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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096319
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】バイオディーゼル燃料の精製方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/02 20060101AFI20230630BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20230630BHJP
   B01D 63/10 20060101ALI20230630BHJP
   C10L 1/02 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B01D61/02 500
B01D61/12
B01D63/10
C10L1/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211975
(22)【出願日】2021-12-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】398045865
【氏名又は名称】室町ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521567181
【氏名又は名称】水光技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521567192
【氏名又は名称】有限会社健製作所
(71)【出願人】
【識別番号】521567206
【氏名又は名称】RITA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】北野 了
(72)【発明者】
【氏名】坂口 恵太
(72)【発明者】
【氏名】新原 政喜
(72)【発明者】
【氏名】松原 健
(72)【発明者】
【氏名】北川 悌也
【テーマコード(参考)】
4D006
4H013
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006HA61
4D006JA05Z
4D006JA06Z
4D006JA19Z
4D006JA30Z
4D006JA55Z
4D006JA57Z
4D006JA58Z
4D006JA66Z
4D006KE07R
4D006KE16Q
4D006KE16R
4D006MA03
4D006MB05
4D006MB13
4D006PA01
4D006PB13
4D006PB20
4H013BA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バイオディーゼル燃料を精製処理するためのプロセスであって、よりち密な分離膜にて精製精度を向上させることができるバイオディーゼル燃料の精製方法を提供する。
【解決手段】バイオディーゼル燃料を投入する循環タンク1、高圧ポンプ2、膜モジュール3、処理液タンク4からなる精製装置を使用し、バイオディーゼル燃料を循環タンク1に入れ、循環タンク1から高圧ポンプ2で膜モジュール3に送り、膜モジュール3から循環タンク1に戻すように循環させて40℃~60℃に加温し、この状態で膜モジュール3の分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性ナノフィルトレーション膜に通し、2~6MPaの圧力下で未反応のグリセリン脂肪酸エステル(グリセリド)、ステリルグリコシド/アシルステリルグルコシドを含む糖脂質成分を除去し、脂肪酸メチルエステル(FAME)分の濃度を高める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオディーゼル燃料を精製処理するためのプロセスであって、
バイオディーゼル燃料を投入する循環タンク、高圧ポンプ、膜モジュール、処理液タンクからなる精製装置を使用し、冷却されていない、ろ過されていないバイオディーゼル燃料を循環タンクに入れ、
循環タンクから高圧ポンプで膜モジュールに送り、膜モジュールから循環タンクに戻すように循環させて40℃より高い温度に加温し、この状態で膜モジュールの分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜に通し、未反応のグリセリン脂肪酸エステル(グリセリド)、ステリルグリコシド/アシルステリルグルコシドを含む糖脂質成分を除去し、脂肪酸メチルエステル(FAME)分の濃度を高めることを特徴としたバイオディーゼル燃料の精製方法。
【請求項2】
分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜は、らせん状に巻かれたOSN膜(Evonik PuraMemTM Selective膜)である請求項1記載のバイオディーゼル燃料の精製方法。
【請求項3】
加熱温度の上限は60℃とする請求項1または請求項2に記載のバイオディーゼルの精製方法
【請求項4】
有機溶剤耐性NF膜に通すときの圧力は2~6MPaとする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のバイオディーゼルの精製方法
【請求項5】
精製装置は,高圧ポンプの駆動モータの圧縮熱でバイオディーゼル燃料を40℃程度までの温度に昇温させ、また、バイオディーゼル燃料を60℃以上に上昇させない冷却器による温度制御手段を備える請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菜種油や廃食用油などをメチルエステル化して製造されるものとして、ディーゼルエンジン用のバイオ燃料であるバイオディーゼル燃料の不純物を除去して品質を改善する精製方法に関するものである。
