(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096205
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】車両用ブレーキシステムの制御装置、車両、及び、車両用ブレーキシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/48 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
B60T8/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211773
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】木島 直人
(72)【発明者】
【氏名】小野 俊作
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA11
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA06
3D246GC14
3D246HA43A
3D246HA44A
3D246HA64A
3D246HA93A
3D246JA12
3D246JB02
3D246JB11
3D246LA04Z
3D246LA41Z
3D246LA43Z
3D246LA52Z
3D246LA56Z
3D246LA59Z
(57)【要約】
【課題】ドライバがブレーキ操作部を操作した際の違和感を従来よりも抑制することが可能な車両用ブレーキシステムの制御装置を得る。
【解決手段】本発明に係る車両用ブレーキシステムの制御装置は、込め弁及び第2切換弁を開状態とし、弛め弁及び第1切換弁を閉状態とし、モータを駆動させて、ホイールシリンダの液圧を増加させる第1制御を実行する。前記第1切換弁は、閉状態に制御されている状態において、前記ホイールシリンダ側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっているときに、前記ホイールシリンダ側からマスタシリンダ側へブレーキ液を逃がす構成である。前記制御装置は、前記第1制御中、前記ホイールシリンダの液圧が前記規定圧力になっているときにブレーキ操作部が操作された際、前記第1制御の状態から前記弛め弁を開状態にしてブレーキ液をアキュムレータに流入させる第2制御を実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御装置(60)であって、
前記ブレーキシステム(10)は、
マスタシリンダ(21)とホイールシリンダ(24)とを連通させる主流路(25)と、前記主流路(25)の途中部である第1途中部(25a)にブレーキ液を供給する供給流路(27)と、前記主流路(25)のブレーキ液を逃がす副流路(26)と、を有する液圧回路(12,14)を含み、
前記供給流路(27)は、一方の端部である第1端部(27a)が前記マスタシリンダ(21)に連通し、他方の端部である第2端部(27b)が前記第1途中部(25a)に接続されており、
前記副流路(26)の一方の端部である第3端部(26a)は、前記主流路(25)のうちの前記第1途中部(25a)を基準として前記ホイールシリンダ(24)側となる領域に位置する途中部である第2途中部(25b)に接続されており、
さらに、前記ブレーキシステム(10)は、
前記主流路(25)のうちの前記第1途中部(25a)と前記第2途中部(25b)との間となる領域に設けられている込め弁(28)と、
前記副流路(26)に設けられ、前記第2途中部(25b)から前記副流路(26)に流入したブレーキ液を貯留するアキュムレータ(30)と、
前記副流路(26)のうちの前記アキュムレータ(30)を基準として前記第3端部(26a)側となる領域に設けられている弛め弁(29)と、
前記主流路(25)のうちの前記第1途中部(25a)を基準として前記マスタシリンダ(21)側となる領域に設けられている第1切換弁(32)と、
前記供給流路(27)に設けられている第2切換弁(33)と、
前記供給流路(27)のうちの前記第2切換弁(33)を基準として前記第2端部(27b)側となる領域に設けられ、吸込側が前記第2切換弁(33)に連通し、吐出側が前記第2端部(27b)に連通するポンプ(31)と、
前記ポンプ(31)の駆動源であるモータ(40)と、
を備えており、
前記第1切換弁(32)は、前記制御装置(60)によって閉状態に制御されている状態において、前記ホイールシリンダ(24)側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっているときに、前記ホイールシリンダ(24)側から前記マスタシリンダ(21)側へブレーキ液を逃がす構成となっており、
前記制御装置(60)は、
前記込め弁(28)を開状態とし、前記弛め弁(29)を閉状態とし、前記第1切換弁(32)を閉状態とし、前記第2切換弁(33)を開状態とし、前記モータ(40)を駆動させて、前記ホイールシリンダ(24)の液圧を増加させる第1制御を実行可能な構成となっており、
さらに、前記第1制御中、前記ホイールシリンダ(24)の液圧が前記規定圧力になっているときに、前記車両(100)のドライバによるブレーキ操作を受け付けるブレーキ操作部が操作された際、前記第1制御の状態から前記弛め弁(29)を開状態にし、前記弛め弁(29)を介してブレーキ液を前記アキュムレータ(30)に流入させる第2制御を実行する構成となっている
車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御装置(60)。
【請求項2】
前記ブレーキシステム(10)は、前記主流路(25)に前記第1切換弁(32)と並列に接続され、前記マスタシリンダ(21)側から前記ホイールシリンダ(24)側へのブレーキ液の流れを許容する逆止弁(36)を備えている
請求項1に記載の車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御装置(60)。
【請求項3】
前記マスタシリンダ(21)の液圧情報に応じて、前記モータ(40)の回転数を異ならせる構成である
請求項1又は請求項2に記載の車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御装置(60)。
【請求項4】
前記モータ(40)の回転数に応じて、前記第2制御における前記弛め弁(29)の開時間を異ならせる構成である
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御装置(60)。
【請求項5】
さらに、前記ブレーキシステム(10)は、前記マスタシリンダ(21)の液圧を検出するマスタシリンダ側プレッシャセンサ(34)を備え、
前記マスタシリンダ(21)の前記液圧情報として、前記マスタシリンダ側プレッシャセンサ(34)で検出された前記マスタシリンダ(21)の液圧が用いられる
請求項3又は請求項4に記載の車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御装置(60)。
【請求項6】
さらに、前記ブレーキシステム(10)は、前記ホイールシリンダ(24)の液圧を検出するホイールシリンダ側プレッシャセンサ(35)を備えている
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御装置(60)。
【請求項7】
前記副流路(26)における前記第3端部(26a)とは反対側の端部である第4端部(26b)は、前記供給流路(27)のうちの前記第2切換弁(33)と前記ポンプ(31)との間となる領域に位置する途中部である第3途中部(27c)に接続されている
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御装置(60)。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御装置(60)を備えている
車両(100)。
【請求項9】
当該車両(100)はモータサイクルである
請求項8に記載の車両(100)。
【請求項10】
前記モータサイクルは、ブレーキレバー(11)を備え、
前記ブレーキ操作部が前記ブレーキレバー(11)である
請求項9に記載の車両(100)。
【請求項11】
車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御方法であって、
前記ブレーキシステム(10)は、
