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  • 特開-キャブレタアッセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096293
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】キャブレタアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F02M 13/02 20060101AFI20230630BHJP
   F02M 13/04 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
F02M13/02 C
F02M13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211933
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】511268591
【氏名又は名称】ハスクバーナ・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】関根 章善
(57)【要約】
【課題】アイドリング時において、ノズルから混合気通路への燃料のドリップを抑制するキャブレタアッセンブリを提供する。
【解決手段】混合気通路11に対して供給する燃料を貯留する燃料チャンバ12と、チェックバルブ13aを備え、混合気通路に対して燃料を吐出するノズル13であって、混合気通路11における燃料が自然落下する位置に配置されるノズル13と、混合気通路11におけるノズル13の位置よりも混合気流の下流側の位置において、アイドリング時に混合気通路11に対して燃料を吐出する複数の孔14と、燃料チャンバ12とノズル13とを接続するとともに、燃料チャンバ12と複数の孔14とを接続するための燃料通路15と、燃料チャンバ12とノズル13との間の燃料通路15に配置されることで、ノズル13へ向かう燃料流に対する抵抗となる抵抗体25とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気とを混合気通路において混合するキャブレタアッセンブリにおいて、
前記混合気通路に対して供給する前記燃料を貯留する燃料チャンバと、
チェックバルブを備え、前記チェックバルブの開閉で前記混合気通路に対して前記燃料を吐出するノズルと、
前記混合気通路における前記ノズルの位置よりも下流側の位置において、アイドリング時に前記混合気通路に対して前記燃料を吐出する1つまたは複数の孔と、
前記燃料チャンバと前記ノズルとを接続するとともに、前記燃料チャンバと前記孔とを接続するための燃料通路と、
前記燃料チャンバと前記ノズルとの間の前記燃料通路に配置されることで、前記ノズルへ向かう燃料流に対する抵抗となる抵抗体と、
を備えるキャブレタアッセンブリ。
【請求項2】
前記ノズルは、正規の使用姿勢である正状態において、前記混合気通路における前記燃料が自然落下する位置に配置される
請求項1に記載のキャブレタアッセンブリ。
【請求項3】
前記燃料通路は、前記燃料チャンバに接続される共通燃料通路と、前記共通燃料通路と前記ノズルとを接続する第1燃料通路と、前記共通燃料通路と前記孔とを接続する第2燃料通路と、を備える
請求項1または2に記載のキャブレタアッセンブリ。
【請求項4】
前記第1燃料通路は、前記燃料チャンバから前記ノズルまでの途中に、室を備え、
前記室は、前記燃料チャンバから前記燃料が流入する流入口および前記室から前記ノズルへ前記燃料が流出する流出口を備え、
前記抵抗体は、前記流入口の位置および前記流出口の位置のうち少なくとも1つの位置に配置される
請求項3に記載のキャブレタアッセンブリ。
【請求項5】
前記抵抗体は、金属メッシュシートで構成されている
請求項1ないし4のうち何れか1項に記載のキャブレタアッセンブリ。
【請求項6】
前記抵抗体は、金属メッシュシートで構成され、
前記抵抗体は、前記室に嵌合可能な形状を有している
請求項4に記載のキャブレタアッセンブリ。
【請求項7】
前記混合気通路は、前記ノズルの位置よりも下流側の位置にスロットルバルブを備え、
前記孔は、複数の孔であり、
前記複数の孔の少なくとも1つの孔は、前記混合気通路内での前記スロットルバルブの開閉動作範囲と重なる位置に配置されている
請求項1ないし6のうち何れか1項に記載のキャブレタアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブレタアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
