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  • 特開-舗装構造 図1
  • 特開-舗装構造 図2
  • 特開-舗装構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009627
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】舗装構造
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/24 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
E01C11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113066
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 匡史
(72)【発明者】
【氏名】二木 隆
(72)【発明者】
【氏名】島崎 勝
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 清隆
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA01
2D051AA02
2D051AB02
2D051AF01
2D051AG01
(57)【要約】
【課題】路面からの雨水の溢流を抑制できる舗装構造を提供する。
【解決手段】横断方向に傾斜した路面の舗装構造1であって、遮水層10と、遮水層10の上に敷設された排水層20と、を備え、遮水層10の上面の横断勾配は、排水層20の表面の横断勾配よりも大きいことを特徴とする。排水層20は、遮水層10の上に敷設された基層排水層21と、基層排水層21の上に敷設され基層排水層21よりも透水係数が大きい表層排水層22と、を備え、基層排水層21は、横断勾配の下側に向かうに連れて層厚が大きくなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断方向に傾斜した路面の舗装構造であって、
遮水層と、前記遮水層の上に敷設された排水層と、を備え、
前記遮水層の上面の横断勾配は、前記排水層の表面の横断勾配よりも大きい
ことを特徴とする舗装構造。
【請求項2】
前記排水層は、前記遮水層の上に敷設された基層排水層と、前記基層排水層の上に敷設され前記基層排水層よりも透水係数が大きい表層排水層と、を備え、
前記基層排水層は、横断勾配の下側に向かうに連れて層厚が大きくなる
ことを特徴とする請求項1に記載の舗装構造。
【請求項3】
オートレース場のトラックに使用され、
前記トラックの外周側から内周側に向かって低くなるように傾斜している
ことを特徴とする請求項2に記載の舗装構造。
【請求項4】
前記トラックの内周側には排水溝が設けられ、
前記排水溝に繋がる前記遮水層の下流側端部に面取り部が形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の舗装構造。
【請求項5】
前記基層排水層は、前記トラックの幅方向のうち内周側の一部に敷設されている
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の舗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オートレース場のトラックに用いられる舗装構造としては、遮水性を有する遮水層と、遮水層の上に敷設された透水層とを備え、トラックの内側に雨水等が流れるように水勾配が形成された構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の舗装構造では、透水層の内部に、透水層の透水係数よりも大きい透水係数をもつ複数の透水路が、走路を横断する方向に形成されている。透水層は、水勾配の上流側から下流側に向かって一定の厚さ寸法で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-177551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の舗装構造では、雨天時に雨水が透水層および透水路を流れて水勾配の下流側であるトラックの内側に流れるが、降水量が多い場合には、トラックの内側において流水量が排水能力を超えてしまい、路面から雨水が溢れるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、路面からの雨水の溢流を抑制できる舗装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明は、横断方向に傾斜した路面の舗装構造であって、遮水層と、前記遮水層の上に敷設された排水層と、を備え、前記遮水層の上面の横断勾配は、前記排水層の表面の横断勾配よりも大きいことを特徴とする。
本発明の舗装構造によれば、排水層の層厚が下流側に向かうに連れて大きくなるので、雨水が集まる勾配の下流側の排水能力が大きくなる。したがって、路面からの雨水の溢流を抑制することができる。