マスタシリンダ(21)とホイールシリンダ(24)とを連通させる主流路(25)と、前記主流路(25)の途中部である第1途中部(25a)にブレーキ液を供給する供給流路(27)と、前記主流路(25)のブレーキ液を逃がす副流路(26)と、を有する液圧回路(12,14)を含み、
前記供給流路(27)は、一方の端部である第1端部(27a)が前記マスタシリンダ(21)に連通し、他方の端部である第2端部(27b)が前記第1途中部(25a)に接続されており、
前記副流路(26)の一方の端部である第3端部(26a)は、前記主流路(25)のうちの前記第1途中部(25a)を基準として前記ホイールシリンダ(24)側となる領域に位置する途中部である第2途中部(25b)に接続されており、
さらに、前記ブレーキシステム(10)は、
前記主流路(25)のうちの前記第1途中部(25a)と前記第2途中部(25b)との間となる領域に設けられている込め弁(28)と、
前記副流路(26)に設けられ、前記第2途中部(25b)から前記副流路(26)に流入したブレーキ液を貯留するアキュムレータ(30)と、
前記副流路(26)のうちの前記アキュムレータ(30)を基準として前記第3端部(26a)側となる領域に設けられている弛め弁(29)と、
前記主流路(25)のうちの前記第1途中部(25a)を基準として前記マスタシリンダ(21)側となる領域に設けられている第1切換弁(32)と、
前記供給流路(27)に設けられている第2切換弁(33)と、
前記供給流路(27)のうちの前記第2切換弁(33)を基準として前記第2端部(27b)側となる領域に設けられ、吸込側が前記第2切換弁(33)に連通し、吐出側が前記第2端部(27b)に連通するポンプ(31)と、
前記ポンプ(31)の駆動源であるモータ(40)と、
を備えており、
前記第1切換弁(32)は、閉状態に制御されている状態において、前記ホイールシリンダ(24)側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっているときに、前記ホイールシリンダ(24)側から前記マスタシリンダ(21)側へブレーキ液を逃がす構成となっており、
前記制御方法は、
前記込め弁(28)を開状態とし、前記弛め弁(29)を閉状態とし、前記第1切換弁(32)を閉状態とし、前記第2切換弁(33)を開状態とし、前記モータ(40)を駆動させて、前記ホイールシリンダ(24)の液圧を増加させる第1制御を実行する第1制御ステップ(S2)と、
前記第1制御中、前記ホイールシリンダ(24)の液圧が前記規定圧力になっているときに、前記車両(100)のドライバによるブレーキ操作を受け付けるブレーキ操作部が操作された際、前記第1制御の状態から前記弛め弁(29)を開状態にし、前記弛め弁(29)を介してブレーキ液を前記アキュムレータ(30)に流入させる第2制御を実行する第2制御ステップ(S4)と、
を備えている車両(100)用ブレーキシステム(10)の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキシステムの制御装置、該制御装置を備えた車両、及び、車両用ブレーキシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された従来の車両用ブレーキシステムには、自動増圧制御を実行可能なものが存在する(例えば、特許文献1参照)。具体的には、自動増圧制御を実行可能なブレーキシステムは、主流路、供給流路及び副流路を有する液圧回路を備えている。主流路は、マスタシリンダとホイールシリンダとを連通させる流路である。供給流路は、主流路の途中部である第1途中部にブレーキ液を供給する流路である。供給流路は、一方の端部である第1端部が前記マスタシリンダに連通し、他方の端部である第2端部が主流路の第1途中部に接続されている。副流路は、主流路のブレーキ液を逃がす流路である。副流路の一方の端部である第3端部は、主流路のうちの第1途中部を基準としてホイールシリンダ側となる領域に位置する途中部である第2途中部に、接続されている。
【0003】
また、自動増圧制御を実行可能なブレーキシステムは、込め弁と、アキュムレータと、弛め弁と、第1切換弁と、第2切換弁と、ポンプと、モータとを備えている。込め弁は、主流路のうちの第1途中部と第2途中部との間となる領域に設けられている。アキュムレータは、副流路に設けられ、主流路の第2途中部から副流路に流入したブレーキ液を貯留するものである。弛め弁は、副流路のうちのアキュムレータを基準として第3端部側となる領域に設けられている。第1切換弁は、主流路のうちの第1途中部を基準としてマスタシリンダ側となる領域に設けられている。第2切換弁は、供給流路に設けられている。ポンプは、供給流路のうちの第2切換弁を基準として第2端部側となる領域に設けられ、吸込側が第2切換弁に連通し、吐出側が第2端部に連通している。モータは、ポンプの駆動源となるものである。
【0004】
そして、自動増圧制御を実行可能なブレーキシステムの制御装置は、自動増圧制御を実行する際、込め弁を開状態とし、弛め弁を閉状態とし、第1切換弁を閉状態とし、第2切換弁を開状態とし、モータを駆動させて、ホイールシリンダの液圧を増加させる。これにより、該ホイールシリンダの液圧に応じて制動力が発生する車輪に、ドライバによるブレーキ操作を受け付けるブレーキ操作部(ブレーキレバー及びブレーキペダル等)が操作されていない状態においても、制動力を発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動増圧制御を実行可能なブレーキシステムの第1切換弁は、制御装置によって閉状態に制御されている状態において、ホイールシリンダ側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっているときに、ホイールシリンダ側からマスタシリンダ側へブレーキ液を逃がす構成となっている。このため、自動増圧制御においてホイールシリンダの液圧が規定圧力となった後は、ポンプによって第1途中部から主流路にブレーキ液が供給されても、該ブレーキ液の量と同量のブレーキ液が、第1切換弁を通って、ホイールシリンダ側からマスタシリンダ側へ逃がされる。このため、ホイールシリンダの液圧を規定圧力とする自動増圧制御が継続されることとなる。
【0007】
ここで、自動増圧制御中にブレーキ操作部が操作され、該ブレーキ操作部によってマスタシリンダのピストンが押圧された際、マスタシリンダのブレーキ液は、第2切換弁及びポンプを通って、第1途中部から主流路に流入する。この際、ホイールシリンダの液圧が規定圧力になっていると、第1途中部から主流路に流入したブレーキ液と同量のブレーキ液が、第1切換弁を通って、ホイールシリンダ側からマスタシリンダ側へ戻されることとなる。この結果、マスタシリンダ側のブレーキ液の量が変わらなくなり、ブレーキ操作部を動かすことが困難な状態となる。以下、ブレーキ操作部を動かすことが困難な状態となったブレーキ操作部の操作感を、ハードブレーキフィーリングと称する。
【0008】
このように、自動増圧制御を実行可能な従来のブレーキシステムにおいては、自動増圧制御中にドライバがブレーキ操作部を操作した際、ブレーキ操作部の操作感がハードブレーキフィーリングとなる。このため、自動増圧制御を実行可能な従来のブレーキシステムは、ドライバがブレーキ操作部を操作した際、ドライバに違和感を抱かせてしまう場合があるという課題があった。
