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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096229
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20230630BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H02G3/04 062
B60R16/02 623T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211824
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 博司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 忍
(72)【発明者】
【氏名】橋口 寛
(72)【発明者】
【氏名】小槻 哲也
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DE08
(57)【要約】
【課題】プロテクタに仮係止されるアース端子と電線との接触を抑制することができるワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、配索路31を有するプロテクタ2と、配索路に配索され、かつプロテクタの外部空間に突出した端部を有する電線7と、電線の端部に接続されたアース端子8と、を備え、アース端子は、電線に接続された板状の基部81と、段差状の屈曲部を介して基部とつながった平板状の先端部82と、を有し、プロテクタの係止構造10は、プロテクタの外壁部に設けられており、かつ先端部が挿入可能な細長い貫通孔11と、貫通孔の周囲から配索路の側に向けて突出した筒状の収容壁12と、を有し、貫通孔は、アース端子が貫通孔に挿入されるときに、先端部82が収容空間12sから配索路31に向けて突出しないようにアース端子を係止する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配索路を有するプロテクタと、
前記配索路に配索され、かつ前記プロテクタの外部空間に突出した端部を有する電線と、
前記電線の前記端部に接続されたアース端子と、
を備え、
前記アース端子は、前記電線に接続された板状の基部と、段差状の屈曲部を介して前記基部とつながっており、かつ前記基部に対して前記基部の板厚方向にずれた位置にある平板状の先端部と、を有し、
前記プロテクタは、前記アース端子を仮係止する係止構造を有し、前記係止構造は、前記配索路と対向する位置に配置され、
前記係止構造は、前記プロテクタの外壁部に設けられており、かつ前記先端部が挿入可能な細長い貫通孔と、前記貫通孔の周囲から前記配索路の側に向けて突出した筒状の収容壁と、を有し、
前記収容壁は、前記先端部を収容する収容空間を形成し、
前記貫通孔は、前記アース端子が前記貫通孔に挿入されるときに、前記先端部が前記収容空間から前記配索路に向けて突出しないように前記アース端子を係止する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記先端部および前記屈曲部が前記貫通孔に挿入されることを許容する長さおよび幅を有しており、
前記基部は、前記貫通孔に対して挿入不能な被係止部を有し、前記被係止部の幅は、前記貫通孔の長さよりも大きく、
前記貫通孔は、前記アース端子が前記貫通孔に挿入されるときに、前記先端部が前記収容空間から前記配索路に向けて突出するよりも手前の位置で前記被係止部を係止する
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記係止構造は、前記外壁部の外側の面に前記基部を沿わせ、かつ前記外壁部の内側の面に前記先端部を沿わせて前記アース端子を仮係止する
請求項1または2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記係止構造は、仮係止された前記アース端子と前記配索路との間で前記電線を湾曲させるように配置されている
