(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096367
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】電波状況予測システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/318 20150101AFI20230630BHJP
G01R 29/08 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H04B17/318
G01R29/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212069
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232140
【氏名又は名称】NECフィールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】北河 宏紀
(57)【要約】
【課題】所望の通信規格における電波状況を安価かつ手軽に予測可能にすること。
【解決手段】電波状況予測システムは、所定の電波を受信する通信部;受信した電波のうち第1の周波数についての受信電力である第1の受信電力を測定する測定部;及び、前記第1の受信電力に基づいて、第2の周波数についての受信電力である第2の受信電力を演算する演算部、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電波を受信する通信部、
受信した電波のうち第1の周波数についての受信電力である第1の受信電力を測定する測定部、及び、
前記第1の受信電力に基づいて、第2の周波数についての受信電力である第2の受信電力を演算する演算部、
を含む、電波状況予測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電波状況予測システムにおいて、
前記システムは、更に、前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び前記所定の電波を送信した送信アンテナから前記通信部までの距離(以下「距離」という。)に関するデータを記憶する記憶部を含むこと、
前記演算部は、前記記憶部から前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び前記距離に関するデータを読み出して前記第2の受信電力を演算するよう構成されていること
を特徴とする電波状況予測システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電波状況予測システムにおいて、
前記測定部は、更に、前記第1の受信電力が予め設定された回数だけ測定されたか否かを判断するよう構成されていること
を特徴とする電波状況予測システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の電波状況予測システムにおいて、
前記演算部は、更に、複数の異なる距離と前記複数の異なる距離について夫々測定された第1の受信電力との間の関係から周波数をパラメータとして含む関係式を導出し、前記パラメータとしての周波数を前記第2の周波数に変更することによって、前記第2の受信電力を演算するよう構成されていること
を特徴とする電波状況予測システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電波状況予測システムにおいて、
前記演算部は、更に、前記演算として、前記第2の受信電力を前記第2の受信電力の最大受信電力に基づいて調整する演算を実行するよう構成されていること
を特徴とする電波状況予測システム。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の電波状況予測システムにおいて、
前記記憶部は、間取りを示すフロアマップデータを記憶していること、
前記システムは、更に、前記演算部による演算結果を表示する表示部を含み、前記表示部は、前記演算部による第2の受信電力の演算結果を前記フロアマップデータに重畳して表示すること
を特徴とする電波状況予測システム。
【請求項7】
所定の電波を受信すること、
受信した電波のうち第1の周波数についての受信電力である第1の受信電力を測定すること、及び、
前記第1の受信電力に基づいて、第2の周波数についての受信電力である第2の受信電力を演算すること、
を含む、電波状況予測方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電波状況予測方法において、
前記方法は、更に、
前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び距離に関するデータを記憶すること、
前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び前記距離に関するデータに基づいて前記第2の受信電力を演算すること
を含むこと、
を特徴とする電波状況予測方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電波状況予測方法において、
前記方法は、更に、複数の異なる距離と前記複数の異なる距離について夫々測定した第1の受信電力との間の関係から周波数をパラメータとして含む関係式を導出し、前記パラメータとしての周波数を前記第2の周波数に変更することによって、前記第2の受信電力を演算すること
