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特開2023-96269異物除去システム、異物回収装置、及び異物除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096269
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】異物除去システム、異物回収装置、及び異物除去方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230630BHJP
   G05D 1/10 20060101ALI20230630BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20230630BHJP
   G01V 8/10 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/10
G01V3/12 A
G01V8/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211893
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄斗
【テーマコード(参考)】
2G105
5H301
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB14
2G105BB15
2G105BB17
2G105CC01
2G105DD01
2G105DD02
2G105EE02
2G105HH05
2G105JJ05
2G105KK06
5H301AA01
5H301AA06
5H301BB10
5H301CC03
5H301CC04
5H301CC06
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD05
5H301DD17
5H301GG08
5H301GG09
5H301KK18
5H301KK19
(57)【要約】
【課題】レーダー装置により検知された異物の回収に要する時間及び人員を削減できるようにする。
【解決手段】異物回収装置300は、レーダー装置100により検知された物体が異物と判定される場合に、物体の位置情報に基づいて物体が存在する場所まで移動し、物体の回収を行う。その後、異物回収装置300は、物体の回収が完了したことを示す異物回収通知をレーダー監視装置200へ送信する。レーダー監視装置200は、異物回収通知の受信後に、レーダー装置100により検出範囲R内から物体を検知できなくなったことが確認された場合に、物体の回収が確認されたことを示す回収確認通知を異物回収装置300へ送信する。異物回収装置300は、回収確認通知の受信後に、その場から撤退する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検出範囲内に存在する物体を検知するレーダー装置と、
前記レーダー装置を制御するレーダー監視装置と、
前記レーダー装置により検知された前記物体が異物と判定される場合に、前記物体の位置情報に基づいて前記物体が存在する場所まで移動し、前記物体の回収を行う異物回収装置とを備え、
前記異物回収装置は、前記物体を回収した後に、前記物体の回収が完了したことを示す異物回収通知を前記レーダー監視装置へ送信し、
前記レーダー監視装置は、前記異物回収通知の受信後に、前記レーダー装置により前記検出範囲内から前記物体を検知できなくなったことが確認された場合に、前記物体の回収が確認されたことを示す回収確認通知を前記異物回収装置へ送信し、
前記異物回収装置は、前記回収確認通知の受信後に、その場から撤退することを特徴とする異物除去システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異物除去システムにおいて、
前記レーダー装置により検知された前記物体の位置情報に基づいて、前記物体の撮影を行うカメラ装置を更に備え、
前記異物回収装置は、前記カメラ装置により撮影された画像を受信し、当該画像に写っている前記物体が異物か否かを判定することを特徴とする異物除去システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の異物除去システムにおいて、
前記異物回収装置は、前記物体を回収する前に、その場で前記物体の撮影を行い、前記物体を回収した後に、その場で撮影した前記物体の画像を前記レーダー監視装置へ送信することを特徴とする異物除去システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の異物除去システムにおいて、
前記レーダー監視装置は、前記物体の位置情報を定期的に取得して前記異物回収装置へ送信し、
前記異物回収装置は、前記レーダー監視装置から定期的に受信する前記物体の位置情報に基づいて、前記物体が存在する場所まで移動することを特徴とする異物除去システム。
【請求項5】
所定の検出範囲内に存在する物体を検知するレーダー装置の制御を行うレーダー監視装置と通信する異物回収装置であって、
前記レーダー装置により検知された前記物体が異物と判定される場合に、前記物体の位置情報に基づいて前記物体が存在する場所まで移動し、前記物体を回収した後に、前記物体の回収が完了したことを示す異物回収通知を前記レーダー監視装置へ送信し、前記物体の回収が確認されたことを示す回収確認通知を前記レーダー監視装置から受信した後に、その場から撤退することを特徴とする異物回収装置。