請求項1から3の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掛止部を有するアース端子がある。特許文献1には、アース端子を車体側パネル部材に固定するボルト部材と、ボルト部材による固定が行われる際の位置決めに用いる掛止部とを有するワイヤハーネスのアース端子構造が開示されている。特許文献1の掛止部は、車体側パネル部材に開口形成された位置決め用被係止孔に、係止されて仮保持される係止フック部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-132093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アース端子を含むワイヤハーネスがプロテクタを有する場合、アース端子をプロテクタに仮係止させることができれば、周辺部品とアース端子との干渉が抑制されるため好ましい。一方で、電線が配索されているプロテクタにアース端子を仮係止させる場合、配索されている電線に対するアース端子の接触を抑制できることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、プロテクタに仮係止されるアース端子と電線との接触を抑制することができるワイヤハーネスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤハーネスは、配索路を有するプロテクタと、前記配索路に配索され、かつ前記プロテクタの外部空間に突出した端部を有する電線と、前記電線の前記端部に接続されたアース端子と、を備え、前記アース端子は、前記電線に接続された板状の基部と、段差状の屈曲部を介して前記基部とつながっており、かつ前記基部に対して前記基部の板厚方向にずれた位置にある平板状の先端部と、を有し、前記プロテクタは、前記アース端子を仮係止する係止構造を有し、前記係止構造は、前記配索路と対向する位置に配置され、前記係止構造は、前記プロテクタの外壁部に設けられており、かつ前記先端部が挿入可能な細長い貫通孔と、前記貫通孔の周囲から前記配索路の側に向けて突出した筒状の収容壁と、を有し、前記収容壁は、前記先端部を収容する収容空間を形成し、前記貫通孔は、前記アース端子が前記貫通孔に挿入されるときに、前記先端部が前記収容空間から前記配索路に向けて突出しないように前記アース端子を係止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネスにおいて、係止構造は、プロテクタの外壁部に設けられており、かつアース端子の先端部が挿入可能な細長い貫通孔と、貫通孔の周囲から配索路の側に向けて突出した筒状の収容壁と、を有する。収容壁は、先端部を収容する収容空間を形成し、貫通孔は、アース端子が貫通孔に挿入されるときに、先端部が収容空間から配索路に向けて突出しないようにアース端子を係止する。本発明に係るワイヤハーネスによれば、プロテクタに仮係止されるアース端子と電線との接触を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るワイヤハーネスの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るワイヤハーネスの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るアース端子および係止構造の平面図である。
図4図4は、実施形態に係るアース端子の斜視図である。
図5図5は、実施形態に係るカバーの斜視図である。
図6図6は、貫通孔に挿入されたアース端子を示す図である。
図7図7は、貫通孔に挿入されたアース端子を示す断面図である。
図8図8は、実施形態の係止構造によって仮係止されたアース端子の断面図である。
図9図9は、湾曲した電線を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係るワイヤハーネスにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から図9を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、ワイヤハーネスに関する。図1は、実施形態に係るワイヤハーネスの斜視図、図2は、実施形態に係るワイヤハーネスの分解斜視図、図3は、実施形態に係るアース端子および係止構造の平面図、図4は、実施形態に係るアース端子の斜視図、図5は、実施形態に係るカバーの斜視図、図6は、貫通孔に挿入されたアース端子を示す図、図7は、貫通孔に挿入されたアース端子を示す断面図、図8は、実施形態の係止構造によって仮係止されたアース端子の断面図、図9は、湾曲した電線を示す斜視図である。図7には、図6のVII-VII断面が示されている。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るワイヤハーネス1は、自動車等の車両100に配置される。車両100は、車体110およびスライドドア120を有する。スライドドア120は、例えば、モータ等の動力によって開閉されるパワースライドドアである。図1には、全閉位置のスライドドア120が示されている。例示されたスライドドア120のスライド方向は、車両前後方向Xである。すなわち、スライドドア120は、車体110に対して車両前後方向Xに沿って相対移動する。
