(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096291
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
H01L21/68 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211931
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】木村 友和
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA02
5F131BA04
5F131BA22
5F131CA09
5F131CA12
5F131GA03
5F131GA33
5F131GA52
5F131GA69
(57)【要約】
【課題】シリコンウェハ下面における擦れを抑制して、パーティクル、及び傷の発生を防止し、歩留まり低下を抑制すること。
【解決手段】天板7と、前記天板に一端が固定され、他端が底板6に固定された複数の支柱2~5と、前記複数の支柱の側面から径方向内側に突出するウェハ支持部12~15とを有し、前記ウェハ支持部によりシリコンウェハの下面を支持する縦型ウェハボート1であって、前記ウェハ支持部の先端部に形成され、支持するシリコンウェハの径方向に直交する軸部23と、前記軸部に対し前記シリコンウェハの径方向に回転自在に配設された円筒状のコロ24とを備え、シリコンウェハは、前記コロを介して前記ウェハ支持部により支持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、前記天板に一端が固定され、他端が底板に固定された複数の支柱と、前記複数の支柱の側面から径方向内側に突出するウェハ支持部とを有し、前記ウェハ支持部によりシリコンウェハの下面を支持する縦型ウェハボートであって、
前記ウェハ支持部の先端部に形成され、支持するシリコンウェハの径方向に直交する軸部と、
前記軸部に対し前記シリコンウェハの径方向に回転自在に配設された円筒状のコロとを備え、
シリコンウェハは、前記コロを介して前記ウェハ支持部により支持されることを特徴とする縦型ウェハボート。
【請求項2】
前記ウェハ支持部は、支持するシリコンウェハの周方向に延びる第1アームと、
前記第1アームの終端から径方向内側に延びる第2アームとを有し、
前記第2アームの先端部に前記コロが配設される軸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載された縦型ウェハボート。
【請求項3】
前記ウェハ支持部により支持するシリコンウェハの中心と前記コロの頂部との径方向の距離は、シリコンウェハの径をDとすると、0.65×D以上0.85×D以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された縦型ウェハボート。
【請求項4】
前記コロの軸方向長さは、シリコンウェハの径をDとすると、0.03×D以上0.1×D以下の長さに形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された縦型ウェハボート。
【請求項5】
前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の縦型ウェハボートを用いたシリコンウェハの熱処理方法であって、
前記縦型ウェハボートが有する複数のウェハ支持部によりシリコンウェハの下面を支持する際、
前記ウェハ支持部の先端部において、シリコンウェハの径方向に直交する軸部に、径方向に回転自在に配設されたコロを介して前記シリコンウェハの下面を支持し、
前記縦型ウェハボートに支持されたシリコンウェハに対し熱処理を施すことを特徴とするシリコンウェハの熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型ウェハボート及びシリコンウェハの熱処理方法に関し、特に半導体デバイスの製造に使用されるシリコンウェハを熱処理工程において保持する縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、シリコンウェハ(以下、ウェハとも呼ぶ)に対し酸化や拡散、CVD等の熱処理が行われる。この熱処理時に使用されるウェハボートとしては、垂直に立設した複数(例えば4本)のボート支柱に対し、水平方向にウェハ支持部(ウェハ格納用溝)が延設された縦型ウェハボートが知られている。
そして、このウェハ支持部にウェハを搭載し、所定の熱処理を行うことで、高スループットを実現し、ウェハの量産化を図っている。
【0003】
従来の縦型ウェハボートにウェハを載置するとき、