【0002】
バイオディーゼル(BDF)燃料は、硫黄分酸化物をほとんど含まないため、軽油と比較して排出される硫黄酸化物(SOx)を1/2~1/3に削減減少でき、ディーゼル車の排気ガス対策としても有効で、すでに国内外で利用されており、日本では廃食用油から、欧州では菜種油から、米国やブラジルでは大豆油から製造。特に欧州では、政策的支援が導入され、ドイツを中心に利用が進んでいる。なお、バイオディーゼル燃料(BDF)は、現在、航空燃料としての利用の検討もなされている。
【0003】
バイオディーゼル燃料の原料となる油脂は、グリセリンに脂肪酸が3個結合したトリグリセリドと呼ばれる物質で、このトリグリセリドをメタノールと反応させると、脂肪酸メチルエステル(Fatty Acid Methyl Ester、以下FAME)と呼ばれるエステルが生成される。
【0004】
脂肪酸メチルエステルは、アルコールと脂肪酸との置換反応によって得られる化合物であり、植物油等(トリグリセリド)は脂肪酸とグリセリン(多価アルコール)のエステルで、トリグリセリドからメチルエステルを作る反応は、脂肪酸と結合するアルコールの種類を変換する反応でもあることから、エステル交換反応とも呼ばれる。
【0005】
このようにバイオディーゼル燃料生産の出発原料には、脂肪酸を含む原料が含まれるがこれに限定されない。これらの材料には、これらに限定されないが、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、リン脂質、エステル、遊離脂肪酸またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0006】
また、バイオディーゼル燃料の製造に使用される脂肪酸は、植物油、キャノーラ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、キンレンカ種子油、マスタード油、オリーブ油、ゴマ油、大豆油、コーン油、落花生油、綿実油、米ぬか油、ババスナッツ油、ヒマシ油、パーム油、菜種油、低エルカ酸菜種油、パーム核油、ルピナス油、ジャトロファ油、ココナッツ油、亜麻仁油、月見草油、ホホバ油、カメリナ油、獣脂、牛脂、バター、鶏脂、ラード、乳脂肪、シアバター、バイオディーゼル燃料、使用済みフライ油、オイルミセラ、使用済み調理油、イエロートラップグリース、水素化油、油の誘導体、油の共役誘導体、およびそれらの混合物である。
【0007】
ところで、バイオディーゼル燃料を自動車用燃料として安全に使用するための品質を規定する規格として、欧州規格EN14214、日本規格JIS K2390、米国規格ASTM D6751が定められ、軽油に混合して市場に供給する際には、この品質規格を満たす必要がある。
【0008】
バイオディーゼル燃料中の容易に析出する成分が燃料の貯蔵タンク内やエンジン系統のフィルターで析出し、閉塞などの障害をもたらすことが大きな問題として報告されていて、析出成分としては、脂肪酸モノグリセリド(特に飽和脂肪酸のモノグリセリド)やステリルグリコシドなどが挙げられる。
【0009】
ステリルグリコシドについて言えば、低濃度のステリルグルコシドでさえ、燃料フィルター、インジェクター本体、インジェクターノズルを汚す可能性がある。
【0010】
ステリルグルコシド沈殿物の融点は非常に高いため(摂氏240度程度)、飽和脂肪酸のエステルとは異なり、沈殿物が形成されると、汚れたフィルターやその他の表面から簡単に除去できない。その結果、ステリルグルコシドは蓄積し、インジェクターの分解と洗浄を必要とする耐火性のガム状物質を形成する可能性があり、したがってディーゼルエンジンの運転費用が増加する。
【0011】
さらに、ステリルグルコシドは沈殿してアモルファスを形成する可能性があり、これは飽和脂肪酸のエステルの結晶化に関連する温度よりもはるかに高い温度でも、雲状の物質であり、バイオディーゼル燃料のフィルターブロッキング傾向を高める。
【0012】
バイオディーゼル燃料中の低レベルのステリルグルコシド(つまり、10~90 ppm)でさえ、脂肪酸メチルエステルと凝集体を形成し、フィルターの詰まりを促進する可能性がある。
【0013】
そして、低温では、ステリルグリコシドの存在により、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールなどの飽和脂肪酸のアルキルエステルによって引き起こされるコールドフローの問題が確実に悪化する可能性がある。
【0014】
下記特許文献ではバイオディーゼル燃料およびプロセスに関し、ステロールグリコシドやその他のけん化物などの不純物を除去してバイオディーゼル燃料の品質を改善するプロセスとして、フラットシート無極性有機溶媒ナノろ過膜(OSN)を通過させることが開示されている。
【特許文献1】特許協力条約公開 WO 2019/032521 公報
【0015】
この特許文献1はバイオディーゼル燃料を非極性、疎水性、および化学的に安定な有機溶媒ナノろ過(OSN)膜と接触させることにより、バイオディーゼル燃料からバイオディーゼル燃料中のステリルグリコシドおよびその他の不純物を除去するものである。
【0016】
特許文献1は請求項の記載から、バイオディーゼル燃料を処理するためのプロセスであって、以下を含む:バイオディーゼル燃料を有機溶媒アノフィルトレーションと接触させるもので、膜に接触する前に、バイオディーゼル燃料が、温度を40℃未満に低下させること、周囲温度未満に冷却すること、ろ過助剤を使用して、冷却したバイオディーゼル燃料を保持し、リーフフィルターでバイオディーゼル燃料をろ過することとされる。
【0017】