【0012】
ワイヤハーネス1は、車体110とスライドドア120とを接続する。より詳しくは、ワイヤハーネス1は、プロテクタ2と、外装部材6と、電線7と、アース端子8と、を有する。スライドドア120は、車体110に設けられた開口部130を閉塞または開放する。全閉位置のスライドドア120は、車幅方向Yの外側から開口部130を閉塞する。プロテクタ2は、例えば、車両上下方向Zにおける開口部130の下端部に配置され、車体110に対して固定される。
【0013】
外装部材6は、可撓性を有する筒状の部材であり、例えば、コルゲートチューブである。例示された外装部材6の形状は、円筒形状である。外装部材6は、第一端部6aおよび第二端部6bを有する。第一端部6aは、プロテクタ2によって保持される。第二端部6bは、スライドドア120の保持部121によって保持される。従って、第二端部6bは、スライドドア120と共に車両前後方向Xに沿って移動する。
【0014】
電線7は、外装部材6に挿通されており、車体110からスライドドア120まで配索されている。本実施形態のワイヤハーネス1は、複数の電線7を有する。複数の電線7のうち一部の電線7には、アース端子8が接続されている。アース端子8は、電線7における車体110の側の端部に配置されている。複数の電線7のうち、他の一部の電線7には、コネクタ71が接続されている。コネクタ71は、車体110の電源や制御装置と接続される。電線7におけるスライドドア120の側の端部には、コネクタ72が接続されている。コネクタ72は、スライドドア120の機器と接続される。
【0015】
図2に示すように、プロテクタ2は、プロテクタ本体3と、プロテクタ本体3に対して係合するカバー4と、を有する。プロテクタ本体3およびカバー4は、例えば、絶縁性の合成樹脂で成型される。
【0016】
プロテクタ本体3は、配索路31を有している。配索路31は、外装部材6および電線7を収容する通路である。例示された配索路31の形状は、半筒形状である。外装部材6は、配索路31の一端からスライドドア120の側に向けて引き出される。電線7における車体110の側の端部7aは、配索路31の他端から引き出される。
【0017】
カバー4は、プロテクタ本体3に係合して配索路31を覆う部材である。より詳しくは、カバー4は、配索路31を覆う覆い部41を有する。覆い部41は、配索路31の全体を覆って閉空間を形成する。覆い部41は、車体110の側に向けて電線7が引き出される端部41eを有する。本実施形態のカバー4は、アース端子8を仮係止する係止構造10を有する。係止構造10は、覆い部41の端部41eに配置されている。
【0018】
図3に示すように、本実施形態のワイヤハーネス1は、二つのアース端子8を有する。アース端子8に接続される電線7の端部7aは、それぞれプロテクタ2の外部空間に突出している。アース端子8は、この端部7aに接続されている。一つのアース端子8には、二本の電線7が接続されている。
【0019】
カバー4は、一つのアース端子8に対して一つの係止構造10を有する。すなわち、本実施形態のカバー4は、二つの係止構造10を有する。係止構造10は、アース端子8が挿入される貫通孔11を有する。貫通孔11は、覆い部41の厚さ方向に沿って覆い部41を貫通しており、プロテクタ2の内部空間と外部空間とを連通している。覆い部41は、プロテクタ2の外壁部であって、プロテクタ2の外部空間に面している。覆い部41は、外側の面41aを有する。外側の面41aは、プロテクタ2の外部空間を向く面であり、配索路31の側とは反対側を向いている。貫通孔11は、外側の面41aから配索路31に向けて覆い部41を貫通している。
【0020】
平面視における貫通孔11の形状は、細長い形状であり、例えば、長方形である。貫通孔11は、長さL1を有する。長さL1は、貫通孔11を平面視した場合の貫通孔11の長手方向の寸法である。以下の説明では、貫通孔11において、長さL1と直交する方向の寸法を貫通孔11の幅と称する。
【0021】
図4に示すように、アース端子8は、板状の基部81,85と、先端部82と、屈曲部83と、圧着部84,86と、を有する。アース端子8は、導電性を有する金属板から形成される。例示されたアース端子8は、二枚の基部81,85を重ねて形成されている。基部81,85には、それぞれ貫通孔が形成されている。アース端子8は、基部81,85の貫通孔に挿通される締結部材によって車体110に固定される。
