる)によって、癌細胞を死滅させるように作用する。DNA損傷は、ついで、細胞死を引き起こし、これにより、有効な癌治療をもたらす。
【0049】
本発明の第8、第9、第12、及び第13の態様の医学的利用及び治療方法、及び本発明の第10及び第11の態様の患者の選択方法及び判定方法は、いずれも、DPD欠損又は部分的欠損である癌に関する。これらの態様は、5FU投与の毒性の副生物であるα-フルオロ-β-アラニン(FBAL)及びジヒドロフルオロウラシル(dhFU)が、治験用量でのNUC-3373の投与後に、非常に低いレベルでのみ検出されるか、又は検出されないとの発明者らの驚くべき知見に基づくものである。このような副生物は5FUによって生成され、5FUのプロドラッグであるカペシタビンが、臨床的に適切な量で投与される際にも生成される(手足症候群のような副作用を導く)。
【0050】
本発明の第14~第17の態様の医学的利用及び治療方法は、いずれも、化学療法剤、例えば、5FU又はカペシタビンが投与される際、毒性の代謝物(例えば、dhFU、FBAL;その存在は手足症候群に関連する)の生成のため、手足症候群のような副作用を発症した癌患者に関する。再度、これらの態様は、5FUの投与による毒性に副生物であるα-フルオロ-β-アラニン(FBAL)及びジヒドロフルオロウラシル(dhFU)が、治験用量でのNUC-3373の投与後に、非常に低いレベルでのみ検出されるか、又は検出されないとの発明者らの驚くべき知見に基づくものである。
【0051】
DPDはピリミジンの分解に関与するため、DPD欠損又は部分的欠損である対象者は、5FU又はカペシタビンを代謝することはできない。
【0052】
5FU又はカペシタビンにて治療されたDPD欠損を持つ患者は、過酷で(グレードIII/IV)、潜在的に致命的な好中球減少症、粘膜炎、及び下痢を発症する顕著に増大したリスクがある。母集団の5%はDPD欠損であり、さらに、母集団の3~5%はDPD部分的欠損である。それ故、NUC-3373にて治療された患者におけるこれら副生物(例えば、FBAL及びdhFU)の量の低減は、DPD欠損又は部分的欠損である患者がNUC-3373によっては治療されるが、5FU又はカペシタビンによっては治療されないことを示唆している。従って、NUC-3373は、DPD欠損又は部分的欠損である患者にとって、5FU又はカペシタビンを上回る、より低いリスクの治療の選択肢を提供する。
【0053】
DPDを欠損していない、5FU又はカペシタビンにて治療された患者は、毒性の副生物であるFBAL及びdhFUの生成により、しばしば、手足症候群を発症する。これらの副生物は、NUC-3373にて治療された患者では、ほとんど検出されないため、あるとしても、NUC-3373にて治療された患者のわずかが手足症候群に罹っているか、又は、これらの副生物によって、他の副作用が媒介されるのみである。実際、実施例に開示した臨床テストでは、これまで、治療した36人の患者の内、だれも手足症候群を発症していない。手足症候群は、5FUにて治療した患者の40~60%において発症するため、NUC-3373の投与後に、これら副生物の臨床的に有意なレベルが生ずるとすると、いくらかの患者は手足症候群を発症することが予測される。これは、NUC-3373が、手足症候群、又は他のFBAL又はdhFU-媒介副作用を発症した又は発症し易い癌患者にとって、好適な治療の選択肢であることを意味する。例えば、手足症候群を発症する5FUによる治療中の患者は、5FUからNUC-3373治療に切り替えられ;同様に、手足症候群を発症することが予想される患者は、特別な化学療法剤(例えば、5FU又はカペシタビン)にて治療されるのであれば、手足症候群の発症を生じやすい薬剤よりもむしろ、NUC-3373にて治療されるべきである。手足症候群を、より発症し易い患者は、5FUのような化学療法剤にて治療される際、手足症候群を発症する易罹患性を検出する1以上の好適な代用マーカー(例えば、バイオマーカー)の検出に基づいて同定される。
【0054】
本発明の各種の態様又は具体例の更なる詳細については、後述する。本発明の態様又は具体例のいずれかに関して記載する技術的考察は、他に要求されない限り、ここに記載する他の態様及び具体例に適用可能であるとみなされるべきである。
【0055】
化合物
5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(NUC-3373)は、ホスフェートジアステレオ異性体の混合物であるか、実質的にジアステレオ異性的に純粋な形の(S)-エピマーとして、又は実質的にジアステレオ異性的に純粋な形の(R)-エピマーとして存在していてもよい。
【0056】
NUC-3373は、塩の形でなくてもよい。好ましくは、NUC-3373は遊離塩基の形である。
【0057】
「実質的にジアステレオ異性的に純粋」とは、本発明の目的に関して、約90%以上のジアステレオ異性体純度として定義される(本明細書では、「約」は±5%を意味する)。実質的にジアステレオ異性的に純粋な形として存在する場合、NUC-3373は、95%、98%、99%、又は99.5%のジアステレオ異性純度を有する。
【0058】
治療される癌
癌は、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、他の尿路上皮癌、胃腸癌(消化器の癌としても知られている)、肝臓癌、肺癌、胆道癌、前立腺癌、胆管細胞癌、腎癌、神経内分泌癌、肉腫、リンパ腫、白血病、子宮頸癌、胸腺癌、原発不明癌、中皮腫、副腎癌、子宮癌、卵管癌、腹膜癌、子宮内膜癌、精巣癌、頭頚部癌、中枢神経系の癌、基底細胞癌、ボーエン病、他の皮膚癌(例えば、悪性メラノーマ、メルケル細胞腫瘍、稀な付属器腫瘍)、角結膜扁平上皮腫瘍、及び胚細胞性腫瘍からなる群から選ばれる癌である。
【0059】
癌は、白血病、リンパ腫、前立腺癌、肺癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、頭頸部癌、卵巣癌、及び消化器癌からなる群から選ばれてもよい。消化器癌は、食道癌、胃癌、腸癌、小腸癌、結腸癌、虫垂粘膜性腫瘍、胚細胞カルチノイド、肝臓癌、胆道癌、胆嚢癌、肛門癌、及び直腸癌からなる群から選ばれてもよい。
【0060】
癌は再発性であってもよい。癌は転移性であってもよい。癌は、以前に治療を受けていないものでもよい。癌は、以前に治療を受けているが、以前の治療に対しては無応答性であることが証明されている不応性癌であってもよい。或いは、癌患者は、以前の療法には不耐性であってもよく、例えば、投与中の薬剤による更なる治療に対して患者を不耐性にする副作用を発症していてもよい。この例は、5FU及びカペシタビン又はテガフールのような特定の抗癌剤療法を受ける際の手足症候群の発症である。
【0061】
好適には、本発明の医学的利用及び治療方法による治療は、第1ラインの癌療法(すなわち、疾患の診断後に提供される第1の癌療法)として提供される。或いは、第2又はそれ以上のラインの癌治療として使用される。第3ラインの又は更なる癌治療として使用されてもよい。
【0062】
治療レジメン