チェーンソー、刈払い機、ブロワーなどの携帯作業機に搭載されるエンジンは、キャブレタアッセンブリを備えている(特許文献1参照)。キャブレタアッセンブリは、混合気通路と、スロットルバルブと、燃料チャンバと、ノズルと、複数の孔と、を備えている。混合気通路では、燃料と空気とが混合される。スロットルバルブは、混合通気路に配置されて混合気量を調整する。燃料チャンバは、燃料タンクから供給された燃料を貯留する。ノズルは、スロットルレバー操作がされたアイドリング時よりも高回転時において燃料チャンバからの燃料を混合通気路に吐出する。複数の孔は、アイドリング時において、吸引負圧によって少量の燃料を吐出する。燃料チャンバとノズルと複数の孔とは燃料通路によって連通している。
【0003】
アイドリング時は、スロットルバルブがほぼ閉じた状態となり、燃料は、吸入負圧によって1つの孔から少量の燃料が混合気通路に吐出される。このとき、ノズルのチェックバルブは、燃料通路が混合気通路よりも負圧となることで、閉じた状態である。高回転時は、スロットルバルブが開き、燃料通路の方が混合気通路よりも負圧となることで、さらに燃料がノズルからも混合気通路に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-623511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アイドリング時において、ノズルのチェックバルブは、閉じた状態にあるべきであるにもかかわらず、振動などによって、一時的に開いてしまい、燃料がドリップしてしまうことがある。エンジンの高回転時からアイドリング状態に遷移したときにも、チェックバルブが開状態から閉状態に応答性良く戻らないことで、ノズルから燃料がドリップしてしまうこともある。そうすると、アイドリング時において、混合気に含まれる燃料が過多となり、エンジンの回転数が不安定となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するキャブレタアッセンブリは、燃料と空気とを混合気通路において混合するキャブレタアッセンブリにおいて、前記混合気通路に対して供給する前記燃料を貯留する燃料チャンバと、チェックバルブを備え、前記チェックバルブの開閉で前記混合気通路に対して前記燃料を吐出するノズルと、前記混合気通路における前記ノズルの位置よりも下流側の位置において、アイドリング時に前記混合気通路に対して前記燃料を吐出する1つまたは複数の孔と、前記燃料チャンバと前記ノズルとを接続するとともに、前記燃料チャンバと前記孔とを接続するための燃料通路と、前記燃料チャンバと前記ノズルとの間の前記燃料通路に配置されることで、前記ノズルへ向かう燃料流に対する抵抗となる抵抗体と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、アイドリング時、孔から燃料が混合気通路に吐出されるとともに、燃料通路が混合気通路よりも負圧となり、ノズルのチェックバルブが閉じられる。チェックバルブは、閉じた状態において、様々な要因で一時的に開いてしまうことがある。このような場合であっても、抵抗体によって燃料のノズルへの流れが妨げられている。したがって、アイドリング時、ノズルから混合気通路への燃料のドリップを抑えることができる。
【0008】
上記キャブレタアッセンブリにおいて、前記ノズルは、正規の使用姿勢である正状態において、前記混合気通路における前記燃料が自然落下する位置に配置される構成としてもよい。上記構成によれば、正状態において、アイドリング時におけるノズルから混合気通路への燃料のドリップを抑えることができる。
【0009】
上記キャブレタアッセンブリにおいて、前記燃料通路は、前記燃料チャンバに接続される共通燃料通路と、前記共通燃料通路と前記ノズルとを接続する第1燃料通路と、前記共通燃料通路と前記孔とを接続する第2燃料通路と、を備える構成としてもよい。上記構成によれば、燃料チャンバからノズルおよび孔へ燃料を供給する燃料通路の配管構造を簡素化できる。
【0010】
上記キャブレタアッセンブリにおいて、前記第1燃料通路は、前記燃料チャンバから前記ノズルまでの途中に、室を備え、前記室は、前記燃料チャンバから前記燃料が流入する流入口および前記室から前記ノズルへ前記燃料が流出する流出口を備え、前記抵抗体は、前記流入口の位置および前記流出口の位置のうち少なくとも1つの位置に配置されるように構成してもよい。上記構成によれば、抵抗体を、室に配置するだけで、抵抗体を流入口の位置および流出口の位置のうち少なくとも1つの位置に配置できる。
【0011】
