(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096356
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】判断方法、プログラム、及び判断システム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20230630BHJP
G06Q 40/08 20120101ALI20230630BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230630BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20230630BHJP
G10L 15/10 20060101ALI20230630BHJP
G10L 25/66 20130101ALI20230630BHJP
G10L 25/15 20130101ALI20230630BHJP
G10L 25/21 20130101ALI20230630BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20230630BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G06Q40/08
G06Q50/10
G10L15/00 200J
G10L15/10 500Z
G10L25/66
G10L25/15
G10L25/21
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212039
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穗積 潤一
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
5L099
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L055BB61
5L099AA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の搭乗者の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減する判断方法、プログラム及び判断システムを提供する。
【解決手段】判断方法は、音声取得処理ST3と、評価処理ST4と、出力処理ST6と、を含む。音声取得処理ST3は、車両の搭乗者が発話した音声を示す音声データを、車両に搭載された運転用途専用の情報通信機器を介して取得することを含む。評価処理ST4は、音声取得処理ST3で取得された音声データに基づいて、搭乗者の認知機能の程度を評価することを含む。出力処理ST6は、評価処理ST4の結果に基づく通知情報を、搭乗者と搭乗者の関係者とのうちの少なくとも一方へ通知されるように出力することを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の搭乗者が発話した音声を示す音声データを、前記車両に搭載された運転用途専用の情報通信機器を介して取得する音声取得処理と、
前記音声取得処理で取得された前記音声データに基づいて、前記搭乗者の認知機能の程度を評価する評価処理と、
前記評価処理の結果に基づく通知情報を、前記搭乗者と前記搭乗者の関係者とのうちの少なくとも一方へ通知されるように出力する出力処理と、
を含む、
判断方法。
【請求項2】
前記音声取得処理において取得される前記音声データの前記音声は、予め決められた定型文を前記搭乗者が読み上げた音声を含む、
請求項1に記載の判断方法。
【請求項3】
前記音声取得処理において取得される前記音声データの前記音声は、自動音声による前記搭乗者への問いかけに対して前記搭乗者が発話した音声を含む、
請求項1又は2に記載の判断方法。
【請求項4】
前記出力処理では、前記評価処理の結果を示す情報が、前記情報通信機器へ送信され、
前記情報通信機器は、前記評価処理の結果を、前記搭乗者へ提示する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の判断方法。
【請求項5】
前記情報通信機器は、ドライブレコーダである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の判断方法。
【請求項6】
前記搭乗者は、前記車両の運転者である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の判断方法。
【請求項7】
前記情報通信機器で取得された前記車両の運転結果を示す運転結果情報を取得する運転結果情報取得処理と、
前記運転結果情報に基づいて、前記運転者の運転能力を判断する運転能力判断処理と、
を更に備え、
前記評価処理では、前記運転能力判断処理で判断された前記運転者の運転能力に更に基づいて、前記運転者の認知機能の程度を評価する、
請求項6に記載の判断方法。
【請求項8】
前記評価処理の結果に基づいて、前記運転者による前記車両の運転の可否を判定する判定処理と、
前記判定処理において前記運転者による前記車両の運転が不可能と判定された場合に、前記車両の移動が禁止されるように、前記車両の移動を禁止する禁止信号を出力する禁止処理と、
を更に備える、
請求項6又は7に記載の判断方法。
【請求項9】
前記情報通信機器は、前記車両内の音声を収音する音声入力部を備え、
前記音声取得処理において取得される前記音声データの前記音声は、前記音声入力部で収音された音声である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の判断方法。
【請求項10】
前記情報通信機器は、前記車両の運転席からの音声を選択的に収音する指向性マイクを備え、
前記音声取得処理において取得される前記音声データの前記音声は、前記指向性マイクで収音された音声である、
請求項9に記載の判断方法。
【請求項11】
前記出力処理では、前記評価処理の結果を、前記搭乗者の関係者へ通知されるように出力し、
前記搭乗者の関係者は、前記搭乗者が加入する自動車保険を取り扱う団体の構成員を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の判断方法。
【請求項12】
前記評価処理の結果に基づいて、前記搭乗者の前記自動車保険の保険料を評価する保険料評価処理と、
前記保険料評価処理の結果に基づいて、前記自動車保険の前記保険料に関する警告を含む警告情報を出力する警告処理と、
を更に含む、
請求項11に記載の判断方法。
【請求項13】
前記搭乗者は、企業に雇用されて業として前記車両に搭乗し、
前記出力処理では、前記評価処理の結果を、前記搭乗者の関係者へ通知されるように出力し、
前記搭乗者の関係者は、前記搭乗者を雇用する前記企業の構成員を含む、
請求項1~12のいずれか1項に記載の判断方法。
【請求項14】
前記出力処理では、前記評価処理の結果を、前記搭乗者の関係者へ通知されるように出力し、
前記搭乗者の関係者は、前記搭乗者の家族を含む、
請求項1~13のいずれか1項に記載の判断方法。
【請求項15】
前記評価処理では、前記音声データから抽出される特徴量を用いて前記認知機能を評価する、
請求項1~14のいずれか1項に記載の判断方法。
【請求項16】
前記特徴量は、
前記音声データで示される前記搭乗者の音声に含まれる音節における母音の第一フォルマント周波数に関する量、
前記音声データで示される前記搭乗者の音声に含まれる音節における母音の第二フォルマント周波数に関する量、
前記音声データで示される前記搭乗者の音声に含まれる複数の母音それぞれについての、1以上のフォルマントの周波数及び振幅に関する量、
前記音声データの基本周波数の単位時間あたりの変動、
前記音声データの基本周波数の単位時間あたりの変動幅、
前記搭乗者の音声に含まれる開音節における子音の音圧と前記子音に後続する母音の音圧との間の音圧差、
前記搭乗者の音声に含まれる複数の開音節における、子音の音圧と前記子音に後続する母音の音圧との間の音圧差の、ばらつき、
定型文の読み上げに要した総時間、
前記定型文の複数回の前記読み上げにそれぞれ要した時間の変化量
からなる群から選択される1以上を含む、
請求項15に記載の判断方法。
【請求項17】
1以上のプロセッサに、請求項1~16のいずれか1項に記載の判断方法を実行させるためのプログラム。
【請求項18】
車両の搭乗者が発話した音声を示す音声データを、前記車両に搭載された運転用途専用の情報通信機器を介して取得する音声取得部と、
前記音声取得部で取得された前記音声データに基づいて、前記搭乗者の認知機能の程度を評価する評価部と、
前記評価部による評価の結果に基づく通知情報を、前記搭乗者と前記搭乗者の関係者とのうちの少なくとも一方へ通知されるように出力する出力部と、
を備える、
判断システム。
【請求項19】
前記情報通信機器を更に備え、
前記情報通信機器は、前記評価部による評価の結果を、前記搭乗者へ通知する、
