(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096242
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】粒子計数装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/02 20060101AFI20230630BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G01N15/02 A
G01N21/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211860
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 大将
(72)【発明者】
【氏名】阪上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】須▲崎▼ 萌
(72)【発明者】
【氏名】松田 朋信
【テーマコード(参考)】
2G057
【Fターム(参考)】
2G057AA03
2G057AB04
2G057BB04
2G057BB06
2G057DB01
2G057DB02
2G057HB03
(57)【要約】
【課題】より利便性を高めた粒子計数装置を提供する。
【解決手段】流路内を流れる試料流体に含まれる粒子を照射光Laを用いて計数する粒子計数器1は、複数のフローセル10a~10jを有したマルチフローセル80と、マルチフローセル80に対し、選択されたフローセル10a~10jに合わせて照射光Laの光路の位置を調整するX軸アクチュエータ62と、選択されたフローセル10a~10jの流路内に照射される照射光Laの条件を調整する調整ユニット100,200,300とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を流れる試料流体に含まれる粒子を前記流路内に照射した照射光を用いて計数する粒子計数装置であって、
前記流路を有したフローセルと、
前記流路内に照射される前記照射光の条件を調整する条件調整手段と
を備えた粒子計数装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子計数装置において、
前記条件調整手段は、
前記照射光の光路上に配置され、所定の光源から出射された前記照射光の強度を調整する光学フィルタ及びビームスプリッタの少なくとも一方で構成された光学器具を含むことを特徴とする粒子計数装置。
【請求項3】
請求項2に記載の粒子計数装置において、
前記条件調整手段は、
前記光学器具の配置を、前記照射光が通過する前記光路上の通過位置と前記光路から外れた不通過位置との間で変位可能であることを特徴とする粒子計数装置。
【請求項4】
流路内を流れる試料流体に含まれる粒子を前記流路内に照射した照射光を用いて計数する粒子計数装置であって、
複数の前記流路を有したマルチフローセルと、
前記マルチフローセルに対し、複数の中から選択された前記流路に合わせて前記照射光の光路の位置を調整する位置調整手段と、
前記選択された前記流路内に照射される前記照射光の条件を調整する条件調整手段と
を備えた粒子計数装置。
【請求項5】
請求項4に記載の粒子計数装置において、
前記条件調整手段は、
前記光路上に配置され、所定の光源から出射された前記照射光の強度を調整する光学フィルタ及びビームスプリッタの少なくとも一方で構成された光学器具を含むことを特徴とする粒子計数装置。
【請求項6】
請求項5に記載の粒子計数装置において、
前記条件調整手段は、
前記流路別に位置が調整される前記光路上に配置されており、個々の前記流路に応じて前記照射光の強度を調整可能な特性を有した前記光学器具を含むことを特徴とする粒子計数装置。
【請求項7】
請求項6に記載の粒子計数装置において、
前記条件調整手段は、
複数の前記流路のうち、一部に対応する前記光路上のみに前記光学器具が配置されていることを特徴とする粒子計数装置。
【請求項8】
請求項7に記載の粒子計数装置において、
前記光学器具が配置されない他の前記流路に対応する前記光路上には、前記光学器具の通過に伴う光軸の変化に前記照射光を同調させる光透過部材が配置されていることを特徴とする粒子計数装置。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載の粒子計数装置において、
前記条件調整手段は、
前記光学器具の配置を、前記照射光が通過する前記光路上の通過位置と前記光路から外れた不通過位置との間で変位可能であることを特徴とする粒子計数装置。
【請求項10】
請求項9に記載の粒子計数装置において、
前記条件調整手段は、
前記通過位置と前記不通過位置との間で前記光学器具の配置を変位させる変位機構をさらに含むことを特徴とする粒子計数装置。
【請求項11】
請求項5から9のいずれかに記載の粒子計数装置において、
前記条件調整手段は、
前記照射光の強度を調整可能な特性が異なる複数の前記光学器具のうち、前記位置調整手段により前記光路の位置が調整される前記流路に応じた特性の前記光学器具を選択的に前記光路上に配置可能であることを特徴とする粒子計数装置。
【請求項12】
請求項4から11のいずれかに記載の粒子計数装置において、
前記位置調整手段により光路の位置が調整される選択対象の前記流路内を流れる試料流体に基づいて、前記条件調整手段による条件の調整動作を制御する制御手段をさらに備えたことを特徴とする粒子計数装置。
【請求項13】
請求項2又は3、もしくは請求項5から11のいずれか1項に記載の粒子計数装置において、
前記光学器具は、
前記照射光を前記流路内に入射する入射光と、入射光と異なる方向の余剰光とに分離することで入射光を減光するビームスプリッタで構成されており、
前記ビームスプリッタによる前記余剰光の分離方向に配置され、前記余剰光を吸収するトラップ機器をさらに備えることを特徴とする粒子計数装置。
【請求項14】
請求項2又は3、もしくは請求項5から11のいずれか1項に記載の粒子計数装置において、
前記光学器具は、
光学的な特性が可変な物質で構成されていることを特徴とする粒子計数装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料流体に含まれる粒子の個数を計数する粒子計数装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の計数技術に関して例えば、マルチフローセル型の粒子計数装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この装置の特徴は、固定したマルチフローセルに対し、共通の光源から出射した光が各フローセル(流路内)に照射されるまでの光路を形成する光学系を移動させるところにある。これにより、各フローセルに接続した配管には無理な負荷がかからなくなり、緩みや亀裂が生じて試料流体が漏出することを確実に防止できるという格別な優位性が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その上で、この種の粒子計数装置に対しては、さらなる利便性の要望があることも無視できない。例えば、光学系には共通の光源を用いているが、フローセルに流す試料流体(薬液)や粒子の種類によっては、個別に適正な照射光の条件が異なる場合があるため、試料流体ごと(マルチフローセルの場合は光路の位置を調整する対象のフローセルごと)に適正な照射光の条件で使用できることが望ましいといった要望がある。これは、全ての試料流体や粒子に対して共通の条件の照射光を用いると、ある計数対象の粒子(マルチフローセルの場合は選択したフローセル)では試料流体やその粒子自身に対して照射光のパワーが強すぎたり、逆に、ある計数対象では照射光のパワーが弱すぎたりするということが起き、それによって粒子の計数結果に不具合が生じる可能性があるとの懸念に基づく。