本発明の第1、第2及び第3の態様は、いずれも、10時間以下の期間でのNUC-337の投与を必要とする治療に関する。熟練した読者は、他に要求される場合を除き、ここに記載する本発明の医学的利用及び治療方法(このように、本発明の第7、第8、第9、第12、及び第13の態様のものを含む)は、いずれも、10時間以下の期間でのNUC-3373の投与を利用できることを認識するであろう
【0063】
好適には、NUC-3373は、癌治療における使用のためのものであり、前記治療は、9時間以下、8時間以下、7時間以下、6時間以下の期間でのNUC-3373の投与による、又は5時間以下でのNUC-3373の投与によるものである。
【0064】
NUC-3373は、癌治療における使用のためのものであり、前記治療は、4.75時間以下、4.5時間以下、4時間以下、3.75時間以下、3.5時間以下、3.25時間以下、3時間以下、2.75時間以下、2.5時間以下、2.25時間以下、2時間以下、1.75時間以下、1.5時間以下、1.25時間以下、1時間以下、0.75時間以下、0.5時間以下の期間でのNUC-3373の投与による、又は0.25時間以下の期間での投与によるものである。
【0065】
好適には、NUC-3373は、1~6時間、1~5時間、1~4時間、1~3時間、2~4時間、3~6時間、3~5時間、又は1~2時間での投与のためのものである。
【0066】
同様に、本発明の各種の態様による治療方法では、NUC-3373は、好適には、9時間以下、8時間以下、7時間以下、6時間以下、又は5時間以下の期間で投与される。
【0067】
例えば、NUC-3373は、癌治療のため、4.75時間以下、4.5時間以下、4時間以下、3.75時間以下、3.5時間以下、3.25時間以下、3時間以下、2.75時間以下、2.5時間以下、2.25時間以下、2時間以下、1.75時間以下、1.5時間以下、1.25時間以下、1時間以下、0.75時間以下、0.5時間以下の期間で投与される。
【0068】
NUC-3373の投与
好ましくは、投与は注入の手段によるものであるが、ボーラス投与によって可能である(又はボーラス投与を含む)。
【0069】
NUC-3373は、非経口的、例えば、静脈内、皮下、又は筋肉内で投与される。好ましくは、NUC-3373は、例えば、中心又は末梢静脈を介して、静脈内投与される。
【0070】
NUC-3373は、任意に、界面活性剤とともに、極性有機溶媒、例えば、DMAを含有してなる水性製剤として非経口投与される。非経口(例えば、静脈内)投与の場合、製剤は、好ましくは、極性の非プロトン性有機溶媒、例えば、DMAを含んでなる。
【0071】
製剤は、投与の少し前、すなわち、投与前48時間以下(例えば、24、12、又は2時間以下)の時点で、所定の量で希釈されるものでもよい、
【0072】
製剤は、1以上の薬学上許容される可溶化剤、例えば、薬学上許容される非イオン性の可溶化剤を含んでいてもよい。可溶化剤は、界面活性剤又は乳化剤とも呼ばれる。例示的な可溶化剤としては、ポリエトキシ化脂肪酸及び脂肪酸エステル、及びその混合物が含まれる。好適な可溶化剤は、ポリエトキシ化ひまし油(例えば、商標名Kolliphor(商標登録)ELPで販売されているもの)である又は含んでなるものか;又はポリエトキシ化ヒドロキシステアリン酸(例えば、商標名Solutol(登録商標)又はKolliphor(登録商標)HS15で販売されているもの)である又は含んでなるものか;又はポリエトキシ化(例えば、ポリオキシエチレン(20))ソルビタンモノオレエート(例えば、商標名Tween(登録商標)80で販売されているもの)である又は含んでなるものである。
【0073】
特定の好ましい具体例では、製剤は、1以上の薬学上許容される可溶化剤を含んでなる。
【0074】
製剤は水性ビヒクルを含んでいてもよい。製剤は投与されるように用意されていてもよく、この場合、製剤は、一般的には、水性ビヒクルを含んでなる。
【0075】
製剤は、非経口投与用、例えば、静脈内、皮下、又は筋肉内投与用である。好ましくは、製剤は静脈内投与用である。投与は、中心静脈を経由するか、又は末梢静脈を経由してもよい。
【0076】
製剤は、国際公開第2017/109491号に記載された製剤でもよい。
【0077】
NUC-3373は、好ましくは、非経口投与用として製剤されるが、本発明の特定の具体例では、経口投与又は局所投与されてもよい。
【0078】
本発明の上記利用及び治療方法について、投与される用量は、もちろん、投与の正確なモード、所望の治療、及び指示された疾患に応じて変動するであろう。本発明の化合物の用量レベル、投与回数、及び治療期間は、製剤及び臨床上の徴候、年齢、及び患者の合併症の病状に応じて異なることが予測される。本発明の化合物の治療目的用の用量サイズは、当然、公知の医学における原則に従って、疾患の性質及び重篤性、動物又は患者の年齢及び性別、及び投与ルートによって変動するであろう。
【0079】
NUC-3373は、100~4000 mg/m、例えば、100~3000 mg/mの範囲の用量で投与される。NUC-3373は、500~2000 mg/mの範囲の用量で投与される。NUC-3373は、2000~4000 mg/mの範囲の用量で投与される。
【0080】
NUC-3373は、28日サイクルのday1において投与される。28日サイクルのday1及び、8、15及び22において投与されてもよい。28日サイクルのday1及び15において投与されてもよい。
【0081】
「サイクル」は、一般的には、休止期間(治療しない期間)が設けられている治療のコース(治療サイクル)であると認識される。
【0082】
NUC-3373は、サイクルの4、5、6、7又はそれ以上のシリーズの一部として投与される。一連のサイクルは、代表的には、休止期間(治療の休み期間)が設定されている、いくつかの連続サイクルをいう。
【0083】
抗癌剤療法の有効性を評価する方法
本発明の第4、第5、及び第6の態様は、抗癌剤療法の有効性を評価する方法を提供する。本発明の第3、第4、及び第5の態様の方法は、NUC-3373を使用する抗癌剤治療を受ける対象者において、抗癌剤療法の有効性を評価する際の特別な利用である。例えば、本発明の第3、第4、及び第5の態様の方法は、本発明の医学的利用(例えば、本発明の第1、第3、第7、第8、又は第13の態様の医学的利用)において使用されるNUC-3373による治療を受ける、又は本発明による治療方法(例えば、本発明の第2、第9、又は第12の方法)においてNUC-3373を受ける対象者について利用される。
【0084】
好適には、PBMCs又は癌細胞における細胞内dTMP、dUMP、又はTSのレベルを、好適なコントロール値と比較する。単なる例として挙げれば、好適なコントロール値は、抗癌剤療法を受ける前の同一対象者の細胞;癌療法を受けていない個人からの細胞;及びNUC-3373以外の薬剤により癌療法を受けた個人からの細胞から選ばれる細胞内dTMP、dUMP、又はTSのレベルである。コントロール細胞は、PBMCs又は対応する癌細胞である。コントロールPBMCs又は癌細胞は、対象者のPBMCs又は癌細胞と同様にして集められる。好適には、コントロール値は、履歴的平均から生ずるものであってもい。好適には、コントロール値は、治療開始前の同一患者からの細胞をテストすることによって得られる(ベースラインレベル)。