【0009】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、ドライバがブレーキ操作部を操作した際、ドライバに違和感を抱かせてしまうことを従来よりも抑制することが可能な車両用ブレーキシステムの制御装置を得ることを第1の目的とする。また、本発明は、このような車両用ブレーキシステムの制御装置を備えた車両を得ることを第2の目的とする。また、本発明は、ドライバがブレーキ操作部を操作した際、ドライバに違和感を抱かせてしまうことを従来よりも抑制することが可能な車両用ブレーキシステムの制御方法を得ることを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る制御装置は、車両用ブレーキシステムの制御装置であって、前記ブレーキシステムは、マスタシリンダとホイールシリンダとを連通させる主流路と、前記主流路の途中部である第1途中部にブレーキ液を供給する供給流路と、前記主流路のブレーキ液を逃がす副流路と、を有する液圧回路を含み、前記供給流路は、一方の端部である第1端部が前記マスタシリンダに連通し、他方の端部である第2端部が前記第1途中部に接続されており、前記副流路の一方の端部である第3端部は、前記主流路のうちの前記第1途中部を基準として前記ホイールシリンダ側となる領域に位置する途中部である第2途中部に接続されており、さらに、前記ブレーキシステムは、前記主流路のうちの前記第1途中部と前記第2途中部との間となる領域に設けられている込め弁と、前記副流路に設けられ、前記第2途中部から前記副流路に流入したブレーキ液を貯留するアキュムレータと、前記副流路のうちの前記アキュムレータを基準として前記第3端部側となる領域に設けられている弛め弁と、前記主流路のうちの前記第1途中部を基準として前記マスタシリンダ側となる領域に設けられている第1切換弁と、前記供給流路に設けられている第2切換弁と、前記供給流路のうちの前記第2切換弁を基準として前記第2端部側となる領域に設けられ、吸込側が前記第2切換弁に連通し、吐出側が前記第2端部に連通するポンプと、前記ポンプの駆動源であるモータと、を備えており、前記第1切換弁は、前記制御装置によって閉状態に制御されている状態において、前記ホイールシリンダ側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっているときに、前記ホイールシリンダ側から前記マスタシリンダ側へブレーキ液を逃がす構成となっており、前記制御装置は、前記込め弁を開状態とし、前記弛め弁を閉状態とし、前記第1切換弁を閉状態とし、前記第2切換弁を開状態とし、前記モータを駆動させて、前記ホイールシリンダの液圧を増加させる第1制御を実行可能な構成となっており、さらに、前記第1制御中、前記ホイールシリンダの液圧が前記規定圧力になっているときに、前記車両のドライバによるブレーキ操作を受け付けるブレーキ操作部が操作された際、前記第1制御の状態から前記弛め弁を開状態にし、前記弛め弁を介してブレーキ液を前記アキュムレータに流入させる第2制御を実行する構成となっている。
【0011】
また、本発明に係る車両は、本発明に係る車両用ブレーキシステムの制御装置を備えている。
【0012】
また、本発明に係る制御方法は、車両用ブレーキシステムの制御方法であって、前記ブレーキシステムは、マスタシリンダとホイールシリンダとを連通させる主流路と、前記主流路の途中部である第1途中部にブレーキ液を供給する供給流路と、前記主流路のブレーキ液を逃がす副流路と、を有する液圧回路を含み、前記供給流路は、一方の端部である第1端部が前記マスタシリンダに連通し、他方の端部である第2端部が前記第1途中部に接続されており、前記副流路の一方の端部である第3端部は、前記主流路のうちの前記第1途中部を基準として前記ホイールシリンダ側となる領域に位置する途中部である第2途中部に接続されており、さらに、前記ブレーキシステムは、前記主流路のうちの前記第1途中部と前記第2途中部との間となる領域に設けられている込め弁と、前記副流路に設けられ、前記第2途中部から前記副流路に流入したブレーキ液を貯留するアキュムレータと、前記副流路のうちの前記アキュムレータを基準として前記第3端部側となる領域に設けられている弛め弁と、前記主流路のうちの前記第1途中部を基準として前記マスタシリンダ側となる領域に設けられている第1切換弁と、前記供給流路に設けられている第2切換弁と、前記供給流路のうちの前記第2切換弁を基準として前記第2端部側となる領域に設けられ、吸込側が前記第2切換弁に連通し、吐出側が前記第2端部に連通するポンプと、前記ポンプの駆動源であるモータと、を備えており、前記第1切換弁は、閉状態に制御されている状態において、前記ホイールシリンダ側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっているときに、前記ホイールシリンダ側から前記マスタシリンダ側へブレーキ液を逃がす構成となっており、前記制御方法は、前記込め弁を開状態とし、前記弛め弁を閉状態とし、前記第1切換弁を閉状態とし、前記第2切換弁を開状態とし、前記モータを駆動させて、前記ホイールシリンダの液圧を増加させる第1制御を実行する第1制御ステップと、前記第1制御中、前記ホイールシリンダの液圧が前記規定圧力になっているときに、前記車両のドライバによるブレーキ操作を受け付けるブレーキ操作部が操作された際、前記第1制御の状態から前記弛め弁を開状態にし、前記弛め弁を介してブレーキ液を前記アキュムレータに流入させる第2制御を実行する第2制御ステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、従来の自動増圧制御と同様の第1制御の実行中であって、ホイールシリンダの液圧が規定圧力になっているときに、ドライバがブレーキ操作部を操作した際、第2制御を実行する。この第2制御では、第1制御の状態から弛め弁を開状態にし、弛め弁を介してブレーキ液を前記アキュムレータに流入させる。これにより、ブレーキ操作部の操作によってマスタシリンダからブレーキ液が流出し、第2切換弁及びポンプを通って第1途中部から主流路にブレーキ液が流入した際、当該ブレーキ液と略同量のブレーキ液がアキュムレータに貯留されることとなる。このため、ホイールシリンダの液圧が前記規定圧力になっているときに、ドライバがブレーキ操作部を操作しても、ホイールシリンダの液圧の変動を抑制しつつ、第1切換弁を介してホイールシリンダ側からマスタシリンダ側へブレーキ液が戻されることを抑制できる。したがって、本発明は、ブレーキ操作部の操作感がハードブレーキフィーリングとなることを抑制しつつ、自動増圧制御を実行することができる。このため、本発明は、ドライバがブレーキ操作部を操作した際、ドライバに違和感を抱かせてしまうことを従来よりも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される車両の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る制御装置を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る制御装置の制御部が行うホイールシリンダの液圧の制御動作の一例を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る制御装置の制御部が行うホイールシリンダの液圧の制御動作の一例を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る制御装置の制御部が行うホイールシリンダの液圧の制御動作の一例を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る制御装置の制御部が行う第2制御を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る制御装置が自動増圧制御を実行する際の制御動作を示す制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る車両用ブレーキシステムの制御装置、該制御装置を備えた車両、及び、車両用ブレーキシステムの制御方法について、図面を用いて説明する。
なお、以下では、本発明が自動二輪車に採用される場合を説明するが、本発明は自動二輪車以外の他の車両に採用されてもよい。自動二輪車以外の他の車両とは、例えば、自転車、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする自動三輪車及び自動四輪車等である。なお、自転車とは、ペダルに付与される踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味している。つまり、自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。また、自動二輪車又は自動三輪車は、いわゆるモータサイクルを意味し、モータサイクルには、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、以下では、2系統の液圧回路を備えている車両用ブレーキシステムに本発明を採用した例を説明しているが、本発明が採用される車両用ブレーキシステムの液圧回路の数は2系統に限定されない。本発明が採用される車両用ブレーキシステムは、1系統のみの液圧回路を備えていてもよく、また、3系統以上の液圧回路を備えていてもよい。
【0016】
また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に対して、同一の符号を付している場合又は符号を付すことを省略している場合がある。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0017】
実施の形態.