【請求項6】
レーダー装置が、レーダー監視装置の制御の下、所定の検出範囲内に存在する物体を検知し、
異物回収装置が、前記レーダー装置により検知された前記物体が異物と判定される場合に、前記物体の位置情報に基づいて前記物体が存在する場所まで移動し、前記物体を回収した後に、前記物体の回収が完了したことを示す異物回収通知を前記レーダー監視装置へ送信し、
前記レーダー監視装置が、前記異物回収通知の受信後に、前記レーダー装置により前記検出範囲内から前記物体を検知できなくなったことが確認された場合に、前記物体の回収が確認されたことを示す回収確認通知を前記異物回収装置へ送信し、
前記異物回収装置が、前記回収確認通知の受信後に、その場から撤退することを特徴とする異物除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダー装置により検出された異物を除去する異物除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波やミリ波帯などを用いたレーダー装置として、例えば、図1のような構造のFMCW(Frequency Modulated Continuous-Wave)レーダー装置がある。
図1のレーダー装置100は、FMCW送信源101からの周波数変調されたレーダー信号を、送信電力増幅器103で増幅し、送信アンテナ104から発射する。レーダー装置100の検出範囲内に物体T(反射物)が存在する場合には、レーダー送信波が物体Tで反射される。物体Tからの反射波は、レーダー装置100の受信アンテナ105で受信され、受信電力増幅器106で増幅された後、電力分配器102からの送信レーダー信号成分と混合器107によってミキシングされ、IF信号に変換される。混合器107から出力されたIF信号は、信号処理部108でA/D変換及び信号処理される。その結果として、物体Tによる反射受信電力(反射波電力)、物体Tまでの距離、物体Tの方位、また、物体Tが移動している場合の速度(レーダー装置100に対する相対速度)等のレーダー検出結果が得られる。
【0003】
本発明に係る技術分野の従来技術としては、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、検出装置が、落下物の位置情報を検出して物体捜索装置に送信し、物体捜索装置が、落下物の位置情報と、自身の位置情報とに基づいて、落下物の位置情報を、特定表示(矢印や波状形状等)で拡張現実空間上に表示する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/065045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーダー装置の用途として、道路や滑走路などの路面上に存在する物体を検出する用途がある。例えば、空港の滑走路上の異物を検知するシステムでは、複数のレーダー装置を滑走路に沿って並べて配置したリニアセルレーダーシステムが採用されている。
【0006】
従来、空港の滑走路における異物の発見・回収は、図2のような手順で実施される。すなわち、(1)滑走路上の物体を検知するために、レーダー装置により滑走路面を走査する。その結果、(2)レーダー装置により何らかの物体が検知されると、(3)管制塔のモニタに物体の検知情報が表示される。(4)モニタの表示を見た監視員は、その物体が異物(除去すべき物体)かを判断した後に、作業員に異物の回収の指示を出す。(5)指示を受けた作業員は、現場に赴いて異物を回収し、(6)作業内容を記録に残す。
【0007】
このように、異物の発見・回収を行うための人員として、管制塔で異物か否かを判断して回収の指示を出す監視員と、指示に従って実際に異物を回収する作業員とが存在していた。この場合、管制塔で監視員が一度確認した後に作業員に回収の指示を出すので、回収するまでに時間が掛かっていた。また、監視員と作業員とを配備するために、多くの人員を必要としていた。
【0008】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、レーダー装置により検知された異物の回収に要する時間及び人員を削減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る異物除去システムは、以下のように構成される。すなわち、本発明に係る異物除去システムは、所定の検出範囲内に存在する物体を検知するレーダー装置と、レーダー装置を制御するレーダー監視装置と、レーダー装置により検知された物体が異物と判定される場合に、物体の位置情報に基づいて物体が存在する場所まで移動し、物体の回収を行う異物回収装置とを備え、異物回収装置は、物体を回収した後に、物体の回収が完了したことを示す異物回収通知をレーダー監視装置へ送信し、レーダー監視装置は、異物回収通知の受信後に、レーダー装置により検出範囲内から物体を検知できなくなったことが確認された場合に、物体の回収が確認されたことを示す回収確認通知を異物回収装置へ送信し、異物回収装置は、回収確認通知の受信後に、その場から撤退することを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明に係る異物除去システムにおいて、レーダー装置により検知された物体の位置情報に基づいて、物体の撮影を行うカメラ装置を更に備え、異物回収装置は、カメラ装置により撮影された画像を受信し、当該画像に写っている物体が異物か否かを判定するように構成され得る。