を含むこと、
を特徴とする電波状況予測方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項7~9の何れかに記載の電波状況予測方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波状況予測システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各通信事業者は、超高速・大容量、低遅延、多数同時接続の3つの特徴を備えた第5世代移動通信システム(5G(Generation))のサービスを展開しており、幅広いビジネス用途で活用されることが期待されている。
【0003】
一方で、5Gは多くのユーザが利用することになるため、例えば災害が発生した場合には回線が輻輳してしまい、ネットワークに接続しにくい状態になる可能性がある。従って、ネットワークが外部環境に左右されてしまうと、例えばFA(Factory Automation)化されたスマート工場内においては遠隔操作により産業用ロボットを正常に作動できなくなる場合等が想定される。また大規模なネットワークに接続することになるため、社外秘の情報が外部に漏れてしまうといったセキュリティ面での不安が懸念される。更に現在通信事業者が展開している5Gカバーエリアは限定的であり、期待している場所にすぐに5Gを導入することができないといった問題も存在する。
【0004】
このような事情に鑑みて、5Gのオープンなネットワークから切り離され、独立したネットワークとして現在ローカル5Gが注目されている。このローカル5Gは、企業や自治体等が電波免許を受けることで、建物内や敷地内といった限られたエリアのみで5Gの通信サービスを受けることができるため、安心かつ安全にネットワークサービスを活用することが可能となる。
【0005】
ここで、企業等がローカル5Gの導入を検討する際、どの程度の通信環境が期待できるかを予測するために電波状況を確認できるのが望ましい。電波状況を確認する方策は2つある。第1の方策は、免許を受けた上で基地局を設け、実際に電波状況を確認する方法であり、第2の方策は専用のソフトウェアを用いてシミュレーションする方法である(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ウェブサイト“business network.jp”の“企業ネットワーク最前線”の“SPECIAL TOPIC ローカル5Gの円滑な導入に貢献する2つの電波シミュレーションツール”,提供 株式会社構造計画研究所 2021.06.24,[online],[令和3年12月15日検索],インターネット,<URL:https://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/8429/Default.aspx>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下の分析は本発明者によってなされたものである。
【0008】
第1の方策の場合は、免許を受けるための手続きに時間を取られるため、早急に確認することができない。また免許を受けたにもかかわらず確認した結果、期待する結果が得られない場合も考えられる。
【0009】
第2の方策の場合は、専用のソフトウェアは高価であるため、採用し難い。
【0010】
本開示の課題は、上記の問題の少なくとも1つを解決することであり、とりわけ、所望の通信規格における電波状況を安価かつ手軽に予測ないし確認することに貢献する電波状況予測システム、方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の視点により、電波状況予測システムが提供される。前記システムは、
所定の電波を受信する通信部、
受信した電波のうち第1の周波数についての受信電力である第1の受信電力を測定する測定部、及び、
前記第1の受信電力に基づいて、第2の周波数についての受信電力である第2の受信電力を演算する演算部、
を含む(形態1)。
本開示の第2の視点により、電波状況予測方法が提供される。前記方法は、
所定の電波を受信すること、
受信した電波のうち第1の周波数についての受信電力である第1の受信電力を測定すること、及び、
前記第1の受信電力に基づいて、第2の周波数についての受信電力である第2の受信電力を演算すること、
を含む(形態7)。
本開示の第3の視点により、コンピュータに、上記電波状況予測方法を実行させるプログラムが提供される(形態10)。
なお、上記のプログラムは、コンピュータが読み取り可能な(非トランジエントな)記憶媒体に記録することができる。即ち、本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。プログラムは、コンピュータ装置に入力装置又は外部から通信インタフェイスを介して入力され、記憶装置に記憶されて、プロセッサを所定のステップないし処理に従って駆動させ、必要に応じ中間状態を含めその処理結果を段階毎に表示装置を介して表示することができ、あるいは通信インタフェイスを介して、外部と交信することができる。そのためのコンピュータ装置は、一例として、典型的には互いにバスによって接続可能なプロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インタフェイス、及び必要に応じ表示装置を備える。
【0012】
上記形態1のシステムにおいて、