【0005】
そこで本発明は、より利便性を高めた粒子計数装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
〔第1発明〕
本発明は、粒子計数装置を提供する。粒子計数装置は、流路内を流れる試料流体に含まれる粒子を流路内に照射した照射光を用いて計数するものであり、フローセルを備える。フローセルは流路を有し、流路には、接続配管等を通じて試料流体(薬液)が流される。粒子の計測は、流路内に照射光の光路(光軸)の位置を合わせ、流路内の検出領域を通過する粒子から生じる放出光の強度に基づいて、粒径毎に行われる。また、粒子計数装置は条件調整手段を備える。条件調整手段は一例として、流路内に照射される照射光の条件(例えば、パワー、波長、密度分布、偏光状態等)を調整することができる。
【0008】
これにより、流路内に流れる試料流体や粒子の特性に合わせた照射光の条件に調整した上で粒子計数装置を使用することができ、計数結果に不具合が生じるのを確実に抑えることができ、計数結果の信頼性を高水準に維持することができる。
【0009】
〔第2発明〕
また本発明は、粒子計数装置を提供する。粒子計数装置は、流路内を流れる試料流体に含まれる粒子を流路内に照射した照射光を用いて計数するものであり、マルチフローセルを備える。マルチフローセルは、一例として複数の流路を有し、各流路には、接続配管等を通じて試料流体(薬液)が流される。粒子の計測は、計数対象に選択した流路内に照射光の光路(光軸)の位置を調整し、流路内の検出領域を通過する粒子から生じる放出光の強度に基づいて、粒径毎に行われる。
【0010】
粒子計数装置は、位置調整手段を備える。位置調整手段は、マルチフローセルに対し、上記のように複数の中から選択された流路に合わせて照射光の光路の位置を調整する。そして粒子計数装置は、条件調整手段を備える。条件調整手段は一例として、選択された流路に合わせて光路の位置が調整される際、流路内に照射される照射光の条件(例えば、パワー、波長、密度分布、偏光状態等)を調整することができる。
【0011】
これにより、計数対象に選択された流路内に流れる試料流体や粒子の特性に合わせた照射光の条件に調整した上で粒子計数装置を使用することができ、計数結果に不具合が生じるのを確実に抑えることができ、計数結果の信頼性を高水準に維持することができる。
【0012】
条件調整手段は、光学器具を含む。光学器具は、例えば光学フィルタ、ビームスプリッタ等で構成することができ、光路上に配置されることで、光源から出射された照射光の強度を所望に調整することができる。これにより、光源を共通としていても、個々の流路内を流れる試料流体や粒子の特性に合わせた強度に照射光の条件を調整することができる。なお、光学フィルタはNDフィルタや偏光フィルタ、その他の種類の光学的フィルタであってもよい。
【0013】
照射光の条件として強度の調整を光学器具で行う場合、例えば、個々の流路内に流す試料流体や粒子の特性が既知であれば、照射光の強度を個々の流路に合わせて最適に調整可能な光学器具を流路別に用意することができる。光学器具は、位置調整手段により位置が調整される光路上に配置されることが好ましい。光学器具は、光学フィルタだけを用いてもよいし、ビームスプリッタだけを用いてもよいし、光学フィルタ及びビームスプリッタの両方を用いてもよい。また、光学フィルタやビームスプリッタが個体化された製品器具である場合、これらを単品で用いたり、複数製品を組み合わせて用いたりすることができる。
【0014】
これにより、対象に選択された流路に光路の位置を調整するだけで、光学器具による照射光の強度調整も連動して行われるので、粒子計数装置の利便性を高く維持することができる。
【0015】
光学器具は、複数の流路のうち一部に対応する光路上だけに配置されてもよいし、全部に対応して配置されていてもよい。光学器具が一部の流路に対応して配置される場合、その他の流路に対応する光路上には、光透過部材(例えばガラス板)を配置することができる。光透過部材は、照射光が光学器具を通過することに伴う光軸の変化に照射光を同調させるものであり、これにより、光学器具が配置されている流路とその他の流路とで、光軸の条件を合わせることができる。
【0016】
また、本発明の粒子計数装置は、光学器具の配置を変位させる機能を条件調整手段が有していてもよい。条件調整手段は、照射光が通過する光路上の通過位置と光路から外れた不通過位置との間で光学器具の配置を変位させることができる。さらに、照射光の強度を調整可能な特性が異なる複数の光学器具を用いることとした場合、光路の位置を調整する対象に選択された流路に応じた特性のものを選択的に光路上に配置可能とすることができる。また、条件調整手段による調整動作は、自動的に制御されるものとしてもよい。
【0017】
これにより、光路の位置を調整する対象に選択された流路(流路内を流れる試料流体や粒子)の特性に合わせて、光学器具による強度の調整を行ったり、行わなかったりする操作や、個々の流路ごとに個別の強度調整を行う操作が可能となり、さらなる利便性の維持向上に資することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、より利便性を高めた粒子計数装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態における粒子計数器1を簡略的に表す斜視図である。
【
図2】後段パワー調整ユニット100の構成例1を示す図である。
【
図3】後段パワー調整ユニット100の構成例1を示す図である。
【
図4】後段パワー調整ユニット100の構成例2を示す図である。
【
図5】前段パワー調整ユニット200の構成例1を示す図である。
【
図6】前段パワー調整ユニット200の構成例2を示す図である。
【
図7】中段パワー調整ユニット300の構成例を示す図である。
【
図8】一実施形態における粒子計数器1の制御構成例を示すブロック図である。
【
図9】他の実施形態における粒子計数器401を簡略的に示す斜視図である。
【
図10】一実施形態における粒子計数器1にトラップ機器124を用いた構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は好ましい例示であり、本発明はこの例示に限定されるものではない。
【0021】
〔粒子計数器の構成〕
図1は、一実施形態における粒子計数器1を簡略的に表す斜視図である。なお、
図1では一部の構成部品の図示を省略している。粒子計数器1は粒子計数装置の一態様であり、計数器であるか計数装置であるかは呼称の違いに過ぎず、技術的な差違を生じるものではない。
【0022】
