(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096295
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】枝縄搬送兼保管装置及び枝縄吊下げ機構
(51)【国際特許分類】
A01K 91/18 20060101AFI20230630BHJP
B63B 35/14 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A01K91/18 B
B63B35/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211938
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】501168814
【氏名又は名称】国立研究開発法人水産研究・教育機構
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】横田 耕介
(72)【発明者】
【氏名】原 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】薄 光憲
(72)【発明者】
【氏名】上原 崇敬
(72)【発明者】
【氏名】大島 達樹
(72)【発明者】
【氏名】畠山 茂
【テーマコード(参考)】
2B105
【Fターム(参考)】
2B105AG15
2B105CW01
2B105CW05
(57)【要約】
【課題】はえなわ漁における投縄及び揚縄の作業、特に枝縄の搬送や保管に関連する作業を省人、省力化することができる枝縄搬送兼保管装置及び枝縄吊下げ機構を提供する。
【解決手段】はえなわを用いる漁船300において、はえなわが備える枝縄を搬送かつ保管する枝縄搬送兼保管装置100であって、漁船300の船首側の枝縄巻取り場310と、漁船300の船尾側の投縄作業場320と、の間を循環するよう漁船300の上に配置されたガイドレールと、複数の吊下げ部を有し、ガイドレールに沿って移動可能に取り付けられた移動機構と、コイル状に巻き取られた枝縄の一部を、コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持可能な枝縄保持部を有し、移動機構の吊下げ部に吊り下げられた複数の枝縄吊下げ機構と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はえなわを用いる漁船において、前記はえなわが備える枝縄を搬送かつ保管する枝縄搬送兼保管装置であって、
前記漁船の船首側の枝縄巻取り場と、前記漁船の船尾側の投縄作業場と、の間を循環するよう前記漁船の上に配置されたガイドレールと、
複数の吊下げ部を有し、前記ガイドレールに沿って移動可能に取り付けられた移動機構と、
コイル状に巻き取られた前記枝縄の一部を、前記コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持可能な枝縄保持部を有し、前記移動機構の前記吊下げ部に吊り下げられた複数の枝縄吊下げ機構と、
を備える、
枝縄搬送兼保管装置。
【請求項2】
前記枝縄保持部は、前記枝縄を、前記軸方向が水平方向を向く状態で保持する、
請求項1に記載の枝縄搬送兼保管装置。
【請求項3】
前記枝縄保持部は、
前記コイル状の一部を、前記コイル状の軸方向から挟み込む挟み込み部と、
前記枝縄の上部を引っ掛ける引っ掛け部と、
を有する、
請求項1又は2に記載の枝縄搬送兼保管装置。
【請求項4】
前記枝縄保持部の挟み込み部は、前記引っ掛け部により前記枝縄の上端が引っ掛けられた状態で前記枝縄の下部を収納する収納袋である、
請求項3に記載の枝縄搬送兼保管装置。
【請求項5】
前記枝縄保持部は、前記挟み込み部が前記引っ掛け部であり、前記挟み込み部は、大径フレームと、前記大径フレームに面して配置された小径フレームと、を有する、
請求項3に記載の枝縄搬送兼保管装置。
【請求項6】
前記枝縄吊下げ機構は、2つの前記枝縄保持部が一対に配置されて1組の前記枝縄保持部を形成すると共に、複数組の前記枝縄保持部が上下に配置されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の枝縄搬送兼保管装置。
【請求項7】
前記枝縄巻取り場から前記投縄作業場への前記ガイドレールの往路側に吊り下げられた前記枝縄吊下げ機構と、前記投縄作業場から前記枝縄巻取り場への前記ガイドレールの復路側に吊り下げられた前記枝縄吊下げ機構との間に設置された衝突抑止板を備える、
請求項1から6のいずれか1項に記載の枝縄搬送兼保管装置。
【請求項8】
前記漁船は前記ガイドレールの隣に作業者が通行可能な通路を備え、
前記ガイドレールと前記通路との間に設置された第2衝突抑止板を備える、
請求項1から7のいずれか1項に記載の枝縄搬送兼保管装置。
【請求項9】
前記ガイドレールは、前記漁船の一方の舷側に設けられた舷門よりも前記船首側に配置された前記枝縄巻取り場から他方の舷側に延伸されて折れ曲がり、前記他方の舷側に沿って前記漁船の船尾側の前記投縄作業場に至るように配置されている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の枝縄搬送兼保管装置。
【請求項10】
前記ガイドレールは、前記漁船の倉庫を通過する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の枝縄搬送兼保管装置。
【請求項11】
船首側の枝縄巻取り場と船尾側の投縄作業場との間を循環するよう船上に配置されたガイドレールと、複数の吊下げ部を有し、前記ガイドレールに沿って移動可能に取り付けられた移動機構と、を備える、はえなわを用いる漁船において、前記はえなわが備える枝縄を搬送かつ保管する枝縄搬送兼保管装置において、複数用いられる枝縄吊下げ機構であって、