上記キャブレタアッセンブリにおいて、前記抵抗体は、金属メッシュシートで構成してもよい。上記構成によれば、抵抗体を簡単に製造することができる。そして、抵抗の調整のため、目数の異なる金属メッシュシートを使って容易に抵抗体を製造することができる。
【0012】
上記キャブレタアッセンブリにおいて、前記抵抗体は、金属メッシュシートで構成され、前記抵抗体は、前記室に嵌合可能な形状を有している構成としてもよい。上記構成によれば、抵抗体を室の所定位置に容易に配置することができる。
【0013】
上記キャブレタアッセンブリにおいて、前記混合気通路は、前記ノズルの位置よりも下流側の位置にスロットルバルブを備え、前記孔は、複数の孔であり、前記複数の孔の少なくとも1つの孔は、前記混合気通路内での前記スロットルバルブの開閉動作範囲と重なる位置に配置されている構成としてもよい。
【0014】
上記構成によれば、スロットルバルブが開かれるに連れて、混合気通路の吸入負圧によって燃料が吸い出される孔が増え、混合気通路に供給される燃料を次第に増加させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アイドリング時において、ノズルから混合気通路への燃料のドリップを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】キャブレタアセンブリの構成を示す模式図である。
図2】室に配置されるスクリーンの動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1および図2を用いて、キャブレタアッセンブリについて説明する。
このキャブレタアッセンブリは、刈払機、チェーンソー、ヘッジトリマなど各種の携帯型作業機に搭載されるエンジンに設けられる。ここでのエンジンは、一例として、2ストロークエンジンである。
【0018】
キャブレタアッセンブリは、本体10を備え、本体10は、混合気通路11と、燃料チャンバ12と、ノズル13と、孔14と、燃料通路15と、を備えている。
混合気通路11は、混合気通路11を構成する筒状の通路壁11aの内側に構成されている。混合気通路11は、一例として気流Fに対して上流側にチョークバルブ(不図示)が配置されている。気流Fの方向における下流側には、スロットルバルブ16が配置されている。混合気通路11において、チョークバルブとスロットルバルブ16との間には、気流Fを絞り流速を増加させるベンチュリ17が構成されている。ベンチュリ17は、通路壁11aが内側に膨出していることで混合気通路11を絞っている。
【0019】
燃料チャンバ12は、燃料タンク31からの燃料を一時的に貯留する。一例として、燃料チャンバ12は、ほぼ大気圧に維持されている。燃料チャンバ12は、チェックバルブ44を介して燃料通路15に燃料を供給する。
【0020】
ノズル13は、混合気通路11に臨み、混合気通路11の通路壁11aの中で燃料が自然落下する位置に配置されている。ノズル13は、一例として携帯型作業機の正規の使用姿勢である正状態における上側に配置されている。すなわち、ノズル13は、混合気通路11の軸方向に対して直交する断面視において、混合気通路11の上半分の何れかの位置に配置されている。燃料は、ノズル13から自重落下する。また、ノズル13は、ベンチュリ17において最も絞られた位置または気流Fの上流側に配置されている。
【0021】
ノズル13は、チェックバルブ13aを備えている。チェックバルブ13aは、逆止弁であって、燃料通路15から供給される燃料を混合気通路11へ吐出することを許容し、混合気通路11から燃料通路15への逆流を阻止する。チェックバルブ13aは、アイドリング時、混合気通路11よりも燃料通路15内が負圧となることによって閉じた状態となる。アイドリング時よりも高回転となると、チェックバルブ13aは、混合気通路11内が燃料通路15よりも負圧となることで開き、これにより、吸引負圧によって混合気通路11に対して燃料を吐出する。
【0022】
燃料チャンバ12とノズル13および孔14との間は、燃料通路15によって接続されている。燃料通路15は、燃料チャンバ12に接続される共通燃料通路21と、共通燃料通路21とノズル13とを接続する第1燃料通路22と、共通燃料通路21と孔14とを接続する第2燃料通路23と、を備えている。共通燃料通路21と第1燃料通路22と第2燃料通路23とは連通している。共通燃料通路21は、一端がチェックバルブ44を介して燃料チャンバ12と接続され、かつ、他端が第1燃料通路22と第2燃料通路23とに分岐している。共通燃料通路21、第1燃料通路22および第2燃料通路23の直径は、一例として数百μm程度である。したがって、狭い通路である。また、共通燃料通路21、第1燃料通路22および第2燃料通路23の各々は、位置によって太さが異なっていてもよい。
