(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096243
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/40 20160101AFI20230630BHJP
【FI】
H02P29/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211861
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】古平 健幸
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴広
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501DD01
5H501GG01
5H501GG03
5H501GG05
5H501GG10
5H501LL07
5H501LL22
5H501LL32
5H501LL35
(57)【要約】
【課題】高い応答性で、高精度な制御をするモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ10の回転を検出するエンコーダ20で得られた検出角度θ2及び検出角速度ω2と、モータ10の駆動トルクを検出するトルクセンサ30で得られた検出トルクT2とに基づいてモータ10の回転を制御するモータ制御装置100であって、指示角度θ1と検出角度θ2とから角度偏差Δθを算出する角度偏差算出部110と、角度偏差Δθから指示角速度ω1を生成する角度制御部120と、指示角速度ω1と検出角速度ω2とから角速度偏差Δωを算出する角速度偏差算出部130と、角速度偏差Δωから指示トルクT1を生成する角速度制御部140と、指示トルクT1と検出トルクT2とからトルク偏差ΔTを算出するトルク偏差算出部150と、トルク偏差ΔTからモータ10への駆動電流Imを生成するトルク制御部160とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(10)の回転を検出するエンコーダ(20)で得られた検出角度(θ2)及び検出角速度(ω2)と、前記モータ(10)の駆動トルクを検出するトルクセンサ(30)で得られた検出トルク(T2)とに基づいて前記モータ(10)の回転を制御するモータ制御装置(100)であって、
外部から与えられる指示角度(θ1)と前記検出角度(θ2)とから角度偏差(Δθ)を算出する角度偏差算出部(110)と、
前記角度偏差(Δθ)から指示角速度(ω1)を生成する角度制御部(120)と、
前記指示角速度(ω1)と前記検出角速度(ω2)とから角速度偏差(Δω)を算出する角速度偏差算出部(130)と、
前記角速度偏差(Δω)から指示トルク(T1)を生成する角速度制御部(140)と、
前記指示トルク(T1)と前記検出トルク(T2)とからトルク偏差(ΔT)を算出するトルク偏差算出部(150)と、
前記トルク偏差(ΔT)から前記モータ(10)への駆動電流(Im)を生成するトルク制御部(160)と、
を備えるモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボモータ(以下、単にモータと呼ぶ)の状態変数は、角度、角速度、角加速度の三変数である。
実際にモータを制御する場合、レゾルバまたはエンコーダ(以下、レゾルバとエンコーダをまとめてエンコーダと呼ぶ)により検出した角度と角速度、及び、角速度を微分して得た角加速度により、モータへの駆動電流を制御することができる。
【0003】
また、モータを制御する別の手法として、エンコーダにより検出した検出角度と検出角速度、及び、モータを流れる駆動電流の電流値の変化を角加速度の推定値として用いて、モータへの駆動電流を制御することができる。なお、モータの各種制御については、以下の特許文献1に各種の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したモータ制御において、エンコーダにより検出された角速度を微分して角加速度を得る場合、エンコーダの出力信号を微分する装置が必要になるため、制御系が複雑化し、精度を高く保つことができない問題がある。
【0006】
上述したモータ制御において、モータを流れる駆動電流の変化を角加速度の推定値として用いて制御する場合、モータのコギングトルク等の微小トルク変化であって駆動電流の変化として現れにくい現象に対処することができないなど、応答性の高い制御をすることができない問題がある。
【0007】
このため、モータを制御する際に、制御系を複雑化させることなく、高い応答性で、高精度な制御をすることが望まれていた。