前記システムは、更に、前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び前記所定の電波を送信した送信アンテナから前記通信部までの距離(以下「距離」という。)に関するデータを記憶する記憶部を含むこと、
前記演算部は、前記記憶部から前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び前記距離に関するデータを読み出して前記第2の受信電力を演算するよう構成されていることが可能である(形態2)。
上記形態1又は2のシステムにおいて、
前記測定部は、更に、前記第1の受信電力が予め設定された回数だけ測定されたか否かを判断するよう構成されていることが可能である(形態3)。
上記形態1~3の何れかのシステムにおいて、
前記演算部は、更に、複数の異なる距離と前記複数の異なる距離について夫々測定された第1の受信電力との間の関係から周波数をパラメータとして含む関係式を導出し、前記パラメータとしての周波数を前記第2の周波数に変更することによって、前記第2の受信電力を演算するよう構成されていることが可能である(形態4)。
上記形態4のシステムにおいて、
前記演算部は、更に、前記演算として、前記第2の受信電力を前記第2の受信電力の最大受信電力に基づいて調整する演算を実行するよう構成されていることが可能である(形態5)。
上記形態1~5の何れかのシステムにおいて、
前記記憶部は、間取りを示すフロアマップデータを記憶していること、
前記システムは、更に、前記演算部による演算結果を表示する表示部を含み、前記表示部は、前記演算部による第2の受信電力の演算結果を前記フロアマップデータに重畳して表示することが可能である(形態6)。
上記形態7の方法において、
前記方法は、更に、
前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び距離に関するデータを記憶すること、
前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び前記距離に関するデータに基づいて前記第2の受信電力を演算すること
を含むことが可能である(形態8)。
上記形態7又は8の方法において、
前記方法は、更に、複数の異なる距離と前記複数の異なる距離について夫々測定した第1の受信電力との間の関係から周波数をパラメータとして含む関係式を導出し、前記パラメータとしての周波数を前記第2の周波数に変更することによって、前記第2の受信電力を演算すること
を含むことが可能である(形態9)。
【発明の効果】
【0013】
本開示ないしその各視点は、とりわけ、所望の通信規格における電波状況を安価かつ手軽に予測ないし確認することに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の電波状況予測システムの一実施形態の一例のブロック図。
【
図2】本開示の電波状況予測システムの一実施形態の一例における複数の測定地点の一例。
【
図3】本開示の電波状況予測システムの一実施形態の一例によりヒートマップ形式で表示された電波状況の一例。
【
図4】本開示の電波状況予測システムの一実施形態の一例の動作の一例を示すフローチャート。
【
図5】本開示の電波状況予測システムの一実施形態の一例について得られる受信電力とアンテナ間距離との間の関係式の一例。
【
図6】ハードウェア資源の構成の一例を模式的に示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示の概要について説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、専ら本開示の理解を助けるためのものであり、本開示を図示の態様に限定することは意図していない。また、各図におけるブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印は、信号、情報、データ等の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。更に、各図におけるブロック間の接続は有線又は無線方式の何れでも可能である。更に、プログラムはコンピュータ装置を介して実行され、コンピュータ装置は、例えば、プロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インタフェイス、及び必要に応じ表示装置を備え、コンピュータ装置は、通信インタフェイスを介して装置内又は外部の機器(コンピュータを含む)と、有線、無線を問わず、交信可能に構成される。
【0016】
図1は、本開示の電波状況予測システムの一実施形態の一例のブロック図である。
【0017】
電波状況予測システム1は、通信部10、測定部11、送信部12、記憶部13、演算部14、表示部15及び制御部16を含む。
【0018】
以下において、実際に測定する通信規格の電波を第1の電波W1、予測したい通信規格の電波を第2の電波W2という。
【0019】
通信部10は、ローカルネットワークを構築するアクセスポイントの役割を果たす例えば無線LAN(Local Area Network)ルータ(不図示)等の電波送信装置の送信アンテナと通信可能に構成された受信アンテナである。
【0020】
測定部11は、通信部10を介して接続可能なネットワークにおける電波状況を測定可能に構成されている。具体的には、測定部11は、後述する記憶部13から第1の電波W
1の周波数f
1を読み出して、その周波数に対応する受信電力P
Rを測定することができる。なお、測定部11は、例えば
図2に示すように、距離d
0の地点D0に配置されている電波送信装置の送信アンテナからの距離dが異なる複数の地点(D0~D3)において受信電力P