【0085】
上述のように、好適なコントロール値(例えば、ベースライン処置前レベル)と比較して、PBMCs又は癌細胞における細胞内dTMP又はTSのレベルの低下は、効果的な治療を表示する。これに対して、PBMCs又は癌細胞における細胞内dUMPのレベルの増大は効果的な治療を表示する。好適には、細胞内dTMP又はTSのレベルの低下は、少なくとも25%の低下である。実際、細胞内dTMPのレベルの低下は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の低下である。
【0086】
好適な具体例では、細胞内dTMP又はTSのレベルの低下は、実質的に完全な細胞内dTMP又はTSのレベルの低下である。開示の目的については、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の細胞内dTMP又はTSのレベルの低下が、実質的に完全な細胞内dTMP又はTSのレベルの低下とみなされる。
【0087】
NUC-3373は、細胞内TSを阻害することによって機能する。好適な具体例では、細胞内TSレベルの阻害は、細胞内TS機能の実質的な阻害である。この開示の目的については、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の細胞内TSの阻害が、細胞内TSの実質的に完全な阻害とみなされる。
【0088】
有効な癌治療を表示する細胞内TSの増大は、少なくとも25%の増大である。好適には、増大は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の増大である。
【0089】
有効な癌治療を表示する細胞内dUMPにおける増大は、少なくとも25%の増大である。好適には、増大は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の増大である。実際、細胞内dUMPにおける好適な増大は、100%又はそれ以上の増大である。
【0090】
細胞内dTMU、TS、又はdUMPのレベルは、対象者が抗癌剤治療を開始した後、概ね1~6時間の範囲の時点で測定される。好適には、細胞内dTMU、TS、又はdUMPのレベルは、抗癌剤の対象者への投与後、概ね1~6時間の範囲の時点で測定される。
【0091】
本発明の目的について、バイオマーカーの測定についての時点に関連する場合の用語「概ね」は、±1時間を意味すると認識される。好適には、細胞内dUMP又はTSのレベルは、治療サイクルの間のいずれかの時点で測定される。適切な時点は、アッセイを行う時点よりもむしろサンプリング時であると認識される。例えば、試料が、6時間後にサンプリングされ、凍結、又はバイオマーカーの量がほぼ同一のレベルに維持されることを保証する他の方法で処理され、ついで、試料が12時間後にアッセイされる場合には、12時間後のアッセイ時点よりもむしろ、6時間後のサンプリング時点である。
【0092】
細胞内dTMU、TS、又はdUMPのレベルは、当業者によく知られた各種の好適なアッセイ又は方法によって測定される。dTMPの測定用の好適なアッセイとしては、後述の実施例において開示するように、超高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(UPLC-MS)、又は高速液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC/MS)が含まれる。細胞内dUMPレベルの評価のためには、同じ技術を使用できる。
【0093】
TSレベルを測定するための好適な方法又はアッセイとしては、ウエスタンブロット、免疫アッセイ、アミノ酸アッセイ、又はSDS-PAGEが含まれる。ウエスタンブロットによるTSレベルの検出を、後述の実施例において開示する。
【0094】
例えば、dUMPのレベルを測定する他の好適な方法も、当業者には公知であろう。
【0095】
対象者が、細胞内dTMP又はTMにおける最小の低減を示すか又は低減を示さない場合、又は細胞内dUMPにおける最小の増大を示すか、又は増大を示さない場合、治療に係る内科医は、対象者が受けるNUC-3373の用量を増大又は終了できる。それ故、dTMP、TM、又はdUMPのレベルは、個々の患者について適切な治療を知らせるために使用されることが認識されるであろう。
【0096】
ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)欠損
本発明の第8~13の態様は、いずれも、対象者がDPDにおいて欠損又は部分的に欠損である医学的利用及び治療方法に関する。
【0097】
DPD欠損は、DPD(ウラシル及びチミンの代謝に関与する酵素)の活性が存在しない又は著しく低減されている常染色体劣性型代謝疾患である。活性における低下は、DPD発現の減少、又は低減された機能を持つDPDの発現から生ずる。DPD欠損は、完全欠損又は部分欠損として示される。
【0098】
細胞、例えば、肝細胞、PBMC又は癌細胞が、DPD欠損であるかどうかを判定する標準的な方法は、よく知られており、当業者であれば、適切なテストを行う適切な知識を有するであろう。このようなテストの例としては、後述するものが含まれる。
【0099】
DPD欠損の対象者におけるDPDの酵素活性は、肝細胞、PBMCs、又は癌細胞から抽出されたDPDタンパク質をアッセイすることによって測定される。DPDの活性は、DPDタンパク質の代用物、例えば、肝細胞、PBMCs、又は癌細胞から抽出されたRNAをアッセイすることによっても測定される。ついで、DPD mRNAのコピー数の測定を行うことができる。DPD遺伝子の増幅の有無、DPDを表示するDPDの変異の有無、又は対象者から抽出された好適な細胞(例えば、肝細胞、PBMCs、又は癌細胞)におけるDPDの活性を参照して、DPDをコードする核酸もアッセイできる。
【0100】
酵素DPDは、ヒトにおいて、DPYD遺伝子によってコードされる。DPD欠損のヒトにおいて同定されたDPYD遺伝子50以上の変異が存在することが知られている(Diagnostic Molecular Pathology: 応用分子検査へのガイド, 2017, William B. Coleman及びGregory J. Tsongalis編)。
【0101】
単なる例として挙げれば、対象者は、エクソン14欠失を伴うイントロン14における
IVS14+1G>A変異(DPYD*2Aとして知られている)、エクソン6における496A>G;エクソン22における2846A>T;及びエクソン13におけるT1679G(DPYD*13)から選ばれる遺伝子変異を有する。染色体1p21.3上のDPYD遺伝子における遺伝子変異体は、不十分なDPD活性を生ずることも示されている(Diagnostic Molecular Pathology: 応用分子検査へのガイド, 2017, William B. Coleman及びGregory J. Tsongalis編)。