本発明は、制御系を複雑化させることなく、高い応答性で、高精度な制御をすることができるモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るモータ制御装置は、モータの回転を検出するエンコーダで得られた検出角度及び検出角速度と、モータの駆動トルクを検出するトルクセンサで得られた検出トルクとに基づいてモータの回転を制御するものであって、外部から与えられる指示角度と検出角度とから角度偏差を算出する角度偏差算出部と、角度偏差から指示角速度を生成する角度制御部と、指示角速度と検出角速度とから角速度偏差を算出する角速度偏差算出部と、角速度偏差から指示トルクを生成する角速度制御部と、指示トルクと検出トルクとからトルク偏差を算出するトルク偏差算出部と、トルク偏差からモータへの駆動電流を生成するトルク制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るモータ制御装置によれば、エンコーダにより検出された角度及び角速度、並びにトルクセンサにより検出されたトルクに基づいて、モータの回転を制御するため、制御系を複雑化させることなく、高い応答性で、高精度な制御をすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1におけるモータ制御装置の構成をモータと共に示す構成図である。
【
図2】比較例1としてのモータ制御装置の構成をモータと共に示す構成図である。
【
図3】比較例2としてのモータ制御装置の構成をモータと共に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のモータ制御装置の実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1におけるモータ制御装置100の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、実施の形態1におけるモータ制御装置100の構成をモータ10と共に示す構成図である。
【0013】
図1において、モータ10は、負荷に回転力を供給するものであり、回転軸近傍にエンコーダ20とトルクセンサ30とが設けられている。エンコーダ20とトルクセンサ30は、モータ10と一体にモータユニットとして構成されることがある。
【0014】
エンコーダ20は、モータ10の回転を検出し、モータ10の回転角度を検出角度θ2と算出し、モータ10の回転角速度を検出角速度ω2として算出し、検出角度θ2と検出角速度ω2とをモータ制御装置100に供給する。なお、エンコーダ20は、レゾルバまたは光学式エンコーダにより構成することができる。
トルクセンサ30は、モータ10の駆動トルクを検出して検出トルクT2を算出し、検出トルクT2をモータ制御装置100に供給する。なお、トルクセンサ30は、非接触トルクセンサ等の各種のセンサを用いることが可能である。
【0015】
モータ制御装置100は、モータ10の回転を制御するもので、主に、角度偏差算出部110と、角度制御部120と、角速度偏差算出部130と、角速度制御部140と、トルク偏差算出部150と、トルク制御部160とを備えている。
【0016】
モータ制御装置100は、以下に説明するように、指示角度θ1、検出角度θ2、検出角速度ω2、及び検出トルクT2に基づいてモータ10の駆動電流Imを生成し、モータ10の回転を制御する。
【0017】
角度偏差算出部110は、外部のコントローラから与えられる指示角度θ1と、エンコーダ20で得られた検出角度θ2とから、指示角度θ1と検出角度θ2との差分に相当する角度偏差Δθを算出する。なお、角度偏差算出部110は、θ1=θ2の場合に、角度偏差Δθとして0以外の一定の信号を出力するものであってもよい。
角度制御部120は、角度偏差算出部110において算出された角度偏差Δθから、モータ10における角度偏差Δθを解消するための指示角速度ω1を生成する。
【0018】
角速度偏差算出部130は、角度制御部120において生成された指示角速度ω1と、エンコーダ20で得られた検出角速度ω2とから、角速度偏差Δωを算出する。なお、角速度偏差算出部130は、ω1=ω2の場合に、角速度偏差Δωとして0以外の一定の信号を出力するものであってもよい。
角速度制御部140は、角速度偏差算出部130において算出された角速度偏差Δωから、モータ10における角速度偏差Δωを解消するための指示トルクT1を生成する。
【0019】
トルク偏差算出部150は、角速度制御部140において生成された指示トルクT1と、トルクセンサ30で得られた検出トルクT2とから、トルク偏差ΔTを算出する。なお、トルク偏差算出部150は、T1=T2の場合に、トルク偏差ΔTとして0以外の一定の信号を出力するものであってもよい。
トルク制御部160は、トルク偏差算出部150において算出されたトルク偏差ΔTに基づいて駆動電流Imを生成し、駆動電流Imをモータ10へ供給する。
【0020】
以上のように、モータ制御装置100は、モータ10の回転を制御する際に、指示トルクT1に対する検出トルクT2の変化であるトルク偏差ΔTを角加速度の推定値として制御に用いている。このため、モータのコギングトルク等の微小なトルク変動にも対処することができるという特徴を有している。
また、モータ制御装置100は、制御ループ内にトルクに基づくフィードバックループを含んでいるため、何らかの外乱トルクが加わったとしても、迅速に外乱トルクの影響を抑え込み、応答性の高い滑らかな制御をすることができるという特徴を有している。
【0021】
また、モータ制御装置100は、トルクセンサ30で実際に検出した検出トルクT2を用い、指示トルクT1に対する検出トルクT2の変化であるトルク偏差ΔTを角加速度の推定値として制御に用いているため、微分器により微分して算出した角加速度を用いる場合と比較して、制御系を複雑化させることなく、高い応答性で、高精度な制御をすることができるという特徴を有している。
【0022】
比較例1.