図6に示すようにウェハは縦型ウェハボート50に立設された複数のボート支柱51~54の溝60内に置かれて保持される。この溝60はボートの支柱51~54の延在方向に対して直交方向に形成されている。
前記ボートの溝60にウェハを水平に積載する場合、ウェハをその外周の数点(例えば4点)で保持する。ここで、ウェハを水平に保持した場合、ウェハの自重により、下方にくぼむ撓みが生ずる。
この結果、
図7に示すように、ウェハWはボートの溝60の角と、点或いは線で接触することになる。
【0004】
ウェハWの中央が撓み、その周縁部とボートの溝60の角とが、点或いは線接触した場合、ウェハ周縁部が擦れ、パーティクルが発生する、或いはウェハ周縁部に傷が生じる虞が高くなる。即ち、パーティクルやウェハ周縁部の傷が生じると、それが歩留まりの悪化等の原因となるという課題があった。
前記ウェハ周縁部の擦れは、前記ボートの溝60の角にR面加工を施すことにより、ある程度抑制することができる。しかしながら、大型のシリコンウェハWの場合、熱処理中においてウェハ中央が下方に撓み、ウェハ周縁部が反り上がるように変形すると、溝60の角がR面加工されていても、位置固定された角のR面に対し接触するウェハ周縁部が大きく移動し、摩擦抵抗が発生してスリップ転位の原因になる虞があった。
【0005】
このような課題を解決するものとして、特許文献1には、
図8(a)に斜視図で示すように支柱70の径方向内側に突出する凸部71の上面に、円筒状のコロ72を配置し、
図8(b)に示すように、コロ72の上にシリコンウェハWの周縁部を載置する縦型ウェハボートが開示されている。
このようにすれば、シリコンウェハWは、コロ72を介して凸部71により支持されるため、ウェハ周縁部における擦れを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された縦型ウェハボートにあっては、熱処理によるシリコンウェハWの変形に伴い、コロ72が凸部71上で径方向に移動するため、コロ72によるウェハ支持位置が変化する。
しかしながら、大型のシリコンウェハWの場合には、コロ72が径方向外側に押し出されて、シリコンウェハWの周縁部が凸部71の上面71aに落下し、ウェハ周縁部に傷が生じる虞があった。また、コロ72が径方向外側に押し出されて大きく動いた場合、凸部71上から転がり落ち、下方のシリコンウェハWを傷つける虞があった。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、複数のウェハ支持部を備えた縦型ウェハボートにおいて、シリコンウェハを熱処理する際に、シリコンウェハ下面における擦れを抑制して、パーティクル、及び傷の発生を防止し、歩留まり低下を抑制することのできる縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた、本発明に係る縦型ウェハボートは、天板と、前記天板に一端が固定され、他端が底板に固定された複数の支柱と、前記複数の支柱の側面から径方向内側に突出するウェハ支持部とを有し、前記ウェハ支持部によりシリコンウェハの下面を支持する縦型ウェハボートであって、前記ウェハ支持部の先端部に形成され、支持するシリコンウェハの径方向に直交する軸部と、前記軸部に対し前記シリコンウェハの径方向に回転自在に配設された円筒状のコロとを備え、シリコンウェハは、前記コロを介して前記ウェハ支持部により支持されることに特徴を有する。
尚、前記ウェハ支持部は、支持するシリコンウェハの周方向に延びる第1アームと、前記第1アームの終端から径方向内側に延びる第2アームとを有し、前記第2アームの先端部に前記コロが配設される軸部が形成されていることが望ましい。
また、前記ウェハ支持部により支持するシリコンウェハの中心と前記コロの頂部との径方向の距離は、シリコンウェハの径をDとすると、0.65×D以上0.85×D以下であることが望ましい。
また、前記コロの軸方向長さは、シリコンウェハの径をDとすると、0.03×D以上0.1×D以下の長さに形成されていることが望ましい。
【0010】
このように本発明によれば、ウェハ支持部の先端部に形成され、支持するシリコンウェハの径方向に直交する軸部と、前記軸部に対しシリコンウェハの径方向に回転自在に配設された円筒状のコロとを備え、シリコンウェハは、前記コロを介して前記ウェハ支持部により支持される。
これにより熱処理中にシリコンウェハの中央が下方に撓み、ウェハ周縁部が上方に反り上がるように変形しても、ウェハ下面に接するコロは位置を変えることなく径方向に回転するため、シリコンウェハの下面の擦れが防止される。
したがって、シリコンウェハに熱処理を施した際に、パーティクル、及び傷の発生を抑制し、歩留まり低下を抑制することができる。
【0011】
