(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096082
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】電極物質およびそれらの調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20230629BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20230629BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20230629BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230629BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230629BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230629BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230629BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230629BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230629BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/58
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/66 A
【審査請求】有
【請求項の数】37
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081615
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2019543762の分割
【原出願日】2018-02-15
(31)【優先権主張番号】62/459,309
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シャルロット マレー
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィアーヌ ローション
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-クリストフ ダイグル
(72)【発明者】
【氏名】新井 成実
(72)【発明者】
【氏名】上坂 進一
(72)【発明者】
【氏名】カリム ザジブ
(57)【要約】
【課題】 電極物質およびそれらの調製のためのプロセスを提供すること
【解決手段】 本出願は、インジゴイド化合物、すなわち、例えばインジゴブルーまたはその誘導体を、例えば、バインダー中に分散された電気化学的活物質の粒子とともに含む電極物質を記述する。電極物質の調製のためのプロセスおよび電極物質を含有する電極、ならびに電気化学セルおよびそれらの使用も企図される。一実施形態では、化合物はインジゴブルーである。別の実施形態では、式Iの化合物はロイコ-インジゴまたはその塩である。別の実施形態では、化合物は、インジゴ、インジゴカルミン、イソインジゴ、インジゴプルプリンおよびインドリンジオンから選択される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機電気化学的活物質の粒子、および
式IV:
【化14】
[式中、
R
1、R
2、R
3、
およびR
4
はそれぞれ、水素原子、ハロゲン
原子、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、
必要に応じてハロゲン化されたシクロアルキル、
必要に応じてハロゲン化されたアリー
ル、-CN、-NO
2、
-OC(O)アルキル、-SO
2
NH
2
、-SO
2
NHアルキル、-SO
2
N(アルキル)
2
、-SO
2OM
2、-OP(O)(OM
2)
2、-P(O)(OM
2)
2、
および-C(O)OM
2
から独立して選択され、ここでM
2はアルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオン
であり;
そして
Xは、それぞれの存在で独立して、O、S、NH、NR
9、およびPHから選択され、ここでR
9は天然または合成の
単糖もしくは二糖、オリゴ糖もしくは多糖、および保護基から選択され;
そして
Sugarは
、単糖もしくは二糖、オリゴ糖および多糖
から選択される天然または合成の炭水化物であ
る]
の化合物
、またはSugarが水素原子で置き換えられている式IVの化合物
、またはそ
の単糖もしくは二糖、オリゴ糖
もしくは多糖
との複合体もしくはコンジュゲート、
を含む電極物質。
【請求項2】
XがO、SまたはNHである、請求項1に記載の電極物質。
【請求項3】
XがNHである、請求項1または2に記載の電極物質。
【請求項4】
R2
が、ハロゲン、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、-CN、および-SO2OM2から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項5】
前記ハロゲンが、フッ素である、請求項1から4のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項6】
R
2
が-CNである、請求項4に記載の電極物質。
【請求項7】
R1~R4のそれぞれがそれぞれ水素原子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項8】
前記化合物が、
【化16】
から選択される、請求項1に記載の電極物質。
【請求項9】
前記電気化学的活物質粒子が、アノード電気化学的活物質の粒子である、請求項1から8のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項10】
前記電気化学的活物質粒子が、カソード電気化学的活物質の粒子である、請求項1から8のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項11】
前記電気化学的活物質が、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属ホスフェート、酸化バナジウム、およびリチウム金属酸化物からなる群から選択される物質を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項12】
前記電気化学的活物質が、TiO2、Li2TiO3、Li4Ti5O12、H2Ti5O11
、H2Ti4O9、またはその組合せ、LiM’PO4[式中、M’はFe、Ni、Mn、Co、もしくはその組合せである]、LiV3O8、V2O5、LiMn2O4、LiM”O2[式中、M”はMn、Co、Ni、もしくはその組合せである]、Li(NiM’’’)O2[式中、M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、もしくはZrである]、ならびにその組合せから選択され、それぞれに必要に応じて、適合性のある元素がドープされている、請求項1から8のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項13】
前記電気化学的活物質が、チタネートおよびチタン酸リチウムから選択される、請求項12に記載の電極物質。
【請求項14】
前記電気化学的活物質が式LiM’PO4[式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはその組合せである]のものであり、必要に応じてMg、Al、B、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Mo、Sn、Ca、SrおよびW、またはその組合せから選択される元素がドープされている、請求項12に記載の電極物質。
【請求項15】
前記電気化学的活物質がLiFePO4である、請求項14に記載の電極物質。
【請求項16】
前記電気化学的活物質がLiMnxFe1-xPO4[式中、0<x<1]であり、前記電気化学的活物質に必要に応じて、Co、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Mo、Sn、Ca、SrおよびW、またはその組合せから選択される元素がドープされている、請求項14に記載の電極物質。
【請求項17】
前記電気化学的活物質にマグネシウムがドープされている、請求項16に記載の電極物質。
【請求項18】
前記電気化学的活物質がLiM”O2[式中、M”はMn、Co、Ni、またはその組合せである]である、請求項12に記載の電極物質。
【請求項19】
前記電気化学的活物質がLiNiwMnyCozO2[式中、w+y+z=1]である、請求項18に記載の電極物質。
【請求項20】
前記粒子が、導電剤でさらに被覆されている、請求項1から19のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項21】
導電剤をさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項22】
バインダーをさらに含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項23】
前記バインダーがセルロース誘導バインダーを含む、請求項22に記載の電極物質。
【請求項24】
前記バインダーが水溶性バインダーを含む、請求項22または23に記載の電極物質。
【請求項25】
前記バインダーがフッ素含有ポリマーバインダーである、請求項22に記載の電極物質。