Rを測定することができる。
【0021】
送信部12は、測定部11によって測定された受信電力PRに関するデータを後述する演算部14へ送信可能に構成されたインタフェイスである。
【0022】
記憶部13は、ユーザによって予め設定される各種パラメータを記憶可能に構成され及び/又はそれらのパラメータが後述する演算部14によって読み出し可能に構成された、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶媒体である。記憶されるパラメータは、具体的には、例えば送信アンテナと受信アンテナとの距離d(以下「アンテナ間距離d」ともいう)、第1の電波W1の周波数f1、第2の電波W2の周波数f2等である。なお、アンテナ間距離dについては、測定部11が測定するようにしてもよい。
【0023】
記憶部13は、更に、測定領域の間取りが予め確認可能な写真又は図面及び測定領域における測定地点を記憶することも可能である。なお、これらの写真又は図面は後述する表示部15の表示画面及び/又はシステム1に有線又は無線で接続された外部の表示装置(不図示)の表示画面に表示されることができ、送信アンテナの位置と受信アンテナの位置(測定地点)を指定することによって測定地点を確認することも可能である。このとき、システム1は、測定部11が指定されたアンテナ間距離dを測定するように構成されることも可能である。
【0024】
演算部14は、各測定地点において測定された受信電力PRに基づいて、アンテナ間距離dと受信電力PRの関係式を導出可能に構成されている。導出方法については後述する。
【0025】
演算部14は、更に、記憶部13に記憶されている第2の電波W2の周波数f2を読み出すと共に、アンテナ間距離dと受信電力PRについての関係式において、アンテナ間距離d=0の場合の受信電力(最大受信電力PRMAX)を一定にしたまま、前記関係式の一パラメータである周波数として第2の電波の周波数f2を適用することにより、アンテナ間距離dと第2の電波W2についての受信電力PR’との間の関係式を導出することができる。
【0026】
演算部14は、更に、最大受信電力PRMAXを、第2の電波W2の周波数f2について許容可能な受信電力に設定することにより、アンテナ間距離dと第2の電波W2についての受信電力PR’との間の関係式から、アンテナ間距離dと第2の電波W2についての受信電力PR
”の関係式を導出することも可能である。
【0027】
表示部15は、演算部14から受信した演算結果を、その表示画面及び/又はシステム1に有線又は無線で接続された外部の表示装置(不図示)の表示画面に、表示可能に構成されている。このため、表示部15によって、予測対象である所望の通信規格である第2の電波W
2についての電波状況が確認可能となる。表示部15は、更に、記憶部13に記憶されている写真や図等の画像データに、演算結果を重畳することによって例えば
図3に示すようなヒートマップ形式で電波状況を表示させることも可能である。
【0028】
制御部16は、通信部10、測定部11、送信部12、記憶部13、演算部14及び表示部15を制御する機能部である。制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)等のユニットとして構成可能であり、また、1つ又は複数のユニットとして構成可能である。
【0029】
制御部16は、見易さの観点から図示は省略したが、通信部10、測定部11、送信部12、記憶部13、演算部14及び表示部15と電気的に接続(バス接続でも可)されており、少なくとも、通信部10、測定部11、送信部12、記憶部13、演算部14及び表示部15の上述の動作を制御するよう構成されている。
【0030】
上記においては、システム1の各部について説明したが、便宜上各々の機能について個別的かつ例示的に説明したに過ぎず、上記構成に限定されず、例えば、1つの部が複数の部の機能を有することも可能である。例えば、通信部10が測定機能を有することや、測定部11が送信機能を有すること等も可能である。
【0031】
(動作例)
次に、
図4のフローチャートを参照しながら本開示の電波状況予測システムの一実施形態の一例の動作の一例について詳細に説明する。
【0032】
以下の動作を開始するにあたって、記憶部13は、既に、第1の電波W1の周波数f1に関するデータ、第2の電波W2の周波数f2に関するデータ、アンテナ間距離dに関するデータ及び測定領域の間取りが確認可能なフロアマップデータを記憶しているものとする。なお、上記の通り、以下の各部の動作は、制御部16によって制御されている。
【0033】
まず、通信部10は、例えば無線LANルータ等の電波送信装置の送信アンテナから第1の電波W1を受信し(ステップS1)、受信した電波に関するデータを測定部11へ送信する。
【0034】
次に、測定部11は、記憶部13から周波数f1を読み出し、第1の電波W1の周波数f1についての受信電力PRを測定し(ステップS2)、測定結果を送信部12へ送信する。
【0035】
測定部11は、更に、送信アンテナからの距離dが異なる複数の地点(
図2におけるD0~D3に相当)において所定回数測定されたか否かを判断する(ステップS3)。所定回数測定されたと判断された場合、次のステップに進む。一方、所定回数測定されていないと判断された場合には、測定部11は、例えば表示部15を介して受信電力P
Rの測定を促すことができ、ステップS1に戻る。
【0036】
続いて、送信部12は、測定部11から受信した受信電力PRに関するデータと、その受信電力PRに対応するアンテナ間距離dに関するデータを、演算部14へ送信する(ステップS4)。