請求項18に記載の判断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、判断方法、プログラム、及び判断システムに関する。本開示は、より詳細には、車両に搭乗する搭乗者の認知機能の程度を判断するための判断方法、プログラム、及び判断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両を認知症の運転者が運転することで、事故等のトラブルが発生する事例が増えてきている。
【0003】
特許文献1には、日常的な車両の運転に基づき、認知症リスクの観点から運転者の運転可否を判定できる認知症リスクの判定システムが開示されている。この判定システムは、道路情報取得部と、車両情報取得部と、ドライバ情報検出部と、状況判定部と、違反判定部と、リスク判定部と、出力部と、を備える。道路情報取得部は、道路情報を取得する。車両情報取得部は、車両に搭載され、車両の走行情報を取得する。ドライバ情報検出部は、車両の運転者の情報を検出する。状況判定部は、道路情報および走行情報に基づいて、車両の運転状況を判定する。違反判定部は、状況判定部により判定された運転状況が、所定の交通違反に該当するか否かを判定する。リスク判定部は、違反判定部により交通違反に該当すると判定された場合、運転者に認知症リスクがあるか否かを判定する。出力部は、認知症リスクがあると判定された場合、認知症リスクについての情報を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の判定システムでは、運転者が日常的に車両を運転したときの運転状況に基づいて、運転者の認知症リスクを判定している。そのため、特許文献1の判定システムでは、例えば稀にしか車両を運転しない運転者、或いは車両を一時的に借用して運転する運転者等については、認知症リスクを適切に判定できない可能性がある。
【0006】
運転者等の搭乗者の認知症リスクが適切に判定できないまま車両が運転されると、交通違反或いは事故等のトラブルの発生につながる可能性がある。
【0007】
本開示の目的は、車両の搭乗者の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の判断方法は、音声取得処理と、評価処理と、出力処理と、を含む。前記音声取得処理は、車両の搭乗者が発話した音声を示す音声データを、前記車両に搭載された運転用途専用の情報通信機器を介して取得することを含む。前記評価処理は、前記音声取得処理で取得された前記音声データに基づいて、前記搭乗者の認知機能の程度を評価する。前記出力処理は、前記評価処理の結果に基づく通知情報を、前記搭乗者と前記搭乗者の関係者とのうちの少なくとも一方へ通知されるように出力することを含む。
【0009】
本開示の一態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、前記判断方法を実行させるためのプログラムである。
【0010】
本開示の一態様の判断システムは、音声取得部と、評価部と、出力部と、を備える。前記音声取得部は、車両の搭乗者が発話した音声を示す音声データを、前記車両に搭載された運転用途専用の情報通信機器を介して取得する。前記評価部は、前記音声取得部で取得された前記音声データに基づいて、前記搭乗者の認知機能の程度を評価する。前記出力部は、前記評価部による評価の結果に基づく通知情報を、前記搭乗者と前記搭乗者の関係者とのうちの少なくとも一方へ通知されるように出力する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、車両の搭乗者の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することが可能となる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態の判断システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の判断システムを模式的に示す模式図である。
【
図3】
図3は、同上の判断システムによる判断方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、変形例1の判断システムを模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態の判断方法、及び判断方法の実行主体である判断システム100(
図1参照)について、図面を用いて説明する。下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0014】
(1)概要
本実施形態の判断方法は、車両V0(
図2参照)に搭乗する搭乗者H0の認知機能の程度を判断(或いは、判断を補助)する方法である。
【0015】
本開示での車両V0は、電力を生成或いは貯蓄可能な電力源を備えた移動体である。車両V0は、自動車V1、電車、船舶、航空機等であり、特に自動車V1であり得る。自動車V1とは、原動機を装置し、その動力によって車輪を回転し、軌条によらずに道路上を走る車である。本実施形態の自動車V1は、四輪の自動車であるが、これに限らず、二輪の自動車(いわゆるオートバイ)、三輪の自動車、五輪以上の自動車であってもよい。自動車としては、ガソリン車、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)等がある。日本国では、自動車は、その用途等によって、乗用自動車等、乗合自動車等、貨物自動車等、特殊用途自動車等、建設機械に区分されるが、本開示の自動車V1はいずれであってもよい。
【0016】
本実施形態の判断方法は、搭乗者H0が車両V0に搭乗している任意の時点において行われ得る。搭乗者H0が車両V0に搭乗している任意の時点は、例えば、搭乗者H0が車両V0に搭乗した(搭乗直後の)時点、搭乗者H0が車両V0を操作することで車両V0の原動機が駆動された時点、搭乗者H0が情報通信機器30を所定の態様で操作した時点、搭乗者H0が車両V0に搭乗してから所定時間が経過した時点、車両V0の移動(走行)中において一時的に停車している時点等であり得る。判断方法が行われる時点は、車両V0が移動中ではない時点であることが好ましいが、これに限らず移動中の時点であってもよい。本実施形態の判断方法は、搭乗者H0が車両V0に搭乗する度に毎回行われてもよいし、所定の期間(例えば3ヶ月)毎に定期的に行われてもよい。
【0017】
本実施形態の判断方法によって認知機能の程度が判断される対象者は、車両V0の搭乗者H0のうち、主として車両V0の運転者H1である。運転者H1の認知機能が低下していると、運転に必要な種々の判断に誤り或いは遅れが生じ、交通違反(信号無視、通行禁止違反等の、道路交通法で定められた違反行為)或いは事故(物損事故、人身事故等)等のトラブルにつながる可能性がある。このようなトラブルは、運転者H1のみならず、同乗者H2、運転者H1及び同乗者H2の家族、或いは事故の被害者及び家族にとって、物理的、金銭的、身体的な損失の発生等の不利益を生じ得る。また、運転者H1の認知機能の低下に起因して事故の件数が増加すると、自動車保険を取り扱う団体(保険会社等)にとっては、金銭的な負担の増加等の不利益が生じ得る。また、運転者H1が企業(タクシー会社、物流会社等)に雇用されて業として車両に搭乗する運転者(タクシー運転手、トラック運転手等)である場合、このようなトラブルは、企業にとって、物理的、金銭的な損失の発生、イメージダウン等の不利益が生じ得る。
【0018】
このように、運転者H1が自身の認知機能の低下に気付くことなく車両V0を運転すると、運転者H1のみならず運転者H1の関係者に種々の不利益を生じ得る。そのため、運転者H1が車両V0を運転する場合において、運転者H1の認知機能の程度が車両V0の運転に問題ないレベルであるかを確認することは、このようなトラブルの発生を防ぐためにも重要となる。
【0019】
平成29年に施行された改正道路交通法では、高齢の運転者(以下「高齢運転者」という)に関する交通安全対策の規則が整備された。具体的には、高齢運転者のうち75歳以上の者は、運転免許証の更新手続きの際に認知機能検査を受けることが義務付けられた。しかしながら、この認知機能検査は、運転免許証の更新手続きの際に行われるものであり、また、検査を受ける場所及び時間の確保が必要となる。
【0020】
上記の事情を鑑みて、本実施形態の判断方法は、以下の構成を採用している。
【0021】
本実施形態の判断方法は、
図3に示すように、音声取得処理ST3と、評価処理ST4と、出力処理ST6と、を含んでいる。音声取得処理ST3では、運転者H1等の搭乗者H0が発話した音声を示す音声データを、車両V0に搭載された運転用途専用の情報通信機器30を介して取得する。評価処理ST4では、音声取得処理ST3で取得された音声データに基づいて、搭乗者H0の認知機能の程度を評価する。出力処理ST6では、評価処理ST4の結果に基づく通知情報を、搭乗者H0と搭乗者H0の関係者とのうちの少なくとも一方へ通知されるように出力する。
【0022】