粒子計数器1を構成する光源20、ミラー30、照明用レンズ40、マルチフローセル(フローセルユニット)80、受光ユニット50等の各構成部品は、図示しない治具等によりセンサベース2に対して直接的又は間接的に支持されている。センサベース2の底面には複数の脚部3が設けられており、脚部3は振動を吸収可能な防振ゴム等の弾性部材で形成されている。また、粒子計数器1は、図示を省略した筐体に収容されている。
【0023】
本実施形態では、一例としてマルチフローセル80を備えている。マルチフローセル80は、例えば10個のフローセル10a~10jを有しており、これらフローセル10a~10jが幅方向に配列されている。各フローセル10a~10jは、例えば石英やサファイア等の透明な材料で形成されており、その内部に略コの字型の流路(図示していない)を有している。流路は各フローセル10a~10jの前面側で上下2箇所に開口しており、これら開口に試料流体を流通させる配管が接続されている。なお、マルチフローセル80が有するフローセル10a~10jの個数は限定されない。
【0024】
粒子計数器1の設置状態又は使用状態において、センサベース2の長手方向を計数器本体の幅方向とし、これに直交する方向を前後(奥行き)方向とした場合、マルチフローセル80は、幅方向に配列されている。各フローセル10a~10jは、試料流体の入口及び出口をその正面側に有しており、各入口及び各出口にはそれぞれ配管が接続されている。
図1では図示を省略したが、各フローセル10a~10jは、フローセルホルダの内部に固定されている。以降の説明においては、複数のフローセル10a~10jが配列される方向を「X方向」と称し、X方向に延びる軸を「X軸」と称することとする。
【0025】
光源20は、センサベース2に固定されており、所定の強度及び波長で照射光La(例えば、レーザ光)を平行とみなすことができる範囲の広がり角でX方向に出射する。センサベース2は光源20のヒートシンクを兼ねる。ミラー30は、光源20から出射された照射光Laをフローセル10a~10j内の検出領域に向けて反射する。また、反射した照射光Laの光路上には照明用レンズ40が設けられており、照射光Laは照明用レンズ40を通過する。
【0026】
マルチフローセル80の背後には、受光ユニット50が設けられている。受光ユニット50は、複数の受光用レンズ、受光素子、増幅器、A/D変換器等を備えている。複数の受光用レンズは、背景ノイズの受光を防止するために円筒形状の受光筒52に収容されている。照射光Laが入射するフローセル10a~10jにおいて、試料流体に含まれる粒子が検出領域を通過すると粒子から散乱光が生じ、この散乱光が受光用レンズで集光されて受光素子(例えば、フォトダイオード)に集まり、そこで電気信号に変換されると、散乱光の強度に基づき粒径ごとに粒子の計数が行われる。なお、粒子に蛍光物質が含まれている場合、粒子から放出される蛍光を受光することで、散乱光の場合と同様に計数することができる。
【0027】
以降の説明においては、受光用レンズの中心軸(以下、「受光軸」と称する。)を「Y軸」と称し、Y軸が延びる方向(計数器本体の前後方向)を「Y方向」と称することとする。鉛直方向を「Z方向」とした場合、X方向、Y方向、Z方向は、いずれも相互に直交する。
【0028】
〔光学系の移動構成(位置調整)〕
粒子計数器1は、マルチフローセル80を固定とし、共通の光源20から出射した照射光Laの光路(光軸)を各フローセル10a~10jに対応する位置に移動させることができる。すなわち、光源20やマルチフローセル80はセンサベース2に固定されているが、ミラー30で反射させた後の照射光Laの光路は、フローセル10a~10jの配列方向に移動可能である。
【0029】
このような光学系の移動は、例えばX軸アクチュエータ62を用いて実現されており、X軸アクチュエータ62がスライダを移動させると、X軸ステージ60が鉛直ブラケット65やホルダ66とともにミラー30及び照明用レンズ40をX方向に移動させ、各フローセル10a~10jに合わせて照射光Laの光路の位置を調整する。
【0030】
例えば
図1では、マルチフローセル80の一端に位置するフローセル10aに光路の位置が合わせられているが、上記のようにX軸アクチュエータ62を駆動すると、他の各フローセル10b~10jに対しても照射光Laの光路の位置を調整することができる。
【0031】
また、受光ユニット50を含む受光光学系については、Y方向に位置調整が可能である。すなわち、X軸ステージ60上にはY軸アクチュエータ72が設けられており、そのスライダ上にY軸ステージ70を介して受光ユニット50を含む受光光学系の構成部品が支持されている。
【0032】
〔照射光の条件調整〕
本実施形態のように、マルチフローセル80を備えた粒子計数器1は、粒子計数用に複数のチャネルを有することになる。すなわち、10個あるフローセル10a~10jには、それぞれ異なる種類の試料流体を流すことで、複数のチャネルを用いて粒子の計数を行うことができる。このとき、照射光Laの光路の位置は各フローセル10a~10jに合わせて調整することが可能であるが、光源20は単一(共通)であり、そのままでは照射光Laの条件(強度)が全ての試料流体に対して一律になることから、各フローセル10a~10jに流れる試料流体や粒子の特性に合わせてチャネル毎に照射光Laの条件も調整することとする。
【0033】
このため本実施形態では、照射光Laの条件調整用に複数のユニット100,200,300を用いることができ、好ましくは後段パワー調整ユニット100、前段パワー調整ユニット200、そして中段パワー調整ユニット300を例示することができる。このうち、後段パワー調整ユニット100は、光学系において照明用レンズ40からマルチフローセル80までの間の照射光Laの光路上に配置されている。また、前段パワー調整ユニット200は、光源20からミラー30までの間の光路上に配置されており、中段パワー調整ユニット300は、ホルダ66内の光路上に配置されている。なお、中段パワー調整ユニット300については、ホルダ66内でもミラー30の入射側に配置されるものと、出射側(ミラー30から照明用レンズ40までの間)に配置されるものとに分かれる。なお、これらユニット100,200,300については、別の図面を参照しながらさらに後述する。
【0034】
〔光学器具(光学素子)〕
本実施形態では、例えば光学フィルタやビームスプリッタ等を用いて照射光Laの条件、特にその強度(パワー、密度分布)を調整している。光学フィルタには、ND(Neutral Density:減光)フィルタや偏光フィルタ、その他の種類の光学フィルタを用いることができる。以下、本実施形態で用いる光学フィルタ及びビームスプリッタを含めて「光学器具」と称するが、呼称は一例に過ぎず、これを「光学素子」としてもよいし、あるいは「光学フィルタ」としてもよい。
【0035】
〔光学的特性の可変〕
さらに、本実施形態では、光学的な特性を変化させることが可能な物質を光学器具に用いることができる。光学的な特性を変化させられる効果として、電気光学効果(いくつかある効果を総称したもの)が挙げられる。各電気光学効果により、光学フィルタやビームスプリッタ等の光学器具が有する屈折率や吸光度(≒透過率)、焦点距離、偏光などの特性を可変に制御することができる。
【0036】