本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置100に対応する構成を比較例1として、
図2を参照して説明する。
図2は、比較例1としてのモータ制御装置100aの構成をモータ10と共に示す構成図である。なお、以下の比較例1において、実施の形態1と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1と対応するが異なる部分には符号の末尾に「a」を付している。
【0023】
図2において、エンコーダ20は、モータ10の回転を検出して検出角度θ2と検出角速度ω2とを算出し、検出角度θ2と検出角速度ω2とをモータ制御装置100aに供給する。
微分器40は、エンコーダ20により算出された検出角速度ω2を微分して、角加速度α2を算出し、角加速度α2をモータ制御装置100aに供給する。以下、微分により算出した角加速度α2を算出角加速度α2と呼ぶ。
【0024】
図2において、モータ制御装置100aは、主に、角度偏差算出部110と、角度制御部120と、角速度偏差算出部130と、角速度制御部140aと、角加速度偏差算出部150aと、角加速度制御部160aとを備えている。
【0025】
モータ制御装置100aは、以下に説明するように、指示角度θ1、検出角度θ2、検出角速度ω2、及び算出角加速度α2に基づいてモータ10の駆動電流Imを生成し、モータ10の回転を制御する。
【0026】
角度偏差算出部110は、外部のコントローラから与えられる指示角度θ1と、エンコーダ20において検出された検出角度θ2とから、指示角度θ1と検出角度θ2との差分に相当する角度偏差Δθを算出する。
角度制御部120は、角度偏差算出部110において算出された角度偏差Δθから、モータ10における角度偏差Δθを解消するための指示角速度ω1を生成する。
【0027】
角速度偏差算出部130は、角度制御部120において生成された指示角速度ω1と、エンコーダ20において検出された検出角速度ω2とから、角速度偏差Δωを算出する。
角速度制御部140aは、角速度偏差算出部130において算出された角速度偏差Δωから、モータ10における角速度偏差Δωを解消するための指示角加速度α1を生成する。
【0028】
角加速度偏差算出部150aは、角速度制御部140aにおいて生成された指示角加速度α1と、微分器40において算出された算出角加速度α2とから、角加速度偏差Δαを算出する。
角加速度制御部160aは、角加速度偏差算出部150aにおいて算出された角加速度偏差Δαに基づいて駆動電流Imを生成し、駆動電流Imをモータ10へ供給する。
【0029】
以上のように、比較例1では、モータ10を制御する際に、エンコーダ20により得られた検出角速度ω2を微分して算出角加速度α2を得るため、エンコーダ20に加えて微分器40を設置し、エンコーダ20の出力を微分器40に導く配線を設ける必要がある。
そして、実際に検出して得た検出角度θ2及び検出角速度ω2に加え、検出角速度ω2を微分器40で微分して得た算出角加速度α2を用いるため、制御系が複雑化する問題がある。
また、微分器40により検出角速度ω2を微分して算出角加速度α2を得ることは、検出角速度ω2の単位時間あたりの変化を算出することを意味しており、精度を高く保つことが難しい問題を有している。更に、微分により得た算出角加速度α2にノイズや計算誤差が含まれた場合、不要な制御が発生し、無駄な電力が消費されるという新たな問題も発生する可能性がある。
【0030】
比較例2.