【0102】
本発明の第5、第6、第7、第8、第9、又は第10の態様の具体例では、対象者は、DPD欠損又は部分的欠損を生ずるDPYD遺伝子における変異を有する。
【0103】
本発明の第5、第6、第7、第8、第9、又は第10の態様の他の具体例では、DPDの欠損又は部分的欠損を生ずる対象者における遺伝子変異は、エクソン14欠失を伴うイントロン14におけるIVS14+1G>A変異(DPYD*2Aとして知られている)、エクソン6における496A>G;エクソン22における2846A>T;及びエクソン13におけるT1679G(DPYD*13)から選ばれる。本発明の第5、第6、第7、第8、第9、又は第10の態様の他の具体例では、対象者は、DPDの欠損又は部分的欠損を生ずるDPYD遺伝子の染色体1p21.3における変異を有する。
【0104】
IVS14+1G>A DPYD変異体(DPYD*2A)のための検査法が利用可能である(Terrazzino, S.ら, Pharmacogenomics. 2013 Aug;14(11):1255-72)。
【0105】
特に、対象者が重篤な好中球減少性である場合には、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)を使用するハイスループト遺伝子解析を使用できる。
【0106】
対象者は、このような欠損の臨床的及び生理学的特徴を示す場合には、DPD欠損、又はDPD部分的欠損を有するとして特徴付けられる。
【0107】
単なる例として挙げれば、対象者は、以前に、5FU又はカペシタビンについて不耐性を示したものでもよい。このような不耐性は、DPD欠損又は部分的欠損の対象者の公知の臨床的特徴である。このように、本発明の第5、第6、第7、第8、第9、又は第10の態様の好適な具体例では、対象者は、以前に、5FU又はカペシタビンについて不耐性を示していた。
【0108】
或いは、又は加えて、対象者は、5FU又はカペシタビンについて不耐性の家族歴を有していてもよい。このように、好適な具体例では、本発明の第5、第6、第7、第8、第9、又は第10の態様によるNUC-3373の使用について選択される患者は、5FU又はカペシタビンについて不耐性の家族歴を有する。
【0109】
DPD欠損又は部分的欠損を有する対象者の公知の生理学的特徴は、血漿におけるジヒドロウラシル:ウラシルの比における変化である。この比における低減は、DPD欠損又は部分的欠損を表示する。このように、好適な具体例では、血漿試料を分析して、ジヒドロウラシル:ウラシルの比を測定し、この比を好適な基準値と比較することによって、対象者がDPD欠損又は部分的欠損を有すると同定する。
【0110】
特別な具体例では、予め患者から単離した癌細胞又はPBMCを含有する試料を、DPDタンパク質の存在、DPDタンパク質の活性、又はその代用物(例えば、mRNA)についてテストすることによって、患者の癌がDPD欠損又は部分的欠損であるかを判定できる。特別な具体例では、癌細胞又はPBMCを含有する試料を、DPD欠損又は部分的欠損を表示する遺伝子変異の存在についてテストすることによって、患者の癌がDPD欠損又は部分的欠損であるかを判定できる。
【0111】
本発明の第1及び第2の態様の具体例では、DPD欠損又は部分的欠損である対象者に、10時間以下の時間で、NUC-3373を投与できる。対象者は、DPD欠損又は部分的欠損であるとして同定され、これに基づいて治療について選択されたものである。DPD欠損又は部分的欠損は、ここに開示した方法のいずれかによって同定されたものである。
【0112】
本発明の第1及び第2の態様の具体例では、以前に、5FU又はカペシタビンに対して不耐性を示した対象者に、10時間以下の時間で、NUC-3373を投与できる。好適には、対象者は、5FU又はカペシタビンについて不耐性の家族歴を有する。対象者は、5FU又はカペシタビンについて不耐性に基づいて、治療について選択される。
【0113】
ここに示す好適な検査法のいずれかによってアッセイする際、DPDの発現又は機能が、少なくとも10%低下された(好適な基準値と比較して)と判定される場合に、対象者を、DPD欠損又は部分的欠損を有すると判定する。好適には、DPD欠損又は部分的欠損の対象者は、基準値と比較して、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%のDPDの発現又は機能の低減を有する。好適には、DPD欠損の対象者は、ここに示す好適な検査法のいずれかによってアッセイされる際、実質的に、DPDの発現又は機能を持たない。
【0114】
手足症候群
本発明の第14~第17の態様は、いずれも、医学的利用及び治療方法に関するものであり、ここで、癌の患者/対象者は、手足症候群を有するか、又は5FU又はカペシタビンのような化学療法剤にて治療された際に手足症候群を発症し易いものである。手足症候群は、5FU又は5FU関連フルオロピリミジンにて治療された患者の30~60%において発症する(Krugerら, Acta Oncologica 1-8, 2015; Chiaraら, Eur J Cancer. 33: 967-969, 1997)。手足症候群は、5FUの毒性代謝物であるdhFU及びFBALの蓄積によって生ずる。手足症候群は、潜在的に用量を制限する皮膚毒性である。手足症候群は、手足の痛み、疼き、乾燥、紅斑、スケーリング、腫脹、及び小胞形成の程度の変動とともに、手袋-靴下型分布の感覚異常によって特徴付けられる。化学療法を受けた患者における手足の霜焼け症状は、通常、H&F症候群と診断するに十分である。
【0115】
1具体例では、手足症候群を有する癌患者は、選択され、NUC-3373により治療される。1具体例では、手足症候群を発症する5FU又はカペシタビンにて治療中の癌患者は、NUC-3373によって治療される;一般的には、これは、患者の治療を、5FU又はカペシタビンからNUC-3373に切り替えることを意味するが、5FUに加えて、患者にNUC-3373を投与する併用治療も含まれる。
【0116】
患者に手足症候群を発症させる薬剤(例えば、5FU様の治療剤)からNUC-3373へ治療を切り替えることを待つよりもむしろ、5FU又は手足症候群と関連することが知られている他の化学療法剤が投与される際、いずれかの特別な患者が手足症候群を発症し易いかどうかを予測するために、好適な遺伝子解析(例えば、DPD遺伝学)を使用すべきである。特別な具体例では、患者は、身体診察(例えば、化学療法を受けた患者における手足の霜焼け症状)に基づいて、手足症候群を有するとして同定される。
【0117】
1具体例では、NUC-3373への治療の切り替え後に、手足症候群が消失する。特別な具体例では、症候群が完全に消失する。
【0118】
試料
本発明の第4、第5、第6、第10、及び第11の態様の方法は、「試料」、例えば、PBMCs又は癌細胞を使用することが認識されるであろう。ここで使用するように、用語「試料」は、一般的に、癌治療を必要とする又は治療中の対象者から得た又は由来の生体試料をいう。