このように、本実施形態の判断方法は、搭乗者H0が発話した音声を示す音声データを、情報通信機器30を介して取得し、この音声データに基づいて搭乗者H0の認知機能の程度を評価し、評価結果を搭乗者H0及び/又は関係者へ通知している。そのため、認知機能検査のための特別の機材及び場所等を準備せずとも、搭乗者H0の認知機能の程度の判断を行うことが可能となる。また、搭乗者H0による車両V0の運転履歴の情報等が無くても、搭乗者H0の認知機能の程度の判断を行うことが可能である。また、例えば運転免許証の更新手続きの際の認知機能検査と比較して、短時間で、搭乗者H0の認知機能の程度を判断することが可能となる。そして、搭乗者H0が車両V0に搭乗している任意の時点において本開示の判断方法を行うことで、搭乗者H0の認知機能の程度が車両V0の運転に問題ないレベルであることが確保されることとなり、搭乗者H0の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することが可能となる。
【0023】
本実施形態の判断システム100は、上述の判断方法の実行主体である。判断システム100は、
図1に示すように、音声取得部F3と、評価部F4と、出力部F6と、を備える。
【0024】
音声取得部F3は、本実施形態の判断方法における音声取得処理ST3を実行する。音声取得部F3は、運転者H1等の搭乗者H0が発話した音声を示す音声データを、車両V0に搭載された運転用途専用の情報通信機器30を介して取得する。評価部F4は、本実施形態の判断方法における評価処理ST4を実行する。評価部F4は、音声取得部F3で取得された音声データに基づいて、搭乗者H0の認知機能の程度を評価する。出力部F6は、本実施形態の判断方法における出力処理ST6を実行する。出力部F6は、評価部F4による評価の結果に基づく通知情報を、搭乗者H0と搭乗者H0の関係者とのうちの少なくとも一方へ通知されるように出力する。
【0025】
本実施形態の判断システム100でも、搭乗者H0の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することが可能となる。
【0026】
(2)詳細
以下、本実施形態の判断方法、及び判断システム100の詳細について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0027】
(2.1)全体構成
図1、
図2に、本実施形態の判断方法を実行するための判断システム100の構成を示す。
【0028】
図2に示すように、判断システム100は、第1サーバ10を備えている。また、判断システム100は、第2サーバ20と情報通信機器30とを更に備えている。第1サーバ10は、電気通信回線NT1を介して情報通信機器30と通信可能である。第2サーバ20は、電気通信回線NT1を介して情報通信機器30と通信可能である。第1サーバ10は、電気通信回線NT1を介して第2サーバ20と通信可能である。なお、判断システム100は少なくとも第1サーバ10を備えていればよく、第2サーバ20及び情報通信機器30は判断システム100の構成要素でなくてもよい。
【0029】
第1サーバ10は、本実施形態の判断方法を行う判断システム100の主体を構成する。第1サーバ10は、本実施形態の判断方法の少なくとも一部をサービスとして提供する団体(企業等)の施設、又はその団体に関連する施設に設置されている。
【0030】
本実施形態では、第2サーバ20は、搭乗者H0が加入する自動車保険を取り扱う保険会社の施設(店舗等)、又は保険会社に関連する施設に設置されている。
【0031】
情報通信機器30は、車両V0に搭載されている。情報通信機器30は、車両V0の運転用途専用の機器である。運転用途専用の情報通信機器30とは、専ら車両V0の運転の用途に用いられる(主たる用途が車両V0の運転又は運転の補助である)機器である。運転用途専用の情報通信機器30は、搭乗者H0が車両V0から降車した後でも車両V0に搭載される機器であり得る。運転用途専用の情報通信機器30の例としては、ドライブレコーダ301、カーナビゲーションシステム302、コックピット(ダッシュボード/インストルメントパネルを含む)等が挙げられる。情報通信機器30は、車両V0の製造時に車体に一体に装備される機器であってもよいし、車両V0の製造後に車体に任意に取り付けられる機器であってもよい。情報通信機器30は、例えば、搭乗者H0が自動車保険に加入する際に、保険会社から貸与又は購買されるオプション品であり得る。
【0032】
電気通信回線NT1は、例えば、移動体通信網、PSTN(公衆交換電話網)、インターネット等を含み得る。電気通信回線NT1は、単一の通信プロトコルに準拠したネットワークだけではなく、異なる通信プロトコルに準拠した複数のネットワークで構成され得る。通信プロトコルは、周知の様々な有線及び無線通信規格から選択され得る。
図2では簡略化されているが、電気通信回線NT1は、リピータハブ、スイッチングハブ、ブリッジ、ゲートウェイ、ルータ等のデータ通信機器を含み得る。
【0033】
(2.2)情報通信機器
情報通信機器30は、車両V0に搭載されている。情報通信機器30は、例えば、車両V0から供給される動作電力によって動作する。情報通信機器30は、例えば、車両V0としての自動車V1のシガーボックスに接続され、動作電力が車両V0から供給される。情報通信機器30は、車両V0から供給された動作電力を一時的に蓄えるためのキャパシタ電源を備えている。なお、これに限らず、情報通信機器30は、動作電力を生成するための内蔵のバッテリを備えていてもよい。或いは、情報通信機器30は、車両V0のバッテリに接続されていてもよい。
【0034】
情報通信機器30は、例えばドライブレコーダ301である。ドライブレコーダ301は、車両V0としての自動車V1のフロントミラー、フロントガラス、又はダッシュボード等(
図2の例では、フロントミラー)に固定される。
【0035】
図1に示すように、情報通信機器30としてのドライブレコーダ301は、表示部31と、撮像部32と、音声入力部33と、音声出力部34と、操作部35と、通信部36と、記憶部37と、処理部38と、を備える。
【0036】
表示部31は、種々の情報を表示する。表示部31は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイを含んでいる。
【0037】
撮像部32は、例えば、撮像素子とレンズとを有するカメラを備えている。カメラは、例えばCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の二次元のセンサを含む。撮像部32は、単一のカメラを備える構成に限られず、2以上のカメラを備えていてもよい。
【0038】
音声入力部33は、車両V0内の音声を収音する。音声入力部33は、マイクロホンを備えている。マイクロホンは、音響信号を受けてそれを電気信号に変換する。音声入力部33は、例えば、搭乗者H0が発話した音声を含む音を、音声データ(音声信号)へと変換する。得られた音声データは、通信部36を介して、第1サーバ10等の外部の装置へと出力される。
【0039】
音声入力部33は、例えば、マイクロホンとして指向性マイクを備えている。指向性マイクは、特定の方向(前方)に高い感度を有するマイクである。指向性マイクの収音軸は、情報通信機器30を車両V0に設置したときに車両V0の運転席を向くように、設定されていてもよい。すなわち、情報通信機器30は、車両V0の運転席からの音声を選択的に収音する指向性マイクを備えていてもよい。これにより、音声入力部33は、車両V0内に複数の搭乗者H0がいる場合であっても、運転者H1が発話した音声を選択的に収音することが可能となる。指向性マイクは、その指向性が(例えば無指向性と単指向性とに)切り換え可能であってもよい。
【0040】
音声出力部34は、スピーカを備えている。スピーカは、電気信号を音に変換する。音声出力部34は、例えば、第1サーバ10等の外部の装置から通信部36を介して取得された音声データを、音声に変換して出力する。
【0041】
操作部35は、搭乗者H0によって操作される。操作部35は、搭乗者H0からの操作入力を受け付け、受け付けた操作に応じた信号を出力する。本実施形態では、例えばタッチパネルディスプレイのように、表示部31と操作部35とが一体化されている。タッチパネルディスプレイにおいては、表示部31に表示される各画面上でのボタン等のオブジェクトの操作(タップ、スワイプ、ドラッグ等)が操作部35で検出されることをもって、ボタン等のオブジェクトが操作されたことと判断する。つまり、表示部31及び操作部35は、各種の表示に加えて、搭乗者H0からの操作入力を受け付けるユーザインタフェースとして機能する。なお、これに限らず、操作部35はメカニカルなスイッチ等を含んでもよい。
【0042】
通信部36は、通信インタフェースである。通信部36は、電気通信回線NT1に接続可能な通信インタフェースであり、電気通信回線NT1を通じた通信を行う機能を有する。これにより、情報通信機器30は、電気通信回線NT1を通じて第1サーバ10及び第2サーバ20と通信可能である(
図2参照)。通信部36は、他の運転用途専用の情報通信機器30例えばカーナビゲーションシステム等を介して、電気通信回線NT1に接続されてもよい。通信部36は、搭乗者H0が所持するスマートフォン又はタブレット端末等の外部の情報端末を介して、電気通信回線NT1に接続されてもよい。
【0043】
記憶部37は、情報を記憶するための装置である。記憶部37は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等を含み得る。記憶部37には、例えば、撮像部32で撮像された画像が記憶される。