以下に、本実施の形態に係る制御装置を備えた車両用のブレーキシステムを説明する。
【0018】
<車両用ブレーキシステムの構成及び動作>
本実施の形態に係る制御装置を備えたブレーキシステムの構成及び動作について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される車両の構成を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、ブレーキシステム10は、例えば自動二輪車である車両100に搭載される。車両100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、を含む。
【0020】
ブレーキシステム10は、ブレーキレバー11と、ブレーキ液が充填されている第1液圧回路12と、ブレーキペダル13と、ブレーキ液が充填されている第2液圧回路14と、を含む。ブレーキレバー11は、ハンドル2に設けられており、ドライバの手によって操作される。第1液圧回路12は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力を生じさせるものである。すなわち、第1液圧回路12は、前輪3に、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力を生じさせるものである。ブレーキペダル13は、胴体1の下部に設けられており、ドライバの足によって操作される。第2液圧回路14は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキペダル13の操作量に応じた制動力を生じさせるものである。すなわち、第2液圧回路14は、後輪4に、ブレーキペダル13の操作量に応じた制動力を生じさせるものである。
【0021】
なお、ブレーキレバー11及びブレーキペダル13は、ブレーキ操作部の一例である。例えば、ブレーキレバー11に換わるブレーキ操作部として、胴体1に設けられているブレーキペダル13とは別のブレーキペダルを採用してもよい。また例えば、ブレーキペダル13に換わるブレーキ操作部として、ハンドル2に設けられているブレーキレバー11とは別のブレーキレバーを採用してもよい。また、第1液圧回路12は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキレバー11の操作量、又は、胴体1に設けられているブレーキペダル13とは別のブレーキペダルの操作量に応じた制動力を生じさせるものであってもよい。また、第2液圧回路14は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキペダル13の操作量、又は、ハンドル2に設けられているブレーキレバー11とは別のブレーキレバーの操作量に応じた制動力を生じさせるものであってもよい。
【0022】
ブレーキシステム10の第1液圧回路12と第2液圧回路14とは、同じ構成になっている。このため、以下では、代表して、第1液圧回路12の構成を説明する。
第1液圧回路12は、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)を動作させるホイールシリンダ24と、を含む。
【0023】
また、第1液圧回路12は、主流路25、供給流路27及び副流路26を備えている。本実施の形態では、主流路25、供給流路27及び副流路26は、液圧制御ユニット50の基体51に設けられている。
【0024】
主流路25は、マスタシリンダ21とホイールシリンダ24とを連通させる流路である。本実施の形態では、主流路25の一端に形成されているマスタシリンダポートMPとマスタシリンダ21とが、液管で接続されている。また、主流路25の他端に形成されているホイールシリンダポートWPとホイールシリンダ24とが、液管で接続されている。これにより、主流路25は、マスタシリンダ21とホイールシリンダ24とを連通させている。なお、主流路25は、マスタシリンダ21及びホイールシリンダ24と直接接続されていてもよい。
【0025】
供給流路27は、主流路25の途中部25aにブレーキ液を供給する流路である。具体的には、マスタシリンダ21のブレーキ液が、供給流路27を介して、主流路25の途中部25aに供給される。供給流路27は、一方の端部である端部27aがマスタシリンダ21に連通し、他方の端部である端部27bが主流路25の途中部25aに接続されている。具体的には、本実施の形態では、供給流路27の端部27aは、主流路25(詳しくは、後述する第1切換弁32を基準としてマスタシリンダ21側となる領域)に接続されている。そして、供給流路27の端部27aは、マスタシリンダ21とマスタシリンダポートMPとを接続する液管と、主流路25とを介して、マスタシリンダ21に連通している。なお、供給流路27の端部27aは、マスタシリンダポートMPに接続されていてもよいし、マスタシリンダ21に直接接続されていてもよい。
ここで、主流路25の途中部25aが、本発明の第1途中部に相当する。供給流路27の端部27aが、本発明の第1端部に相当する。供給流路27の端部27bが、本発明の第2端部に相当する。
【0026】
副流路26は、主流路25のブレーキ液を逃がす流路である。具体的には、ホイールシリンダ24から主流路25に流入したブレーキ液が、副流路26に逃がされる。副流路26の一方の端部である端部26aは、主流路25の途中部25bに接続されている。途中部25bは、主流路25のうちの途中部25aを基準としてホイールシリンダ24側となる領域に位置する途中部である。また、副流路26における端部26aとは反対側の端部である端部26bは、供給流路27の途中部27cに接続されている。途中部27cは、供給流路27のうちの後述する第2切換弁33とポンプ31との間となる領域に位置する途中部である。
ここで、主流路25の途中部25bが、本発明の第2途中部に相当する。副流路26の端部26aが、本発明の第3端部に相当する。副流路26の端部26bが、本発明の第4端部に相当する。供給流路27の途中部27cが、本発明の第3途中部に相当する。
【0027】
また、ブレーキシステム10は、第1液圧回路12に、込め弁28、弛め弁29、アキュムレータ30、第1切換弁32、第2切換弁33、ポンプ31、及びモータ40を備えている。
【0028】
込め弁28は、主流路25のうちの途中部25aと途中部25bとの間となる領域に設けられている。込め弁28の開閉動作によって、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。アキュムレータ30は、副流路26に設けられ、途中部25bから副流路26に流入したブレーキ液を貯留するものである。弛め弁29は、副流路26のうちのアキュムレータ30を基準として端部26a側となる領域に設けられている。弛め弁29の開閉動作によって、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。第1切換弁32は、主流路25のうちの途中部25aを基準としてマスタシリンダ21側となる領域に設けられている。第1切換弁32の開閉動作によって、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。第2切換弁33は、供給流路27に設けられている。第2切換弁33の開閉動作によって、供給流路27を流通するブレーキ液の流量が制御される。ポンプ31は、供給流路27のうちの第2切換弁33を基準として端部27b側となる領域に設けられている。ポンプ31は、吸込側が第2切換弁33に連通し、吐出側が端部27bに連通している。モータ40は、ポンプ31の駆動源である。すなわち、ポンプ31はモータ40によって駆動される。なお、本実施の形態では、第1液圧回路12のポンプ31と第2液圧回路14のポンプ31とが、共通のモータ40によって駆動される構成となっている。
【0029】
また、ブレーキシステム10は、第1液圧回路12に、マスタシリンダ21の液圧を検出するマスタシリンダ側プレッシャセンサ34と、ホイールシリンダ24の液圧を検出するホイールシリンダ側プレッシャセンサ35とを備えている。なお、液圧とは、ブレーキ液の圧力である。マスタシリンダ側プレッシャセンサ34は、主流路25のうちの第1切換弁32よりもマスタシリンダ21側の領域に設けられている。ホイールシリンダ側プレッシャセンサ35は、主流路25のうちの込め弁28よりもホイールシリンダ24側の領域に設けられている。
【0030】
込め弁28は、例えば、該込め弁29のコイルが非通電状態から通電状態になると、開状態から閉状態となり、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁弁である。弛め弁29は、例えば、該弛め弁29のコイルが非通電状態から通電状態になると、閉状態から開状態となり、その設置個所を介してアキュムレータ30へ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁弁である。第1切換弁32は、例えば、該第1切換弁32のコイルが非通電状態から通電状態になると、開状態から閉状態となり、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁弁である。第2切換弁33は、例えば、該第2切換弁33のコイルが非通電状態から通電状態になると、閉状態から開状態となり、その設置個所を介してポンプ31へ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁弁である。