【0022】
先端部82は、屈曲部83を介して基部81,85とつながっている。先端部82の形状は、平板形状である。先端部82は、基部81に対して基部81の板厚方向にずれた位置にある。先端部82は、例えば、基部81と平行に延在している。
【0023】
屈曲部83は、基部81と先端部82とをつないでおり、かつ段差状に形成されている。より詳しくは、屈曲部83は、第一屈曲部83aおよび第二屈曲部83bを有する。第一屈曲部83aは、屈曲部83における基部81の側の端部に位置している。第二屈曲部83bは、屈曲部83における先端部82の側の端部に位置している。第一屈曲部83aおよび第二屈曲部83bは、それぞれ略直角に折れ曲がっている。第一屈曲部83aは、基部81に対して直交する方向に向けて折れ曲がっている。第二屈曲部83bは、先端部82を電線7の側とは反対側に向けて突出させるように折れ曲がっている。このように、屈曲部83は、板厚方向における基部81と先端部82との位置をずらして階段状の段差を形成している。
【0024】
圧着部84は、基部81につながっている。すなわち、例示されたアース端子8では、圧着部84、基部81、屈曲部83、および先端部82が一体である。圧着部86は、基部85につながっている。圧着部84,86は、それぞれ電線7の芯線71に対して圧着される。一つの圧着部84は、一つの電線7に対して接続され、他の一つの圧着部86は、他の一つの電線7に対して接続される。
【0025】
基部81は、テーパ部81tを有する。テーパ部81tは、屈曲部83とつながっている。テーパ部81tの幅Wd1は、アース端子8の長手方向に沿って屈曲部83へ近づくに従って狭くなる。つまり、平面視におけるテーパ部81tの形状は、屈曲部83へ向かうに従って幅Wd1が狭くなるテーパ形状である。テーパ部81tが有する二つの側面81sは、それぞれアース端子8の長手方向に対して傾斜した傾斜面である。二つの側面81sは、屈曲部83の側へ向かうに従って互いに近づく。
【0026】
平面視における先端部82の形状は、略矩形である。例示されたアース端子8では、先端部82および屈曲部83の幅が略一様である。つまり、屈曲部83および先端部82は、幅が一様な矩形の板部を折り曲げて形成されている。
【0027】
上記のようなアース端子8を仮係止するための係止構造10について更に説明する。図5に示すように、係止構造10は、貫通孔11に加えて筒状の収容壁12を有する。収容壁12は、覆い部41の内側の面41bから突出している。内側の面41bは、図3に示す外側の面41aとは反対側の面であり、配索路31を向く面である。つまり、収容壁12は、配索路31の側に向けて突出している。収容壁12は、貫通孔11を囲むように配置されている。つまり、収容壁12は、貫通孔11の周囲から突出している。
【0028】
例示された収容壁12の形状は、角筒形状である。収容壁12は、収容空間12sを形成している。アース端子8が貫通孔11に挿入されると、アース端子8の先端部82が収容空間12sに突出する。収容壁12は、先端部82を配索路31に向けて突出させないように、先端部82を収容空間12sの内部に収容できるように構成されている。
【0029】
係止構造10は、ワイヤハーネス1が車両100に対して組み付けられるときに、一時的にアース端子8を係止する。作業者は、ワイヤハーネス1の組み付け作業を開始するときに、まず、アース端子8を係止構造10によって仮係止させる。図6には、仮係止の工程において貫通孔11に挿入されたアース端子8が示されている。図6に示すように、プロテクタ本体3は、電線固定部32を有する。電線固定部32は、配索路31の延長線上に設けられた片部である。電線7は、電線固定部32に対してテープ巻き等によって固定される。
【0030】
仮係止の工程において、作業者は、アース端子8の先端部82を貫通孔11に挿入する。貫通孔11の長さL1は、先端部82および屈曲部83の幅よりも大きい。また、貫通孔11の幅は、先端部82および屈曲部83の板厚よりも大きい。つまり、貫通孔11は、先端部82および屈曲部83が貫通孔11に挿入されることを許容する長さL1および幅を有している。
【0031】
貫通孔11は、基部81のテーパ部81tを係止できるように形成されている。図6に示すように、テーパ部81tが貫通孔11に挿入されると、貫通孔11の縁11eがテーパ部81tの側面81sを係止する。つまり、テーパ部81tは、貫通孔11に対して挿入不能な被係止部を有している。被係止部の幅は、貫通孔11の長さL1よりも大きい。
【0032】
