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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096285
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】塗膜パターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20230630BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20230630BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20230630BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230630BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230630BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20230630BHJP
   B05C 9/04 20060101ALN20230630BHJP
   B05C 11/10 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
H01M4/139
B05D3/12 B
B05D3/12 E
B05D3/04 Z
H01M4/04 Z
H01M4/66 A
H01G11/86
B05C9/04
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211921
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511064096
【氏名又は名称】エア・ウォーター・ベルパール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 文夫
(72)【発明者】
【氏名】馬込 峻一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 尚久
【テーマコード(参考)】
4D075
4F042
5E078
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC72
4D075AC91
4D075AC94
4D075AD11
4D075AE19
4D075AE24
4D075BB02Z
4D075BB05Z
4D075BB20Z
4D075BB24Z
4D075BB33Z
4D075BB57Z
4D075BB91Z
4D075BB93Z
4D075BB95Z
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB01
4D075DB31
4D075DC19
4D075EA05
4F042AA22
4F042AB00
4F042CC09
4F042DB18
4F042ED02
5E078AA15
5E078AB01
5E078BB33
5H017AA03
5H017CC01
5H017EE01
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050DA04
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA12
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA12
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになることを抑制する。
【解決手段】基材10に対して塗液20を連続的に塗布して連続した塗膜30を形成する工程と、塗膜30を乾燥させる工程と、噴射ノズル190からドライアイス微粒子を含む混合ガスを吹き付けることにより、乾燥した塗膜31の一部を除去して塗膜31をパターニングする工程とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対して塗液を連続的に塗布して連続した塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥させる工程と、
噴射ノズルからドライアイス微粒子を含む混合ガスを吹き付けることにより、乾燥した前記塗膜の一部を除去して前記塗膜をパターニングする工程とを備える、塗膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記塗膜をパターニングする工程において、前記基材および前記噴射ノズルを前記塗膜の連続方向に等速搬送しつつ前記噴射ノズルを前記基材に沿って前記連続方向と交差する方向に移動させることにより、前記塗膜の前記一部を除去する、請求項1に記載の塗膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記塗膜をパターニングする工程において、前記基材上にマスク部材を配置した状態で前記噴射ノズルによって前記混合ガスを吹き付けることにより、前記マスク部材に覆われていない前記塗膜の前記一部を除去する、請求項1または請求項2に記載の塗膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記塗膜を形成する工程において、前記基材の表面上および裏面上の両方に前記塗膜を形成し、