なお、電気光学効果をもたらす物質としては、例えば液晶や結晶(電気光学結晶)が挙げられる。電気光学結晶は電気光学効果を有した結晶であるため、それ自体には様々なものが存在することから、本実施形態においても適宜の結晶を用いることができるものとする。
【0037】
このように、電気光学効果をもたらす物質で光学器具を構成し、外部からの電気信号(外部からの電気的影響)によりその物質の特性を変更可能な構成とする。これにより、光学器具を物理的に別の物に変更したり、位置を変えたりせずに、光学器具の特性を変更することができる。
【0038】
〔後段パワー調整ユニット〕
図2及び
図3は、後段パワー調整ユニット100の構成例1を示す図である。
図2では、
図1の粒子計数器1が正面視で示されており、
図3では側面視で示されている。また
図2には、各フローセル10a~10jの前面側開口が円形で示されている。
【0039】
後段パワー調整ユニット100は、例えば光学器具104,106,110,112,114等をマルチフローセル80の下方に配置した構成である。光学器具104等には、一例として板形状のものを使用しており、これらを照射光Laの光路上に位置するように配置している。光学器具104等を保持するため、マルチフローセル80の下面には複数のブラケット102が下方に突出して形成されており、ブラケット102は、各フローセル10a~10jに対応して等間隔でX方向に配列されている。光学器具104等は、隣り合うブラケット102間に挿入した状態で保持されている。
【0040】
なお、センサベース2に対するマルチフローセル80の固定には、例えばフローセルベース5が用いられており、フローセルベース5は、センサベース2の上面に垂直に立設されたコ字形のプレート状をなす部材で構成されている。またフローセルベース5は、マルチフローセル80の両端で一対をなして配置されている。このため、マルチフローセル80はその下方を開放させた状態でセンサベース2に固定されている。
【0041】
個別の配置に関していうと、
図2中で右端に位置するフローセル10aに対応する照射光Laの光路上には、例えば2つの光学器具104,106が配置されている。また、右から4つ目のフローセル10dに対応する光路上には、例えば1つの光学器具108が配置されており、右から7番目のフローセル10gに対応する光路上には、例えば2つの光学器具110,112が配置されている。そして、右から8番目のフローセル10hに対応する光路上には、例えば1つの光学器具114が配置されている。
【0042】
なお、
図2では、右端のフローセル10aに照射光Laの光路(光軸)が合わせられた状態が実線で示されているが、例えば
図2中に二点鎖線で示すように、X軸アクチュエータ62を駆動してX軸ステージ60ごとホルダ66をX方向に移動させれば、他のフローセル10hに対応する位置に光路を調整することもできるし、その他のフローセル10b~10jに対しても個々に光路の位置を調整することができる。したがって、光学器具104等は、各フローセル10a~10jに対して個別に位置が調整された場合の照射光Laの各光路上に位置するようにして配置されている。
【0043】
光学器具104,106,110,112,114等は、それぞれ種類や光学特性が異なっているか、あるいは一部が共通している。また、ここでは光学器具104等を2つ重ねて配置した例を挙げているが、光学器具104等は、1つの光路上に3つ以上が配置されてもよい。なお、いくつかのフローセル10b,10c,10e,10f,10i,10jについては光学器具104等が配置されていないが、これらについても適宜、光学器具104等を配置してもよい。
【0044】
いずれにしても、光路上に光学器具104等を配置することにより、各フローセル10a~10jに流す試料流体や粒子の特性に合わせた照射光Laの強度に調整することができる。光学器具104等を配置した場合はそれらを照射光Laが通過することで適切な強度に調整された状態となり、また、光学器具104等を配置しない場合は光源20から出射されたときの照射光Laの強度に調整された状態とした上で、各フローセル10a~10jの流路内に照射させることができる。
【0045】
図4は、後段パワー調整ユニット100の構成例2を示す図である。上記の構成例1では、光学器具104等を配置しない箇所は単なる空間(空気)であったが、構成例2の場合、光学器具104等を配置しない箇所には光透過部材120が配置されている。また、フローセル10dについては、1つの光学器具108に加えて光透過部材120が配置されており、フローセル10hについても、1つの光学器具114に加えて光透過部材120が配置されている。
【0046】
したがって、構成例1では後段パワー調整ユニット100内で照射光Laが通過する媒体は、フローセル10a~10jごとに光学器具104等の配置の有無で異なることとなるが、構成例2では、全てのフローセル10a~10jについて照射光Laが光学器具104等又は光透過部材120のいずれかの媒体(例えば2つずつ)を通過することになる。
【0047】
光透過部材120は、例えば透明ガラス板、透明アクリル樹脂板等であり、特段の強度調整機能を有するものではない。ただし、光透過部材120は、これに照射光Laを透過させることで光学器具104等の通過に伴う光軸の変化に同調させることができる。したがって、構成例2では、光学器具104等の有無に関係なく、全てのフローセル10a~10jに対する光軸変化を一様に揃えることができるので、X軸アクチュエータ62を用いた光路の位置調整を容易に行うことができる。この点、構成例1の場合、光学器具104等が配置されていない箇所では照射光Laに光軸の変化がないことを踏まえた上で、X軸アクチュエータ62を用いた光路の位置調整を行う必要がある。
【0048】
後段パワー調整ユニット100によれば、以下の有用性が得られる。
(1)強度を調整する光学器具104等に例えばNDフィルタを用いた場合、NDフィルタが配置されない場合と比較して、流路内に照射される照射光Laの強度が減少する。これにより、該当のフローセル10a,10d,10g,10hを流れる試料流体に照射される照射光Laの強度を減少させることができる。したがって、流路に流れる試料流体や粒子に対してより適切な強度の照射光Laを照射することが可能となり、より高精度の粒子計数が可能となる。
【0049】
(2)NDフィルタの光学特性(例えば、減衰量)は、光源20が出射する照射光Laの強度、試料流体や粒子の種類等により、粒子計数に適切なものを選択することができる。例えば、光源20が出射する照射光Laの強度が一定の条件下で、あるチャネルで試料流体Aを流す場合はNDフィルタαを光学器具104等に適用し、あるチャネルで試料流体Bを流す場合はNDフィルタβを適用するというように、計数対象となる粒子やこれを含む試料流体の種類や特性に合わせた強度の調整が可能となる。
【0050】
(3)予め光学器具104等を光路上に配置しておくことで、粒子計数器1において計数対象となるチャネル(フローセル10a~10j)が切り換えられても、特段の操作を行う必要がなく、そのまま対象のチャネルに流れる試料流体や粒子の特性に適した照射光Laの強度に調整することができる。
【0051】
(4)使用する光学器具104等はNDフィルタに限らず、照射光Laの光路上に配置することで照射光Laに作用する光学素子であれば、偏光フィルタや波長選択フィルタのような光学フィルタでもよいし、無極性ビームスプリッタ、偏光ビームスプリッタのようなビームスプリッタ等、性能や種類の異なる光学フィルタやビームスプリッタを用いることができる。