【0023】
第1燃料通路22において、共通燃料通路21との接続端とノズル13との間には、室24が設けられている。室24は、一面が開口した凹部で構成された小部屋である。ここでは、一例として、円形形状を有した凹部である。第1燃料通路22は、共通燃料通路21との接続端と室24との間が第1通路22aであり、室24とノズル13との間が第2通路22bである。室24の底面は、第1通路22aの端である燃料の流入口24aを備えるとともに、第2通路22bの端である流出口24bを備えている。室24は、流入口24aから流入した燃料を流出口24bから流出するまでの間、一時的に燃料を貯留するバッファとなる。
【0024】
室24は、ドリルで第1通路22aおよび第2通路22bを形成するための凹部である。そして、室24は、燃料が外部に漏れないようにキャップで閉塞される。室24には、燃料チャンバ12からノズル13への燃料流を抑制する抵抗となる抵抗体25が配置される。
【0025】
抵抗体25は、金属メッシュシートを室24に嵌合可能な有底筒形状または筒形状に成形したスクリーンである。金属メッシュシートは、一例として、ステンレス製のメッシュシートである。また、メッシュサイズは、1インチの中にある目数が10個以上である。また、500個以下である。このような抵抗体25は、燃料が通過可能でありながら、燃料の流れの抵抗となる部材である。抵抗体25は、流入口24aおよび流出口24bの2か所で燃料流を抑制する抵抗となる。なお、抵抗体25は、メッシュなので燃料に含まれる異物を補足することもできる。このような抵抗体25は、製造が容易であり、かつ、容易に交換可能である。抵抗体25は、抵抗を調整するため、目数の異なる金属メッシュシートで製造して、交換することもできる。有底筒形状の抵抗体25は、底面で流入口24aおよび流出口24bを塞ぐように配置される。抵抗体25における底面に対して立設された側面は、室24に配置するための位置決め壁である。
【0026】
燃料チャンバ12からノズル13までの間において、燃料チャンバ12からの燃料は、第1通路22a、室24および第2通路22bを通じてノズル13に至る。室24において、燃料は、一時的に貯留される。アイドリング時、チェックバルブ13aは、燃料通路15が混合気通路11よりも負圧となることで、閉じた状態が維持される。
【0027】
この際、振動が加わると、チェックバルブ13aが一時的に開いてしまうことがある。特に、アイドリング時にアスファルトなどの硬い路面に携帯型作業機が置かれると、土の地面に置かれたときよりも、キャブレタアッセンブリにも大きな振動が加わってしまう。このような場合、振動によって、チェックバルブ13aが一時的に開いてしまうことがある。また、高回転時からアイドリング状態に戻ったときに、応答性良く、チェックバルブ13aが閉じないこともある。
【0028】
このような場合であっても、第1燃料通路22には、室24に抵抗体25が配置されている。したがって、燃料は、ノズル13の方向に流れにくくなり、その結果、混合気通路11へのドリップが抑えられる。
【0029】
アイドリング時より高回転となり、チェックバルブ13aは、第1燃料通路22よりも混合気通路11の方が負圧となることで、開いた状態となる。この際、燃料チャンバ12からノズル13に供給される燃料は、流入口24aに配置された抵抗体25および流出口24bに配置された抵抗体25を通過してノズル13に至る。そして、燃料は、第2通路22bから吸い出されて混合気通路11に吐出される。
【0030】
孔14は、スロットルバルブ16の近くの通路壁11aに配置されている。孔14は、複数の孔、本実施形態では3つの第1孔14a、第2孔14bおよび第3孔14cで構成されている。第1孔14a、第2孔14bおよび第3孔14cは、気流Fの流れる方向に並んでいる。本実施形態では、気流Fの最下流に位置するものが第1孔14a、1つ上流側に遡ったものが第2孔14b、最上流に位置するものが第3孔14cである。第1孔14a、第2孔14bおよび第3孔14cは、ノズル13に対してサブジェットとなる。
【0031】
3つの孔14a,14b,14cが設けられる位置は、例えば、少なくとも1つの孔がスロットルバルブ16の開閉動作範囲16aと重なるように配置される。本実施形態では、一例として、第1孔14aがスロットルバルブ16の回転中心Oにほぼ対応する位置に配置されている。また、第3孔14cが、最も下流側位置に位置し開閉動作範囲16aの下流側に対応して配置されている。
【0032】