前記塗膜をパターニングする工程において、2つの前記噴射ノズルから前記基材の表面側および裏面側の両方に同時に前記混合ガスを吹き付けることにより、前記基材の表面上および裏面上の両方の前記塗膜の前記一部を除去する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の塗膜パターンの形成方法。
【請求項5】
前記塗膜をパターニングする工程の前に、乾燥した前記塗膜を加圧する工程をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の塗膜パターンの形成方法。
【請求項6】
前記基材は、金属箔であり、
前記塗膜は、電極活物質を含む電極組成物で構成されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の塗膜パターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池用電極の製造方法を開示した先行技術文献として、特開2021-27043号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたリチウムイオン電池用電極においては、連続するシート状の基材の表面に、電極活物質を含む電極組成物からなる電極組成物層が間欠的に配置されている。
【0003】
特許文献1に記載されたリチウムイオン電池用電極の製造方法は、供給工程と、加圧工程と、除去工程とを備える。供給工程において、基材上に電極組成物を連続的に供給する。加圧工程において、供給工程によって基材上に供給された電極組成物を加圧して電極組成物層を形制する。除去工程において、供給工程によって基材上に供給された電極組成物の一部を除去して、基材上に電極組成物層配置部を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-27043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基材上に形成された乾燥する前の塗膜においてマスクに覆われていない一部を吸引またはエアブローなどによって吹き飛ばして除去する場合、塗膜が溶剤を含んで流動性を有しているため、マスクの縁部に覆われている部分の塗膜の一部も一緒に除去されて塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになる。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになることを抑制することができる、塗膜パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく塗膜パターンの形成方法は、基材に対して塗液を連続的に塗布して連続した塗膜を形成する工程と、上記塗膜を乾燥させる工程と、噴射ノズルからドライアイス微粒子を含む混合ガスを吹き付けることにより、乾燥した上記塗膜の一部を除去して上記塗膜をパターニングする工程とを備える。
【0008】
本発明の一形態においては、上記塗膜をパターニングする工程において、基材および噴射ノズルを上記塗膜の連続方向に等速搬送しつつ噴射ノズルを基材に沿って上記連続方向と交差する方向に移動させることにより、上記塗膜の上記一部を除去する。
【0009】
本発明の一形態においては、上記塗膜をパターニングする工程において、基材上にマスク部材を配置した状態で噴射ノズルによって混合ガスを吹き付けることにより、マスク部材に覆われていない上記塗膜の上記一部を除去する。
【0010】
本発明の一形態においては、上記塗膜を形成する工程において、基材の表面上および裏面上の両方に上記塗膜を形成し、上記塗膜をパターニングする工程において、2つの噴射ノズルから基材の表面側および裏面側の両方に同時に混合ガスを吹き付けることにより、基材の表面上および裏面上の両方の上記塗膜の上記一部を除去する。
【0011】
本発明の一形態においては、塗膜パターンの形成方法は、上記塗膜をパターニングする工程の前に、乾燥した上記塗膜を加圧する工程をさらに備える。
【0012】
本発明の一形態においては、基材は、金属箔であり、上記塗膜は、電極活物質を含む電極組成物で構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る塗膜パターンの形成方法の各工程を行なっている状態を示す縦断面図である。