次に、本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置100に対応する構成を比較例2として、
図3を参照して説明する。
図3は、比較例2としてのモータ制御装置100bの構成をモータ10と共に示す構成図である。
なお、以下の比較例2において、実施の形態1と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1と対応するが異なる部分には符号の末尾に「b」を付している。
【0031】
図3において、エンコーダ20は、モータ10の回転を検出して検出角度θ2と検出角速度ω2とを算出し、検出角度θ2と検出角速度ω2とをモータ制御装置100bに供給する。電流検出部50は、モータ10を流れる駆動電流Imを検出し、駆動電流Imの電流値I2をモータ制御装置100bに供給する。以下、電流値I2を検出電流値I2と呼ぶ。
【0032】
図3において、モータ制御装置100bは、主に、角度偏差算出部110と、角度制御部120と、角速度偏差算出部130と、角速度制御部140bと、電流偏差算出部150bと、電流制御部160bとを備えている。
【0033】
モータ制御装置100bは、以下に説明するように、指示角度θ1、検出角度θ2、検出角速度ω2、及び検出電流値I2に基づいてモータ10の駆動電流Imを生成し、モータ10の回転を制御する。
【0034】
角度偏差算出部110は、外部のコントローラから与えられる指示角度θ1と、エンコーダ20において検出された検出角度θ2とから、指示角度θ1と検出角度θ2との差分に相当する角度偏差Δθを算出する。
角度制御部120は、角度偏差算出部110において算出された角度偏差Δθから、モータ10における角度偏差Δθを解消するための指示角速度ω1を生成する。
【0035】
角速度偏差算出部130は、角度制御部120において生成された指示角速度ω1と、エンコーダ20において検出された検出角速度ω2とから、角速度偏差Δωを算出する。
角速度制御部140bは、角速度偏差算出部130において算出された角速度偏差Δωから、モータ10における角速度偏差Δωを解消するための指示電流値I1を生成する。
【0036】
電流偏差算出部150bは、角速度制御部140bにおいて生成された指示電流値I1と、電流検出部50において検出された検出電流値I2とから、電流偏差ΔIを算出する。
電流制御部160bは、電流偏差算出部150bにおいて算出された電流偏差ΔIに基づいて駆動電流Imを生成し、駆動電流Imをモータ10へ供給する。
【0037】
以上のように、比較例2では、モータ10を制御する際に、指示電流値I1に対する検出電流値I2の変化である電流偏差ΔIを角加速度の推定値として用いて制御しているため、電流偏差ΔIとして現れにくいモータのコギングトルク等の微小なトルク変動に対処することができないなど、応答性の高い制御をすることができない問題を有している。同様に、電流偏差ΔIを角加速度の推定値として用いて制御しているため、電流偏差ΔIとして現れにくい微細な外乱トルクにも対処することができないなど、応答性の高い制御をすることができない問題を有している。
【0038】
[実施の形態により得られる効果]
実施の形態1のモータ制御装置100によれば、エンコーダ20により検出された検出角度θ2及び検出角速度ω2、並びにトルクセンサ30により検出されたトルクT2に基づいて、モータ10の回転を制御するため、微分により得た算出角加速度α2を用いて制御する場合と比較して、制御系を複雑化することなく、ノイズや計算誤差等を起因とする不要な制御、及び不要な制御に伴う無駄な電力消費を回避し、高い応答性で、高精度な制御をすることが可能になる。
【0039】
また、実施の形態1のモータ制御装置100によれば、エンコーダ20により検出された検出角度θ2及び検出角速度ω2、並びにトルクセンサ30により検出されたトルクT2に基づいて、モータ10の回転を制御するため、指示電流値I1に対する検出電流値I2の変化である電流偏差ΔIを角加速度の推定値として用いて制御する場合と比較して、コギングトルクや外乱トルクにも対処しつつ、高い応答性で、高精度な制御をすることが可能になる。
【0040】
また、実施の形態1のモータ制御装置100によれば、モータ制御装置100の制御ループ内にトルクに基づくフィードバックループを含んでおり、何らかの外乱トルクが加わったとしても、迅速に外乱トルクの影響を抑え込み、応答性の高い滑らかな制御をすることが可能になる。
【符号の説明】
【0041】
10 モータ、20 エンコーダ、30 トルクセンサ、100 モータ制御装置、110 角度偏差算出部、120 角度制御部、130 角速度偏差算出部、140 角速度制御部、150 トルク偏差算出部、160 トルク制御部、Im 駆動電流、T1 指示トルク、T2 検出トルク、θ1 指示角度、θ2 検出角度、ω1 指示角速度、ω2 検出角速度、Δθ 角度偏差、Δω 角速度偏差、ΔT トルク偏差。