コイル状に巻き取られた枝縄の一部を、前記コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持可能な枝縄保持部を有し、前記移動機構の各吊下げ部に吊り下げられる、
枝縄吊下げ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝縄搬送兼保管装置及び枝縄吊下げ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
まぐろ漁等において、一本の幹縄に多数の枝縄を取り付けたはえなわによって魚を捕獲する、いわゆるはえなわ漁が行われることがある。
特許文献1においては、漁具の人手による運搬を少なくするために、船首側と船尾側とを循環するように配置されたレールに沿ってコンベヤが駆動し、前記コンベヤによって漁具収納用の籠を運搬する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のはえなわ漁において、投入したはえなわを巻き上げる(揚縄)際、幹縄から枝縄を取り外す。幹縄から取り外した枝縄は、1つずつコイル状にまとめた後、前記コイル状がばらけないようにコイル状の一部をロープで固縛する。コイル状にまとめた枝縄は、カゴに平積みするように収容される。再び幹縄に枝縄を取り付けて洋上に投下する(投縄)際は、カゴに平積みされた枝縄を1つずつ取り出し、ロープの固縛をほどく必要がある。
【0005】
例えば、遠洋まぐろはえなわ漁船においては、枝縄が2500本から3000本程度使用される。このとき、揚縄の際にロープによって枝縄を固縛したり、投縄の際に固縛をほどいたりする作業は、作業者にとって負担となる。このため、作業者の労力軽減や、人員削減による漁業経営の改善、及び乗組員不足の解消に課題がある。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、はえなわ漁における投縄及び揚縄の作業、特に枝縄の搬送や保管に関連する作業を省人、省力化することができる枝縄搬送兼保管装置及び枝縄吊下げ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る枝縄搬送兼保管装置は、はえなわを用いる漁船において、前記はえなわが備える枝縄を搬送かつ保管する枝縄搬送兼保管装置であって、前記漁船の船首側の枝縄巻取り場と、前記漁船の船尾側の投縄作業場と、の間を循環するよう前記漁船の上に配置されたガイドレールと、複数の吊下げ部を有し、前記ガイドレールに沿って移動可能に取り付けられた移動機構と、コイル状に巻き取られた前記枝縄の一部を、前記コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持可能な枝縄保持部を有し、前記移動機構の前記吊下げ部に吊り下げられた複数の枝縄吊下げ機構と、を備える。
【0008】
この発明によれば、コイル状に巻き取られた枝縄の一部を、コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持可能な枝縄保持部を有する。これにより、枝縄保持部に枝縄を配置することのみで、コイル状に巻き取られた枝縄がばらけないように個別に保持することができる。よって、揚縄時に枝縄をカゴ等に収納するためのロープ等による固縛作業を省略することができる。また、枝縄保持部は枝縄を挟み込むように固定する。よって、船上の揺れに対して適切に枝縄を保持することができる。
【0009】
また、複数の吊下げ部を有し、ガイドレールに沿って移動可能に取り付けられた移動機構を有する。これにより、枝縄保持部によって保持された複数の枝縄を、ガイドレールに沿って船首側の枝縄巻取り場から船尾側の投縄作業場まで移動させる、すなわち搬送することができる。よって、揚縄時に枝縄をカゴ等に収納する作業や、船尾側に運搬された枝縄をカゴ等から取り出す作業等を省略することができる。
更に、投縄時に投縄作業場で吊り下げられている枝縄を枝縄保持部から直接取り出すことができる。これにより、投縄時にカゴ等から取り出した枝縄の固縛を解く解放作業を省略することができる。
【0010】
また、ガイドレールが、漁船の船首側の枝縄巻取り場と、漁船の船尾側の投縄作業場と、の間を循環するよう配置されている。これにより、保持され吊り下げられた複数の枝縄をガイドレールに沿って循環させることができる。よって、枝縄の搬送と保管を兼ねることができる。
このように、はえなわを用いる漁船における従来の枝縄の搬送と保管を兼ねる装置を提供することにより、はえなわを用いる漁船における投縄及び揚縄作業、特に枝縄の搬送や保管に関連する作業の省人化や省力化を図ることができる。
【0011】
また、前記枝縄保持部は、前記枝縄を、前記軸方向が水平方向を向く状態で保持してもよい。
【0012】
この発明によれば、枝縄保持部は、枝縄を、軸方向が水平方向を向く状態で保持する。つまり、コイル状に巻き取られた枝縄が縦置きされる。これにより、枝縄を搬送又は保管する際に必要なスペースを小さくすることができる。
【0013】
また、前記枝縄保持部は、前記コイル状の一部を、前記コイル状の軸方向から挟み込む挟み込み部と、前記枝縄の上部を引っ掛ける引っ掛け部と、を有してもよい。
【0014】
この発明によれば、枝縄保持部は、枝縄を挟み込む挟み込み部と、枝縄の上部を引っ掛ける引っ掛け部と、を有する。枝縄を挟み込むことに加えて上部を引っ掛け部によって保持することで、より確実に枝縄を保持することができる。
【0015】
また、前記枝縄保持部の挟み込み部は、前記引っ掛け部により前記枝縄の上端が引っ掛けられた状態で前記枝縄の下部を収納する収納袋であってもよい。
【0016】
この発明によれば、挟み込み部は、引っ掛け部に枝縄の上端が引っ掛けられた状態で枝縄の下部を収納する収納袋である。これにより、保持された枝縄に風等が直接当たることを防ぐことができる。よって、風等により保持した枝縄がばらけることを防ぎ、より確実に枝縄を保持することができる。
