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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096249
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】治具
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/06 20060101AFI20230630BHJP
   C25D 17/08 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C25D17/06 H
C25D17/08 G
C25D17/08 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211869
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122622
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徳久
(72)【発明者】
【氏名】野口 尭彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 英志
(72)【発明者】
【氏名】粟野 和真
(57)【要約】
【課題】キャリアバーの摩耗を抑制し、部品の交換頻度を低減し得る治具の提供。
【解決手段】実施形態の治具は、プリント配線板を保持するための治具であって、キャリアバーと前記キャリアバーに対し略垂直に延びている第1脚部材と前記キャリアバーに対し略垂直に延びている第2脚部材とを備える。前記第1脚部材と前記第2脚部材で前記プリント配線板は保持されていて、前記キャリアバーの前記第1脚部材と前記第2脚部材が備えられる下面のうち少なくとも一部が保護部材で覆われている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と前記上面と反対側の下面とを有するキャリアバーと前記キャリアバーの前記下面から下方に延びている第1脚部材と前記キャリアバーの前記下面から下方に延びている第2脚部材と前記キャリアバーの前記下面のうち少なくとも一部に形成されている保護部材とを備えるプリント配線板を保持するための治具であって、前記第1脚部材と前記第2脚部材で前記プリント配線板は保持されていて、前記治具がめっき槽に浸漬される時、前記保護部材は前記めっき槽に接する。
【請求項2】
請求項1の治具であって、前記保護部材は板状部材である。
【請求項3】
請求項1の治具であって、前記保護部材は樹脂製である。
【請求項4】
請求項3の治具であって、前記保護部材はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製である。
【請求項5】
請求項1の治具であって、前記第1脚部材は前記キャリアバーの第1端部から延びており、前記第2脚部材は前記キャリアバーの前記第1端部と反対側の第2端部から延びている。
【請求項6】
請求項1の治具であって、前記第1脚部材と前記第2脚部材で前記プリント配線板の両端を挟むことによって前記プリント配線板は保持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、プリント配線板を保持するための治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ヘッダー部材とヘッダー部材の第1の端部から延在する第1の撓曲脚体とヘッダー部材の第2の端部から延在する第2の撓曲脚体とを有するワークピース保持具を開示している。ワークピース保持具は、第1の撓曲脚体に設けられるシールストリップと第2の撓曲脚体に設けられるシールストリップによってワークピースを保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-527473号公報
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
特許文献1の技術はワークピース保持具を用いてワークピースに電気メッキ膜を形成している。電気メッキ処理の際にヘッダー部材がメッキ槽の一部と干渉することが考えられる。ヘッダー部材が摩耗することが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の治具は、プリント配線板を保持するための治具であって、上面と前記上面と反対側の下面とを有するキャリアバーと前記キャリアバーの前記下面から下方に延びている第1脚部材と前記キャリアバーの前記下面から下方に延びている第2脚部材と前記キャリアバーの前記下面のうち少なくとも一部に形成されている保護部材とを備える。前記第1脚部材と前記第2脚部材で前記プリント配線板は保持されていて、前記治具がめっき槽に浸漬される時、前記保護部材は前記めっき槽に接する。
【0006】
本発明の実施形態の治具は、キャリアバーの下面に保護部材を有する。保護部材を介して、治具はめっき槽に載せられる。そのため、キャリアバーの下面の摩耗が抑制される。治具の変形が抑制される。治具の部品の交換頻度が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の治具と治具で保持しているプリント配線板を模式的に示す斜視図。