【請求項26】
前記化合物が電極物質中に0.1重量%~5重量%の濃度で存在する、請求項1から25のいずれか一項に記載の電極物質。
【請求項27】
前記化合物が電極物質中に0.1重量%~2重量%の濃度で存在する、請求項26に記載の電極物質。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか一項に記載の電極物質を含む電極を製造するためのプロセスであって、以下のステップ:
a)前記化合物、前記無機電気化学的活物質の粒子、およびバインダーを溶媒中で任意の順序で混合してスラリーを得るステップ;
b)ステップ(a)で得られた前記スラリーを基材上にキャストするステップ;ならびに
c)キャストされた前記スラリーを乾燥するステップ
を含む、プロセス。
【請求項29】
前記基材が集電体またはセパレータである、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記基材が、アルミニウムまたは主成分としてアルミニウムを有する合金からなる集電体である、請求項28に記載のプロセス。
【請求項31】
前記基材が導電性ポリマーである、請求項28に記載のプロセス。
【請求項32】
請求項1から27のいずれか一項に記載の電極物質を集電体上に含む、電極。
【請求項33】
前記集電体がアルミニウムまたは主成分としてアルミニウムを有する合金である、請求項32に記載の電極。
【請求項34】
前記集電体が導電性ポリマーである、請求項32に記載の電極。
【請求項35】
請求項32から34のいずれか一項に記載の電極、電解質および対電極を含む、電気化学セル。
【請求項36】
請求項35に記載の電気化学セルまたは請求項32から34のいずれか一項に記載の電極を含む、電気化学的蓄電池。
【請求項37】
請求項35に記載の電気化学セル、または請求項36に記載の電気化学的蓄電池の、モバイルデバイス、電気車両もしくはハイブリッド車両、または再生可能エネルギー貯蔵での使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年2月15日に出願された米国仮出願第62/459,309号に対する優先権を主張し、この出願の内容はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
技術分野は一般に、電極物質およびそれらの調製のためのプロセス、例えば電気化学的活物質および有機添加剤を含む電極物質に関する。本出願は、電極の調製のための電極物質の使用、および電気化学セルでのそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
インジゴブルーは、元来何世紀にもわたって染料として使用されてきた、植物から抽出された顔料である。分子そのものは、その両極性の有機半導体特性を含む様々な側面について研究されてきた。
水に基本的に溶けないインジゴブルー染料はまた、その無色で可溶性のロイコ-インジゴ形態(インジゴホワイト)に還元されてきた。この酸化還元特性は、最近電気化学でさらに研究されてきた。例えば、インジゴカルミン、インジゴブルー類似物は、充電式電池で純粋に有機カソード活物質として試験された(Yao M.ら、Scientific Reports、4巻、3650、1~6頁)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yao M.ら、Scientific Reports、4巻、3650、1~6頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
一態様では、本出願は、電気化学的活物質の粒子、およびインジゴイド化合物、例えば、式I~IV:
【化1】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ、水素原子、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、シクロアルキル、もしくはアリールから選択される基、-CN、-NO
2、-SO
2OM
2、-OP(O)(OM
2)
2、-P(O)(OM
2)
2、もしくは-C(O)OM
2、ここでM
2はアルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオン、または-OC(O)アルキル、-SO
2NH
2、-SO
2NHアルキル、もしくは-SO
2N(アルキル)
2基から独立して選択され;
Xは、それぞれの存在で独立して、O、S、NH、NR
9、およびPHから選択され(例えば、XはO、SもしくはNHである、またはXはNHである)、ここでR
9は、天然または合成の炭水化物および保護基、例えばアミン保護基、例えばトリフルオロアセトアミド、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびベンジル(Bn)等から選択され;
Sugarは、天然または合成の炭水化物(例えば、単糖もしくは二糖、オリゴ糖および多糖、例えば、β-D-グルコースまたはセルロース)であり;
i. a、cおよびeは単結合であり、bおよびdは二重結合であり、M
1は、Hまたはアルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオンであり、その結果、M
1が結合し負に荷電した酸素原子とともに塩を形成し(例えば、M
1は、Li
+、Na
+、K
+、Ca
2+、またはMg
2+である)、ここでカチオンの、式Iの化合物の残りに対する比は電気的中性を提供する(例えば、M
1はLi
+または(Mg
2+)
1/2であり得る);または、
ii. a、cおよびeは二重結合であり、bおよびdは単結合であり、M
1は存在しない]
のいずれか1つの化合物、あるいはそのオキシム(すなわち、式I、IIまたはIIIで、=OM
1が=NOHで置き換えられている)、Sugarが水素原子で置き換えられている式IVの化合物、その幾何異性体(例えば、シスまたはトランス)、またはその炭水
化物(単糖もしくは二糖、オリゴ糖および多糖、例えば、β-D-グルコースもしくはセルロース)複合体(complex)もしくはコンジュゲート(conjugate)を含む電極物質に関する。
【0006】
一実施形態では、化合物は式Iのものである。別の実施形態では、化合物は式IIのものである。さらなる実施形態では、化合物は式IIIのものである。例えば、R2およびR6は同一であり、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、-CN、および-SO2OM2から選択され、例えば-CNである。別の例では、R3およびR7は同一であり、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、-CN、および-SO2OM2から選択され、例えば-CNである。一実施形態では、R1~R8のそれぞれは水素原子である。
【0007】
別の実施形態では、化合物は式IVのものであり、例えば、R2はハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、-CN、および-SO2OM2から選択され、例えばR2は-CNである。別の実施例では、R1~R4のそれぞれは水素原子である。
【0008】
一実施形態では、化合物は以下:
【化2】
【化3】
から選択される。
【0009】
一実施形態では、化合物はインジゴブルーである。別の実施形態では、式Iの化合物はロイコ-インジゴまたはその塩である。別の実施形態では、化合物は、インジゴ、インジゴカルミン、イソインジゴ、インジゴプルプリンおよびインドリンジオンから選択される。さらに別の実施形態では、化合物は化合物6である。さらなる実施形態では、化合物は化合物7である。別の実施形態では、化合物は化合物8~10から選択される。さらなる実施形態では、化合物は、化合物1、8、11、12および14から選択される。
【0010】
一実施形態では、電極物質はアノード電気化学的活物質の粒子をさらに含む。異なる実施形態では、電極物質はカソード電気化学的活物質の粒子をさらに含む。
【0011】
一実施形態では、電気化学的活物質は、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属ホスフェート、酸化バナジウム、またはリチウム金属酸化物からなる群から選択される物質を含む。例えば、電気化学的活物質は、TiO2、Li2TiO3、Li4Ti5O12、H2Ti5O11およびH2Ti4O9、またはその組合せ、LiM’PO4[式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、もしくはその組合せである]、LiV3O8、V2O5、LiMn2O4、LiM”O2[式中、M”はMn、Co、Ni、もしくはその組合せである]、Li(NiM’’’)O2[式中、M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、TiもしくはZrである]、ならびにその組合せから選択される。上記活物質のそれぞれは、必要に応じて、適合性のある元素がドープされていてもよい。
【0012】
例えば、電気化学的活物質はチタネートおよびチタン酸リチウムから選択される。別の例によれば、電気化学的活物質は式LiM’PO4[式中、M’はFe、Ni、Mn、Coである]のものであり、必要に応じて、適合性のある元素、例えばMg、Al、B、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Mo、Sn、Ca、SrおよびWから選択される元素、またはその組合せ、例えば、元素Mgがドープされている。例えば、電気化学的活物質は、LiFePO4またはLiMnxFe1-xPO4[式中、0<x<1]であり、必要に応じて適合性のある元素がドープされており、例えば、必要に応じてCo、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Mo、Sn、Ca、SrおよびWから選択される元素、またはその組合せがドープされており、例えば、必要に応じてマグネシウムがドープされている。