【0017】
また、前記枝縄保持部は、前記挟み込み部が前記引っ掛け部であり、前記挟み込み部は、大径フレームと、前記大径フレームに面して配置された小径フレームと、を有してもよい。
【0018】
この発明によれば、挟み込み部が引っ掛け部である。つまり、挟み込み部及び引っ掛け部の役割を、1の部材で担保する。また、挟み込み部は、大径フレームと、大径フレームに面して配置された小径フレームと、を有する。これにより、少ない構成によって確実に枝縄を保持することができる。
【0019】
また、前記枝縄吊下げ機構は、2つの前記枝縄保持部が一対に配置されて1組の前記枝縄保持部を形成すると共に、複数組の前記枝縄保持部が上下に配置されていてもよい。
【0020】
この発明によれば、枝縄保持部が一対に配置されて1組の枝縄保持部を形成すると共に、複数組の枝縄保持部が上下に配置されている。これにより、複数の枝縄をより少ないスペースで保持することができる。よって、船の省スペースに寄与することができる。
【0021】
また、前記枝縄巻取り場から前記投縄作業場への前記ガイドレールの往路側に吊り下げられた前記枝縄吊下げ機構と、前記投縄作業場から前記枝縄巻取り場への前記ガイドレールの復路側に吊り下げられた前記枝縄吊下げ機構との間に設置された衝突抑止板を備えてもよい。
【0022】
この発明によれば、往路側と復路側との枝縄吊下げ機構の間に衝突抑止板を備える。これにより、船の揺れや、風等によって枝縄吊下げ機構が揺動することによって、枝縄吊下げ機構同士や、枝縄同士が衝突することを防ぐことができる。
【0023】
また、前記漁船は前記ガイドレールの隣に作業者が通行可能な通路を備え、前記ガイドレールと前記通路との間に設置された第2衝突抑止板を備えてもよい。
【0024】
この発明によれば、ガイドレールと通路との間に設置された第2衝突抑止板を備える。これにより、船の揺れや、風等によって枝縄吊下げ機構が揺動することによって、枝縄吊下げ機構や枝縄が通路を通行する作業者に接触することを防ぐことができる。
【0025】
また、前記ガイドレールは、前記漁船の一方の舷側に設けられた舷門よりも前記船首側に配置された前記枝縄巻取り場から他方の舷側に延伸されて折れ曲がり、前記他方の舷側に沿って前記漁船の船尾側の前記投縄作業場に至るように配置されていてもよい。
【0026】
この発明によれば、ガイドレールは、漁船の一方の舷側に設けられた舷門よりも船首側に配置された枝縄巻取り場から他方の舷側に延伸されて折れ曲がり、他方の舷側に沿って漁船の船尾側の投縄作業場に至るように配置されている。これにより、一方の舷側の舷門近くの枝縄巻取り場から他方の舷側まで、更に船尾側の投縄作業場まで人力で枝縄を運ぶことを不要とすることができる。よって、揚縄作業の省人化や省力化を更に図ることができる。
【0027】
また、前記ガイドレールは、前記漁船の倉庫を通過してもよい。
【0028】
この発明によれば、ガイドレールは漁船の倉庫を通過する。これにより、移動中等に枝縄を使用しない場合は、この倉庫に枝縄吊下げ機構ごと枝縄を収納することができる。よって、枝縄の保管を効率的にすることができる。
【0029】
また、本発明に係る枝縄吊下げ機構は、船首側の枝縄巻取り場と船尾側の投縄作業場との間を循環するよう船上に配置されたガイドレールと、複数の吊下げ部を有し、前記ガイドレールに沿って移動可能に取り付けられた移動機構と、を備える、はえなわを用いる漁船において、前記はえなわが備える枝縄を搬送かつ保管する枝縄搬送兼保管装置において、複数用いられる枝縄吊下げ機構であって、コイル状に巻き取られた枝縄の一部を、前記コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持可能な枝縄保持部を有し、前記移動機構の各吊下げ部に吊り下げられる。
【0030】
この発明によれば、コイル状に巻き取られた枝縄の一部を、コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持可能な枝縄保持部を有し、移動機構の各吊下げ部に吊り下げられる。枝縄を挟み込むことで、運搬中の枝縄がばらけることを防ぐことができる。よって、揚縄時に枝縄をカゴ等に収納するためのロープ等による固縛作業を省略することができる。また、枝縄保持部は枝縄を挟み込むように固定するで、船上の揺れに対して適切に枝縄を保持することができる。さらに、移動機構の吊り下げ部に吊り下げられることで、運搬を容易とすることができる。この結果、はえなわを用いる漁船における投縄及び揚縄作業、特に枝縄の搬送や保管に関連する作業の省人化や省力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、はえなわ漁における投縄及び揚縄の作業、特に枝縄の搬送や保管に関連する作業を省人、省力化することができる枝縄搬送兼保管装置及び枝縄吊下げ機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】漁船に配置される枝縄搬送兼保管装置の平面図である。
【
図3】
図2に示すIII-III方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る枝縄搬送兼保管装置100を説明する。
枝縄搬送兼保管装置100は、はえなわ200を用いる漁船300に設けられる。
図1に示すように、はえなわ200は、幹縄210と、枝縄220と、浮縄230と、浮球240と、ブイ250と、を備える。
幹縄210は、洋上の水面に沿って延びる縄である。幹縄210の全長は、例えば、150kmである。幹縄210には、間隔を空けて複数の枝縄220及び浮縄230が取り付けられる。
【0034】