図2】実施形態の治具と治具で保持しているプリント配線板を模式的に示す正面図。
図3】実施形態の治具を模式的に示す上面図。
図4】実施形態の治具を模式的に示す右側面図。
図5】第2脚部材の第2保持機構と第2保持機構で挟まれているプリント配線板を模式的に示す説明図。
図6】実施形態の治具とガイド部材を有するめっき槽を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
図1図4は実施形態の治具2を模式的に示す。図1は斜視図であり、図2は正面図であり、図3は上面図であり、図4は右側面図である。実施形態の治具2は、プリント配線板4の両端を両面から保持する。プリント配線板4を保持している治具2をめっき槽に設置することで、プリント配線板4に電解めっきが施される。
【0009】
図1に示されるように、治具2はキャリアバー10と第1脚部材21と第2脚部材22とを有する。キャリアバー10は上面10Aと上面10Aと反対側の下面10Bを有する。第1脚部材21は下面10Bから下方に延びている。第1脚部材21はキャリアバー10に対し略垂直に延びている。第2脚部材22は下面10Bから下方に延びている。第2脚部材22はキャリアバー10に対し略垂直に延びている。プリント配線板4は第1脚部材21と第2脚部材22で保持される。
【0010】
キャリアバー10は細長に形成されている。キャリアバー10の表面は樹脂製の被膜で覆われている。図1図3に示されるように、キャリアバー10の上面10Aには、2個の搬送部14が形成されている。治具2は、搬送部14を介し、図示しない搬送装置によって搬送される。
【0011】
キャリアバー10の下面10Bに保護部材61、62が形成されている。保護部材(保護プレート)61、62は下面10Bのうち少なくとも一部に形成されている。保護部材61は第1保護部材(第1保護プレート)61であり、保護部材62は第2保護部材(第2保護プレート)62である。第1保護プレート61は下面10Bの一部を覆っている。第2保護プレート62は下面10Bの一部を覆っている。保護プレート61、62は下面10Bの全てを覆っていない。第1保護プレート61と第2保護プレート62間の面は下面10Bである。実施形態では、保護部材61、62は開口を有する。第1脚部材21は第1保護部材61の開口(第1開口)により露出される下面10Bから延びている。第2脚部材22は第2保護部材62の開口(第2開口)により露出される下面10Bから延びている。第1保護プレート61と第2保護プレート62は板状部材である。第1保護プレート61と第2保護プレート62は樹脂で形成されている。樹脂の例はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。
【0012】
第1保護プレート61は第1脚部材21の周りの下面10Bを覆っている。第2保護プレート62は第2脚部材22の周りの下面10Bを覆っている。治具2がめっき槽70に浸漬される時、保護部材61、62はめっき槽70に接する(図6参照)。キャリアバー10が直接めっき槽70に接しない。治具2は第1保護プレート61と第2保護プレート62を介しめっき槽70上に載せられる。
【0013】
図1図2に示されるように、第1脚部材21はキャリアバー10の第1端部11から延びている。第1脚部材21はキャリアバー10の下面10Bに対して略垂直に延びている。第1脚部材21は細長に形成されている。第1脚部材21はプリント配線板4の一方の端部を保持するための第1保持機構31を有している。第1保持機構31は第1脚部材21の長さに沿って設けられる。第1脚部材21の端部(下端)は第1カバー部材41で覆われている。
【0014】
図1図2図4に示されるように、第2脚部材22はキャリアバー10の第1端部11と反対側の第2端部12から延びている。第2脚部材22はキャリアバー10の下面10Bに対して略垂直に延びている。第2脚部材22は細長に形成されている。第2脚部材22はプリント配線板4の他方の端部を保持するための第2保持機構32を有している。第2保持機構32は第2脚部材22の長さに沿って設けられる。第2脚部材22の端部(下端)は第2カバー部材42で覆われている。
【0015】
図5は第2保持機構32と第2保持機構32で挟まれているプリント配線板4を模式的に示す。第2保持機構32はプリント配線板4の端部を保持する。図5に示されるように、第2保持機構32は一対の可撓性部材52A、52Bを有する。可撓性部材52A、52Bは可撓性を有する絶縁性部材で形成されている。可撓性部材52A、52Bは導電性部材を内蔵している。可撓性部材52A、52Bによってプリント配線板4の端部の両面を挟むことで、プリント配線板4の端部が保持される。可撓性部材52A、52Bの先端の内側から導電性の接点54A、54Bが露出する。接点54A、54Bは可撓性部材52A、52Bに内蔵される導電性部材と接続されている。プリント配線板4の端部が保持されると、接点54A、54Bはプリント配線板4の表面の導電層(シード層)と接触する。このため第2脚部材22を介してプリント配線板4の導電層(シード層)に電流を流すことができる。
【0016】
第1保持機構31の構成と図5の第2保持機構32の構成は同じである。第1保持機構31と第2保持機構32は同じ方法でプリント配線板4を挟む。
【0017】