【0013】
さらなる実施形態では、電気化学的活物質は、LiM”O2[式中、M”はMn、Co、Ni、またはその組合せである]である。例えば、電気化学的活物質は、LiNiwMnyCozO2[式中、w+y+z=1]である。
【0014】
さらなる実施形態によれば、粒子は導電剤でさらに被覆されている。さらなる実施形態では、電極物質は導電剤(conductive agent)をさらに含む。さらに別の実施形態では
、電極物質は、バインダー、例えば、水溶性バインダーまたは非水性ポリマーバインダー(例えば、フッ素化ポリマーバインダー、例えば、PVdFもしくはPTFE)をさらに含む。例えばバインダーは、セルロース誘導バインダーおよび/または水溶性バインダーを含む。さらなる実施形態では、化合物は電極物質中で0.1重量%~5重量%の濃度、または0.1重量%~2重量%の濃度にある。
【0015】
別の態様によれば、本出願は、本明細書で規定する電極物質を含む電極を製造するためのプロセスに関し、以下のステップ:
a)化合物、電気化学的活物質の粒子、およびバインダーを溶媒(例えば、水性または非水性溶媒)中で任意の順序で混合してスラリーを得るステップ;
b)ステップ(a)で得られたスラリーを、基材(例えば、集電体またはセパレータ)上にキャストするステップ;ならびに
c)キャストされたスラリーを乾燥するステップ
を含む。
【0016】
一実施形態では、基材は、アルミニウムまたは主成分としてアルミニウムを有する合金からなる集電体である。別の実施形態では、基材は導電性ポリマー(conductive polymer)である。
【0017】
さらなる態様によれば、本出願は、集電体上に、本明細書で規定する電極物質を含む電極、または本明細書で規定するプロセスによって製造された電極に関する。例えば、集電体はアルミニウムまたは主成分としてアルミニウムを有する合金である、または集電体は導電性ポリマーである。
【0018】
まださらなる態様によれば、本出願は、本明細書で規定する電極、電解質および対電極(反対の電気化学的活性の電極)を含む電気化学セルに関する。例えば、電極は正極であり、負極は、金属リチウム、リチウム合金(例えば、Li-Na、Li-Mg、およびLi-Zn等)、Si、SiOx、黒鉛、および炭素混合物(黒鉛-SiOx、黒鉛-Si、炭素-Si、炭素-SiOx)から選択される電気化学的活物質を含む。別の例では、負極は、電気化学的活物質としてチタン酸リチウム(例えば、Li4Ti5O12)を含む。
【0019】
さらなる態様では、電気化学的発電装置および電気化学的蓄電池は、本明細書で規定する電気化学セルまたは電極物質を含む。
【0020】
さらなる態様によれば、本出願は、例えば、電気車両もしくはハイブリッド車両、またはユビキタスITデバイスでの、ならびに、例えば、モバイルデバイス、例えば、携帯電話、カメラ、タブレットもしくはラップトップ用の、電気車両もしくはハイブリッド車両、または再生可能エネルギー貯蔵でのスーパーキャパシタとしての、本電気化学セルおよび電極の使用にもさらに関する。
【0021】
本技術の他の特徴および利点は、添付された図を参照しながら以下の本明細書の記述を読むとよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【0023】
【
図2】
図2は、PC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液、および10mMolインジゴを有するPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液の、線形走査ボルタンメトリー(Linear Scanning Voltammetry)(LSV)結果を示す(酸化 vs Alおよび還元 vs Cu)。
【0024】
【
図3】
図3は、10mMインジゴを含有するPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液のサイクリックボルタンメトリー(CV)結果を示す。
【0025】
【
図4】
図4は、-40℃~25℃の間の温度でPVdFバインダーを使用した、LFP/LiおよびLFP(+1%)インジゴ/Liセルの放電を示す。
【0026】
【
図5】
図5は、(a)25℃、0℃、および-10℃;ならびに(b)-20℃、-30℃、および-40℃で、バインダーとしてPVdFを用いた、LFP/LiおよびLFP(+1%)インジゴ/Liのインピーダンス結果を示す。
【0027】
【
図6】
図6は、-40℃~25℃の間の温度で、SBR-CMCバインダーおよびPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液を使用した、LFP/LiおよびLFP(+1%)インジゴ/Liセルの放電結果を示す。
【0028】
【
図7】
図7は、(a)25℃、0℃、および-10℃;ならびに(b)-20℃、-30℃、および-40℃で、バインダーとしてSBR-CMCを用いたLFP/LiおよびLFP(+1%)インジゴ/Liのインピーダンス結果を示す。
【0029】
【
図8】
図8は、バインダーとしてSBR-CMCを用いたLFP/LiおよびLFP(+1%)インジゴ/Liの、異なる%SOCまたは%DODで、25℃でのインピーダンス結果を示す。
【0030】
【
図9】
図9は、(a)インジゴ未使用、および(b)1%インジゴ存在下での、LFP/Liセルのサイクリング後の、セパレータのフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルを示す。
【0031】
【
図10】
図10は、バインダーとしてSBR-CMCを用いたLFP/Liセルで、インジゴなし(左)およびインジゴあり(右)のサイクリング後の、セパレータ表面のエネルギー分散型X線分光法の結果を示す(グラフの下にセパレータの写真を示す)。
【0032】
【
図11】
図11は、(a)インジゴなし、および(b)1%インジゴありでLFP/Liセルのサイクリング後の、カソード表面(電解質セパレータ側)の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0033】
【
図12】
図12は、1%インジゴあり、またはインジゴなしで、使用したバインダーの関数としてDOD(%)の結果を示す。
【0034】
【
図13】
図13は、SBR-CMCバインダーおよびPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液を使用した、LFP/GrおよびLFP(+1%)インジゴ/Grセルの充放電結果を提示する。
【0035】
【
図14】
図14は、バインダーとしてSBR-CMCを用いた、LFP/GrおよびLFP(+1%)インジゴ/Grのインピーダンス結果を示す。
【0036】
【
図15】
図15は、バインダーとしてSBR-CMC、および電解質としてPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液を使用した、NMC/LiおよびNMC(1%インジゴ)/Liセルのサイクリングデータ(容量および効率)を提示する。
【0037】
【
図16】
図16は、SBR-CMCバインダー、およびPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液を使用した、NMC/LTOおよびNMC(+1%)インジゴ/LTOセルの充放電結果を示す。
【0038】
【
図17】
図17は、バインダーとしてSBR-CMCを用いた、NMC/LTOおよびNMC(+1%)インジゴ/LTOセルのインピーダンス結果を示す。
【0039】
【
図18】
図18は、イソインジゴ(10mM)を含有するPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液の、サイクリックボルタンメトリー(CV)結果を示す。
【0040】
【
図19】
図19は、PC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液、および10mMイソインジゴを有するPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液の、線形走査ボルタンメトリー(LSV)結果を提示する(酸化 vs Alおよび還元 vs Cu)。
【0041】
【
図20】
図20は、バインダーとしてPVdF、およびPC/EMC/DMC(4/3/3)中1M LiPF
6溶液を使用した、LFP/LiおよびLFP(+1%)イソインジゴ/Liセルの充放電結果を提示する。
【0042】
【
図21】
図21は、バインダーとしてSBR-CMC、およびPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液を使用した、LFP/LiおよびLFP(+1%)イソインジゴ/Liセルの充放電結果を提示する。
【0043】
【
図22】
図22は、バインダーとしてPVdFおよびPC/EMC/DMC(4/3/3)中1M LiPF
6溶液を使用した、LFP/LiおよびLFP(+1%)イソインジゴ/Liセル、ならびにバインダーとしてSBR-CMCおよびPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液を使用した、LFP/LiおよびLFP(+1%)イソインジゴ/Liセルのインピーダンス結果を示す。
【0044】
【
図23】
図23は、インジゴカルミン(10mM)を含有するPC/EMC/DMC(4/3/3)中1M LiPF
6溶液の、サイクリックボルタンメトリー(CV)結果を示す。
【0045】
【
図24】
図24は、PC/EMC(4/3/3)中1M LiPF
6溶液、および10mMインジゴカルミンを有するPC/EMC(4/3/3)中1M LiPF