【0044】
処理部38は、情報通信機器30の全体的な制御、すなわち、表示部31、撮像部32、音声入力部33、音声出力部34、操作部35、通信部36、及び記憶部37の動作を制御するように構成される。処理部38は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部38として機能する。プログラムは、ここでは処理部38のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0045】
上述のように、本実施形態の情報通信機器30はドライブレコーダ301であって、車両V0に搭載されている。
【0046】
ドライブレコーダ301は、撮像部32のカメラで撮影された画像及び音声入力部33のマイクロホンで収音された音声を、記憶部37に記憶する。ドライブレコーダ301は、例えば加速度センサのような衝撃の発生を検出するためのセンサを備えており、衝撃が検出された時点の前後の所定期間(前後の数十秒程度)にカメラで撮影された画像及びマイクロホンで収音された音声を、日時の情報とともに記憶部37に記憶する。ドライブレコーダ301は、加速度センサで検出された加速度の情報を、画像及び音声と一緒に記憶してもよい。ドライブレコーダ301は、通信部36によりGPS衛星から取得した位置の情報を、画像及び音声と一緒に記憶してもよい。
【0047】
また、情報通信機器30としてのドライブレコーダ301は、判断システム100が判断方法を行う際のユーザインタフェースとして機能する。ドライブレコーダ301は、搭乗者H0からの入力(操作入力、音声入力)を受け付け、受け付けた入力に対応する情報を第1サーバ10へ送信する。すなわち、第1サーバ10の音声取得部F3(後述する)で取得される音声データの音声は、音声入力部33で収音された音声である。また、ドライブレコーダ301は、判断方法の実行主体である第1サーバ10から送信された情報を受け取って、搭乗者H0へ情報を提示(表示、音声出力)する。
【0048】
情報通信機器30としてのドライブレコーダ301は、車両V0に搭乗者H0が搭乗している任意の時点で、判断方法の開始を指示する開始指示信号を第1サーバ10へ送信する。例えば、ドライブレコーダ301は、車両V0の運転席側のドアが開けられた後、車両V0の車内に配置されている人感センサが人の存在を検出した場合に、開始指示信号を第1サーバ10へ送信してもよい。或いは、ドライブレコーダ301は、車両V0又は車両V0に搭載されている備品(ドライブレコーダ301を含む)に所定の操作がなされた場合に、開始指示信号を第1サーバ10へ送信してもよい。
【0049】
(2.3)第1サーバ
図1に示すように、第1サーバ10は、通信部11と、記憶部12と、処理部13と、を備えている。
【0050】
通信部11は、通信インタフェースである。通信部11は、電気通信回線NT1に接続可能な通信インタフェースであり、電気通信回線NT1を通じた通信を行う機能を有する。第1サーバ10は、電気通信回線NT1を通じて情報通信機器30と通信可能である。また、第1サーバ10は、電気通信回線NT1を通じて第2サーバ20と通信可能である。なお、通信部11が情報通信機器30と通信するための通信プロトコルは、通信部11が第2サーバ20と通信するための通信プロトコルと同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0051】
通信部11は、電気通信回線NT1を介して情報通信機器30と信号を送受信する。通信部11は、電気通信回線NT1を介して第2サーバ20と信号を送受信する。
【0052】
記憶部12は、情報を記憶するための装置である。記憶部12は、ROM、RAM、EEPROM等を含み得る。記憶部12には、情報通信機器30からの開始指示信号を受けて情報通信機器30へ送信される課題データが、記憶される。また、記憶部12には、学習済モデルM1(後述する)が記憶される。記憶部12は、情報通信機器30から送信される搭乗者H0の音声データを記憶するための領域を有していてもよい。
【0053】
処理部13は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部13として機能する。
【0054】
処理部13は、第1サーバ10の全体的な制御、すなわち、通信部11及び記憶部12の動作を制御するように構成される。また、
図1に示すように、処理部13は、受付部F1と、課題提示部F2と、音声取得部F3と、評価部F4と、判定部F5と、出力部F6と、禁止処理部F7と、を備えている。なお、受付部F1、課題提示部F2、音声取得部F3、評価部F4、判定部F5、出力部F6、及び禁止処理部F7は、実体のある構成を示しているわけではなく、処理部13によって実現される機能を示している。
【0055】
受付部F1は、受付処理ST1を行う。受付処理ST1は、本実施形態の判断方法の開始の指示を受け付ける処理である。上述のように、情報通信機器30は、車両V0に搭乗者H0が搭乗している任意の時点で、判断方法の開始を指示する開始指示信号を第1サーバ10へ送信する。受付部F1は、通信部11を介して開始指示信号を受信することで、判断方法の開始の指示を受け付ける。
【0056】
課題提示部F2は、課題提示処理ST2を行う。課題提示処理ST2は、搭乗者H0に提示されるべき課題を示す課題データを出力する処理である。課題提示部F2は、受付部F1にて開始指示信号を受信すると、課題データを出力する。ここでの課題データは、自動音声の音声データの形式であり得る。課題データは、通信部11を介して情報通信機器30へ送信される。情報通信機器30は、音声データ形式の課題データを受け取ると、課題データの音声データに基づいて、音声出力部34から自動音声を出力(発音)する。すなわち、課題提示処理ST2では、情報通信機器30としてのドライブレコーダ301によって、搭乗者H0へ課題が提示される。
【0057】
課題データは、搭乗者H0に発話を促す課題情報を含む。課題情報とは、搭乗者H0に発話させたい文章の内容を、課題として提示するための情報である。
【0058】
課題情報は、例えば、早口言葉等の定型文、複数の母音「え」「おえう」「いあえお」等を含むランダムな文、都道府県名等の搭乗者H0の記憶を問う文等を含み得る。
【0059】
課題情報は、例えば、搭乗者H0に定型文の読み上げを促す内容を含み得る。課題情報は、例えば、搭乗者H0に読み上げられるべき定型文と、この定型文の読み上げを行うべき期間の始点及び終点を示す音(例えば「ピ」音)と、を含み得る。
【0060】
課題情報は、異なる複数の定型文を含んでもよい。例えば、課題情報は、6種類の定型文を順次読み上げさせる内容を含み得る。
【0061】
定型文は、例えば、閉鎖子音と後続母音とからなる文字を、5以上含む文であり得る。定型文は、例えば、「きたからきたかたたたきき」等の文を含み得る。
【0062】
定型文は、所定の音節が繰り返されるフレーズを含み得る。所定の音節は、例えば、閉鎖子音、及び当該閉鎖子音に続く母音によって構成され得る。所定の音節は、例えば、「ぱ」、「た」、及び「か」のいずれかであり得る。つまり、定型文は、「ぱぱぱぱぱ・・・」、「たたたたた・・・」、「かかかかか・・・」等のフレーズであり得る。
【0063】
また、課題情報は、同一の定型文の複数回の読み上げを指示する内容を含み得る。この場合、課題情報は、定型文を読み上げるべき回数を含んでもよい。
【0064】
搭乗者H0は、提示された課題に対応する回答内容を、発話する。すなわち、搭乗者H0が発話する音声は、自動音声による搭乗者H0への問いかけに対して搭乗者H0が発話した音声であり得る。搭乗者H0が発話した音声は、予め決められた定型文を搭乗者H0が読み上げた音声を含み得る。
【0065】
搭乗者H0が発話した音声は、情報通信機器30の音声入力部33で音声データ(電気信号)に変換され、第1サーバ10へ送信される。
【0066】
音声取得部F3は、音声取得処理ST3を行う。音声取得処理ST3は、搭乗者H0が発話した音声を示す音声データを取得する処理である。音声取得部F3は、課題提示部F2からの自動音声に応答して搭乗者H0から発せられた音声を示す音声データを、情報通信機器30から取得する。すなわち、音声取得処理ST3では、情報通信機器30としてのドライブレコーダ301によって収音された搭乗者H0の音声を示す音声データが、取得される。上述のように、音声入力部33は指向性マイクを備えているので、車両V0内の音声のうち、主として運転席に位置する者(運転者H1)が発話した音声を示す音声データが、取得されることとなる。音声取得部F3は、電気通信回線NT1を通じて音声データを取得する。
【0067】
評価部F4は、評価処理ST4を行う。評価処理ST4は、音声取得処理ST3で取得された音声データに基づいて、搭乗者H0の認知機能の程度を評価する処理である。評価部F4は、音声取得部F3で取得された音声データを演算処理することで、搭乗者H0(運転者H1)の認知機能の程度を評価する。評価部F4は、例えば、音声データから抽出される特徴量を用いて、搭乗者H0の認知機能を評価する。
【0068】
本実施形態の判断システム100において、評価部F4は、学習済モデルM1を利用して搭乗者H0の認知機能を評価する。学習済モデルM1は、記憶部12に記憶されている。学習済モデルM1は、例えばロジスティック回帰モデルである。