また、特許文献1で使用されるフラットシート無極性有機溶媒ナノろ過膜(OSN)は、メンブレン(PMS-600 PuraMemメンブレン、Evonik Industries、シカゴ、イリノイ州、分子量カットオフ600、メンブレン面積0.0062m)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記特許文献1では、分離膜にて不純物質を除去する事が記載されているが、例えば分画分子量600の分離膜では十分なろ過精度を得る事が出来ない。
【0019】
仮にモノグリセリドを除去したとしても、ステリルグルコシドなどの不純物質がBDF中には多量に存在し、使用に際して析出やフィルター詰まりなどの不具合を生じる恐れが有り、且つ低温時の流動特性が低下するなどの問題が存在している。
【0020】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、バイオディーゼル燃料を精製処理するためのプロセスにおいて、よりち密な分離膜にて精製精度を向上させることができるバイオディーゼル燃料の精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するため本発明は、第1に、バイオディーゼル燃料を精製処理するためのプロセスであって、バイオディーゼル燃料を投入する循環タンク、高圧ポンプ、膜モジュール、処理液タンクからなる精製装置を使用し、冷却されていない、ろ過されていないバイオディーゼル燃料を循環タンクに入れ、循環タンクから高圧ポンプで膜モジュールに送り、膜モジュールから循環タンクに戻すように循環させて40℃より高い温度に加温し、この状態で膜モジュールの分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜に通し、未反応のグリセリン脂肪酸エステル(グリセリド)、ステリルグリコシド/アシルステリルグルコシドを含む糖脂質成分を除去し、脂肪酸メチルエステル(FAME)分の濃度を高めることを要旨とするものである。
【0022】
第2に、分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜は、らせん状に巻かれたOSN膜(Evonik PuraMemTM Selective膜)であること、第3に、加熱温度の上限は60℃とすること、第4に、有機溶剤耐性NF膜に通すときの圧力は2~6MPaとすることを要旨とするものである。
【0023】
第5に、精製装置は,高圧ポンプの駆動モータの圧縮熱でバイオディーゼル燃料を40℃程度までの温度に昇温させ、また、バイオディーゼル燃料を60℃以上に上昇させない冷却器による温度制御手段を備えることを要旨とするものである。
【0024】
本発明によれば、膜モジュールの分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜を使用する事によりステリルグリコシドを除去し、主成分である脂肪酸メチルエステル(FAME)分の濃度を飛躍的に高める事が可能となった。
【0025】
また、膜モジュールの分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜というよりち密な分離膜を使用すると通常透過流量は減少するが、液温を40℃~60℃に上昇させることで、40℃付近においては5.3LMH at 5MPa程度と透過流量の落ち込みは大幅に緩和できる。
【0026】
2~6MPa、このましくは5~6MPaの圧力下で有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜を通過させるので、流量の減少を招くことなく、効率のよい処理が得られる。
【0027】
請求項2記載の本発明によれば、膜モジュールの分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜として好適な例を示すものである。
【0028】
請求項5記載の本発明によれば、40℃程度まで温度に昇温させるのにヒーター等の加熱装置を備えなくても行うことができ、また、温度制御手段により液温は60℃以上には上昇させないものであり、これにより有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜を破損から保護することが可能なる。
【発明の効果】
【0029】
以上述べたように本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法は、バイオディーゼル燃料を精製処理するためのプロセスにおいて、よりち密な分離膜にて精製精度を向上させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法に使用する精製装置の回路図である。
図2】本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法に使用する精製装置の外観図である。
図3】本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法で使用する膜モジュールの説明図である。
図4】各種膜の分離性能を示すグラフである。
図5】膜モジュールの入口側の写真観察結果を示す斜視図である。である。
図6】サンプルの目視による写真結果を示す正面図である。
図7】サンプルの目視による写真結果を示す正面図である。
図8】原液と透過液サンプルの吸光度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は、バイオディーゼル燃料を精製処理するためのプロセスであって、バイオディーゼル燃料を投入する循環タンク、高圧ポンプ、膜モジュール、処理液タンクからなる精製装置を使用し、冷却されていない、ろ過されていないバイオディーゼル燃料を循環タンクに入れ、循環タンクから高圧ポンプで膜モジュールに送り、膜モジュールから循環タンクに戻すように循環させて40℃~60℃に加温し、この状態で膜モジュールの分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜に通し、6MPa程度の圧力下で未反応のグリセリン脂肪酸エステル(グリセリド)、ステリルグリコシド/アシルステリルグルコシドを含む糖脂質成分を除去する。