スロットルバルブ16は、ユーザのスロットルレバー操作に合わせて混合気通路11を開閉する。スロットルバルブ16は、キャブレタからエンジンに供給される混合気量を調整し、エンジン回転数が変化していく。一例として、スロットルバルブ16は、バタフライバルブであって、開閉プレートと、開閉プレートの回転中心Oであって、開閉プレートを回動可能に支持する回動軸と、を備えている。
【0033】
図1は、アイドリング状態におけるスロットルバルブ16の状態を示している。アイドリング状態では、スロットルバルブ16がほぼ閉じた状態にあり、スロットルバルブ16と通路壁11aとの間に微小隙間が形成されている。したがって、微小隙間では、気流Fの流速が高められる。具体的に、スロットルバルブ16の先端は、第1孔14aと第2孔14bの間に位置している。スロットルバルブ16の先端よりも上流に位置している第1孔14aは、流速が高められていることで、吸引負圧によって、アイドリング用の燃料が吸い出される。そして、スロットルバルブ16の先端よりも上流に位置している第2孔14bおよび第3孔14cからは、燃料は吐出されない。
【0034】
そして、スロットルバルブ16が開くに連れて、第2孔14bからも燃料が吐出されるようになる。すなわち、第2孔14bにも、吸入負圧がかかり燃料が吐出し始める。さらに、スロットルバルブ16が開くと、第3孔14cからも燃料が吐出されるようになる。すなわち、孔14a,14b,14cの全てから燃料が吐出される。
【0035】
次に、燃料チャンバ12に燃料を供給する燃料供給機構30について説明する。
燃料供給機構30は、燃料タンク31とタンク接続部32で接続されている。タンク接続部32は、接続通路35dを通じてバッファ室35と接続されている。バッファ室35は、ポンプダイアフラム35aと、ポンプダイアフラム35aによって区画される下側のパルス室35bおよび上側のポンプ室35cと、備えている。ポンプダイアフラム35aは、ゴム、樹脂などの極薄シートである。接続通路35dは、燃料の逆流を防ぐ逆止弁35eを備えている。
【0036】
パルス室35bは、クランクケース34に接続されている。ポンプダイアフラム35aは、ピストンの往復動によりクランクケース34内の圧力の増減(脈動)に応じて変位される。ポンプ室35cは、圧力の増減に連動し、内部の燃料を送り出す。ポンプ室35cの下流側は、接続通路36が接続されている。接続通路36は、逆止弁35fを備えている。燃料は、ポンプ室35cの上流の逆止弁35eおよび下流の逆止弁35fにより逆流が防止される。接続通路36は、逆止弁35fの下流にフィルタ37を備えている。フィルタ37は、燃料に含まれる異物を補足する。フィルタ37は、一例として金属メッシュシートである。フィルタ37は、一例として、抵抗体25と同じ金属メッシュシートが用いられている。
【0037】
燃料チャンバ12と接続通路36の接続部には、インレットバルブ38が配置されている。インレットバルブ38は、接続部を開閉する開閉弁であり、燃料チャンバ12に流入する燃料を調整する。インレットバルブ38は、エンジン停止時、接続部を塞ぎ、運転中、ダイアフラム39の変位に追従して接続部を開いた状態で常に変位する。インレットバルブ38には、レバー41が接続されている。
【0038】
レバー41は、回動軸に回動可能に支持されている。レバー41は、回動軸に対して、一方の端部にインレットバルブ38が取り付けられている。一方の端部に対して回動軸を挟んだ反対側の他端は、スプリング42が取り付けられている。スプリング42は、エンジン停止時に、インレットバルブ38を閉じるようにレバー41の他端を上方に向って付勢する。この結果、レバー41の一端は、インレットバルブ38が閉じた状態となる。
【0039】
ダイアフラム39も、ゴム、樹脂などの極薄シートである。ダイアフラム39は、カバー43によって固定されている。ダイアフラム39は、燃料チャンバ12の燃料がエンジンに送り込まれると下降する。すると、ダイアフラム39の中央に配置された突部39aは、レバー41をスプリング42の付勢力に抗して押し下げる。これにより、インレットバルブ38は、上昇することで接続部を開く。これにより、不足した燃料が燃料チャンバ12へと供給される。
【0040】
燃料チャンバ12には、燃料タンク31に接続されたプライマリポンプ45が配置されている。初めてエンジンを始動するときなどは、燃料チャンバ12には燃料が無いこともある。この場合、プライマリポンプ45は、数回押されることで、燃料タンク31内の燃料を引っ張り上げ、燃料チャンバ12に燃料を供給する。
【0041】
燃料チャンバ12と共通燃料通路21との接続部は、チェックバルブ44を備えている。チェックバルブ44は、逆止弁である。チェックバルブ44は、プライマリポンプ45で燃料を吸い上げるとき、第1孔14a、第2孔14bおよび第3孔14cから空気が入り込むのを防ぐ。
【0042】
(動作説明)