【0069】
学習済モデルM1は、与えられた入力(特徴量)に対して、搭乗者H0の認知機能の程度を示す値を出力するように設計されている。評価部F4は、音声データから得られた特徴量を学習済モデルM1に与え、これによって学習済モデルM1から得られた値に基づいて、搭乗者H0の認知機能の程度を評価する。このような学習済モデルM1は、認知機能の程度を示す値と特徴量との関係を規定する学習用データ(データセット)を用いた教師あり学習により生成することができる。
【0070】
本実施形態において、認知機能の評価に用いられる特徴量は、音声データで示される搭乗者H0の音声に含まれる母音部分のスペクトルから得られるフォルマントに基づき得る。フォルマントとは、横軸が時間である音声データを横軸を周波数に変換して得られるスペクトルにおいて表われる、複数のピークを意味する。例えば、複数のピークのうち、周波数の最も低いピークを第一フォルマントと呼び、第一フォルマントの次に周波数の低いピークを第二フォルマントと呼ぶ。
【0071】
例えば、特徴量は、第一フォルマント周波数及び/又は第二フォルマント周波数に関する量(第1量)を含み得る。第一フォルマント周波数は、第一フォルマントの周波数であり、第二フォルマント周波数は、第二フォルマントの周波数である。
【0072】
一例において、上記第1量は、音声データで示される搭乗者H0の音声に含まれる複数の音節における複数の母音の、第一フォルマント周波数、第二フォルマント周波数、又は第一フォルマント周波数に対する第二フォルマント周波数の比のばらつきを含み得る。ばらつきは、例えば標準偏差である。
【0073】
一例において、上記第1量は、音声データで示される搭乗者H0の音声に含まれる複数の音節における複数の母音の、第一フォルマント周波数又は第二フォルマント周波数の変化量を含み得る。
【0074】
一例において、上記第1量は、音声データで示される搭乗者H0の音声に含まれる複数の音節における複数の母音の第一フォルマント周波数又は第二フォルマント周波数の変化にかかる所要時間を含み得る。
【0075】
一例において、上記第1量は、音声データで示される搭乗者H0の音声に含まれる複数の音節における複数の母音の第一フォルマント周波数又は第二フォルマント周波数の、所要時間に対する変化量の比である変化率を含み得る。
【0076】
一例において、上記第1量は、母音の第一フォルマント周波数に対する第二フォルマント周波数で形成される座標空間において、音声データで示される搭乗者H0の音声に含まれる複数の音節における複数の母音の第一フォルマント周波数に対する第二フォルマント周波数の値をプロットした場合の、プロットされた複数の点の間の位置関係、又はそれらの点で形成される多角形の形状又は面積を含み得る。
【0077】
例えば、特徴量は、1以上のフォルマントの周波数及び振幅に関する量(第2量)を含み得る。
【0078】
一例において、上記第2量は、第二フォルマントの周波数及び振幅を含み得る。
【0079】
一例において、上記第2量は、第二フォルマントの周波数及び振幅の標準偏差を含み得る。一例において、上記第2量は、第二フォルマントの周波数及び振幅の時間に対する変化量を含み得る。第二フォルマントの周波数及び振幅の標準偏差、及び第二フォルマントの周波数及び振幅の時間に対する変化量の各々は、搭乗者H0の音声のスペクトルにおける所定時間ごとの複数の第二フォルマントの周波数及び振幅から求められる。
【0080】
一例において、上記第2量は、第一フォルマント周波数に対する第二フォルマント周波数の比、及び第一フォルマントの振幅に対する第二フォルマントの振幅の比を含み得る。
【0081】
また、認知機能の評価に用いられる特徴量は、音声データの基本周波数の単位時間あたりの変動を含み得る。基本周波数とは、音源の振動数、つまり、搭乗者H0が発した音声の音程を意味する。基本周波数の単位時間あたりの変動とは、基本周波数の単位時間あたりの変化量を意味する。
【0082】
一例において、特徴量は、音声データの基本周波数の単位時間あたりの変動幅を含み得る。基本周波数の単位時間あたりの変動幅とは、ある単位時間における基本周波数の最大値と最小値との差を意味する。
【0083】
また、認知機能の評価に用いられる特徴量は、音声データで示される搭乗者H0の音声に含まれる開音節における子音の音圧と当該子音に後続する母音の音圧との間の音圧差を含み得る。
【0084】
認知機能の評価に用いられる特徴量は、音声データで示される搭乗者H0の音声に含まれる複数の開音節における、子音の音圧と当該子音に後続する母音の音圧との間の音圧差の、ばらつきを含み得る。
【0085】
認知機能の評価に用いられる特徴量は、定型文の読み上げに際し、搭乗者H0が読み上げに要した総時間を含み得る。
【0086】
認知機能の評価に用いられる特徴量は、同一の定型文の複数回の読み上げに際し、複数回の読み上げにそれぞれ要した時間の変化量を含み得る。
【0087】
また、評価部F4は、搭乗者H0の属性情報に更に基づいて、搭乗者H0の認知機能を評価してもよい。属性情報は、搭乗者H0の年齢、性別、学習歴等の、搭乗者H0の認知機能と関連性の高い情報を含み得る。
【0088】
評価部F4は、搭乗者H0の認知機能の評価結果を生成する。評価結果は、例えば、搭乗者H0の認知機能の程度が、健常者(NC:Normal Control)のレベル、軽度の認知症患者(MCI:Mild Cognitive Inpairment)のレベル、或いは認知症患者(AD:Alzheimer’s disease)のレベルのいずれであるかを示す情報であり得る。つまり、評価部F4は、搭乗者H0の認知機能の程度を、3段階で評価する。ただし、これに限らず、評価部F4は、搭乗者H0の認知機能の程度を2又は4以上の段階で評価してもよい。例えば評価部F4は、MCIを複数段階(例えば、ADに近い重度のMCIと、NCに近い軽度のMCIとの2段階)に分けて評価してもよいし、ADを複数段階に分けて評価してもよい。また、評価結果は、搭乗者H0の認知機能の程度を示す数値であってもよい。
【0089】
判定部F5は、判定処理ST5を行う。判定処理ST5は、評価処理ST4の結果に基づいて、搭乗者H0による車両V0の運転の可否を判定する処理である。ここでは、判定部F5は、評価部F4で評価された搭乗者H0(運転者H1)の認知機能の程度が健常者(NC)のレベルであれば、搭乗者H0の認知機能が車両V0を運転可能なレベルにあると判断して、車両V0の運転が「可能」であると判定する。一方、判定部F5は、それ以外のレベル(MCI又はADのレベル)であれば、搭乗者H0の認知機能が車両V0を運転可能なレベルに無いと判断して、車両V0の運転が「不可能」であると判定する。すなわち、判定部F5は、搭乗者H0の認知機能の程度が健常者(NC)のレベルに無ければ、車両V0を運転するための判断能力に懸念があるとして、車両V0を運転しない方がよい、と判定する。要するに、判定部F5は、評価部F4で評価された搭乗者H0の認知機能の程度に基づいて、搭乗者H0(運転者H1)による車両V0の運転の可否を、運転が可能又は不可能の2段階で判定する。
【0090】
出力部F6は、出力処理ST6を行う。出力処理ST6は、通知情報を出力する処理である。通知情報は、例えば音声データ又は画像データの形式であり得る。
【0091】
通知情報は、評価部F4で評価された、搭乗者H0の認知機能の程度を示す情報を含み得る。通知情報は、搭乗者H0の認知機能の程度を示す文章を含み得る。例えば、評価部F4による評価結果が、搭乗者H0がMCIであることを示す結果である場合、通知情報は、「あなたには認知症の兆候が見られます。」という文章を含み得る。
【0092】
通知情報は、判定部F5で判定された、搭乗者H0による車両V0の運転の可否を示す情報を含み得る。通知情報は、搭乗者H0による車両V0の運転の可否を示す文章を含み得る。例えば、判定部F5による判定結果が、搭乗者H0による車両V0が「不可能」であることを示す結果である場合、通知情報は、「運転はお控えください。」という文章を含み得る。
【0093】
このように、出力処理ST6で出力される通知情報は、評価処理ST4の結果に基づく情報である。
【0094】
出力部F6は、搭乗者H0へ通知されるように通知情報を出力する。具体的には、出力部F6は、通知情報を、電気通信回線NT1を介してドライブレコーダ301(搭乗者H0の音声を収音した情報通信機器30)へ送信する。ドライブレコーダ301は、通知情報を受け取ると、表示部31により画像表示する。これに代えて/加えて、ドライブレコーダ301は、通知情報を受け取ると、音声出力部34により音声出力する。これにより、通知情報が搭乗者H0へ通知される。要するに、情報通信機器30としてのドライブレコーダ301は、通知情報を搭乗者H0へ提示する。
【0095】
搭乗者H0としての運転者H1は、ドライブレコーダ301により提示された通知情報を参考に、車両V0の運転を行うか否かを判断すればよい。
【0096】