6溶液の線形走査ボルタンメトリー(LSV)結果を提示する(酸化 vs Alおよび還元 vs Cu)。
【0046】
【
図25】
図25は、バインダーとしてSBR-CMC、およびPC/EMC/DMC(4/3/3)中1M LiPF
6溶液を使用した、LMFP/LTOおよびLMFP(+1%)インジゴカルミン/LTOセルの充放電結果を示す。
【0047】
【
図26】
図26は、バインダーとしてSBR-CMC、およびPC/EMC/DMC(4/3/3)中1M LiPF
6溶液を使用した、LMFP/LTOおよびLMFP(+1%)インジゴカルミン/LTOセルのインピーダンス結果を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
本出願は、インジゴブルーもしくはその誘導体、または前記インジゴブルーもしくは誘導体の還元形態、またはその塩を含有する電極物質の調製のためのプロセス、およびこうしたプロセスによって製造された電極に関する。
【0049】
例えば本出願の有機添加剤は、Li+、Na+、K+を含有する電解質とともに作用することができる。本明細書で使用するインジゴ誘導体などのインジゴ誘導体は、酸化還元反応中にナトリウムおよびリチウムイオンを貯蔵および放出することができる。有機分子は一般に弱いファンデルワールス型またはπ-π型相互作用を有し、一方、無機分子は3D静電相互作用のような強い相互作用を保有する。特性の違いによって有機分子は無機分子よりも柔軟となり、それによってNa+イオンのようなより大きな電荷キャリアの電気化学的貯蔵が促進される。そのうえ、有機分子の物理化学的性質は、より容易に調整することができる。
【0050】
例えば本明細書は、電極物質の添加剤としての有機分子の使用に関する。例えば、有機分子はインジゴイド化合物、すなわち、インジゴブルーまたはその誘導体、ロイコ-インジゴ形態もしくは塩、すなわち、式I、IIまたはIII:
【化4】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ、水素原子、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、シクロアルキル、もしくはアリールから選択される基、-CN、-NO
2、-SO
2OM
2、-OP(O)(OM
2)
2、-P(O)(OM
2)
2、もしくは-C(O)OM
2、ここでM
2はアルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオン、または-OC(O)アルキル、-SO
2NH
2、-SO
2NHアルキル、もしくは-SO
2N(アルキル)
2基から独立して選択され;
Xは、それぞれの存在で独立して、O、S、NH、NR
9、およびPHから選択され、ここでR
9は天然または合成の炭水化物および保護基、例えばアミン保護基、例えばトリフルオロアセトアミド、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびベンジル(Bn)等から選択され;
i. a、cおよびeは単結合であり、bおよびdは二重結合であり、M
1は、Hまたはアルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオンであり、その結果、M
1が結合し負に荷電した酸素原子とともに塩を形成し(例えば、M
1は、Li
+、Na
+、K
+、Ca
2+、またはMg
2+である)、ここでカチオンの、式Iの化合物の残りに対する比は電気的中性を提供する(例えば、M
1はLi
+または(Mg
2+)
1/2であり得る);または、
ii. a、cおよびeは二重結合であり、bおよびdは単結合であり、M
1は存在しない]
の化合物、あるいはそのオキシム(すなわち、式I、IIまたはIIIで、=OM
1が=NOHで置き換えられている)、その幾何異性体(例えば、シスまたはトランス)、またはその炭水化物(単糖もしくは二糖、オリゴ糖および多糖、例えば、β-D-グルコースもしくはセルロース)複合体もしくはコンジュゲートである。
【0051】
一実施形態では、cが二重結合である場合、この二重結合はシスまたはトランス幾何学的配置を有してもよい。一実施形態では、c二重結合はトランス幾何学的配置である。別の実施形態では、XはNHである。さらなる実施形態では、R1はR5と同一であり、かつ/またはR2はR6と同一であり、かつ/またはR3はR7と同一であり、かつ/またはR4はR8と同一である。別の実施形態では、R1およびR5はいずれも水素であり、かつ/またはR2およびR6はいずれも水素原子である。
【0052】
一実施形態では、R1~R8の少なくとも1つは、フッ素、シアノおよびトリフルオロメチルから選択される。別の実施形態では、R1、R4、R5およびR8はそれぞれ水素原子であり、R2、R3、R6およびR7は前に規定された通りである。別の実施形態では、R1、R4、R5およびR8はそれぞれ水素原子であり、R2、R3、R6およびR7は、フッ素、シアノおよびトリフルオロメチルから独立して選択される。
【0053】
さらなる実施形態では、M1は存在し、Li、NaおよびKから選択される。
【0054】
上で規定した(a、cおよびeが二重結合である)インジゴブルーまたは誘導体は、例えばアルカリ還元によって、その(bおよびdが二重結合である)還元形態にも変換され得る。例えば、インジゴブルーの還元形態はロイコ-インジゴまたはインジゴホワイトと呼ばれ、塩の形態であり得る。
【0055】
別の例では、化合物はインジゴブルーの前駆体、例えば、インドキシル糖またはその誘導体、還元形態もしくは塩であり、式IV:
【化5】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4およびXは前に規定された通りであり;
Sugarは天然または合成の炭水化物(例えば、単糖または二糖、オリゴ糖および多糖、例えば、β-D-グルコースまたはセルロース)である]
の化合物である。
【0056】
糖が水素原子で置き換えられた式IVの化合物の類似物も、考えられる。
【0057】
一実施形態では、本明細書で使用する化合物は、式I、IIまたはIIIの化合物の糖またはポリ糖(polysugar)(例えば、セルロース)複合体またはコンジュゲートである。
【0058】
一例では、化合物は式:
【化6】
【化7】
の化合物から選択される。
【0059】
一部の例によれば、化合物はインジゴブルー、または1つもしくは両方の芳香環上に置換基を有するその誘導体である。例えば、1つもしくは複数のスルホネート基(例えば、インジゴカルミン)、1つもしくは複数の塩素もしくは臭素原子(例えば、チリアンパープル、チバブルー)または1つもしくは複数のニトリル基。他の誘導体としては、環中の硫黄原子によるアミン基の置き換えが挙げられ、すなわち、この場合XはS(例えば、チオインジゴ)である。別の例では、化合物はインジゴカルミンである。さらに別の例では
、化合物はイソインジゴである。化合物の別の例は、インジゴプルプリン(indigo purpurine)である。インジゴイド化合物の別の例は、インドリンジオンである。
【0060】
本明細書に記述する化合物の一部は、商業的供給源から入手することができる、または、公知の技法、例えば、Tanoueら、Dyes and Pigments、62巻、2004年、101
~105頁;Klimovich I.V.、J. Mat. Chem.、2014年、2巻、7621~7631頁;Horn, R.H.ら、Notes. Journal of the Chemical Society (Resumed)、1
950年、2900~2908頁;Voss, G.およびH. Gerlach、Chemische Berichte
、1989年、122巻(6号)、1199~1201頁;Baltac, T.ら、Revista de
Chimie、 2012年、63巻(6号)、618~620頁;Bailey, J.E.およびJ.
Travis、 Dyes and Pigments、1985年、6巻(2号)、135~154頁;Leclerc, S.ら、J. Biol. Chem.、2001年、276巻(1号)、251~260頁;
およびKarapetyan G.ら、 Chem, Med. Chem.、2011年、6巻、25~37頁に記述されているものを使用して調製することができ、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
別の態様によれば、本出願は、添加剤として本明細書で規定する化合物を含む電極物質に関する。例えば、化合物は電極物質中に0.1重量%~5重量%の濃度で、または0.1重量%~2重量%の濃度で存在する。一実施形態では、電極は電気化学セル、例えば、リチウムまたはリチウムイオン電池での使用に適している。さらなる実施形態では、電極は酸化還元型のスーパーキャパシタでの使用に適している。
【0062】
別の例では、電極物質は、本明細書で規定する化合物および電気化学的活物質の粒子を含む。別の実施形態では、電極物質は、本明細書で規定する化合物およびバインダー中に分散した電気化学的活物質の粒子を含む。例えば、本発明は、支持フィルム、例えば、集電体上に被覆されている、本明細書で規定する電極物質を含む電極に関する。
【0063】
一実施形態では、電極は、例えばリチウムイオン電池のカソードである。本化合物は容量貯蔵器として、電子導電剤として、イオン拡散剤としておよび/または過充電プロテクターとして貢献することができる。例えば、本明細書に記述する化合物の存在は、例えば、低温で運転した場合、バッテリー容量の増加および/または内部抵抗の低減をもたらすことができる。
【0064】
同様に電極がアノード、例えばリチウムイオン電池のアノードである場合、本化合物は、例えば室温およびそれ未満で、電子伝導性および/もしくはイオン拡散を増加させることによって、過充電プロテクターとしてならびに/または内部抵抗を低減することによって、貢献することができる。