また、前記課題を解決するためになされた、本発明に係るシリコンウェハの熱処理方法は、前記縦型ウェハボートを用いたシリコンウェハの熱処理方法であって、前記縦型ウェハボートが有する複数のウェハ支持部によりシリコンウェハの下面を支持する際、前記ウェハ支持部の先端部において、シリコンウェハの径方向に直交する軸部に、径方向に回転自在に配設されたコロを介して前記シリコンウェハの下面を支持し、前記縦型ウェハボートに支持されたシリコンウェハに対し熱処理を施すことに特徴を有する。
【0012】
このような熱処理方法によれば、シリコンウェハに熱処理を施した際に、パーティクル、及び傷の発生を抑制し、歩留まり低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のウェハ支持部を備えた縦型ウェハボートにおいて、シリコンウェハを熱処理する際に、シリコンウェハ下面における擦れを抑制して、パーティクル、及び傷の発生を防止し、歩留まり低下を抑制することのできる縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る縦型ウェハボートの全体を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した縦型ウェハボートが有する一組のウェハ支持部のウェハ支持位置を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した縦型ウェハボートが有する一ウェハ支持部を拡大して示す平面図である。
【
図4】
図4は、ウェハ支持部の先端部を拡大して示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ウェハ支持部の先端部を拡大して示す側面図である。
【
図6】
図6は、従来の縦型ウェハボートの全体を模式的に示す正面図である。
【
図7】
図7は、従来の縦型ウェハボートにおけるシリコンウェハの載置例を示す側面図である。
【
図8】
図8(a)、(b)は、従来の縦型ウェハボートの他の構成を示す斜視図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法の実施形態について図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る縦型ウェハボートの全体を示す正面図である。
図2は、
図1に示した縦型ウェハボートが有する一組のウェハ支持部のウェハ支持位置を示す平面図である。
【0016】
図1、
図2に示すように、縦型ウェハボート1は、ウェハ挿入方向の前側に配された2本の支柱2、3と、ウェハ挿入方向の後側に配された2本の支柱4、5とを具備している。前記各支柱2~5の下端部は、円板形状の底板6に立設(固定)され、さらに各支柱2~5の上端部は、円板状の天板7によって支持(固定)されている。
また、このように合計4本の支柱2~5を設ける場合、支持するシリコンウェハWの中心を基点として90°間隔に配置することが好ましい。それにより支持するシリコンウェハWからの荷重を周方向において均等に受け止めることができる。
【0017】
図1に示すように前記各支柱2~5には、それぞれ多数のシリコンウェハWを支持するために複数のアーム状のウェハ支持部12、13、14、15が設けられている。各支柱2~5におけるウェハ支持部12~15は、縦方向に50~150個、多段に形成されている。上下方向のウェハ支持部12~15の間隔h1は、3mm以上7mm以下に形成されている。これにより、熱処理においてシリコンウェハWの周縁部が反り上がった際に、ウェハ周縁部が上方のウェハ支持部12~15に接触しないようになされている。
【0018】
図3は、各ウェハ支持部12~15を拡大して示す平面図である。
図2、
図3に示すようにウェハ支持部12~15は、支柱2~5から周方向に延びる第1アーム21と、第1アーム21の終端から径方向内側に延びる第2アーム22とを有する。
更に、第2アーム22の先端側方には、周方向に直線状に延びる軸部23が形成されており、この軸部23には、円筒状のコロ24が回転自在に支持されている。コロ24の軸方向はウェハ径方向に直交するように配置されている。
【0019】
図1、
図2に示すようにシリコンウェハWは、コロ24を介して各ウェハ支持部12~15により保持される。ここで、前記のように各ウェハ支持部12~15が周方向に延びる第1アーム21と、その終端から径方向内側に延びる第2アーム22とを有し、その先端部でシリコンウェハWを支持する。各ウェハ支持部12~15は、周方向に均等に配置され、ウェハ中心に向かって延びる4本の第2アーム22の先端は、周方向に均等となる位置でシリコンウェハWを支持するようになっている。また、各ウェハ支持部12~15が第1アーム21と第2アーム22とによりL字状に形成されているため、各ウェハ支持部12~15を単に径方向に延びる凸部で形成するよりも弾性がより高くなり、シリコンウェハWの重量を4つのウェハ支持部12~15で均等に受けることができる。