【0031】
込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32、及び第2切換弁33の開閉状態は、制御装置60によって制御される。また、モータ40の駆動状態も、制御装置60によって制御される。すなわち、ブレーキシステム10は、制御装置60を備えている。制御装置60は、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御装置60は、基体51に取り付けられていてもよく、また、基体51以外の他の部材に取り付けられていてもよい。また、制御装置60の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。なお、制御装置60の詳細については後述する。
【0032】
本実施の形態では、基体51と、基体51に設けられている各部材(込め弁28、弛め弁29、アキュムレータ30、ポンプ31、第1切換弁32、第2切換弁33、マスタシリンダ側プレッシャセンサ34、ホイールシリンダ側プレッシャセンサ35、モータ40等)と、制御装置60と、によって、液圧制御ユニット50が構成される。なお、込め弁28、弛め弁29、アキュムレータ30、ポンプ31、第1切換弁32、第2切換弁33、マスタシリンダ側プレッシャセンサ34、ホイールシリンダ側プレッシャセンサ35、モータ40等は、複数の基体51に分かれて設けられていてもよい。
【0033】
ここで、第1切換弁32は、制御装置60によって閉状態に制御されている状態において、ホイールシリンダ24側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっているときに、ホイールシリンダ24側からマスタシリンダ21側へブレーキ液を逃がす構成となっている。具体的には、本実施の形態に係る第1切換弁32は、該第1切換弁32のコイルに通電されることにより、該コイルに発生する磁力を用いて弁体を弁座に押し付け、閉状態となる。この際、本実施の形態に係る第1切換弁32の弁体には、ホイールシリンダ24側から作用する液圧が、該弁体が弁座から離れる方向に作用する。そして、ホイールシリンダ24側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっている状態では、ホイールシリンダ24側から作用する液圧によって、弁体が弁座から離れる。この結果、第1切換弁32は、制御装置60によって閉状態に制御されている状態において、ホイールシリンダ24側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっているときに、ホイールシリンダ24側からマスタシリンダ21側へブレーキ液を逃がすこととなる。
【0034】
なお、弁体を弁座に押し付ける力は、コイルに発生する磁力に比例する。また、コイルに発生する磁力は、該コイルに流れる電流の大きさに比例する。このため、該コイルに流れる電流を制御することにより、上述の規定圧力を変更することができる。本実施の形態では、制御装置60は、第1切換弁32のコイルに流れる電流の大きさを制御し、上述の規定圧力を変更可能な構成となっている。
【0035】
また、本実施の形態では、ブレーキシステム10は、液圧制御ユニット50の構成として、第1液圧回路12に、逆止弁36を備えている。逆止弁36は、主流路25に第1切換弁32と並列に接続され、マスタシリンダ21側からホイールシリンダ24側へのブレーキ液の流れを許容するものである。
【0036】
図3は、本発明の実施の形態に係る制御装置を示すブロック図である。
本実施の形態では、制御装置60には、マスタシリンダ側プレッシャセンサ34及びホイールシリンダ側プレッシャセンサ35の出力が入力される。制御装置60には、車輪速センサ及び加速度センサ等の図示せぬセンサ等の出力が入力されてもよい。この制御装置60は、機能部として、制御部61を備えている。制御部61は、制御装置60に入力されるセンサ等の出力に応じて、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32、及び第2切換弁33の開閉状態と、モータ40の駆動状態とを制御し、ホイールシリンダ24の液圧を制御する機能部である。例えば、制御部61は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24の液圧を制御し、前輪3に発生する制動力を制御する。また、例えば、制御部61は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24の液圧を制御し、後輪4に発生する制動力を制御する。以下、制御部61が行うホイールシリンダ24の液圧の制御動作の一例について、
図4~
図7を参照しながら説明する。また、以下の
図4~
図7では、制御部61が第1液圧回路12のホイールシリンダ24の液圧を制御する例について説明する。
【0037】
図4は、本発明の実施の形態に係る制御装置の制御部が行うホイールシリンダの液圧の制御動作の一例を説明するための図である。この
図4に示す第1液圧回路12では、該
図4で説明する制御動作例におけるブレーキ液の主な流れを実線で示している。
【0038】
例えば、通常状態では、制御部61は、
図4に示すように、込め弁28を開状態とし、弛め弁29を閉状態とし、第1切換弁32を開状態とし、第2切換弁33を閉状態とし、モータ40を停止状態とする。その状態で、ブレーキレバー11が操作されると、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)がブレーキレバー11によって押圧され、マスタシリンダ21からブレーキレバー11の操作量に応じた量のブレーキ液が押し出される。そして、マスタシリンダ21から押し出されたブレーキ液は、第1切換弁32及び込め弁28を通って、ホイールシリンダ24に流入し、ホイールシリンダ24の液圧が増加する。これにより、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられ、前輪3には、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力が発生する。なお、第2液圧回路14において制御部61が同様の制御を行うことにより、後輪4には、ブレーキペダル13の操作量に応じた制動力が発生する。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態に係る制御装置の制御部が行うホイールシリンダの液圧の制御動作の一例を説明するための図である。この
図5に示す第1液圧回路12では、該
図5で説明する制御動作例におけるブレーキ液の主な流れを実線で示している。
【0040】
例えば、制御部61は、ホイールシリンダ24の液圧の過剰又は過剰の可能性が生じた場合に、ホイールシリンダ24からブレーキ液を排出してホイールシリンダ24の液圧を減少させる自動減圧制御を実行する。自動減圧制御では、制御部61は、
図5に示すように、込め弁28を閉状態とし、弛め弁29を開状態とし、第1切換弁32を開状態とし、第2切換弁33を閉状態とする。そして、制御部61は、モータ40を駆動する。その結果、モータ40によって駆動されるポンプ31の吸引力により、ホイールシリンダ24のブレーキ液が途中部25bから副流路26に流入する。そして、副流路26に流入したブレーキ液は、弛め弁29を通って、アキュムレータ30に貯留される。これにより、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)のロータ3aへの押圧力が減少し、前輪3には、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力よりも小さい制動力が発生することとなる。なお、第2液圧回路14において制御部61が同様の制御を行うことにより、後輪4には、ブレーキペダル13の操作量に応じた制動力よりも小さい制動力が発生することとなる。
【0041】
ところで、従来、ポンプを用いずに自動減圧制御を行うブレーキシステムが知られている。以下、ポンプを用いずに自動減圧制御を行うブレーキシステムをポンプレス式のブレーキシステムと称する。ポンプレス式のブレーキシステムでは、例えば、弛め弁を開いたときの該弛め弁の前後の圧力差を利用して、ホイールシリンダ内のブレーキ液をアキュムレータに流入させる。本実施の形態に係るブレーキシステム10は、従来のポンプレス式のブレーキシステムと同様に、ポンプ31を用いずに自動減圧制御を行う構成としてもよい。この場合、副流路26の端部26bが供給流路27の途中部27cに接続されていなくてもよい。ここで、ポンプ31を用いて自動減圧制御を行う構成の場合、ポンプ31を用いずに自動減圧制御を行う構成の場合と比較して、ポンプ31の吸引力の分だけ、早急にホイールシリンダ24の液圧を減少させることができる。また、後述のように、本実施の形態に係るブレーキシステム10は、自動増圧制御が実行可能な構成となっている。この自動増圧制御を行うには、ポンプ31は必須の構成となる。このため、自動増圧制御が実行可能なブレーキシステム10においては、ポンプ31を用いて自動減圧制御を行う構成であることが好ましい。すなわち、自動増圧制御が実行可能なブレーキシステム10においては、副流路26の端部26bが供給流路27の途中部27cに接続されていることが好ましい。