【0065】
例えば、本明細書で規定する化合物は、例えば低温、例えば室温未満の温度、または≦25℃、または≦15℃、または≦10℃、または≦0℃、または≦-10℃で運転する場合、アノードもしくはカソード、それとも両方で添加剤として使用されたとしても、電気化学セル内のイオンおよび/または電子伝導性を改善するために使用され得る。例えば、電気化学セルは-40℃~25℃の間の温度で運転される。
【0066】
電気化学的活物質の粒子としては、無機粒子、例えば金属酸化物および複合酸化物(complex oxide)、ならびにカーボン粒子、例えば黒鉛が挙げられる。電気化学的活物質の例としては、限定されないが、チタネートおよびチタン酸リチウム(例えば、TiO2、Li2TiO3、Li4Ti5O12、H2Ti5O11、H2Ti4O9、もしくはその組合せ)、リチウムおよび金属ホスフェート(例えば、LiM’PO4[式中、M’はFe、Ni、Mn、Co、もしくはその組合せである])、酸化バナジウム
(例えば、LiV3O8、V2O5、およびLiV2O5等)、ならびに他のリチウムおよび金属の酸化物、例えば、LiMn2O4、LiM”O2(M”は、Mn、Co、Niもしくはその組合せ)、Li(NiM’’’)O2(M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、およびZr等、もしくはその組合せ)、またはその組合せ、あるいは元素周期表の2~15族から選択される適合性のあるドーピング元素をさらに含む上記物質のいずれかが挙げられる。例えば、活物質は、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)、チタン酸リチウム(LTO)、黒鉛、およびリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)から選択される。
【0067】
別の例によれば、電気化学的活物質は、式LiM’PO4[式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Coまたはその組合せである]のものであり、必要に応じて、適合性のある元素がドープされており、例えば必要に応じて、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Mo、Sn、Ca、SrおよびW、またはその組合せから選択される元素がドープされている。例えば、電気化学的活物質は、LiFePO4またはLiMnxFe1-xPO4[式中、0<x<1]であり、必要に応じて、適合性のある元素がドープされており、例えば必要に応じて、Co、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Mo、Sn、Ca、SrおよびW、またはその組合せから選択される元素がドープされており、例えば必要に応じて、マグネシウムがドープされている。電気化学的活物質の例としては、式LiM”O2[式中、M”は、Mn、Co、Niまたはその組合せである]の化合物も挙げられる。例えば、電気化学的活物質はLiNiwMnyCozO2[式中、w+y+z=1]である。
【0068】
電気化学的活物質粒子は、新たに形成されたものまたは商業的供給源のものである。それらは、微粒子またはナノ粒子の形態であってもよく、炭素被覆をさらに含んでもよい。
【0069】
電極物質は、必要に応じて導電性物質(conductive material)、無機粒子、ガラスまたはセラミック粒子、および塩(例えば、リチウム塩)等のような追加の成分を含む。導電性物質の例としては、カーボンブラック、Ketjen(商標)ブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、炭素繊維、ナノ繊維(例えば、VGCF)もしくはナノチューブ、またはその組合せが挙げられる。
【0070】
一実施形態では、電極は少なくとも1種のバインダーをさらに含む。バインダーの例としては、水溶性バインダー、例えば、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ブタジエンアクリロニトリルゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、およびACM(アクリレートゴム)等、ならびにセルロース系バインダー(例えば、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、および組合せ)、またはこれらの2種もしくはそれよりも多い任意の組合せが挙げられる。例えば、カルボキシアルキルセルロースは、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはカルボキシエチルセルロースであり得る。ヒドロキシプロピルセルロースはヒドロキシアルキルセルロースの例である。
【0071】
バインダーの他の例としては、フッ素含有ポリマーバインダー、例えば、PVDFおよびPTFE、ならびにイオン導電性ポリマーバインダー、例えば、少なくとも1つのリチウムイオン溶媒和セグメントおよび少なくとも1つの架橋性セグメントからなるブロックコポリマーが挙げられる。
【0072】
一実施形態では、バインダーは、水溶性バインダーおよびセルロース系バインダー、
例えばSBRおよびCMCの組合せを含む。
【0073】
本出願は、本明細書で規定する電極物質を含む電極の調製にも関する。一例では、本明
細書で規定する化合物および電気化学的活物質の粒子をバインダーで混合し、例えば、やはり使用するバインダーに基づいて選択することができる適合性のある溶媒中のスラリーとして、基材フィルム(例えば、集電体)上に塗布する。例えば水を、水溶性バインダーおよびセルロース系バインダーでスラリーを調製するために使用することができる。別の例では、非水性溶媒(例えば、NMP)を、ポリマーバインダー(例えば、フッ素含有ポリマーバインダー)でスラリーを調製するために使用することができる。さらなる添加剤、例えば、導電性物質もスラリーに添加してもよい。溶媒は、存在する場合、混合物またはスラリーを被覆した後に除去される。バインダーは上で規定した通りであり、電気化学的活物質、添加剤、集電体、電解質、および電気化学セルの接触し得る他のパーツとの相溶性を考慮して選択される。
【0074】
スラリーは、様々な方法、例えば、コンマバー法、ドクターブレード法またはスロットダイキャスティング(slot die casting)によって、基材フィルム上に連続的に塗布することができる。
【0075】
本プロセスによって製造された電極は、電解質および対電極をさらに含む電気化学セルのアセンブリで使用するためのものである。対電極を構成する物質は、電極で使用する電気化学的活物質の関数として選択される(例えば、電極/対電極:LFP/LTO、LFP/Li、LFP/黒鉛、NMC/黒鉛、NMC/LTOなど)。例えば、電極は正極であり、対電極は負極であって、金属リチウム、リチウム合金(例えば、Li-Na、Li-Mg、およびLi-Zn等)、Si、SiOx、黒鉛、および炭素混合物(黒鉛-SiOx、黒鉛-Si、炭素-Si、炭素-SiOx)から選択される電気化学的活物質を含む。別の例では、負極は電気化学的活物質としてチタン酸リチウム(例えば、Li4Ti5O12)を含む。
【0076】
電解質は、液体、ゲルまたは固体ポリマー電解質であってもよく、リチウムまたはリチウムイオン電池の場合は、リチウム塩を含み、および/またはリチウムイオン伝導性である。例えば、本明細書に記述する電極は、キャパシタもしくはスーパーキャパシタで、または電池、例えばリチウム電池もしくはリチウムイオン電池で使用することができる。
【実施例0077】
下記の非限定的な実施例は例示的な実施形態であり、本出願の範囲を限定するものと解釈すべきではない。これらの実施例は、添付の図を参照してよりよく理解されるであろう。
【0078】
実施例1:化学合成
a)5,5’-ジフルオロインジゴ(化合物3)の調製
ここで使用する手順は、Tanoueらの上述の方法に基づく。
ステップ1:5-フルオロ-3-ヨードインドールの調製
【化8】
メタノール(10mL)中、5-フルオロインドール(100mg、0.74mmol)および水酸化ナトリウム(29.6mg、0.74mmol)の溶液に、ヨウ素(188mg、0.74mmol)およびヨウ化カリウム(123mg、0.74mmol)の水溶液(1mL)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した後、水(20mL)を添加した。結果として得られた沈殿物を濾過によって収集し、水で洗浄し、減圧下で乾燥して
、5-フルオロ-3-ヨードインドール(153mg、0.584mmol)を得、これを精製することなく下記の反応のために使用した。
【0079】
ステップ2:3-アセトキシ-5-フルオロインドールの調製
【化9】
酢酸銀(146mg、0.876mmol)を、酢酸(10mL)中のステップ(a)からの5-フルオロ-3-ヨードインドールの溶液に添加した。90℃で1時間間撹拌した後、混合物を室温に冷却して、濾過した。ろ液を減圧下で蒸発乾固した。残留物を、クロロホルムを用いるシリカゲルのクロマトグラフィーで分離し、3-アセトキシ-5-フルオロ-インドール(73mg、51%収率)を得た。
【0080】
ステップ3:5,5’-ジフルオロインジゴの調製
【化10】
エタノール(5mL)中のステップ(b)からの3-アセトキシ-5-フルオロインドール(51mg、0.262mmol)の溶液に、水性の1M水酸化ナトリウム(10mL)を添加した。混合物を2時間室温で撹拌した後、水を添加した。結果として得られた沈殿物を濾過によって収集し、水で洗浄し、乾燥して、5,5’-ジフルオロインジゴ(化合物3)を得た。
【0081】
この方法は、出発物質として対応するインドールを使用する、化合物4、5、6および7の調製のためにも使用した。使用する他の化合物も市販されている可能性がある。
【0082】