図7には、貫通孔11によって係止されたアース端子8が示されている。図7に示すアース端子8の位置は、挿入可能な範囲で最も奥まで差し込まれたアース端子8の位置である。図7に示すように、アース端子8の先端部82は、収容空間12sに収容される。収容壁12は、先端部82の全体を収容空間12sに収容できるように形成されている。図5および図7に示すように、収容壁12は、互いに対向する壁部12a,12bを有する。また、収容壁12は、壁部12a,12bをつなぐ一対の壁部12c,12cを有する。先端部82の先端面は、壁部12a,12bの間に位置しており、収容空間12sの内部に収容されている。
【0033】
壁部12cは、先端部82の側面と対向し、先端部82の角度を規制する。例えば、先端部82が幅方向に向けて移動した場合、壁部12cが先端部82に当接してアース端子8の揺動を規制する。これにより、隣接するアース端子8同士の干渉による引っ掛かり、傷つきが防止される。また、貫通孔11の長さL1は、仮係止されたアース端子8がぐらつかないように定められている。例えば、貫通孔11の長さL1は、先端部82および屈曲部83の幅よりもわずかに大きい程度であり、アース端子8のガタツキを抑制することができる。
【0034】
上記のように、貫通孔11は、収容空間12sから配索路31の側へ向けてアース端子8が突出しないようにアース端子8を係止する。これにより、アース端子8と配索路31の電線7との接触が未然に抑制される。
【0035】
作業者は、アース端子8の先端部82を貫通孔11に挿入した後に、仮係止の位置に向けてアース端子8を寝かせる。図8には、仮係止位置のアース端子8が示されている。係止構造10は、覆い部41の外側の面41aに基部81を沿わせ、かつ覆い部41の内側の面41bに先端部82を沿わせてアース端子8を仮係止する。屈曲部83によって形成される段差の大きさは、貫通孔11の深さに対応している。
【0036】
作業者は、アース端子8を車体110に対して固定する際には、アース端子8を係止構造10から取り外す。この場合、作業者は、アース端子8を図7に示す起立位置まで起こしてからアース端子8を貫通孔11より抜き取る。本実施形態の係止構造10によれば、アース端子8を仮係止する作業、および仮係止されているアース端子8を取り外す作業が容易である。
【0037】
また、仮係止の工程において、アース端子8が配索路31に向けて突出しないように、アース端子8が貫通孔11によって係止される。よって、作業者は、安心して貫通孔11の奥までアース端子8を差し込むことができる。よって、仮係止の工程における作業効率や安全性が向上する。
【0038】
また、本実施形態の係止構造10は、以下に説明するように、仮係止されたアース端子8に対する保持力が向上するように配置されている。図9に示すように、係止構造10は、仮係止されたアース端子8につながっている電線7の形状を湾曲形状とするように配置されている。例示された係止構造10は、アース端子8が貫通孔11に対して挿入されるときに、電線7の形状がC字形状またはU字形状となるように配置されている。従って、係止構造10は、仮係止されたアース端子8と配索路31との間で電線7を湾曲させることができる。その結果、アース端子8が仮係止された状態で、湾曲した電線7に常にテンションがかかる。
【0039】
電線7に作用するテンションは、テンションが無い場合と比較してアース端子8が貫通孔11から抜け出しにくくなるような力である。電線7に作用するテンションは、例えば、アース端子8の先端部82を内側の面41bに向けて押し付けるような力であってもよく、屈曲部83を収容壁12の壁面に向けて押し付けるような力であってもよい。
【0040】
湾曲した電線7は、作業者がアース端子8を係止構造10から取り外すまでの間、アース端子8を仮係止の状態に維持することができる。よって、本実施形態のワイヤハーネス1は、ワイヤハーネス1が車両100に組み付けられるときのアース端子8と周辺の部品との干渉を適切に抑制することができる。
【0041】
また、係止構造10は、隣接するアース端子8同士の干渉を抑制できるように配置されている。図6等に示すように、二つの貫通孔11は、延在する方向が互いに異なるように配置されている。これにより、図9に示すように、隣接する二つのアース端子8は、貫通孔11から互いに異なる方向に向けて突出する。二つのアース端子8は、V字形状をなすように対応する貫通孔11から突出する。よって、本実施形態の係止構造10は、アース端子8同士の干渉を抑制することができる。また、各アース端子8の先端部82は、収容壁12によって個別に収容される。よって、プロテクタ2の内部におけるアース端子8同士の干渉が抑制される。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係るワイヤハーネス1は、配索路31を有するプロテクタ2と、電線7と、アース端子8と、を有する。電線7は、プロテクタ2の配索路31に配索され、かつプロテクタ2の外部空間に突出した端部7aを有する。アース端子8は、電線7の端部7aに接続される。アース端子8は、基部81と、先端部82と、段差状の屈曲部83と、を有する。基部81は、板状であり、かつ電線7に接続されている。先端部82は、屈曲部83を介して基部81とつながっており、かつ基部81に対して基部81の板厚方向にずれた位置にある。