【0011】
また、本発明に係る異物除去システムにおいて、異物回収装置は、物体を回収する前に、その場で物体の撮影を行い、物体を回収した後に、その場で撮影した物体の画像をレーダー監視装置へ送信するように構成され得る。
【0012】
また、本発明に係る異物除去システムにおいて、レーダー監視装置は、物体の位置情報を定期的に取得して異物回収装置へ送信し、異物回収装置は、レーダー監視装置から定期的に受信する物体の位置情報に基づいて、物体が存在する場所まで移動するように構成され得る。
【0013】
また、本発明の別の態様に係る異物回収装置は、以下のように構成される。すなわち、本発明に係る異物回収装置は、所定の検出範囲内に存在する物体を検知するレーダー装置の制御を行うレーダー監視装置と通信する異物回収装置であって、レーダー装置により検知された物体が異物と判定される場合に、物体の位置情報に基づいて物体が存在する場所まで移動し、物体を回収した後に、物体の回収が完了したことを示す異物回収通知をレーダー監視装置へ送信し、物体の回収が確認されたことを示す回収確認通知をレーダー監視装置から受信した後に、その場から撤退することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の更に別の態様に係る異物除去方法は、以下のように構成される。すなわち、本発明に係る異物除去方法は、レーダー装置が、レーダー監視装置の制御の下、所定の検出範囲内に存在する物体を検知し、異物回収装置が、レーダー装置により検知された物体が異物と判定される場合に、物体の位置情報に基づいて物体が存在する場所まで移動し、物体を回収した後に、物体の回収が完了したことを示す異物回収通知をレーダー監視装置へ送信し、レーダー監視装置が、異物回収通知の受信後に、レーダー装置により検出範囲内から物体を検知できなくなったことが確認された場合に、物体の回収が確認されたことを示す回収確認通知を異物回収装置へ送信し、異物回収装置が、回収確認通知の受信後に、その場から撤退することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レーダー装置により検知された異物の回収に要する時間及び人員を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】レーダー装置の構成例を示す図である。
図2】従来の異物発見・回収の手順を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る異物除去システムの概要を示す図である。
図4図3の異物除去システムによる異物発見・回収の手順を示す図である。
図5図3の異物除去システムにおける異物回収装置の構成例を示す図である。
図6図3の異物除去システムによる異物回収の処理フロー例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図3には、本発明の一実施形態に係る異物除去システムの概要を示してある。本例の異物除去システムは、滑走路などの所定の検出範囲Rに向けて設置されたレーダー装置100およびカメラ装置120と、管制塔内の制御室や監視室などに設置されたレーダー監視装置200および表示装置220と、自動走行するロボットである異物回収装置300とを備えている。図3では、レーダー装置100およびカメラ装置120を各1台のみ示しているが、複数台のレーダー装置100およびカメラ装置120を配備してもよい。
【0018】
レーダー装置100は、検出範囲Rに対して送信したレーダー送信波の反射波を受信し、信号処理した結果をレーダー監視装置200に出力する。レーダー監視装置200は、レーダー装置100から出力されたデータに基づいて、検出範囲R内に存在する物体(落下物や放置物などの異物X)の位置情報を表示装置220に表示させる。レーダー監視装置200は更に、レーダー装置100により検知された物体を撮影するように、その位置情報に基づいてカメラ装置120を制御し、撮影された画像を表示装置220に表示させる。これにより、表示装置220の表示を見た監視員は、レーダー装置100により検知された物体の位置及びその外観を確認することが可能である。
【0019】
レーダー装置100により検知された物体の位置情報は、レーダー装置100の設置位置の座標(例えば、緯度・経度情報)と、レーダー装置100に対する物体の距離及び角度(方位)とに基づいて算出することができる。レーダー装置100から物体までの距離は、例えば、物体からの反射波の受信強度に基づいて算出することができる。また、レーダー装置100に対する物体の角度は、レーダー装置100のアンテナが機械的に回転している場合は、物体を検知した時点のアンテナの回転角度情報に基づいて特定することができ、或いは、レーダー装置100のアンテナから発射するレーダー送信波のビームの角度が電子的に走査されている場合は、物体を検知した時点のビームの走査角度情報に基づいて特定することができる。
【0020】
従来は、表示装置220の表示を見た監視員が、検出範囲R内における物体の存在を確認し、その物体が回収すべき異物であると判断した場合に、作業員に対して回収指示を出していた。これに対し、本例の異物除去システムでは、異物か否かの判断から回収するまでの一連の流れを、1台のロボット(異物回収装置300)で行うように構成されている。つまり、図4に示すように、(1)滑走路上の物体を検知するために、レーダー装置100により滑走路面を走査する。その結果、(2)レーダー装置100により何らかの物体が検知されると、カメラ装置120により撮影が行われ、その画像がレーダー監視装置200を通じて異物回収装置300に送信される。(3)異物回収装置300は、受信した画像に基づいて、検知された物体が異物かを判断した後に、(4)異物の場所まで自動的に移動し、異物を回収する。