b)インジゴ誘導体の一般的な調製
ここで使用する手順は、Klimovitch, Hornら、ならびに、VossおよびGerlachの上述の方法に基づく。
一般的なスキーム1:
【化11】
[式中、R’=本明細書で規定するR
3およびR
7、R”=本明細書で規定するR
2およびR
6]。
【0083】
一般的な方法:
15mLメタノール中のニトロベンズアルデヒド(3.2×10-2mol)誘導体およびニトロメタン(1.1当量)を、ナトリウムメトキシド(ナトリウム(1.2当量)およびメタノール(10mL)から)の溶液で0℃でゆっくり処理した。0℃で12時間
後、2-ニトロ-1-o-ニトロフェニルエチルアルコールの黄色結晶性ナトリウム塩を収集し、エーテルで洗浄した。この塩を水に溶解し、15mLの水酸化ナトリウム溶液(2N)を添加し、次に亜ジチオン酸ナトリウム(1.1当量)をゆっくり撹拌しながら添加した。インジゴの厚い沈殿物が直ちに形成され、これを収集し、真空昇華によって精製した。
【0084】
この手順を使用して調製された化合物の例:
化合物3: R’:H R”:F
化合物4: R’:F R”:H
化合物5: R’:CF3 R”:H
化合物6: R’:CN R”:H
化合物7: R’:H R”:CN
【0085】
c)スルホインジゴの調製
以下で使用する手順は、Batlachらの上述の方法に基づく。
【化12】
濃硫酸(50mL)を250mLフラスコに入れ、インジゴ粉末(10g)を一度に添加する。混合物を、30℃で15分間勢いよく撹拌する。次に、溶液を80℃に加熱し、さらに2時間撹拌する。それを、LiClで飽和した水溶液が調製される翌日まで放置する。氷、次にインジゴをそれに添加し、次に、溶液を濾過する。ろ液を塩化リチウム飽和水溶液で洗浄する。化合物は、そのナトリウム塩としても同様の様式で調製され得る。
【0086】
d)トリスルホインジゴの調製
下記の手順は、BaileyおよびTravisの上述の方法に基づく。
【化13】
濃硫酸(75mL)を250mLフラスコに入れ、インジゴ粉末(10g)を一度に添加した。空冷凝縮器を設置し、混合物を回転させ、次に160℃に加熱した。300gの氷の中で溶液を注意深くクエンチすることによって、反応を終結させた。結果として得られる溶液を50%LiOH溶液を(冷却しながら)添加することによって中和し、終夜冷却し、次に沈殿した固体を除去するために濾過した。沈殿物(主として5,5’-diSI)は廃棄した。母液を900mLに希釈し、そして、精製のために分取HPLCによって保持した(retain)。化合物は、そのナトリウム塩としても調製され得る。
【0087】
実施例2:例示的な電気化学セルの調製
a)カソードの組成:
以下の(c)によって調製され、リファレンスまたは試験インジゴイド含有カソードとして使用されるカソードの組成を以下の表1に列挙する。
【表1】
【0088】
b)調製したセルの組成:
試験したセルの構成要素を、以下の表2に集約する。各セルは、2032サイズコインセルとして調製される。表で識別されるセパレータは、PC/EMC(4/6)またはPC/EMC/DMC(4/3/3)中の1mol/kgのLiPF
6からなる液体電解質が浸透されている。
【表2】
【0089】
c)電極の調製のための方法(重量割合は上記表1を参照):
LFP+PVDF
存在する場合のインジゴイド(a:インジゴ、b:インジゴカルミン、およびc:イソインジゴ、表1を参照)、活物質、アセチレンブラック(Denka HS-100L)ならびにPVdF(1300g/mol)をNMP中で機械的に(Thinky Mixer SR-500)混合することによって、ハイブリッドカソードペーストを調製した。結果として得られる粘稠なスラリーを、ドクターブレード法によって、集電体として機
能するアルミニウム箔上に均一にキャストし、真空下120℃で乾燥し、Rolling
Machine(MSK-2150)で59μmにロールプレスし、8mg/cm2の電極活性層密度を達成した。電極は、使用する前に真空下150℃でさらに乾燥した。
【0090】
LFP+SBR-CMC
存在する場合のインジゴイド、LFP(LCP 420B)、アセチレンブラック(Denka HS-100L)、SBR(BM400B)およびCMC(BSH-6)を水中で機械的に(Thinky Mixer SR-500)混合することによって、ハイブリッドカソードペーストを調製した。結果として得られる粘稠なスラリーを、ドクターブレード法によって、集電体として機能するアルミニウム箔上に均一にキャストし、真空下80℃で乾燥し、Rolling Machine(MSK-2150)で59μmにロールプレスし、8mg/cm2の電極活性層装填量(loading)および1.8mg/cm3の体積密度を達成した。電極は、使用する前に真空下150℃でさらに乾燥した。
【0091】
LTO+SBR-CMC
LTO(T30-D8)、アセチレンブラック(Denka HS-100L)、SBR(BM400B)およびCMC(BSH-6)を、水中で機械的に(Thinky Mixer SR-500)混合することによって、ハイブリッドカソードペーストを調製した。結果として得られる粘稠なスラリーを、ドクターブレード法によって、集電体として機能するアルミニウム箔上に均一にキャストし、真空下80℃で乾燥し、Rolling Machine(MSK-2150)で72μmにロールプレスし、10mg/cm2の電極活性層装填量および1.8mg/cm3の体積密度を達成した。電極は、使用する前に真空下150℃でさらに乾燥した。
【0092】
LMFP+PVDF
存在する場合のインジゴイド、活物質、アセチレンブラック(Denka HS-100L)、炭素繊維(VGCF-SDH-HC)およびPVdF(1300g/mol)を、NMP中で機械的に(Thinky Mixer SR-500)混合することによって、ハイブリッドカソードペーストを調製した。結果として得られる粘稠なスラリーを、ドクターブレード法によって、集電体として機能するアルミニウム箔上に均一にキャストし、真空下80℃で乾燥し、Rolling Machine(MSK-2150)で63μmにロールプレスし、8.5mg/cm2の電極活性層密度を達成した。電極は、使用する前に真空下150℃でさらに乾燥した。
【0093】
LMFP+SBR-CMC
存在する場合のインジゴイド、活物質、アセチレンブラック(Denka HS-100L)、炭素繊維(VGCF-SDH-HC)、SBR(BM400B)およびCMC(BSH-6)を、水中で機械的に(Thinky Mixer SR-500)混合することによって、ハイブリッドカソードペーストを調製した。結果として得られる粘稠なスラリーを、ドクターブレード法によって、集電体として機能するアルミニウム箔上に均一にキャストし、真空下80℃で乾燥し、Rolling Machine(MSK-2150)で63μmにロールプレスし、8.5mg/cm2の電極活性層装填量を達成した。電極は、使用する前に真空下150℃でさらに乾燥した。
【0094】
NMC+PVDF
存在する場合のインジゴイド、活物質、アセチレンブラック(Denka HS-100L)、およびPVdF(1300g/mol)を、NMP中で機械的に(Thinky
Mixer SR-500)混合することによってハイブリッドカソードペーストを調製した。結果として得られる粘稠なスラリーを、ドクターブレード法によって集電体とし
て機能するアルミニウム箔上に均一にキャストし、真空下80℃で乾燥し、Rolling Machine(MSK-2150)で41μmにロールプレスし、7.5mg/cm2の電極活性層密度を達成した。電極は、使用する前に真空下125℃でさらに乾燥した。
【0095】
NMC+SBR-CMC
存在する場合のインジゴイド、活物質、アセチレンブラック(Denka HS-100L)、SBR(BM400B)およびCMC(BSH-6)を、水中で機械的に(Thinky Mixer SR-500)混合することによって、ハイブリッドカソードペーストを調製した。結果として得られる粘稠なスラリーを、ドクターブレード法によって、集電体として機能するアルミニウム箔上に均一にキャストし、真空下80℃で乾燥し、Rolling Machine(MSK-2150)で41μmにロールプレスし、7.5mg/cm2の電極活性層装填量を達成した。電極は、使用する前に真空下125℃でさらに乾燥した。
【0096】
(実施例3)
電気化学的特性
a)インジゴイドの酸化還元特性:
本添加剤の電気化学的特性を示すために、インジゴを電解質溶液に含め、下記条件(酸化 vs Alおよび還元 vs Cu)による線形走査ボルタンメトリー(LSV)によって、半電池で試験した:
【表A】
【0097】
結果を
図2に示す。インジゴの酸化を4Vの後に観察することができ、一方2つの還元反応が約2Vおよび1.3Vで生じている。2つの還元反応はLFP/LTO電気化学窓(electrochemical window)であり、一方インジゴの酸化はこの系では起こらない。イソインジゴ(
図19)およびインジゴカルミン(
図24)についても、LSVの結果を示す。
【0098】
2mV/sの走査速度、6Vの最大電圧、1Vの最低電圧、および3回の走査で、10mMolインジゴを有するPC/EMC(4/6)中1M LiPF
6溶液(LSV酸化と同じ半電池)について、同じ電気化学的溶液をサイクリックボルタンメトリー(CV)結果によっても試験した(
図3を参照)。1つの不可逆的酸化が4Vの後に生じ、同じ分析条件で2つの部分的に可逆的な還元が生じている。インジゴの様々な酸化状態を
図1に示す。イソインジゴ(
図18)およびインジゴカルミン(
図23)についても、CVの結果を提示する。
【0099】
b)電気化学性能:
サイクリング試験の前に、0.1C、25℃で電池を2回充電および放出した。ここで
、xCは、1/x時間でセル容量を完全に充電/放電することができる電流である。CC-CV(定電流定電圧)モードで充電する。使用条件:
セルA1、A2、B1、B2(LFP/Li金属)