【0032】
図1は本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法に使用する精製装置の回路図、図2同上外観図で、図中1は原液を投入する循環タンク、2は高圧ポンプ、3は膜モジュール、4は処理液タンク、5は冷却器としての熱交換パネルで、バイオディーゼル燃料は高圧ポンプ2で膜モジュール3に送られ、ここを通過して循環タンク1に戻り、循環を繰り返してから、処理液タンク4に送られる。
【0033】
高圧ポンプ2の吐出側では安全弁戻りの戻り管、原液戻りの戻り管が接続され、また、高圧ポンプ2の吐出側は分岐されて、前記戻り管の他に膜モジュール3への接続管により連結される。
【0034】
膜モジュール3からの流出配管は流量調整弁を介在させて、熱交換パネル5を経由して循環タンク1へ戻るものと透過液側配管は処理液タンク4に至るものと循環タンク1に至るものに分かれる。
【0035】
熱交換パネル5では冷却水との熱交換が行われ、膜モジュール3での処理液を一定温度以上上げないように制御される。
【0036】
循環タンク1に投入する原液としては製造されたバイオディーゼル燃料で、精製が不十分なものである。
【0037】
図3に膜モジュール3の構造を示すと、らせん状に巻かれた有機溶剤耐性NF膜(OSN膜)であり、孔のあいた中心チューブ7を中心にして供給のチャンネルスペーサー8、膜材6、透過マテアルコレクション材9、膜材6、供給のチャンネルスペーサー8、外装10を重ねて巻き回した。
【0038】
巻き回しの端部にはアンチテレスコーピングデバイス11を配して筒状体として固定する。
【0039】
前記OSN膜のOSNとは有機溶媒ナノ濾過技術を意味し、膜材を基盤とした拡張可能な分子分離技術で、有機溶媒混合物中の分子を分離する。
【0040】
本発明においては、膜モジュール3の膜6は分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜である。
【0041】
この分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜には、らせん状に巻かれたOSN膜(Evonik PuraMemTM Selective膜)、を採用した。
【0042】
膜材6の選定については、Evonik社製のPuraMem膜の内、Selective膜、Performance膜、Flux膜が想定される。
【0043】
Selective膜(S600膜)は分画分子量(MWCO)が600、つまり分子量600以上の溶解物質を除去する分離膜で有り、その他の3種は主に分子量300前後の溶解物質を除去するものである。
【0044】
Selective膜は選択性が高く(≒selective性が高く)より微細な物質を除去するもので、分画分子量250近辺の物質より除去するがそのトレードオフとして透過流量は少なくなる。
【0045】
これに対してFlux膜は主に分画分子量350以上の物質を除去し、Selective膜と比較するとルーズであるが高透過流量と成り経済性の高い分離膜である。
【0046】
Performance膜はSelective膜とFlux膜の中間に位置し、主に分画分子量300以上の物質を除去し透過流量も経済性を得やすい量となっており、分離と透過流量を両立させた分離性能となっている。
【0047】
これら分離性能は膜面のporeサイズの違いにより発現しており、概ね図4のグラフの通りである。
【0048】
各膜の分離性能の違いについては以下の内容で知見できる。
バイオディーゼル燃料(BDF)の主成分で有る脂肪酸メチルエステル分(FAME)及び、ステリルグルコシド及びアシルステリルグルコシド類を含む不純物質の濃度変化を下表1,表2に示す。なお、この表の数値は後述の表4,表5,表6,表7の動作の結果である。
【表1】
【表2】
【0049】
分析結果が示す通りSelective膜を使用する事により主成分であるエステルの濃度を飛躍的に高める事が可能となり、バイオディーゼル燃料の適用範囲を大きく広げる結果となっている。また、不純物質であるステリルグリコシド類の除去が行われている。
【0050】
目視においても明らかな脱色効果が確認出来る。
【0051】
更に分析結果を下表3に示す。
【表3】
【0052】
本発明は液温を40℃~60℃、好ましく40℃~50℃とし、処理能力の向上を図る。温度により粘性を低下させる事により処理能力の向上を図るものである。
【0053】
なお、液温を40℃~60℃、好ましく40℃~50℃とするのに、別途独立した設備としてのヒーターを使用しないで、高圧ポンプ2の駆動モータ2aの放熱でバイオディーゼル燃料を40℃程度まで温度に昇温させる。
【0054】
また、熱交換パネル5により、バイオディーゼル燃料を60℃以上に上昇させないように温度制御した。
【0055】
次に、本発明の効果を試すための、試験結果について説明する。
試験目的は、Flux膜を用いてバイオディーゼル燃料を精製した場合の性能を確認すると共に、膜の閉塞状況を確認することである。また、Selective膜を用いバイオディーゼル燃料をろ過した場合のその精製度と透過流量を確認することである。
【0056】
試験装置は図1図2に示す装置を使用した。
【0057】
先にFlux膜について述べる。Flux膜の状態にて濃縮液・透過液共にタンク循環させ、透過流量と液の状態を確認した。
【0058】
[Flux膜 運転結果]
