(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096139
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】環状ペプチド並びに該環状ペプチドを含む医薬品、外用剤および化粧料
(51)【国際特許分類】
C07K 7/00 20060101AFI20230629BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20230629BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230629BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230629BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20230629BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230629BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230629BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230629BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230629BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230629BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230629BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20230629BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230629BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230629BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230629BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230629BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230629BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230629BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230629BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230629BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230629BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230629BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230629BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230629BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20230629BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230629BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230629BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230629BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230629BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C07K7/00 ZNA
A61K38/12
A61K8/64
A61P17/00
A61P17/04
A61P29/00
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q19/10
A61Q5/02
A61P17/14
A61Q7/00
A61P11/02
A61K9/14
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/70 401
A61K8/06
A61K8/02
A61P17/02
A61P9/12
A61P9/10
A61P7/10
A61P13/12
A61P9/04
A61P37/02
A61P3/04
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082711
(22)【出願日】2023-05-19
(62)【分割の表示】P 2021007638の分割
【原出願日】2016-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2015110622
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510199502
【氏名又は名称】株式会社 イギス
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 京子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 陽央莉
(57)【要約】
【課題】
本発明は、薬効、効能の強い新規ペプチド、これを含む医薬や外用剤、特に皮膚炎、鼻炎、脱毛症に対する予防または治療剤や発毛剤、育毛剤、鎮痒剤、スキンケア用品などを提供すること目的とする。
【解決手段】
本発明は、本発明は、式Iで表されるアミノ酸配列を有し、当該アミノ酸配列が、当該アミノ酸配列を構成するアミノ酸同士以外のペプチド結合を有さない、環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩を提供することにより、上記目的が達された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
式中、
X
1は、Gly、Val、Ala、SerまたはThrを示し、
X
2は、Arg、GlnまたはHisを示し、
X
3は、LysまたはArgを示し、
X
4は、Met、LeuまたはIleを示し、
X
5は、IleまたはValを示し、
X
6は、SerまたはGlyを示し、
X
7は、SerまたはAlaを示し、
X
8は、Ser、Gln、Val、Ala、Thr、Leu、IleまたはMetを示し、
X
9は、Ser、Val、AlaまたはThrを示し、
X
10は、GlyまたはArgを示し、
X
11は、Leu、Met、Ile、ValまたはAlaを示し、
X
12は、Gly、SerまたはAlaを示し、
2つのCysを結ぶ線は、ジスルフィド結合を表す、
で表されるアミノ酸配列を有し、
当該アミノ酸配列が、当該アミノ酸配列を構成するアミノ酸同士以外のペプチド結合を有さない、
環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
X1~X12が、以下の(1)~(12):
(1)X1が、Gly、Val、Ala、SerまたはThrを示す、
(2)X2が、Arg、GlnまたはHisを示す、
(3)X3が、LysまたはArgを示す、
(4)X4が、Met、LeuまたはIleを示す、
(5)X5が、IleまたはValを示す、
(6)X6が、SerまたはGlyを示す、
(7)X7が、SerまたはAlaを示す、
(8)X8が、Ser、Gln、Val、Ala、Thr、Leu、IleまたはMetを示す、
(9)X9が、Ser、Val、AlaまたはThrを示す、
(10)X10が、GlyまたはArgを示す、
(11)X11が、Leu、Met、Ile、ValまたはAlaを示す、および
(12)X12が、Gly、SerまたはAlaを示す、
からなる群か選択される1または2以上である、
請求項1に記載の環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
配列番号3~8および配列番号16~75の環状ペプチドから選択される、請求項1に記載の環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
誘導体が環状ペプチド中の水素原子、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、イミノ基に対
して置換可能な置換基で置換されたものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
配列番号3~7のいずれかで表される環状ペプチド中のアミノ酸の1以上4以下を欠失させるか、他のアミノ酸で置換または付加することにより形成され、かつ前記各式で表される環状ペプチドと同等の機能を有する環状ペプチドもしくはその誘導体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩を1種以上含む、外用剤。
【請求項7】
皮膚炎治療剤、皮膚炎予防剤、鎮痒剤、消炎剤、傷上皮化促進剤またはスキンケア用品の材料である、請求項6に記載の外用剤。
【請求項8】
スキンケア用品が、保湿用および/または肌荒れ防止・改善用および/または皮脂ケア・ニキビケア用および/または刺激緩和・抗炎症用および/または美白用および/または老化防止用および/または紫外線傷害予防・緩和用および/またはスリミング用および/または皮膚清浄用である、請求項7に記載の外用剤。
【請求項9】
入浴剤、身体洗浄剤または頭髪用洗浄剤である、請求項6に記載の外用剤。
【請求項10】
脱毛症治療剤、脱毛症予防剤、育毛剤および/または発毛剤である、請求項6に記載の外用剤。
【請求項11】
鼻炎治療剤および/または鼻炎予防剤である、請求項6に記載の外用剤。
【請求項12】
化粧料である、請求項6に記載の外用剤。
【請求項13】
剤形が、固形剤、半固形剤、粉末剤、液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、乳液剤、ゲル剤または貼付剤である、請求項6~12のいずれか一項に記載の外用剤。
【請求項14】
医薬品、医薬部外品または化粧品として用いられる、請求項6~13のいずれか一項に記載の外用剤。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか一項に記載の環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩の外用剤の製造のための使用。
【請求項16】
皮膚および/または粘膜に適用するための、請求項6~14のいずれか一項に記載の外用剤。
【請求項17】
粘膜が口唇、口腔、鼻腔、眼または膣である、請求項16に記載の外用剤。
【請求項18】
皮膚炎の治療および/もしくは予防方法、痒みの軽減もしくは消失方法、湿疹等によるびらん、潰瘍の治療方法またはスキンケア方法である、請求項16に記載の外用剤。
【請求項19】
脱毛症の治療および/もしくは予防方法ならびに/または発毛方法ならびに/または育毛方法である、請求項16に記載の外用剤。
【請求項20】
鼻炎の治療および/または予防方法である、請求項16に記載の外用剤。
【請求項21】
請求項1~5のいずれか一項に記載の環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩を1種以上含む、医薬。
【請求項22】
高血圧症、不安定狭心症、急性心筋梗塞、浮腫性疾患、腎不全、心不全、免疫疾患、肥満、メタボリックシンドロームの治療薬である、請求項21に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ペプチド並びに該環状ペプチドを含む医薬、外用剤および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド:brain natriuretic peptide)は、心臓(主に心室)で合成され分泌されるホルモンである。BNPは、1988年に豚の脳から単離、同定され、その後ヒト等の心室筋より分泌されることが知られている。心臓の負荷が増えたり、心筋の肥大が起こったりすると、BNPが分泌され、その血中濃度が増加する。一般に、BNPは利尿作用、血管拡張作用、レニン・アルドステロン分泌抑制、交感神経抑制、肥大の抑制などの作用があって、心筋を心臓への負担によるダメージから保護するように働くホルモンであると考えられている。
【0003】
BNPは産生される個体種によって、BNPを構成するアミノ酸が若干異なるが、その構造は、環状部分と尾部を共通構造として有していることが判明している(非特許文献1~2)。例えば野生型ヒトBNPは、32個のアミノ酸残基からなることが知られており、さらに、その断片や誘導体等も提案されている(特許文献1~6)。
【0004】
現在、BNPは日本では治療薬ではなく、心不全の生化学的マーカーとして広く臨床現場で用いられているが、アメリカでは、心不全の症状緩和のための薬剤(商品名:natrecor(商標))としても使用されている。また最近では、BNPを含む外用剤の皮膚炎、鼻炎、脱毛症等の治療や肌質改善剤への利用なども提案されている(特許文献7~9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007-525213号公報
【特許文献2】特表2008-509746号公報
【特許文献3】国際公開第2008/032450号
【特許文献4】米国特許第6028055号明細書
【特許文献5】米国特許第5114923号明細書
【特許文献6】米国特許第6818619号明細書
【特許文献7】国際公開第2011/010732号
【特許文献8】国際公開第2011/024973号
【特許文献9】国際公開第2012/099258号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】N. Akizukia, K. Kangawaa, N. Minaminob, H. Matsou, FEBS Letters 1991 280(2):357-362.
【非特許文献2】Takei Y, Fukuzawa A, Itahara Y, Watanabe TX, Yoshizawa Kumagaye K, Nakajima K, Yasuda A, Smith MP, Duff DW, Olson KR. FEBS Lett. 1997 Sep 8;414(2):377-80.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したようにBNPは、各種疾患の治療等に有用な物質であると考えられている。しかしながら、より一層高い治療、処置効果を得るために、より一層薬効、効能の強い物質や、さらに即効性や持続性に優れた物質の開発が求められる。
【0008】
また、薬効、効能の持続性、即効性をより一層高めることは、必要な処置回数・頻度を減らす、患者、使用者の苦痛を和らげる、使用者の生活の質、日常における精神的・身体的・社会的・知的な満足度を改善する(QOL: quality of life)といった観点から、非常に有意義である。例えば、皮膚炎は、患部に痒み、浸潤、ほてりといった症状を伴う場合が多いが、迅速にこれらの症状を緩和することができれば、患者の苦痛が軽減される。また、脱毛症治療剤、育毛剤、発毛剤を使用する場合、迅速に治療、発毛、育毛効果が発現すれば、使用者のQOLを高めることが可能である。
【0009】
本発明者らは、これらの点に着目し、BNPの構造を参考に新規の物質の探索を試みた。
したがって、本発明の目的は、薬効、効能の強い新規ペプチド、これを含む医薬や外用剤、特に皮膚炎、鼻炎、脱毛症に対する予防または治療剤や発毛剤、育毛剤、鎮痒剤、化粧料、スキンケア用品などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来野生型BNPにおける受容体への結合および選択性においては、環状部と尾部とからなるBNPのペプチド構造中の尾部が少なくとも一定の重要な役割を果たしていると考えられていたところ、本発明者は、敢えて、前記構造中の環部に着目し、尾部を欠失させて得られる環状ペプチドについて鋭意研究を行う中で、かかる環状ペプチドによる効能、薬効が高いこと、効果の発現が早いこと、効果の持続性が上がること等の全く新しい知見を得ることができ、さらに研究をつづけた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