【0042】
図6は、本発明の実施の形態に係る制御装置の制御部が行うホイールシリンダの液圧の制御動作の一例を説明するための図である。この
図6に示す第1液圧回路12では、該
図6で説明する制御動作例におけるブレーキ液の主な流れを実線で示している。
【0043】
例えば、制御部61は、ホイールシリンダ24の液圧の不足又は不足の可能性が生じた場合に、ホイールシリンダ24へブレーキ液を供給してホイールシリンダ24の液圧を増加させる自動増圧制御を実行する。自動増圧制御では、制御部61は、
図6に示すように、込め弁28を開状態とし、弛め弁29を閉状態とし、第1切換弁32を閉状態とし、第2切換弁33を開状態とする。そして、制御部61は、モータ40を駆動する。その結果、モータ40によって駆動されるポンプ31の吸引力により、マスタシリンダ21のブレーキ液が供給流路27に流入する。また、供給流路27に流入したブレーキ液は、第2切換弁33及びポンプ31を通って、端部27bから主流路25の途中部25aに流入する。そして、途中部25aから主流路25に流入したブレーキ液は、込め弁28を通ってホイールシリンダ24に流入し、ホイールシリンダ24の液圧が増加する。これにより、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)のロータ3aへの押圧力が増加し、前輪3には、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力よりも大きい制動力が発生することとなる。
【0044】
ここで、上述のように、第1切換弁32は、制御装置60によって閉状態に制御されている状態において、ホイールシリンダ24側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっているときに、ホイールシリンダ24側からマスタシリンダ21側へブレーキ液を逃がす構成となっている。このため、自動増圧制御においてホイールシリンダ24の液圧が規定圧力に増加した後は、ポンプ31によって途中部25aから主流路25にブレーキ液が供給されても、該ブレーキ液の量と同量のブレーキ液が、第1切換弁32を通って、ホイールシリンダ24側からマスタシリンダ21側へ逃がされる。このため、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力に増加した後は、ホイールシリンダ24の液圧を規定圧力とする自動増圧制御が継続されることとなる。
【0045】
なお、以下では、
図6に示した自動増圧制御を、第1制御と称する。すなわち、第1制御は、込め弁28を開状態とし、弛め弁29を閉状態とし、第1切換弁32を閉状態とし、第2切換弁33を開状態とし、モータ40を駆動させて、ホイールシリンダ24の液圧を増加させる制御である。換言すると、制御部61は、第1制御を実行可能な構成となっている。なお、制御部61は、ホイールシリンダ24の液圧の不足又は不足の可能性が生じた場合、ブレーキレバー11が操作されていないときにも、第1制御を実行する。また、本実施の形態では、制御部61は、第2液圧回路14においても、第1制御を実行可能な構成となっている。
【0046】
ところで、従来の車両用のブレーキシステムでは、第1制御と同様の自動増圧制御中にブレーキ操作部が操作されると、ブレーキ操作部を動かすことが困難な状態となる場合がある。以下、
図6に示した第1制御中にブレーキ操作部の一例であるブレーキレバー11が操作された際、ブレーキレバー11を動かすことが困難な状態となる例について説明する。なお、以下では、ブレーキ操作部を動かすことが困難な状態となったブレーキ操作部の操作感を、ハードブレーキフィーリングと称する。
【0047】
上述のように、ブレーキレバー11が操作されると、マスタシリンダ21のピストンがブレーキレバー11によって押圧され、マスタシリンダ21からブレーキ液が押し出される。この際、マスタシリンダ21から流出したブレーキ液は、供給流路27に流入し、第2切換弁33を通ってポンプ31に流入する。そして、このブレーキ液は、ポンプ31から吐出され、ホイールシリンダ24側の流路に流入する。この際、例えば、第1制御において、ホイールシリンダ24の液圧が未だ規定圧力まで増加していない状態とする。この状態においては、ホイールシリンダ24側の流路のブレーキ液は、第1切換弁32を通ってマスタシリンダ21側の流路に流入しない。なお、ホイールシリンダ24側の流路とは、主流路25における第1切換弁32を基準としてホイールシリンダ24側となる部分、供給流路27におけるポンプ31を基準としてホイールシリンダ24側となる部分、副流路26における弛め弁29を基準としてホイールシリンダ24側となる部分、及び、ホイールシリンダポートWPとホイールシリンダ24とを接続する液管である。また、マスタシリンダ21側の流路とは、主流路25における第1切換弁32を基準としてマスタシリンダ21側となる部分、供給流路27におけるポンプ31を基準としてマスタシリンダ21側となる部分、及び、マスタシリンダポートMPとマスタシリンダ21とを接続する液管である。
【0048】
このため、第1制御において、ホイールシリンダ24の液圧が未だ規定圧力まで増加していない状態では、ブレーキレバー11が操作されても、ブレーキレバー11の操作感がハードブレーキフィーリングとなってしまうことを抑制できる。
【0049】
また、本実施の形態に係るブレーキシステム10は、逆止弁36を備えているので、ブレーキレバー11の操作感がハードブレーキフィーリングとなってしまうことをさらに抑制できる。詳しくは、ポンプ31から吐出されるブレーキ液の流量が、ブレーキレバー11が操作された際にマスタシリンダ21から流出するブレーキ液の流量よりも少なすぎる場合、マスタシリンダ21側の流路の液圧が大きくなる。このような場合、第1制御において、ホイールシリンダ24の液圧が未だ規定圧力まで増加していない状態であっても、ブレーキレバー11の操作感がハードブレーキフィーリングとなってしまうことがある。しかしながら、ブレーキシステム10が逆止弁36を備えている場合、マスタシリンダ21側の流路の液圧がホイールシリンダ24側の流路の液圧よりも高くなると、逆止弁36を通って、マスタシリンダ21側の流路からホイールシリンダ24側の流路へブレーキ液が流れることができる。このため、ブレーキシステム10が逆止弁36を備えることにより、ブレーキレバー11の操作感がハードブレーキフィーリングとなってしまうことをさらに抑制できる。
【0050】
一方、第1制御において、ホイールシリンダ24の液圧が既に規定圧力まで増加している状態とする。この状態においてブレーキレバー11が操作されると、次のような状態となる。具体的には、上述のように、ブレーキレバー11が操作されて、マスタシリンダ21からブレーキ液が押し出されると、マスタシリンダ21から流出したブレーキ液は、供給流路27に流入し、第2切換弁33を通ってポンプ31に流入する。そして、このブレーキ液は、ポンプ31から吐出され、ホイールシリンダ24側の流路に流入する。この際、ホイールシリンダ24の液圧が既に規定圧力まで増加している場合、ホイールシリンダ24側の流路の液圧も既に規定圧力まで増加している。このため、ホイールシリンダ24側の流路に流入したブレーキ液と同量のブレーキ液が、第1切換弁32を通って、マスタシリンダ21側の流路に戻される。この結果、ブレーキレバー11が操作されても、マスタシリンダ側の流路ではブレーキ液の量が変わらないこととなる。このため、第1制御において、ホイールシリンダ24の液圧が既に規定圧力まで増加している状態となっているときに、ブレーキレバー11が操作されると、ブレーキレバー11の操作感がハードブレーキフィーリングとなってしまう。第2液圧回路14において第1制御中にブレーキペダル13を操作した場合も、同様である。そこで、本実施の形態では、ブレーキ操作部の操作感がハードブレーキフィーリングとなることを抑制すべく、制御装置60を次のように構成している。
【0051】
具体的には、
図3に示すように、本実施の形態に係る制御装置60は、機能部として、判定部62を備えている。第1制御中、判定部62は、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているときに、ブレーキレバー11が操作されたか否かを判定する機能部である。そして、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているときに、ブレーキレバー11が操作されたと判定部62が判定すると、制御部61は、第2制御を実行する。第2制御では、制御部61は、第1制御の状態から、次のように、弛め弁29を制御する。以下、
図7を用いて、第2制御の方法について具体的に説明していく。なお、
図7は、制御部61が第1液圧回路12において第2制御を実行している例を示している。
【0052】
図7は、本発明の実施の形態に係る制御装置の制御部が行う第2制御を説明するための図である。なお、