図6は実施形態の治具2とめっき槽70を示す。図6はめっき槽70の上部のみを示している。めっき槽70の内壁には治具2の第1脚部材21をガイドする第1ガイド部材71と第2脚部材22をガイドする第2ガイド部材72が設けられている。第1ガイド部材71と第2ガイド部材72は対向している。
【0018】
第1ガイド部材71は第1ガイドブロック71Aと第1ガイドレール71Bを備える。第1ガイドブロック71Aはめっき槽70の上側に設けられる。第1ガイドブロック71Aは第1脚部材21をめっき槽70内に導くための溝を有するブロック部材である。第1ガイドレール71Bは第1ガイドブロック71Aの下方に設けられる。第1ガイドレール71Bは第1脚部材21をめっき槽70内に導く。
【0019】
第2ガイド部材72は第2ガイドブロック72Aと第2ガイドレール72Bを備える。第2ガイドブロック72Aはめっき槽70の上側に設けられる。第2ガイドブロック72Aは第2脚部材22をめっき槽70内に導くための溝を有する。第2ガイドレール72Bは第2ガイドブロック72Aの下方に設けられる。第2ガイドレール72Bは第2脚部材22をめっき槽70内に導く。
【0020】
実施形態の治具2を用いてプリント配線板4に電解めっきが形成される時、以下の工程が行われる。治具2の第1脚部材21と第2脚部材22によってプリント配線板4の両端が挟まれる。これにより、プリント配線板4は治具2によって保持される。搬送装置は、治具2を持つ。搬送装置は図示されていない。搬送装置は治具2をめっき槽70の上方まで搬送する。搬送装置は治具2で保持されているプリント配線板4をめっき槽70のめっき液内に浸漬する。この際、第1脚部材21は下端の第1カバー部材41から順に第1ガイドブロック71Aの溝と第1ガイドレール71Bの溝にガイドされる。第2脚部材22は下端の第2カバー部材42から順に第2ガイドブロック72Aの溝と第2ガイドレール72Bの溝にガイドされる。これにより、治具2がめっき槽70に設置される。第1脚部材21は第1ガイド部材71によってめっき槽70内に保持される。第2脚部材22は第2ガイド部材72によってめっき槽70内に保持される。
【0021】
この時、第1保護プレート61は第1ガイドブロック71Aの上面に接触し、第2保護プレート62は第2ガイドブロック72Aの上面に接触する。そのため、キャリアバー10の下面10Bが第1ガイドブロック71A、第2ガイドブロック72Aと直接干渉しない。キャリアバー10は保護プレート61、62を介し第1ガイドブロック71Aと第2ガイドブロック72A上に載せられる。これにより、プリント配線板4はめっき液内に浸漬される。搬送装置は治具2を放す。
【0022】
第1脚部材21と第1保持機構31と第2脚部材22と第2保持機構32を介してプリント配線板4表面の導電層(シード層)に電流が流される。プリント配線板4に電解めっきが施される。電解めっき処理の終了後、搬送装置は再び治具2を持つ。搬送装置は治具2を次の作業位置に搬送する。
【0023】
実施形態では、PEEK製の第1保護プレート61と第2保護プレート62がキャリアバー10の下面10Bを部分的に覆っている。すなわち第1保護プレート61と第2保護プレート62で覆われている部分はめっき槽70の一部と接触する部分である(図6)。電解めっきが形成される時、キャリアバー10の下面が第1ガイドブロック71A、第2ガイドブロック72Aと直接、接しない。キャリアバー10が、直接、めっき槽70に接しない。キャリアバー10の摩耗が抑制される。キャリアバー10の変形が抑制される。治具2の部品の交換頻度が低減される。キャリアバー10の変形が抑制されるため、搬送装置による治具2の係止高さ(係止位置)が変わることも抑制される。搬送装置による治具2の搬送に不具合が生じることが抑制される。
【0024】
[実施形態の別例1]
実施形態の別例1では、第1保護プレート61と第2保護プレート62は樹脂以外の素材で形成されている。例えば第1保護プレート61と第2保護プレート62は金属、木、竹などで形成される。
【0025】
[実施形態の別例2]
実施形態の別例2では、キャリアバー10の下面10Bに板状以外の形状の保護部材が備えられる。例えば、多角柱状、球状、環状等の保護部材が備えられる。
【0026】
[実施形態の別例3]
実施形態の別例3では、第1保護プレート61は第1脚部材21から離れている。第1保護プレート61は第1脚部材21の周りに形成されていない。第1保護プレート61と第1脚部材21間に下面10Bが存在する。第2保護プレート62は第2脚部材22から離れている。第2保護プレート62は第2脚部材22の周りに形成されていない。第2保護プレート62と第2脚部材22間に下面10Bが存在する。
【0027】
[実施形態の別例4]
実施形態の別例4では、第1脚部材21と第2脚部材22から露出するキャリアバー10の下面10Bが保護部材で完全に覆われる。
【0028】
[実施形態の別例5]
実施形態の別例5では、第1脚部材21と第2脚部材22は、キャリアバー10の端部以外の部分から延びている。
【符号の説明】
【0029】
2:治具
4:プリント配線板
10:キャリアバー
10B:下面
11:第1端部
12:第2端部
21:第1脚部材
22:第2脚部材
61:第1保護プレート
62:第2保護プレート
70:めっき槽
71:第1ガイド部材
72:第2ガイド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6