透過流量を下表4,5に示す。なお、比較として2020年8月20日の透過流量データも示す。
【表4】

【表5】
【0059】
[モジュール状態観察]
透過液サンプルを採取後、vesselを開け、膜モジュール3の状態を確認した。膜モジュール3の入口側の写真観察結果を図6に示す。
【0060】
膜モジュール3の口側には多くの固形物が確認され、またfeed spacer部にもSSが入り込んでいる事が確認される。透過流量が8LMH at 3MPa程度まで低下している事からも、有効膜面積が減少している事、foulingが発生している事が強く懸念される。
【0061】
次に、Selective膜について述べる。膜モジュール3の膜をSelective膜に交換し濃縮液・透過液共にタンク循環させ、透過流量と液の状態を確認した。
【0062】
[Selective膜運転結果]
運転後の透過流量変化を下表6に示す。なお、透過流量を増加させる事を目的に液温を上昇させる為、チラーを停止させての運転も実施した。
【表6】
【0063】
Flux膜においては、昨年の8月20日のデータにて、13.4LMH at 3MPa/31℃で有ったが、Selective膜にといては、15時44分のデータを圧力換算した結果、1.78LMH at 3Mpa/26℃となり透過流量については、orderが違う結果となった。
目視による状態変化を写真にて図6に示す。
【0064】
Selective膜の透過液質はFlux膜とは比較にならない程、脱色がされている。但し、透過流量が低すぎでこのままでは現実的な装置設計は困難で有る。よって、処理温度を上昇させる事による透過流量の上昇傾向を検証した結果を下表7に示す。
【表7】
液温の上昇と共に透過流量は上昇し、40℃付近においては5.3LMH at 5MPa程度とFlux膜との透過流量差は大幅に緩和された。
【0065】
40℃以下では、透過流量が低すぎて現実的な装置設計は困難で有るので、処理温度を上昇させる事による透過流量の上昇を図ったものである。
【0066】
原液と透過液サンプル(sample 11 at 5MPa/40℃)の吸光度特性を図8に示す、なおreferenceとして2020年7月の吸光度特性も示す。
【符号の説明】
【0067】
1…循環タンク 2…高圧ポンプ
2a…駆動モータ 3…膜モジュール
4…処理液タンク 5…熱交換パネル
6…膜 7…中心チューブ
8…チャンネルスペーサー 9…透過マテアルコレクション材
10…外装 11…アンチテレスココーピングデバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菜種油や廃食用油などをメチルエステル化して製造されるものとして、ディーゼルエンジン用のバイオ燃料であるバイオディーゼル燃料の不純物を除去して品質を改善する精製方法に関するものである。
【0002】
バイオディーゼル(BDF)燃料は、硫黄分酸化物をほとんど含まないため、軽油と比較して排出される硫黄酸化物(SOx)を1/2~1/3に削減減少でき、ディーゼル車の排気ガス対策としても有効で、すでに国内外で利用されており、日本では廃食用油から、欧州では菜種油から、米国やブラジルでは大豆油から製造。特に欧州では、政策的支援が導入され、ドイツを中心に利用が進んでいる。なお、バイオディーゼル燃料(BDF)は、現在、航空燃料としての利用の検討もなされている。
【0003】
バイオディーゼル燃料の原料となる油脂は、グリセリンに脂肪酸が3個結合したトリグリセリドと呼ばれる物質で、このトリグリセリドをメタノールと反応させると、脂肪酸メチルエステル(Fatty Acid Methyl Ester、以下FAME)と呼ばれるエステルが生成される。
【0004】
脂肪酸メチルエステルは、アルコールと脂肪酸との置換反応によって得られる化合物であり、植物油等(トリグリセリド)は脂肪酸とグリセリン(多価アルコール)のエステルで、トリグリセリドからメチルエステルを作る反応は、脂肪酸と結合するアルコールの種類を変換する反応でもあることから、エステル交換反応とも呼ばれる。
【0005】
このようにバイオディーゼル燃料生産の出発原料には、脂肪酸を含む原料が含まれるがこれに限定されない。これらの材料には、これらに限定されないが、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、リン脂質、エステル、遊離脂肪酸またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0006】
また、バイオディーゼル燃料の製造に使用される脂肪酸は、植物油、キャノーラ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、キンレンカ種子油、マスタード油、オリーブ油、ゴマ油、大豆油、コーン油、落花生油、綿実油、米ぬか油、ババスナッツ油、ヒマシ油、パーム油、菜種油、低エルカ酸菜種油、パーム核油、ルピナス油、ジャトロファ油、ココナッツ油、亜麻仁油、月見草油、ホホバ油、カメリナ油、獣脂、牛脂、バター、鶏脂、ラード、乳脂肪、シアバター、バイオディーゼル燃料、使用済みフライ油、オイルミセラ、使用済み調理油、イエロートラップグリース、水素化油、油の誘導体、油の共役誘導体、およびそれらの混合物である。
【0007】
ところで、バイオディーゼル燃料を自動車用燃料として安全に使用するための品質を規定する規格として、欧州規格EN14214、日本規格JIS K2390、米国規格ASTM D6751が定められ、軽油に混合して市場に供給する際には、この品質規格を満たす必要がある。
【0008】
バイオディーゼル燃料中の容易に析出する成分が燃料の貯蔵タンク内やエンジン系統のフィルターで析出し、閉塞などの障害をもたらすことが大きな問題として報告されていて、析出成分としては、脂肪酸モノグリセリド(特に飽和脂肪酸のモノグリセリド)やステリルグリコシドなどが挙げられる。