【0037】
演算部14は、送信部12から受信したデータに基づいてアンテナ間距離dと受信電力P
Rの関係式を導出する(ステップS5)。ここで導出される関係式は、
図5に示すようなアンテナ間距離dをx軸、受信電力P
Rをy軸とするxy平面上において、L1に相当する略直線で描かれることができる。具体的には、ステップS2において測定されたアンテナ間距離毎の受信電力P
Rをグラフ上にプロットすることによって、周波数f
1についてのアンテナ間距離dと受信電力P
Rとの間の関係式をグラフ化することができる。
【0038】
なお、受信電力PRとアンテナ間距離dとの間の関係式は理論上以下のように導出することができる。
【0039】
まず、送信側アンテナが等方性アンテナ(電波が全ての方向に一様に放射する点状のアンテナ)であると仮定し、送信電力をPT、送信アンテナの利得をGTとすると、電力密度PDは、
PD=PT×GT×(1/4πd2)
となる。
【0040】
そして、受信アンテナの利得をGRとすると、受信電力PRは、
PR=PD×(λ2/4π)×GR=(λ/4πd)2×GT×GR×PT (1)
となる。
【0041】
電波の速度cは
c=fλ(=3.0×108[m/s])
であるから、λ=c/fを式(1)に代入すると、
受信電力PRは
PR=(c/4πfd)2×GT×GR×PT (2)
となる。
【0042】
つまり、送信電力PT、送信アンテナの利得GT、受信アンテナの利得GR及び周波数fが全て一定であると仮定すると、受信電力PRは、アンテナ間の距離dの2乗に反比例することになる。
【0043】
従って、受信電力P
Rとアンテナ間距離dに関する関係式(式(2))を
図5に示すようなy軸を対数とする片対数グラフで表すと、L1に示されるような略直線で描かれることになる。なお、略直線L1におけるy切片は、アンテナ間距離d=0のときの受信電力P
Rである。
【0044】
演算部14は、更に、記憶部13から第2の電波W2の周波数f2に関するデータ読み出して、周波数f2についての受信電力PR
’を算出する(ステップS6)。
【0045】
式(2)に示されているように受信電力P
Rと周波数fの2乗は反比例の関係にあるため、式(2)の一パラメータである周波数fとしてf
2を適用すると、
周波数f
2についての受信電力P
R
’は
P
R
’=(f
1/f
2)
2×P
R
となり、f
2<f
1の場合、P
R
’>P
Rとなる。従って、アンテナ間距離dが一定であれば、受信電力P
R’についての関係式は、
図5に示されるように、略直線L1よりも傾きが緩やかな略直線L2で描かれることになる。
【0046】
演算部14は、更に、上記の片対数グラフにおけるPR
’についての略直線L2のy切片を補正した受信電力PR
”を算出する(ステップS7)。具体的には、演算部14は、y切片を周波数f2について許容可能な受信電力(最大受信電力)に調整することによって、受信電力PR
”を算出する。調整した結果、最大受信電力を調整した分だけ略直線L2を平行移動させた略直線L3が、最終的に導き出したい周波数f2における電波状況を示す関係式となる。
【0047】
なお、電波の種類に応じて通信可能な受信電力は異なる。そのため、記憶部13には、例えば
図5に示すような、周波数f
1について通信可能な受信電力P
Rminに関するデータ及び周波数f
2について通信可能な受信電力P
R
”minに関するデータを記憶しておくことも可能である。この場合、P
R=P
RminとL1の交点が周波数f
1についての通信限界点であり、演算部14は、このときのアンテナ間距離を通信限界距離dminとして算出することができる。同様に、P
R=P
R
”minとL3との交点が周波数f
2についての通信限界点であり、このときのアンテナ間距離を通信限界距離d
”minとして算出することも可能である。
【0048】
そして、表示部15は、演算部14から受信電力PR
”に関するデータを受信し、その表示画面(例えば液晶ディスプレイ)上に周波数f2についての電波状況を表示させることができる(ステップS8)。
【0049】
なお、表示部15は、記憶部13からフロアマップデータを読み出すことができる。そのため、演算結果はフロアマップデータに重畳されることができ、その結果、電波状況はヒートマップ(等高線マップ)形式で把握可能になる。
【0050】
ここで、一具体例として、第1の電波がWi-Fi、第2の電波がローカル5Gとした場合が挙げられるが、この場合、Wi-Fiについての電波状況に基づいてローカル5Gについての電波状況を上述したようにして予測することができる。
【0051】
なお、上記説明では、予め測定可能な基準となる第1の電波W1の周波数f1よりも、予測したい第2の電波W2の周波数f2の方が低い場合のみについて説明したが、大小関係は逆であっても構わない。もし予測したい周波数が基準となる周波数よりも高い場合には、略直線L2は略直線L1よりも急峻になる。
【0052】
このように、本開示によれば、所望の通信規格における電波状況を安価かつ手軽に予測ないし確認することが可能になる。
【0053】
なお、上記実施形態に係る制御部は、いわゆるハードウェア資源(情報処理装置、コンピュータ)により構成することができ、
図6に例示する構成を備えたものを用いることができる。例えば、ハードウェア資源100は、内部バス104により相互に接続される、プロセッサ101、メモリ102、ネットワークインタフェイス103等を備える。
【0054】
なお、