【0052】
(5)また、各フローセル10a~10jに流す試料流体や粒子の種類が変わった場合でも、適宜に光学器具104等を交換や追加、又は除去することにより、迅速かつ容易に強度の調整を行うことができる。
【0053】
〔その他の構成例〕
後段パワー調整ユニット100は、以下の構成例とすることもできる。
各フローセル10a~10jに対応する光路上に配置する光学器具104等の数は任意であり、単数又は複数のいずれでもよく、3以上でもよい。
【0054】
また、光学器具104等を複数配置してフィルタセットとする場合、そのフィルタセット内でそれぞれのフィルタは同じ機能・性能を有するものを重ね合わせて配置してもよいし、異なる機能・性能を有するものを重ね合わせて配置してもよい。光学器具104等は、光路方向の厚みが異なっていてもよい。
【0055】
光学器具104等は、各フローセル10a~10jまでの光路ごとに異なるフィルタ(フィルタセット)を配置する構成としてもよい。
【0056】
光学器具104等は、構成例1のようにブラケット102への脱着を容易にすることで、各フローセル10a~10jまでの光路ごとに配置の有無を切り替え(適用/非適用)が可能である構成であってもよい。
【0057】
また、光学器具104等は固定配置ではなく、例えば同一のフローセル10a~10j内においても、流す対象が試料流体Aである場合には光学器具104等に光学フィルタαを適用し、流す対象が試料流体Bの場合には光学フィルタαを取り外して別の光学フィルタβに交換することとしてもよい。
【0058】
各フローセル10a~10jまでの光路上への光学器具104等の配置の有無(適用/非適用)の切り替えは、オペレータにより手動で行ってもよいし、駆動機構等を用いて自動で行ってもよい。
【0059】
自動で光学器具104等の配置の有無を切り替える構成とした場合、例えば予め粒子計数器1にプリセットされた試料流体やその他の条件に応じて適切なものを選択し、光学器具104等を配置したり、その配置を変更したりすることができる。あるいは、計数対象に選択したチャネルのフローセル10a~10jに流れる試料流体やその他の条件を検知し、その検知結果に基づいて適切な光学器具104等が自動的に選択されて配置される構成としてもよい。
【0060】
〔前段パワー調整ユニット〕
次に、前段パワー調整ユニット200について説明する。
図5は、前段パワー調整ユニット200の構成例1を示す図である。
図5中(A)では、光源20を含むその一部近傍が正面視で示されており、
図5中(B)では側面視で示されている。
【0061】
図5中(A):前段パワー調整ユニット200は、例えば光源20の照射方向でみて直前の照射光Laの光路上に光学器具208を配置した構成である。なお、前段パワー調整ユニット200は、X軸アクチュエータ62によるホルダ66(照射光学系)の可動範囲やフローセルベース5等と干渉しない位置に設けられている。ここでも光学器具208は、光学フィルタやビームスプリッタ等とすることができる。前段パワー調整ユニット200は、センサベース2上に立設された箱形状の筐体201を有しており、この筐体201には照射光Laを通過させる窓202が開口して形成されている。また、筐体201の内部には上記の光学器具208とともに、回転式アクチュエータ204が設けられており、回転式アクチュエータ204の出力軸は、
図1のX軸回りに回転可能となっている。
【0062】
図5中(B):光学器具208は、回転式アクチュエータ204の出力軸にブラケット206を介して支持されている。構成例1の光学器具208は単一の構成であるが、回転式アクチュエータ204の駆動により、二点鎖線で示すように光路上で照射光Laが通過する位置(通過位置)と、実線で示すように光路から外れた位置(不通過位置)との間で変位可能となっている。
【0063】
したがって、前段パワー調整ユニット200の構成例1によれば、光学器具208を不通過位置に変位させた状態では、照射光Laの強度が光源20による出射の強度に調整されることとなり、逆に通過位置に変位させた状態では、光学器具208の通過に伴う強度に調整されることになる。
【0064】
次に
図6は、前段パワー調整ユニット200の構成例2を示す図である。
図6では、光源20を含むその一部近傍が側面視で示されている。
【0065】
構成例2においても、前段パワー調整ユニット200は構成例1と同様な筐体201を有しており、筐体201には窓202が形成されている。構成例2の場合、回転式アクチュエータ204の出力軸には回転ディスク210が取り付けられている。この回転ディスク210には、同一ピッチ円上に複数の孔210aが周方向に等間隔で形成されており、各孔210aにはそれぞれ光学器具208,212,214,216,218,220が嵌め込まれている。
【0066】
このため、構成例2では、回転式アクチュエータ204を駆動して回転ディスク210の角度を回転方向に変位させることにより、照射光Laの光路上で光学器具208,212,214,216,218,220の配置を切り替えて使用することができる。例えば、
図6に示される角度では、光路上に光学器具208が配置されている。この場合、光学器具208の機能・性能に応じて照射光Laの強度を調整することができる。強度調整された照射光Laは、ミラー30及び照明用レンズ40を経て各フローセル10a~10jの流路に照射される。
【0067】
そして、例えば
図6の角度から60度ピッチで回転ディスク210の角度を変化させていけば、その他の光学器具212,214,216,218,220を順次、光路上に配置させて使用することができる。したがって、ここでも光路上に配置される光学器具212,214,216,218,220の機能・性能に応じて照射光Laの強度を調整することができる。
【0068】
また、回転ディスク210を光透過部材(透明ガラス板、透明アクリル板等)で構成することにより、孔210aの形成されていない領域が光路上に位置する角度に回転ディスク210を変位させることで、いずれの光学器具208,212,214,216,218,220も光路上に配置されない状態にすることができる。この場合、照射光Laは光源20から出射された強度でミラー30及び照明用レンズ40を経て各フローセル10a~10jの流路に照射されることになる。
【0069】
前段パワー調整ユニット200によれば、以下の有用性が得られる。
(1)後段パワー調整ユニット100と同様に、光学器具208等を用いた照射光Laの強度の調整を実現することができる。
(2)その上で、構成例1の場合、後段パワー調整ユニット100のように対応する各フローセル10a~10jまでの光路上に個別の光学器具104等でフィルタ(フィルタセット)を用意する場合と異なり、光源20の直前の位置で光路上に単一の光学器具208を配置するため、いずれのフローセル10a~10jに対しても適用するフィルタ(フィルタセット)が同一となり、光学器具208を最小数として構成の簡素化を図ることができる。
(3)一方、構成例2の場合、適用するフローセル10a~10jに応じた数の光学器具208等を用意しておき、選択したチャネルに応じて適切な光学器具208等を光路上に配置させることで、個々のフローセル10a~10jに流れる試料流体や粒子の特性に合わせた照射光Laの強度調整が可能となる。