【0011】
[1]
式I:
【化1】
式中、
X
1は、Gly、Val、Ala、SerまたはThrを示し、
X
2は、Arg、GlnまたはHisを示し、
X
3は、LysまたはArgを示し、
X
4は、Met、LeuまたはIleを示し、
X
5は、IleまたはValを示し、
X
6は、SerまたはGlyを示し、
X
7は、SerまたはAlaを示し、
X
8は、Ser、Gln、Val、Ala、Thr、Leu、IleまたはMetを示し、
X
9は、Ser、Val、AlaまたはThrを示し、
X
10は、GlyまたはArgを示し、
X
11は、Leu、Met、Ile、ValまたはAlaを示し、
X
12は、Gly、SerまたはAlaを示し、
2つのCysを結ぶ線は、ジスルフィド結合を表す、
で表されるアミノ酸配列を有し、
当該アミノ酸配列が、当該アミノ酸配列を構成するアミノ酸同士以外のペプチド結合を有さない、
環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩。
【0012】
[2]
X
2が、Argを示し、
X
4が、Metを示し、
X
6が、Serを示し、
X
7が、Serを示し、かつ、
X
10が、Glyを示す、[1]に記載の環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩。
[3]
前記アミノ酸配列が、式(I-a)~式(I-e)
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
式中、2つのCysを結ぶ線は、ジスルフィド結合を表す、
で表されるアミノ酸配列から選択される、[1]に記載の環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩。
【0013】
[4]
誘導体が環状ペプチド中の水素原子、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、イミノ基に対して置換可能な置換基で置換されたものである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩。
[5]
[3]に記載の式(I-a)~(I-e)のいずれかで表される環状ペプチド中のアミノ酸の1以上4以下を欠失させるか、他のアミノ酸で置換または付加することにより形成され、かつ前記各式で表される環状ペプチドと同等の機能を有する環状ペプチドもしくはその誘導体またはその薬学的に許容可能な塩。
[6]
[1]~[5]のいずれか一項に記載の環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩を1種以上含む、外用剤。
[7]
皮膚炎治療剤、皮膚炎予防剤、鎮痒剤、消炎剤、表皮再生促進剤、傷上皮化促進剤またはスキンケア用品の材料である、[6]に記載の外用剤。
【0014】
[8]
スキンケア用品が、保湿用および/または肌荒れ防止・改善用および/または皮脂ケア・ニキビケア用および/または刺激緩和・抗炎症用および/または美白用および/または老化防止用および/または紫外線傷害予防・緩和用および/またはスリミング用および/または皮膚清浄用である、[7]に記載の外用剤。
[9]
入浴剤、身体洗浄剤または頭髪用洗浄剤である、[6]に記載の外用剤。
[10]
脱毛症治療剤、脱毛症予防剤、育毛剤および/または発毛剤である、[6]に記載の外用剤。
[11]
鼻炎治療剤および/または鼻炎予防剤である、[6]に記載の外用剤。
【0015】
[12]
化粧料である、[6]に記載の外用剤。
[13]
剤形が、固形剤、半固形剤、粉末剤、液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、乳液剤、ゲル剤または貼付剤である、[6]~[12]のいずれか一項に記載の外用剤。
[14]
医薬品、医薬部外品または化粧品として用いられる、[6]~[13]のいずれか一項に記載の外用剤。
[15]
[1]~[4]のいずれか一項に記載の環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩の外用剤の製造のための使用。
【0016】
[16]
[6]~[14]のいずれか一項に記載の外用剤を、対象の皮膚および/または粘膜に適用することを含む、外用剤の使用方法。
[17]
粘膜が口唇、口腔、鼻腔、眼または膣である、[16]に記載の外用剤の使用方法。
[18]
皮膚炎の治療および/もしくは予防方法、痒みの軽減もしくは消失方法、湿疹等によるびらん、潰瘍の治療方法またはスキンケア方法である、[16]に記載の外用剤の使用方法。
【0017】
[19]
脱毛症の治療および/もしくは予防方法ならびに/または発毛方法ならびに/または育毛方法である、[16]に記載の外用剤の使用方法。
[20]
鼻炎の治療および/または予防方法である、[16]に記載の外用剤の使用方法。
[21]
[1]~[5]のいずれか一項に記載の環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩を1種以上含む、医薬。
[22]
高血圧症、不安定狭心症、急性心筋梗塞、浮腫性疾患、腎不全、心不全、免疫疾患、肥満、メタボリックシンドロームの治療薬である、[21]に記載の医薬。
ここでいう環状ペプチド(以下、「BNP環状ペプチド」、「B環」または「B環化合物」ということがある)は、前記のとおり野生型BNPから誘導されるものであるが、野生型BNPとしては、ヒト由来のそればかりでなく、サル、ブタ、トリ、ラット由来のものが包含される。したがって、B環化合物としても、ヒト由来のそればかりでなく、サル、ブタ、トリ、ラット由来のものが包含される。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、新規な環状ペプチド、これを含む組成物を提供することができる。かかる組成物は、皮膚炎、鼻炎、脱毛症に対する予防または治療用の外用剤、さらには発毛剤、育毛剤、鎮痒剤などに適用され、いずれも医薬、医薬部外品、スキンケア用品、化粧品などとして提供される。なお、本発明において単に「外用剤」という場合、医薬、医薬部外品、スキンケア用品、化粧品などの用途に限定されない、皮膚、粘膜に適用する剤を意味する。
【0019】
本発明の外用剤は、皮膚炎に対する有効性が概して従来のステロイド外用剤よりも顕著であり、しかも、症状が概して3分以内に改善され始める等の優れた即効性を有し、その効果も大きく、かつ持続性が有り寛解期間が長い。
また、本発明の外用剤は、皮膚炎に罹患した対象の皮膚または粘膜上に適用した場合において、皮膚炎によって生じるまたは生じ得る什痒感、痛み(疼痛)、熱感、突っ張り感、浸潤、紅斑等の知覚可能な各種症状、状態を迅速に軽快もしくは消失させつつ、皮膚炎の症状を改善することができる。
【0020】
さらに、本発明の外用剤は、適用部位において保湿効果を発揮するとともに、適用部位に角質層が存在する場合には適用部位の肌理を整える効果を発揮し、この結果、肌理が整い、乾燥肌や肌荒れが改善され、肌質が柔らかく、しっとりとし、しわが浅くなって目立たなくなる、さらには唇の荒れを改善するといった効果を発揮することができる。
【0021】
また、本発明の外用剤は、脱毛部位または発毛部位等の部位に適用した場合において、適用部位における脱毛を防止するとともに発毛または育毛を促進させる効果を有する。この場合において、発毛する毛髪は硬毛となりやすく、白髪ではない髪となりやすい傾向にある。また、これらの効果は、従来脱毛症治療剤において用いられた他の活性成分、例えばBNPと比較して比較的早期に発現し、得られる効果も顕著である。
【0022】
さらにまた、本発明の外用剤は、鼻炎に対しても即効性を有し、その効果も大きく、かつ持続性が有り寛解期間が長い。
【0023】
なお、本発明の環状ペプチドは、もともと体内に備わるホルモンであるBNPとその構造に共通部分を有するペプチドであるため、副作用の心配が少なく、また適正な使用量である限りあるいは皮膚などに外用する際には血行動態に対する影響が軽微と考えられるため、長期に渡って投与が必要な患者、例えば慢性的皮膚炎患者に対しても長期投与が可能である。さらに、本発明の外用剤は、外用した際に刺激感がなく、皮膚が敏感な患者に加え、小児や女性に対しても顔面や首等へも、安心して適用することができる。
【0024】
また、本発明の環状ペプチドが、野生型BNPと比較して、優れた薬効、効能を有する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らのin silico解析によれば、本発明の環状ペプチドはNPR-A受容体(GC-A)に対し、野生型BNPと比して結合しやすくなることや、強く結合することが示唆されるところ、このことから、環状ペプチドが、薬効および効能、特にこれらの即効性に優れることが推測される。また、上記のとおり、B環化合物は、ヒト由来のものばかりでなく、異種動物由来の、例えば、サル、ブタ、トリ、ラット由来のB環もあるが、これらは同様の構造を有することが確認されているところ、いずれのB環についても後述する構造解析の結果から見て、ヒト由来のB環化合物と同様の効果を奏することが強く推測される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】顔面に大じわを有する被験者にBNP環状ペプチド(A)とゲル製剤(B)を左右に塗り分けた結果を示す図である。
【
図2】女性型脱毛症及び粃糠性脱毛症患者に対する、B環ゲル製剤およびBNPゲル製剤の塗布前と塗布後の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を好適な実施形態に基づき詳細に説明する。
【0027】
1.環状ペプチド、その誘導体およびこれらの薬学的に許容可能な塩
まず、本発明の環状ペプチド、その誘導体およびこれらの薬学的に許容可能な塩について説明する。
本発明の環状ペプチドは、式I:
【化7】
(配列番号1)
【0028】
式中、
X1は、Gly、Val、Ala、SerまたはThrを示し、
X2は、Arg、GlnまたはHisを示し、
X3は、LysまたはArgを示し、
X4は、Met、LeuまたはIleを示し、
X5は、IleまたはValを示し、
X6は、SerまたはGlyを示し、
X7は、SerまたはAlaを示し、
X8は、Ser、Gln、Val、Ala、Thr、Leu、IleまたはMetを示し、
X9は、Ser、Val、AlaまたはThrを示し、
X10は、GlyまたはArgを示し、
X11は、Leu、Met、Ile、ValまたはAlaを示し、
X12は、Gly、SerまたはAlaを示し、
2つのCysを結ぶ線は、ジスルフィド結合を表す、
で表されるアミノ酸配列を有し、
当該アミノ酸配列が、当該アミノ酸配列を構成するアミノ酸同士以外のペプチド結合を有さない、環状ペプチドである。
このような環状ペプチドは、従来知られているBNPと同様に、グアニル酸シクラーゼドメインを有する受容体NPR-A(別名GC-A)と結合して環状グアノシン一リン酸(Cyclic guanosine monophosphate、cGMP)の産生を促進し、例えば、利尿作用、血管拡張作用、レニン・アルドステロン分泌抑制、交感神経抑制、肥大の抑制などの作用を有するものと考えられるが、BNPと比較して、優れた薬効、効能、特に優れた即効性を有する。
【0029】
そして、後述するように、上記環状ペプチドは、皮膚炎治療/予防剤、鼻炎治療/予防剤、脱毛症治療/予防剤、育毛剤、発毛剤、鎮痒剤等の外用剤の成分として、また、スキンケア用品、医薬部外品、化粧品の材料として用いることができる。さらに、上記BNPの活性を利用する医薬、例えば、高血圧症、不安定狭心症、急性心筋梗塞、浮腫性疾患、腎不全、心不全、免疫疾患、肥満、メタボリックシンドロームのための医薬において、BNPの代替として上記環状ペプチドを使用することが可能である。
【0030】
また、本発明の別の態様において、本発明の環状ペプチドは、上記式(I)において、上記X1~X12が、以下の(1)~(12):
(1)X1が、Gly、Val、Ala、SerまたはThrを示す、
(2)X2が、Arg、GlnまたはHisを示す、
(3)X3が、LysまたはArgを示す、
(4)X4が、Met、LeuまたはIleを示す、
(5)X5が、IleまたはValを示す、
(6)X6が、SerまたはGlyを示す、
(7)X7が、SerまたはAlaを示す、
(8)X8が、Ser、Gln、Val、Ala、Thr、Leu、IleまたはMetを示す、
(9)X9が、Ser、Val、AlaまたはThrを示す、
(10)X10が、GlyまたはArgを示す、
(11)X11が、Leu、Met、Ile、ValまたはAlaを示す、および
(12)X12が、Gly、SerまたはAlaを示す、
からなる群から選択される1または2以上であってもよい。
また、本発明の環状ペプチドは、上記式(I)において、X2がArgを示し、X4がMetを示し、X6がSerを示し、X7がSerを示し、および/またはX10がGlyを示す環状ペプチド(配列番号2)が好ましい。
【0031】
さらに、本発明の別の態様において、本発明の環状ペプチドは、式(I)で表されるアミノ酸配列が、配列番号3~8および配列番号16~75から選択されてもよい。
【0032】
さらに、本発明の環状ペプチドは、式(I)で表されるアミノ酸配列が、式(I-a)~式(I-e)
【化8】
(配列番号3)
【化9】
(配列番号4)
【化10】
(配列番号5)
【化11】
(配列番号6)
【化12】
(配列番号7)
式中、2つのCysを結ぶ線は、ジスルフィド結合を表す、
で表されるアミノ酸配列から選択される、ことが好ましい。
【0033】
これらの式(I-a)~(I-e)で表されるアミノ酸配列は、それぞれ、ヒトBNP(式(I-a))、ブタBNP(式(I-b))、ラットBNP(式(I-c))、ウサギBNP(式(I-d))およびマウスBNP(式(I-e))の環状部分である。したがって、このようなアミノ酸配列を有する環状ペプチドは、より確実に上述した効果を奏するものとなる。なお、ブタのBNP環状ペプチドは、トリ(配列番号8、Cys-Phe-Gly-Arg-Arg-Ile-Asp-Arg-Ile-Gly-Ser-Leu-Ser-Gly-Met-Gly-Cys、式中、一番目のCysと17番目のCysはジスルフィド結合をしている)、ウシ(配列番号9、Cys-Phe-Gly-Arg-Arg-Leu-Asp-Arg-Ile-Gly-Ser-Leu-Ser-Gly-Leu-Gly-Cys、式中、一番目のCysと17番目のCysはジスルフィド結合をしている)、ネコ(配列番号10、Cys-Phe-Gly-Arg-Arg-Leu-Asp-Arg-Ile-Gly-Ser-Leu-Ser-Gly-Leu-Gly-Cys、式中、一番目のCysと17番目のCysはジスルフィド結合をしている)、イヌ(配列番号11、Cys-Phe-Gly-Arg-Arg-Leu-Asp-Arg-Ile-Gly-Ser-Leu-Ser-Gly-Leu-Gly-Cys、式中、一番目のCysと17番目のCysはジスルフィド結合をしている)、ヒツジ(配列番号12、Cys-Phe-Gly-Arg-Arg-Leu-Asp-Arg-Ile-Gly-Ser-Leu-Ser-Gly-Leu-Gly-Cys、式中、一番目のCysと17番目のCysはジスルフィド結合をしている)と一致することから、これらの生物由来のBNP環状ペプチドも、本発明と同様の効果を有する。とりわけ、上述した中でも、特に、式(I)で表されるアミノ酸配列が、式(I-a)で表されるアミノ酸配列であることが好ましい。また、本発明の別の態様において、配列番号16~75で表される環状ペプチドでよい。
【0034】
本発明の環状ペプチドは、前記の環状ペプチドを誘導体化したものを含む。このような誘導体は、活性物質としてそのまま用いることができる他、プロドラッグとしても用いることができる。
【0035】
また、本発明の誘導体は、環状ペプチド中のアミノ酸の特定の基、例えば、水素原子、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、イミノ基等に対し、公知の置換基を付加(修飾)または置換可能な公知の置換基で置換することにより得ることができる。修飾には、環状ペプチド内のアミノ酸へ、例えば、糖鎖付加、アセチル化、リン酸化、脂質付加などの化学修飾が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、環状ペプチド中のアミノ酸の基への付加(修飾)または置換は、1または2以上の基で同時に起こっても、それ以上であってもよい。なおこのような置換基としては、上記の基に対し置換可能であれば特に限定されず公知の置換基を用いることができ、例えば、BOC等の保護基も当然含まれるのは言うまでもない。