【0007】
本発明の舗装構造においては、前記排水層は、前記遮水層の上に敷設された基層排水層と、前記基層排水層の上に敷設され前記基層排水層よりも透水係数が大きい表層排水層と、を備え、前記基層排水層は、横断勾配の下側に向かうに連れて層厚が大きくなるものが好ましい。なお、透水係数は舗装試験法便覧の「透水性アスファルト混合物の透水試験方法」に準拠する。このような構成によれば、路面の表層に空隙率が大きく水が流れやすい表層排水層が形成されるので、水流が水路となる基層排水層に流れやすく、路面からの溢流を効率的に抑制できる。
【0008】
本発明の舗装構造においては、オートレース場のトラックに使用され、前記トラックの外周側から内周側に向かって低くなるように傾斜しているものが好ましい。オートレース場は、横断勾配が大きく、勾配の下側で溢流が生じ易いところ、本発明を適用することによって効果的に溢流を抑制することができる。また、これにより横断勾配の上側と下側で路面の状態が均一になるのでレースの安全性が向上する。
【0009】
また、前記トラックの内周側には排水溝が設けられ、前記排水溝に繋がる前記遮水層の下流側端部に面取り部が形成されているものが好ましい。このような構成によれば、排水層から排水溝に水が流れやすくなるので、溢流をより一層抑制することができる。
【0010】
さらに、前記基層排水層は、前記トラックの幅方向のうち内周側の一部に敷設されているものが好ましい。このような構成によれば、雨水が集まる下流側のみに基層排水層を選択的に設けることで、効率的な排水を行えるとともに、施工費用を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る舗装構造によれば、路面からの雨水の溢流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る舗装構造を示した断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る舗装構造を採用したオートレース場のトラックを示した平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る舗装構造について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、かかる舗装構造をオートレース場のトラックに採用した場合を例に挙げて説明する。
【0014】
図2示すように、本実施形態に係る舗装構造1は、オートレース場のトラック2の内周縁部に敷設されている。トラック2は、長円形状に形成されており、車両の走行方向に直交する横断方向に沿って、外周側から内周側に向かって低くなるように傾斜している。トラック2では、雨天でもレースが行われるため、舗装構造1として高耐久型の排水性アスファルト舗装が採用されている。
【0015】
舗装構造1は、横断方向に沿って、トラック2の外周側から内周側に向かって低くなるように傾斜している。舗装構造1は、図1に示すように、遮水層10と排水層20とを備えている。遮水層10は、路盤3の上に敷設された層であって、勾配の上流側から下流側に渡って同じ層厚で形成されている。遮水層10は、雨水を透過させず、その上面に沿って水が流れる。遮水層10は、例えば、密粒度アスファルト舗装にて構成されており、ブリスタリングが発生しないように所定の空隙を備えている。遮水層10の上面は、下流側に向かって例えば5.3%の横断勾配となっている。
【0016】
排水層20は、遮水層10の上に敷設されるものであって、舗装構造1の表層を構成している。排水層20の上面は、下流側に向かって例えば、5.0%の横断勾配となっている。つまり、遮水層10の上面の横断勾配(排水層20の下面の横断勾配)は、排水層20の表面の横断勾配よりも大きい。排水層20は、基層排水層21と表層排水層22とを備えている。基層排水層21は、遮水層10の上に敷設された層であり、排水層20の下部を構成している。基層排水層21は、所定の空隙率を備えたアスファルト混合物であり、内部を水が流れて排水可能な構成となっている。基層排水層21は、アスファルトと砕石にて形成されている。基層排水層21の上面は、排水層20の上面と平行であり、下流側に向かって例えば、5.0%の横断勾配となっている。つまり、遮水層10の上面の横断勾配(基層排水層21の下面の横断勾配)は、基層排水層21の表面の横断勾配よりも大きい。これによって、基層排水層21は、勾配の上流側から下流側に向かって層厚が順次大きくなっている(上流側の層厚t1は下流側の層厚t2よりも大きい)。このように基層排水層21は、層厚断面が不均一(横断勾配の下側に向かう程層厚が大きくなる)であるが、施工時の転圧回転規定は均一断面と同等とする。これによって、基層排水層21は、横断勾配の下流側に向かうほど規格内で締固め度が低下するため、横断勾配の下流側に向かうほど空隙が大きくなっている。
【0017】