【0021】
図5には、異物か否かの判断および回収を自動的に実施する異物回収装置300の構成例を示してある。本例の異物回収装置300は、自動走行する車両型のロボットを想定しているが、ドローン等の無人航空機を使用してもよい。異物回収装置300は、図5に示すように、無線送受信機301と、GPS(Global Positioning System)受信機302と、走行制御部303と、異物判別部304と、異物回収機305と、カメラ306と、制御部307とを備えている。
【0022】
無線送受信機301は、レーダー監視装置200との間で無線によるデータの送受信を行う。無線送受信機301は、例えば、レーダー装置100により検知された物体の位置情報や、カメラ装置120により撮影された画像などのデータを、レーダー監視装置200から受信する。無線送受信機301はまた、後述する各種の通知をレーダー監視装置200へ送信する。
【0023】
GPS受信機302は、GPS衛星からの電波を受信して、異物回収装置300の現在の位置情報(例えば、緯度・経度情報)を取得する。走行制御部303は、異物回収装置300の走行を自律的に制御する。より具体的には、走行制御部303は、回収すべき物体(異物)の位置情報と、異物回収装置300の現在の位置情報とに基づいて、目的の物体が存在する場所への方向及び距離を定期的に算出し、その場所に向かって異物回収装置300を移動させる。
【0024】
異物判別部304は、カメラ装置120による画像に基づいて、レーダー装置100により検知された物体が異物か否かを判別する。異物判別部304は、例えば、AI(Artificial Intelligence)技術を用いて実現してもよい。すなわち、異物判別部304は、機械学習によって事前にモデリングされたデータ(学習モデル)を用いたAI分析により、画像に写っているものが異物か否かを判定することが可能である。
【0025】
異物回収機305は、異物が存在する場所まで異物回収装置300が移動した後に作動し、滑走路面から異物を回収する。カメラ306は、異物回収機305による異物の回収を実行する前に、その場で異物の撮影を行う。カメラ306により撮影された異物の画像は、異物の回収が完了した後に、異物回収通知と共にレーダー監視装置200へ送信される。異物回収機305およびカメラ306は、例えば、異物回収装置300の下面に取り付けられる。制御部307は、異物回収装置300の各部(301~306)の動作を統括的に制御する。
【0026】
本例の異物除去システムによる異物回収の流れについて、図6の処理フロー例を参照して説明する。
レーダー監視装置200は、滑走路の走査を周期的に繰り返すようにレーダー装置100を制御しており(ステップS11)、滑走路上に存在する物体が検知された場合には、その物体の位置情報に基づいてカメラ装置120を制御して、検知された物体の撮影を実行させる(ステップS12)。カメラ装置120により撮影された画像は、レーダー監視装置200を通じて異物回収装置300に送信される(ステップS13)。このタイミングで、物体の位置情報も異物回収装置300へ送信しておいても構わない。
【0027】
異物回収装置300は、カメラ装置120により撮影された画像を受信すると、異物判別部304により、その画像に写っているものが異物であるかを判定する(ステップS14)。その結果、異物でないと判定された場合には(ステップS14;No)、異物回収装置300は、異物でなかったことを示す非異物通知をレーダー監視装置200へ送信する。レーダー監視装置200は、異物回収装置300から非異物通知を受信すると、検知された物体が異物ではない旨の情報を、表示装置220に表示させる。
【0028】
一方、カメラ装置120により撮影された画像に映っているものが異物であると判定された場合には(ステップS14;Yes)、異物回収装置300は、以下のような回収行動を開始する。異物回収装置300はまず、レーダー監視装置200から物体の位置情報を受け取り、物体の位置情報に基づいて、走行制御部303による制御の下、その物体が存在する場所(現場)に向かって移動する(ステップS15)。滑走路内の移動可能なルートが予め決められている場合には、そのルートから外れないように移動する。なお、検知された物体が風等によって移動する可能性もあるため、物体の位置情報を定期的に取得し直して、異物回収装置300の移動方向を適宜補正するようにしてもよい。
【0029】
その後、異物回収装置300は現場に到着すると、その場所に異物が実際に存在しているかを判定する(ステップS16)。現場に異物が実際に存在しているか否かは、例えば、現場の様子を車載のカメラ306により撮影を行って画像解析することで、判定することが可能である。
【0030】
その結果、現場に異物が存在しないと判定された場合には(ステップS16;No)、異物回収装置300は、現場に異物が存在していなかったことを示す異物非存在通知をレーダー監視装置200へ送信し、元の位置に戻る。異物回収装置300から異物非存在通知を受信すると、現場に異物が存在していなかった旨の情報を、表示装置220に表示させる。なお、異物が検知されたにもかかわらず現場に存在しない状況としては、例えば、異物回収装置300が移動する間に風によって異物が滑走路から自然に取り除かれた場合などが挙げられる。