【0020】
尚、各ウェハ支持部12~15において、
図3に示す第1アーム21の長さL1は、40mm以上50mm以下、第2アーム22の長さL2は、65mm以上75mm以下が好ましい。
また、
図2に示すようにシリコンウェハWを支持した際に、ウェハ中心Cとコロ24頂部との径方向の距離d1は、ウェハ径をDとすると、d1は0.65×D以上0.85×D以下が好ましい。これによりコロ24頂部を境に、ウェハ径方向の内側と外側の面積がほぼ等しくなる為、ウェハ径方向の内側と外側の重量が等しくなり、ウェハの熱変形などが小さくなる。
【0021】
また、
図4に示すように各ウェハ支持部12~15において、第2アーム22先端側方から円柱状の軸部23が突出するように延設され、この軸部23にコロ24が回転可能に支持されるが、軸部23の先端部に径をより大きく形成した拡径部23aを設け、コロ24の落下を防止するようになされている。
筒状体の前記コロ24は、SiC質基材により形成され、筒の外周面及び内周面の表面粗さは0.4μm以下に形成されている。これにより、シリコンウェハWが接した際に応力集中によるスリップを低減することができる。表面粗さが0.4μmより大きいと、応力集中によるスリップ発生の虞がある。
【0022】
また、
図5に示す筒状体であるコロ24の外径d2は、4mm以上6mm以下に形成され、内径d3は、2mm以上4mm以下に形成されている。外径d2が4mmより小さいと、軸部が細くなり強度低下により破損する虞があり、6mmより大きいとコロが回らない虞がある。
また、コロ24の軸方向長さL3は、ウェハ径Dに対し、0.03×D以上0.1×D以下の長さに形成されている。コロ24の軸方向長さL3が0.03×Dより小さいと、接触面積が小さくコロ表面とシリコンウェハWの設置面で動いてしまい、ウェハが擦れる虞がある。また、コロ24の軸方向長さL3が0.1×Dより大きいと、シリコンウェハWの変形による応力ではコロが回らない虞がある。
【0023】
図5に示すようにコロ24が軸部23により軸支された状態で、第2アーム22上面と、コロ24頂部との距離h2(即ち、第2アーム22上面とシリコンウェハWの下面までの距離)は、1mm以上2mm以下に形成されている。距離h2が1mmより小さいと、熱処理によりシリコンウェハWが撓んだ際に、シリコンウェハWの下面が第2アーム22上面に接触する虞がある。距離h2が2mmより大きいと、コロ肉厚が大きくなり回転しない虞がある。
【0024】
また、この縦型ウェハボート1は、コロ24を含め、すべてSiC質基材により形成されるが、基材内部から外方への不純物の拡散を抑制するために、その表面にSiC膜を被覆させることが望ましい。前記SiC質基材としては、反応焼結SiCすなわちカーボン成分を含むSiC焼成体にSiを含浸し、前記カーボン成分とSiの一部とが反応し、SiC化されたSi-SiCであることが好ましい。或いは、SiCの成形体を高温で熱処理した再結晶質SiC、焼結助剤を添加し焼結した自焼結SiC等でもよい。また、前記SiC膜としては、高純度で結晶質のSiC膜を形成することのできるCVDによるSiC膜が好ましい。
【0025】
このような縦型ウェハボート1は次のようにして製造することができる。
まず、SiC質基材を支柱2~5、天板7、底板6を所定の形状に機械加工して製作する。ウェハ支持部12~15の形成においては、第2アーム22の長さをウェハWの径Dによって決定する。即ち、第2アーム22の先端に配置するコロ24の頂部とウェハ中心Cとの径方向の距離d1が0.65×D以上0.85×D以下となるように形成する。
また、ウェハ支持部12~15の形成において、第2アーム22の先端部に形成した軸部23にコロ24を回転自在に配設する。
【0026】
その後、支柱2~5、天板7、底板6を組み立てる。この際、4本の支柱2~5は、支持するシリコンウェハWの中心を基点として90°間隔になるように配置する。
上記組み立て後、ボート表面にSiC被覆膜をCVD法により形成し、本発明の縦型ウェハボート1が得られる。
【0027】
このように製造された縦型ウェハボート1を用いて、シリコンウェハWの熱処理を行う場合、支柱2~5の各段に形成されたウェハ支持部12~15により、コロ24を介してシリコンウェハWの下面を支持する。
ここで、ウェハ中心Cとコロ24頂部との径方向の距離d1は、ウェハ径をDとすると、d1は0.65×D以上0.85×D以下となる。
また、第2アーム22上面と、コロ24頂部との距離h2(第2アーム22上面とシリコンウェハWの下面までの距離)は、1mm以上2mm以下となる。
【0028】
同様にして、複数のシリコンウェハWを支柱2~5の各段に形成されたウェハ支持部12~15により保持した後、縦型ウェハボート1を炉内に配置し、所定の熱処理を実施する。