電圧:3.8V 電流:0.2C
放電:CC(定電流)モード0.2C
カットオフ電圧:2V 電流:0.01C
セルA3およびB3(LFP/Gr)
電圧:3.6V 電流:0.2C
放電:CC(定電流)モード0.2C
カットオフ電圧:2V 電流:0.01C
セルA4、A5、B4およびB5(LMFP-Li)
電圧:4.5V 電流:0.2C
放電:CC(定電流)モード0.2C
カットオフ電圧:2V 電流:0.02C
セルA6、A7、B6およびB7(NMC-Li)
電圧:4.2V 電流:0.2C
放電:CC(定電流)モード0.2C
カットオフ電圧:2.5V 電流:0.01C
セルA8、A10、B8およびB10(LMFP-LTO)
電圧:3V 電流:0.2C
放電:CC(定電流)モード0.2C
カットオフ電圧:0.5V 電流:0.02C
セルA9、A11、B9およびB11(NMC-LTO)
電圧:2.7V 電流:0.2C
放電:CC(定電流)モード0.2C
カットオフ電圧:0.5V 電流:0.01C
【0100】
様々な温度での結果を、
図4(セルA1およびB1-a)ならびに
図6(セルA2およびB2-a)に示す。
【0101】
例えば、
図4は、-40℃~25℃の範囲の温度で、PVdFバインダーを使用した、LFP/LiおよびLFP(+1%)インジゴ/Liセル(それぞれA1およびB1-a)の比較放電結果を示す。以下の表3で観察できるように、LFP中1%のインジゴ添加によって、-40~25℃の間で4~6%の間の容量増加が提供される。
【表3】
【0102】
-40℃~25℃の間の温度で、SBR-CMCバインダーを使用する、LFP/LiおよびLFP(+1%)インジゴ/Liセル(それぞれA2およびB2-a)の放電結果を、
図6に示す。表4は、LFPカソードにインジゴを1%添加することによって、-40~25℃の温度で1~10%の間の容量増加が提供されることを示している。
【表4】
【0103】
以下の表5(a)~5(c)は、PVdFまたはSBR-CMCバインダーを使用して試験した、様々なインジゴイドの容量および効率を集約している。リファレンスセル(インジゴイドなし)を考慮したインピーダンス結果も提示している。
【表5】
【0104】
以下の表6にサイクリングデータも提示し、セルA1と比較したセルB1-aの維持率および効率を集約する。LFPおよび添加剤としてインジゴを含有するリチウムセルは、容量損失の低減を示すことを観察することができる。インジゴ含有セルはより安定した効率を有することも観察された。
【表6】
【0105】
アノード物質として黒鉛を含むセルも試験した。セルA3およびB3-aの充放電結果を
図13に示す。インジゴ存在下の第1のサイクルで、著しい不可逆性を観察することができる。第1のサイクルの後、電池は、インジゴイド添加剤のない電池より速やかに安定する。容量の改善およびインピーダンスの低下もインジゴの存在下で観察される(以下を参照)。インジゴの有無(セルA3およびB3-a)での、LFP/黒鉛セルのインピーダンス結果も
図14に提示する。
【0106】
セルA7およびB7-aでは、使用したカソード物質はNMC(6/2/2)であった。サイクリング結果を、
図15に示す。サイクリング性能を有するNMC-Li電池を得ることが、通常は非常に困難であることに留意することは価値がある。
図15から観察できるように、ほぼすべての容量は50サイクルの後に失われる(リファレンスを参照)。他方では、インジゴをNMCカソードの添加剤として使用する場合、安定した容量および安定した効率が200を超えるサイクルで得られる。
図16に、NMC/LTOセルA9およびB9-aの充放電結果も示す。
【0107】
LFP-LiセルA1およびB1-cのイソインジゴありまたはなしでの充放電結果を
図20(PVdFバインダー)に、LFP-LiセルA2およびB2-cのイソインジゴありまたはなしでの充放電結果を
図21(SBR-CMCバインダー)に示す。
【0108】
最終的に、アノード物質としてLTOを使用した場合に、LMFPカソードの添加剤としてインジゴカルミンを使用したセルA8およびB8-bの充放電結果を
図25に提示する。カソード物質でのインジゴカルミンの添加によって、LMFPで典型的に観察される電圧フェージング(voltage fading)が制限されることを示した。
【0109】
c)電気化学インピーダンス:
実施例2に記述するLFP-LiセルA1、A2、B1-a、およびB2-aを使用して、-40℃~25℃の範囲の様々な温度でSOC50%で、電気化学インピーダンス分光法(EIS)も実施した。使用した周波数は1MHz~10mHz、および低温では1MHz~50mHzであった。AC振幅は10mVであった。結果はセルA1およびB1-aについて
図5(a)および5(b)で示し、一方、
図7(a)および7(b)はセルA2およびB2-aで得られた結果を示す。
【0110】
図5は、バインダーとしてPVdFを用いた、LFP/LiおよびLFP(1%インジゴ)/Li(セルA1およびB1-a)のインピーダンス結果を示す。2つの半円を示す曲線で、一方はリチウムに関する抵抗を表すが、他方はLFPの抵抗に関係する。結果は、0℃およびそれ未満の温度で、LFPに起因する抵抗はインジゴの存在により減少することを示している。
【0111】
バインダーとしてSBR-CMCを用いた、LFP/LiおよびLFP(1%インジゴ)/Li(セルA2およびB2-a)について、同様のインピーダンス結果を
図7に提示
する。結果は、試験したすべての温度で、LFPに起因する抵抗はインジゴの存在により減少することを示している。
【0112】
25℃でのセルA2およびB2-aのインピーダンスも、異なる充電状態(% SOC)で試験した。
図8は、これらのインピーダンス結果を示す。要約すると、この実験は、充放電中、特に100%または80%のSOCで、インジゴの存在によりLFPでのリチウムイオンの拡散が改善されることを実証するのに役立つ。
【0113】
インジゴの有無(セルA3およびB3-a)でのLFP/黒鉛セルについてのインピーダンス結果も、
図14に提示する。アノードとして黒鉛を使用した場合、インジゴの存在下でのインピーダンスの低下も観察された。
【0114】
図17は、NMC/LTOセルA9およびB9-aのインピーダンス結果を示し、わずかな増加が観察された。
図22は、添加剤としてイソインジゴを使用した、セルA1、A2、B1-cおよびB2-cのインピーダンス結果を提示する。SBR-CMCをイソインジゴと組み合わせて使用している間、インピーダンスの低下が観察される。
【0115】
最終的に、アノード物質としてLTOを使用する場合、LMFPカソードの添加剤としてインジゴカルミンを使用する、セルA8およびB8-bのインピーダンス結果を
図26に提示する。カソード物質でのインジゴカルミンの添加によって、内部電池抵抗が大幅に低減されることを示した。
【0116】
観察できるように、同じ温度で試験した場合、インジゴイドの存在によって、そのインジゴフリーバージョンと比較して、一般にセルのインピーダンスが低減される。この改善は両方のバインダーに当てはまるが、SBR:CMCをバインダーとして使用した場合特に有意である。
【0117】
d)放電深度:
下記の順序:セルA1、セルB1-a、セルA2、およびセルB2-aで
図12に現われる4つのセルについて、放電深度(% DOD)を、温度、バインダーおよびインジゴの存在の有無の関数として評価した。これらの比較結果は、特にバインダーとしてCMC-SBRの使用と組み合わせた場合、LFP中のインジゴの存在下で放電深度が低温で改善されることを示している。
【0118】
e)電解質の安定性:
セパレータの目視評価のために、サイクリングの後にセルA2およびB2-aを開いた(
図10、グラフの下を参照)。インジゴを含有していないセルの、LFPカソードに接するセパレータの表面上で、微量の不純物が観察され(左側画像)、一方でインジゴを添加剤として使用した場合、こうした不純物は存在しなかった(右側画像)。
【0119】
次に、両方のセルのセパレータをフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルによって分析した。
図9(a)は、セルA2セパレータのFTIRを示す。2000cm
-1未満に観察されるピークは、電解質溶媒(カーボネート)分解生成物に典型的である。他方、1%インジゴの存在下でサイクリング後のセパレータのFTIRスペクトルを示す
図9(b)では、電解質の分解に関係するこうしたピークは観察されなかった。
【0120】
図10に示すEDSの結果も、サイクリング後のインジゴのないLFP-Liセル(左)のセパレータが、インジゴを有する対応するセル(右)より、FおよびP原子の非常に高い含量をその表面で提示することを実証している。これらの不純物は、電解質分解(LiPF
6)に典型的である。
【0121】
最終的に、サイクリング後のセルB2-aおよび対照セルA2の両方で、電池セパレータに接するカソード表面をSEMによって分析した。得られた画像を、
図11(a)および(b)にそれぞれ提示する。インジゴのないセル(
図11(a))を見ると、典型的に電解質の分解に起因する黒いゾーンが観察される。添加剤としてインジゴを使用した物質を示す
図11(b)の画像は、電解質の分解を提示しない。
【0122】
本発明の範囲から逸脱することなく、上に記述した実施形態のいずれにも、多数の改変を行うことができる。本出願で言及される任意の参考文献、特許または科学文献資料は、あらゆる目的についてその全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
電気化学的活物質の粒子、および式I~IV:
【化14】
[式中、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、R
6
、R
7
、およびR
8