【0037】
さらに、本発明の環状ペプチドは、前記環状ペプチドを変異させたものも含む。すなわち、本発明の変異体は、環状ペプチド中のアミノ酸を欠失させるか、他のアミノ酸で置換または付加することより得ることができる。また欠失させるか、他のアミノ酸で、置換または付加するアミノ酸の数は、4以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下であり、特に好ましくは1以下である。また、環状ペプチド中のアミノ酸の欠失、他のアミノ酸で置換または付加は、それぞれ独立して、同時に起こってもよいのは言うまでもない。
【0038】
また、他のアミノ酸で置換し得る、アミノ酸は、ヒトBNP(式(I-a))でいえば、以下のように例示することができるがこれらに限定されるものではない。左から3番目のアミノ酸であるGlyを、Val、Ala、SerまたはThrのいずれかに置換してもよい。左から4番目のアミノ酸であるArgを、GlnまたはHisのいずれかに置換してもよい。左から5番目のアミノ酸であるLysを、Argに置換してもよい。左から6番目のアミノ酸であるMetを、LeuまたはIleのいずれかに置換してもよい。左から9番目のアミノ酸であるIleを、Valに置換してもよい。左から12番目のアミノ酸であるSerを、Gln、Val、Ala、Thr、Leu、IleまたはMetのいずれかに置換してもよい。左から13番目のアミノ酸であるSerを、Val、AlaまたはThrのいずれかに置換してもよい。左から14番目のアミノ酸であるGlyを、Argのいずれかに置換してもよい。左から15番目のアミノ酸であるLeuを、Met、Ile、ValまたはAlaのいずれかに置換してもよい。左から16番目のアミノ酸であるGlyを、SerまたはAlaのいずれかに置換してもよい。なお、本発明の環状ペプチドにおける、置換可能なアミノ酸の一例を表32にまとめたが、これらに限定されるものではない。
【0039】
なお、1アミノ酸が置換された環状ペプチドは、例えば配列番号16~44等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2アミノ酸が置換された環状ペプチドは、例えば配列番号45~58等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに3アミノ酸が置換された環状ペプチドは、例えば配列番号59~70等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらには、4アミノ酸が置換された環状ペプチドは、例えば配列番号71~75等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記したアミノ酸を適宜組み合わせることで、5以上のアミノ酸を置換することができることは言うまでもない。
【0040】
1~数個のアミノ酸を欠失させることができるアミノ酸は、上記した他のアミノ酸で置換し得るアミノ酸と同様に行うことができる。
【0041】
また、欠失させるか、他のアミノ酸で、置換または付加するアミノ酸の数は、本発明の環状ペプチドに対して、80%相同性があって良く、好ましくは、90%の相同性を有する環状ペプチドであってもよい。
【0042】
さらに、本発明は、上記の変異体であって、なおかつその誘導体であってもよい。本発明の効果を有する限り、いかなる変異体またはその誘導体も、本発明に係る環状ペプチドに包含される。また別の態様では、少なくともBNP活性を有してもよい。なお、本発明の環状ペプチドの活性を向上させること、本発明の効果を持続させること、および/または本発明の環状ペプチドの保存安定性を増加させること等を目的として、本発明の環状ペプチドまたはこれを構成するアミノ酸を適宜改変することができる。例えば、本発明の環状ペプチドのアミノ酸等への化学修飾等を行うこと、環状ペプチドを構成する一部のアミノ酸を欠失させること、他のアミノ酸等へ置換することおよび/または新たなアミノ酸を付加させることができる。
【0043】
例えば、環状ペプチドの一方のCysのC末端基を、-COOHに代えて、-COOR1、-CONHR1または-CONR12に、および/または環状ペプチドの他方のCysのN末端基を、NH2に代えて、-NHC(O)R1または-N(C(O)R1)2とすることができる。ここで、R1は、出現毎に独立して、炭素数1~20の分岐もしくは直鎖の炭化水素基またはアルキレングリコール鎖または糖鎖である。なお、R1の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~2である。
【0044】
また、薬学的に許容可能な塩としては、特に限定されないが、本発明の環状ペプチドまたは誘導体として、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などがあげられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミンとの塩;ピリジン、ピコリンなどの複素環式アミンとの塩;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンとの塩;シクロへキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどのシクロアルキルアミンとの塩;N,N’-ジベンジルエチレンジアミンなどのアルキレンジアミン誘導体との塩等が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩があげられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸との塩;フマル酸、シュウ酸、マレイン酸等の多価カルボン酸との塩;酒石酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸との塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸との塩;安息香酸との塩等が挙げられる。中性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、グリシン、バリン、ロイシン等との塩が挙げられ、塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
【0045】
上述した中でも、式(I)で表されるアミノ酸配列からなる環状ペプチドまたはこの薬学的に許容可能な塩が好ましい。すなわち、式(I)で表されるアミノ酸配列は、置換されていないことが好ましい。
【0046】
本発明の環状ペプチド、誘導体、およびこれらの薬学的に許容可能な塩の製造方法としては、特に限定されず、例えば、公知の化学合成法や遺伝子工学的合成法を用いることができる。
【0047】
上記のアミノ酸配列の合成を化学合成法により行う場合には、いかなる化学合成法により合成してもよく、公知のペプチドの合成方法、例えば固相合成法や液相合成法によって合成することができる。また、合成に当たり、市販のペプチド合成装置(例えば、島津製作所製:PSSM-8など)を使用してもよい。
【0048】
また、アミノ酸配列中のジスルフィド結合は、特に限定されないが、例えばDMSO酸化法、ヨウ素酸化法などにより形成することができる。この場合、遊離のスルフヒドリル基または保護基で保護されたスルフヒドリル基をDMSOまたはヨウ素(I2)処理することにより、分子内ジスルフィド結合を形成することができ、この結果、環状ペプチドを得ることができる。
【0049】
なお、保護基としては、例えば、4-メチルベンジル基(Bzl(4Me))、トリチル基(Trt)、tert-ブチル基、N-(アセチル)アミノメチル基(Acm)等が挙げられる。また、脱保護は、これらの保護基に対応する適切な処理により、例えば、4-メチルベンジル基については強酸で、N-(アセチル)アミノメチル基についてはヨウ素で処理することにより、行うことができる。
【0050】
次に、必要に応じて環状ペプチドの誘導体化を行い、誘導体を得る。なお、誘導体化は、公知の方法により行うことが可能である。また、環状ペプチドを構成するアミノ酸に予め置換基を導入することにより、ペプチド合成とともに環状ペプチドの誘導体を製造してもよい。
【0051】
次に、必要に応じて、環状ペプチドまたは誘導体の塩交換を行うことにより、薬学的に許容可能な塩を製造する。塩交換は、例えば、環状ペプチドまたは誘導体を所望の酸または塩基と接触させることにより行うことができる。
【0052】
一方で、ペプチドを遺伝子工学的に合成する場合、公知の方法、例えば、Sambrook J. et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (4th edition)(Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012))に記載されるような方法により合成できる。例えば、まず、式(I)で表されるアミノ酸配列をコードしたDNA断片を調製する。DNA断片の調製は、例えば、式(I-a)で表されるアミノ酸配列をコードするDNA断片の場合、全長ヒトBNP遺伝子を含むベクター等を鋳型とし、所定のDNA領域を合成するように設計したプライマーを用いて、PCR法によりDNA断片を増幅することにより行うことができる。なお、DNA断片を化学的に合成してもよい。
【0053】
次に、増幅したDNA断片を適当なベクターに連結し、タンパク質発現用組換えベクターを得る。次にタンパク質発現用組換えベクターをターゲットとなる細胞に取り込ませ、取り込んだ細胞を選別する。最後に、細胞から産生されたタンパク質(式(I)で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質)を回収する。
回収されたタンパク質におけるジスルフィド結合の形成、誘導体化、塩の形成は、上述したように行うことができる。
【0054】
なお、目的とする環状ペプチド等の化合物が得られたことの確認は、例えば逆相HPLC、質量分析等の公知手法により行うことができる。
また、得られた化合物のBNP活性の有無については、公知の手段によって容易に確認することが可能であり、例えばNPR-A受容体発現細胞におけるcGMP産生活性を試験することにより確認することができる。
【0055】
2.外用剤
次に、本発明の外用剤について説明する。
本発明の外用剤は、1種以上の上述したような環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩を含む。なお、2種以上の環状ペプチドを用いる場合、混合する環状ペプチドの種類に特に上限はないが、調製コストや簡便性の点から、2~3種程度が好ましい。例えば、配列番号19、29、33、36、39および43等が挙げられるが、本発明の効果を害するものでなければ、これらに限定されず、適用対象等に合わせて、適宜これらの環状ペプチドを組み合わせることができる。
【0056】
2.1 用途
本発明の外用剤は、特に限定されないが、例えば、以下のような用途に用いることができ、それぞれの場合において、従来にない顕著な効果を発揮する。なお、本発明の外用剤は、いずれの用途においても、特に限定されず、その薬効、効能に応じて、医薬品、医薬部外品および/または化粧品として使用することができる。
【0057】
以下、用途毎に詳細に説明する。
(1)皮膚炎治療剤、皮膚炎予防剤
本発明の外用剤は、皮膚炎治療剤および/または皮膚炎予防剤であることができる。
【0058】
本発明の外用剤は、皮膚炎に罹患した対象の皮膚または粘膜上に適用した場合において、皮膚炎によって生じるまたは生じ得る掻痒感、痛み(疼痛)、熱感、突っ張り感、紅斑、浸潤、丘疹、苔癬化、痂皮、浸出、皮膚乾燥等の知覚可能な各種症状、状態を迅速に軽快もしくは消失させつつ、皮膚炎の症状を改善することができる。また、本発明の外用剤は、適用部位において刺激感を生じさせない。
【0059】
そして、本発明の環状ペプチドを含む外用剤のこのような作用は、尾部を有するBNPを含む外用剤の作用と比較して、より迅速に発現し、その持続時間もより長いものである。このようなBNPと比較した環状ペプチドの有利な効果の原因は定かではないが、本発明の環状ペプチドがBNPと比較して、その受容体であるNPR-A受容体に対し結合に有利な構造を有していることが考えられ、これにより、患部付近のNPR-A受容体により迅速に結合することができるとともに、その結合時間がより長いものとなっていることが考えられる。また、比較的迅速に患部付近のNPR-A受容体に結合することにより、環状ペプチドが血流等により患部外に拡散することを防止することができ、環状ペプチドを比較的長時間にわたり患部付近に留めることができるものと考えられる。
【0060】
また、本発明の外用剤は、皮膚炎の炎症を抑制または予防するのみならず、皮膚のバリア機能を回復させるまたは維持する作用を有する。ここで、皮膚のバリア機能は、外部環境からの刺激や雑菌等の皮膚への侵入を防止する機能や保湿機能を有するが、外用剤によってバリア機能を回復させることにより、炎症の進行、悪化を防止することができる。なお、皮膚のバリア機能は、角質層の角質細胞の整列状態、すなわち肌理の状態や、保湿状態などに大きく影響されるところ、本発明の外用剤は、肌理を整え、肌をしっとりさせる作用を有することから、当該外用剤の皮膚のバリア機能の回復作用、維持作用も明らかである。
【0061】
また、本発明の外用剤は俗にニキビとも呼ばれる面皰、紅色丘疹、膿疱、嚢腫・結節などの皮膚症状に対しても有効である。
【0062】
また、知覚可能な症状、状態が迅速に軽快または消失することにより、対象(患者)の負担が減り、患者のQOLが向上するとともに、痒み、痛みを気にして患部に触れる、掻き毟るといった患部を損傷させる患者の動作を防止することができる。このような本発明の外用剤の知覚可能な症状、状態の軽快、消失効果は、一般に適用後10分以内、好ましくは、5分以内、より好ましくは3分以内に発現する。
【0063】
加えて、本発明の外用剤は、ステロイド皮膚症を生じた皮膚炎や、ステロイド、タクロリムス等の他の一般的な皮膚炎治療用の薬剤で治療できない皮膚炎、例えば、満足な治療効果が得られない、それらの製剤に抵抗性がある、使用が適さないまたは望ましくない皮膚炎などについても治療可能である。また、従来から汎用されているステロイド外用剤の場合は、外用を中止すると、すぐに外用前の重症度に戻るか、あるいはリバウンド現象が起こって外用前よりも増悪するという大きな問題があったが、本発明の外用剤については、このようなリバウンド現象といった問題がない。
【0064】
皮膚炎は、一般に、皮膚または粘膜上に炎症を生じさせる疾患である。皮膚炎は、通常、紅斑、浸潤性紅斑、丘疹、小水疱、膿疱、浸潤、結痂、落屑等の急性湿疹症状、苔癬化、色素沈着等の慢性湿疹症状や、鱗屑、痂皮(かさぶた)付着、掻破、掻破痕、痒疹結節、びらん、浮腫、じくじく感、鱗状化からなる群から選択される1以上の症状を伴う。
【0065】
ここで、皮膚炎としては、皮膚または粘膜上に炎症を伴う疾患であれば特に限定されないが、例えば、慢性湿疹、異汗性湿疹、小児性乾燥湿疹等の湿疹、アトピー性皮膚炎;アレルギー性接触皮膚炎、一次刺激性接触皮膚炎等の接触性皮膚炎;脂漏性皮膚炎;皮脂欠乏性皮膚炎;自家感作性皮膚炎;うっ滞性皮膚炎;アレルギー性蕁麻疹(例えば、食物性蕁麻疹、薬剤性蕁麻疹)、非アレルギー性蕁麻疹(例えば、物理性蕁麻疹、日光蕁麻疹、コリン性蕁麻疹)等の蕁麻疹;虫刺症;薬疹;尋常性乾癬、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬、関節症性乾癬等の乾癬;慢性痒疹、急性痒疹、妊娠性痒疹、結節性痒疹等の痒疹;酒さ;酒さ様皮膚炎;皮膚アレルギー性血管炎等の皮膚血管炎;全身性皮膚掻痒症、限局性皮膚掻痒症、老人性皮膚掻痒症、妊娠掻痒症等の皮膚掻痒症;日光皮膚炎;紅皮症;貨幣状皮膚炎;限局性掻破皮膚炎;口囲皮膚炎;汗疱;毛孔性角化症;扁平苔癬、異汗性湿疹、異汗症、汗疹、尋常性座瘡等が挙げられ、本発明の外用剤は、いずれの疾患の治療および予防にも適用可能である。
【0066】
本発明の外用剤は、特に湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、虫刺症、アレルギー性もしくは非アレルギー性蕁麻疹、乾癬に対して、好ましくは、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、虫刺症、に対して、より好ましくは、湿疹、アトピー性皮膚炎に対して、優れた効果を発揮する。したがって、本発明の外用剤は、上述の群から選択される少なくとも1種以上の皮膚炎の治療または予防を目的として用いることができる。