【0043】
プロテクタ2は、アース端子8を仮係止する係止構造10を有する。係止構造10は、配索路31と対向する位置に配置されている。係止構造10は、細長い貫通孔11と、筒状の収容壁12と、を有する。貫通孔11は、プロテクタ2の外壁部に設けられており、かつアース端子8のうち少なくとも先端部82が挿入可能である。収容壁12は、貫通孔11の周囲から配索路31の側に向けて突出している。収容壁12は、先端部82を収容する収容空間12sを形成する。貫通孔11は、アース端子8が貫通孔11に挿入されるときに、先端部82が収容空間12sから配索路31に向けて突出しないようにアース端子8を係止する。本実施形態のワイヤハーネス1は、仮係止されるアース端子8と配索路31の電線7との接触を抑制することができる。
【0044】
本実施形態の貫通孔11は、先端部82および屈曲部83が貫通孔11に挿入されることを許容する長さL1および幅を有している。アース端子8の基部81は、貫通孔11に対して挿入不能な被係止部を有している。本実施形態の被係止部は、基部81のテーパ部81tである。被係止部の幅は、貫通孔11の長さL1よりも大きい。貫通孔11は、アース端子8が貫通孔11に挿入されるときに、先端部82が収容空間12sから配索路31に向けて突出するよりも手前の位置で被係止部を係止する。アース端子8に被係止部が設けられることで、アース端子8と電線7との接触がより確実に規制される。
【0045】
本実施形態の係止構造10は、プロテクタ2の外壁部の外側の面41aに基部81を沿わせ、かつ外壁部の内側の面41bに先端部82を沿わせてアース端子8を仮係止する。このような構成により、仮係止されたアース端子8の姿勢が安定する。
【0046】
本実施形態の係止構造10は、仮係止されたアース端子8と配索路31との間で電線7を湾曲させるように配置されている。湾曲した電線7のテンションは、仮係止されたアース端子8に対する抜け止めの力として機能する。
【0047】
なお、係止構造10の配置および形状は、本実施形態で例示された配置および形状には限定されない。例えば、収容壁12の形状は、角筒形状には限定されない。一例として、収容壁12の形状は、円筒形状であってもよい。プロテクタ2における係止構造10の位置は、電線7が引き出される側の端部41eには限定されない。係止構造10は、仮係止されたアース端子8および電線7が組み付け作業の妨げとならないように、適宜配置される。
【0048】
アース端子8の構成および形状は、本実施形態で例示された構成および形状には限定されない。例えば、アース端子8は、基部85および圧着部86を有していなくてもよい。基部81の被係止部は、テーパ部81tには限定されない。例えば、基部81は、被係止部として、幅方向に向けて突出した突出部や段差部を有していてもよい。貫通孔11は、アース端子8の屈曲部83を係止するように構成されてもよい。この場合、屈曲部83がアース端子8の被係止部となる。
【0049】
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ワイヤハーネス
2 プロテクタ
3:プロテクタ本体、 4:カバー
6:外装部材、 6a:第一端部、 6b:第二端部
7:電線、 7a:端部
8:アース端子
10:係止構造、 11:貫通孔、 11e:縁、 12:収容壁
12a,12b,12c:壁部、 12s:収容空間
31:配索路、 32:電線固定部
41:覆い部、 41a:外側の面、 41b:内側の面、 41e:端部
71,72:コネクタ
81:基部、 81s:側面、 81t:テーパ部、 82:先端部
83:屈曲部、 83a:第一屈曲部、 83b:第二屈曲部
84:圧着部、 85:基部、 86:圧着部
100:車両、 110:車体、 120:スライドドア、 121:保持部
130:開口部
X:車両前後方向、 Y:車幅方向、 Z:車両上下方向
図1
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図9