はそれぞれ、水素原子、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、シクロアルキル、もしくはアリールから選択される基、-CN、-NO
2
、-SO
2
OM
2
、-OP(O)(OM
2
)
2
、-P(O)(OM
2
)
2
、もしくは-C(O)OM
2
、ここでM
2
はアルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオン、または-OC(O)アルキル、-SO
2
NH
2
、-SO
2
NHアルキル、もしくは-SO
2
N(アルキル)
2
基から独立して選択され;
Xは、それぞれの存在で独立して、O、S、NH、NR
9
、およびPHから選択され、ここでR
9
は天然または合成の炭水化物および保護基、例えばアミン保護基、例えばトリフルオロアセトアミド、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびベンジル(Bn)等から選択され;
Sugarは、天然または合成の炭水化物(例えば、単糖もしくは二糖、オリゴ糖および多糖、例えば、β-D-グルコースまたはセルロース)であり;
i. a、cおよびeは単結合であり、bおよびdは二重結合であり、M
1
は、Hまたはアルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオンであり、その結果、M
1
が結合し負に荷電した酸素原子とともに塩を形成し(例えば、M
1
は、Li
+
、Na
+
、K
+
、Ca
2+
、またはMg
2+
である)、ここでカチオンの、式Iの化合物の残りに対する比が電気的中性を提供する(例えば、M
1
はLi
+
または(Mg
2+
)
1/2
であり得る);または
ii. a、cおよびeは二重結合であり、bおよびdは単結合であり、M
1
は存在しない]
のいずれか1つの化合物、あるいはそのオキシム(すなわち、式I、IIまたはIIIで、=OM
1
が=NOHで置き換えられている)、Sugarが水素原子で置き換えられて
いる式IVの化合物、その幾何異性体(例えば、シスまたはトランス)、またはその炭水化物(単糖もしくは二糖、オリゴ糖および多糖、例えば、β-D-グルコースもしくはセルロース)複合体もしくはコンジュゲート、
を含む電極物質。
(項2)
XがO、SまたはNHである、上記項2に記載の電極物質。
(項3)
XがNHである、上記項1に記載の電極物質。
(項4)
前記化合物が式Iのものである、上記項1から3のいずれか一項に記載の電極物質。
(項5)
前記化合物が式IIのものである、上記項1から3のいずれか一項に記載の電極物質。
(項6)
前記化合物が式IIIのものである、上記項1から3のいずれか一項に記載の電極物質。
(項7)
R
2
およびR
6
が同一であり、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、-CN、および-SO
2
OM
2
から選択され、例えば-CNである、上記項1から6のいずれか一項に記載の電極物質。
(項8)
R
3
およびR
7
が同一であり、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、-CN、および-SO
2
OM
2
から選択され、例えば-CNである、上記項1から7のいずれか一項に記載の電極物質。
(項9)
R
1
~R
8
のそれぞれがそれぞれ水素原子である、上記項1から6のいずれか一項に記載の電極物質。
(項10)
前記化合物が式IVのものである、上記項1から3のいずれか一項に記載の電極物質。
(項11)
R
2
が、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されたアルキル、-CN、および-SO
2
OM
2
から選択され、例えばR
2
が-CNである、上記項10に記載の電極物質。
(項12)
R
1
~R
4
のそれぞれがそれぞれ水素原子である、上記項10に記載の電極物質。
(項13)
前記化合物が、
【化15】
【化16】
から選択される、上記項1に記載の電極物質。
(項14)
前記化合物がインジゴブルーである、上記項1に記載の電極物質。
(項15)
前記化合物がロイコ-インジゴまたはその塩である、上記項1に記載の電極物質。
(項16)
前記化合物が、インジゴ、インジゴカルミン、イソインジゴ、インジゴプルプリンおよびインドリンジオンから選択される、上記項1に記載の電極物質。
(項17)
アノード電気化学的活物質の粒子をさらに含む、上記項1から16のいずれか一項に記載の電極物質。
(項18)
カソード電気化学的活物質の粒子をさらに含む、上記項1から16のいずれか一項に記載の電極物質。
(項19)
前記電気化学的活物質が、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属ホスフェート、酸化バナジウム、またはリチウム金属酸化物からなる群から選択される物質を含む、上記項1から16のいずれか一項に記載の電極物質。
(項20)
前記電気化学的活物質が、TiO
2
、Li
2
TiO
3
、Li
4
Ti
5
O
12
、H
2
Ti
5
O
11
およびH
2
Ti
4
O
9
、またはその組合せ、LiM’PO
4
[式中、M’はFe、Ni、Mn、Co、もしくはその組合せである]、LiV
3
O
8
、V
2
O
5
、LiMn
2
O
4
、LiM”O
2
[式中、M”はMn、Co、Ni、もしくはその組合せである]、Li(NiM’’’)O
2
[式中、M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、もしくはZrである]、ならびにその組合せから選択され、それぞれが必要に応じて、適合性のある元素がドープされている、上記項1から16のいずれか一項に記載の電極物質。
(項21)
前記電気化学的活物質が、チタネートおよびチタン酸リチウムから選択される、上記項19に記載の電極物質。
(項22)
前記電気化学的活物質が式LiM’PO
4
[式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはその組合せである]のものであり、必要に応じて、適合性のある元素がドープされており、例えば、必要に応じてMg、Al、B、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Mo、Sn、Ca、SrおよびW、またはその組合せから選択される元素がドープされている、上記項20に記載の電極物質。
(項23)
前記電気化学的活物質がLiFePO
4
である、上記項22に記載の電極物質。
(項24)
前記電気化学的活物質がLiMn
x
Fe
1-x
PO
4
[式中、0<x<1]であり、前記電気化学的活物質が必要に応じて、適合性のある元素、例えば、Co、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Mo、Sn、Ca、SrおよびW、またはその組合せから選択される元素がドープされており、例えば、必要に応じてマグネシウムがドープされている、上記項22に記載の電極物質。
(項25)
前記電気化学的活物質がLiM”O
2
[式中、M”はMn、Co、Ni、またはその組合せである]である、上記項20に記載の電極物質。
(項26)
前記電気化学的活物質がLiNi
w
Mn
y
Co
z
O
2
[式中、w+y+z=1]である、上記項25に記載の電極物質。
(項27)
前記粒子が、導電剤でさらに被覆されている、上記項1から26のいずれか一項に記載の電極物質。
(項28)
導電剤をさらに含む、上記項1から27のいずれか一項に記載の電極物質。
(項29)
バインダーをさらに含む、上記項1から28のいずれか一項に記載の電極物質。
(項30)
前記バインダーがセルロース誘導バインダーを含む、上記項29に記載の電極物質。
(項31)
前記バインダーが水溶性バインダーを含む、上記項29または30に記載の電極物質。
(項32)
前記バインダーがフッ素含有ポリマーバインダーである、上記項29に記載の電極物質。
(項33)
前記化合物が電極物質中に0.1重量%~5重量%の濃度で存在する、上記項1から32のいずれか一項に記載の電極物質。
(項34)
前記化合物が電極物質中に0.1重量%~2重量%の濃度で存在する、上記項33に記載の電極物質。
(項35)
上記項1から34のいずれか一項に記載の電極物質を含む電極を製造するためのプロセスであって、以下のステップ:
a)前記化合物、前記電気化学的活物質の粒子、およびバインダーを溶媒中で任意の順序で混合してスラリーを得るステップ;
b)ステップ(a)で得られた前記スラリーを基材(例えば、集電体またはセパレータ)上にキャストするステップ;ならびに
c)キャストされた前記スラリーを乾燥するステップ
を含む、プロセス。
(項36)
前記基材が、アルミニウムまたは主成分としてアルミニウムを有する合金からなる集電体である、上記項35に記載のプロセス。
(項37)
前記基材が導電性ポリマーである、上記項35に記載のプロセス。
(項38)
上記項1から34のいずれか一項に記載の電極物質を集電体上に含む、電極。
(項39)
前記集電体がアルミニウムまたは主成分としてアルミニウムを有する合金である、上記項38に記載の電極。
(項40)
前記集電体が導電性ポリマーである、上記項38に記載の電極。
(項41)
上記項35から37のいずれか一項に記載のプロセスによって製造された電極。
(項42)
上記項38から41のいずれか一項に記載の電極、電解質および対電極を含む、電気化学セル。
(項43)
上記項42に記載の電気化学セルまたは上記項38から41のいずれか一項に記載の電極を含む、電気化学的発電装置。
(項44)
上記項42に記載の電気化学セルまたは上記項38から41のいずれか一項に記載の電極を含む、電気化学的蓄電池。
(項45)
上記項42の電気化学セル、上記項43の電気化学的発電装置または上記項44の電気化学的蓄電池の、モバイルデバイス、電気車両もしくはハイブリッド車両、または再生可能エネルギー貯蔵での使用。