【0067】
(2)化粧料またはスキンケア用品の材料
本発明の外用剤は、化粧料またはスキンケア用品の材料であることができる。
本発明の外用剤は、皮膚および/または粘膜に適用した場合に、適用部位において潤を与え、保湿効果を発揮して乾燥を防ぐとともに、肌荒れを防ぐ。適用部位に角質層が存在する場合には適用部位の肌理を整える効果を発揮する。また、皮膚および粘膜に適度な弾力性と柔軟性が付与・保持され、肌が柔らかくなり、皮膚、粘膜にハリが生じ、ひきしまる。また、適用部位において小じわ、大じわを含むしわやたるみが改善され、さらにくすみ、しみが目立たないものとなる。また、くすみ、しみが目立たなくなることから、結果的に美白効果が得られる。
【0068】
結果として、本発明の外用剤は、皮膚および/または粘膜の状態の維持または改善を目的として、特に限定されないが、例えば、乾燥肌、肌荒れ、敏感肌、唇荒れ、たるみ、小じわおよび大じわの発生防止、進行防止または改善ならびに、皮膚または粘膜の状態の維持、アンチエイジングおよび美白からなる群から選択される少なくとも1種を目的として、あるいは上記の効果から選択される少なくとも1種の効果を得ることを目的として用いることができる。
なお、本明細書中において、肌荒れは、あせも、しもやけ、ひび、あかぎれ、にきび、おしめ(おむつ)かぶれ、ただれ、股ずれおよび剃刀まけを含む。
【0069】
本発明の外用剤の化粧料またはスキンケア用品の材料としての具体的な用途としては、特に限定されないが、例えば、化粧水、乳液、美容液、クリーム、コールドクリーム、ジェル、マスク、パック、パウダー、ハンドソープ、香水、デオドラント、また、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロー、チーク、メーキャップベース、口紅、リップクリーム、ネイルカラー等のメイクアップ化粧料、さらに、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアカラー、ヘアトニック、セット剤、パーマネント剤等の頭髪化粧料等、洗顔料、クレンジング、ボディーソープ等の身体洗浄料、ボディパウダー、アフターシェーブローション、プレシェーブローション等のスキンケア製品、浴用剤(入浴剤)、が挙げられる。
【0070】
本発明の外用剤の上記効果は、迅速に発現するものであり、その効果の種類によって異なるが、一般に適用後10分以内、好ましくは、5分以内、より好ましくは3分以内に発現する。
また、本発明の外用剤の上記効果は、比較的長く持続するものであり、その効果の種類によって異なるが、一般に効果発現後4時間以上、好ましくは、8時間以上、より好ましくは24時間以上持続する。
【0071】
(3)鎮痒剤
本発明の外用剤は、鎮痒剤であることができる。
上述したように、本発明の外用剤は、皮膚または粘膜上に適用した際に、適用部位において優れた鎮痒効果を迅速に発揮するため、鎮痒剤として適している。
また、上述したような本発明の外用剤の鎮痒効果は、一般に適用後10分以内、好ましくは、5分以内、より好ましくは3分以内に発現する。
【0072】
(4)脱毛症治療剤、脱毛症予防剤、育毛剤および発毛剤
また、本発明の外用剤は、脱毛症治療剤、脱毛症予防剤、育毛剤および/または発毛剤であることができる。
本発明の外用剤は、脱毛部位または発毛部位等の部位に適用した場合において、適用部位における脱毛を防止するとともに、発毛または育毛を促進させる効果を有する。また適用部位においては、養毛効果、毛生促進効果、薄毛改善・予防などの効果がある。この場合において、発毛する毛髪は硬毛となりやすく、白髪ではない髪となりやすい傾向にある。また、これらの効果は、従来脱毛症治療剤において用いられた他の活性成分、例えばBNPと比較して比較的早期に発現し、得られる効果も顕著である。
【0073】
また、本発明の外用剤は、上述したように皮膚炎の改善、予防効果を有する。したがって、脱毛症に伴う皮膚の炎症を改善または予防することができる。このような効果は、特に、頭皮等の適用部位の皮膚の状態に起因して脱毛症が悪化している場合に有利である。
【0074】
さらに、本発明の外用剤は、上述したように皮膚に適用した場合に、適用部位において保湿効果および肌理を整える効果を発揮する。フケやかゆみを取り、これらの発生を抑制することができるとともに、毛髪、頭皮に潤いを与え乾燥を改善し、防ぎ、頭皮や頭髪を健やかに保つことができる。また、脂漏状態を改善できる
【0075】
また、本発明の外用剤は、上述したように知覚可能な症状、状態の軽快、消失効果を有する。これにより、対象(患者)の負担が減り、患者のQOLが向上する。さらに、痒み、痛みを気にして患部に触れる、掻き毟るといった患部を損傷させる患者の動作を防止することができ、この結果、脱毛症を引き起こす皮膚状態の悪化を防止することができる。
【0076】
本発明の外用剤を、脱毛症治療剤または脱毛症予防剤として使用する場合、適用可能な脱毛症としては、特に限定されないが、例えば、以下のような脱毛症が挙げられ、これらのうち1種以上の治療または予防を目的として使用可能である。
【0077】
(後天性脱毛症)
(i) 瘢痕または皮膚病変を伴わない脱毛症(円形脱毛症、男性型脱毛症、脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症、女性型脱毛症、妊娠性脱毛症、悪性脱毛症、老人性脱毛症、全頭脱毛症、多発性脱毛症、蛇行性脱毛症、薬物による脱毛症、癌化学療法剤性脱毛症及び放射線被爆による脱毛症、外傷性・機械的脱毛症、栄養障害・代謝障害に伴う脱毛症、内分泌異常に伴う脱毛症、休止期脱毛(分娩後脱毛症、高熱後脱毛症))
【0078】
(ii)皮膚病変ないし病的皮膚にみられる脱毛症(感染による脱毛、腫瘍による脱毛、炎症による脱毛)
(iii)瘢痕性脱毛症(皮膚感染症による脱毛、炎症性細胞浸潤による脱毛)
【0079】
(先天性脱毛症)
瀰漫性脱毛、先天性無毛症、遺伝性の症候群における脱毛、限局性脱毛、母斑性、aplasia cutis、先天性三角形脱毛
【0080】
上述した中でも、本発明の外用剤は、特に後天性脱毛症に対して、好ましくは、瘢痕または皮膚病変を伴わない脱毛症に対して、より好ましくは、円形脱毛症、男性型脱毛症、脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症、女性型脱毛症、妊娠性脱毛症、悪性脱毛症、老人性脱毛症、全頭脱毛症、多発性脱毛症、蛇行性脱毛症、薬物による脱毛症、癌化学療法剤性脱毛症及び放射線被爆による脱毛症、外傷性・機械的脱毛症、栄養障害・代謝障害に伴う脱毛症、内分泌異常に伴う脱毛症、休止期脱毛に対して、優れた効果を発揮する。したがって、本発明の外用剤は、上述の群から選択される少なくとも1種以上の脱毛症の治療または予防を目的として用いることができる。
【0081】
(5)鼻炎治療剤および/または鼻炎予防剤
また、本発明の外用剤は、鼻炎治療剤および/または鼻炎予防剤であることができる。
鼻炎は、鼻腔および/または副鼻腔の粘膜の炎症に起因する疾患であり、鼻閉、鼻漏、突発反復性のくしゃみといった主症状の他、掻痒感等の症状を引き起こす。なお、本発明において、「鼻炎」は、狭義の意味での鼻腔粘膜の炎症を伴う鼻炎のみならず、副鼻腔粘膜の炎症を伴う副鼻腔炎も含むものとする。
【0082】
本発明の外用剤は、鼻腔粘膜および/または副鼻腔粘膜に適用した場合において、鼻閉、鼻漏、くしゃみ、掻痒感といった鼻炎に伴う各種症状を改善または予防することができる。特に、これらの効果は、尾部を有するBNPを含む鼻炎治療剤と比較して、迅速に発現し、またその持続時間も長いものである。
【0083】
このような本発明の外用剤の鼻炎に対する効果は一般に適用後8分以内、好ましくは、5分以内、より好ましくは3分以内に発現する。
また、上述したような本発明の外用剤の鼻炎に対する効果は、一般に効果発現後4時間以上、好ましくは、8時間以上、より好ましくは24時間以上持続する。
【0084】
本発明の外用剤を、鼻炎治療剤および/または鼻炎予防剤として使用する場合、適用可能な鼻炎としては、特に限定されず、例えば、急性鼻炎、慢性鼻炎を含む感染性鼻炎;複合型(花過敏症)鼻炎、鼻漏型鼻炎、うっ血型鼻炎、浮腫型鼻炎および乾燥型鼻炎を含む過敏性非感染性鼻炎;物理性鼻炎、化学性鼻炎および放射線性鼻炎を含む刺激性鼻炎;ならびに萎縮性鼻炎および特発性肉芽腫性鼻炎;急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症等の副鼻腔炎等が挙げられ、上記のうち1種以上の治療または予防を目的として使用可能である。
【0085】
また、複合型鼻炎としては、例えば、通年性アレルギー性鼻炎および季節性アレルギー性鼻炎を含むアレルギー性鼻炎と、血管運動性(本態性)鼻炎および好酸球増多性鼻炎を含む非アレルギー性鼻炎とが挙げられる。
鼻漏型鼻炎としては、例えば、味覚性鼻炎、冷気吸入性鼻炎および老人性鼻炎が挙げられる。
【0086】
うっ血型鼻炎としては、例えば、薬物性鼻炎、心因性鼻炎、妊娠性鼻炎、内分泌性鼻炎および寒冷性鼻炎が挙げられる。
浮腫型鼻炎としては、例えば、アスピリン過敏性鼻炎が挙げられる。
【0087】
上述した中でも、本発明の外用剤は、特に過敏性非感染性鼻炎、刺激性鼻炎、副鼻腔炎に対して、好ましくは、過敏性非感染性鼻炎、慢性副鼻腔炎に対して、より好ましくは、複合型(花過敏症)鼻炎、鼻漏型鼻炎、うっ血型鼻炎、浮腫型鼻炎および乾燥型鼻炎、慢性副鼻腔炎に対して、優れた効果を発揮する。したがって、本発明の外用剤は、上述の群から選択される少なくとも1種以上の鼻炎の治療または予防を目的として用いることができる。
【0088】
また、症状の観点からは、本発明の外用剤は、上述したような効果を有することから、くしゃみ・鼻漏型鼻炎、鼻閉型鼻炎および充全型鼻炎のいずれに対しても用いることができる。
さらに、本発明の外用剤は、ステロイド薬といった従来用いられてきた鼻炎治療剤によって治療困難な鼻炎に対しても症状の改善効果を示す。
【0089】
(6)その他の外用剤
また、本発明の外用剤は、上記環状ペプチドの効果を目的として、上述した以外の用途にも用いることができる。この場合において、本発明の外用剤は、上記環状ペプチドの効果以外の効果を主目的としてもよい。この場合、本発明の環状ペプチド、その誘導体および/または薬学的に許容可能な塩は、外用剤の主たる効果を補助するまたは主たる効果以外の効果を追加する目的で用いられる。
【0090】
このような用途としては、特に限定されないが、例えば、ボディパウダー、デオドラント、脱毛剤、セッケン、ボディシャンプー、入浴剤、ハンドソープ、香水、サンスクリーン剤や、消炎鎮痛剤、抗真菌剤等挙げられる。
【0091】
2.2 剤形
本発明の外用剤は、皮膚または粘膜の目的とする部位(例えば患部)に局所的に投与されることにより、有効成分たる環状ペプチド、その誘導体および/または薬学的に許容可能な塩の効果を適用部位付近においてより確実かつ迅速に発現させることができる。
このような外用剤は、特に限定されないが、例えば、外皮用剤、点眼剤、点耳剤、点鼻剤、口腔剤、または坐剤であることができる。これらのうち、本発明の外用剤が、皮膚炎治療剤、皮膚炎予防剤、鎮痒剤、スキンケア用品、脱毛症治療剤、脱毛症予防剤、育毛剤または発毛剤である場合には、外皮用剤であることが好ましい。一方で、本発明の外用剤が鼻炎治療剤および/または鼻炎予防剤である場合、点鼻剤であることが好ましい。さらに角膜疾患治療および/予防剤である場合、点眼剤であることが好ましい。
【0092】
本発明の外用剤は、外皮用剤である場合、特に限定されないが、例えば、外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、乳液、クリーム剤、ゲル剤または貼付剤であることができる。
【0093】
外用固形剤は、皮膚等に対し塗布または散布するための固形の製剤である。このような外用固形剤としては、例えば粉末状の外用散剤が挙げられる。
外用液剤は、皮膚等に対し塗布するための液状の製剤である。このような外用液剤としては、例えばローション剤およびリニメント剤が挙げられる。
【0094】
スプレー剤は、有効成分を霧状、粉末状、泡沫状またはペースト状等として皮膚に噴霧する製剤である。このようなスプレー剤としては、例えば、外用エアゾール剤およびポンプスプレー剤等が挙げられる。
軟膏剤は、皮膚に塗布する、有効成分を基剤に溶解または分散させた半固形の製剤である。また、軟膏剤は、唇等の局所に塗布するためのリップクリームであってもよい。
クリーム剤は、皮膚に塗布する、水中油型または油中水型に乳化した半固形の製剤である。
【0095】
ゲル剤は、皮膚に塗布するゲル状の製剤である。ゲル剤としては、例えば水性ゲル剤および油性ゲル剤が挙げられる。
貼付剤は、皮膚に貼付する製剤である。貼付剤としては、例えばテープ剤およびパップ剤が挙げられる。
点鼻剤は、鼻腔または鼻粘膜に投与する製剤である。点鼻剤としては、例えば、点鼻粉末剤および点鼻液剤が挙げられる。このうち、点鼻液剤が好ましい。
【0096】
上述したいずれの剤形においても、本発明の外用剤は、少なくとも、上述したような本発明の環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩を含む。
【0097】
剤形が、外用液剤、軟膏剤、クリーム剤またはゲル剤である場合には、本発明の外用剤は、環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩を、例えば、0.0001~1000000μg/g、好ましくは0.001~10000μg/g、より好ましくは0.01~1000μg/g、さらに好ましくは0.1~100μg/gの濃度で含む。また、別の態様において、1~800μg/g、3~500μg/gの濃度で含んでもよい。
また、剤形が、スプレー剤である場合には、本発明の外用剤は、スプレー剤の原液中に、環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩を、例えば、0.0001~1000000μg/mL、好ましくは0.001~10000μg/mL、0.01~1000μg/mL、より好ましくは0.1~100μg/mL、さらに好ましくは1~100μg/mLの濃度で含む。また、別の態様において、1~800μg/mL、3~500μg/mLの濃度で含んでもよい。
【0098】
剤形が、貼付剤である場合には、本発明の外用剤は、環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩を、例えば、0.0001~1000000μg/mL、好ましくは0.001~10000μg/mL、より好ましくは0.01~1000μg/mL、さらに好ましくは0.1~100μg/mL、特に好ましくは1~100μg/mLの濃度で含む。また、別の態様において、1~800μg/mL、3~500μg/mLの濃度で含んでもよい。
また、剤形が点鼻剤、特に液体点鼻剤である場合には、本発明の外用剤は、点鼻剤の液体(点鼻液)中において、環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩を、例えば、0.0001~1000000μg/mL、好ましくは0.001~10000μg/mL、より好ましくは0.01~1000μg/mL、さらに好ましくは0.1~100μg/mL、特に好ましくは1~100μg/mLの濃度で含む。また、別の態様において、1~800μg/mL、3~500μg/mLの濃度で含んでもよい。
【0099】
本発明の外用剤は、上述したようないずれの剤形である場合であっても、当業者に知られた方法および構成材料を用いて製剤することができる。
利用可能な構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ゲル化剤、油性成分、高級アルコール、脂肪酸、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、粉体、顔料、界面活性剤、多価アルコール・糖、高分子、生理活性成分、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤等が挙げられる。
【0100】
ゲル化剤としては、有機、無機化合物の各種ゲル化剤を用いることができる。
無機化合物のゲル化剤としては、例えば、含水性又は吸水性のケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウム(例えばベントナイト)、ケイ酸マグネシウム-アルミニウム、コロイドシリカ等が挙げられる。