枝縄220は、幹縄210に間隔を空けて複数設けられる。前記間隔は、例えば、40mである。枝縄220は、水深方向に向かって延びる。枝縄220の長さは、例えば、40mである。枝縄220の一方の端部には、枝縄220を幹縄210に取り付けるためのスナップが設けられる。これにより、枝縄220は、幹縄210を洋上に繰り出しつつ投下(投縄)する際に取り付けられる。枝縄220の他方の端部には、公知の釣り針が取り付けられる。投縄の際、この釣り針に餌を取り付けることで、まぐろをはじめとする漁獲対象Mを誘う。
【0035】
浮縄230は、幹縄210に間隔を空けて複数設けられる。前記間隔は、例えば、600mから700m程度である。浮縄230は、幹縄210と浮球240とを接続するために用いられる。浮縄230の一方の端部には、枝縄220と同様にスナップを備え、これにより幹縄210に取り付けられる。浮縄230の他方の端部には、浮球240が取り付けられる。
【0036】
浮球240は、幹縄210が水中に沈まないように保持する役割を有する公知のものである。上述のように、浮球240は、浮縄230によって幹縄210に取り付けられる。
ブイ250は、浮球240と同様に浮縄230を介して幹縄210に取り付けられる。ブイ250は、例えば、位置情報を発信する公知のラジオブイである。あるいは、発光することで目印となるライトであってもよい。これにより、ブイ250は、洋上において幹縄210が切れた場合に、幹縄210を回収するための目印となる。ブイ250は、例えば、14km程度の間隔で、浮縄230に取り付けられる。
【0037】
漁船300は、例えば遠洋漁業に用いられる公知の船である。上述のはえなわ200は、洋上を航行中の漁船300の船尾側から投縄される。漁船300は、枝縄巻取り場310と、投縄作業場320と、通路330と、を少なくとも備える。
枝縄巻取り場310は、漁船300の船首側に位置するスペースである。枝縄巻取り場310では、投縄されたはえなわ200を洋上から引き揚げる(揚縄)作業を行う。
図2に示すように、枝縄巻取り場310には、ラインホーラ311と、ブランリール312と、浮縄巻機313と、が設けられる。
【0038】
ラインホーラ311は、幹縄210を巻き上げるための機械である。ブランリール312は、枝縄220又は浮縄230をコイル状にまとめるための機械である。浮縄巻機313は、浮縄230を巻き上げる機械である。
揚縄作業の際には、まずラインホーラ311によって幹縄210を巻き上げる。作業者Oは、巻き上げられた幹縄210から、スナップで取り付けられた枝縄220及び浮縄230を取り外す。幹縄210から取り外された枝縄220は、舷門300Gから釣り上げられた漁獲対象Mが釣り針から取り外された後、ブランリール312によってコイル状にまとめられる。浮球240又はブイ250が取り付けられた状態の浮縄230は、まず、浮縄巻機313によって巻き上げられる。幹縄210から取り外された浮縄230は、浮球240又はブイ250を取り外した後、ブランリール312によって巻き取られる。
【0039】
投縄作業場320は、漁船300の船尾側に位置するスペースである。投縄作業場320では、投縄の作業が行われる。具体的には、幹縄210に、餌が取り付けられた枝縄220や、浮球240又はブイ250が取り付けられた浮縄230を取り付け、洋上に投下する。このように、はえなわ200を用いた漁を行う際は、船尾側の投縄作業場320から投縄する。投縄されたはえなわ200は、船首側の枝縄巻取り場310から揚縄される。
通路330は、船首側から船尾側までを作業員が行き来するために設けられる。通路330は、例えば、漁船300の舷に沿って設けられる。
【0040】
遠洋漁業においては、投縄及び揚縄の作業を繰り返し行う。本発明に係る枝縄搬送兼保管装置100は、船首側から船尾側へ枝縄220を効率的に移動させるために用いられる。
枝縄搬送兼保管装置100は、はえなわ200が備える枝縄220を搬送かつ保管する。枝縄搬送兼保管装置100は、ガイドレール10と、移動機構20と、枝縄吊下げ機構30と、を備える。
【0041】
ガイドレール10は、漁船300の船首側の枝縄巻取り場310と、漁船300の船尾側の投縄作業場320と、の間を循環するよう漁船300の上に配置されている。つまり、本実施形態において、ガイドレール10は、
図2に示すように、枝縄巻取り場310から投縄作業場320へのガイドレール10の往路側と、投縄作業場320から枝縄巻取り場310へのガイドレール10の復路側が設けられる。本実施形態においては、往路側が漁船300の外側に設けられ、復路側が漁船300の内側に設けられる。
【0042】
図2に示すように、ガイドレール10は、漁船300の一方の舷(例えば右舷)側に設けられた舷門よりも船首側に配置された枝縄巻取り場310から他方の舷(例えば左舷)側に延伸されて折れ曲がり、他方の舷側に沿って漁船300の船尾側の投縄作業場320に至るように配置されている。
【0043】
ガイドレール10には、枝縄220を吊り下げる枝縄吊下げ機構30が吊り下げられる(後述する)。また、
図2及び
図5に示すように、ガイドレール10は、漁船300の倉庫Cを通過する。具体的には、
図2に示すように、ガイドレール10は、船尾側で90度に折れ曲がり、倉庫C内でUターンする形で倉庫Cを通過する。倉庫Cには、例えば、枝縄220や、浮球240、あるいはブイ250を収納可能とする。ガイドレール10がこのような経路を取ることで、移動中等に枝縄220を使用しない場合は、この倉庫Cに枝縄吊下げ機構30ごと枝縄220を収納する。
【0044】
あるいは、ガイドレール10が倉庫Cを通過せず、投縄作業場320で折り返すようにガイドレール10を設けてもよい。これにより、枝縄巻取り場310から投縄作業場320に移動した枝縄220を、直接投縄の作業に使用できるようにしてもよい。
本実施形態に係る枝縄搬送兼保管装置100を既存の漁船300に搭載する場合は、ガイドレール10の経路は、上述の2つの形態のいずれを執ってもよい。あるいは、新しく建造する漁船300に本実施形態に係る枝縄搬送兼保管装置100を搭載する場合は、漁船300に倉庫Cを設けないことで、枝縄220や、浮球240、あるいはブイ250を収納する場所を兼ねた投縄作業場320として、投縄作業場320を広くしてもよい。