図7には、第2制御中にブレーキレバー11が操作されている際のブレーキ液の主な流れを実線で示している。
第2制御において、制御部61は、
図7に示すように、第1制御の状態から、弛め弁29を開状態とする。これにより、ブレーキレバー11の操作によってマスタシリンダ21からブレーキ液が流出し、第2切換弁33及びポンプ31を通って途中部25aから主流路25にブレーキ液が流入した際、当該ブレーキ液と略同量のブレーキ液がアキュムレータ30に貯留されることとなる。このため、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているときに、ドライバがブレーキレバー11を操作しても、ホイールシリンダ24の液圧の変動を抑制しつつ、ホイールシリンダ24側の流路からマスタシリンダ21側の流路へブレーキ液が戻されることを抑制できる。
【0053】
したがって、第2制御を実行することにより、ブレーキレバー11の操作感がハードブレーキフィーリングとなることを抑制しつつ、自動増圧制御を実行することができる。このため、本実施の形態に係る制御装置60は、ドライバがブレーキレバー11を操作した際、ドライバに違和感を抱かせてしまうことを従来よりも抑制することができる。なお、本実施の形態に係る制御装置60は、第2液圧回路14においても同様に、第2制御を実施する構成となっている。
【0054】
ここで、上述のように、第1制御中、判定部62は、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているときに、ブレーキ操作部が操作されたか否かを判定する。すなわち、判定部62は、第1制御中、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているか否かを判定する。また、判定部62は、第1制御中、ブレーキ操作部が操作されたか否かを判定する。この際、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているか否かを判定する方法として、種々の方法を用いることができる。また、ブレーキ操作部が操作されたか否かを判定する方法として、種々の方法を用いることができる。
【0055】
例えば、ポンプ31の吐出量から、ホイールシリンダ24の液圧を推定できる。例えば、この推定された液圧を用いて、判定部62は、第1制御中、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているか否かを判定してもよい。また、例えば、ホイールシリンダ側プレッシャセンサ35で検出されたホイールシリンダ24の液圧を用いて、判定部62は、第1制御中、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているか否かを判定してもよい。なお、本実施の形態では、判定部62は、ホイールシリンダ側プレッシャセンサ35で検出されたホイールシリンダ24の液圧を用いて、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているか否かを判定している。ホイールシリンダ側プレッシャセンサ35はホイールシリンダ24の液圧を直接検出できるので、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているのか否かの判定が正確となるからである。この結果、第1制御から第2制御への切り換えタイミングをより好適な切り換えタイミングとすることができるからである。
【0056】
例えば、車両100又はブレーキシステム10等の構成として、ブレーキ操作部が操作された際に押されるスイッチを設ける。そして、第1制御中に当該スイッチが押された際、判定部62は、ブレーキ操作部が操作されたと判定してもよい。また、例えば、車両100又はブレーキシステム10等の構成として、ブレーキ操作部の操作量(ストローク量)を検出する検出装置を設ける。そして、当該検出装置の検出結果に基づいて、判定部62は、第1制御中、ブレーキ操作部が操作されたか否かを判定してもよい。また、第1制御中にブレーキ操作部が操作された際、マスタシリンダ21の液圧が変化する。このため、例えば、判定部62は、第1制御中、マスタシリンダ21の液圧情報に基づいて、ブレーキ操作部が操作されたか否かを判定してもよい。
【0057】
また、制御装置60がマスタシリンダ21の液圧情報を取得できる場合、制御部61は、マスタシリンダ21の液圧情報に応じて、モータ40の回転数を異ならせることが好ましい。詳しくは、上述のように、第1制御においてブレーキ操作部が操作された際、ポンプ31から吐出されるブレーキ液の流量が、ブレーキレバー11が操作された際にマスタシリンダ21から流出するブレーキ液の流量よりも少なすぎる場合、マスタシリンダ21側の流路の液圧が大きくなる。このような場合、ブレーキレバー11の操作感がハードブレーキフィーリングとなってしまうことがある。このため、制御装置60がマスタシリンダ21の液圧情報を取得できる場合、制御部61は、マスタシリンダ21の液圧情報に応じて、ポンプ31の駆動源であるモータ40の回転数を異ならせることが好ましい。なお、マスタシリンダ21の液圧情報に応じてモータ40の回転数を異ならせる制御は、第2制御中において行われてもよく、第1制御中及び第2制御中の双方において行われてもよい。
【0058】
例えば、ポンプ31の駆動源であるモータ40の回転数が一定となっている場合、ブレーキ操作部の操作量が大きくなるほど、マスタシリンダ21の液圧の単位時間当たりの増加量が大きくなる。このため、例えば、制御部61は、マスタシリンダ21の液圧の単位時間当たりの増加量が大きくなるほど、モータ40の回転数を高くしてもよい。なお、この際、制御部61は、マスタシリンダ21の液圧の単位時間当たりの増加量が大きくなるにしたがって、直線状にモータ40の回転数を高くしてもよく、曲線状にモータ40の回転数を高くしてもよく、ステップ状にモータ40の回転数を高くしてもよい。すなわち、マスタシリンダ21の液圧の単位時間当たりの増加量が異なる2つの状態を比較した場合、制御部61は、マスタシリンダ21の液圧の単位時間当たりの増加量が大きい状態の方が、マスタシリンダ21の液圧の単位時間当たりの増加量が小さい状態と比較して、モータ40の回転数を高くする。
【0059】
また、例えば、ポンプ31の駆動源であるモータ40の回転数が一定となっている場合、ブレーキ操作部の操作量が大きくなるほど、マスタシリンダ21の液圧が大きくなる。このため、例えば、制御部61は、マスタシリンダ21の液圧が大きくなるほど、モータ40の回転数を高くしてもよい。なお、この際、制御部61は、マスタシリンダ21の液圧が大きくなるにしたがって、直線状にモータ40の回転数を高くしてもよく、曲線状にモータ40の回転数を高くしてもよく、ステップ状にモータ40の回転数を高くしてもよい。すなわち、マスタシリンダ21の液圧が異なる2つの状態を比較した場合、制御部61は、マスタシリンダ21の液圧の大きい状態の方が、マスタシリンダ21の液圧の小さい状態と比較して、モータ40の回転数を高くする。
【0060】
また、制御装置60がマスタシリンダ21の液圧情報を取得できる場合、制御部61は、モータ40の回転数に応じて、第2制御における弛め弁29の開時間を異ならせることが好ましい。例えば、制御部61は、モータ40の回転数が高くなるほど、第2制御における弛め弁29の開時間を長くする。この際、制御部61は、モータ40の回転数が高くなるにしたがって、直線状に第2制御における弛め弁29の開時間を長くしてもよく、曲線状に第2制御における弛め弁29の開時間を長くしてもよく、ステップ状に第2制御における弛め弁29の開時間を長くしてもよい。すなわち、モータ40の回転数が異なる2つの状態を比較した場合、制御部61は、モータ40の回転数の高い状態の方が、モータ40の回転数の低い状態と比較して、第2制御における弛め弁29の開時間を長くする。
【0061】
モータ40の回転数が高くなるほど、ポンプ31から吐出されて主流路25に流入するブレーキ液の流量が大きくなる。このため、モータ40の回転数に応じて、第2制御における弛め弁29の開時間を異ならせることにより、ポンプ31から吐出されて主流路25に流入するブレーキ液の流量に応じて、アキュムレータ30に貯留されるブレーキ液の量を調整できる。これにより、第2制御を実行した際のホイールシリンダ24の液圧の変動をより抑制できる。
【0062】
なお、マスタシリンダ21の液圧情報は、種々の方法で取得することができる。例えば、車両100又はブレーキシステム10等の構成として、ブレーキ操作部の操作量(ストローク量)を検出する検出装置を設ける。そして、ブレーキ操作部の操作量から推定されたマスタシリンダ21の液圧を、マスタシリンダ21の液圧情報としてもよい。また、例えば、マスタシリンダ21の液圧情報として、マスタシリンダ側プレッシャセンサ34で検出されたマスタシリンダ21の液圧を用いてもよい。ここで、本実施の形態では、マスタシリンダ21の液圧情報として、マスタシリンダ側プレッシャセンサ34で検出されたマスタシリンダ21の液圧を用いている。マスタシリンダ21の液圧を直接検出できるので、モータ40の回転数を異ならせる場合のモータ40の回転数をより好適な回転数とすることができ、第2制御における弛め弁29の開時間を異ならせる場合の弛め弁29の開時間をより好適な開時間とすることができる。
