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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009611
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】極低温冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20230113BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20230113BHJP
   H01F 6/04 20060101ALI20230113BHJP
   H10N 60/80 20230101ALI20230113BHJP
【FI】
F25B9/00 H
H01F6/06 130
H01F6/04
H01L39/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113037
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政彦
(72)【発明者】
【氏名】栗山 透
(72)【発明者】
【氏名】武輪 裕之
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA08
4M114BB05
4M114CC03
4M114DB14
(57)【要約】
【課題】冷凍機及び冷却ステージに両端で接続する伝熱体のうち特に接続部の温度差を縮めることで、冷却性能の向上を図る極低温冷却システムを提供する。
【解決手段】極低温冷却システム10は、冷凍機で冷却される冷却対象物27を支持する冷却ステージ16と、複数の板材25を積層して成り冷凍機及び冷却ステージを両端において接続する伝熱体20と、伝熱体20の両端のうち一方において複数の板材25を分割したセグメント26(261,262,263)が別々に接続する分割接続部21(211,222,233)と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却源となる冷凍機と、
冷却対象物を支持するとともに冷却する冷却ステージと、
複数の板材を積層して成り、前記冷凍機及び前記冷却ステージを両端において接続する伝熱体と、
前記伝熱体の両端のうち少なくとも一方において前記複数の板材を分割したセグメントが、別々に接続する分割接続部と、を備える極低温冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の極低温冷却システムにおいて、
前記伝熱体の両端のうち他方において前記複数の板材を全て統合して接続する統合接続部を、備える極低温冷却システム。
【請求項3】
請求項2に記載の極低温冷却システムにおいて、
前記分割接続部は、前記冷却ステージに対し溶接したものであり、
前記統合接続部は、前記冷凍機に対し溶接又はボルト締めしたものである極低温冷却システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の極低温冷却システムにおいて、
前記板材が99.99%以上の高純度アルミ又は高純度銅である極低温冷却システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の極低温冷却システムにおいて、
前記分割接続部は、前記冷却ステージに設けられた複数の段差の各々に接続されている極低温冷却システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の極低温冷却システムにおいて、
前記冷却対象物は、超電導コイルである極低温冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は伝導冷却方式により冷却対象物を極低温に冷却する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導コイルは4K程度の極低温に冷却する必要があり、古くは液体ヘリウムで冷却されることが一般的であった。その後、4Kまで冷却可能な小型冷凍機の開発により、この冷凍機のみで超電導コイルを伝導冷却できるようになった。このような伝導冷却方式の極低温冷却システムは、真空容器に配置され断熱された冷却対象物(超電導コイル等)から、冷凍機へ熱をフレキシブルな伝熱体を介して伝導させている。
【0003】
伝導冷却方式の極低温冷却システムでは、冷却性能の向上を図るために、超電導コイルと冷凍機との間の温度差を縮めることが要求されている。このため、伝熱体の材質には熱伝導率の高い高純度アルミや高純度銅が使われている。特に高純度アルミは、磁場中での熱伝導率の低下が少なく、近年では伝導冷却式の超電導コイルに多用されている。そして伝熱体は、高純度アルミの薄板を積層し、各々の両端部を溶接して、フレキシブルに変形できるように構成されている。さらに伝熱体の一端と冷凍機とはボルト締めで固定され、伝熱体の他端と冷却ステージとはボルト締め又は溶接で固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-167923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の極低温冷却システムにおいて、寸法に制約がある伝熱体は、構造的に温度差が大きくなる傾向がある。この従来の伝熱体の各部に温度計を取り付けて、温度差を詳細に測定してみた。そうしたところ、伝熱体の端部におけるボルト締め部や溶接部といった接続部において、他の箇所よりも温度差が大きく測定された。また伝熱体の全体の温度差に占める接続部の温度差の割合は、伝熱体の形状に大きく依存することも判明した。いずれにしても、伝熱体の全体の温度差を縮めるには、この接続部の温度差を縮めることが不可欠であるとの課題を得た。
【0006】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、冷凍機及び冷却ステージに両端で接続する伝熱体のうち特に接続部の温度差を縮めることで、冷却性能の向上を図る極低温冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る極低温冷却システムにおいて、冷却源となる冷凍機と、冷却対象物を支持するとともに冷却する冷却ステージと、複数の板材を積層して成り前記冷凍機及び前記冷却ステージを両端において接続する伝熱体と、前記伝熱体の両端のうち少なくとも一方において前記複数の板材を分割したセグメントが別々に接続する分割接続部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、冷凍機及び冷却ステージに両端で接続する伝熱体のうち特に接続部の温度差を縮めることで、冷却性能の向上を図る極低温冷却システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の各実施形態に係る極低温冷却システムの構成図。