図2】本実施形態に係るドライアイススノー洗浄装置の構成を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る塗膜パターンの形成方法における塗膜をパターニングする工程を行なっている状態を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態の変形例に係る塗膜パターンの形成方法における塗膜をパターニングする工程をマスク部材を用いて行なっている状態を示す平面図である。
図5】試料No.1の塗膜パターンの拡大図である。
図6図5のVI部の拡大図である。
図7】試料No.2の塗膜パターンの拡大図である。
図8図7のVIII部の拡大図である。
図9】試料No.3の塗膜パターンの拡大図である。
図10】試料No.4の塗膜パターンの拡大図である。
図11】試料No.5の塗膜パターンの拡大図である。
図12】試料No.6の塗膜パターンの拡大図である。
図13】試料No.7の塗膜パターンの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る塗膜パターンの形成方法について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る塗膜パターンの形成方法の各工程を行なっている状態を示す縦断面図である。本発明の一実施形態に係る塗膜パターンの形成方法においては、基材10の表面11および裏面12の両方に塗膜30を同時形成しているが、これに限られず、基材10の表面11のみに塗膜30を形成してもよいし、基材10の表面11と裏面12とに別々に塗膜30を形成してもよい。
【0017】
基材10は、金属箔である。ただし、基材10は、金属箔に限られず、樹脂フィルムなどであってもよい。塗膜30は、電極活物質を含む電極組成物で構成されている。ただし、塗膜30は、電極活物質を含む電極組成物に限られず、導電膜、絶縁膜または誘電体膜などであってもよい。本発明の一実施形態に係る塗膜パターンの形成方法は、電池用電極の製造方法またはキャパシタ用電極材の製造方法などに適用可能である。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る塗膜パターンの形成方法は、基材10に対して塗液20を連続的に塗布して連続した塗膜30を形成する工程と、塗膜30を乾燥させる工程と、噴射ノズル190からドライアイス微粒子を含む混合ガスを吹き付けることにより、乾燥した塗膜31の一部を除去して塗膜31をパターニングする工程とを備える。
【0019】
本実施形態に係る塗膜パターンの形成方法は、塗膜31をパターニングする工程の前に、乾燥した塗膜31を加圧する工程をさらに備える。なお、乾燥した塗膜31を加圧する工程は、必ずしも行なわれなくてもよい。たとえば、本実施形態に係る塗膜パターンの形成方法が、全固体電池用電極の製造方法に適用される場合には、乾燥した塗膜31を加圧する工程は必ずしも行なわれない。
【0020】
上記各工程において、基材10は、D1方向に間欠搬送または連続搬送されている。本実施形態においては、基材10がD1方向に搬送されているが、これに限られず、基材10は移動せずに、各工程を行なう装置が搬送される態様であってもよい。
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る塗膜パターンの形成方法の各工程について詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、基材10の表面11および裏面12にそれぞれ対向するように、2つの給液ノズル1が配置されている。2つの給液ノズル1の各々は、基材10に対して塗液20を連続的に塗布することができる。塗液20は、電極活物質、導電材、バインダおよび溶剤を含んでいる。
【0023】
2つの給液ノズル1の各々から塗液20が連続的に塗布されつつ基材10がD1方向に搬送されることにより、基材10の表面11および裏面12の各々においてD1方向に連続した塗膜30が形成される。このように、本実施形態においては、塗膜30を形成する工程において、基材10の表面11上および裏面12上の両方に塗膜30を形成する。
【0024】
図1に示すように、2つの給液ノズル1のそれぞれに対してD1方向に間隔をあけて、2つの乾燥装置2が配置されている。2つの乾燥装置2の各々は、赤外線を照射または熱風を吹き付けることにより塗膜30を乾燥させる。なお、乾燥装置2による乾燥方法は、赤外線照射および熱風吹き付けに限られず、他の乾燥方法であってもよい。
【0025】
塗膜30を乾燥させる工程において、乾燥装置2の近傍を塗膜30が通過する際に、溶剤が蒸発することにより、乾燥した塗膜31となる。乾燥した塗膜31は、乾燥する前の塗膜30に比較して、流動性が低下している。
【0026】
図1に示すように、2つの乾燥装置2のそれぞれに対してD1方向に間隔をあけて、2つの加圧装置3が配置されている。2つの加圧装置3の各々は、ロースプレスである。なお、加圧装置3は、ロールプレスに限られず、塗膜31を基材10の厚み方向に加圧できる装置であればよい。