【0063】
続いて、本実施の形態に係る制御装置60が自動増圧制御を実行する際の制御動作(制御方法)について説明する。
【0064】
図8は、本発明の実施の形態に係る制御装置が自動増圧制御を実行する際の制御動作を示す制御フロー図である。
自動増圧制御を実行する条件となった場合、ステップS1において制御装置60は、
図8に示す制御を開始する。ステップS2は、第1制御ステップである。ステップS2において制御装置60の制御部61は、第1制御を実行する。すなわち、制御部61は、込め弁28を開状態とし、弛め弁29を閉状態とし、第1切換弁32を閉状態とし、第2切換弁33を開状態とし、モータ40を駆動させて、ホイールシリンダ24の液圧を増加させる。この第1制御は、ブレーキレバー11が操作されていないときにも実行される。
【0065】
ステップS2の後のステップS3は、第2制御を実行するか否かを決定する決定ステップである。ステップS3において制御装置60の判定部62は、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているときに、ブレーキ操作部が操作されたか否かを判定する。また、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているときに、ブレーキ操作部が操作されたと判定部62が判定した場合、ステップS3において制御部61は、第2制御を実行すると決定する。なお、
図4に示す通常状態において、ブレーキ操作部の操作量がある程度大きくなると、ブレーキ操作部を動かすことが困難になる。このため、ブレーキ操作部の操作量がある程度大きくなっている場合、制御部61は、第2制御を実行しないと決定してもよい。また、例えば、
図8に示す各ステップを繰り返し、1回の自動増圧制御において第2制御が規定回数行われている場合、制御部61は、第2制御を実行しないと決定してもよい。
【0066】
ステップS3において第2制御を実行すると決定された場合、制御装置60は、ステップS4へ進む。ステップS4は、第2制御ステップである。ステップS4において制御部61は、第2制御を実行する。すなわち、制御部61は、第1制御中、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているときにブレーキ操作部が操作された際、第1制御の状態から弛め弁29を開状態にし、弛め弁29を介してブレーキ液をアキュムレータ30に流入させる。ステップS4の後のステップS5は、終了判定ステップである。ステップS5において制御装置60は、自動増圧制御を終了する条件となったか否かを判定する。自動増圧制御の終了条件となった場合、制御装置60は、ステップS7に進み、
図8に示す制御を終了する。また、自動増圧制御の終了条件となっていない場合、制御装置60は、ステップS3へ戻る。
【0067】
一方、ステップS3において第2制御を実行しないと判定された場合、制御装置60は、ステップS6へ進む。ステップS6は、終了判定ステップである。ステップS6において制御装置60は、自動増圧制御を終了する条件となったか否かを判定する。自動増圧制御の終了条件となった場合、制御装置60は、ステップS7に進み、
図8に示す制御を終了する。また、自動増圧制御の終了条件となっていない場合、制御装置60は、ステップS2へ戻る。そして、ステップS2において制御部61は、第1制御を実行する。ここで、ステップS3へは、ステップS2から進む場合と、ステップS5から進む場合とがある。このため、ステップS2からステップS3へ進み、その後にステップS6からステップS2へ進んだ場合、制御部61は第1制御を継続することとなる。また、ステップS5からステップS3へ進み、その後にステップS6からステップS2へ進んだ場合、制御部61は、第2制御から第1制御へ切り換えることとなる。
【0068】
<制御装置の効果>
本実施の形態に係る制御装置60は、車両100用のブレーキシステム10の制御装置である。ブレーキシステム10は、液圧回路を含む。液圧回路は、マスタシリンダ21とホイールシリンダ24とを連通させる主流路25と、主流路25の途中部25aにブレーキ液を供給する供給流路27と、主流路25のブレーキ液を逃がす副流路26と、を有している。供給流路27は、一方の端部である端部27aがマスタシリンダ21に連通し、他方の端部である端部27bが途中部25aに接続されている。副流路26の一方の端部である端部26aは、主流路25のうちの途中部25aを基準としてホイールシリンダ24側となる領域に位置する途中部である途中部25bに接続されている。さらに、ブレーキシステム10は、込め弁28と、アキュムレータ30と、弛め弁29と、第1切換弁32と、第2切換弁33と、ポンプ31と、モータ40とを備えている。込め弁28は、主流路25のうちの途中部25aと途中部25bとの間となる領域に設けられている。アキュムレータ30は、副流路26に設けられ、途中部25bから副流路26に流入したブレーキ液を貯留するものである。弛め弁29は、副流路26のうちのアキュムレータ30を基準として端部26a側となる領域に設けられている。第1切換弁32は、主流路25のうちの途中部25aを基準としてマスタシリンダ21側となる領域に設けられている。第2切換弁33は、供給流路27に設けられている。ポンプ31は、供給流路27のうちの第2切換弁33を基準として端部27b側となる領域に設けられ、吸込側が第2切換弁33に連通し、吐出側が端部27bに連通している。モータ40は、ポンプ31の駆動源である。また、第1切換弁32は、制御装置60によって閉状態に制御されている状態において、ホイールシリンダ24側から作用する液圧が規定圧力よりも大きくなっているときに、ホイールシリンダ24側からマスタシリンダ21側へブレーキ液を逃がす構成となっている。制御装置60は、第1制御を実行可能な構成となっている。第1制御は、込め弁28を開状態とし、弛め弁29を閉状態とし、第1切換弁32を閉状態とし、第2切換弁33を開状態とし、モータ40を駆動させて、ホイールシリンダ24の液圧を増加させる制御である。さらに、制御装置60は、第1制御中、ホイールシリンダ24の液圧が規定圧力になっているときに、車両100のドライバによるブレーキ操作を受け付けるブレーキ操作部が操作された際、第2制御を実行する構成となっている。第2制御は、第1制御の状態から弛め弁29を開状態にし、弛め弁29を介してブレーキ液をアキュムレータ30に流入させる制御である。
【0069】
このように構成された制御装置60においては、上述のように、第2制御を実行することにより、ブレーキ操作部の操作感がハードブレーキフィーリングとなることを抑制しつつ、自動増圧制御を実行することができる。このため、このように構成された制御装置60は、ドライバがブレーキ操作部を操作した際、ドライバに違和感を抱かせてしまうことを従来よりも抑制することができる。
【0070】
好ましくは、本実施の形態に係る制御装置60を備えた車両100は、モータサイクルである。本実施の形態に係る制御装置60は、弁等の機械的な構成を新たに追加することなく、ブレーキ操作部を操作した際の違和感を従来よりも抑制できる。ここで、モータサイクルは、自動四輪車等と比べ、ブレーキシステムの搭載スペースが小さい。このため、ブレーキシステムの搭載スペースが小さいモータサイクルに本実施の形態に係る制御装置60を設けることが好適である。
【0071】
また、好ましくは、車両100がモータサイクルの場合、制御装置60が第2制御を実行するブレーキシステムのブレーキ操作部は、該車両100が備えているブレーキレバーである。ブレーキレバーは、ドライバの手で操作される。手は、足と比べ、ブレーキ操作部の操作感の違いを感じやすい。このため、制御装置60が第2制御を実行するブレーキシステムのブレーキ操作部としてブレーキレバーを用いることにより、制御装置60の効果をより認識することができる。
【0072】
以上、本実施の形態に係る制御装置60について説明したが、本発明に係る制御装置は、本実施の形態の説明に限定されるものではなく、本実施の形態の一部のみが実施されてもよい。例えば、本実施の形態に係る制御装置60は、ブレーキシステム10が有する液圧回路(第1液圧回路12及び第2液圧回路14)の全てに、第2制御を実施した。これに限らず、本発明に係る制御装置は、ブレーキシステムが有する液圧回路のうちの一部の液圧回路に、第2制御を実施してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、10 ブレーキシステム、11 ブレーキレバー、12 第1液圧回路、13 ブレーキペダル、14 第2液圧回路、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 主流路、25a 途中部、25b 途中部、26 副流路、26a 端部、26b 端部、27 供給流路、27a 端部、27b 端部、27c 途中部、28 込め弁、29 弛め弁、30 アキュムレータ、31 ポンプ、32 第1切換弁、33 第2切換弁、34 マスタシリンダ側プレッシャセンサ、35 ホイールシリンダ側プレッシャセンサ、36 逆止弁、40 モータ、50 液圧制御ユニット、51 基体、60 制御装置、61 制御部、62 判定部、100 車両、MP マスタシリンダポート、WP ホイールシリンダポート。