【0119】
いくつかの具体例では、生体試料は、生体組織又は生体液からなる又は含んでなる。前記したように、好適な試料は、癌細胞、肝細胞、及び/又はPBMCsを含んでなることができる。いくつかの具体例では、生体試料は、血液;血液細胞;血漿;骨髄液;組織又は細針生検サンプル;細胞含有体液;浮動性核酸;無細胞血中腫瘍DNA;痰;唾液;尿;脳脊髄液、腹水;糞便;リンパ液;婦人科系体液;皮膚スワブ;膣スワブ;口腔スワブ;鼻スワブ;洗浄液又は潅流液、例えば、乳管洗浄液又は気管支肺細胞洗浄液;吸引液;スクラッピング:分泌物;及び/又はそれらからの細胞であるか、又は含んでなるものである。
【0120】
いくつかの具体例では、生体試料は、個人からの細胞であるか又は細胞を含んでなる。いくつかの具体例では、得られた細胞は、対象者からの細胞であるか又は細胞を含む。いくつかの具体例では、試料は、対象の源から直接得られた「一次試料」である。例えば、
いくつかの具体例では、一次生体試料は、生検(例えば、穿刺吸引又は組織生検)、手術、体液(例えば、血液、リンパ液、腹水、糞便)の収集からなる群から選ばれる方法によって得られる。
【0121】
いくつかの具体例では、明細書から明らかなように、用語「試料」は、一次試料を加工することによって(例えば、1以上の成分を除去することによって及び/又は1以上の試薬を添加することによって)得られる調製物をいう。例えば、半透膜を使用する濾過である。このような「加工した試料」は、例えば、試料から抽出された又は増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)又はmPNAの逆転写、特定の成分の単離及び/又は単離のような技術に、一次試料を供するよって得られた核酸又はタンパク質を含んでなっていてもよい。
【0122】
好適な試料は、その被検物質、例えば、DPDタンパク質(又はその代用物)、dTMP、dUMP、TS、dhFU、又はFBALを含有する能力に基づいて選択される。
【0123】
いくつかの具体例では、試料は、DPD欠損癌を有する、又は有することが疑われる対象者から得られた液体、固体、又は混合の生体試料である。好適な組織試料としては、癌、周辺組織、及び/又は転移が認められる又は疑われる遠く離れた部位の組織の生検又は外科的切除によって得られたものを含む癌組織試料が含まれる。
【0124】
本発明の診断/判定方法は、個人又は患者から予め採取された試料を使用して着手される。このような試料は、凍結又はホルマリン-パラフィン又は他の媒体での固定又は埋設によって保存される。或いは、新鮮な癌細胞含有試料を得て、直接使用するか、又は凍結し、その後、テストに供される。
【0125】
上記のように、DPDタンパク質の存在は、様々な技術のいずれかを使用して、細胞(細胞核を含む)において検出される。特別な具体例では、DPDタンパク質の存在は、免疫組織化学的検査、免疫蛍光検査、ウエスタンブロット、キャピラリー電気泳動、フローサイトメトリー、又はELISAを使用して検出される。さらに、これらの方法は、DPDタンパク質に対する抗体又はデジタルバーコード化抗体を使用する際に利用される。デジタルバーコード化抗体は、DNAが付着されている抗体である。ついで、多数のバーコード化抗体を、DNAシーケンシング(例えば、Agastiら, J Am Chem Soc. 134(45): 18499-18502, 2012)によって、平行して及び連続して分析できる。
【0126】
一般に、DPDのレベルは、様々な方法のいずれかを使用してアッセイされる。多くの具体例では、DPD発現のレベルは、腫瘍から得られた試料中のDPD遺伝子生成物のレベルを測定することによってアッセイされる。DPDタンパク質のレベルは、DPDタンパク質の代用物、例えば、DPDをコードするmRNAを使用しても測定される。任意に、mRNAは、直接検出されるか、又はcDNA(任意に、増幅される(例えば、逆転写酵素によって))に転換した後に測定される。
【0127】
当業者であれば、容易に、好適な基準値(適切なターゲット分子(例えば、DPD)の量が比較される)を決定できるであろう。単なる例として挙げれば、癌性組織におけるターゲット分子の発現は、非癌性組織、例えば、隣接する非癌性組織における同じ分子の発現と比較される。発現は、タンパク質レベルについて、例えば、免疫組織化学的検査により、又はDNAレベルについて、例えば、蛍光インサイトハイブリダイゼーション法により、又はRNAレベルについて、例えば、定量的リアルタイムPCRによりアッセイされる。
【0128】
本発明の化合物、投与製剤
本明細書を通して、用語「S-エピマー」又は「S-ジアステレオ異性体」は、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-ホスフェートをいう。同様に、本明細書を通して、用語「R-エピマー」又は「R-ジアステレオ異性体」は、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-O-[1-ナフチル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)-ホスフェートをいう。
【0129】
本発明の化合物は、薬学上許容される塩の形で得られ、貯蔵され、及び/又は投与される。好適な薬学上許容される塩としては、薬学上許容される無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、及び臭化水素酸の塩、又は薬学上許容される有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファミン酸、アスパラギン酸、グルタル酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、及び吉草酸の塩が含まれるが、これらに限定されない。好適な塩基性塩は、無毒性の塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛の塩が含まれる。酸及び塩基のヘミ塩、例えば、ヘミスルフェート、ヘミオキサレート、及びヘミカルシウム塩も形成される。特定に具体例(s-エピマーに適応するもの)では、化合物は、HCl塩又はヘミオキサレート塩の形である。
【0130】
本発明の化合物は、単結晶型で又は結晶型の混合物として存在でき、或は、無定形である。このように、医学的利用を意図する本発明の化合物は、結晶性又は無定形生成物として投与される。これらは、例えば、沈殿、結晶化、凍結乾燥、又はスプレー乾燥、又は蒸発乾燥のような方法によって、固体プラグ、粉末、又はフィルムとして得られる。この目的のために、マイクロ波又は無線周波数乾燥を使用できる。
【0131】
本発明の化合物、又はその薬学上許容される塩は、それら単独で使用されるが、一般に、薬学上許容されるアジュバント、希釈剤、又はキャリヤーとともに、発明の化合物、又はその薬学上許容される塩を含んでなる医薬組成物の形で投与される。好適な医薬製剤の選択及び調製についての一般的な方法は、例えば、「調剤学-剤形デザインの科学」, M. E. Aulton, Churchill Livingstone, 1988に記載されている。