【0027】
乾燥した塗膜31を加圧する工程において、加圧装置3によって基材10の厚み方向に加圧された塗膜31は、薄くなるとともに密度が高くなって、さらに流動性が低下する。なお、乾燥した塗膜31は、乾燥前の塗膜30に比較して粘着性が低下しているため、乾燥後に塗膜31を加圧することにより、加圧装置3への塗膜31の付着を抑制することができる。
【0028】
図1に示すように、2つの加圧装置3のそれぞれに対してD1方向に間隔をあけて、2つの噴射ノズル190が配置されている。2つの噴射ノズル190の各々は、ドライアイス微粒子を含む混合ガスを吹き付ける。
【0029】
ここで、噴射ノズル190を備えるドライアイススノー洗浄装置の構成について説明する。図2は、本実施形態に係るドライアイススノー洗浄装置の構成を示す模式図である。図2に示すように、本実施形態に係るドライアイススノー洗浄装置100は、液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給系と、噴射用ガスを供給する噴射用ガス供給系と、液化炭酸ガス供給系における下流側に設けられた絞り部140と、液化炭酸ガス供給系と噴射用ガス供給系とを接続し、絞り部140を通過して生成されたドライアイス微粒子を含む炭酸ガスと噴射用ガスとを混合して混合ガスを生成する混合部180と、混合部180と接続された噴射ノズル190とを備える。
【0030】
液化炭酸ガス供給系は、液化炭酸ガスを貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵容器110と、液化炭酸ガス貯蔵容器110に接続されて液化炭酸ガスの流路となる液化炭酸ガス管120と、液化炭酸ガス管120の途中に設けられた第1開閉部130と、液化炭酸ガス管120の下流側に設けられた絞り部140とを含む。液化炭酸ガス供給系は、液化炭酸ガス管120の内部の圧力を測定する圧力計、および、圧力計の下流側に設けられ、液化炭酸ガス中の不純物を取り除くフィルタをさらに含む。
【0031】
第1開閉部130は、手動で開閉可能なバルブにて構成されている。ただし、第1開閉部130が、自動で開閉可能なバルブにて構成されていてもよい。絞り部140は、オリフィス板またはニードル弁などの液化炭酸ガスの流路を絞る部材から構成されている。絞り部140は、第1開閉部130より下流側に設けられている。
【0032】
噴射用ガス供給系は、噴射用ガスを供給する噴射用ガス供給源150と、噴射用ガス供給源150に接続されて噴射用ガスの流路となる噴射用ガス管160と、噴射用ガス管160の途中に設けられた第2開閉部170とを含む。噴射用ガス供給系は、噴射用ガス管160の内部の圧力を測定する圧力計、および、圧力計の下流側に設けられ、噴射用ガス中の不純物を取り除くフィルタをさらに含む。
【0033】
噴射用ガス管160は、必要に応じてヒータなどの加熱器により加熱される。噴射用ガス管160を加熱することにより、被洗浄物の種類および状態に応じて洗浄効果が高まるように噴射用ガスの温度を調整できるとともに被洗浄物が結露することを抑制できる。
【0034】
第2開閉部170は、手動で開閉可能なバルブにて構成されている。ただし、第2開閉部170が、自動で開閉可能なバルブにて構成されていてもよい。噴射用ガスとしては、たとえば、ドライエアー、窒素ガス、アルゴンガスまたは炭酸ガスなど、炭酸ガスに対して不活性なガスを用いることができる。
【0035】
混合部180は、液化炭酸ガス管120の先端、噴射用ガス管160の先端および噴射ノズル190の後端の各々と、気密に接続されている。混合部180は、円筒状の形状を有している。
【0036】
噴射ノズル190は、手動または自動で移動可能に構成されている。また、噴射ノズル190においては、ノズル形状を変更することにより、スポット噴射および広角噴射を選択的に行なうことができる。
【0037】
以下、本実施形態に係るドライアイススノー洗浄装置100の動作について説明する。まず、液化炭酸ガス供給系においては、液化炭酸ガス貯蔵容器110から液化炭酸ガス管120内に液化炭酸ガスを流入させる。液化炭酸ガス管120に設けられた圧力計によって、液化炭酸ガス管120内の液化炭酸ガスの圧力が測定される。
【0038】
次に、第1開閉部130が開いて、液化炭酸ガス管120内の液化炭酸ガスは、絞り部140を通過する。絞り部140を通過した液化炭酸ガスは、断熱膨張して冷却される。その結果、ドライアイス微粒子が生成される。ドライアイス微粒子を含む炭酸ガスは、混合部180の内部に流入する。
【0039】
噴射用ガス供給系においては、噴射用ガス供給源150から噴射用ガス管160内に噴射用ガスを流入させる。噴射用ガス管160に設けられた圧力計によって、噴射用ガス管160内の噴射用ガスの圧力が測定される。次に、第2開閉部170が開いて、噴射用ガス管160内の噴射用ガスは、混合部180の内部に流入する。
【0040】