【0045】
ここで、洋上における風や、波による漁船300の揺れ等によって、ガイドレール10の往路側に吊り下げられた枝縄吊下げ機構30と、ガイドレール10の復路側に吊り下げられた枝縄吊下げ機構30とが揺動することがある。これによって枝縄吊下げ機構30同士が衝突することがある。これを避けるために、
図4に示すように、ガイドレール10の往路側に吊下げられた枝縄吊下げ機構30と、ガイドレール10の復路側に吊り下げられた枝縄吊下げ機構30との間には、衝突抑止板10t1を備える。
【0046】
ガイドレール10は、例えば、漁船300における通路330に沿って設けられる。この場合は、作業者Oが通行可能な領域を確保する。つまり、漁船300はガイドレール10の隣に作業者Oが通行可能な通路330を備える。このため、枝縄吊下げ機構30と作業者Oとの衝突を防ぐために、ガイドレール10と通路330との間には、第2衝突抑止板10t2を備える。
【0047】
衝突抑止板10t1及び第2衝突抑止板10t2は、例えば、公知のアクリル板である。ここで、衝突抑止板10t1及び第2衝突抑止板10t2は、上述のように枝縄吊下げ機構30の衝突を防ぐことが目的である。このため、強風による破損等の影響を防ぐために、衝突抑止板10t1及び第2衝突抑止板10t2には、風を通して空気抵抗を減らすための穴が設けられてもよい。
移動機構20は、複数の吊下げ部21を有し、ガイドレール10に沿って移動可能に取り付けられている。移動機構20は、例えば、トロリーチェーンを用いたオーバーヘッドコンベアとして構成されており、一部がガイドレール10に取り付けられ、その他の部位が、枝縄吊下げ機構30を取り付けるためのリング状の吊下げ部21を有する部材である。吊下げ部21の前記リング状は、あるいは、フック状であってもよい。枝縄吊下げ機構30は、移動機構20の吊下げ部21に吊下げられることで、ガイドレール10に沿って移動する。
【0048】
枝縄吊下げ機構30は、移動機構20の吊下げ部21に複数吊り下げられて用いられる。枝縄吊下げ機構30は、ガイドレール10に沿って漁船300の甲板を循環する。前記循環は、ドライブユニットD等によって自動で行われてもよいし、手動により行われてもよい。本実施形態において、枝縄吊下げ機構30は、以下の6種類の態様を有する。すなわち、第1枝縄吊下げ機構30Aと、第2枝縄吊下げ機構30Bと、第3枝縄吊下げ機構30Cと、第4枝縄吊下げ機構30Dと、第5枝縄吊下げ機構30Eと、第6枝縄吊下げ機構30Fと、を有する。以下、前記複数の種類を区別しない場合に、枝縄吊下げ機構30と呼称する。
【0049】
前記複数の種類の枝縄吊下げ機構30は、少なくとも、コイル状に巻き取られた枝縄220の一部を、コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持可能な枝縄保持部を有する点で共通する。また、枝縄保持部は、例えば、枝縄220を、コイル状の軸方向が水平方向を向く状態で保持する。つまり、コイル状に巻き取られた枝縄220が縦置きされる点で共通する。以下、後述する各種類の枝縄保持部を区別しない場合に、枝縄保持部と呼称する。
【0050】
図6に示す第1枝縄吊下げ機構30Aは、基軸31Aと、上下方向に複数のアーム部32Aと、同じく上下方向に複数の第1枝縄保持部33Aと、を備える。
基軸31Aは、後述する各種の枝縄吊下げ機構30に共通する構成である。基軸31Aは、枝縄吊下げ機構30の各構成の中心となる部位である。基軸31Aは、上下方向に延びる棒である。基軸31Aには、例えば、ワイヤ状の金属が好適に用いられる。基軸31Aの上端は、移動機構20の吊下げ部21に吊り下げられるように、フック状の形状を有する。
【0051】
アーム部32Aは、基軸31Aと第1枝縄保持部33Aとを接続する。アーム部32Aは、例えば、金属板や、ワイヤ状の金属が好適に用いられる。また、アーム部32Aの中間には、関節32Aeが設けられる。
第1枝縄保持部33Aは、コイル状に巻き取られた枝縄220の一部を、コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持する。第1枝縄保持部33Aは、例えば、V字状の部材であり、V字状の開口の両端には、ローラが設けられている。前記V字状の部材は、弾性変形可能であることが好ましい。また、通常の状態において、前記ローラは、互いに接しているか、わずかな隙間のみ有していることが好ましい。
【0052】
上述の構成を備える第1枝縄保持部33Aにコイル状の枝縄220を収納する時は、枝縄220の一部を、前記ローラを介して前記V字状の開口の内部に押し込む。これにより、ローラの間隔が枝縄220によって押し広げられる。枝縄220がローラを通過した後は、前記V字状の部材の弾性によって、ローラ同士の位置が元の状態に戻る。このようにして、第1枝縄保持部33Aに枝縄220を収納する。枝縄220を取り出す時は、枝縄220を引っ張ることで取り出すことができる。
【0053】
図7に示す第2枝縄吊下げ機構30Bは、基軸31Aと、複数の第2枝縄保持部32Bと、同数のスナップケース33B及び釣り針ケース34Bと、を備える。なお、以下に記載するそれぞれの枝縄吊下げ機構30の説明については、共通する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
第2枝縄保持部32Bは、コイル状に巻き取られた枝縄220を全体的に保持する点で、第1枝縄保持部33Aと相違する。第2枝縄保持部32Bは、挟み込み部P1と、引っ掛け部F1と、を有する。
挟み込み部P1は、コイル状の一部を、コイル状の軸方向から挟み込む。挟み込み部P1は、ワイヤ状の部材を適宜折り曲げることで形成する。挟み込み部P1は、水平方向に四角形状に形成された枠状部P1aと、上下方向に延び、上端が枠状部の中間部に取り付けられ、下端が基軸31Aに取り付けられた下端保持部P1bと、により形成される。