表層排水層22は、基層排水層21の上に敷設された層である。表層排水層22は、開粒度アスファルトコンクリートに、空隙がつぶれ難い改質アスファルト(例えばTR100(大成ロテック株式会社製「わだち掘れに強いアスファルト改質剤」)を使用した混合物にて形成されており、空隙がつぶれ難いアスファルト混合物合成粒度が採用されている。表層排水層22の上面(排水層20の上面と同じ)は、基層排水層21の上面と同様に、下流側に向かって例えば、5.0%の横断勾配となっている。つまり、表層排水層22は、上流側から下流側に向かって層厚が一定となっており、遮水層10の上面の横断勾配は、排水層20の表面(表層排水層22の上面)基層排水層21の表面の横断勾配よりも大きい。
表層排水層22の透水係数は、例えば、2.96×10-2であり、基層排水層21の透水係数(例えば、3.49×10-3)よりも大きい。なお、透水係数は舗装試験法便覧の「透水性アスファルト混合物の透水試験方法」に準拠し、水温15℃に相当する透水係数である。つまり、表層排水層22は、基層排水層21よりも透水率が高く水が流れ易くなっている。
【0018】
図2および図3に示すように、前記構成の基層排水層21は、トラック2の幅方向のうち内周側の一部に敷設されている。具体的には、トラック2の幅である略40mのうち、内側の略10mにおいて、下流側の層厚t2が、上流側の層厚t1よりも大きい基層排水層21となっている。基層排水層21が設けられた内側を除く外側の部分では、遮水層10と表層排水層22との間に、層厚が一定の基層排水層23が設けられている。つまり、基層排水層23の上面の横断勾配と下面の横断勾配とは、同じとなっている。
【0019】
トラック2の内周側には排水溝5が設けられている。排水溝5は、トラック2の内周面に沿って周設されている。排水溝5は、縦排水部となる排水桝5aを備えている。排水桝5aは、地下に埋設された排水管(図示せず)に繋がるものであって、排水溝5の長手方向に沿って所定の間隔(本実施形態では3m間隔)をあけて複数設けられている。排水溝5の一部である排水桝5aに繋がる遮水層10の下流側端部には、面取り部11が形成されている。面取り部11は、下流側上端の出隅部が傾斜して直線状に面取りされている。面取りされた遮水層10には、基層排水層21が突出しており、突出部24が形成されている。突出部24は、排水桝5aの胴部に形成された貫通穴に接しており、排水桝5aに基層排水層21内の雨水が排水桝5aに流されるようになっている。
【0020】
本実施形態の舗装構造1によれば、基層排水層21の層厚が下流側に向かうに連れて大きくなるので、雨水が集まる勾配の下流側の排水能力が大きくなる。さらに、本実施形態では、基層排水層21の下流側は、締固め度が低下するため、空隙が大きくなっているので、多くの水を保水できるとともに水が流れ易くなる。
【0021】
また、本実施形態の排水層20では、表層排水層22の空隙率が基層排水層21の空隙率よりも大きいので、水流が水路となる基層排水層21に流れ込み易く、排水層20の表層から水流が奥側に離れる。よって、路面(表層排水層22の上面)から水が溢れにくくなり、溢流を効率的に抑制できる。
【0022】
オートレース場は、通常の道路よりも横断勾配が大きいため、勾配の下側で溢流が生じ易い構造となっている。このようなオートレース場のトラック2において、本実施形態の舗装構造1を適用したことによって、効果的に溢流を抑制することができる。また、これにより、トラック2の水はけがよくなり、横断勾配の上側と下側で路面の状態が均一になる(路面状態がドライまたはウェットのいずれか一方で均一のトラック2を提供できる)のでレースの安全性が向上する。これによって、トラック2上での車両の走行が阻害されず、雨天時でもレースを開催できる。
【0023】
また、基層排水層21は、トラック2の幅方向のうち内周側の一部に敷設され、雨水が集まる下流側のみに、層厚が変化する基層排水層21が選択的に設けられている。したがって、効率的な排水を行えるとともに、施工費用を低減することができる。
【0024】
トラック2の内周側には排水溝5が設けられ、排水溝5の排水桝5aに繋がる遮水層10の下流側端部に面取り部11が形成されているので、基層排水層21ら排水桝5aに水が流れやすくなる。したがって、排水が効率的に行われ、溢流をより一層抑制することができる。
【0025】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、排水層20が、基層排水層21と表層排水層22との二層を備えているが、単なる一層の排水層にて構成してもよい。
【0026】
また、前記実施形態では、舗装構造1の下流側に排水溝5が設けられているがこれに限定されるものではない。排水溝5に代えて、ドレインパイプを埋設してもよい。ドレインパイプは、基層排水層21の下流側端部に接するように配置するのが好ましい。
さらに、本発明の舗装構造1は、オートレース場のトラック2に使用されることに限定されるものではなく、横断方向に傾斜した一定幅の路面であれば、他の路面であっても適用可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1 舗装構造
2 トラック
3 路盤
5 排水溝
5a 排水桝
10 遮水層
11 面取り部
20 排水層
21 基層排水層
22 表層排水層
図1
図2
図3