このように、本実施形態の判断システム100では、搭乗者H0が発話した音声を示す音声データに基づいて、搭乗者H0の認知機能の程度を評価し、搭乗者H0による車両V0の運転の可否を判定している。そのため、例えば運転免許証の更新手続きの際の認知機能検査と比較して短時間で、搭乗者H0の認知機能の程度の判断及び車両V0の運転の可否の判定を行うことが可能となる。また、車両V0の運転用途専用の情報通信機器30(ドライブレコーダ301)をユーザインタフェースとして用いて、音声の取得及び結果の提示を行うので、認知機能検査のための特別の機材及び場所等を準備することなく、認知機能の程度の判断及び車両V0の運転の可否の判定を行うことが可能となる。また、例えばスマートフォン等の汎用の情報端末をユーザインタフェースとして用いて検査を行う場合、情報端末を携帯していない搭乗者H0については検査を行うことができない。これに対し、本実施形態の判断方法では、運転用途専用の情報通信機器30をユーザインタフェースとして用いるため、このような理由による検査の不実施を回避することが可能となる。
【0097】
本実施形態では、出力部F6は、更に、搭乗者H0の関係者としての保険会社の構成員H10(社員)へ通知されるように、通知情報を出力する。具体的には、出力部F6は、通知情報を、電気通信回線NT1を介して第2サーバ20へ送信する。通知情報は、搭乗者H0の音声を受けた情報通信機器30(ドライブレコーダ301)の識別情報と紐付けて、第2サーバ20の記憶部22へ記憶される。要するに、出力部F6は、通知情報を、搭乗者H0の関係者である、搭乗者H0が加入する自動車保険を取り扱う団体の構成員H10へ通知されるように、出力する。
【0098】
保険会社へ通知される通知情報は、搭乗者H0へ通知される通知情報と異なっていてもよい。保険会社へ通知される通知情報は、例えば、評価部F4で評価された、搭乗者H0の認知機能の程度を示す情報を含み得る。保険会社へ通知される通知情報は、例えば、搭乗者H0の認知機能の程度が、NC、MCI、ADのいずれのレベルであるかを示す情報を含み得る。
【0099】
禁止処理部F7は、禁止処理ST8を行う。禁止処理ST8は、判定部F5によって搭乗者H0(運転者H1)による車両V0の運転が不可能と判定された場合に、車両V0の移動が禁止されるように、車両V0の移動を禁止する禁止信号を出力する処理である。
【0100】
禁止処理部F7は、例えば、禁止信号を、車両V0のキーロック機構へ送信する。キーロック機構は、車両V0の原動機の駆動を開始させるためのキースイッチをロックする機構である。キーロック機構は、禁止信号を受け取ると、搭乗者H0の操作に拘わらずキースイッチをオフに維持する。キーロック機構は、車両V0の製造時に車体に一体に内蔵される装置であってもよいし、車両V0の製造後に任意に取り付けられる装置であってもよい。禁止信号の送信先は、キーロック機構に限られず、例えば車両V0である自動車V1のECU(Engine Control Unit)等であってもよい。
【0101】
(2.4)第2サーバ
図1に示すように、第2サーバ20は、通信部21と、記憶部22と、処理部23と、を備えている。
【0102】
通信部21は、通信インタフェースである。通信部21は、電気通信回線NT1に接続可能な通信インタフェースであり、電気通信回線NT1を通じた通信を行う機能を有する。第2サーバ20は、電気通信回線NT1を通じて情報通信機器30と通信可能である。また、第2サーバ20は、電気通信回線NT1を通じて第1サーバ10と通信可能である。なお、通信部21が情報通信機器30と通信するための通信プロトコルは、通信部21が第1サーバ10と通信するための通信プロトコルと同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0103】
通信部21は、電気通信回線NT1を介して情報通信機器30と信号を送受信する。通信部21は、電気通信回線NT1を介して第1サーバ10と信号を送受信する。
【0104】
記憶部22は、情報を記憶するための装置である。記憶部22は、ROM、RAM、EEPROM等を含み得る。記憶部22には、第1サーバ10から受け取った認知機能の程度の評価結果が、情報通信機器30(ドライブレコーダ301)の識別情報と紐付けて記憶される。第2サーバ20の記憶部22に記憶されている情報は、保険会社の情報端末29(
図2参照)を介して、保険会社の構成員H10が確認可能である。
【0105】
処理部23は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部23として機能する。
【0106】
処理部23は、第2サーバ20の全体的な制御、すなわち、通信部21及び記憶部22の動作を制御するように構成される。また、処理部23は、保険会社の構成員H10が操作する情報端末29を介して、搭乗者H0との間で自動車保険の契約を行う機能を有する。
【0107】
保険会社では、通知情報に基づいて、搭乗者H0の保険料の見直し等を行ってもよい。見直し後の保険料の情報は、第2サーバ20から情報通信機器30(ドライブレコーダ301)へ送信されてもよい。
【0108】
処理部23は、搭乗者H0の認知機能が低下していることを示す通知情報を第1サーバ10から受け取ると、例えば情報通信機器30へ、警告情報を出力してもよい。警告情報は、例えば、自動車保険の保険料の増額を示唆することで、搭乗者H0による車両V0の運転に対して間接的に警告する内容を含み得る。すなわち、本実施形態の判断方法は、通知情報に基づいて搭乗者H0の自動車保険の保険料を評価する保険料評価処理と、保険料評価処理の結果に基づいて自動車保険の保険料に関する警告を含む警告情報を出力する警告処理と、を含んでもよい。
【0109】
(2.5)動作
以下、
図3を参照して本実施形態の判断方法について簡単に説明する。
【0110】
搭乗者H0が車両V0に搭乗した後の適宜のタイミングで、情報通信機器30としてのドライブレコーダ301は、第1サーバ10へ開始指示信号を送信する。第1サーバ10は、開始指示信号を受信することで、判断方法の開始の指示を受け付ける(受付処理ST1)。
【0111】
開始の指示を受け付けると、第1サーバ10は、課題データをドライブレコーダ301へ送信し、ドライブレコーダ301から課題を提示させる(課題提示処理ST2)。上述のように、課題は、自動音声の形式で音声出力部34から出力される。
【0112】
搭乗者H0(運転者H1)は、提示された課題に対して、音声で回答する。ドライブレコーダ301は、音声入力部33にて搭乗者H0の音声を音声データへと変換し、音声データを第1サーバ10へ送信する。第1サーバ10は、ドライブレコーダ301から送信された音声データを取得する(音声取得処理ST3)。
【0113】
第1サーバ10は、取得した音声データから、特徴量を抽出する。また、第1サーバ10は、抽出した特徴量を用いて、搭乗者H0の認知機能の程度を評価する(評価処理ST4)。
【0114】
また、第1サーバ10は、評価処理ST4の結果に基づいて、搭乗者H0による車両V0の運転の可否を判定する(判定処理ST5)。第1サーバ10は、評価処理ST4で評価された搭乗者H0の認知機能の程度がNCのレベルであれば、「可能」と判定し、それ以外のレベルであれば、「不可能」と判定する。
【0115】
第1サーバ10は、評価処理ST4で評価された評価の結果及び/又は判定処理ST5で判定された可否の結果を含む通知情報を、ドライブレコーダ301へ出力する(出力処理ST6)。通知情報は、ドライブレコーダ301にて、搭乗者H0に対して提示(表示)される。搭乗者H0は、ドライブレコーダ301にて、通知情報の内容を確認する。
【0116】
また、第1サーバ10は、通知情報を、第2サーバ20へ出力する(出力処理ST6)。保険会社の構成員H10は、情報端末29を介して、通知情報を確認する。第2サーバ20は、必要に応じて、警告情報をドライブレコーダ301へ出力する。
【0117】
また、第1サーバ10は、判定処理ST5の結果が「不可能」の場合(ST7:No)、車両V0のキーロック機構へ禁止信号を送信する(ST8)。これにより、車両V0の駆動が禁止される。
【0118】
(3)変形例
上記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。上記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。上記実施形態の判断方法と同様の機能は、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0119】
一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、1以上のプロセッサに、上述の実施形態の判断方法を実行させるためのプログラムである。
【0120】
以下、実施形態の変形例を列挙する。以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。上記の基本例及び以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0121】
本開示における判断システム100は、例えば、第1サーバ10、第2サーバ20、情報通信機器30等に、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、第1サーバ10、第2サーバ20、情報通信機器30としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0122】