【0132】
本発明の化合物の投与のモードに応じて、本発明の化合物を投与するために使用される医薬組成物は、好ましくは、本発明の化合物0.05~99質量%、より好ましくは、本発明の化合物0.05~80質量%、さらに好ましくは、本発明の化合物0.10~70質量%、さらにより好ましくは、本発明の化合物0.10~50質量%を含んでなる(質量%はいずれも、組成物の総質量に基づく)。
【0133】
経口投与については、本発明の化合物を、アジュバント又はキャリヤー、例えば、乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール;デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、又はアミロペクチン;セルロース誘導体;結合剤、例えば、ゼラチン、又はポリビニルピロリドン;及び/又は滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ワックス、パラフィン等と混合し、ついで、錠剤に圧縮する。コーティング錠が求められる場合には、上記のように調製されたコアを、濃縮砂糖溶液(例えば、アラビアゴム、ゼラチン、タルカム、及び二酸化チタンを含有できる)にて被覆する。或いは、錠剤を、易揮発性の有機溶媒に溶解した好適なポリマーにて被覆することもできる。
【0134】
軟質ゼラチンカプセルの調製については、本発明の化合物を、例えば、植物油、又はポリエチレングリコールと混合する。一方、硬質ゼラチンカプセルは、錠剤用の上記添加剤のいずれかを使用して、化合物の粒状物を含有できる。また、本発明の化合物の液体又は半固体製剤を、硬質ゼラチンカプセルに充填してもよい。
【0135】
経口投与用の液体調製物は、シロップ又は懸濁液、例えば、本発明の化合物を含有し、残余が砂糖及びエタノール、水、グリセリン及びプロピレングリコールの混合物である溶液の形である。任意に、このような液体調製物は、着色料、香料、甘味料(例えば、サッカリン)、保存料及び/又は増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース、又は当業者に知られている他の添加剤を含有できる。
【0136】
非経口(例えば、静脈内)投与については、化合物を、殺菌した水性又は油性溶液として投与できる。本発明の化合物は非常に親油性である。それ故、水性製剤は、一般的には、薬学上許容される極性の有機溶媒も含有するであろう。
【0137】
本発明は、1以上の原子が、同じ原子番号を有するが、原子質量又は質量数が、天然に通常見出される主な同位体の原子質量又は質量数とは異なる原子によって置換された、いずれも薬学上許容される同位体標識した形のNUC-3373も含む。
【0138】
本発明の化合物に含まれる好適な同位体の例としては、水素の同位体、例えば、H及びH、炭素の同位体、例えば、11C、13C及び14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I及び125I、窒素の同位体、例えば、13N及び15N、酸素の同位体、例えば、15O、17O及び18O、リンの同位体、例えば、32P、及びイオウの同位体、例えば、35Sが含まれる。
【0139】
いくつかの同位体標識化合物、例えば、放射性同位体を含むものは、薬剤及び/又は基質の組織分布の研究において有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち、H、及び炭素14、すなわち、14Cは、導入の容易性及び既存の検出手段に鑑み、この目的には特に有用である。
【0140】
重水素、すなわち、Hのようなより重質の同位体による置換は、より大きい代謝安定性から生ずるいくつかの治療上の利点、例えば、増大したインビボ半減期、又は低減した必要用量を提供し、このため、状況次第では好まれる。
【0141】
11C、18F、15O及び13Nのようなポジトロン放出性同位体による置換は、基質受容体占有率を調べるためのポジトロン放出断層撮影法(PET)研究では有用である。
【0142】
同位体標識化合物は、一般に、当業者に知られた一般的な技術によって又はこれまで使用されてきた非標識試薬の代わりに、好適な同位体標識試薬を使用する公知の方法と類似の方法によって調製される。
【0143】
組み合わせ
治療法又は癌治療における使用のための化合物は、NUC-3373に加えて、一般的な手術又は放射線治療又は化学療法を含むことができる。このような化学療法は、1以上の他の活性剤の投与を含むことができる。
【0144】
このように、医薬製剤の各々、又はいずれか1つは、他の活性剤を含んでなることもできる。
【0145】
1以上の他の活性剤は、抗腫瘍剤の下記のカテゴリーの1以上である:
(i)抗増殖剤/抗新生物治療剤及びその組み合わせ、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファアミド、ナイトロジェンマスタード、ベンダムスチン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミド、及びニトロソ尿素);代謝拮抗剤(例えば、ゲムシタビン、及びフルオロピリミジン(例えば、5-フルオロウラシル及びテガフール)、ラルチトレキセド、メトトレキサート、ペメトレキセド、シトシンアラビノシド、及びヒドロキシ尿素のような葉酸代謝拮抗剤);抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシン、及びミトラマイシンのようなアントラサイクリン);抗有糸分裂剤(例えば、ビンカアルカトイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)、及びタキソイド(例えば、タキソール及びタキソテレ)、及びポロキナーゼ阻害剤);プロテアソーム阻害剤、例えば、カーフィルゾミブ及びボルテゾミブ);インターフェロン療法;及びトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド及びテニポシド)、アムサクリン、トポテカン、ミトキサントロン、及びカンプトテシン);
【0146】
(ii)細胞分裂阻害剤、例えば、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、及びイドキシフェン)、抗アンドロゲン薬(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、及び酢酸シプロテロン)、LHRH拮抗薬又はLHRH作動薬(例えば、ゴセレリン、リュープロレリン、及びブセレリン)、プロゲストーゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール、及びエキセメスタン)、及び5α-リダクターゼの阻害剤、例えば、フィナステリド;
【0147】