混合部180において、ドライアイス微粒子を含む炭酸ガスと噴射用ガスとは混合されて混合ガスになる。混合部180にて生成された混合ガスは、噴射ノズル190の内部に流入する。噴射ノズル190から、ドライアイス微粒子を含む混合ガスを吹き付けられる。
【0041】
図3は、本発明の一実施形態に係る塗膜パターンの形成方法における塗膜をパターニングする工程を行なっている状態を示す平面図である。図3に示すように、塗膜31をパターニングする工程においては、噴射ノズル190からドライアイス微粒子を含む混合ガスを吹き付けられた塗膜31の一部が除去されて基材10の一部である露出部10aが現れる。すなわち、露出部10aを形成することによって、塗膜31をパターニングすることができる。
【0042】
本実施形態においては、塗膜31をパターニングする工程において、基材10および噴射ノズル190を塗膜31の連続方向に等速搬送しつつ噴射ノズル190を基材10に沿って上記連続方向と交差する方向に移動させることにより、塗膜31の一部を除去する。
【0043】
具体的には、基材10を塗膜31の連続方向(D1方向)に搬送する速度と、噴射ノズル190を塗膜31の連続方向(D21方向)に搬送する速度とが、互いに等しい。さらに、噴射ノズル190は、基材10に沿って上記連続方向と交差する方向(D22方向)にも移動する。すなわち、噴射ノズル190は、D21方向とD22方向とが合成されたD2方向に移動する。このようにすることにより、基材10を連続して搬送しつつ、噴射ノズル190によって、塗膜31をパターニングすることができる。なお、基材10を間欠的に搬送し、基材10が停止している間に塗膜31をパターニングしてもよい。
【0044】
本実施形態においては、塗膜31をパターニングする工程において、2つの噴射ノズル190から基材10の表面11側および裏面12側の両方に同時に混合ガスを吹き付けることにより、基材10の表面11上および裏面12上の両方の塗膜31の一部を除去する。なお、基材10の表面11上の塗膜31と、基材10の裏面12上の塗膜31との、パターニング形状が互いに異なっていてもよい。
【0045】
また、塗膜31をパターニングする工程において、マスク部材を用いてもよい。図4は、本発明の一実施形態の変形例に係る塗膜パターンの形成方法における塗膜をパターニングする工程をマスク部材を用いて行なっている状態を示す平面図である。
【0046】
図4に示すように、本発明の一実施形態の変形例に係る塗膜パターンの形成方法においては、塗膜31をパターニングする工程において、基材10上にマスク部材4を配置した状態で噴射ノズル190によって混合ガスを吹き付けることにより、マスク部材4に覆われていない塗膜31の一部を除去する。
【0047】
(実験例)
以下、本実施形態および変形例に係る塗膜パターンの形成方法において、パターニング条件を変えて塗膜を形成した実験結果について説明する。表1は、実験例に係るパターニング条件をまとめたものである。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、9つの試料について、乾燥した塗膜31のパターニングを行なった。各試料において、基材は銅箔、塗膜はカーボン膜で形成した。パターニング条件としては、パターニング工程の前の加圧工程の有無、噴射ノズルの噴射形態、噴射用ガスの圧力、基材に対する噴射ノズルの搬送速度、基材と噴射ノズルの先端との距離である噴射距離、マスク部材の有無について、表1のとおりとした。
【0050】
図5は、試料No.1の塗膜パターンの拡大図である。図6は、図5のVI部の拡大図である。図7は、試料No.2の塗膜パターンの拡大図である。図8は、図7のVIII部の拡大図である。図9は、試料No.3の塗膜パターンの拡大図である。図10は、試料No.4の塗膜パターンの拡大図である。図11は、試料No.5の塗膜パターンの拡大図である。図12は、試料No.6の塗膜パターンの拡大図である。図13は、試料No.7の塗膜パターンの拡大図である。
【0051】
図5図13に示すように、噴射ノズル190からドライアイス微粒子を含む混合ガスを吹き付けて形成された塗膜パターンの輪郭は、拡大すると局所的な凹凸はあるものの、粗くいびつになることが抑制されていることが確認できた。
【0052】
特に、マスク部材4を用いてパターニングした場合は、マスク部材4を用いずにパターニングした場合と比較して、塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになることがさらに抑制されていることが確認できた。
【0053】
また、パターニング工程の前に加圧工程をした場合は、パターニング工程の前に加圧工程をしない場合に比較して、塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになることがさらに抑制されていることが確認できた。図12および図13に示すように、パターニング工程の前に加圧工程をしない場合は、カーボン膜を十分に除去できていない局所的な除去ムラ部Nが確認された。
【0054】