【0009】
ステリルグリコシドについて言えば、低濃度のステリルグルコシドでさえ、燃料フィルター、インジェクター本体、インジェクターノズルを汚す可能性がある。
【0010】
ステリルグルコシド沈殿物の融点は非常に高いため(摂氏240度程度)、飽和脂肪酸のエステルとは異なり、沈殿物が形成されると、汚れたフィルターやその他の表面から簡単に除去できない。その結果、ステリルグルコシドは蓄積し、インジェクターの分解と洗浄を必要とする耐火性のガム状物質を形成する可能性があり、したがってディーゼルエンジンの運転費用が増加する。
【0011】
さらに、ステリルグルコシドは沈殿してアモルファスを形成する可能性があり、これは飽和脂肪酸のエステルの結晶化に関連する温度よりもはるかに高い温度でも、雲状の物質であり、バイオディーゼル燃料のフィルターブロッキング傾向を高める。
【0012】
バイオディーゼル燃料中の低レベルのステリルグルコシド(つまり、10~90 ppm)でさえ、脂肪酸メチルエステルと凝集体を形成し、フィルターの詰まりを促進する可能性がある。
【0013】
そして、低温では、ステリルグリコシドの存在により、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールなどの飽和脂肪酸のアルキルエステルによって引き起こされるコールドフローの問題が確実に悪化する可能性がある。
【0014】
下記特許文献ではバイオディーゼル燃料およびプロセスに関し、ステロールグリコシドやその他のけん化物などの不純物を除去してバイオディーゼル燃料の品質を改善するプロセスとして、フラットシート無極性有機溶媒ナノろ過膜(OSN)を通過させることが開示されている。
【特許文献1】特許協力条約公開 WO 2019/032521 公報
【0015】
この特許文献1はバイオディーゼル燃料を非極性、疎水性、および化学的に安定な有機溶媒ナノろ過(OSN)膜と接触させることにより、バイオディーゼル燃料からバイオディーゼル燃料中のステリルグリコシドおよびその他の不純物を除去するものである。
【0016】
特許文献1は請求項の記載から、バイオディーゼル燃料を処理するためのプロセスであって、以下を含む:バイオディーゼル燃料を有機溶媒アノフィルトレーションと接触させるもので、膜に接触する前に、バイオディーゼル燃料が、温度を40℃未満に低下させること、周囲温度未満に冷却すること、ろ過助剤を使用して、冷却したバイオディーゼル燃料を保持し、リーフフィルターでバイオディーゼル燃料をろ過することとされる。
【0017】
また、特許文献1で使用されるフラットシート無極性有機溶媒ナノろ過膜(OSN)は、メンブレン(PMS-600 PuraMemメンブレン、Evonik Industries、シカゴ、イリノイ州、分子量カットオフ600、メンブレン面積0.0062m)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記特許文献1では、分離膜にて不純物質を除去する事が記載されているが、例えば分画分子量600の分離膜では十分なろ過精度を得る事が出来ない。
【0019】
仮にモノグリセリドを除去したとしても、ステリルグルコシドなどの不純物質がBDF中には多量に存在し、使用に際して析出やフィルター詰まりなどの不具合を生じる恐れが有り、且つ低温時の流動特性が低下するなどの問題が存在している。
【0020】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、バイオディーゼル燃料を精製処理するためのプロセスにおいて、よりち密な分離膜にて精製精度を向上させることができるバイオディーゼル燃料の精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するため本発明は、バイオディーゼル燃料を精製処理するための方法であって、バイオディーゼル燃料を投入する循環タンク、高圧ポンプ、膜モジュール、処理液タンクからなる精製装置を使用し、冷却されていない、ろ過されていないバイオディーゼル燃料を循環タンクに入れ、循環タンクから高圧ポンプで膜モジュールに送り、膜モジュールから循環タンクに戻すように循環させて60℃を上限として40℃より高い温度で管理し、この状態で膜モジュールの分画分子量200~400、穴径のサイズ2.05~2.35nmであり、穴径のピークが2.20±0.01nmの範囲の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜に操作圧力3~6MPaにて通し、未反応のグリセリン脂肪酸エステル(グリセリド)、ステリルグリコシド及びアシルステリルグルコシドを含む糖脂質成分を除去し、脂肪酸メチルエステル(FAME)分の濃度を高めることを要旨とするものである。
【0022】
本発明によれば、膜モジュールの分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜を使用する事によりステリルグリコシドを除去し、主成分である脂肪酸メチルエステル(FAME)分の濃度を飛躍的に高める事が可能となった。
【0023】
また、膜モジュールの分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜というよりち密な分離膜を使用すると通常透過流量は減少するが、液温を40℃~60℃に上昇させることで、40℃付近においては5.3LMH at 5MPa程度と透過流量の落ち込みは大幅に緩和できる。
【0024】
2~6MPa、このましくは5~6MPaの圧力下で有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜を通過させるので、流量の減少を招くことなく、効率のよい処理が得られる。