(iii)抗侵襲剤、例えば、ダサチニブ及びボスチニブ(SKI-606)、及びメタロプロテイナーゼ阻害剤、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体機能阻害剤又はヘパラナーゼに対する抗体;
【0148】
(iv)成長因子機能の阻害剤、例えば、成長因子抗体及び成長因子受容体抗体(例えば、抗-erbB2抗体トラスツズマブ(Herceptin(商標名))、抗-EGFR抗体パニツムマブ、抗-erbB1抗体セツキシマブ、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、上皮成長因子ファミリーの阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、及び6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3-モルホリノプロポキシ)-キナゾリン-4-アミン(CI 1033)のようなEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、ラパチニブのようなerbB2チロシンキナーゼ阻害剤);肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤;インスリン成長因子ファミリーの阻害剤;細胞アポプトーシスのタンパク質調節剤の修飾因子(例えば、Bcl-2阻害剤);血小板由来成長因子ファミリーの阻害剤、例えば、イマチニブ及び/又はニロチニブ(AMN107);セリン/スレオニンキナーゼの阻害剤(例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ、チピファルニブ、及びロナファルニブ)のようなRas/Rafシグナル経路阻害剤)、MEK及び/又はAKTキナーゼを介する細胞シグナル経路の阻害剤、c-キット阻害剤、ablキナーゼ阻害剤,PI3キナーゼ阻害剤、Plt3キナーゼ阻害剤、CSF-1Rキナーゼ阻害剤、IGF受容体キナーゼ阻害剤;オーロラキナーゼ阻害剤及びサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、例えば、CDK2及び/又はCDK4阻害剤;
【0149】
(v)抗血管新生薬、例えば、血管内皮成長因子の影響を阻害するもの(例えば、抗-血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ(Avastin(商標名));サリドマイド;レナリドマイド;及び例えば、バンデタニブ、バタラニブ、スニチニブ、アキシチニブ、及びパゾパニブのようなVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤;
【0150】
(vi)例えば、異常p53、又は異常BRCA1又はBRCA2のような異常遺伝子を置き換えるアプローチを含む遺伝子療法アプローチ;
【0151】
(vii)免疫療法アプローチ、例えば、アレムツズマブ、リツキシマブ、イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin(登録商標))、及びオファツムマブのような抗体療法;インターフェロンαのようなインターフェロン;IL-2(アルデスロイキン)のようなインターロイキン;;インターロイキン阻害剤、例えば、IRAK4阻害剤;HPVワクチン(例えば、ガーダシル、サーバリックス、オンコファージ及びSipuleucel-T(Provenge)のような予防用及び治療用ワクチンを含む癌ワクチン;toll様受容体修飾物質(例えば、TLR-7又はTLR-9作動薬)を含む免疫療法;及びチェックポイント阻害剤、抗-PD1、抗-PD-L1、及び抗-CTLAモノクロナール抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びアベルマブ);
【0152】
(viii)細胞毒性薬、例えば、フルダラビン(フルダラ)、クラドリビン、ペントスタチン(Nipent(商標名));イリノテカン及びオキサリプラチン;
【0153】
(ix)コルチコステロイド(グルココルチコイド及びミネラルコルチコイドを含む)のようなステロイド、例えば、アルクロメタゾン、アルクロメタゾンジプロピオン酸エステル、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、ベタメタゾン吉草酸エステル、ブデソニド、クロベタゾン、クロベタゾン酪酸エステル、クロベタゾンプロピオン酸エステル、クロプレドノール、コルチゾン、コルチゾン酢酸エステル、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム、デキサメタゾンイソニコチン酸エステル、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオコルトロン、フルオコルトロンカプロン酸エステル、フルオコルトロンピバル酸エステル、フルオロメトロン、フルプレドニデン、プルプレドニデン酢酸エステル、フルランドレノロン、フルチカゾン、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾンアセポン酸エステル、ヒドロコルチゾンブテプレート、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、イコメタゾン、イコメタゾンエンブテート、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、パラメタゾン、モメタゾンフランカルボン酸エステル1水和物、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトール、チキソコルトールピバル酸エステル、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、及びそれらの各薬学上許容される誘導体(ステロイドの組み合わせ、例えば、このパラグラフに記載した2以上のステロイドの組み合わせを使用できる);
【0154】
(x)標的治療、例えば、PI3Kd阻害剤(例えば、アイデラリシブ及びペリホシン);又は、抗-PD-1、抗-PD-L1及び抗-CTLA4、及びCAR Tを阻害する化合物:及び
【0155】
(xi)化学療法剤、例えば、ロイコボリンの抗癌効果を増大する薬剤。
【0156】
1以上の他の活性剤は、抗生物質でもよい。
【0157】
この明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「含んでなる」及び「含有する」及びその変形は、「含むが、限定されない」を意味するものであり、これらは、他の部分、添加剤、成分、整数又は工程を除外することを意図するものではない(及び除外しない)。この明細書及び特許請求の範囲を通して、単数は、他に要求されない限り、複数も含むものである。特に、不定冠詞を使用する場合、明細書は、他に要求されない限り、単一性とともに、複数性を含むものとして理解されなければならない。