【0055】
引っ掛け部F1は、挟み込み部P1より上方で基軸31Aに取り付けられた部位であり、枝縄220の上部を引っ掛ける。
図7に示すように、引っ掛け部F1は、ワイヤ状の金属を適宜折り曲げることで例えば四分円弧状や鉤状に成形される。挟み込み部P1の、特に下端保持部P1bと基軸31Aとの間で枝縄220の下部を挟み込むように保持することに加えて、枝縄220の上部を引っ掛け部F1によって保持することで、コイル状に巻き取られた枝縄220を全体的に保持する。
図7に示すように、2つの第2枝縄保持部32Bが背中合わせに一対に配置されて1組の第2枝縄保持部32Bを形成すると共に、複数組の第2枝縄保持部32Bが上下に配置されている。つまり、第2枝縄保持部32Bは、基軸31Aを基準として対称に1組設けられ、前記組は上下方向に複数設けられている。
【0056】
スナップケース33Bは、枝縄220の一方の端部に設けられたスナップを収納する筒状の部材である。釣り針ケース34Bは、釣り針を収納する筒状の部材である。あるいはこれに限らず、スナップと釣り針とを収納する容器を区別せず、同一の筒状の部材を設けてもよい。
図7に示すように、スナップケース33B及び釣り針ケース34Bは、それぞれ挟み込み部P1の枠状部P1aの左側と右側に設けられ、コイル状の枝縄220の両側部に配置される。なお、枠状部P1aの左側と右側とは、枠状部P1aを、挟み込み部P1に収納された枝縄220のコイル状の軸方向から見た時の左側と右側である。
【0057】
図8に示す第3枝縄吊下げ機構30Cは、基軸31Aと、基軸31Aを補強する縦長八角形状の基軸フレーム31Fと、複数の第3枝縄保持部32Cと、同数のスナップケース33B及び釣り針ケース34Bと、を備える。
第3枝縄保持部32Cは、第2挟み込み部P2と、引っ掛け部F1と、を備える。
第2挟み込み部P2は、ワイヤ状の部材を適宜折り曲げることで、上述の枠状部P1aに相当する第2枠状部P2aと、下端保持部P1bに相当する第2下端保持部P2bと、を形成する点で挟み込み部P1と共通であるが、前記折り曲げの態様が異なる。具体的には、
図8に示すように、一番上の枝縄220は、コイル状の軸方向が水平方向に向くように配置されるが、上から2番目以降の枝縄220が、上下方向に対して枝縄220のコイル状の軸方向に傾いて、すなわちコイル状の上部が基軸31Aから離れる方向にコイル状の軸方向が水平方向から10~30度傾いて収容されるように形成されている。
第3枝縄保持部32Cも、第2枝縄保持部32Bと同様に、基軸31Aを基準として対称に1組設けられ、前記組は上下方向に複数設けられている。
【0058】
スナップケース33B及び釣り針ケース34Bは、第2枝縄吊下げ機構30Bと共通の構成であるが、上から2番目以降は上下方向に対して枝縄220のコイル状の軸方向に傾いて取り付けられている点で、第2枝縄吊下げ機構30Bと相違する。すなわち、スナップケース33Bおよび釣り針ケース34Bは、一番上の第3枝縄保持部32Cに対しては基軸フレーム31Fに沿って取り付けられ、上から2番目以降の第3枝縄保持部32Cに対しては第2枠状部P2aに斜めに取り付けられている。
【0059】
図9に示す第4枝縄吊下げ機構30Dは、基軸31Aと、複数の第4枝縄保持部32Dと、同数のスナップケース33B及び釣り針ケース34Bと、を備える。
第4枝縄保持部32Dは、第3挟み込み部P3と、引っ掛け部F1と、を備える。
図9に示すように、第3挟み込み部P3は、引っ掛け部F1により枝縄220の上端が引っ掛けられた状態で枝縄220の下部を収納する収納袋である。具体的には、
図9に示すように、基軸31Aに取り付けられた背面部P3aと、コイル状の枝縄220の軸方向において、背面部P3aに対向する側に位置する前面部P3bとによって、袋状の形状を構成し、前記袋状の内部に枝縄220を入れ込むようにして、枝縄220を収納する。
【0060】
図9に示すように、第3挟み込み部P3の袋状は、一番上の枝縄220は、コイル状の軸方向が水平方向に向くように配置されるが、上から2番目以降の枝縄220が、上下方向に対して枝縄220のコイル状の軸方向に傾いて、すなわちコイル状の上部が基軸31Aから離れる方向にコイル状の軸方向が水平方向から10~30度傾いて収容されるように形成されている。
また、第4枝縄保持部32Dにおける引っ掛け部F1は、一番上の引っ掛け部F1は背面部P3aに取り付けているが、上から2番目以降の引っ掛け部F1は、一つ上の第3挟み込み部P3の前面部P3bに取り付けられる点で、上述の挟み込み部P1等と相違する。
【0061】
第4枝縄保持部32Dも、第2枝縄保持部32B等と同様に、基軸31Aを基準として対称に1組設けられ、前記組は上下方向に複数設けられている。
スナップケース33B及び釣り針ケース34Bは、第3枝縄吊下げ機構30Cと同様に、上から2番目以降は上下方向に対して枝縄220のコイル状の軸方向に傾いて取り付けられている点で、第2枝縄吊下げ機構30Bと相違する。
【0062】
図10に示す第5枝縄吊下げ機構30Eは、基軸31Aと、複数の第5枝縄保持部32Eと、を備える。
第5枝縄保持部32Eは、コイル状の枝縄220の上部をコイル状の軸方向から挟み込む第4挟み込み部P4を有する。第4挟み込み部P4は、コイル状の枝縄220の上部を引っ掛ける第2引っ掛け部F2を兼ねている。つまり、第4挟み込み部P4及び第2引っ掛け部F2の役割を、1の部材で担保する。
第4挟み込み部P4は、ワイヤ状の部材を適宜折り曲げることで形成され、基軸31Aに上辺と下辺が取り付けられた矩形状の背面部P4aと、背面部P4a下端の左右2箇所から前方に張り出してフック状を形成する2つの爪部P4bと、を有する。
【0063】