有機化合物のゲル化剤としては、天然、半合成又は合成のポリマーの使用が可能である。天然および半合成ポリマーとしては、例えば、セルロース等の多糖類、デンプン、トラガカント、アラビアゴム、キサンタンガム、寒天、ゼラチン、アルギン酸及びその塩(例えばアルギン酸ナトリウム及びその誘導体)、低級アルキルセルロース(例えばメチルセルロース又はエチルセルロース)、カルボキシ-又はヒドロキシ-低級-アルキルセルロース(例えばカルボキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース)等が挙げられる。合成ポリマーとしては、例えば、カルボキシルビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、(ビニルメチルエーテル/マレイン酸エチル)コポリマー、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸等が挙げられる。なお、ゲル剤として、例えば、ルブラジェルNP、ルブラジェルCG、ルブラジェルDV、ルブラジェルMS、ルブラジェルOIL、ルブラジェルTW、ルブラジェルDS等(アシュランド社)等の市販のゲル化剤を用いることもできる。
【0101】
油分としては、例えば、エステル系、エーテル系、炭化水素系、シリコーン系およびフッ素系の各種油相成分の他、動植物油とその硬化油、および天然由来のロウを用いることができる。
エステル系の油相成分としては、例えば、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ネオペンタン酸イソアラキル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、カプリル酸セチル、ラウリン酸デシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、リシノレイン酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルデシル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンイソステアリン酸エステル、炭酸ジプロピル、炭酸ジアルキル(C12-18)、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソアリキル、クエン酸トリイソオクチル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オクチルデシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ステアリン酸コレステリル
、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソセチル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸ステアリル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソステアリル等が挙げられる。
【0102】
炭化水素系の油相成分としては、例えば、スクワラン、流動パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、イソパラフィン、セレシン、パラフィン、流動イソパラフィン、固形パラフィン、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0103】
シリコーン系の油相成分としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルシクロシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性シリコーン油、アミノ変性オルガノポリシロキサン、ジメチコノール、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム等が挙げられる。
フッ素系の油相成分としては、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素変性オルガノポリシロキサン、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0104】
動植物油とその硬化油、および天然由来のロウとしては、例えば、牛脂、硬化牛脂、豚脂、硬化豚脂、馬油、硬化馬油、ミンク油、オレンジラフィー油、魚油、硬化魚油、卵黄、ホホバ油等の動植物油およびその硬化油、アボカド油、アルモンド油、オリブ油、カカオ脂、杏仁油、ククイナッツ油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、シアバター、大豆油、月見草油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、硬化ナタネ油、パーム核油、硬化パーム核油、パーム油、硬化パーム油、ピーナッツ油、硬化ピーナッツ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ホホバ油、硬化ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドホーム油、綿実油、硬化綿実油、ヤシ油、硬化ヤシ油、ローズヒップ油等の植物油およびその硬化油、ミツロウ、高酸価ミツロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬化ラノリン、液状ラノリン、カルナバロウ、モンタンロウ等のロウ等が挙げられる。
【0105】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、2-エチルヘキサノール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
【0106】
脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エルカ酸、2-エチルヘキサン酸等が挙げられる。
【0107】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸アミル、パラアミノ安息香酸エチルジヒドロキシプロピル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸オクチル、パラアミノ安息香酸オクチルジメチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸トリエタノールアミン、サリチル酸フェニル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ホモメンチル、ケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ2-エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシヒドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩、ジイソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその塩、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシオクトキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2-エチルヘキシル-1-オキシ)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル-O-アミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、フェニルベンゾイミダゾール硫酸、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、イソプロピルジベンゾイルメタン、4-(3,4-ジメトキシフェニルメチレン)-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル等、およびこれらの高分子誘導体やシラン誘導体、酸化チタンや酸化亜鉛およびその分散物等が挙げられる。なお、酸化亜鉛や酸化チタン等は表面処理がなされたものであっても良い。
【0108】
経皮吸収助剤としては、例えば、酢酸、酢酸ナトリウム、リモネン、メントール、サリチル酸、ヒアルロン酸、オレイン酸、N,N-ジエチル-m-トルアミド(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)、ステアリン酸n-ブチル、ベンジルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ポリプロピレングリコール、クロタミトン、ジエチルセバケート、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ラウリルアルコールなどが挙げられる。
【0109】
粉体、顔料としては、例えば、赤色104号、赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号、塩基性染料、HCカラー、分散染料、直接染料等の色素、黄色4号ALレーキ、黄色203号BAレーキ等のレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、シリコーンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、セルロースパウダー、デンプン、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末等の高分子、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、板状硫酸バリウム等の体質顔料、雲母チタン等のパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、アルミナ等の無機粉体、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛等の金属セッケン、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状等)および粒子径に特に制限はない。
【0110】
なおこれらの粉体および顔料は、従来公知の表面処理、例えばフッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N-アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属セッケン処理、アミノ酸処理、レシチン処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理等によって事前に表面処理されていてもよい。
【0111】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤のいずれをも適宜用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン、α-アシルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩、アルキルリン酸塩、POEアルキルリン酸塩、アルキルアミドリン酸塩、アルキロイルアルキルタウリン塩、N-アシルアミノ酸塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸ナトリウム、アシルイセチオン酸塩、アシル化加水分解コラーゲンペプチド塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
【0112】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セトステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベヘニン酸アミドプロピルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラノリン誘導体第四級アンモニウム塩等が挙げられる。また、脂肪酸アミドジアルキルアミン等の第3級アミン及びその塩も挙げられる。
【0113】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、アミドベタイン型、スルホベタイン型、ヒドロキシスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型、ホスホベタイン型、アミノカルボン酸塩型、イミダゾリン誘導体型、アミドアミン型の各種両性系面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、POE・POP共重合体、POE・POPアルキルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンラウリン酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド、水素添加大豆リン脂質、水酸化大豆リン脂質、高分子系界面活性剤、バイオサーファクタント等が挙げられる。
なお、天然系界面活性剤も用いることができ、このような界面活性剤としては、例えば、レシチン、サポニン、糖系界面活性剤等が挙げられる。
【0114】
多価アルコールおよび糖としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ラフィノース、エリスリトール、グルコース、ショ糖、果糖、キシリトール、ラクトース、マルトース、マルチトール、トレハロース、アルキル化トレハロース、混合異性化糖、硫酸化トレハロース、プルラン等が挙げられる。またこれらの化学修飾体等も使用可能である。
【0115】
高分子としては、例えば、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ビニルネオデカネート共重合体、メチルビニルエーテルマレイン酸ハーフエステル、T-ブチルアクリレート/アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体、ビニルピロリドン/ビニルアセテート/ビニルプロピオネート共重合体、ビニルアセテート/クロトン酸共重合体(ルビセットCA:BASF社製)、ビニルアセテート/クロトン酸/ビニルピロリドン共重合体、ビニルピロリドン/アクリレート共重合体、アクリレート/アクリルアミド共重合体、ビニルアセテート/ブチルマレエート/イソボルニルアクリラート共重合体、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等のアニオン性高分子化合物や、ジアルキルアミノエチルメタクリレート重合体の酢酸両性化物、アクリル酸オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体等の両性高分子化合物、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートの4級化物、メチルビニルイミダゾリウムクロリド/ビニルピロリドン共重合体等のカチオン性高分子化合物、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体等のノニオン性高分子化合物等がある。また、セルロースまたはその誘導体、ケラチン及びコラーゲンまたはその誘導体、アルギン酸カルシウム、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、グアーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン等の天然由来高分子化合物や、グルコオリゴ糖、フコース含有多糖体、ラムノース含有多糖体なども好適に配合することができる。
【0116】
生理活性成分としては、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質が挙げられる。例えば、美白、抗炎症、老化防止、紫外線防御、スリミング、ひきしめ、抗酸化、発毛・育毛、抑毛、保湿、血行促進、抗菌・殺菌、冷感・温感、創傷治癒促進、刺激緩和、鎮痛、細胞賦活等の効果を有する成分であり、植物エキス、海藻エキス、ビタミン及びその誘導体、アミノ酸、環状ペプチド以外の各種ペプチド、ヒアルロン酸ナトリウム、ムコ多糖等の生体高分子、セラミド、フィトスフィンゴシン、コレステロール、フィトステロールなどの細胞間脂質構成成分またはその類似成分、酵素成分等が挙げられる。
【0117】