【0158】
本発明の特殊な態様、具体例又は実施例と併せて記載する特徴、整数、特性、化合物、化学部分及び基は、矛盾しない限り、ここに記載する他の態様、具体例又は実施例のいずれにも適用できるものであると理解されなければならない。この明細書(特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示する特徴の全て、及び/又は同様に開示された方法及びプロセスの工程の全ては、このような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが、相互に排他的である組み合わせを除き、いかようにも組み合わされる。本発明は、上述の具体例の詳細に限定されない。本発明は、この明細書に開示された特徴のいずれかの新規な1つ又は新規な組み合わせに、又は同様に開示されたいずれかの方法又はプロセスの工程のいずれかの新規な1つ又は新規な組み合わせに及ぶものである。
【0159】
読者の注目は、この出願に関連するこの明細書と同時に又はこれよりも先に提出された、又はこの明細書と一緒に縦覧に供される全ての論文及び文献に向けられるが、このような全ての論文及び文献の内容は、参照することによって、ここに組み込まれる。
次に、下記の実施例及び図面を参照して、本発明をさらに詳述する。
【実施例0160】
NuTide:301治験からの薬物動態分析
NuTide:301は、進行した固体腫瘍の患者におけるフェーズ1用量漸増治験である。全ての患者が転移拡散を有する。治験に登録する36人の患者の内、平均年齢57歳(20歳から77歳まで)及び従来の化学療法レジメンを平均3回(2回から5回までの範囲)受けている21人の患者からデータを得た。10の原発癌の種類があり、その多く(57%)は大腸癌である。
患者は、28日サイクルレジメンのday 1、8、15及び22に、30分~2時間の静脈内注入として投与したNUC-3373を受けた。患者は、疾患の進行又は許容されない毒性が発生するまで治験を続け、治療を受けた。
NUC-3373は、ジメチルアセトアミド(DMA)及び生理食塩水の溶液(比80:20)中に250 mg/mlのNUC-3373を含有する単回用量静脈内注射剤(透明なバイアル中に収容)として存在する。製品は、可視の粒状物を含まない透明の黄色溶液である。
治験では、全ての患者を、NUC-3373のS及びR-エピマーの1:1混合物によって治療した。
これまで治療したコーホートは、投与当たり125 mg/m、250 mg/m、500 mg/m、又は750mg/mのNUC-3373を受けた。
ついで、患者の血液試料の薬物動態分析を行った。結果を図1及び2に示す。
治療サイクルのday1及び15において、血液試料を採取した。
血液試料を、下記の表1に示す12の時点で採取した。
【0161】
【表1】

*:任意
【0162】
血漿試料の加工-4mlヘパリンリチウムバキュテナー
血液試料は、採取から2時間以内に到着しなければならない。血液試料4mlを、18℃、1200gにおいて、10分間遠心分離する。殺菌したプラスチック製ピペット(PASTETTE(登録商標))を使用して、得られた結晶を取り出し、血漿~1.0mlを、2つの凍結保存バイアル(2ml)の各々に移す。
【0163】
PBMC試料の加工-8ml CPT採血管
血液試料は、採取から2時間以内に到着しなければならない。血液8mlをCPT採血管に集める(血液管を血液の採取から2時間以内に遠心分離しなければならない)。遠心分離する前に、管を優しく8~10回転倒させることによって、血液試料を再混合する。開始時及び終了時に緩加速条件(破壊無し)となるように遠心分離機を設定する。18℃、1500gにおいて、遠心分離を20分間行う。試料を、遠心分離機から注意して取り出す。
試料は5つの層を形成する:血漿(第1);白っぽい細胞(PBMC)(第2);ポリエステルゲル(第3);稠密溶液(第4);及び残りの顆粒球及びRBC(第5)。細胞層を乱すことなく血漿の概ね半分を吸引する。パスツールピペットにてPBMC層を集め、50mlチューブに移し、冷たい(4℃)PBSを添加して、最終容積を40mlとする。2つの50mlチューブに分け(各チューブ当たり20ml)、4℃、1500gにおいて、5分間遠心分離する。細胞ペレットを乱すことなく、上澄み液をデカントし、ペレットを残りの緩衝液中に再懸濁させる。各ペレットにPBS1mlを添加して、細胞を集め、1つのペレットを、「PD PBMCs」とラベルした2mlのスクリューキャップチューブに移し、他のペレットを、「PK PBMCsペレット」とラベルした2mlのスクリューキャップチューブに移す。両チューブを、4℃、1500gにおいて、5分間遠心分離する。ピペットにて上澄み液を取り出す(p 1000μl)。上澄み液をチューブから完全に取り出して、良好な質の試料を確保するように注意する。「PD PBMCs」とラベルしたチューブに、凍結媒体溶液(4℃で提供)200μlを添加し、分析まで、-80℃で保存する。
8%メタノール(4℃)200μlを添加し、ピペットで優しく吸引及び吐出を3回行うことによって、「PK PBMCsペレット」とラベルしたチューブ内の細胞プペレットを再懸濁させる。ボルテックスミキサーによって30秒間混合する。試料を氷上に15分間放置する。4℃、1500gにおいて、5分間遠心分離する。マイクロピペットを使用して、細胞ペレットを乱すことなく、上澄み液180μlを、「PK PBMC上澄み液」とラベルした2mlのスクリューキャップチューブに移す。PBMCペレット及びPBMC上澄み液の両方を、dTMP、TS、dUMP、FBAL、及びdhFUについての分析まで、-80℃において保存する。
dTMPを検出するためにUPLC-MSを使用した、TSを検出するためにウエスタンブロットを使用した。
dhFU及びFBALを検出するためにUPLC-MS/MSを使用した。
図1は、これまで治療したコーホートに関する血漿中のNUC-3373についてのCmax及びAUCを示す。血漿中のNUC-3373の半減期は9.7時間である。これに対して、5FUは、8~14分の血漿半減期を有する。治験した用量でのNUC-3373の投与後、毒性の副生物であるα-フルオロ-β-アラニン(FBAL)及びジヒドロフルオロウラシル(dhFU)は検出されなかった。
図2は、これまで治療したコーホートに関する細胞内FUDRモノホスフェートについてのCmax及びAUCを示す。細胞内FUDRモノホスフェートの半減期は14.9時間であるとの知見を得た。48時間の時点でも、FUDRモノホスフェートが検出された。
これに対して、5FUは、8~14分の血漿半減期を有する。治験した用量でのNUC-3373の投与後、毒性の副生物であるα-フルオロ-β-アラニン(FBAL)及びジヒドロフルオロウラシル(dhFU)は検出されなかった。
細胞内におけるdUMPの蓄積はDNA損傷を生ずること、及びこのDNA損傷は細胞死と関連することが知られている。このように、癌細胞内でのdUMPの蓄積を促進するNUC-3373の能力は、癌細胞を死滅させることができ、このようにして、効果的に癌を治療する。
図1
図2