【0070】
〔その他の構成例〕
前段パワー調整ユニット200は、以下の構成例とすることもできる。
図5の構成例1において、光路上に複数の光学器具208等を重ねて配置してもよい。例えば、複数の回転式アクチュエータ204、ブラケット206及び光学器具208のセットを複数用意し、互いに可動域が干渉しない配置とすることで、光路上に1つの光学器具208を配置させたり、複数の光学器具208を配置させたりすることができる。これにより、光路上に配置させる光学器具208の数に応じた照射光Laの強度の段階的な調整が可能になる。
【0071】
図6の構成例2においても同様に、回転式アクチュエータ204、回転ディスク210及び光学器具208等のセットを複数用意し、互いに可動域が干渉しない配置とすることができる。これにより、適用するフローセル10a~10jごとの細かい強度の調整が可能になり、より有用性を高めることができる。
【0072】
前段パワー調整ユニット200においても、計数対象に選択したチャネルのフローセル10a~10jに流れる試料流体やその他の条件を検知し、その検知結果に基づいて適切な光学器具208等が自動的に選択されて配置される構成としてもよい。
【0073】
〔中段パワー調整ユニット〕
次に、中段パワー調整ユニット300について説明する。
図7は、中段パワー調整ユニット300の構成例を示す図である。
図7中(A)では、
図1のミラー30及び照明用レンズ40を含むホルダ66の一部近傍が示されており、
図7中(B)ではホルダ66の内部構造が正面視(一部は断面)で示されている。
【0074】
図7中(A):上記のように、中段パワー調整ユニット300は、ホルダ66内でミラー30の入射側の光路上に配置されるものと、出射側(ミラー30から照明用レンズ40までの間)の光路上に配置されるものとに分かれる構成とすることができる。なお、中段パワー調整ユニット300は、いずれか一方だけの配置としてもよい。
【0075】
図7中(B):中段パワー調整ユニット300においても、光学器具302,304を用いて照射光Laの強度を調整することができる。この構成例では、一方の光学器具302がミラー30の入射側で光路上に配置されるものであり、他方の光学器具304がミラー30の反射側で光路上に配置されるものとなっている。ここでも光学器具302,304は、光学フィルタやビームスプリッタ等とすることができる。また、光学器具302,304についても、図示しないリニアアクチュエータの駆動により、個別に光路上で照射光Laを通過させる位置(通過位置:図中二点鎖線で示す)と光路から外れた位置(不通過位置:図中実線で示す)との間で変位可能となっている。
【0076】
中段パワー調整ユニット300によれば、以下のような有用性が得られる。
(1)後段パワー調整ユニット100と同様に、光学器具302,304を用いた照射光Laの強度の調整を実現することができる。
(2)その上で、後段パワー調整ユニット100や前段パワー調整ユニット200の場合と違って、中段パワー調整ユニット300では、光学器具302,304のフィルタ(フィルタセット)がホルダ66内に配置され、ミラー30及び照明用レンズ40を含むホルダ66一式とともに可動する配置となっている。これにより、後段パワー調整ユニット100や前段パワー調整ユニット200のように、フィルタ(フィルタセット)を配置するために別途スペースを確保する必要がなく、粒子計数器1内部で構成部材の密集度を軽減させることができ、放熱性やメンテナンス作業性の向上を図ることができる。
【0077】
(3)2つの光学器具302,304を個別に変位させることで、適用するフローセル10a~10jに応じて光学器具302又は光学器具304のいずれか1つを光路上に配置させたり、2つの光学器具302,304を同時に配置させたりすることができる。これにより、選択したチャネルに応じて適切な光学器具302,304を光路上に配置させることで、個々のフローセル10a~10jに流れる試料流体や粒子の特性に合わせた照射光Laの強度調整が可能となる。
【0078】
〔その他の構成例〕
中段パワー調整ユニット300は、以下の構成例とすることもできる。
光学器具302,304は、いずれか一方だけをホルダ66内に配置してもよい。その際、入射側の光学器具302の配置は、光源20からミラー30までの間でホルダ66とともに可動する位置に配置してもよい。また、出射側の光学器具304の配置についても、照明用レンズ40から各フローセル10a~10jまでの間でホルダ66とともに可動する位置に配置してもよい。
【0079】
あるいは、光学器具302,304を両方とも配置する場合でも、入射側の光学器具302は、光源20からミラー30までの間でホルダ66とともに可動する位置に配置し、出射側の光学器具304は、照明用レンズ40から各フローセル10a~10jまでの間でホルダ66とともに可動する位置に配置することとしてもよい。この場合、両方の位置に光学器具302,304のフィルタ(フィルタセット)が概ね均等なスペースをホルダ66の近傍に占有していてもよいし、片方のスペースがより多く占有していてもよい。
【0080】
中段パワー調整ユニット300においても、計数対象に選択したチャネルのフローセル10a~10jに流れる試料流体やその他の条件を検知し、その検知結果に基づいて適切な光学器具302,304が自動的に選択されて配置される構成としてもよい。
【0081】
〔制御構成例〕
図8は、一実施形態における粒子計数器1の制御構成例を示すブロック図である。なお、ここでは説明の便宜上、後段パワー調整ユニット100、前段パワー調整ユニット200及び中段パワー調整ユニット300の全てを粒子計数器1に対して組み込んだ構成例を示しているが、3つのユニット100,200,300は、いずれか1つ又は複数を任意に選択的に組み込んで採用することができる。
【0082】
粒子計数器1は、上述した各構成部品の他に、粒子の検出及び計数を制御する制御ユニット90を備えている。制御ユニット90は、例えば、操作入力部91、記憶部92、位置調整部93、検出管理部94、計数部95、データ出力部96、及びパワー調整部150を有している。
【0083】
操作入力部91は、ユーザに対して操作画面を提供するとともに、操作画面を介してユーザによりなされる操作を受け付ける。ユーザは、操作画面において、計数対象のチャネルの選択、検出の開始及び終了、計数結果の保存、照射光Laの強度調整等を指示する操作を行うことができる。操作入力部91は、受け付けた操作の内容に応じた指示を他の機能部93,94,96,150に対して行う他に、他の機能部93,94,96,150からの入力の内容に応じて操作画面の切り替え等を行う。
【0084】
記憶部92は、いわゆる記憶領域であり、粒子の検出や計数に関わる情報を記憶する。記憶部92には、各チャネルのフローセル10a~10jに対応するX座標及びY座標が予め記憶されている他、各チャネルのフローセル10a~10jごとの試料流体や粒子の特性に応じた適切な照射光Laの強度レベルが予め記憶されている。なお、記憶部92の記憶情報は、適宜に書き換え可能としてもよい。
【0085】