ここで、シリコンウェハWは、径方向に回転自在なコロ24を介して支持されるため、熱処理によって変形したシリコンウェハWの動きに伴ってコロ24が回転し、シリコンウェハWとウェハ支持部12~15との擦れが防止され、ウェハ裏面の傷やパーティクルの発生が抑制される。
また、熱処理によりシリコンウェハWの周縁部が反り上がるが、上下方向のウェハ支持部12~15の間隔h1は、3mm以上7mm以下に形成されているため、ウェハ周縁部と上方のウェハ支持部12~15との接触が防止される。
【0029】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、ウェハ支持部12~15の先端部に形成され、支持するシリコンウェハWの径方向に直交する軸部23と、軸部23に対しシリコンウェハWの径方向に回転自在に配設された円筒状のコロ24とを備え、シリコンウェハWは、コロ24を介して前記ウェハ支持部12~15により支持される。
これにより熱処理中にシリコンウェハWの中央が下方に撓み、ウェハ周縁部が上方に反り上がるように変形しても、ウェハ下面に接するコロ24は位置を変えることなく径方向に回転するため、シリコンウェハWの下面の擦れが防止される。
したがって、シリコンウェハWに熱処理を施した際に、パーティクル、及び傷の発生を抑制し、歩留まり低下を抑制することができる。
【0030】
尚、前記実施の形態においては、4本の支柱2~5に形成されたウェハ支持部12~15によりシリコンウェハWを支持する構成としたが、本発明にあっては、その構成に限定されるものではない。
例えば、3本の支柱に形成されたウェハ支持部によりシリコンウェハWを支持するようにしてもよい。その場合、支持するシリコンウェハWの中心を基点として120°間隔(360°÷支柱本数)に配置することが好ましい。それにより支持するシリコンウェハWからの荷重を周方向において均等に受け止めることができる。
或いは、5本以上の支柱によりシリコンウェハWを支持するようにしてもよく、その場合は、シリコンウェハWからの荷重を周方向において均等に受け止めるために、支持するシリコンウェハWの中心を基点として、360°÷支柱本数の角度間隔に支柱を配置することが好ましい。
【0031】
また、前記実施の形態においては、ウェハ支持部12~15は、第1アーム21と第2アーム22とによりL字状を形成するものとしたが、本発明にあってはウェハ支持部12~15の形状は限定されるものではない。例えば、支柱2~5から直線状のアームを径方向内側に延ばし、その先端にコロ24を配置する構成でもよい。
【0032】
また、前記実施の形態においては、ウェハボート1は、SiC基材の表面にSiC膜を形成したものとしたが、本発明にあっては、その構成に限定されず、例えば、SiC基材のみで形成されたものでもよい。
【実施例0033】
本発明に係る縦型ウェハボートについて、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に示した縦型ウェハボートを製造し、得られた縦型ウェハボートを用いてウェハの熱処理を行うことによりその性能を検証する実験を行った。
【0034】
(実験1)
実験1では、縦型ウェハボートに直径300mmの1枚のシリコンウェハを保持し、炉内温度1100℃にて5時間、4回の操業を連続して実施し、ウェハ上におけるパーティクル、及び傷の発生を観察した。
【0035】
(実施例1)
実施例1では、
図1乃至
図5に示した縦型ウェハボート1(直径304mmのシリコンウェハ用)を製造し、この縦型ウェハボート1に直径300mmの1枚のシリコンウェハを保持し、炉内温度1100℃にて5時間、4回の操業を連続して実施し、ウェハ上におけるパーティクル、及び傷の発生を観察した。
【0036】
(比較例1)
比較例1では、従来のように3本の支柱に形成されたウェハ支持部でシリコンウェハの周縁部を支持する縦型ウェハボート(直径304mmのシリコンウェハ用)を製造し、この縦型ウェハボートに直径300mmの1枚のシリコンウェハを保持し、炉内温度1100℃にて5時間、4回の操業を連続して実施し、ウェハ上におけるパーティクル、及び傷の発生を観察した。
【0037】
表1に実験1の結果を示す。尚、表1において、○はパーティクル、及び傷なし、△はパーティクル、及び傷が4箇所以下、×はパーティクル、及び傷が5箇所以上を示す。
表1に示すように実施例1では、4回の操業のうち、いずれもパーティクル発生数はゼロとなり、ウェハ下面の傷も確認されなかった。
一方、比較例1では、いずれの操業でも4個以上のパーティクル、及び傷が確認され、更にウェハ下面の傷が確認された。
【0038】
【0039】
本実施例の結果、本発明の構成によれば、熱処理においてシリコンウェハとの擦れを抑制し、パーティクルや傷の発生を抑えることができることを確認した。