エンジン停止時、スロットルバルブ16は、混合気通路11を閉じた状態にある。燃料チャンバ12に燃料がないときには、プライマリポンプ45によって燃料チャンバ12に燃料を供給する。ノズル13のチェックバルブ13aも閉じた状態にある。
【0043】
アイドリング時には、スロットルバルブ16が若干開いた状態になり、先端が第1孔14aと第2孔14bとの間に位置する。この状態では、スロットルバルブ16の先端と通路壁11aとの間に形成された微小隙間で気流Fの流速が高められる。これにより、第1孔14aは、混合気通路11よりも負圧となって、第2燃料通路23からアイドリング用の燃料が混合気通路11に吸い出される。このとき、チェックバルブ13aは、混合気通路11よりも燃料通路15内が負圧となることによって閉じた状態が維持されている。
【0044】
スロットルレバー操作がされてスロットルバルブ16が徐々に開いていきアイドリング時よりも高回転になっていくと、第2孔14bも吸入負圧がかかることで燃料が吐出される。さらにスロットルバルブ16がさらに開くに連れて、第3孔14cも吸入負圧がかかることで燃料が吐出される。その後、混合気通路11において、気流Fの流速が高まり、混合気通路11が第1燃料通路22よりも負圧となると、チェックバルブ13aも開き、第1燃料通路22の燃料が吐出し始める。すなわち、混合気通路11には、ノズル13と孔14a,14b,14cから燃料が供給される。第1燃料通路22において、燃料は、第1通路22a、室24、第2通路22bの順で流れて行く。
【0045】
アイドリング時に戻ると、スロットルバルブ16が閉じていくことで、混合気の流速が順次下がる。これにより、チェックバルブ13aが閉じ、次いで、第3孔14c、第2孔14bの順で燃料の吐出が止まる。第1孔14aからのみ燃料が吐出される状態となる。このようなアイドリング時には、第1通路22a、室24、および、第2通路22b、第2燃料通路23に燃料が残留している。
【0046】
アイドリング時に硬い路面に携帯型作業機が置かれると、土の地面に置かれたときよりも、キャブレタアッセンブリにも大きな振動が加わってしまう。このような場合、振動によって、チェックバルブ13aが一時的に開いてしまうことがある。また、高回転時からアイドリング状態に戻ったときに、応答性良く、チェックバルブ13aが閉じないこともある。このような場合であっても、室24には、抵抗体25が配置されており、第1燃料通路22内のノズル13への燃料流を抑制する抵抗となっている。したがって、アイドリング時に一時的にチェックバルブ13aが開いてしまうことがあっても、第1燃料通路22の燃料を混合気通路11にドリップしにくくできる。これにより、エンジンの回転数を安定させることができる。
【0047】
(実施形態の効果)
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)アイドリング時、第1孔14aから燃料が混合気通路11に吐出されるとともに、燃料通路15が混合気通路11よりも負圧となり、チェックバルブ13aが閉じられる。閉じた状態にあるチェックバルブ13aが一時的に開いてしまうことがあっても、抵抗体25によって燃料のノズル13への流れが妨げられている。したがって、アイドリング時において、ノズル13から混合気通路11への燃料のドリップを抑えることができる。
【0048】
(2)携帯作業機は、正状態以外の状態よりも正状態で多く使用されるのが通常である。長い時間使用される正状態において、ノズル13は、混合気通路11における燃料が自然落下する位置に配置されている。したがって、正状態において、アイドリング時におけるノズル13から混合気通路11への燃料ドリップ抑制効果を効果的に得ることができる。
【0049】
(3)アイドリング時だけでなく、アイドリング時からスロットルバルブ16が全開となるまでの間、すなわち本来であればノズル13から燃料が吐出しないように制御すべき間において、ノズル13から燃料が混合気通路11へドリップしてしまうことを抑制できる。これにより、このような間においても、混合気通路11に供給される燃料を最適化できる。また、ノズル13から燃料が吐出されるタイミングも最適化できる。
【0050】
(4)燃料通路15は、共通燃料通路21から第1燃料通路22および第2燃料通路23が分岐される構造である。したがって、燃料チャンバ12からノズル13および孔14へ燃料を供給する燃料通路15の配管構造を簡素化できる。
【0051】
(5)室24は、一面が開口した凹部で構成された部屋である。したがって、抵抗体25を室24に容易に取り付けることができる。
(6)抵抗体25は、金属メッシュシートによって室24に嵌合可能な形状を有している。したがって、室24には、抵抗体25を流入口24aおよび流出口24bの位置に対してずれにくい状態で配置することができる。