これらの好適な配合成分の例としては、例えばアシタバエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イソフラボン、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、カカオエキス、海水乾燥物、海藻エキス、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カボチャ種子エキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、カキョクエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クランベリーエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、大豆発酵エキス、タイムエキス、茶エキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、月見草エキス、ツボクサエキス、テルミナリアエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、バナナ花エキス、ハマメリスエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、ライチ(レイシ)エキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等を挙げることができる。
【0118】
また、デオキシリボ核酸、ムコ多糖類、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜などの生体高分子、アミノ酸、加水分解ペプチド、乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ、トリメチルグリシン、リシン・アルギニン縮合物などのポリペプチドなどの保湿成分、スフィンゴ脂質、セラミド、フィトスフィンゴシン、コレステロール、コレステロール誘導体、フィトステロール誘導体、リン脂質などの細胞間脂質構成成分またはその類似物、ε-アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β-グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコールチゾン、ティーツリー油等の抗炎症剤、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB6及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンD及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド等のビタミン類、アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等の活性成分、トコフェロール、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン等の抗酸化剤、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸などの細胞賦活剤、γ-オリザノール、ビタミンE誘導体などの血行促進剤、レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤、アルブチン、コウジ酸、プラセンタエキス、イオウ、エラグ酸、リノール酸、トラネキサム酸、グルタチオン等の美白剤、セファランチン、カンゾウ抽出物、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、DL-α-トコフェロール、酢酸DL-α-トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、パントテン酸カルシウム、D-パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエストラジオール、塩化カプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、L-メントール、モノニトログアヤコール、レゾルシン、γ-アミノ酪酸、塩化ベンゼトニウム、塩酸メキシレチン、オーキシン、女性ホルモン、カンタリスチンキ、シクロスポリン、ジンクピリチオン、ヒドロコールチゾン、ミノキシジル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ハッカ油、ササニシキエキス等の育毛剤などが挙げられる。
【0119】
酸化防止剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ジラウリル、トコフェロール、トリルビグアナイド、ノルジヒドログアヤレチン酸、パラヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン、リンゴエキスやチョウジエキスなどの酸化防止効果の認められる植物エキス等が挙げられる。
【0120】
溶媒としては、生理食塩水、精製水、エタノール、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N-メチルピロリドン、フルオロアルコール、揮発性直鎖状シリコーン、次世代フロン等が挙げられる。
【0121】
なお、本発明の環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩は、上述したように外用剤の製造のために使用できるものであるから、本発明はまた、本発明の環状ペプチドおよび/もしくはその誘導体ならびに/またはこれらの薬学的に許容可能な塩の外用剤の製造のための使用にも関する。
【0122】
3.外用剤の使用方法
次に、本発明の外用剤の使用方法について説明する。
本発明の外用剤の使用方法は、上述した本発明の外用剤を、対象の皮膚および/または粘膜に適用することを含む。
【0123】
対象としては、ヒトのほか、特に限定されないが、例えば、鳥類、哺乳動物等の脊椎動物が挙げられる。特に哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、スナネズミ、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げられる。一方で、対象からヒトを除くこともできる。
【0124】
また、外用剤が適用される対象の皮膚および/または粘膜としては、対象のいかなる部位の皮膚、粘膜であってもよく、例えば、頭(頭皮)、顔面、首、腕、胴体、腕、手、足等の皮膚または粘膜に適用可能である。
本発明の外用剤のより具体的な使用方法は、以下のとおりである。
【0125】
(1)皮膚炎の治療および予防方法
本発明の外用剤を、皮膚炎治療剤または皮膚炎予防剤として用いる場合、当該外用剤を目的とする皮膚および/または粘膜部位(例えば皮膚炎が発症した患部)に対し直接適用することができる。
適用頻度としては、特に限定されないが、例えば、1~10回/日、好ましくは1~5回/日、さらに好ましくは1~3回/日である。なお、本発明の外用剤は、その効果の持続時間が長いため、比較的少ない頻度、例えば、1回/日で適用した場合であっても、十分な効果を発揮する。
また、用量としては特に限定されないが、例えば、適用1回につき、本発明の環状ペプチドおよびその誘導体ならびにこれらの薬学的に許容可能な塩の合計量を0.0001~1000000μg/mL、好ましくは0.001~10000μg/mL、より好ましくは0.01~1000μg/mL、さらに好ましくは0.1~100μg/mL、特に好ましくは1~100μg/mLとすることができる。また、別の態様において、1~800μg/mL、3~500μg/mLの濃度で含んでもよい。
【0126】
(2)痒みの軽減もしくは消失方法
本発明の外用剤を、鎮痒剤として用いる場合、当該外用剤を目的とする皮膚および/または粘膜部位に対し直接適用することができる。
適用頻度としては、特に限定されないが、例えば、1~10回/日、好ましくは1~5回/日、さらに好ましくは1~3回/日である。
また、用量としては特に限定されないが、例えば、適用1回につき、本発明の環状ペプチドおよびその誘導体ならびにこれらの薬学的に許容可能な塩の合計量を0.0001~1000000μg/mL、好ましくは0.001~10000μg/mL、より好ましくは0.01~1000μg/mL、さらに好ましくは0.1~100μg/mL、特に好ましくは1~100μg/mLとすることができる。また、別の態様において、1~800μg/mL、3~500μg/mLの濃度で含んでもよい。
【0127】
(3)化粧料使用方法
本発明の外用剤を、化粧料として用いる場合、当該外用剤を目的とする皮膚および/または粘膜部位に対し直接適用することができる。
適用頻度としては、特に限定されないが、例えば、1~10回/日、好ましくは1~5回/日、さらに好ましくは1~3回/日である。
また、用量としては特に限定されないが、例えば、適用1回につき、本発明の環状ペプチドおよびその誘導体ならびにこれらの薬学的に許容可能な塩の合計量を0.0001~1000000μg/mL、好ましくは0.001~10000μg/mL、より好ましくは0.01~1000μg/mL、さらに好ましくは0.1~100μg/mL、特に好ましくは1~100μg/mLとすることができる。また、別の態様において、1~800μg/mL、3~500μg/mLの濃度で含んでもよい。
【0128】
(4)脱毛症の治療および予防方法ならびに発毛方法ならびに育毛方法
本発明の外用剤を、脱毛症治療剤、脱毛症予防剤、発毛剤または育毛剤として用いる場合、当該外用剤を目的とする部位(例えば、頭皮、皮膚の脱毛部位)に対し直接適用することができる。
適用頻度としては、特に限定されないが、例えば、1~10回/日、好ましくは1~5回/日、さらに好ましくは1~3回/日である。
また、用量としては特に限定されないが、例えば、適用1回につき、本発明の環状ペプチドおよびその誘導体ならびにこれらの薬学的に許容可能な塩の合計量を0.0001~1000000μg/mL、好ましくは0.001~10000μg/mL、より好ましくは0.01~1000μg/mL、さらに好ましくは0.1~100μg/mL、特に好ましくは1~100μg/mLとすることができる。また、別の態様において、1~800μg/mL、3~500μg/mLの濃度で含んでもよい。
【0129】
(5)鼻炎の治療および予防方法
本発明の外用剤を、鼻炎治療剤または鼻炎予防剤として用いる場合、当該外用剤を目的とする部位(例えば、鼻腔粘膜)に対し直接適用することができる。
適用頻度としては、特に限定されないが、例えば、1~10回/日、好ましくは1~5回/日、さらに好ましくは1~3回/日である。
また、用量としては特に限定されないが、例えば、適用1回各鼻腔につき、本発明の環状ペプチドおよびその誘導体ならびにこれらの薬学的に許容可能な塩の合計量を0.0001~1000000μg/mL、好ましくは0.001~10000μg/mL、より好ましくは0.01~1000μg/mL、さらに好ましくは0.1~100μg/mL、特に好ましくは1~100μg/mLとすることができる。また、別の態様において、1~800μg/mL、3~500μg/mLの濃度で含んでもよい。
【0130】
4.医薬
次に、本発明の医薬について説明する。
本発明の医薬は、1種以上の本発明の環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩を含む。
【0131】
上述したように、本発明の環状ペプチドもしくはその誘導体またはこれらの薬学的に許容可能な塩は、BNPと同様に、グアニル酸シクラーゼドメインを有する受容体NPR-A(別名GC-A)と結合して環状グアノシン一リン酸(Cyclic guanosine monophosphate、cGMP)の産生を促進し、例えば、利尿作用、血管拡張作用、レニン・アルドステロン分泌抑制、交感神経抑制、肥大の抑制などの作用を有するものと考えられる。また、これらの本発明の化合物は、BNPと比較して、優れた薬効、効能、特に優れた即効性を有すると考えられる。
【0132】
したがって、本発明の医薬は、従来BNPを有効成分として含む医薬と同様の目的に用いることができる。
本発明の医薬が適用可能な疾患としては、特に限定されないが、例えば、上述した各種疾患の他、高血圧症、不安定狭心症、急性心筋梗塞、浮腫性疾患、腎不全、心不全、免疫疾患、肥満、メタボリックシンドローム等が挙げられる。
【0133】
また、本発明の医薬の剤形は、特に限定されず、上述したような外用剤の他、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤等の経口投与用製剤、口腔用錠剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、含漱剤等の口腔適用用製剤、注射剤、輸液剤等の注射投与用製剤、透析用剤等の透析用製剤、吸入剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、膣錠、膣用坐剤等とすることができる。
【実施例0134】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0135】
1. 環状ペプチドの製造
まず、式I-aで表されるアミノ酸配列からなる環状ペプチドを合成した。
具体的には、ペプチド合成機を用いて、ペプチド固相合成法により、アミノ酸を順次結合して17個のアミノ酸からなる直鎖状のペプチドを形成した。その後、Cys1、Cys17にある保護基を脱離させた後にヨウ素(I2)処理を行って、酸化的に同アミノ酸残基間のシステイン結合を形成し、環状ペプチドを形成した。
得られ環状ペプチドを含む組成物について、逆相液体高速クロマトグラフィー(逆相HPLC)による精製を行い、その後凍結乾燥を行って、白色粉末としての環状ペプチドの精製物を得た。
【0136】
また、得られた環状ペプチドの質量分析を行った。
HPLCの条件を以下に示す。
装置:Agilent 1100
流速:1.0ml/min
溶離液A:0.1%トリフルオロ酢酸/水
溶離液B:0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル
勾配:80%溶離液B アイソクラティック
質量分析(MS)の条件を以下に示す。
装置:Thermo Finnigan LCQ Advantage
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化
分析法:イオントラップ法
【0137】
その結果、m/z=901.83([M+2H]2+)、m/z=1801.84([M+H]+)が観測され、上記ペプチドは、目的とする環状ペプチドの組成式(C72H120N24O24S3)から算出した理論値の分子量(1802.07)および質量数(1800.8069)と一致することが確認された。
【0138】
さらに、上記ペプチドの純度を測定するためにHPLCで以下の条件で計測した。
カラム:Discovery C18、4.6mm×250mm、粒径5ミクロン
カラム温度:室温
溶離液A:0.1%トリフルオロ酢酸/水
溶離液B:0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル
勾配:10~30%溶離液B/20分
流量:1.2ml/分
温度:室温
注入量:20μl
検出器:UV検出器(検出波長215nm)
測定の結果、得られたタンパク質の純度は、99.2%であることが確認された。
【0139】
2. 製剤の製造
2.1 ゲル製剤の製造
式I-aで表されるアミノ酸配列からなる環状ペプチド(以下の実施例において「B環」という場合、かかる式I-aで表される環状ペプチドを意味する)を含むゲルベース製剤(B環ゲル製剤、実施例)およびヒトBNPを含むゲルベース製剤(BNPゲル製剤、比較例)を以下のようにして製造した。
パラオキシ安息香酸メチルエステル(商品名:メッキンスM、上野製薬製)0.1g、フェノキシエタノール0.2g、1,2-ペンタンジオール3.0gを同一容器中に秤量し、60~70℃に加熱して均一な溶液とし、混合釜に投入した。
次に、混合釜に、濃グリセリン6.0gを投入し、その後、カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール940、ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)0.44gとキサンタンガム(商品名:ケルトロールT、CP KELCO社製)0.08gの混合物を加えてパドルで撹拌し、これらを十分に分散させた。
【0140】