【0025】
本発明によれば、膜モジュールの分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜として好適な例を示すものである。
【0026】
また、本発明によれば、40℃程度まで温度に昇温させるのにヒーター等の加熱装置を備えなくても行うことができ、また、温度制御手段により液温は60℃以上には上昇させないものであり、これにより有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜を破損から保護することが可能なる。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法は、バイオディーゼル燃料を精製処理するためのプロセスにおいて、よりち密な分離膜にて精製精度を向上させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法に使用する精製装置の回路図である。
図2】本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法に使用する精製装置の外観図である。
図3】本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法で使用する膜モジュールの説明図である。
図4】各種膜の分離性能を示すグラフである。
図5】膜モジュールの入口側の写真観察結果を示す斜視図である。である。
図6】サンプルの目視による写真結果を示す正面図である。
図7】サンプルの目視による写真結果を示す正面図である。
図8】原液と透過液サンプルの吸光度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は、バイオディーゼル燃料を精製処理するためのプロセスであって、バイオディーゼル燃料を投入する循環タンク、高圧ポンプ、膜モジュール、処理液タンクからなる精製装置を使用し、冷却されていない、ろ過されていないバイオディーゼル燃料を循環タンクに入れ、循環タンクから高圧ポンプで膜モジュールに送り、膜モジュールから循環タンクに戻すように循環させて40℃~60℃に加温し、この状態で膜モジュールの分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜に通し、6MPa程度の圧力下で未反応のグリセリン脂肪酸エステル(グリセリド)、ステリルグリコシド/アシルステリルグルコシドを含む糖脂質成分を除去する。
【0030】
図1は本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法に使用する精製装置の回路図、図2同上外観図で、図中1は原液を投入する循環タンク、2は高圧ポンプ、3は膜モジュール、4は処理液タンク、5は冷却器としての熱交換パネルで、バイオディーゼル燃料は高圧ポンプ2で膜モジュール3に送られ、ここを通過して循環タンク1に戻り、循環を繰り返してから、処理液タンク4に送られる。
【0031】
高圧ポンプ2の吐出側では安全弁戻りの戻り管、原液戻りの戻り管が接続され、また、高圧ポンプ2の吐出側は分岐されて、前記戻り管の他に膜モジュール3への接続管により連結される。
【0032】
膜モジュール3からの流出配管は流量調整弁を介在させて、熱交換パネル5を経由して循環タンク1へ戻るものと透過液側配管は処理液タンク4に至るものと循環タンク1に至るものに分かれる。
【0033】
熱交換パネル5では冷却水との熱交換が行われ、膜モジュール3での処理液を一定温度以上上げないように制御される。
【0034】
循環タンク1に投入する原液としては製造されたバイオディーゼル燃料で、精製が不十分なものである。
【0035】
図3に膜モジュール3の構造を示すと、らせん状に巻かれた有機溶剤耐性NF膜(OSN膜)であり、孔のあいた中心チューブ7を中心にして供給のチャンネルスペーサー8、膜材6、透過マテアルコレクション材9、膜材6、供給のチャンネルスペーサー8、外装10を重ねて巻き回した。
【0036】
巻き回しの端部にはアンチテレスコーピングデバイス11を配して筒状体として固定する。
【0037】
前記OSN膜のOSNとは有機溶媒ナノ濾過技術を意味し、膜材を基盤とした拡張可能な分子分離技術で、有機溶媒混合物中の分子を分離する。
【0038】
本発明においては、膜モジュール3の膜6は分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜である。
【0039】
この分画分子量200~400程度の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜には、らせん状に巻かれたOSN膜(Evonik PuraMemTM Selective膜)、を採用した。
【0040】
膜材6の選定については、Evonik社製のPuraMem膜の内、S600、Selective膜、Performance膜、Flux膜が想定される。
【0041】
S600膜は分画分子量(MWCO)が600、つまり分子量600以上つまり分子量600以上の溶解物質を除去する分離膜で有り、その他の3種は主に分子量300前後の溶解物質を除去するものである。
【0042】
Selective膜は選択性が高く(≒selective性が高く)より微細な物質を除去するもので、分画分子量250近辺の物質より除去するがそのトレードオフとして透過流量は少なくなる。
【0043】
これに対してFlux膜は主に分画分子量350以上の物質を除去し、Selective膜と比較するとルーズであるが高透過流量と成り経済性の高い分離膜である。
【0044】
Performance膜はSelective膜とFlux膜の中間に位置し、主に分画分子量300以上の物質を除去し透過流量も経済性を得やすい量となっており、分離と透過流量を両立させた分離性能となっている。