位置調整部93は、操作入力部91により特定のチャネルが指定されると、先ずそのチャネルのフローセル10a~10jに対応するX座標及びY座標を記憶部92から読み出す。そして、X軸アクチュエータ62を作動させてX軸モータ64を駆動しX軸ステージ60をX座標までスライドさせ、さらにY軸アクチュエータ72を作動させてY軸モータ74を駆動しY軸ステージ70をY座標までスライドさせる。X軸モータ64及びY軸モータ74を駆動し終えると(X軸ステージ60、Y軸ステージ70の位置の調整が完了すると)、検出の開始が可能な状態となる。位置調整部93は、検出の開始が可能となったことを操作入力部91に伝える。
【0086】
〔後段パワー調整ユニット100適用外の場合〕
粒子計数器1に後段パワー調整ユニット100が適用されておらず、前段パワー調整ユニット200又は中段パワー調整ユニット300のいずれか一方、もしくは両方が適用された場合、パワー調整部150は以下の指示を行う。
すなわち、パワー調整部150は、操作入力部91により特定のチャネルが指定されると、該当のチャネルのフローセル10a~10jに適用する照射光Laの強度レベルの情報を記憶部92から読み出し、前段パワー調整ユニット200又は中段パワー調整ユニット300の各アクチュエータに駆動信号を出力する。この駆動信号に基づき、前段パワー調整ユニット200又は中段パワー調整ユニット300において、それぞれ適切なフィルタ(フィルタセット)が光路上の通過位置に配置されたり、不通過位置に配置されたりすることになる。
【0087】
〔後段パワー調整ユニット100適用時〕
一方、粒子計数器1に後段パワー調整ユニット100が適用されており、前段パワー調整ユニット200及び中段パワー調整ユニット300が適用されていない場合は以下となる。すなわち、パワー調整部150は特段の指示を行わず、待機状態となる。これは、後段パワー調整ユニット100が固定式の光学器具208等を用いているためである。
【0088】
〔後段パワー調整ユニット100適用時その他の構成例〕
ただし、後段パワー調整ユニット100についても、自動で光学器具208等の脱着を行う構成とすることができる点については既に述べた通りである。この場合、パワー調整部150は、操作入力部91により特定のチャネルが指定されると、該当のチャネルのフローセル10a~10jに適用する照射光Laの強度レベルの情報を記憶部92から読み出し、後段パワー調整ユニット100に対して各フローセル10a~10jの対応する位置のブラケット102に適切な光学器具208等を配置させる動作を指示する。これにより、
図2~
図4のようにフローセル10a~10jごとに適切な光学器具208(光透過部材120)等が光路上に配置されることになる。
【0089】
検出管理部94は、操作入力部91により特定のチャネルに対する検出開始の指示がなされると、光源20及び受光ユニット50を作動状態に切り替える。また、検出管理部94は、操作入力部91により特定のチャネルに対する検出終了の指示がなされると、光源20及び受光ユニット50を非作動状態に切り替える。光源20及び受光ユニット50が非作動状態に切り替わると、計数対象のチャネルを変更可能な状態となる。検出管理部94は、チャネル変更が可能となったことを操作入力部91に伝える。
【0090】
なお、光源20の作動状態の切り替えは、検出の開始及び終了の度に行わずに粒子計数器1が起動している間は作動状態のままとしてもよい。また、検出の開始及び終了は、操作入力部91(ユーザによる操作)を介することなく行う構成としてもよい。例えば、位置調整部93によるステージ60,70の位置の調整が完了したことを契機として自動的に検出を開始させ、検出が開始されてから所定時間の経過後に自動的に検出を終了させてもよい。
【0091】
検出管理部94により光源20及び受光ユニット50が作動されると、光源20により出射された照射光Laは、ミラー30で反射したのち照明用レンズ40を通過して、絞り込まれた状態でフローセル10a~10jに入射して試料流体の流路内の所定位置に検出領域を形成する。試料流体に含まれる粒子が検出領域を通過すると、粒子から散乱光が生じ、この側方散乱光が受光用レンズ53により集光されて受光素子54に入射し受光される。受光素子54により受光された側方散乱光はその強度に応じた電気信号に変換され、増幅器55により所定のゲインで増幅された後に、A/D変換器56によりデジタル信号に変換される。そして、受光ユニット50は、最終的に得られたデジタル信号を計数部に出力する。
【0092】
計数部95は、受光ユニット50により出力されたデジタル信号の大きさ、すなわち散乱光の強度に基づいて検出された粒子の粒径を判断し、粒径ごとに粒子を計数する。計数部95は、計数した結果をデータ出力部96に出力する。
【0093】
データ出力部96は、計数部95により出力された計数結果に基づいてデータを出力する。データの出力は、結果表示画面への表示により行ってもよいし、プリンタへの出力やネットワークを介した他のデバイスへの送信により行ってもよい。検出の終了に伴い計数結果の最終データが整うと、最終データの保存が可能な状態となる。データ出力部96は、最終データの保存が可能になったことを操作入力部91に伝える。
【0094】
なお、制御ユニット90は、粒子計数器1の内部に一体的に設けられてもよいし、粒子計数器1の外部に別体として設けられてケーブルやネットワーク等で接続する態様で利用してもよい。
【0095】
また、制御ユニット90は検知部を備えていてもよく、検知部は、各フローセル10a~10jを流れる試料流体や粒子の種類を検知することができる検知素子を備える。この場合、操作入力部91により特定のチャネルに対する検出開始の指示がなされると、検知部が指示されたチャネルを流れる試料流体や粒子を検知し、その検知結果をパワー調整部150に伝える。そしてパワー調整部150は、検知部の検知結果に基づいて記憶部92から適切な強度レベルの情報を読み出し、適用されているユニット100,200,300に対する指示を行う。
【0096】
〔特性の可変制御〕
また、後段パワー調整ユニット100、前段パワー調整ユニット200又は中段パワー調整ユニット300の少なくともいずれかに対し、特性が可変な光学器具を用いる場合、各ユニット100,200,300の適用時において、パワー調整部150は適宜、計数対象のチャネルのフローセル10a~10jに流れる試料流体や粒子の特性や、そのとき適用する照射光Laの強度レベルに応じて光学器具の特性を変更することができる。この場合、例えば後段パワー調整ユニット100については、チャネル毎の試料流体や粒子の特性に応じて光学器具104等を取り換えることなく、制御によって光学的特性を可変させて使用することができる。また、前段パワー調整ユニット200においても、光学器具208等の配置を切り換えることなく、固定配置した光学器具208等の特性を可変させて使用することができる。中段パワー調整ユニット300も同様に、計数対象のチャネルに応じて光学器具302,304の特性を可変させて使用することができる。
【0097】
〔その他の実施形態における粒子計数器の構成〕
図9は、他の実施形態における粒子計数器401を簡略的に示す斜視図である。
図9においても、
図1と同様に一部の構成部品の図示を省略している。
【0098】