次にパドルで撹拌しつつ精製水83.95gを徐々に投入し、釜温を70~80℃に加熱しつつ、パドル、デイスパーで撹拌し、分散した内容物を溶解させて溶液を得た。その後、デイスパーを停止させて溶液中の内容物が溶解したことを確認して直ちに冷却を開始した。釜温が40℃付近に到達した時点で、アシュランド社製のルブラジェルNP6.0g(グリセリン2.7g、カルボキシビニルポリマー0.06g、ポリアクリル酸ナトリウム0.018g、水3.222g)を溶液に加えてパドルで均一に混合した。その後、更に水酸化カリウム0.230gを加えて溶液を中和し、釜温が25℃に達した時点で、パドルの回転を停止してゲルベースを製造した。
【0141】
次に、式I-aで表されるアミノ酸配列からなる環状ペプチド(B環)20.1mgを、144mLの生理食塩水に溶解して得られたB環溶液0.131mLを上記で得られたゲルベース10gに均一に撹拌混合して上記B環の濃度が約1μM(約1.8μg/g)のゲルベース製剤(B環ゲル製剤)を製造した。同様にして、B環の濃度が約0.3μM(約0.54μg/g)、約0.5μM(約0.9μg/g)、約2.0μM(約3.6μg/g)のゲルベース製剤を製造した。なお、以下の実施例において、特に記載しない限り、「B環ゲル製剤」は、約1μMのB環濃度のものを使用した。
次に、ヒトBNP-32:20.5mg(American Peptide Company社)を、118mLの生理食塩水に溶解して得られたBNP溶液0.2mLを上記で得られたゲルベース10gに均一に撹拌混合してBNP-32の濃度が約1μMのゲルベース製剤(BNPゲル製剤)を製造した。同様にして、BNP-32の濃度が約0.5μM、2.0μMのゲルベース製剤を製造した。なお、以下の実施例において、特に記載しない限り、「BNPゲル製剤」は、約1μMのBNP濃度のものを使用した。
【0142】
2.2 点鼻剤の製造 式I-aで表されるアミノ酸配列からなる環状ペプチド(B環)を含む点鼻剤(B環点鼻剤、実施例)およびヒトBNPを含む点鼻剤(BNP点鼻剤、比較例)を以下のようにして製造した。
【0143】
まず、式I-aで表されるアミノ酸配列からなる環状ペプチド(B環)を、生理食塩水に溶解し、濃度を調節して、約1μmol/l(約1.8μg/g)のB環濃度のB環点鼻液を得た。
次に、B環点鼻液を、定量式の点鼻用噴霧容器(アズワン株式会社製)に充填し、さらに1回あたりの噴霧量を100μl(0.1ml)となるように調節して、B環点鼻剤を得た。
【0144】
同様にして、ヒトBNP(American Peptide Company社)についても、1μmol/lのBNP濃度のBNP点鼻液を得、これを定量式の点鼻用噴霧容器(アズワン社製)に充填し、さらに1回あたりの噴霧量を100μl(0.1ml)となるように調節して、BNP点鼻剤を得た。
【0145】
3. 皮膚炎治療効果の確認
3.1 B環ゲル製剤の効果確認
種々の皮膚炎に罹患した被験者について、前記のB環ゲル製剤を患部に塗布し、塗布前後の症状の変化を観察した。なお、可能な場合、比較例として同一の被験者に対し、B環ゲル製剤を塗布していない患部に前記のBNPゲル製剤を塗布し、塗布前後の症状の変化を観察した。なお、掻痒感については、患部毎にVAS(Visual analogue scale)を用いて10段階で評価した。
試験結果を、被験者の年齢、性別、症状および被験者に対する処方とともに表1~7に示す。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
表1~8に示されるように、いずれの被験者においても、いずれの症状の皮膚炎においてもB環ゲル製剤を適用した部位において、皮膚炎の各種症状の軽快、消失が観察された。
特に、B環ゲル製剤を適用した場合には、適用直後から掻痒感の軽快、消失が観察された。皮膚炎においては、一般に、患者は掻痒感を覚えると、掻痒感を覚えた部位を掻きむしる傾向にあり、これが皮膚炎の重症化の一因となり得る。しかしながら、このように掻痒感が顕著に軽快、消失することにより、結果的に皮膚炎の重症化を防止することが可能となる。
また、B環ゲル製剤の効果は、いずれの症例においても、BNPゲル製剤を適用した場合の効果と比較して優れていた。特に、B環ゲル製剤は、BNPゲル製剤と比較して、即効性と持続性に優れ、より強力な鎮痒効果を有していた。なお、これらの効果はゲルベースでは得られない事が確認された。
【0155】
3.2 左右ぬりわけ法による、B環ゲル製剤とゲルベースとの比較
種々の皮膚炎に罹患した被験者について、B環ゲル製剤およびゲルベースを患部に塗布し、塗布前後の症状の変化を観察した(下表)。
【表9】
【0156】
4.化粧料としての効果の確認
B環を含む化粧料による効果は、B環を含んだゲル剤、入浴剤および頭髪化粧品(シャンプー、リンス)またはボディーソープとして使用した結果を評価し、その効果を確認した。
4.1.1 肌質改善効果の確認(B環ゲル製剤とBNPゲル製剤との比較)
被験者に対し、上記のB環ゲル製剤、BNPゲル製剤を処方した。そして、各被験者の頬や目元に、B環ゲル製剤を右側に、BNPゲル製剤を左側に塗布して、肌状態の変化を観察し比較した(下表)。なお、肌状態の変化は、被験者の体感的な評価と、医師としての本発明者による客観的な観察とに基づいて判定した。
【表10】
【0157】
また、左右塗り分けをせずに、B環ゲル製剤を塗布した例を以下にまとめた(下表)。なお、肌状態の変化は、上記と同様の方法で行った。
【0158】
【0159】
以上、本発明のB環は、皮膚の保湿効果を有するとともに肌理を整えることができ、さらに、美白(しみ、くすみ)、アンチエイジング(たるみ、はり、大しわ)等の肌質改善について有効であるとともに、唇荒れといった粘膜の状態の改善にも有効であることが示された。
【0160】
いずれの被験者においても、BNPゲル製剤を塗布した部位と比較して、B環ゲル製剤を塗布した部位について、肌質の著しい改善効果と、その維持が認められた。具体的には、肌が整う、肌が潤う、肌のキメが整う、肌にはりが出てひきしまる、肌が柔らかくなる、皮膚の乾燥が抑えられる、小じわが目立たなくなる、肌の水分、油分が補われ保たれる、目尻のしわが浅く、目立たなくなる、肌のヒリヒリ感がなくなる、かゆみがとれ、おさえられる、肌のかさつきが緩和される、肌の健やかな状態が保たれる等の効果が、B環ゲル製剤を塗布した部位についてBNPゲル製剤を塗布した部位と比較して、有意に認められた。
【0161】
また、特に、20歳代および30歳代の被検者では、しわが改善する・消える、頬のたるみが改善され皮膚にうるおい、水分、油分を補い保つなどの効果があって、肌が引き締まりピンとし、頬が上がり、また、肌のヒリヒリ感がなくなり、肌のかさつきが緩和される、という効果がB環ゲル製剤を塗布した部位についてBNPゲル製剤を塗布した部位よりも顕著に認められ、BNPゲル塗布部位と比較してもその効果はより大きかった。
さらに、特に40歳代~50歳代の被験者では、B環ゲル製剤塗布後迅速に、たるみ、大シワ、乾燥が改善され、肌が引きしまり、くすみ、シミが目立たなくなるなどという効果が顕著に見られ、その効果はBNPゲル剤塗布した際の効果より大きかった。
【0162】
効果の発現は、BNPゲル製剤と比較してB環ゲル製剤のほうが著しく早かった。具体的には、ほとんどの場合、B環ゲル製剤塗布2分後前後にしわが消え・消え始め、目立たなくなり、肌がふっくらしてはりが出る等の効果が確認された。また、この効果は、その後少なくとも数時間後も持続した。B環ゲル製剤塗布に伴う刺激症状はなかった。
【0163】
図1に、60歳代の被験者のB環ゲル製剤塗布後の右側顔面の写真を示す。同実験者においては、B環ゲル製剤塗布20分後において、しっとりして肌に潤い、ツヤおよび柔軟性を与える、肌をひきしめる、肌理を整える、はりを与える、ならびに肌の大じわを目立たなくする効果が認められた。比較対照としてBNPゲル製剤と比較し、この結果は、本発明の環状ペプチドが、小じわはもちろん、しわやたるみにも有効であること、さらにしみやくすみを目立たなくなる効果も有することを示す。
【0164】
4.1.2 肌質改善効果の確認(B環ゲル製剤とゲルベースとの比較)
B環ゲル製剤とBNPゲル製剤の効果におけるゲルベースの寄与の有無を検討するために、3名の被験者の右顔面にB環ゲル製剤を、左顔面にゲルベースを塗布し、被験者の顔面の肌状態の変化について観察した(下表)。
【0165】
【0166】
この結果、いずれの被験者も、ゲルベースを塗布した部分に、ピリピリとした刺激を覚え、皮膚の乾燥感が改善しなかった。また、いずれの被験者においてもゲルベースを塗布した部分について、肌理が整う、毛穴が引き締まるといった効果が観察されなかった。一方で、いずれの被験者においても、B環ゲル製剤を塗布した部分の肌がしっとりと、柔らかくなり、保湿されていた。
【0167】
4.2 B環ゲル製剤を塗布した粘膜の状態の観察
唇荒れの症状を有する正常被験者に対し、B環ゲル製剤を塗布し、唇の粘膜の状態の変化を観察した(下表)。なお、粘膜の状態の変化は、被験者の体感的な評価と、医師としての本発明者による客観的な観察とに基づいて判定した。
【0168】
【0169】
以上のように本発明の環状ペプチドは、粘膜の状態を改善する作用も有し、さらにこのような作用に関して即効性を有することも確認できた。
【0170】
4.3 B環ゲル製剤を塗布した頭皮・毛髪の状態の観察
頭皮・毛髪の症状を有する正常被験者に対し、B環ゲル製剤を塗布し、頭皮および毛髪の状態の変化を観察した(下表)。なお、頭皮および毛髪の状態の変化は、被験者の体感的な評価と、医師としての本発明者による客観的な観察とに基づいて判定した。
【表14】
【0171】
以上、本発明のBNP環状ペプチドは、頭皮や頭髪に潤いを与え保つととともに適度な水分、油分を補い保ち、乾燥を改善し、防ぐことができ、頭皮や毛髪を清浄にすることができる。さらに、頭皮のかゆみやふけを抑えることに対しても有効であるとともに、毛髪においても、薄毛や脱毛の予防、育毛、毛生促進、発毛、促毛に対して有効であり、病後・産後の脱毛、養毛等の改善にも有効であることが示された。
【0172】
4.4 B環を含む入浴剤を使用したときの皮膚状態の観察
B環を0.01μMになるように溶解した37~41℃のお湯(お湯200Lに対してB環20μM溶液を100ml溶解)に、1回/日、14日間、被験者を入浴させ、被験者の皮膚状態をさら湯(お湯のみ)のときと比較した(表14)。なお、皮膚状態の変化は、被験者の体感的な評価と、医師としての本発明者による客観的な観察とに基づいて判定した。
【0173】
【0174】
以上、本発明のB環を含む入浴剤は、あせも、肌のひびわれやあかぎれ、湿疹に対し、あせも、肌のひびわれやあかぎれが軽快するだけでなく、湿疹についても改善効果がみとめられた。さらに肌の乾燥や肌の痛痒さの改善がみられ、皮膚状態の改善に有効であることが示された。
【0175】
4.5 B環を含む頭髪化粧料(シャンプー、リンス)またはボディーソープを使用したときの頭皮および頭髪状態または皮膚状態の観察
【0176】
4.5.1 B環を含むシャンプーを、以下の組成で配合、製造を行った。
【表16】
AとBを70℃で加温溶解した後、AにBを加え、撹拌、混合した。さらに撹拌しながら40~35℃でCを添加し、撹拌したまま室温まで冷却した。
【0177】
4.5.2 B環を含むトリートメントを、以下の組成で配合、製造を行った。
【表17】
AとBを80℃で加温溶解した後、AとBを80℃に保ったまま、Aをホモミキサーで撹拌しながら、Bを徐々にAに加え乳化した。さらにCを添加し、撹拌したまま35℃まで冷却した。
【0178】
4.5.3 B環を含むボディソープを、以下の組成で配合、製造を行った。
【表18】
AとBを80℃で加温溶解した後、撹拌しながら、徐々にAにBを加える。さらに、撹拌しながら40~35℃でCを添加し、撹拌したまま室温まで冷却した。
【0179】
上記に従って製造したシャンプー、リンスまたはボディーソープを1回/日、14日間使用し、被験者の頭皮および頭髪状態または皮膚状態における結果を評価した(下表)。なお、皮膚状態の変化は、頭皮のふけ、紅斑などは、被験者の目視により評価し、頭皮のかゆみ、しっとり感、毛髪の櫛通り、つや、はり・こしは、被験者の体感的な評価とした。
【表19】
以上、本発明のB環を含む頭髪料の使用は、頭皮の痒み、紅斑、乾燥に対しては、即効性の改善効果がみられた。または薄毛や抜け毛に対しては、2週間以上連続して使用すると、その症状の改善に有効であることが示された。さらに、本発明のB環を含むボディーソープの使用は、乾燥肌や敏感肌に対して、改善効果があることが示された。
【0180】
5.脱毛症治療効果の確認
B環ゲル製剤、BNPゲル製剤を塗布し、種々の脱毛に関する症状に対する効果を観察した(下表)。なお、症状の変化は、被験者の体感的な評価と、医師としての本発明者による客観的な観察とに基づいて判定した。
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
5.2 症例まとめ
上記の女性型脱毛症、男性型脱毛症、汎発性脱毛症、蛇行状脱毛症、多発性脱毛症を有する被験者の症例においても、比較対照としてBNPゲル製剤と比べ、実施例に係るB環ゲル製剤を適用した場合、抜け毛が顕著に減少し、硬毛の発毛範囲が拡大し、その成長も早かった(
図2を参照)。さらに、既存の毛髪のハリが生じ、そのコシが強くなった。いずれも比較例にかかるBNPゲル製剤を適用した場合と比較して、その症状の改善が顕著に表れた。すなわち、B環ゲル製剤は、BNPゲル製剤と比較して、上記症状に対する効能が優れていた。
さらに、B環ゲル製剤は、脂漏性を改善し、頭皮を清浄にし、フケを抑えることができた。また、白髪を予防し、黒い毛を生やし、薄毛の改善をもたらすものであった。さらには、かゆみを抑える効果は10分後には抑えることができ、その即効性の効果が高いことがわかった。また症例によっては、塗布後3分以内にかゆみを抑えることができた。
【0185】
6.鼻炎の治療効果の確認
6.1 症例
B環点鼻剤、BNPゲル点鼻剤を噴霧し、被験者の鼻炎等に対する効果を観察した(表17)。なお、症状の変化は、被験者の体感的な評価と、医師としての本発明者による客観的な観察とに基づいて判定した。
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
6.2 症例まとめ
上記いずれの症例においても、実施例に係るB環点鼻剤を適用した場合、鼻漏、鼻閉ともに比較例にかかるBNP点鼻剤を適用した場合と比較して、その改善、解消が迅速に行われていた。すなわち、B環点鼻剤は、BNP点鼻剤と比較して即効性に優れていた。また、B環点鼻剤の効能はBNP点鼻点鼻剤の効能と比較して同等以上であり、また、その効能の持続時間が長く、症状の再発を抑える事ができるものであった。
【0191】
なお、上述した症例のうち、鼻閉症状、鼻漏症状が改善した時点について、症例情報から把握できる範囲内で、下表にまとめた。
【表27】
【0192】
7. ヒトBNPのA型受容体との結合状態の解析
本発明のB環化合物が従来のBNPに比べて各疾病等に対する薬理効果に優れることについては、以上のとおり、各臨床例に基づきデータをもって説明したが、かかる薬理効果は発明者らが行った、化合物の立体構造解析の結果からも裏付けられるものであることについて参考のため以下の実験レポートをもって説明する。
ヒトBNP(BNP-32)と、同BNPの受容体であるA型受容体(NPR-A)との結合状態を検討するため、立体構造を用いた、ホモロジーモデリングによるin silico解析を行った。モデリングには、Swiss-Pdb viewerおよびSWISS-MODELを使用した。
【0193】
7.1 テンプレート構造
まず、上記解析に先立ち、ヒトBNPとA型受容体との間の結合状態の検討のためのテンプレート構造を選定した。このテンプレート構造として、ラットNPR-AとラットANPペプチドとの複合体の立体構造(PDB ID:1T34)を使用した。ラットNPR-Aは、A鎖、B鎖からなるホモ二量体である。そして、このようなラットNPR-Aは、ラットANPのCys7~Arg27の21残基が結合した状態でX線結晶構造解析により立体構造が決定されている。また、ラットNPR-Aの立体構造は、タンパク質立体構造データベースであるProtein Data Bankから入手した。また、ヒトNPR-AとラットNPR-Aのアミノ酸一致度は85%である。
【0194】
7.2 BNPペプチドモデル
今回、BNPのペプチドモデルとして、以下に示す、ヒトBNP(BNP-32、配列番号13、Ser-Pro-Lys-Met-Val-Gln-Gly-Ser-Gly-Cys-Phe-Gly-Arg-Lys-Met-Asp-Arg-Ile-Ser-Ser-Ser-Ser-Gly-Leu-Gly-Cys-Lys-Val-Leu-Arg-Arg-His)中のCys10~Arg30の領域のアミノ酸配列(配列番号14、Cys-Phe-Gly-Arg-Lys-Met-Asp-Arg-Ile-Ser-Ser-Ser-Ser-Gly-Leu-Gly-Cys-Lys-Val-Leu-Arg)を使用した。なお、上記ペプチドモデルにおいて、本願発明のB環のアミノ酸配列は、上記ヒトBNP中のCys10~Cys26に相当し、すなわち、Cys-Phe-Gly-Arg-Lys-Met-Asp-Arg-Ile-Ser-Ser-Ser-Ser-Gly-Leu-Gly-Cys(配列番号15)の領域である。