スポット噴射した場合は、広角噴射した場合に比較して、露出部10aの幅は狭いものの、塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになることがさらに抑制されていることが確認できた。
【0055】
図9および図10に示すように、広角噴射した場合は、カーボン膜を十分に除去できていない局所的な除去ムラ部Nが確認された。図11に示すように、広角噴射において、噴射距離を短くすることで、局所的な除去ムラ部Nが現れることが抑制されていることが確認できた。
【0056】
なお、パターニング条件として、たとえば、噴射用ガスの圧力は0.2MPa以上0.6MPa以下の範囲、噴射距離は10mm以上50mm以下の範囲、および、搬送速度は1mm/s以上100mm/s以下の範囲で、適宜選択可能である。
【0057】
本実施の形態に係る塗膜パターンの形成方法は、基材10に対して塗液20を連続的に塗布して連続した塗膜30を形成する工程と、塗膜30を乾燥させる工程と、噴射ノズル190からドライアイス微粒子を含む混合ガスを吹き付けることにより、乾燥した塗膜31の一部を除去して塗膜31をパターニングする工程とを備える。これにより、塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになることを抑制することができる。
【0058】
本実施の形態に係る塗膜パターンの形成方法においては、塗膜31をパターニングする工程において、基材10および噴射ノズル190を塗膜31の連続方向に等速搬送しつつ噴射ノズル190を基材10に沿って上記連続方向と交差する方向に移動させることにより、塗膜31の一部を除去する。これにより、基材10の搬送を停止することなく塗膜31のパターニングをすることができ、塗膜パターンを効率的に形成することができる。
【0059】
本実施の形態の変形例に係る塗膜パターンの形成方法においては、塗膜31をパターニングする工程において、基材10上にマスク部材4を配置した状態で噴射ノズル190によって混合ガスを吹き付けることにより、マスク部材4に覆われていない塗膜31の一部を除去する。これにより、塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになることをさらに抑制することができる。
【0060】
本実施の形態に係る塗膜パターンの形成方法においては、塗膜30を形成する工程において、基材10の表面11上および裏面12上の両方に塗膜30を形成し、塗膜31をパターニングする工程において、2つの噴射ノズル190から基材10の表面11側および裏面12側の両方に同時に混合ガスを吹き付けることにより、基材10の表面11上および裏面12上の両方の塗膜31の一部を除去する。これにより、基材10の表面11側および裏面12側の両方に同時に塗膜パターンを形成することができるとともに、基材10の表面11側および裏面12側の互いに重なって位置する塗膜パターン同士の位置精度を高く保持することができる。
【0061】
本実施の形態に係る塗膜パターンの形成方法は、塗膜31をパターニングする工程の前に、乾燥した塗膜31を加圧する工程をさらに備える。これにより、塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになることをさらに抑制することができる。
【0062】
本実施の形態に係る塗膜パターンの形成方法においては、基材10は、金属箔であり、塗膜31は、電極活物質を含む電極組成物で構成されている。これにより、露出部10aに集電タブを貼り付け可能な電池用電極を製造することができる。電池用電極における塗膜パターンの輪郭が粗くいびつである場合、電池が充放電する際に塗膜パターンの輪郭がいびつな箇所で局所的な電気化学反応が起きて電池用電極が劣化する。本実施の形態に係る塗膜パターンの形成方法を用いて電池用電極を製造することにより、塗膜パターンの輪郭が粗くいびつになることを抑制して、電池の寿命を長くすることができる。
【0063】
本発明に係る塗膜パターン形成方法を用いた電池用電極は、リチウムイオン電池などの蓄電池に用いることで、自然エネルギー由来の電力の平準化およびエネルギー回生に寄与し、化石資源の使用量削減およびエネルギー効率の改善に関する持続的な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)に貢献することができる。
【0064】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 給液ノズル、2 乾燥装置、3 加圧装置、4 マスク部材、10 基材、10a 露出部、11 表面、12 裏面、20 塗液、30,31 塗膜、100 ドライアイススノー洗浄装置、110 液化炭酸ガス貯蔵容器、120 液化炭酸ガス管、130 第1開閉部、140 部、150 噴射用ガス供給源、160 噴射用ガス管、170 第2開閉部、180 混合部、190 噴射ノズル、N 除去ムラ部。
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