粒子計数器401においては、照射光Laの光源としてファイバレーザが用いられており、この場合の光源は筐体の外部に配置されている(図示されていない)。図示しない光源から延び出た光ファイバの先端にはヘッド422が設けられており、このヘッド422がホルダ466に固定されている。したがって、ヘッド422は、選択されたチャネルに応じてX軸ステージ60に連動してX方向に移動する。上述した実施形態とは異なり、ここではミラーが設けられていない。
【0099】
〔トラップ機器を用いた構成例〕
図10は、一実施形態における粒子計数器1にトラップ機器124を用いた構成例を示す図である。この構成例では、粒子計数器1が後段パワー調整ユニット100の他にトラップ機器124を備えている。なお、ここでは一実施形態の粒子計数器1を挙げているが、他の実施形態における粒子計数器401にもトラップ機器124を適用することができる。
【0100】
本構成例では、後段パワー調整ユニット100に反射型の光学器具(一例としてビームスプリッタ122)を用いている。このため照射光Laは、ビームスプリッタ122により各フローセル10a~10jに入射する入射光と、入射光とは異なる方向の余剰光La’とに分離されることで、各フローセル10a~10jへの入射光が減光されることになる。
【0101】
なお、ここでは全てのフローセル10a~10jに対してビームスプリッタ122が設けられているが、先の構成例1,2のように、ビームスプリッタ122を配置しない箇所があってもよいし、配置箇所によってビームスプリッタ122の光学特性が異なる態様であってもよいし、ビームスプリッタ122とは別のNDフィルタ等が配置される箇所が混在していてもよい。また、ビームスプリッタ122を配置する角度は適宜であり、水平に配置されていてもよいし、ビームスプリッタ122は、プレート型でなくキューブ型のものでもよい。
【0102】
本構成例において適用されるトラップ機器124は、例えばホルダ66の上面で、照明用レンズ40と干渉しない位置に配置されている。トラップ機器124は、ホルダ66の上面に配置されることで、X軸アクチュエータ62による光路の位置調整と連動してX方向に移動し、
図10中の実線及び二点鎖線で示すように、各ビームスプリッタ122に対して相対的に余剰光La’の分離方向に配置される。これにより、使用するトラップ機器124を最小の1個にすることができ、フローセル10a~10jごとにトラップ機器124を複数箇所に配置する必要がない。
【0103】
いずれにしても、このようなトラップ機器124は、ビームスプリッタ122で分離(反射)された余剰光La’を拘束することで、その悪影響(ノイズの発生等)を取り除くことができる。なお、トラップ機器124には、例えば、レーザ光を吸収して熱に変換することにより、光ビームを終端する機能を有した各種の光学機器(ビームとラップ、ビームダンパ、ビームブロック、ビームディフューザ等に呼称される製品)が好適に用いられる。また、トラップ機器124の配置は、ホルダ66上面以外の箇所であってもよいし、複数箇所(フローセル10a~10jごと)であってもよい。
【0104】
以上のように、上述した実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
(1)後段パワー調整ユニット100、前段パワー調整ユニット200、中段パワー調整ユニット300のいずれを適用した場合でも、共通の光源を用いるマルチフローセル粒子計数器において、試料流体や粒子の種類ごとに適正な照射光の条件で使用することが可能となり、より正確な測定結果を得ることが可能となる。
【0105】
(2)後段パワー調整ユニット100を適用した場合、光学器具208等の配置を予めフローセル10a~10jごとの光路上に固定で配置しておけば、粒子計数器1において計数対象のチャネルを選択するだけで、あとは照射光Laの光路を移動させるだけで適切な照射光Laの条件(強度)に調整されるので、機構上の可動部品が少なく、故障や調整等の手間を少なくすることができる。
【0106】
(3)前段パワー調整ユニット200を適用した場合、中段パワー調整ユニット300を適用した場合については、照射光Laの強度調整が必要な場合にだけ光学器具208等が光路上に配置されるので、調整が不要な場合は光路全域をクリアな状態にしておくことができる。また、調整が不要な場合は特に機構上の動作を行う必要がなく、動作音や消費エネルギの低減を図ることができる。
【0107】
(4)トラップ機器124を適用した場合、反射型の光学器具で反射される光(ビームスプリッタ122からの余剰光La’等)の他の影響を取り除くことができ、測定結果の正確性をより高めることができる。
【0108】
(5)また、特性が可変な物質で光学器具を構成することで、光学器具そのものを物理的に変更したり、位置を変えたり、取り換えたりすることなく、電気的な制御によって光学器具の特性を変更することで、計数対象のチャネルに応じて適切な条件に調整して計数を行うことができる。
【0109】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0110】
上述した実施形態では、照射光Laの条件として強度(パワー)の調整を行っているが、調整する条件は強度(パワー、密度分布)に限られず、その他の条件(例えば、波長、偏光状態等)としてもよい。また、光学フィルタやビームスプリッタに限らず、照射光Laの条件を調整可能な各種の光学素子を用いてもよい。
【0111】
上述した実施形態では、粒子計数器1にマルチフローセル80を採用しているが、フローセルが1つの構成でもよい。この場合、光学系を移動させる必要はないが、後段パワー調整ユニット100又は前段パワー調整ユニット200を適用することで、フローセルに流す試料流体や粒子の種類が変わった場合、変化後の特性に応じて照射光Laの強度を調整することができる。
【0112】
図8の制御構成例において、後段パワー調整ユニット100全体がマルチフローセル80に対して変位可能となる機構を適用してもよい。この場合、パワー調整部150は、特定のチャネルが指定されたことに基づいて、後段パワー調整ユニット100全体を変位させて照明用レンズ40からマルチフローセル80までの光路上に配置したり、光路から外れた位置に移動させたりすることができる。
【0113】
トラップ機器124は、後段パワー調整ユニット100に適用する場合だけでなく、反射型の光学器具を用いた場合には、それらの反射光を拘束可能な箇所に適宜配置することができる。また、光軸に対する角度や使用する光学器具との関係から、必要に応じて前段パワー調整ユニット200や中段パワー調整ユニット300にもトラップ機器124を適用することができる。
【0114】
その他、粒子計数器1の各構成部品の例として挙げた材料や数値等はあくまで例示であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0115】
1 粒子計数器
2 センサベース
5 フローセルベース
6 フローセルホルダ
10a~10j フローセル
20 光源
30 ミラー
40 照明用レンズ
50 受光ユニット
60 X軸ステージ
70 Y軸ステージ
80 マルチフローセル
100 後段パワー調整ユニット
104,106,110,112,114 光学器具
120 光透過部材
122 ビームスプリッタ(光学器具)
124 トラップ機器
200 前段パワー調整ユニット
208,212,214,216,218,220 光学器具
300 中段パワー調整ユニット
302,304 光学器具