【0031】
一方、現場に異物が存在していると判定された場合には(ステップS16;Yes)、異物回収装置300は、車載のカメラ306により異物を撮影した後に、異物回収機305を動作させて異物の回収を行う(ステップS17)。その後、異物回収装置300は、異物の回収が完了したことを示す異物回収通知を、現場で異物を撮影した回収物画像と共に、レーダー監視装置200へ送信する。レーダー監視装置200は、異物回収装置300から異物回収通知を受信すると、滑走路に存在していた異物をレーダー装置100により検知できなくなったかの確認を行う。その結果、滑走路に存在していた異物を検知できなくなったこと(つまり、異物が回収されたこと)の確認が取れた場合に、レーダー監視装置200は、異物の回収が確認されたことを示す回収確認通知を異物回収装置300へ送信する。異物回収装置300は、レーダー監視装置200から回収確認通知を受信した後に、元の場所に戻る(ステップS18)。
【0032】
以上のように、本例の異物除去システムは、所定の検出範囲R内に存在する物体を検知するレーダー装置100と、レーダー装置100を制御するレーダー監視装置200と、レーダー装置100により検知された物体が異物と判定される場合に、物体の位置情報に基づいて物体が存在する場所まで移動し、物体の回収を行う異物回収装置300とを備える。異物回収装置300は、物体を回収した後に、物体の回収が完了したことを示す異物回収通知をレーダー監視装置200へ送信する。レーダー監視装置200は、異物回収通知の受信後に、レーダー装置100により検出範囲R内から物体を検知できなくなったことが確認された場合に、物体の回収が確認されたことを示す回収確認通知を異物回収装置300へ送信する。異物回収装置300は、回収確認通知の受信後に、その場から撤退する。
【0033】
このような構成によれば、レーダー装置により検出された異物の除去を、人手を介さずに、自動的に行うことができる。したがって、異物の回収に要する時間及び人員を大幅に削減することが可能となる。
【0034】
また、本例の異物除去システムでは、異物回収装置300が、物体を回収する前に、その場で物体の撮影を行い、物体を回収した後に、その場で撮影した物体の画像をレーダー監視装置200へ送信する。したがって、異物回収装置300によって実際に回収された物体の画像を記録として残すことができる。また、例えば、異物回収装置300によって撮影された物体の画像を表示装置220に表示することで、実際に回収された物体を監視者に確認させることも可能である。
【0035】
また、本例の異物除去システムでは、レーダー監視装置200が、物体の位置情報を定期的に取得して異物回収装置300へ送信し、異物回収装置300は、レーダー監視装置200から定期的に受信する物体の位置情報に基づいて、物体が存在する場所まで移動する。したがって、物体が風等によって移動するような場合にも、異物回収装置300の移動方向を適宜補正できるので、物体が存在する場所まで確実に移動できるようになる。
【0036】
なお、本例の異物除去システムでは、異物回収装置300が、レーダー装置100により検知された物体が異物か否かを、カメラ装置120により撮影された画像に基づいて判定しているが、このような判定を他の装置(例えば、レーダー監視装置200)が実行してもよい。
【0037】
また、異物回収装置300による判定結果を表示装置220に表示して、監視員に確認させるようにしてもよい。この場合、異物回収装置300の判定が誤っていると監視員が判断した場合には、異物回収装置300の動作を訂正するようにしてもよい。すなわち、異物回収装置300に回収行動を開始させる指示、或いは、異物回収装置300の回収行動を取り消す指示を監視員から受け付ける操作部を設け、これら指示を受け付けたことに応じて、レーダー監視装置200を通じて異物回収装置300に制御信号を出すようにしてもよい。
【0038】
ここで、上記の説明では、1台のカメラ装置120により特定の方向から撮影された1枚の画像に基づいて、レーダー装置100により検知された物体が異物か否かを判定しているが、複数台のカメラ装置120により異なる方向から撮影された複数の画像を判定に用いてもよい。これにより、レーダー装置100により検知された物体が異物か否かをより正確に判定できるようになる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0040】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、レーダー装置により検出された異物を除去する異物除去システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
100:レーダー装置、 101:FMCW送信源、 102:電力分配器、 103:送信電力増幅器、 104:送信アンテナ、 105:受信アンテナ、 106:受信電力増幅器、 107:混合器、 108:信号処理部、 120:カメラ装置、 200:レーダー監視装置、 220:表示装置、 300:異物回収装置、 301:無線送受信機、 302:GPS受信機、 303:走行制御部、 304:異物判別部、 305:異物回収機、 306:カメラ、 307:制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6