また、第1サーバ10及び第2サーバ20の各々における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは判断システム100に必須の構成ではなく、第1サーバ10及び第2サーバ20の各々の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、判断システム100の少なくとも一部の機能、例えば、第1サーバ10及び第2サーバ20の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0123】
反対に、上述の実施形態において、複数の装置に分散されている判断システム100の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。例えば、第1サーバ10と第2サーバ20とに分散されている判断システム100の一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0124】
(3.1)変形例1
図4を参照して、本変形例の判断システム100について説明する。本変形例の判断システム100は、第2サーバ201が、搭乗者H0を雇用する企業の施設、又は企業に関連する施設に設置されている点で、基本例と相違する。以下では、基本例の判断システム100と実質的に同じ構成については、同じ符号を付与して適宜にその説明を省略する場合がある。
【0125】
本実施形態では、搭乗者H0が、企業に雇用されて業として車両V0に搭乗する者(運転者H1)である。企業は、例えばタクシー会社、物流会社等であり、搭乗者H0は、例えばタクシー運転手、トラック運転手等である。
【0126】
出力部F6は、搭乗者H0の関係者として、搭乗者H0を雇用する企業の構成員H11(社員)へ通知されるように、通知情報を出力する。具体的には、出力部F6は、通知情報を、電気通信回線NT1を介して第2サーバ201へ送信する。通知情報は、搭乗者H0(運転手)に割り当てられた識別情報と紐付けて、第2サーバ201の記憶部へ記憶される。第2サーバ201の記憶部に記憶されている情報は、企業の情報端末291(
図4参照)を介して、企業の構成員H11が確認可能である。要するに、出力部F6は、通知情報を、搭乗者H0の関係者である、搭乗者H0を雇用する企業の構成員H11へ通知されるように、出力する。
【0127】
搭乗者H0を雇用する企業へ通知される通知情報は、搭乗者H0へ通知される通知情報と異なっていてもよい。企業へ通知される通知情報は、例えば、評価部F4で評価された、搭乗者H0の認知機能の程度を示す情報を含み得る。企業へ通知される通知情報は、例えば、搭乗者H0の認知機能の程度が、NC、MCI、ADのいずれのレベルであるかを示す情報を含み得る。
【0128】
搭乗者H0を雇用する企業では、通知情報の内容を、搭乗者H0の雇用形態の見直し等の際の資料として用いてもよい。
【0129】
本変形例の判断システム100によれば、搭乗者H0のみならず、搭乗者H0を雇用する企業の不利益の低減を図ることが可能となる。
【0130】
(3.2)その他の変形例
一変形例において、課題提示処理ST2で出力される課題データは、画像データの形式であってもよい。その場合、情報通信機器30は、課題情報を、搭乗者H0に視覚的に提示する。例えば、情報通信機器30は、課題情報を示す文章、画像、映像等を、表示部31に表示させてもよい。
【0131】
一変形例において、課題情報は、解答が一義的に決まる質問を含んでもよい。質問は、車両V0の運転に関連していてもよい。質問の例としては、例えば、一時停止標識の色を答えさせる質問、表示部31にスピードメータの画像を表示させてメータが指し示す速度を答えさせる質問、表示部31にナンバープレートの画像を表示させて地名、番号等を答えさせる質問等がある。表示部31に表示される画像は、動画であってもよく、例えばその大きさが徐々に変化する(徐々に大きくなる)画像であってもよい。また、表示部31に一時的に画像を表示させてその内容を搭乗者H0に記憶させた後に画像を非表示とし、画像に示されていた内容についての質問を搭乗者H0に提示してもよい。すなわち、課題提示処理ST2では、車両V0の運転に関連する質問を搭乗者H0に提示し、この質問は、質問に対する解答としての定型文の読み上げを搭乗者H0に促してもよい。搭乗者H0の認知機能の程度の評価結果の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0132】
一変形例において、課題情報は、解答が一義的に決まらない質問を含んでもよい。質問の例としては、例えば、搭乗者H0の氏名、年齢、教育歴等を答えさせる質問がある。
【0133】
一変形例において、評価部F4は、運転者H1の運転能力に更に基づいて、運転者H1の認知機能の程度を評価してもよい。運転者H1の運転能力は、例えば、情報通信機器30(ドライブレコーダ301)で取得された、車両V0の運転結果(急ブレーキの頻度、急ハンドルの頻度、運転速度等)に基づいて、判断され得る。すなわち、判断方法は、情報通信機器30で取得された車両V0の運転結果を示す運転結果情報を取得する運転結果情報取得処理と、運転結果情報に基づいて、運転者H1の運転能力を判断する運転能力判断処理と、を備えてもよい。そして、評価処理ST4では、運転能力判断処理で判断された運転者H1の運転能力に更に基づいて、運転者H1の認知機能の程度を評価してもよい。
【0134】
一変形例において、出力部F6は、搭乗者H0の関係者としての搭乗者H0の家族へ通知されるように、通知情報を出力してもよい。例えば、出力部F6は、搭乗者H0の家族が所持する情報端末、例えばスマートフォン、タブレット端末等へ、通知情報を出力してもよい。例えば、開始指示信号に通知情報の出力先を含ませることで、このような態様が実現可能である。
【0135】
一変形例において、通知情報は、搭乗者H0に医療機関への受診を促す情報を含んでいてもよい。
【0136】
一変形例において、通知情報は、情報通信機器30以外の装置を介して、搭乗者H0へ通知されてもよい。例えば、通知情報は、搭乗者H0が所有する情報端末、例えば搭乗者H0が所有するスマートフォンへ送信されてもよい。
【0137】
一変形例において、第1サーバ10の所有者は、第2サーバの所有者から、判断システム100の使用料を受け取ってもよい。使用料は、定額制(例えば月毎に一定料金を支払う方法)であってもよいし、従量制(例えば、判断方法を実施した回数に応じて料金を支払う方法)であってもよい。
【0138】
一変形例において、運転者H1以外の搭乗者H0(同乗者H2)の認知機能の程度が判断されてもよい。同乗者H2は、運転者H1が車両V0を運転する際に運転の補助を行う場合がある。そのため、同乗者H2の認知機能の程度を検査することで、トラブルの発生の可能性を低減することが可能である。
【0139】
一変形例において、搭乗者H0の音声が取得される情報通信機器30はドライブレコーダ301に限られず、カーナビゲーションシステム302(インダッシュナビ又はポータブルナビ)、車両V0のコックピット等であってもよい。
【0140】
一変形例において、通知情報は、搭乗者H0と関係者とのうちの一方のみに通知されてもよい。
【0141】
一変形例において、車両V0は自動車V1に限られず、電車、船舶、飛行機等であってもよい。
【0142】
一変形例において、第1サーバ10は、定期的(例えば3ヶ月毎)に、判断方法を実行させてもよい。例えば、第1サーバ10は、判断方法の実行を促す情報を、情報通信機器30(ドライブレコーダ301)へ定期的に送信することで、搭乗者H0が車両V0に搭乗した際に情報通信機器30から開始指示信号を送信させてもよい。
【0143】
(4)態様
以上説明した実施形態及び変形例から明らかなように、本明細書には以下の態様が開示されている。
【0144】
第1の態様の判断方法は、音声取得処理(ST3)と、評価処理(ST4)と、出力処理(ST6)と、を含む。音声取得処理(ST3)は、車両(V0)の搭乗者(H0)が発話した音声を示す音声データを、車両(V0)に搭載された運転用途専用の情報通信機器(30)を介して取得することを含む。評価処理(ST4)は、音声取得処理(ST3)で取得された音声データに基づいて、搭乗者(H0)の認知機能の程度を評価することを含む。出力処理(ST6)は、評価処理(ST4)の結果に基づく通知情報を、搭乗者(H0)と搭乗者(H0)の関係者とのうちの少なくとも一方へ通知されるように出力することを含む。
【0145】
この態様によれば、車両(V0)の搭乗者(H0)の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することが可能となる。
【0146】
第2の態様の判断方法では、第1の態様において、音声取得処理(ST3)において取得される音声データの音声は、予め決められた定型文を搭乗者(H0)が読み上げた音声を含む。
【0147】
この態様によれば、認知機能の程度の評価結果の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0148】