図2】第1実施形態の極低温冷却システムにおける伝熱体の分割接続部の断面図。
図3】第2実施形態の極低温冷却システムにおける伝熱体の分割接続部の断面図。
図4】第2実施形態の極低温冷却システムにおける伝熱体の分割接続部の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の各実施形態に係る極低温冷却システム10の構成図である。図2は第1実施形態の極低温冷却システム10における伝熱体20の分割接続部21の断面図である。
【0011】
このように極低温冷却システム10は、冷却源となる冷凍機15と、冷却対象物27(例示は超電導コイル)を支持するとともに冷却する冷却ステージ16と、複数の板材25を積層して成り冷凍機15及び冷却ステージ16を両端において接続する伝熱体20と、伝熱体20の両端のうち少なくとも一方において複数の板材25を分割したセグメント26(261,262,263)が別々に接続する分割接続部21(211,222,233)と、を備えている。さらに伝熱体20の両端のうち他方において複数の板材25を全て統合して接続する統合接続部22を備えている。
【0012】
冷却対象物27である超電導コイルは、超電導転移の臨界温度Tc以下に保たれる必要があるため、断熱真空容器17に収容されている。この断熱真空容器17は、超電導コイル27が設置される環境(室温:約300K)からの熱侵入の影響を低減するためさらに放射シールド18を構成に持つ。なお放射シールド18及び冷却ステージ16は、図示されない部材により、断熱真空容器17で重量を支えている。
【0013】
実施形態において冷凍機15としてGM冷凍機が例示されている。GM冷凍機の第1ユニット11と放射シールド18とが接続され、第2ユニット12と統合接続部22とが接続されている。コンプレッサ(図示略)からGM冷凍機に封入される作動ガス(Heガス等)の断熱膨張の効果により、放射シールド18は40K程度に冷却され冷却ステージ16は4K程度に冷却される。
【0014】
なお採用される冷凍機15は、上述したGM冷凍機に限定されるものではない。パルスチューブ冷凍機、クロード冷凍機、スターリング冷凍機など、極低温を生成するものであれば適宜採用される。また冷却対象物27も、超電導コイルに限定されるものではない。
【0015】
伝熱体20は、極低温領域で熱伝導率が高い複数の金属製の板材25を積層して構成される。そのような板材25は、99.99%以上の高純度アルミ又は高純度銅で構成されている。金属の純度が99.99%未満であると、熱伝導率が低下して冷却ステージ16の冷却性能が低下する場合がある。
【0016】
このように伝熱体20が積層体で形成されることで冷凍機15と冷却ステージ16をフレキシブルに連結することができる。ところで、この積層体において、各々の板材25が互いに接する界面を横断する方向の熱伝導性は相対的に低くなる。このため伝熱体20を構成する各々の板材25の一方の端部に入力した熱は、隣接する板材25との界面を横断することが抑制された状態で、各々の板材25に沿って他方の端部に向かって熱伝導する。
【0017】
ここで比較例として、伝熱体20が実施形態のようなセグメント26に分割されることなく、冷凍機15及び冷却ステージ16の両端において、複数の板材25の全てが統合して溶接される場合の熱の流れを検討する。このような、比較例の構成では、積層するもののうち、冷凍機15に近い板材25と遠い板材25との間で、伝熱経路として寄与する溶接部の長さ又は割合に相違が発生する。その結果、比較例では、伝熱体20の端部における接続部の温度差を拡大してしまう結果となる。
【0018】
これに対し実施形態の分割接続部21(211,222,233)では、複数の板材25のセグメント26(261,262,263)の各々が別々に冷却ステージ16に接続することで、伝熱経路として寄与する長さ又は割合を減らして熱抵抗を低減できる。その結果、第1実施形態では、伝熱体20の温度差を縮めることができる。これにより積層させる板材25の数を削減して伝熱体20を構成することができ、コスト削減にも貢献する。
【0019】
なお実施形態において、分割接続部21は冷却ステージ16に接続され、統合接続部22は冷凍機15に接続されるものを例示しているが、その関係が逆である場合や、両端が共に分割接続部21である場合も含まれる。また、板材25のセグメント26(261,262,263)の各々と冷却ステージ16との熱抵抗を小さくする目的で、分割接続部21及び統合接続部22は、溶接で構成されるのが好適であるが、特に限定はなく、ボルト締めで構成してもよい。また、冷凍機15に設けられる統合接続部22は、取り付けの観点から、ボルト締めが採用されることが多い。
【0020】
(第2実施形態)
次に図3及び図4を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図3は第2実施形態の極低温冷却システムにおける伝熱体20の分割接続部21の断面図であり、図4はその上面図である。なお、図3及び図4において図2と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0021】
第2実施形態の極低温冷却システムにおける分割接続部21(211,212,213)は、冷却ステージ16に設けられた複数の段差28(281,282,283)の各々に接続されている。図4に示すように、分割接続部21(211,212,213)は、板材25の周縁の一部を三方向からコの字状に溶接して形成されている。
【0022】
第2実施形態の極低温冷却システムによれば、金属製薄板である板材25を曲げずに溶接することが可能となる。板材25が曲がると熱伝導率の低下を招くことが懸念されるが、第2実施形態の構成ではその懸念が払拭される。その結果、第2実施形態では、第1実施形態で得られる効果をさらに向上させ、伝熱体20の温度差をさらに縮めることができる。これにより積層させる板材25の数をさらに削減して伝熱体20を構成することができ、コスト削減にさらに貢献する。
【0023】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の極低温冷却システムによれば、冷凍機及び冷却ステージを両端で接続する伝熱体の少なくとも一端が分割接続部であることにより、その温度差を縮めて冷却性能を向上させることが可能となる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0025】
10…極低温冷却システム、11…第1ユニット、12…第2ユニット、15…冷凍機、16…冷却ステージ、17…断熱真空容器、18…放射シールド、20…伝熱体、21(211,212,213)…分割接続部、22…統合接続部、25…板材、26(261,262,263)…セグメント、27…冷却対象物、27…超電導コイル、28(281,282,283)…段差。
図1
図2
図3
図4