【0045】
これら分離性能は膜面のporeサイズの違いにより発現しており、概ね図4のグラフの通りである。
【0046】
各膜の分離性能の違いについては以下の内容で知見できる。
バイオディーゼル燃料(BDF)の主成分で有る脂肪酸メチルエステル分(FAME)及び、ステリルグルコシド及びアシルステリルグルコシド類を含む不純物質の濃度変化を下表1,表2に示す。なお、この表の数値は後述の表4,表5,表6,表7の動作の結果である。
【表1】
【表2】
【0047】
分析結果が示す通りSelective膜を使用する事により主成分であるエステルの濃度を飛躍的に高める事が可能となり、バイオディーゼル燃料の適用範囲を大きく広げる結果となっている。また、不純物質であるステリルグリコシド類の除去が行われている。
【0048】
目視においても明らかな脱色効果が確認出来る。
【0049】
更に分析結果を下表3に示す。
【表3】
【0050】
本発明は液温を40℃~60℃、好ましく40℃~50℃とし、処理能力の向上を図る。温度により粘性を低下させる事により処理能力の向上を図るものである。
【0051】
なお、液温を40℃~60℃、好ましく40℃~50℃とするのに、別途独立した設備としてのヒーターを使用しないで、高圧ポンプ2の駆動モータ2aの放熱でバイオディーゼル燃料を40℃程度まで温度に昇温させる。
【0052】
また、熱交換パネル5により、バイオディーゼル燃料を60℃以上に上昇させないように温度制御した。
【0053】
次に、本発明の効果を試すための、試験結果について説明する。
試験目的は、Flux膜を用いてバイオディーゼル燃料を精製した場合の性能を確認すると共に、膜の閉塞状況を確認することである。また、Selective膜を用いバイオディーゼル燃料をろ過した場合のその精製度と透過流量を確認することである。
【0054】
試験装置は図1図2に示す装置を使用した。
【0055】
先にFlux膜について述べる。Flux膜の状態にて濃縮液・透過液共にタンク循環させ、透過流量と液の状態を確認した。
【0056】
[Flux膜 運転結果]
透過流量を下表4,5に示す。なお、比較として2020年8月20日の透過流量データも示す。
【表4】
【表5】
【0057】
[モジュール状態観察]
透過液サンプルを採取後、vesselを開け、膜モジュール3の状態を確認した。膜モジュール3の入口側の写真観察結果を図6に示す。
【0058】
膜モジュール3の口側には多くの固形物が確認され、またfeed spacer部にもSSが入り込んでいる事が確認される。透過流量が8LMH at 3MPa程度まで低下している事からも、有効膜面積が減少している事、foulingが発生している事が強く懸念される。
【0059】
次に、Selective膜について述べる。膜モジュール3の膜をSelective膜に交換し濃縮液・透過液共にタンク循環させ、透過流量と液の状態を確認した。
【0060】
[Selective膜運転結果]
運転後の透過流量変化を下表6に示す。なお、透過流量を増加させる事を目的に液温を上昇させる為、チラーを停止させての運転も実施した。
【表6】
【0061】
Flux膜においては、昨年の8月20日のデータにて、13.4LMH at 3MPa/31℃で有ったが、Selective膜にといては、15時44分のデータを圧力換算した結果、1.78LMH at 3Mpa/26℃となり透過流量については、orderが違う結果となった。
目視による状態変化を写真にて図6に示す。
【0062】
Selective膜の透過液質はFlux膜とは比較にならない程、脱色がされている。但し、透過流量が低すぎでこのままでは現実的な装置設計は困難で有る。よって、処理温度を上昇させる事による透過流量の上昇傾向を検証した結果を下表7に示す。
【表7】
液温の上昇と共に透過流量は上昇し、40℃付近においては5.3LMH at 5MPa程度とFlux膜との透過流量差は大幅に緩和された。
【0063】
40℃以下では、透過流量が低すぎて現実的な装置設計は困難で有るので、処理温度を上昇させる事による透過流量の上昇を図ったものである。
【0064】
原液と透過液サンプル(sample 11 at 5MPa/40℃)の吸光度特性を図8に示す、なおreferenceとして2020年7月の吸光度特性も示す。
【符号の説明】
【0065】
1…循環タンク 2…高圧ポンプ
2a…駆動モータ 3…膜モジュール
4…処理液タンク 5…熱交換パネル
6…膜 7…中心チューブ
8…チャンネルスペーサー 9…透過マテアルコレクション材
10…外装 11…アンチテレスココーピングデバイス
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオディーゼル燃料を精製処理するための方法であって、
バイオディーゼル燃料を投入する循環タンク、高圧ポンプ、膜モジュール、処理液タンクからなる精製装置を使用し、冷却されていない、ろ過されていないバイオディーゼル燃料を循環タンクに入れ、
循環タンクから高圧ポンプで膜モジュールに送り、膜モジュールから循環タンクに戻すように循環させて60℃を上限として40℃より高い温度で管理し、
この状態で膜モジュールの分画分子量200~400、穴径のサイズ2.05~2.35nmであり、穴径のピークが2.20±0.01nmの範囲の有機溶剤耐性NF(ナノフィルトレーション)膜に操作圧力3~6MPaにて通し、未反応のグリセリン脂肪酸エステル(グリセリド)、ステリルグリコシド及びアシルステリルグルコシドを含む糖脂質成分を除去し、脂肪酸メチルエステル(FAME)分の濃度を高めることを特徴としたバイオディーゼル燃料の精製方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4