第3の態様の判断方法では、第1又は第2の態様において、音声取得処理(ST3)において取得される音声データの音声は、自動音声による搭乗者(H0)への問いかけに対して搭乗者(H0)が発話した音声を含む。
【0149】
この態様によれば、車両(V0)の搭乗者(H0)の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することが可能となる。
【0150】
第4の態様の判断方法では、第1~第3のいずれか1つの態様において、出力処理(ST6)では、評価処理(ST4)の結果を示す情報が、情報通信機器(30)へ送信される。情報通信機器(30)は、評価処理(ST4)の結果を、搭乗者(H0)へ提示する。
【0151】
この態様によれば、情報通信機器(30)をユーザインタフェースとして用いることで、判断方法の実施が容易となる。
【0152】
第5の態様の判断方法では、第1~第4のいずれか1つの態様において、情報通信機器(30)は、ドライブレコーダ(301)である。
【0153】
この態様によれば、ドライブレコーダ(301)が元来備える通信機能、音声入出力機能等を、本開示の判断方法に利用できる。
【0154】
第6の態様の判断方法では、第1~第5のいずれか1つの態様において、搭乗者(H0)は、車両(V0)の運転者(H1)である。
【0155】
この態様によれば、車両(V0)の運転者(H1)の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することが可能となる。
【0156】
第7の態様の判断方法は、第6の態様において、運転結果情報取得処理と、運転能力判断処理と、を更に備える。運転結果情報取得処理は、情報通信機器(30)で取得された車両(V0)の運転結果を示す運転結果情報を取得することを含む。運転能力判断処理は、運転結果情報に基づいて、運転者(H1)の運転能力を判断することを含む。評価処理(ST4)では、運転能力判断処理で判断された運転者(H1)の運転能力に更に基づいて、運転者(H1)の認知機能の程度を評価する。
【0157】
この態様によれば、認知機能の程度の評価結果の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0158】
第8の態様の判断方法は、第6又は第7の態様において、判定処理(ST5)と、禁止処理(ST8)と、を更に備える。判定処理(ST5)は、評価処理(ST4)の結果に基づいて、運転者(H1)による車両(V0)の運転の可否を判定することを含む。禁止処理(ST8)は、判定処理(ST5)において運転者(H1)による車両(V0)の運転が不可能と判定された場合に、車両(V0)の移動が禁止されるように、車両(V0)の移動を禁止する禁止信号を出力することを含む。
【0159】
この態様によれば、車両(V0)の運転者(H1)の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することが可能となる。
【0160】
第9の態様の判断方法では、第1~第8のいずれか1つの態様において、情報通信機器(30)は、車両(V0)内の音声を収音する音声入力部を備える。音声取得処理(ST3)において取得される音声データの音声は、音声入力部で収音された音声である。
【0161】
この態様によれば、情報通信機器(30)をユーザインタフェースとして用いることで、判断方法の実施が容易となる。
【0162】
第10の態様の判断方法では、第9の態様において、情報通信機器(30)は、車両(V0)の運転席からの音声を選択的に収音する指向性マイクを備える。音声取得処理(ST3)において取得される音声データの音声は、指向性マイクで収音された音声である。
【0163】
この態様によれば、運転席に位置する者(運転者H1)が発話した音声を選択的に取得することが可能となり、運転者(H1)の認知機能の程度を判断することが可能となる。
【0164】
第11の態様の判断方法では、第1~第10のいずれか1つの態様において、出力処理(ST6)では、評価処理(ST4)の結果を、搭乗者(H0)の関係者へ通知されるように出力する。搭乗者(H0)の関係者は、搭乗者(H0)が加入する自動車保険を取り扱う団体の構成員(H10)を含む。
【0165】
この態様によれば、自動車保険を取り扱う団体の利便性を向上することが可能となる。
【0166】
第12の態様の判断方法は、第11の態様において、保険料評価処理と、警告処理と、を更に含む。保険料評価処理は、評価処理(ST4)の結果に基づいて搭乗者H0の自動車保険の保険料を評価することを含む。警告処理は、保険料評価処理の結果に基づいて自動車保険の保険料に関する警告を含む警告情報を出力することを含む。
【0167】
この態様によれば、例えば認知機能の低下の疑いのある搭乗者(H0)に対して、車両(V0)の運転に関する警告を行うことが可能となり、車両(V0)の搭乗者(H0)の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することが可能となる。
【0168】
第13の態様の判断方法では、第1~第12のいずれか1つの態様において、搭乗者(H0)は、企業に雇用されて業として車両(V0)に搭乗する。出力処理(ST6)では、評価処理(ST4)の結果を、搭乗者(H0)の関係者へ通知されるように出力する。搭乗者(H0)の関係者は、搭乗者(H0)を雇用する企業の構成員(H11)を含む。
【0169】
この態様によれば、搭乗者(H0)を雇用する企業の利便性を向上することが可能となる。
【0170】
第14の態様の判断方法では、第1~第13のいずれか1つの態様において、出力処理(ST6)では、評価処理(ST4)の結果を、搭乗者(H0)の関係者へ通知されるように出力する。搭乗者(H0)の関係者は、搭乗者(H0)の家族を含む。
【0171】
この態様によれば、搭乗者(H0)の家族に、搭乗者(H0)の認知機能の低下の可能性を通知することが可能となり、車両(V0)の搭乗者(H0)の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することが可能となる。
【0172】
第15の態様の判断方法では、第1~第14のいずれか1つの態様において、評価処理(ST4)では、音声データから抽出される特徴量を用いて認知機能を評価する。
【0173】
この態様によれば、評価処理(ST4)における認知機能の程度の評価結果の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0174】
第16の態様の判断方法では、第15の態様において、特徴量は、以下の群から選択される1以上を含む。上記群は、音声データで示される搭乗者(H0)の音声に含まれる音節における母音の第一フォルマント周波数に関する量を含む。上記群は、音声データで示される搭乗者(H0)の音声に含まれる音節における母音の第二フォルマント周波数に関する量を含む。上記群は、音声データで示される搭乗者(H0)の音声に含まれる複数の母音それぞれについての、1以上のフォルマントの周波数及び振幅に関する量を含む。上記群は、音声データの基本周波数の単位時間あたりの変動を含む。上記群は、音声データの基本周波数の単位時間あたりの変動幅を含む。上記群は、搭乗者(H0)の音声に含まれる開音節における子音の音圧と子音に後続する母音の音圧との間の音圧差を含む。上記群は、搭乗者(H0)の音声に含まれる複数の開音節における、子音の音圧と子音に後続する母音の音圧との間の音圧差の、ばらつきを含む。上記群は、定型文の読み上げに要した総時間を含む。上記群は、定型文の複数回の読み上げにそれぞれ要した時間の変化量を含む。
【0175】
この態様によれば、評価処理(ST4)における認知機能の程度の評価結果の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0176】
第17の態様のプログラムは、第1~第16の態様のいずれか1つの判断方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0177】
第18の態様の判断システムは、音声取得部(F3)と、評価部(F4)と、出力部(F6)と、を備える。音声取得部(F3)は、車両(V0)の搭乗者(H0)が発話した音声を示す音声データを、車両(V0)に搭載された運転用途専用の情報通信機器(30)を介して取得する。評価部(F4)は、音声取得部(F3)で取得された音声データに基づいて、搭乗者(H0)の認知機能の程度を評価する。出力部(F6)は、評価部(F4)による評価の結果に基づく通知情報を、搭乗者(H0)と搭乗者(H0)の関係者とのうちの少なくとも一方へ通知されるように出力する。
【0178】
この態様によれば、車両(V0)の搭乗者(H0)の認知機能の低下に起因するトラブルの発生の可能性を低減することが可能となる。
【0179】
第19の態様の判断システムは、第18の態様において、情報通信機器(30)を更に備える。情報通信機器(30)は、評価部による評価の結果を、搭乗者(H0)へ通知する。
【符号の説明】
【0180】
30 情報通信機器
301 ドライブレコーダ
F3 音声取得部
F4 評価部
F6 出力部
H0 搭乗者
H1 運転者
H10 構成員
H11 構成員
ST3 音声取得処理
ST4 評価処理
ST5 判定処理
ST6 出力処理
ST8 禁止処理