枝縄220は、前記背面部P4aと2つの爪部P4bとの間に形成される開口の内部に引っ掛けるように収納される。このとき、風等による揺動で枝縄220が外れないように、前記開口の大きさは、枝縄220が収納される領域よりも、枝縄220を収納する際に枝縄220が通過する部分、すなわち前記開口の端部付近の方が小さくなるように形成することが好ましい。
【0064】
第5枝縄保持部32Eも、第2枝縄保持部32B等と同様に、基軸31Aを基準として第4挟み込み部P4の背面部P4aが合わさるよう対称に1組設けられ、前記組は上下方向に複数設けられている。
【0065】
図11に示す第6枝縄吊下げ機構30Fは、基軸31Aと、複数の第6枝縄保持部32Fと、を備える。
第6枝縄保持部32Fは、コイル状の枝縄220の上部をコイル状の軸方向から挟み込む第5挟み込み部P5を有する。第5挟み込み部P5は、コイル状の枝縄220の上部を引っ掛ける第3引っ掛け部F3を兼ねている。つまり、第5挟み込み部P5及び第3引っ掛け部F3の役割を、1の部材で担保する。
第5挟み込み部P5は、上部が半円状かつ下部が半矩形状の枠状に形成されて基軸31Aに半円上端および矩形状下辺が取り付けられた大径フレームD1と、大径フレームD1に面して配置され、上部が大径フレームD1より小径の半円状かつ下部が下方に開口するように形成されて大径フレームD1下端部の左右両端に連結された小径フレームD2と、を有する。大径フレームD1及び小径フレームD2は、いずれもワイヤ状の部材を適宜折り曲げることで形成される。
【0066】
大径フレームD1を形成するワイヤは、より具体的には、下端部が直線状であり、基軸31Aの延びる方向に対して直交する向きに位置する。前記下端の両端から上方に向けて直線状に延び、上端側が半円状の形状を有する。
小径フレームD2を形成するワイヤは、より具体的には、下端部が大径フレームD1の下端部の両端に連結され、上方に向かうとともに、枝縄220のコイル状の軸方向に沿って基軸31Aから離れる方向に延びる。また、ワイヤ同士の距離が、大径フレームD1の下端部に連結された部位の距離よりも小さくなるように伸びる。そして、任意の部位において屈曲し、ワイヤ同士の距離が一定となる。前記屈曲した点からは、上方に向かうとともに、枝縄220のコイル状の軸方向に沿って基軸31Aから更に離れる方向に延びる。小径フレームD2の上端は、大径フレームD1と同様に半円状の形状を有する。
【0067】
上述の構成を有する第5挟み込み部P5は、大径フレームD1及び小径フレームD2の下端部付近における、枝縄220のコイル状の軸方向における距離が小さい場所で、枝縄220を挟むようにして固定する。
第6枝縄保持部32Fも、第2枝縄保持部32B等と同様に、基軸31Aを基準として第5挟み込み部P5の大径フレームD1が合わさるよう対称に1組設けられ、前記組は上下方向に複数設けられている。
なお、第5挟み込み部P5は、第4挟み込み部P4が背面部P4aと2つの爪部P4bとを有するように、大径フレーム状の背面部と、この背面部から前方に張り出して小径フレーム状を形成する1つの爪部とを有するものと捉えることもできる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る枝縄吊下げ機構30によれば、コイル状に巻き取られた枝縄220の一部を、コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持可能な枝縄保持部を有する。これにより、枝縄保持部に枝縄220を配置することのみで、コイル状に巻き取られた枝縄220がばらけないように個別に保持することができる。よって、揚縄時に枝縄220をカゴ等に収納するためのロープ等による固縛作業を省略することができる。また、枝縄保持部は枝縄220を挟み込むように固定する。よって、船上の揺れに対して適切に枝縄220を保持することができる。
【0069】
また、複数の吊下げ部21を有し、ガイドレール10に沿って移動可能に取り付けられた移動機構20を有する。これにより、枝縄保持部によって保持された複数の枝縄220を、ガイドレール10に沿って船首側の枝縄巻取り場310から船尾側の投縄作業場320まで移動させる、すなわち搬送することができる。よって、揚縄時に枝縄220をカゴ等に収納する作業や、船尾側に運搬された枝縄220をカゴ等から取り出す作業等を省略することができる。
更に、投縄時に投縄作業場320で吊り下げられている枝縄220を枝縄保持部から直接取り出すことができる。これにより、投縄時にカゴ等から取り出した枝縄220の固縛を解く解放作業を省略することができる。
【0070】
また、ガイドレール10が、漁船300の船首側の枝縄巻取り場310と、漁船300の船尾側の投縄作業場320と、の間を循環するよう配置されている。これにより、保持され吊り下げられた複数の枝縄220をガイドレール10に沿って循環させることができる。よって、枝縄220の搬送と保管を兼ねることができる。
このように、はえなわ200を用いる漁船300における従来の枝縄220の搬送と保管を兼ねる装置を提供することにより、はえなわ200を用いる漁船300における投縄及び揚縄作業、特に枝縄220の搬送や保管に関連する作業の省人化や省力化を図ることができる。
【0071】
また、枝縄保持部は、枝縄220を、軸方向が水平方向を向く状態で保持する。つまり、コイル状に巻き取られた枝縄220が縦置きされる。これにより、枝縄220を搬送又は保管する際に必要なスペースを小さくすることができる。
【0072】
また、第1枝縄保持部33A等は、枝縄220を挟み込む挟み込み部と、枝縄220の上部を引っ掛ける引っ掛け部F1と、を有する。枝縄220を挟み込むことに加えて上部を引っ掛け部F1によって保持することで、より確実に枝縄220を保持することができる。
【0073】
また、第3挟み込み部P3は、引っ掛け部F1に枝縄220の上端が引っ掛けられた状態で枝縄220の下部を収納する収納袋である。これにより、保持された枝縄220に風等が直接当たることを防ぐことができる。よって、風等により保持した枝縄220がばらけることを防ぎ、より確実に枝縄220を保持することができる。