図6に示す構成は、ハードウェア資源100のハードウェア構成を限定する趣旨ではない。ハードウェア資源100は、図示しないハードウェア(例えば、入出力インタフェイス)を含んでもよい。プロセッサ101には、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等を用いることができる。
【0055】
メモリ102には、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を用いることができる。
【0056】
ネットワークインタフェイス103には、例えば、LAN(Local Area Network)カード、ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェイスカード等を用いることができる。
【0057】
ハードウェア資源100の機能は、処理モジュールにより実現される。当該処理モジュールは、例えば、メモリ102に格納されたプログラムをプロセッサ101が実行することで実現される。また、そのプログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。さらに、上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。即ち、上記処理モジュールが行う機能は、何らかのハードウェアにおいてソフトウェアが実行されることによって実現できればよい。
【0058】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[付記1]電波状況予測システム。
前記電波状況予測システムは、
所定の電波を受信する通信部、
受信した電波のうち第1の周波数についての受信電力である第1の受信電力を測定する測定部、及び、
前記第1の受信電力に基づいて、第2の周波数についての受信電力である第2の受信電力を演算する演算部、
を含む。
[付記2]上記の電波状況予測システムにおいて、
前記システムは、更に、前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び前記所定の電波を送信した送信アンテナから前記通信部までの距離(以下「距離」という。)に関するデータを記憶する記憶部を含む;
前記演算部は、前記記憶部から前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び前記距離に関するデータを読み出して前記第2の受信電力を演算するよう構成されている。
[付記3]上記の電波状況予測システムにおいて、
前記測定部は、更に、前記第1の受信電力が予め設定された回数だけ測定されたか否かを判断するよう構成されている。
[付記4]上記の電波状況予測システムにおいて、
前記演算部は、更に、複数の異なる距離と前記複数の異なる距離について夫々測定された第1の受信電力との間の関係から周波数をパラメータとして含む関係式を導出し、前記パラメータとしての周波数を前記第2の周波数に変更することによって、前記第2の受信電力を演算するよう構成されている。
[付記5]上記の電波状況予測システムにおいて、
前記演算部は、更に、前記演算として、前記第2の受信電力を前記第2の受信電力の最大受信電力に基づいて調整する演算を実行するよう構成されている。
[付記6]上記の電波状況予測システムにおいて、
前記記憶部は、(測定領域の)間取りを示すフロアマップデータを記憶している;
前記システムは、更に、前記演算部による演算結果を表示する表示部を含み、前記表示部は、前記演算部による第2の受信電力の演算結果を前記フロアマップデータに重畳して表示する。
[付記7]電波状況予測方法は、
所定の電波を受信すること、
受信した電波のうち第1の周波数についての受信電力である第1の受信電力を測定すること、及び、
前記第1の受信電力に基づいて、第2の周波数についての受信電力である第2の受信電力を演算すること、
を含む。
[付記8]上記の電波状況予測方法は、更に、
前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び距離に関するデータを記憶すること;
前記第1の周波数に関するデータ、前記第2の周波数に関するデータ及び前記距離に関するデータに基づいて前記第2の受信電力を演算すること
を含む。
[付記9]上記の電波状況予測方法は、更に、
複数の異なる距離と前記複数の異なる距離について夫々測定した第1の受信電力との間の関係から周波数をパラメータとして含む関係式を導出し、前記パラメータとしての周波数を前記第2の周波数に変更することによって、前記第2の受信電力を演算すること
を含む。
[付記10]上記の電波状況予測方法は、更に、
前記演算として、前記第2の受信電力を前記第2の受信電力の最大受信電力に基づいて調整する演算を実行すること
を含む。
[付記11]上記の電波状況予測方法は、更に、
第2の受信電力についての前記演算の結果を(測定領域の)間取りを示すフロアマップデータに重畳して提示すること
を含む。
[付記12]
コンピュータに、上記の電波状況予測方法を実行させるプログラム。
【0059】
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素( 各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 電波状況予測システム
10 通信部
11 測定部
12 送信部
13 記憶部
14 演算部
15 表示部
16 制御部
100 ハードウェア資源
101 プロセッサ
102 メモリ
103 ネットワークインタフェイス
104 内部バス