【0195】
7.3 ホモロジーモデリング
ヒトNPR-AのヒトBNP結合に関与するアミノ酸残基を推察するため、BNPペプチドがヒトNPR-Aに結合した複合体モデルをホモロジーモデリングにより構築した。具体的には、ホモロジーモデリングにより、テンプレート構造のラットANPペプチドに基づいてヒトBNPペプチドモデルを、テンプレート構造のラットNPR-Aに基づいてヒトNPR-Aのモデル構造をモデリングした。
次に、ヒトBNPペプチドモデルとヒトNPR-Aとの間で検出されたアミノ酸残基から、相互作用に直接関与する残基を推測した。
【0196】
この結果、BNPペプチドモデルはヒトNPR-Aの二量体と、そのA鎖とB鎖とに挟まれた状態で結合していることが示された。なお、モデルに使用したアミノ酸配列(配列番号14、Cys-Phe-Gly-Arg-Lys-Met-Asp-Arg-Ile-Ser-Ser-Ser-Ser-Gly-Leu-Gly-Cys-Lys-Val-Leu-Arg)などのアミノ酸配列中のアミノ酸をアミノ酸(数字)として表記する。すなわち、括弧内の数字は、上記アミノ酸配列のN末端から数えた数字を表し、例えば、Phe2とは、上記ペプチドモデルのN末端から数えた第2番目のPheであるアミノ酸を指す。
【0197】
構築した複合体モデルでは、BNPペプチドモデルとNPR-AのA鎖との間に、Phe2の側鎖による疎水性結合、Phe2の主鎖による水素結合、Arg4、Met6、Arg8、Ser10、Ser11の側鎖による水素結合が推測された。なお、BNPペプチドモデルのPhe2、Arg4、Met6、Arg8、Ser10、Ser11は、ヒトBNPにおいて、それぞれ、Phe11、Arg13、Met15、Arg17、Ser19、Ser20に対応する。すなわち、この結果は、ヒトBNPのうち、これらのアミノ酸残基が、NPR-Aの活性化に寄与する残基である可能性を示唆するものであった。
【0198】
7.4 考察
以上より、in silico解析による立体構造解析から、ヒトBNPは、その環状部分に存在するアミノ酸残基が、NPR-Aの活性化に寄与する残基であり、一方で、尾部に存在するアミノ酸残基は寄与しない残基であることが推測された。また、BNP環状構造は、BNP-32よりも低分子であり、容易にかつ迅速に結合できることが示唆された。実際にBNP環状構造のペプチドを臨床的に適用したところ、BNP環状構造の方がBNP-32よりも治療効果が速やかに得られることが現に確認された。この臨床結果は、BNP環状構造がNPR-Aの活性化に寄与し、さらにBNP-32によりも容易にかつ迅速に結合できるという、in silico解析と合致するものである。よって、BNP環状構造は一般的なBNPペプチドよりも優れた治療効果を持つ異なる物質と考えられる。
【0199】
一方で、NMRによる解析から、ANPは水溶液中で特定の立体構造をとらず、大きく揺らいでいることが明らかになっており、BNPも同様と考えられている。すなわち、ヒトBNPにおいては、その環状部分のアミノ酸残基がヒトNPR-Aとの結合に寄与しているとすると、尾部のアミノ酸残基は、むしろその大きな揺らぎにより、ヒトBNPがヒトNPR-AのA鎖とB鎖に挟まれた狭いBNP結合部位へ入り込みにくくすると推測された。したがって、ヒトBNPの環状部分は、従来知られているヒトBNP等と異なり、比較的低分子であり、NPR-AのBNP結合部位により容易かつ迅速に入り込むことが可能であると考えられた。また、ヒトBNPの環状部分は、BNP-32よりもヒトNPR-Aに対する親和性が高いと推測された。これは、BNPの環状部分のみを有したペプチドが、BNPー32よりもより速く治療効果が得られるという本明細書記載の臨床結果を裏付けるものであった。
【0200】
また、ヒト以外の種由来のBNPの環状構造(B環)のヒトA型受容体に対する効果を推測するため、ヒトNPR-Aとブタ、トリ、ラット由来のBNP環の複合体モデルを作成し、相互作用について推察した。その結果、ヒト以外の他の動物種、例えば、ブタ、トリ、ラットなどのBNP環を使用しても、ヒトNPR-Aに親和性を示すものであれば、本願発明の効果を十分に期待できることが示唆された。
【0201】
8. BNP環状部分における置換可能なアミノ酸残基の推定
構築した複合体のモデル構造を使用して、相互作用が推察されたアミノ酸残基以外のアミノ酸残基の置換可能性について検討を行った。
具体的には、相互作用が推察されたアミノ酸残基以外のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換した際に、置換ペプチドが、NPR-Aに対して結合可能か否かを検討するために、BNPの変異体モデルを作製し、相互作用について解析した。モデリングには、Swiss-Pdb viewerを使用した。
【0202】
具体的には、ヒトBNPのアミノ酸残基のうち、Gly12、Lys14、Asp16、Ile18、Ser21、Ser22、Gly23、Leu24、Gly25を対象とし、他のアミノ酸に置換可能か否かを、以下の点から検討した。
・NPR-Aに結合する際に立体障害を起こさない。NPR-AとBNP変異体モデル構造において、原子間の衝突が見られない。
・表面の静電ポテンシャルに影響を与えない。
・分子内エネルギーの値が大きく増加しない(原子間の結合に無理な角度やねじれを生じない)。
・NPR-AとBNPとの鎖間およびBNPの鎖内で本来見られない水素結合を形成しない。
・Cavity(空洞、すき間)を生じない。
【0203】
なお、上記のうち、分子内エネルギーの値は、Swiss-Pdb viewerのCompute Energyコマンドによって算出した。分子内エネルギーは、原子間の結合の長さ、結合角、ねじれ、結合エネルギー等の合計により、単位キロジュール/mol(Kj/mol)で算出した。
【0204】
解析の結果、ヒトBNPのアミノ酸残基中のGly12、Lys14、Ile18、Ser21、Ser22、Leu24およびGly25において、置換可能なアミノ酸残基が示された(下表)。
【表28】
【0205】
以上より、ヒトBNPの環状部分、すなわち、式I-aで表されるペプチドにおいて上記表に記載の置換に対応するアミノ酸残基の置換が行われた場合であっても、このような置換が行われたペプチドが式I-aで表されるアミノ酸配列からなるペプチドと同様の効果を奏することが示唆された。
【0206】
9.アミノ酸を置換した環状ペプチドの治療効果の確認
次に、一部のアミノ酸を置換した環状ペプチドについて、その効果を確認すべく以下の試験に供した。なお、上記環状ペプチドの製造方法および製造されたペプチドのアミノ酸配列の確認方法は、上記した環状ペプチドの製造方法および質量分析方法と同様であった。
【0207】
9.1 頭皮または頭髪への効果の確認
得られた環状ペプチドを、精製水で、3、15、30、100、500μg/mlに配合し患部に塗布した。なお、表中の処方A~Eは、それぞれ3、15、30、100、500μg/mlの環状ペプチド濃度を指す。精製水で処置した場合は、効果がないことから、プラセボ効果ではないことが確認された。
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
上記結果より、本発明の環状ペプチドの一部のアミノ酸を置換した環状ペプチドであっても、式I-aで表される環状ペプチドと同様の効果を奏することが実証された。
【0222】
特に、脱毛部位または発毛部位等の部位に適用した場合において、適用部位における脱毛を防止するとともに、発毛または育毛を促進させる効果、髪にハリとコシを与え、ボリュームが増し、抜け毛を劇的に減らす効果を有する。また適用部位においては、養毛効果、毛生促進効果、薄毛改善・予防などの効果がある。この場合において、発毛する毛髪は硬毛となりやすく、白髪ではない髪となりやすい傾向にある。また、これらの効果は、従来脱毛症治療剤において用いられた他の活性成分、例えばBNPと比較して、例えば難治性の多発性脱毛症や、蛇行状脱毛症であっても、一回の塗布だけで翌日には発毛が確認できるなど、著しく早期に発現し、得られる効果は塗布中止後も発毛し続けるなど顕著に持続する。AGAや健常者においては翌日には髪にハリとコシを与え、ボリュームが増し、抜け毛を劇的に減らす即効性の効果がみられ、その効果は塗布中止後も持続する。また、皮膚炎の改善、予防効果を有する。したがって、脱毛症に伴う皮膚の炎症を改善または予防することができる。このような効果は、頭皮等の適用部位の皮膚の状態に起因して脱毛症が悪化している場合に有利である。さらに、本発明の外用剤は、上述したように皮膚に適用した場合に、適用部位において保湿効果および肌理を整える効果を発揮する。フケやかゆみを取り、これらの発生を抑制することができるとともに、毛髪、頭皮に潤いを与え乾燥を改善し、防ぎ、頭皮や頭髪を健やかに保つことができる。また、脂漏状態を改善できる。一方、脱毛症治療剤または脱毛症予防剤として使用する場合、適用可能な脱毛症としては、特に限定されないが、例えば、以下のような脱毛症が挙げられ、これらのうち1種以上の治療または予防を目的として使用可能である。
【0223】
(後天性脱毛症)
(i)瘢痕または皮膚病変を伴わない脱毛症(円形脱毛症、男性型脱毛症、脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症、女性型脱毛症、妊娠性脱毛症、悪性脱毛症、老人性脱毛症、全頭脱毛症、多発性脱毛症、蛇行性脱毛症、薬物による脱毛症、癌化学療法剤性脱毛症及び放射線被爆による脱毛症、外傷性・機械的脱毛症、栄養障害・代謝障害に伴う脱毛症、内分泌異常に伴う脱毛症、休止期脱毛(分娩後脱毛症、高熱後脱毛症))
(ii)皮膚病変ないし病的皮膚にみられる脱毛症(感染による脱毛、腫瘍による脱毛、炎症による脱毛)
(iii)瘢痕性脱毛症(皮膚感染症による脱毛、炎症性細胞浸潤による脱毛)
(先天性脱毛症)
瀰漫性脱毛、先天性無毛症、遺伝性の症候群における脱毛、限局性脱毛、母斑性、aplasia cutis、先天性三角形脱毛
【0224】
特に後天性脱毛症に対して、好ましくは、瘢痕または皮膚病変を伴わない脱毛症に対して、より好ましくは、円形脱毛症、男性型脱毛症、脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症、女性型脱毛症、妊娠性脱毛症、悪性脱毛症、老人性脱毛症、全頭脱毛症、多発性脱毛症、蛇行性脱毛症、薬物による脱毛症、癌化学療法剤性脱毛症及び放射線被爆による脱毛症、外傷性・機械的脱毛症、栄養障害・代謝障害に伴う脱毛症、内分泌異常に伴う脱毛症、休止期脱毛に対して、優れた効果を発揮する。したがって、本発明の外用剤は、上述の群から選択される少なくとも1種以上の脱毛症の治療または予防を目的として用いることができる。
前述の適用箇所に、3μg/ml~500μg/mlを、患部に1回単純塗布した直後からから痒み、フケ、頭皮の赤み、炎症等の改善,消失させる即効性と、わずか1回の塗布で、翌日から発毛、育毛、髪のハリやコシが出てボリュームが増し、抜け毛が劇的に減少し、1週間以上その効果が続く持続性がみられた。また、一週間程度、塗布を継続すると、さらにそれらの効果が向上し、塗布中断後も、1週間から2週間にわたって、発毛、増毛が持続し続け、抜け毛もほとんどない状態が続く持続性の効果がみられた。
【0225】
9.2 肌への効果の確認
得られた環状ペプチドを、精製水で、3、15、30、100、500μg/mlに配合し患部に塗布した。なお、表中の処方A~Eは、それぞれ3、15、30、100、500μg/mlの環状ペプチド濃度を指す。なお、ペプチドを配合しない、精製水で処置した場合は、効果がないことから、プラセボ効果ではないことが確認された。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
上記結果より、本発明の環状ペプチドの一部のアミノ酸を置換した環状ペプチドであっても、式I-aで表される環状ペプチドと同様の効果を奏することが実証された。また、置換した環状ペプチドを混合して適用した場合においても、有効量の環状ペプチドを適用することで、同様の効果を得ることがでた。
【0239】
特に、アトピー性皮膚炎、湿疹などを有する被験者に、3μg/ml~500μg/mlを患部に1回の塗布した直後からから痒みを消失する、紅斑、浸潤、丘疹、掻き傷が上皮化、浸出液が止まる、亀裂が上皮化する等の即効性がみられた。また、わずか1回の塗布で、1週間以上その効果が続く持続性がみられた。
なお、健常肌や肌荒れに適用した場合、塗布直後から数分以内に保湿効果を発揮して乾燥を改善し、皮膚および粘膜に適度な弾力性と柔軟性が付与・保持され、肌が柔らかくなり、皮膚、粘膜にハリが生じ、ひきしまる。また、適用部位において小じわややたるみが改善され、さらにくすみ、しみが目立たないものとなる。これらは、1回の塗布で1週間以上の効果の持続性がみられた。
【0240】
9.3 鼻への効果の確認
得られた環状ペプチドを、生理食塩水で、3、15、30、100、500μg/mlに配合し、およそ0.1mlを鼻腔に点鼻した。なお、表中の処方A~Eは、それぞれ3、15、30、100、500μg/mlの環状ペプチド濃度を指す。なお、ペプチドを配合しない、生理食塩水で処置した場合は、効果がないことから、プラセボ効果ではないことが確認された。
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
上記結果より、本発明の環状ペプチドの一部のアミノ酸を置換した環状ペプチドであっても、式I-aで表される環状ペプチドと同様の効果を奏することが実証された。
【0248】
特に鼻腔粘膜および/または副鼻腔粘膜に適用した場合において、鼻閉、鼻漏、くしゃみ、掻痒感といった鼻炎に伴う各種症状を改善または予防することができる。また、鼻炎は、特に限定されず、例えば、急性鼻炎、慢性鼻炎を含む感染性鼻炎;複合型(花過敏症)鼻炎、鼻漏型鼻炎、うっ血型鼻炎、浮腫型鼻炎および乾燥型鼻炎を含む過敏性非感染性鼻炎;物理性鼻炎、化学性鼻炎および放射線性鼻炎を含む刺激性鼻炎;ならびに萎縮性鼻炎および特発性肉芽腫性鼻炎;急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症等の副鼻腔炎等が挙げられ、上記のうち1種以上の治療または予防を目的として使用可能である。
そして、複合型鼻炎としては、例えば、通年性アレルギー性鼻炎および季節性アレルギー性鼻炎を含むアレルギー性鼻炎と、血管運動性(本態性)鼻炎および好酸球増多性鼻炎を含む非アレルギー性鼻炎とが挙げられる。鼻漏型鼻炎としては、例えば、味覚性鼻炎、冷気吸入性鼻炎および老人性鼻炎が挙げられる。
うっ血型鼻炎としては、例えば、薬物性鼻炎、心因性鼻炎、妊娠性鼻炎、内分泌性鼻炎および寒冷性鼻炎が挙げられる。
浮腫型鼻炎としては、例えば、アスピリン過敏性鼻炎が挙げられる。
【0249】
上述した中でも、特に過敏性非感染性鼻炎、刺激性鼻炎、副鼻腔炎に対して、好ましくは、過敏性非感染性鼻炎、慢性副鼻腔炎に対して、より好ましくは、複合型(花過敏症)鼻炎、鼻漏型鼻炎、うっ血型鼻炎、浮腫型鼻炎および乾燥型鼻炎、慢性副鼻腔炎に対して、優れた効果を発揮する。したがって、本発明の外用剤は、上述の群から選択される少なくとも1種以上の鼻炎の治療または予防を目的として用いることができる。
また、症状の観点からは、上述したような効果を有することから、くしゃみ・鼻漏型鼻炎、鼻閉型鼻炎および充全型鼻炎のいずれに対しても用いることができる。
3μg/ml~500μg/ml、0.1mlを各鼻腔、患部に1回点鼻した直後から鼻汁を止め、鼻閉を改善し、鼻腔粘膜の痒みやくしゃみを止める即効性と、わずか1回の点鼻塗布で、1日持続し、症例によっては1週間以上その効果が続く持続性がみられた。その他に従来のステロイド薬といった従来用いられてきた鼻炎治療剤によって、局所刺激が強く、点鼻薬使用を希望されない被験者でも、全く局所刺激がないので、安心して使える。
【0250】
上記実施例も踏まえ、以下に、本発明の環状ペプチドにおける、複数の置換可能なアミノ酸の一例をまとめたが、これらに限定されるものではない。
【0251】
スキンケア用品が、保湿用および/または肌荒れ防止・改善用および/または皮脂ケア・ニキビケア用および/または刺激緩和・抗炎症用および/または美白用および/または老化防止用および/または紫外線傷害予防・緩和用および/またはスリミング用および/または皮膚清浄用である、請求項4に記載の外用剤。