【0052】
(7)抵抗体25は、金属メッシュシートによって容易に製造することができる。また、抵抗の調整のため、目数の異なる金属メッシュシートを使って抵抗体25を製造することができる。その結果、抵抗体25の目数を変更して抵抗を容易に調整できる。
【0053】
(8)スロットルバルブ16が開かれるに連れて、混合気通路11の負圧によって燃料が吸い出される孔が増え、混合気通路11に供給される燃料を次第に増加させることができる。
【0054】
(変形例)
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・孔14の数は、3つに限定されるものではない。孔14の数は、1つでも2つでもよいし、4つ以上であってもよい。孔14の数は、孔14の太さや形状などによって適宜設定することができる。
【0055】
アイドリング時に、スロットルバルブ16の先端は、第2孔14bと第3孔14cの間に位置してもよいし、第3孔14cよりも上流側に位置するようにしてもよい。また、第3孔14cも、開閉動作範囲16aと重なるように配置されていてもよい。
【0056】
すなわち、アイドリング時に吐出する燃料が適当となるように、孔14の数、形状などが設定される。
・抵抗体25は、室24に嵌合可能な形状を有していなくてもよい。抵抗体25は、流入口24aおよび流出口24bを塞ぐように配置されていればよい。したがって、流入口24aおよび流出口24bを塞ぐようにシートを接着剤やビスなどの固定部材によって固定するようにしてもよい。また、流入口24aおよび流出口24bを別々の金属メッシュシートで塞ぐように固定してもよい。
【0057】
・抵抗体25は、アイドリング時におけるノズル13からのドリップを抑制できるのであれば、流入口24aおよび流出口24bの何れか一方にのみに配置するだけでもよい。
・抵抗体25は、燃料が通過可能でありながら、燃料の流れの抵抗となる部材であれば、金属メッシュシートに限定されるものではなく、例えば燃料の流れの抵抗となる多孔質体などであってもよい。
【0058】
・抵抗体25は、金属メッシュシートを複数重ねたものでも良い。また、抵抗体25は、樹脂製のメッシュシートであってもよい。
・第1燃料通路22は、室24を省略してもよい。この場合、例えば、第1燃料通路22内には、抵抗体25として、多孔質体を配置する構成としてもよい。
【0059】
・燃料通路15は、共通燃料通路21を省略し、第1燃料通路22が燃料チャンバ12とノズル13とを接続するとともに、第2燃料通路23が燃料チャンバ12と孔14とを接続するようにしてもよい。この場合において、第1燃料通路22には、室24を省略してもよいし、省略しなくてもよい。室24を省略した場合は、第1燃料通路22の途中や入り口や出口に抵抗体25を配置する構成となる。
【0060】
・ノズル13は、正規の使用姿勢である正状態において、混合気通路11に燃料が自然落下する位置に配置されていなくてもよい。例えば、ノズル13は、混合気通路11の軸方向に対して直交する断面視において、混合気通路11の下半分の何れかの位置に配置されていてもよい。このような場合であっても、携帯作業機を上下逆さまの状態で使用するときには、ノズル13が上側に位置することになる。このような場合に、アイドリング時、ノズル13から混合気通路11への燃料のドリップを抑えることができる。
【0061】
・スロットルバルブ16がアイドリング時であっても、全閉となるものであってもよい。
・キャブレタアッセンブリとしては、シリンダ掃気用の先導空気を導入する空気通路をさらに備えた層状掃気2ストロークエンジンに適用することもできる。この場合、キャブレタアッセンブリは、混合気通路11と空気通路とを備える。そして、混合気通路11は、空気通路の上側に、ノズル13および孔14を備え得る混合気通路11が配置される。掃気の際は、先ず空気通路の先導空気が、燃焼室内の排気ガスを掃気する。このため、混合気で排気ガスを掃気する2ストロークエンジンに比べて、掃気の際に排気ガスとともに排気されてしまう混合気量を減少させることができる。
【0062】
・エンジンとして、チェーンソーや、刈払い機、ブロワー等の携帯作業機などに利用できる。
【符号の説明】
【0063】
11…混合気通路
11a…通路壁
12…燃料チャンバ
13…ノズル
13a…チェックバルブ
14…孔
14a…第1孔
14b…第2孔
14c…第3孔
16…スロットルバルブ
17…ベンチュリ
21…共通燃料通路
22…第1燃料通路
22a…第1通路
22b…第2通路
23…第2燃料通路
24…室
24a…流入口
24b…流出口
25…抵抗体
図1
図2