【0074】
また、第4挟み込み部P4が第2引っ掛け部F2である。あるいは、第5挟み込み部P5が第3引っ掛け部F3である。つまり、挟み込み部及び引っ掛け部F1の役割を、1の部材で担保する。また、挟み込み部は、大径フレームD1と、大径フレームD1に面して配置された小径フレームD2と、を有する。これにより、少ない構成によって確実に枝縄220を保持することができる。
【0075】
また、第2枝縄保持部32B等が一対に配置されて1組の枝縄保持部を形成すると共に、複数組の枝縄保持部が上下に配置されている。これにより、複数の枝縄220をより少ないスペースで保持することができる。よって、船の省スペースに寄与することができる。
【0076】
また、往路側と復路側との枝縄吊下げ機構30の間に衝突抑止板10t1を備える。これにより、船の揺れや、風等によって枝縄吊下げ機構30が揺動することによって、枝縄吊下げ機構30同士や、枝縄220同士が衝突することを防ぐことができる。
【0077】
また、ガイドレール10と通路330との間に設置された第2衝突抑止板10t2を備える。これにより、船の揺れや、風等によって枝縄吊下げ機構30が揺動することによって、枝縄吊下げ機構30や枝縄220が通路330を通行する作業者Oに接触することを防ぐことができる。
【0078】
また、ガイドレール10は、漁船300の一方の舷側に設けられた舷門よりも船首側に配置された枝縄巻取り場310から他方の舷側に延伸されて折れ曲がり、他方の舷側に沿って漁船300の船尾側の投縄作業場320に至るように配置されている。これにより、一方の舷側の舷門近くの枝縄巻取り場310から他方の舷側まで、更に船尾側の投縄作業場320まで人力で枝縄220を運ぶことを不要とすることができる。よって、揚縄作業の省人化や省力化を更に図ることができる。
【0079】
また、ガイドレール10は漁船300の倉庫Cを通過する。これにより、移動中等に枝縄220を使用しない場合は、この倉庫Cに枝縄吊下げ機構30ごと枝縄220を収納することができる。よって、枝縄220の保管を効率的にすることができる。
【0080】
また、コイル状に巻き取られた枝縄220の一部を、コイル状の軸方向から挟み込んだ状態で個別に保持可能な第1枝縄保持部33A等を有し、移動機構20の各吊下げ部21に吊り下げられる。枝縄220を挟み込むことで、運搬中の枝縄220がばらけることを防ぐことができる。よって、揚縄時に枝縄をカゴ等に収納するためのロープ等による固縛作業を省略することができる。また、枝縄保持部は枝縄を挟み込むように固定するで、船上の揺れに対して適切に枝縄を保持することができる。さらに、移動機構20の吊り下げ部に吊り下げられることで、運搬を容易とすることができる。この結果、はえなわを用いる漁船における投縄及び揚縄作業、特に枝縄の搬送や保管に関連する作業の省人化や省力化を図ることができる。
【0081】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0082】
本実施形態では、枝縄保持部は、コイル状の枝縄220の一部を、コイル状の軸方向が水平方向を向く状態で保持するものとしたが、コイル状の軸方向が垂直方向など他の方向を向く状態で保持するものとしてもよい。
本実施形態では、枝縄保持部は、基軸31Aを基準として対称に1組設けられかつ前記組は上下方向に例えば2組や4組など複数設けられているものとしたが、前記組は上下方向には配置されずに1組のみ設けられるものとしてもよいし、基軸31Aを基準として対称に設けられることなく上下方向のみに複数設けられるものとしてもよい。また、枝縄吊下げ機構30に対し、1つの枝縄保持部を有するものとしても構わない。
本実施形態では、枝縄巻取り場310にはラインホーラ311とブランリール312と浮縄巻機313とが設けられるものとしたが、枝縄巻取り場310としてはラインホーラ311と浮縄巻機313とが設けられずにブランリール312が設けられているものとしてもよい。
本実施形態では、枝縄搬送兼保管装置100は、衝突抑止板10t1及び第2衝突抑止板10t2を備えるものとしたが、いずれか一方のみを備えるものとしてもよいし、いずれも備えないものとしてもよい。
本実施形態では、本発明を枝縄搬送兼保管装置100として説明したが、本発明を枝縄搬送兼保管装置100において複数用いられる枝縄吊下げ機構30の形態としてもよい。
【0083】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 ガイドレール
10t1 衝突抑止板
10t2 第2衝突抑止板
20 移動機構
21 吊下げ部
30 枝縄吊下げ機構
30A 第1枝縄吊下げ機構
30B 第2枝縄吊下げ機構
30C 第3枝縄吊下げ機構
30D 第4枝縄吊下げ機構
30E 第5枝縄吊下げ機構
30F 第6枝縄吊下げ機構
31A 基軸
31F 基軸フレーム
32A アーム部
32Ae 関節
32B 第2枝縄保持部
32C 第3枝縄保持部
32D 第4枝縄保持部
32E 第5枝縄保持部
32F 第6枝縄保持部
33A 第1枝縄保持部
33B スナップケース
34B 釣り針ケース
100 枝縄搬送兼保管装置
210 幹縄
220 枝縄
230 浮縄
240 浮球
250 ブイ
300 漁船
300G 舷門
310 枝縄巻取り場
311 ラインホーラ
312 ブランリール
313 浮縄巻機
320 投縄作業場
330 通路
C 倉庫
D ドライブユニット
D1 大径フレーム
D2 小径フレーム
F1 引っ掛け部
F2 第2引っ掛け部
F3 第3引っ掛け部
M 漁獲対象
O 作業者
P1 挟み込み部
P1a 枠状部
P1b 下端保持部
P2 第2挟み込み部
P2a 第2枠状部
P2b 第2下端保持部
P3 第3挟み込み部
P3a 背面部
P3b 前面部
P4 第4挟み込み部
P4a 背面部
P4b 爪部
P5 第5挟み込み部